説明

半導体発光デバイス部材用組成物、封止材、半導体発光デバイス部材及び半導体発光デバイス

【課題】耐光性、耐熱性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離を生じることなく半導体発光デバイスを封止し、かつ、光吸収が少ない半導体発光デバイス部材用組成物及びその応用品を提供する。
【解決手段】バインダ用透明樹脂(A)と、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)とを含有する半導体発光デバイス部材用組成物。該組成物を硬化してなる硬化物は、蛍光体を用いる白色LED封止材の他、蛍光体を用いない紫外〜青LED用封止材、レンズ等光学部材、接着剤、銀電極表面の変色防止コーティング材等の用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光デバイス部材用組成物、封止材、半導体発光デバイス部材及び半導体発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(light emitting diode、LED)や半導体レーザー等の半導体発光デバイスにおいては、半導体発光素子を透明の樹脂等の部材(半導体発光デバイス用部材)によって封止したものが一般的である。
従来、LED用封止材をはじめとする半導体発光デバイス用部材にはエポキシ樹脂や付加硬化型・縮合硬化型・UV硬化樹脂などのシリコーン樹脂が用いられている。しかしながら、これらの樹脂は耐熱性、耐光性などが不十分であるものが多く、長期使用中に着色やクラック、剥離を生じることが多い。
特に、近年COB(Chip on Board)型実装のLEDでは高硬度のシリコーン封止材やトランスファー成形用シリコーン封止材が多用される。また、LEDパッケージ中の電極銀メッキの劣化着色を防止するためガスバリア性の高いシリコーン封止材が好まれる。このようなシリコーンはフェニルシリコーン、エポキシ変性シリコーン等の有機変性シリコーンであることが多く、高屈折率でチップからの光取り出し効率が良く高硬度、低ガス透過性である反面、UV光を吸収するため光劣化しやすく耐熱性も低いため高出力のLEDに用いることができなかった。
【0003】
また、白色LEDではチップの光を波長変換するために蛍光体を使用する。演色性にすぐれる白色LEDでは光や熱、電界により劣化しやすい蛍光体を用いることがあるが、この蛍光体を最も劣化が加速されるチップ近傍から離して配置させることが望まれていた。
また、蛍光体の利用効率を向上させるために封止材に適度な光散乱機能を付与することが望まれていた。
更に、成形・加工速度を向上し、サイクルタイムを短縮するために、封止材の高速硬化を期待してUV硬化封止材も開発されているが、蛍光体ペーストを硬化させる際には硬化のために照射するUV光が高濃度の蛍光体に吸収され深部に届かないために、表面だけ硬化が進んで、成形体の内部は未硬化であるというような、深部硬化性に課題があった。
【0004】
このような課題に対して、半導体発光デバイス用部材に無機酸化物粒子としてシリカを添加することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
添加されるシリカ粒子として、ヒュームドシリカや沈降性シリカなどのシリカ微粒子、球状シリカ、ガラス繊維、ガラス中空粒子、シリカゲルなどの機能性フィラー、シリカゾルなどの溶媒分散型ナノゾルなどが知られている。しかし、ヒュームドシリカや沈降性シリカなどはいずれもチキソ性や機械的強度の向上や無機的耐熱性の付与が目的であり、シリカ本来の高透明性という特性を十分に活かし導光材として使用した例は知られていなかった。
ガラス繊維はシリカとしての純度が低く透明性が劣っており、一方シリカゲルやシリカゾルはシラノール基含有量が多く、親水性が高くなりすぎて樹脂中で凝集し、組成物の粘度の経時的な変化を引き起こすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−112973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる状況下、本発明の目的は、耐光性、耐熱性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離を生じることなく半導体発光デバイスを封止し、かつ、光吸収が少ない半導体発光デバイス部材用組成物及びその応用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> バインダ用透明樹脂(A)と、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)とを含有する半導体発光デバイス部材用組成物。
<2> 前記粉末(B)が、合成石英ガラス粉末である前記<1>記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<3> 前記粉末(B)の平均粒径が3μm以上100μm以下である前記<1>又は<2>に記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<4> 前記粉末(B)の屈折率(nD(B))が1.46以上1.54以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<5> 前記バインダ用透明樹脂(A)の屈折率(nD(A))と前記粉末(B)の屈折率(nD(B))との差の絶対値が、0.05以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<6> 前記粉末(B)の形状が破砕形状である前記<1>から<5>のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<7> 前記粉末(B)に含まれるアルミニウム(Al)、チタン(Ti)及び鉄(Fe)の合計量が300重量ppm以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<8> 前記バインダ用透明樹脂(A)100重量部当たりの前記粉末(B)の含有量が10〜400重量部である前記<1>から<7>のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<9> 前記バインダ用透明樹脂(A)がシリコーン系樹脂である前記<1>から<8>のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<10> さらに蛍光体(C)を含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の組成物を硬化してなる封止材。
<12> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の組成物を成形・硬化してなる半導体発光デバイス用部材。
<13> 前記<11>に記載の封止材で封止されてなる半導体発光デバイス用部材。
<14> 前記<12>又は<13>に記載の半導体発光デバイス用部材を含む半導体発光デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光や熱に対する着色や劣化が抑制され、かつ、光吸収が少なく高輝度のLEDを与えることができる半導体発光デバイス部材用組成物が提供される。該組成物は、光や熱に対する耐性と優れた光透過性を有し、その応用品としての透明性が必要とされる半導体発光デバイス部材に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体発光デバイス(適用例1:白色LED)の模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る半導体発光デバイス(適用例2:UV−LED)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[半導体発光デバイス部材用組成物]
本発明の半導体発光デバイス部材用組成物(以下、単に「本発明の組成物」ということがある。)は、バインダ用透明樹脂(A)と、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)とを含有してなり、その他必要に応じて蛍光体(C)を始めとした各種添加物を含有してなる。
以下、各成分について説明する。
【0014】
[バインダ用透明樹脂(A)]
バインダ用透明樹脂(A)(以下、単に「透明樹脂(A)」ということがある。)としては、半導体発光デバイス部材用に通常用いられる透明樹脂であれば特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン系樹脂;UV硬化性アクリル樹脂等が挙げられる。
なお、これらの樹脂材料をバインダー成分とした本発明の組成物を半導体発光素子の封止に用いる場合、該組成物を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
【0015】
従来、半導体発光デバイス部材用組成物のバインダ成分としては、一般的にエポキシ樹脂が用いられてきたが、半導体発光デバイス部材に使用した場合の、熱・光等に対する耐久性が他の樹脂と比較して優れていることから、シリコーン系樹脂が好適である。
ここで、シリコーン系樹脂とは、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体であるシリコーン樹脂及び、シリコーン樹脂と他の樹脂成分を含む、エポキシ−シリコーン樹脂、シリコーン−アクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂を含む概念である。
【0016】
なお、バインダ用透明樹脂(A)の屈折率(nD(A))と後述する石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)の屈折率との差の絶対値が、0.05以下であることが好ましい。
この絶対値が、0.05を超えると透明樹脂(A)から粉末(B)への光が入射しにくくなり、粉末(B)の導光路としての機能を十分に発揮できないことがある。この絶対値が、0.05以下であると適度な光散乱効果を付与することができ、本発明の組成物が、後述する蛍光体(C)を含む場合、蛍光体の利用効率を向上させることができる。
なお、上記絶対値が0、すなわち、nD(A)とnD(B)と同一であれば、本発明の組成物は完全に透明になるため、過剰な光散乱がなくなり好ましい。
【0017】
[石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)]
粉末(B)は、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末である。
ここで、「石英」とは、SiOの結晶を意味し、「石英ガラス」とはSiOの正四面体を単位として不規則に結合したネットワーク構造を有し、シラノール基(Si−OH)としてのH原子以外の他の元素を含まない非晶質シリカを意味する。
石英及び石英ガラスは、上記以外の元素を不純物レベル(ppmオーダー)でしか含有せず、その本来の透明性を保っていると共に、その特長としては、透光性が良く、また化学的安定性に優れているという点が挙げられる。なお、石英ガラスは、複屈折がなく、結晶石英よりも低い屈折率を有する。
【0018】
本発明の組成物は、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)を含有することに最大の特徴がある。粉末(B)は、幅広い領域で透明性を有し、可視光のみならず、300nm以下の紫外光を透過する。さらに、石英や石英ガラスは、耐光性、耐熱性に優れるため、粉末(B)を添加することより、従来用いられていた比較的不純物濃度が高いシリカ粒子と同様に、チクソ性や機械的強度の向上や無機成分による耐熱性を向上させる効果もある。
一方、石英ガラス自体を、紫外線LEDの窓材やレンズなどの光学部材として単独使用した例はあるが、石英ガラスは高融点であり成形しづらくその適用範囲は限定されていた。
これに対し、本発明の組成物は、粉末(B)、すなわち、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末を、上述のバインダ用透明樹脂(A)に添加する構成であるため、幅広い領域での透明性と共に成形性にも優れるという利点がある。
【0019】
粉末(B)を構成する石英や石英ガラスは、金属不純物が含まれると光透過性が低下する傾向にある。この傾向は、特に300nm以下の波長領域で著しい。
石英や石英ガラスに含まれる不純物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等がありそのいずれも不純物になりうるが、特にアルミニウム(Al)、チタン(Ti)及び鉄(Fe)が含まれると、光透過性が低下の原因になりやすい。そのため、粉末(B)に含まれるアルミニウム(Al)、チタン(Ti)及び鉄(Fe)の合計量は、好ましくは300重量ppm以下、より好ましくは、100重量ppm、さらに好ましくは30重量ppm以下、さらに好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下である。
【0020】
天然石英は、粉砕して結晶粉末としてそのまま使用しても、あるいは酸水素火炎や電気(アークプラズマや電磁誘導コイル方式の電気炉)などで溶融し、冷却して非晶質の石英ガラスとして粉末として使用してもよい。一方で、天然石英は、その結晶間に10〜100ppm程度の金属不純物を含むため、天然石英を原料にして粉末(B)を製造すると、必然的に金属不純物濃度が高くなる。また、原産地などによって、不純物濃度にバラツキがあるため、品質が安定しないという欠点がある。
【0021】
これに対し、化学的に合成した合成石英ガラスは、純度の高い前駆体化合物を使用することにより、極めて高純度な石英ガラスとすることができる。
合成石英ガラスは、テトラエトキシシラン等のアルコキシシランや、塩化珪素などから製造することができるが、後者由来の合成石英ガラスは一般にClを100ppm以上含むため、Cl不純物が少ない前者が好ましい。
【0022】
粉末(B)の平均粒径は、3μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上60μm以下であることがより好ましい。
LEDチップ上の封止材層の厚さは、通常500〜1000μmであるが、粉末(B)の平均粒径が上記範囲であれば、この間に複数個の粒子が存在でき、しかも硬化表面の凹凸を起こさない。
一方で、平均粒径が3μm未満では、光を散乱する性質が強くなりすぎて半導体発光デバイスの発光効率が悪くなったり、組成物に対する増粘効果が顕著となり、添加量が制限される傾向にある。一方で、平均粒径が、100μmを超えると本発明の組成物を硬化させてなる硬化物表面の粗れが発生し、半導体発光デバイスの発光特性が低下する。また、ポッティング時にディスペンサ詰まりの原因になる可能性がある。
なお、粉末(B)の平均粒径は、レーザー回折散乱法にて測定した値である。
【0023】
また、粉末(B)の屈折率(nD(B))は、1.46以上1.54以下であることが好ましい。
粉末(B)の屈折率(nD(B))がこの範囲であると、バインダ用透明樹脂(A)として用いられている樹脂成分の屈折率に近い値となり、特に近年封止材に多用されているフェニル含有シリコーン樹脂等と共に用いると、本発明の組成物に高い透明性と適度な光散乱機能を付与することができる。
【0024】
また、粉末(B)の形状が破砕形状であることが好ましい。
例えば、白色LED等の半導体発光デバイス部材の封止材に使用するときには、本発明の組成物は、後述する蛍光体(C)を含むことがあるが、この蛍光体(C)はフィラーである粉末(B)に担持して添加されると分散状態を均一にしやすいため好ましい。
球状シリカは凝集性が低く、増粘が少ないので、比較的多量に添加することができるという利点があるが、蛍光体(C)の保持力に乏しい。また、得られる硬化物の透明度が低下することがある。
ここで、粉末(B)の形状が、破砕形状(不定形)であると蛍光体(C)の担持量を多くすることができる。また、沈降防止効果を高めることができる。
【0025】
本発明の組成物において、粉末(B)の含有量は、その粒径、蛍光体の使用有無、樹脂との屈折率差等を考慮して決定されるが、バインダ用透明樹脂(A)100重量部当たりの粉末(B)の含有量が、10〜400重量部であり、好ましくは15〜300重量部、より好ましくは20〜200重量部である。
【0026】
[蛍光体(C)]
本発明の組成物は、白色を含む様々な色に発光するLEDを得るため、蛍光体(C)を含んでいてもよい。
本発明に用いる蛍光体は特に限定されるものではなく、例えば一般的に公知の無機蛍光体や有機蛍光体を用いることができ、これらを1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0027】
本発明に用いることが好ましい蛍光体としては、例えば母体結晶としてM3SiO5、MS、MGa24、MAlSiN3、M2Si58、MSi222からなる群(ただし、Mは、Ca,Sr,Baからなる群から選ばれる1種、または2種以上を表す)の少なくとも一つを含有し、かつ賦活剤としてCr、Mn、Fe、Bi、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ybの少なくとも一つを含有する蛍光体が挙げられる。
【0028】
好適な具体例としては、CaS、CaGa24:Eu、SrGa24:Eu、(Sr0.8Ca0.2)AlSiN3:Eu、(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu、Ba3Si694:Eu、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu、を挙げることが出来る。
【0029】
また、上記蛍光体以外にも、耐久性向上、分散性向上等、目的に応じてその他の蛍光体を用いることもできる。このような蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるY23、Zn2SiO4等に代表される金属酸化物、Sr2Si58等に代表される金属窒化物、Ca5(PO43Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを賦活元素又は共賦活元素として組み合わせたものが好ましい。
【0030】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa24、SrS、ZnS等の硫化物、Y22S等の酸硫化物、(Y,Gd)3Al512、YAlO3、BaMgAl1017、SrAl24、Sr4Al1425、Y3Al512等のアルミン酸塩、Y2SiO5、Zn2SiO4等の珪酸塩、SnO2、Y23等の酸化物、GdMgB510等の硼酸塩、Ca10(PO46(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2等のハロリン酸塩、Sr227、(La,Ce)PO4等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0031】
ただし、上記の結晶母体及び賦活元素又は共賦活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体が近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0032】
本発明の組成物において、蛍光体(C)の含有量は、その目的を考慮して適宜決定されるが、前記蛍光体(C)の使用量はバインダ用透明樹脂(A)と粉末(B)の合計100重量部に対し、通常5〜30重量部、中でもチップ発光色が青色であり、チップ発光の一部を蛍光体により波長変換しチップ発光と混色して白色光とする場合には透明樹脂(A)と粉末(B)の合計100重量部に対し蛍光体総量として5〜20重量部、チップ発光色が紫外〜近紫外光でありチップ発光の全てを蛍光体により波長変換して白色光とする場合には、透明樹脂(A)と粉末(B)の合計100重量部に対し蛍光体(C)の総量として10〜30重量部の使用量が好ましい。
【0033】
[その他の成分(D)]
本発明の組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じてその他の成分(D)を1種、または2種以上を任意の比率及び組み合わせで含有させることができる。このような成分としては、例えば色素、酸化防止剤、安定化剤(燐系加工安定化剤などの加工安定化剤、酸化安定化剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤などの耐光性安定化剤等)、光拡散材など、当該分野で公知の添加物のいずれをも用いることができる。
また、反射材・散乱材フィラーとしての機能が必要な場合には、チタニア、アルミナなどの無機白色顔料を使用しても良い。
【0034】
また、本発明の組成物は、通常、無溶剤で使用するが、スクリーン印刷などを行う際は溶剤が含有されていてもよい。本発明でいう溶剤とは、上記バインダ用透明樹脂(A)を分散または溶解させることが可能なものをいう。
【0035】
上記溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、C1〜C3の低級アルコール類、C6〜C10の炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドンなどの極性溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などを挙げることが出来る。上記溶剤は1種単独で用いてもよく、また2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。上記の中でも不飽和結合を含む沸点150℃以下の溶剤が硬化時の発泡や長期間点灯時の着色を抑制できる点から好ましい。
【0036】
上記組成物中に含有される溶剤は、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記組成物中に溶剤を含有することにより、組成物の粘度を調整したり、保存時の反応性を制御したりすることができる。
【0037】
[本発明の組成物の製造方法]
本発明の組成物は、該組成物の構成成分を混合することで製造することができる。
なお、その際、組成物の均一性の向上、脱泡等を目的として、ペイントシェーカーやビーズミル、プラネタリミキサ、自公転攪拌混合機(ホパートミキサー)などを用いて混合することが好ましい。
混合順序も特段の問題がない限り任意であり、組成物の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め配合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
一方で、特に粉末(B)の分散が不十分である場合、凝集した粉末(B)により過剰な光散乱が起きて光出力が低下したり、チキソ性の発現が不安定となり蛍光体(C)の粒子が沈降や分散ムラを起こしたり、ポッティング時の吐出量にムラが生じたりして、得られる半導体発光装置内の色むらや発光装置ごとの色度ずれにつながり、製造時の歩留まりや品質に影響を与えることがある。
また高出力白色LEDでは蛍光体分散のムラは製造時の色ムラにつながるのみならず、長期点灯時の色ずれや輝度低下につながるので蛍光体を均一に分散させることは特に重要である。
特に本発明の組成物が蛍光体(C)を含む場合には、粉末(B)をバインダ用透明樹脂(A)及び溶媒に十分に分散させた後に蛍光体(C)を分散させることによって、一括混合と比較して粉末(B)及び蛍光体(C)を十分に分散させることが可能となり、チキソ性の発現が安定し、製造時の歩留まりや品質、長期点灯時の信頼性に優れた硬化物を提供することができる。
【0038】
[封止材、半導体発光デバイス用部材]
上記本発明の半導体発光デバイス部材用組成物は、公知の半導体発光装置の半導体発光デバイス用部材の形成に用いることができる。なお、本発明の組成物は、またポッティング、スピンコート、印刷、トランスファー成形、LIM成形、圧縮成形などの各種塗布方法や成形方法に柔軟に対応したものとすることができる。
【0039】
本発明の封止材は、前述の本発明の組成物を硬化させてなるものであり、透明性、耐熱性に優れ、良好な硬化物性を示すものである。また、この封止材で封止されてなる半導体発光デバイス用部材、本発明の組成物を成形・硬化してなる半導体発光デバイス用部材は、以下に記載する各種用途に有用である。
【0040】
[用途]
本発明の組成物を硬化してなる硬化物である本発明の半導体発光デバイス用部材は、蛍光体を用いる白色LED封止材、蛍光体を用いない紫外〜青(360〜460nm)LED用封止材等の半導体発光デバイス用封止材、半導体発光デバイス用パッケージ材、レンズ等光学部材、接着剤、銀電極表面の変色防止コーティング材、さらにアルミナやチタニアを添加した白色パッケージ材、透明や白色顔料入りのダイボンド材など、LED直近に用いられ高密度の光や熱に曝される各種部材において部材樹脂の着色や劣化を低減できて好適である。
中でも高出力の紫外〜近紫外(360〜405nm)チップを用いた白色LEDや紫外線LED用部材においては光や熱によるバインダ樹脂の着色が起きやすいため、本発明の適用による効果が顕著である。
このようなLEDを用いた製品としては例えば街灯、室内照明、スポットライト、店舗用照明などの屋内外照明、テレビやデジタルサイネージ等の大型液晶ディスプレイ用バックライト、UV樹脂硬化用の紫外線照射装置、UV殺菌灯、車両用照明、医療用照明器具、製品検査用顕微鏡照明などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0041】
以下、本発明の半導体発光デバイス用部材を用いた半導体発光デバイスについて説明する。
【0042】
半導体発光デバイスの基本概念
上記半導体発光デバイス用部材を用いた半導体発光デバイスは、例えば、以下の適用例がある。半導体発光デバイス用部材は、その適用例において、従来の半導体発光デバイス用部材と比較して、優れた耐光性、密着性及び耐熱性を示し、クラックや剥離が起きにくく、輝度の低下が少ない。したがって、本発明の組成物を成形・硬化してなる半導体発光デバイス用部材あるいは本発明の組成物を硬化してなる封止材で封止してなる半導体発光デバイス用部材によれば、長期にわたって信頼性の高い部材を提供することができる。
【0043】
(適用例1):白色LED
発光素子の近傍に、蛍光体を含有する半導体発光デバイス用部材(以下適宜、「蛍光体部」という)を配設し、発光素子からの光により蛍光体部中の蛍光体や蛍光体成分を励起させ、蛍光を利用して所望の波長の光を発光する半導体発光デバイス。
【0044】
図1に示すように適用例1においては、半導体発光デバイス用部材の発光素子の近傍に石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)をバインダ用透明樹脂(A)が着色劣化しやすいチップ近傍に配置し、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)が光の通路を作り輝度の低下を抑制する。
また、樹脂が紫外吸収大きい場合には組成物の透過率を向上させる働きもある。さらにチップ近傍の蛍光体粒子の密度を減らし蛍光体劣化を低減することができる。
【0045】
この適用例においては、上記半導体発光デバイス用部材の高い耐久性、透明性および封止材性能を生かし、高耐久性で光取り出し効率の高い蛍光体部を形成することができる。
さらに、上記半導体発光デバイス用部材に、蛍光体や蛍光体成分に加えて透明高屈折成分を併せて保持させた場合、上記半導体発光デバイス用部材の屈折率を発光素子や蛍光体の屈折率近傍にすることで、界面反射を低減し、より高い光取り出し効率を得ることができる。
【0046】
(適用例2):UV−LED
図2に示す適用例2としてのUV−LEDでは、バインダ用透明樹脂(A)の着色劣化しやすいチップ近傍において、粉末(B)が光の通路を作り輝度の低下を抑制する。蛍光体を使用しない場合は比較的高濃度に粉末(B)を添加し、粉末(B)の連鎖による光のパスをつくることも好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的
とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図したものではない。
【0048】
[I.分析方法]
後述する各実施例及び各比較例の半導体発光デバイス用部材について、以下の手順で分析を行うことができる。
【0049】
〔I−1.屈折率測定〕
天然石英粉末の屈折率(n=1.54)は水晶の、合成石英ガラス粉末の屈折率(n=1.46)は溶融石英の589nmにおける文献値(日本化学会編 化学便覧 基礎編II 固体の屈折率(丸善))を採用できる。
なお、実測する場合は例えば石英あるいは石英ガラスを数十μm程度の粉末状に粉砕し、予測される屈折率近傍の屈折率を有する屈折率標準液(屈折液)数点に分散し自然光下で観察した結果、浮遊する粉末が光散乱無く透明となり、目視で確認出来なくなる液の屈折率をもってバインダの屈折率とする方法(液浸法)にて屈折率を測定することができる。
また、バインダ液の屈折率は、通常屈折計により測定することができる。具体的には、Abbe屈折計(ナトリウムD線(589nm)使用)を用いることができる。
【0050】
〔I−2.硬化物の透過率の測定〕
実施例及び比較例の半導体発光デバイス用部材の、傷や凹凸による散乱の無い厚さ1mmの平滑な表面の単独硬化物膜を用いて、紫外分光光度計(島津製作所製 UV−3100)を使用し、波長300nm〜800nmにおいて透過率測定を行う。後述の耐熱試験、紫外耐光性試験後前後の400nmの透過率を測定し、試験前後の透過率を比較することにより、透過率維持率を測定することが出来る。
【0051】
〔I−3.耐熱試験〕
実施例及び比較例の半導体発光デバイス用部材について、テフロン(登録商標)シャーレを用いて作製した直径5cm、膜厚1.0mmのサンプルを、温度200℃の通風乾燥機中で一定時間保持し、試験前後の透過率を比較することにより透過率維持率を求め、石英あるいは石英ガラス粉末添加による耐熱性試験透過率改善結果を数値化することが出来る。
【0052】
〔I−4.紫外耐光性試験〕
実施例及び比較例の半導体発光デバイス用部材について、テフロン(登録商標)シャーレを用いて作製した直径5cm、膜厚約1.0mmのサンプルを用い、下記条件にて紫外光を照射し、照射前後の膜の様子を目視比較する。下記試験はスポット光照射であるが、紫外光照射部分のみを露出できる窓部を設けた黒色紙片を試験後サンプルに被せ変色部位の透過率を測定、試験前後の透過率を比較することにより、石英あるいは石英ガラス粉末添加による耐光性試験透過率改善結果を数値化することができる。
<試験条件>
硬化物サンプル試験片に250nm以上のUV光(強度:1900mW/cm(365nmの受光素子で測定))を15分間照射する。劣化しやすいサンプルの場合には適宜照射時間を短縮する。UV光は、松下電工マシンアンドビジョン社製 紫外線硬化装置アイキュアANUP5204からのUV光を4分割し、朝日分光社製の短波長カットフィルターにて250nm以下の光をカットしたものを用いて、サンプルとカットフィルターまでの距離は0.5mmに設定する。
【0053】
〔I−6.蛍光体沈降確認試験〕
実施例及び比較例の半導体発光デバイス用部材用組成物((A)+(B))10gにYAG蛍光体1gを混合し、シンキー社製攪拌脱泡装置「泡取り練太郎AR−100」を用いて混合モード(自転公転)にて2分間混合し、蛍光体分散液を得る。この液2gを分散後ただちに直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、恒温器(オーブン)中、微風下、各々の組成物所定の温度条件で加熱硬化して、厚さ約1mmの独立した蛍光体含有硬化物膜を得る。これをカッターナイフを用いて厚さ方向に切断し、切断面にブラックライトを照射して蛍光体の位置を顕微鏡観察することにより、蛍光体粒子の厚さ方向の分布を比較することができる。簡易的には切断し二片に切り分けた蛍光体入り硬化物膜の片方を裏返し、表面と裏面を隣り合わせて置き、ブラックライト照射下で目視比較することによっても蛍光体の厚さ方向の濃度差を比較することが出来る。石英粒子が蛍光体の沈降防止に寄与している場合、裏面に観測される蛍光体粒子の濃度は表面に観測される濃度より低くなる。
【0054】
[II.半導体発光デバイス用部材用組成物の製造]
[II−1]バインダ用透明樹脂(A)
本発明に用いるバインダ用透明樹脂(A)は半導体発光デバイス用部材に用いることの出来る公知の樹脂を使用することができる。一例として、下記のような樹脂が挙げられる。
(A−1)熱硬化性フェニル含有シリコーン樹脂(縮合硬化型)
(A−2)熱硬化性メチルシリコーン樹脂(付加硬化型)
(A−3)熱硬化性フェニル含有シリコーン樹脂(付加硬化型)
(A−4)熱硬化性有機変性シリコーン樹脂(付加硬化型)
(A−5)熱硬化性芳香族エポキシ樹脂(酸無水物硬化型)
(A−6)フェニル含有シリコーン樹脂(UV硬化型)
(A−7)熱硬化性メチルシリコーン樹脂(縮合硬化型)
【0055】
(A−1 実施例1のバインダ液)
Momentive Performance Materials社(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723)を70g、同社製両末端シラノールメチルフェニルシリコーンオイルYF3804を70g、フェニルトリメトキシシランを14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼と、分留管、ジムロートコンデンサ及びリービッヒコンデンサとを取り付けた三つ口フラスコ中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120度まで昇温し、120度全還流下で2時間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
続いてジムロートコンデンサをリービッヒコンデンサに切り替えて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに6時間重合反応を進めた。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、屈折率(n=1.48)、無溶剤の縮合硬化型フェニル含有シリコーンバインダ液(A−1)を得た。
上述のバインダの所定の硬化条件は150℃、3時間である。
【0056】
(A−2のバインダ液)
付加硬化型のメチルシリコーン樹脂としては、例えば信越化学工業株式会社製 LED封止材用シリコーン樹脂LPS2410(n=1.41)などを用いることが出来る。このバインダ液の所定の硬化条件は、150℃、1時間である。
【0057】
(A−3のバインダ液)
付加硬化型のフェニル含有シリコーン樹脂としては、例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 LED封止材用シリコーン樹脂IVS5332(n=1.53)などを用いることが出来る。このバインダ液の所定の硬化条件は、150℃、1時間である。
【0058】
(A−4のバインダ液)
付加硬化型の変性シリコーン樹脂としては、例えば信越化学工業株式会社製 LED封止材用シリコーン樹脂SCR1016(n=1.52)などを用いることが出来る。このバインダ液の所定の硬化条件は、150℃、1時間である。
【0059】
(A−5のバインダ液)
エポキシ樹脂としては、例えばジャパンエポキシレジン株式会社製の芳香族エポキシ樹脂を用いることが出来る。このバインダ液の所定の硬化条件は、150℃1時間である。
【0060】
(A−6のバインダ液)
UV硬化型のシリコーン樹脂としては、信越化学工業株式会社製KER−4000−UVを用いることが出来る。このバインダ液の硬化条件は、高圧水銀灯(80W/cm)、UV光からの距離10cm、総UVエネルギー:1500mJ/cmである。
【0061】
(A−7のバインダ液)
Momentive Performance Materials社(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を2630g、信越化学社製メチルトリメトキシシランを70.22g、及び、触媒として松本ファインケミカル社製ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末1.89gを、攪拌翼と、分留管、ジムロートコンデンサ及びリービッヒコンデンサとを取り付けた3L五つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒の粗大粒子が溶解するまで攪拌した。この後、反応液を100℃まで昇温して触媒を完全溶解し、100℃全還流下で30分間470rpmで攪拌しつつ初期加水分解を行った。
【0062】
続いて装置の接続を全還流から、留出液がリービッヒコンデンサ側に出るように接続し
直し、窒素をSV20で液中に吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成
分を窒素に随伴させて留去しつつ100℃、470rpmにて1時間攪拌した。窒素をS
V20で液中に吹き込みながらさらに130℃に昇温、保持しつつ5時間重合反応を継続
し、粘度120mPa・sの反応液を得た。なお、ここで「SV」とは「Space V
elocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV
20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをいう。
【0063】
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、1Lのナス型フラスコ
4個に反応液を分割移送し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、
1kPaで各65分間ずつ微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留
去し、目開き3.0μmのPTFEろ布にて加圧ろ過を実施して屈折率(n=1.41)、静粘度215cpのバインダ液(A−5)を得た。このバインダ液の所定の硬化条件は、150℃3時間である。
【0064】
[II―2] 粉末(B)
本発明に用いられる粉末(B)としては、
(B−1)天然石英粉末
(B−2)合成石英ガラス粉末
などが挙げられる。
【0065】
(B−1 天然石英粉末)
天然石英粉末としては、米国ユニミン社製IOTA−4(商標)などが挙げられる。必要に応じて公知の方法で粉砕、分級し必要な粒度を得ることが出来る。屈折率は1.54である。
【0066】
(B−2 合成石英ガラス粉末)
合成石英ガラス粉末としては、日本化成株式会社製 MKC(登録商標)シリカ などが挙げられる。必要に応じて公知の方法で粉砕、分級し必要な粒度を得ることが出来る。屈折率は1.46である。
【0067】
[II−3](A)(B)混合組成物の製造
上述の(A)及び(B)の混合組成物は、例えば(A)10重量部に(B)2重量部を混合し、シンキー社製攪拌脱泡装置「泡取り練太郎AR−100」を用いて混合モード(自転公転)にて2分間混合することにより得ることが出来る。この組成物を(A)成分の所定の硬化条件により硬化し、上述の耐熱性試験、耐光性試験、蛍光体沈降試験、UV硬化性試験に供することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、光や熱に対する着色や劣化が抑制され、かつ、透明で光吸収が少ない半導体発光デバイス部材用組成物が提供される。該組成物を硬化してなる硬化物は、蛍光体を用いる白色LED封止材の他、蛍光体を用いない紫外〜青(360〜460nm)LED用封止材、レンズ等光学部材、接着剤、銀電極表面の変色防止コーティング材等の用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダ用透明樹脂(A)と、石英及び/又は石英ガラスからなる粉末(B)とを含有することを特徴とする半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項2】
前記粉末(B)が、合成石英ガラス粉末である請求項1記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項3】
前記粉末(B)の平均粒径が3μm以上100μm以下である請求項1又は2に記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項4】
前記粉末(B)の屈折率(nD(B))が1.46以上1.54以下である請求項1から3のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項5】
前記バインダ用透明樹脂(A)の屈折率(nD(A))と前記粉末(B)の屈折率(nD(B))との差の絶対値が、0.05以下である請求項1から4のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項6】
前記粉末(B)の形状が破砕形状である請求項1から5のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項7】
前記粉末(B)に含まれるアルミニウム(Al)、チタン(Ti)及び鉄(Fe)の合計量が300重量ppm以下である請求項1から6のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項8】
前記バインダ用透明樹脂(A)100重量部当たりの前記粉末(B)の含有量が10〜400重量部である請求項1から7のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項9】
前記バインダ用透明樹脂(A)がシリコーン系樹脂である請求項1から8のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項10】
さらに蛍光体(C)を含有する請求項1から9のいずれかに記載の半導体発光デバイス部材用組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の組成物を硬化してなる封止材。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の組成物を成形・硬化してなる半導体発光デバイス用部材。
【請求項13】
請求項11に記載の封止材で封止されてなる半導体発光デバイス用部材。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の半導体発光デバイス用部材を含む半導体発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−109461(P2012−109461A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258153(P2010−258153)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】