半導体発光素子およびその製造方法
【課題】 半導体発光素子の信頼性を低下させることなく、光取り出し効率を向上させることができ、大掛かりな装置を必要とせずに低コストで作製することができる半導体発光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 発光素子本体20からの光は、針状結晶配列体21に入射し、針状結晶配列体21を透過して、外部に放射される。針状結晶配列体21は、液相法によって結晶成長させて形成される。発光素子本体20のうち光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さく形成され、針状結晶体22は、光取り出し面に垂直な方向に配向して形成される。複数の針状結晶体22は、回折格子として機能し、臨界角度以上の角度で前記針状結晶配列体21と、針状結晶配列体21から光が放射される側の媒体との界面に入射する光の、+1次または−1次の回折光を出射することができる。
【解決手段】 発光素子本体20からの光は、針状結晶配列体21に入射し、針状結晶配列体21を透過して、外部に放射される。針状結晶配列体21は、液相法によって結晶成長させて形成される。発光素子本体20のうち光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さく形成され、針状結晶体22は、光取り出し面に垂直な方向に配向して形成される。複数の針状結晶体22は、回折格子として機能し、臨界角度以上の角度で前記針状結晶配列体21と、針状結晶配列体21から光が放射される側の媒体との界面に入射する光の、+1次または−1次の回折光を出射することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(Light Emitting Diode:略称LED)、レーザダイオード(Laser Diode:略称LD)およびエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:略称EL)などの面発光型の半導体発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型の半導体発光素子の高出力化を図るために、内部量子効率、あるいは外部量子効率を向上させる努力が行われている。半導体発光素子は、発光ダイオード、レーザダイオードおよびエレクトロルミネッセンスなどによって実現される。内部量子効率は、主にダブルへテロ構造および多重量子井戸(Multiple Quantum Well:略称MQW)構造などの、半導体発光素子の構造によって向上させることができる。外部量子効率は、半導体発光素子の最外層と空気との屈折率差によって、前記最外層と空気との界面に、この界面に垂直な法線に関して斜め方向から入射する光が、前記界面で全反射して光取り出し効率が低下するのを抑制することによって向上させることができる。たとえば前記最外層の屈折率n1=3.5としたとき、空気の屈折率n2=1であり、臨界角が約16°となる。
【0003】
外部量子効率を向上させるために、従来の技術では、半導体発光素子の表面に凹凸を形成することによって、凹凸の基端面に斜めから入射する光が前記基端面に関して臨界角度以下であっても、凹凸面には臨界角度以上の角度となる斜め方向からの入射光とさせている。
【0004】
第1の従来の技術では前記凹凸は、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術によって規則的に形成され、光取り出し面となる半導体層の表面での全反射を抑止して、光取り出し効率を高めている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
また第2の従来の技術では前記凹凸は、光取り出し面となる表面を持つ半導体層に、ポーラス、つまり様々な形状を持つ多数の微細孔(空隙)を、ウェットエッチングによって不規則に形成することによって形成され、活性層から発せられた光が、光取り出し面となる半導体層の表面で全反射することを抑止して、光取り出し効率を向上させている(たとえば特許文献2参照)。
【0006】
また第3の従来の技術では前記凹凸は、光を外部に取り出すための光取り出し面上にブロックコポリマーと呼ばれるマスク材を形成し、ドライエッチングを行うことによって、半導体発光素子の電流拡散層または透明膜上に形成される(たとえば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−196152号公報
【特許文献2】特開2005−244201号公報
【特許文献3】特開2003−218383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1および第3の従来の技術では、ドライエッチングを用いて凹凸を形成することによって、半導体発光素子あるいは透明膜にダメージを与えるおそれがあり、半導体発光素子の信頼性が低下してしまう。またエッチングに大掛かりな真空装置が必要となるという問題がある。
【0009】
第2の従来の技術では、AlGaAs系の半導体発光素子の場合、光吸収しないAlGaAs層が凹凸層と電流拡散層とを兼ねるようにすると、AlGaAs層はAlを含むために酸化して劣化し、酸化の問題がないGaAs層が凹凸層と電流拡散層とを兼ねるようにすると、GaAs層は光吸収を行うので、いずれにしても凹凸層の形成に適切な材料がないという問題がある。また多孔質化領域における半導体層の表面が大気に直接曝されることがないように、保護膜を形成するか、あるいは半導体層の表面が酸化されていることが望ましいとされるが、このような保護膜または酸化膜の形成は難しく、また多孔質化領域に信頼性を確保したオーミック電極を形成するのは難しい。また基板側から光を取り出す方式(Junction Down タイプ)のLEDでは、サファイア基板に、多孔質化領域を設けることは困難である。
【0010】
したがって本発明の目的は、半導体発光素子の信頼性を低下させることなく、光取り出し効率を向上させることができ、大掛かりな装置を必要とせずに低コストで作製することができる半導体発光素子およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体発光素子は、面発光型の半導体発光素子本体と、
前記半導体発光素子本体の、光を取り出すための光取り出し面上に設けられ、前記光取り出し面に垂直な方向に配向する複数の針状結晶体が配列されて形成される針状結晶配列体とを含み、
前記針状結晶配列体は、
前記針状結晶体のアスペクト比が3以上100以下に選ばれ、
複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、109本/cm2以上1012本/cm2以下に選ばれ、
前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過し、
前記半導体発光素子本体のうち前記光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さく選ばれることを特徴とする。
【0012】
また本発明の半導体発光素子は、前記半導体発光素子本体が、
基板と、
前記基板の厚み方向の一表面上に、前記厚み方向に積層される複数の半導体層を含んで形成される積層体とを有し、
前記光取り出し面は、前記半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体が、導電性を有し、前記厚み方向において前記基板から最も離反する前記半導体層に接触して設けられることを特徴とする。
【0014】
また本発明の半導体発光素子は、前記光取り出し面が、前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体発光素子本体の端面を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明の半導体発光素子は、前記半導体発光素子本体が、
前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体層の端面上に設けられ、前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過する電気絶縁膜を含んで構成され、
前記光取り出し面が、
前記電気絶縁膜の前記半導体層とは反対側の表面を含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって形成され、発光スペクトルのピーク波長が、500nm以上850nm未満であることを特徴とする。
【0017】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体の光吸収端が200nm以上350nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって構成され、発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満であることを特徴とする。
【0018】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体が、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物から成ることを特徴とする。
【0019】
また本発明の半導体発光素子は、前記発光素子本体のうち、前記針状結晶配列体と接する表面部が、
ZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質から成る金属膜、
またはZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質を、濃度が1019cm−3以上となるように含む半導体膜のうち少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明の半導体発光素子の製造方法は、半導体発光素子本体の表面を覆ってレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜のうち、予め定める部分を除去して前記表面の一部を露出させ、
前記レジスト膜およびレジスト膜から露出する前記表面の前記一部に微小粒子を付着させ、
予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中で、前記微小粒子を成長核として針状結晶を成長させ、
成長した針状結晶のうち、前記表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜とともに除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、針状結晶配列体は、半導体発光素子本体の光を取り出すための光取り出し面上に設けられる。針状結晶配列体は、前記光取り出し面上に、針状結晶体を結晶成長させることによって形成される。従来の技術のようにドライエッチングを用いて凹凸を形成する場合では、ドライエッチングによって半導体発光素子本体にダメージを与えてしまうおそれがあるが、本発明では、針状結晶体は結晶成長によって形成されるので、半導体発光素子あるいは光取り出し面上に形成されている透明膜などに与えるダメージを軽減することができる。針状結晶配列体は、たとえば液相法によって形成することができるので、ドライエッチングのような大掛かりな真空装置が不必要となり、低コストで半導体発光素子を製造することができる。
【0022】
また半導体発光素子本体の一部をエッチングするのではなく、半導体発光素子本体に針状結晶配列体を設けるので、半導体発光素子本体の表面に電極が設けられていても、この電極を覆って針状結晶配列体を設けることができるので、設計の自由度が向上する。
【0023】
半導体発光素子本体からの光は、針状結晶配列体に入射し、針状結晶配列体を透過して、外部に放射される。針状結晶配列体は、半導体発光素子本体のうち光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さいので、半導体発光素子本体からの到来する光が、半導体発光素子本体と針状結晶配列体との界面で反射してしまうことを抑制することができる。また針状結晶体は、光取り出し面に垂直な方向に配向し、すなわち光取り出し面に垂直な方向に延びて形成されるので、針状結晶配列体と、針状結晶配列体から光が放射される側の媒体との界面における反射を抑制できる。その結果、針状結晶配列体に半導体発光素子本体から入射する光のうち取り出しが可能な光が入射する角度である有効立体角度を大きくすることができ、これによって光の取り出し効率を向上させることができる。また複数の針状結晶体は、回折格子として機能し、臨界角度以上の角度で前記針状結晶配列体と、針状結晶配列体から光が放射される側の媒体との界面に入射する光の、+1次または−1次の回折光を出射することができるので、光取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0024】
針状結晶体のアスペクト比が3未満であると、針状結晶配列体が回折格子として十分に機能しない。また針状結晶体のアスペクト比が100を超えると、発光素子をピックアップする際に折れやすくなるという問題がある。なお、折れを防ぐため樹脂などの保護膜で針状結晶体を覆ってもよいが、アスペクト比が大きすぎると保護膜の種類によっては収縮により針状結晶体が折れやすくなるという問題がある。針状結晶配列体を回折格子として十分に機能させ、十分な強度の針状結晶体を得るためには、針状結晶体のアスペクト比を5以上10以下にすることが望ましい。
【0025】
複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、109本/cm2未満であると、針状結晶配列体に入射する光が、針状結晶体によって回折しないので、光取り出し効率を十分に向上させることができない。また複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、1012本/cm2を超えると、回折光として取り出せる光の針状結晶体への入射角度が小さくなり、光取り出し効率を十分に向上させることができない。したがって、複数の針状結晶体の、前記厚み方向に垂直な面における単位面積あたりの数を、109本/cm2以上1012本/cm2以下にすることによって、針状結晶配列体に入射する光を、針状結晶体によって回折させ、かつ回折光として取り出せる光の針状結晶体への入射角度を大きくして、光の取り出し効率を大きく向上させることができる。
【0026】
また本発明によれば、基板と基板に積層される複数の半導体層を含んで構成される積層体層を含んで構成される積層体を有する半導体発光素子本体では、半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面から出射する光の割合が大きいので、半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面のうちの少なくともいずれか一方を光取り出し面として針状結晶配列体を形成することによって、光取り出し効率をより向上させることができる。
【0027】
また本発明によれば、針状結晶配列体は、導電性を有し、厚み方向において基板から最も離反した半導体層に接触して設けられるので、前記半導体層に電流を効果的に拡散することができる。これによって半導体発光素子全体に電流が拡散し、発光強度を向上させることができる。
【0028】
また本発明によれば、前記厚み方向に垂直な方向における半導体発光素子本体の端面上にも針状結晶配列体が形成される。半導体発光素子の10%〜30%の光は、前記厚み方向に垂直な方向における半導体発光素子本体の端面から放射されるので、この光を外部に効率的に取り出すことができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0029】
また本発明によれば、針状結晶配列体は、導電性を有し、厚み方向において基板から最も離反する半導体層に接触して設けられる場合には、前記半導体層の前記厚み方向に垂直な方向における端面上に電気絶縁膜を設け、この電気絶縁膜上(半導体層とは反対側の表面)にも針状結晶配列体を形成するとよい。この場合、導電性の針状結晶配列体と半導体層との間に電気絶縁膜が設けられるので、針状結晶配列体によって複数の半導体層が短絡してしまうことが防止され、また、前記厚み方向に垂直な方向における半導体発光素子本体の端面から放射される光を外部に効率的に取り出すことができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0030】
また本発明によれば、発光素子本体の前記各半導体層は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長が500nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体によって形成され、これに対して針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nm未満であるので、前記半導体発光素子の光の波長に対して針状結晶配列体が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。前記III−V族化合物半導体は、たとえばAlGaAs系の半導体およびInGaAlP系の半導体などによって実現される。
【0031】
また本発明によれば、発光素子本体の前記各半導体層は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体またはII−VI族化合物半導体によって形成され、これに対して針状結晶配列体の光吸収端が200nm以上350nm未満であるので、前記半導体発光素子の光の波長に対して針状結晶配列体が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。前記III−V族化合物半導体は、たとえばGaN系の半導体によって実現され、II−VI族化合物半導体は、たとえばZnSe系の半導体およびZnTe系の半導体によって実現される。
【0032】
また本発明によれば、針状結晶配列体の材料を、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物によって形成すると、この酸化物に含まれるZn、MgおよびCaに応じて、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上500nm未満の範囲の所定の波長にすることができる。たとえばZnOを用いると、針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nmとすることができ、たとえばMgZnOまたはCaZnOを用いると、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上350nm未満とすることができる。
【0033】
また本発明によれば、針状結晶配列体と接する表面部が、ZnおよびMgから成る少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質から成る金属膜、またはZnおよびMgおよび少なくとも1種以上であり、かつ針状結晶配列体に含まれる物質と同じ物質を、その濃度が1019cm−3以上となるように含んでいるので、針状結晶配列体とこの針状結晶配列体に接触する表面部とのオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0034】
また本発明によれば、半導体発光素子本体の表面を覆ってレジスト膜を形成して、前記レジスト膜のうち、予め定める部分を除去して前記表面の一部を露出させ、前記レジスト膜およびレジスト膜から露出する前記表面の前記一部に微小粒子を付着させ、予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中で、前記微小粒子を成長核として針状結晶を成長させ、成長した針状結晶のうち、前記表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜とともに除去することによって、半導体発光素子本体の光を取り出すための光取り出し面上に、光取り出し面に垂直な方向に配向する複数の針状結晶体が配列されて形成される針状結晶配列体を形成することができる。
【0035】
従来の技術のようにドライエッチングを用いて凹凸を形成する場合では、ドライエッチングによって半導体発光素子本体にダメージを与えてしまうおそれがあるが、本発明では、針状結晶配列体が結晶成長によって形成されるので、半導体発光素子本体にダメージを与えるおそれを軽減させて、針状結晶配列体を形成することができ、半導体発光素子本体の信頼性を低下させることなく、光取り出し効率を向上させることができる。針状結晶配列体は、たとえば液相法によって形成することができ、作製工程にドライエッチングを必要としない。したがって、大掛かりな真空装置が不必要となるので、前記半導体発光素子を低コストで作製することができる。
【0036】
また針状結晶配列体は、エッチングによって形成するのではなく、結晶成長させて形成されるので、半導体発光素子本体が表面部に電極を有していても、電極に関係なく針状結晶配列体を形成することができるので、光の取り出し効率を向上させることができる。半導体発光素子本体の表面で、針状結晶配列体を形成する領域の制限がなく、またレジスト膜から露出した表面部分にだけ針状結晶配列体を形成することができるので、設計の自由度を向上させることができ、たとえば、照明用の半導体発光素子では、半導体発光素子本体の複数の方向の表面に針状結晶配列体を形成し、プリンタ向けの半導体発光素子では、1方向の表面に針状結晶配列体を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、本発明の実施の一形態の半導体発光素子1(以下、発光素子1ともいう)を示す断面図であり、図2の切断面線I−Iから見て示す。図2は、半導体発光素子1の平面図であり、半導体発光素子1の光の出射方向の下流側から見て示す。図2において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。以下、半導体発光素子を、発光素子という。発光素子1は、面発光型の発光素子であり、本発明の実施の形態では、発光ダイオードによって実現される。
【0038】
発光素子1は、基板2と、基板2の厚み方向の一表面2aに積層される複数の半導体層3を含む積層体4と、基板2の厚み方向の他表面2b上に形成される第1電極5と、針状結晶配列体21と含んで構成される。基板2と、積層体4と、第1電極5とを含んで発光素子本体20が形成される。
【0039】
基板2は、p型およびn型のうちの一方の導電型で、かつ単結晶の半導体によって形成される。本発明の実施の形態では、基板2は、n型のガリウム砒素(GaAs)によって形成される。第1電極5は、前記基板2の他表面2bの全面にわたって形成される。第1電極5は、Cr(クロム)とAu(金)との積層膜によって形成される。
【0040】
積層体4は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8および第2電極9を含んで構成される。基板2の一表面2a上にバッファ層6が積層され、バッファ層6に発光層7が積層され、発光層7に第2電極9が積層される。バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8から成る半導体積層体は、略直方体形状に形成される。
【0041】
バッファ層6は、基板2と同じ導電型の半導体によって形成され、たとえばn型のガリウム砒素(GaAs)またはn型のガリウム窒素(GaN)によって形成される。バッファ層6の厚さは、0.1〜0.3μmに選ばれる。以後、半導体の導電型を示すとき、n型を「n−」と記載し、p型を「p−」と記載する場合がある。
【0042】
発光層7は、バッファ層6がn−GaAsによって形成される場合、p−AlGaAsあるいはp−InGaAlAsによって構成され、バッファ層6がGaNによって形成される場合p−InGaNによって構成される。発光層7の厚さは、0.5μm〜1.0μmに選ばれる。
【0043】
コンタクト層8は、基板2と異なる他方の導電型の半導体によって形成され、本実施の形態ではp型の半導体によって形成される。コンタクト層8は、たとえば発光層7がp−AlGaAsあるいはp−InGaAlAsによって形成される場合、p−GaAsによって形成され、発光層7がp−InGaNによって形成される場合、p−GaNによって形成される。コンタクト層8の厚さは、0.01μm〜0.05μmに選ばれる。
【0044】
コンタクト層8は、後述する針状結晶配列体21に含まれる物質と同じ物質を、その濃度(不純物濃度)が1019cm−3以上となるように含んで構成される。本実施の形態では、コンタクト層8は不純物として亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)および炭素(C)を含む。これによって、針状結晶配列体21とこの針状結晶に接触するコンタクト層8とのオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0045】
コンタクト層8の前記厚み方向の一表面8aに第2電極9が積層して形成される。第2電極9は、放射状に形成され、前記一表面8aの中央部に設けられるボンディングワイヤ接続部11と、ボンディングワイヤ接続部11から放射状に延びる放射状延在部12とを含んで構成される。放射状延在部12は、矩形状となる前記一表面8aの各角部13に向かって延びる。放射状延在部12の角部13に臨む端部14は、前記角部13から離間する。第2電極9は、Cr(クロム)とAu(金)との積層膜によって形成され、厚さは、発光素子本体20が発する波長の光に対する表皮厚さよりも小さくなるように形成され、たとえば0.3μm〜0.5μmに選ばれる。また電極9の放射状延在部12の幅は、2μm程に選ばれる。
【0046】
第2電極9を放射状に形成することによって、各半導体層3の全領域にわたって電流が拡散しやすくなり、発光強度を向上せることができる。
【0047】
針状結晶配列体21は、前記積層体4の厚み方向の一表面4a上に設けられ、第2電極9のボンディングワイヤ接続部11および周縁部15を除く部分に積層して設けられる。前記積層体4の前記厚み方向の一表面4aは、主たる発光面である。また前記積層体4の前記厚み方向の一表面4aは、光取り出し面であり、第2電極9の前記厚み方向の一表面9aと、コンタクト層8の前記厚み方向の一表面8aとが含まれる。発光素子1は、ウエハに各半導体層3を形成するための半導体膜、各電極5,9を形成するための金属膜および針状結晶配列体21を積層した後、ダイシングを行ってチップに分割して形成される。ダイシングライン上に針状結晶配列体21が形成されると、ダイシング中に針状結晶配列体21にダメージが与えられ、はがれが生じてしまうので、針状結晶配列体21は、ダイシングラインである積層体4の厚み方向の一表面4aの周縁辺から内側に退避し、周縁部15を除いて形成される。
【0048】
針状結晶配列体21は、積層体4の厚み方向の一表面4aに垂直な方向に配向する複数の針状結晶体22が配列されて形成される。コンタクト層8の厚み方向の一表面8a上には第2電極9が形成されるので、コンタクト層8の厚み方向の一表面8aと第2電極9の厚み方向の一表面9aとの間には段差が形成されるが、第2電極9の厚さは薄いので、コンタクト層8の厚み方向の一表面8aと第2電極9の厚み方向の一表面9aとが仮想一平面に含まれるものとする。針状結晶配列体21は、結晶基部23と、結晶基部23から突出する複数の針状結晶体22とを含んで形成される。
【0049】
針状結晶配列体21は、酸化物、たとえば酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)、酸化カルシウム亜鉛(CaZnO)または酸化チタン(TiO)によって形成される。
【0050】
発光素子本体20の各半導体層3を、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長が500nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体によって形成される場合、針状結晶配列体21は、光吸収端が300nm以上500nm未満となるように形成される。針状結晶配列体21の光吸収端を300nm以上500nm未満にするには、針状結晶配列体21をZnOによって形成すればよい。発光層7を、AlGaAsまたはInGaAsPを用いて形成すると、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長は500nm以上850nm未満になる。このように各半導体層3および針状結晶配列体21を形成すると、発光素子本体20の光の波長に対して針状結晶配列体21が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0051】
また発光素子本体20の各半導体層3を、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体によって形成される場合、針状結晶配列体21は、光吸収端が200nm以上350nm未満となるように形成される。針状結晶配列体21の光吸収端を200nm以上350nm未満とするには、針状結晶配列体21をMgZnOまたはCaZnOによって形成すればよい。発光層7をGaNによって形成すると、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長は350nm以上850nm未満になる。このように各半導体層3および針状結晶配列体21を形成すると、発光素子本体20の光の波長に対して針状結晶配列体21が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0052】
針状結晶配列体21の材料を、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物によって形成すると、この酸化物に含まれるZn、MgおよびCaに応じて、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上500nm未満の範囲の所定の波長にすることができる。たとえばZnOを用いると、前述したように針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nmとすることができ、たとえばMgZnOまたはCaZnOを用いると、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上350nm未満とすることができる。
【0053】
針状結晶配列体21は、発光素子本体20が発する波長の光を透過するように形成される。針状結晶配列体21が透過する光は、発光素子本体20が発する波長帯域で、80%〜90%程度である。これによって針状結晶配列体21が、発光素子本体20からの光を吸収したり、散乱したりすることが抑制される。
【0054】
また針状結晶配列体21は、発光素子本体20のうち光取り出し面が形成される部分、すなわちコンタクト層8および第2電極9よりも屈折率が小さく選ばれる。また針状結晶配列体21は、光を放射する側の媒質の屈折率よりも屈折率が大きく選ばれる。光を放射する側の媒質は、本発明の実施の形態では、空気である。針状結晶配列体21の屈折率は、空気の屈折率よりも小さく選ばれる。
【0055】
結晶基部23の前記光取り出し面に垂直な方向の厚さ(本実施の形態では前記厚み方向の厚さ)T1は、針状結晶配列体21の前記光取り出し面に垂直な方向の厚さT2の30%〜50%を占める。針状結晶体22の先端部は、結晶基部23から離反するにつれて、先細状となっている。前記厚さT2は、針状結晶配列体21の平均の厚さである。
【0056】
各針状結晶体22のアスペクト比は、3以上100以下に選ばれ、好ましくは5以上10以下に選ばれる。針状結晶体22のアスペクト比は、前記一表面4aに垂直な方向の針状結晶体22の平均の長さをL1とし、針状結晶体22の平均の外径をL2としたとき、L1をL2で除算して求められる。針状結晶体22の平均の長さL1は、所定の数の針状結晶体22の長さの相加平均である。針状結晶体22の平均の外径L2は、各針状結晶体22における長さ方向に垂直な方向における外径の平均値の相加平均である。針状結晶体22の外径は、針状結晶体22において長さ方向に予め定める間隔で測定された、長さ方向に垂直な方向における外径の平均値を、所定の数の針状結晶体22について求めて、相加平均した値である。針状結晶体の長さL1および外径L2は、SEM(Scanning
Electron Microscope)による針状結晶体22の断面像を観察して、実測して求める。針状結晶配列体21は、液相法によって結晶成長させるので、針状結晶体22は、縦方向、すなわちこの針状結晶体22が形成される面に垂直に配向し、結晶方向を揃えて成長する。これによって1次回折光または−1次回折光として取り出すことができる有効立体角度が大きくなるので、光の取り出し効率が向上する。たとえば前記厚さT2は、1μm程度に選ばれ、前記長さL1は、700nm程度に選ばれ、長さL2は、200nm程度に選ばれる。
【0057】
針状結晶体22のアスペクト比が3未満であると、針状結晶配列体21が回折格子としての十分に機能しない。また針状結晶体22のアスペクト比が100を超えると、発光素子をピックアップする際に折れやすくなるという問題がある。したがって針状結晶体22のアスペクト比を、3以上100未満とし、好ましくは5以上10以下にすることによって、針状結晶配列体21を回折格子として十分に機能させることができるとともに、十分な強度の針状結晶を得ることができる。
【0058】
また複数の針状結晶体22の単位面積あたりの数が、109本/cm2以上1012本/cm2以下に選ばれ、好ましくは109本/cm2以上1010本/cm2以下に選ばれ、さらに好ましくは3×109本程度に選ばれる。複数の針状結晶体22の単位面積あたりの数が、109本/cm2未満であると、針状結晶配列体21に入射する光が回折しないので、光取り出し効率を十分に向上させることができない。また複数の針状結晶体22の単位面積あたりの数が1012本/cm2を超えると、回折光として取り出せる光の針状結晶体22への入射角度が小さくなり、光取り出し効率を十分に向上させることができない。したがって、複数の針状結晶体22の、前記厚み方向に垂直な仮想一平面における単位面積あたりの数を109本/cm2以上1012本/cm2以下とすることによって、針状結晶配列体21に入射する光を、針状結晶体22によって回折させて、かつ針状結晶配列体21に入射する光の針状結晶体22による回折角度を大きくして、光の取り出し効率を大きく向上させることができる。
【0059】
たとえば発光層7をGaAs系の半導体によって形成した場合では、針状結晶体22の間隔L3を、200nm〜300nmピッチとすると、−1次または+1次の回折光の影響によって、光の取り出し効率が上昇し、針状結晶配列体21を設けない場合と比較して、光取り出し効率を約1.5倍とすることができる。
【0060】
針状結晶配列体21は、導電性を有するものを選択するとよい。針状結晶配列体21の抵抗率は、2×10−4Ω・cm〜7×10−4Ω・cmに選ばれる。針状結晶配列体21が導電性を有するので、ボンディングワイヤ接続部11に供給される電流を、発光素子全体に拡散させることができ、発光強度を向上させることができる。
【0061】
針状結晶配列体21は、後述するように液相法によって結晶成長させて形成されるようにするとよい。これによってエッチングによる発光素子本体20へのダメージを軽減させ、信頼性を低下することなく、針状結晶配列体21を形成して、光取り出し効率を向上させることができる。
【0062】
また、針状結晶配列体21を液相法によって結晶成長する場合、針状結晶配列体21の積層体4側の端部は、連続体(結晶基部23)となり、光取り出し面を覆う。すなわち、コンタクト層8よりも屈折率の小さな結晶基部23が光取り出し面を覆うことになり、光取り出し面と、結晶基部23との界面における反射を抑制することができ、光取り出し効率を向上させることができる。また結晶基部23は、保護膜の役割を果たし、経時変化によるコンタクト層8および第2電極9の酸化などによる劣化を防ぎ、発光素子1の信頼性を向上させることができる。
【0063】
図3は、発光素子1の作製手順を示すフローチャートである。図4は、作製工程における発光素子1の断面図である。図4(1)は、半導体層31,32,33が積層されたウエハ30の断面図であり、図4(2)はバッファ層6、発光層7およびコンタクト層8が形成されたウエハ30の断面図であり、図4(3)は第1および第2電極5,9を形成した後のウエハ30の断面図であり、図4(4)はレジスト膜34が形成されたウエハ30の断面図であり、図4(5)はレジスト膜34が除去されたウエハ30の断面図である。
【0064】
作製手順をスタートすると、ステップs0からステップs1に移る。ステップs1では、図4(1)に示すように、基板2の前駆体であるウエハ30の厚み方向の一表面30a上に、有機金属気相成長(MOCVD)法によって、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の前駆体である半導体層31,32,33を順番にエピタキシャル成長させて積層した後、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて図4(2)に示すように各半導体層31,32,33の一部を除去することによって、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8を形成する。
【0065】
次にステップs2では、第2電極9の前駆体となる金属層を、前記バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の積層体を覆うようにスパッタリングによって形成し、フォトリソグラフィまたはエッチングによって金属層の一部を除去して図4(3)に示すように第2電極9を形成する。またウエハ30の前記積層体が形成される面とは反対側の面上に、第1電極5となる金属層をスパッタリングによって形成し、フォトリソグラフィまたはエッチングを用いて、この金属層の一部を除去して図4(3)に示すように第1電極5を形成する。
【0066】
次にステップs3では、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8ならびに第2電極9の積層体4、ならびに基板2を覆って、スピンコートによって感光性レジストを塗布してレジスト膜34を形成する。
【0067】
次にステップs4では図4(4)に示すように、ステップs3で形成したレジスト膜34の所定の位置に孔35を形成する。感光性レジストがポジ型であれば、レジスト膜34のうち、積層体4の周縁部およびボンディングワイヤ接続部11に積層される部分を除いて、積層体4に積層される部分を露光した後、エッチングによって露光した部分を除去して孔35を形成する。また感光性レジストがネガ型であれば、ポジ型で露光しない部分を露光して、露光しなかった部分をエッチングによって除去して孔35を形成する。エッチングには、ウェットエッチングを用いる。
【0068】
次にステップs5では、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に微小粒子を付着させる。レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に、コロイド溶液を塗布することによって微小粒子を付着させる。
【0069】
コロイド溶液は、0.03mol/LのNaOHメタノール水溶液(以下、第1水溶液という)と、0.01mol/Lの酢酸亜鉛(Zn(CH3COO)2・2H2O)のメタノール水溶液(以下、第2水溶液という)とを、第1水溶液を65mlとし第2水溶液を125mlとして攪拌しながら室温(28℃程度)で混合し、60℃で2時間加熱することによって作製される。このように形成されたコロイド溶液は、粒径が10nm以下の酸化亜鉛のコロイド粒子を含む。コロイド溶液を作製する時に、酢酸亜鉛(Zn(CH3COO)2・2H2O)がメタノール溶液に溶けにくければ、40℃程度に加熱するとよい。
【0070】
ステップs5では、前記コロイド溶液を、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に、スピンコートによって塗布した後、予め定める温度(約130℃)で焼結を行う。これによってコロイド粒子をレジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に付着させることができる。その後、純水によってレジスト膜34が形成されたウエハ30を洗浄する。洗浄することによって、密着強度の弱いコロイド粒子は洗い流されるので、スピンコートおよび焼結ならびに洗浄を数回繰り返して、微小粒子から成るシード層を、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に積層して作製する。
【0071】
次にステップs6では、予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中に、前記微小粒子を付着させたウエハ30を浸漬して、前記シード層に含まれる微小粒子を成長核として針状結晶を成長させる。予め定める物質を含むアルカリ性の溶液は、まず0.02Mの硫酸亜鉛水溶液(ZnSO4・7H2O)と、フッ化アンモニウム(NH4F)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硝酸アンモニウムNH4NO3、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)の少なくとも一種類のアンモニウム塩とを混合して、NH4+とZn2+とのモル比がNH4+:Zn2+=X:1であり、かつX=20〜50となる水溶液を作製した後、この水溶液に、NaOH水溶液を加えて、pH9〜pH13のアルカリ性溶液とすることによって作製される。
【0072】
ステップs6では、シード層が形成されたウエハ30を、前述したNH4+とZn2+を含むアルカリ性の水溶液中に設置し、水溶液の温度を60℃に保持して、1日〜10日放置する。ステップs6によって、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に、針状結晶が成長する。その後、針状結晶が形成されたウエハ30を水溶液から取り出し、純水によって洗浄した後、室温にて乾燥させる。
【0073】
次にステップs7では図4(5)に示すように、ステップs6で成長した針状結晶のうち、レジスト膜34から露出する積層体4の表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜34とともに剥離液によって除去することによって、積層体4に針状結晶配列体21を形成する。
【0074】
次にステップs8ではウエハ30を切断して、発光素子1を作製した後、ステップs9に移り作製手順を終了する。
【0075】
従来の技術のようにドライエッチングを用いて発光素子の表面に凹凸を形成する場合では、ドライエッチングによって発光素子にダメージを与えてしまうおそれがあるが、本発明の製造方法によれば、針状結晶配列体21が結晶成長によって形成されるので、発光素子本体20に与えるダメージを軽減し、針状結晶配列体21を形成することができる。その結果、発光素子1の信頼性を低下させることなく、光取り出し効率を向上させることができる。針状結晶配列体21は、前述したように液相法によって形成することができ、作製工程にドライエッチングを必要としない。したがって大掛かりな真空装置が不必要となるので、発光素子1を低コストで作製することができる。
【0076】
また針状結晶配列体21は、発光素子本体20が表面部に第2電極9を有していても、針状結晶配列体21を形成することができるので、光の取り出し効率を向上させることができる。このように、発光素子本体20の表面で、針状結晶配列体21を形成する領域の制限がなく、またレジスト膜34から露出した表面部分に針状結晶配列体21を形成することができるので、設計の自由度を向上させることができる。
【0077】
発光素子1では、針状結晶体22が光取り出し面に垂直な方向に配向し、すなわち光取り出し面に垂直な方向に延びて形成されるので、針状結晶配列体21と、針状結晶配列体21から光が放射される側の媒体との界面における反射を抑制可能である。その結果、針状結晶配列体21に発光素子本体から入射する光のうち取り出しが可能な光が入射する角度である有効立体角度を大きくすることができ、これによって光の取り出し効率を向上させることができる。また複数の針状結晶体22は、回折格子としても機能し、臨界角度以上の角度で前記針状結晶配列体21と、針状結晶配列体21から光が放射される側の媒体との界面に入射する光の、+1次または−1次の回折光を出射することができるので、光取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0078】
発光素子1では、III−V族化合物半導体によって各半導体層3が形成されるが、各半導体層3は、II−VI族化合物半導体によって形成されてもよい。各半導体層3をII−VI族化合物半導体によって形成する場合、たとえば、基板2をn−ZnSeやn−GaAsによって形成し、バッファ6層をn−ZnSeによって形成し、発光層7をZnSe(ZnSeCd)またはZnTeによって形成し、コンタクト層8をZnSe−ZnTe超格子などによって形成し、針状結晶配列体21を、MgZnOまたはCaZnOによって形成すればよい。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
【0079】
図5は、本発明の実施の他の形態の発光素子41の平面図であり、発光素子41の光の出射方向の下流側から見て示す。図5において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子41と、前述した実施の形態の発光素子1とは、第2電極の形状が異なるのみであって、他の構成は同様であるので、同様の構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。本発明の形態では、第2電極42が、厚み方向から見て矩形状に形成され、コンタクト層8の一表面8aの中央部に形成される。第2電極42は、その周縁部を除いて、針状結晶配列体21から露出する。このような構成であっても、前述した実施の形態と同様の効果を達成することができる。また第2電極42が前記コンタクト層8の一表面8aの中央部に設けられるので、第2電極42によって発光層7からの光が妨げられにくくなり、光の取り出し効率をより向上させることができる。
【0080】
図6は、本発明の他の実施の形態の発光素子51の断面図である。図7は、発光素子51の平面図であり、発光素子51の光の出射方向の下流側から見て示す。図7において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子51と、前述した発光素子1とは同様な構成を有するので、同様の構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0081】
本発明の実施の形態では、基板2の厚み方向の一表面2aの周縁部を除いて、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8が積層される。コンタクト層8の厚み方向の一表面8aの周縁部と、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の前記厚み方向に垂直なそれぞれの端面とには、保護膜である電気絶縁膜54が設けられる。電気絶縁膜54は、透光性を有し、発光層7からの光を透過する。電気絶縁膜54は、SiO2によって形成される。
【0082】
第2電極53は、コンタクト層8の一表面8aの中央部から、所定の方向に延びて前記電気絶縁膜54に積層されて、基板2の一表面2aにも積層されて設けられる。第2電極53のうち、基板2に積層される部分がボンディングワイヤ接続部55となる。第2電極53は、第2電極9と同じ材料によって形成され、第2電極9の厚さと等しい厚さを有する。コンタクト層8の一表面8a上に積層される部分53aは、直方体形状に形成される。
【0083】
針状結晶配列体21は、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8、ならびに第2電極53および電気絶縁膜54の積層体56の、前記厚み方向の一表面56aのうち、周縁部を除く部分に積層される。針状結晶配列体21の構成は、前述した針状結晶配列体21と同様であり、液相法によって形成される。
【0084】
発光素子51は、前述した実施の形態の発光素子1と同様の効果を達成することができる。また積層体56の表面上にボンディングワイヤ接続部55が形成されるのではなく、第2電極53が、基板2に引き出されるので、積層体56の前記一表面56aのほぼ全面にわたって針状結晶配列体21を形成することができ、光の取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0085】
図8は、本発明の他の実施の形態の発光素子61の断面図である。図9は、発光素子61の平面図であり、発光素子61の光の出射方向の下流側から見て示す。図9において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子61と、前述した発光素子1とは同様な構成を有するので、同様な構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0086】
発光素子61は、基板62と反対側の面から光を取り出す方式(Junction Up タイプ)の発光素子であって、基板62と、基板62の厚み方向の一表面62aに積層される複数の半導体層63を含む積層体64と、針状結晶配列体21と含んで構成される。基板62と、積層体64とを含んで発光素子本体65が形成される。
【0087】
基板62は、非導電性(絶縁性)を有する単結晶基板によって形成され、たとえばサファイア基板によって形成される。
【0088】
積層体64は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、第1電極66および第2電極67を含んで構成される。基板62の一表面62a上にバッファ層6が積層され、バッファ層6に発光層7が積層され、発光層7に第2電極67が積層される。バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8から成る半導体積層体は、略直方体形状に形成される。前記半導体積層体は、その角部が切り欠かれて形成され、バッファ層6の厚み方向の一表面6aが、発光層7およびコンタクト層8から露出する。発光層7およびコンタクト層8から露出するバッファ層6の一表面6aに積層して、第1電極66が形成される。またコンタクト層8の厚み方向の一表面8aのうち、前記第1電極66から最も離反する位置、すなわち厚み方向の一方から見て前記第1電極66が形成される角部と対角の角部に、第2電極67が形成される。このように第1および第2電極66,67を配置することによって、各半導体層3に電流を拡散しやすくすることができる。第1および第2電極66,67は、前記第1および第2電極5,9と同様の物質によって形成される。
【0089】
前記コンタクト層8の厚み方向の一表面8aのうち、第2電極67が形成される領域および、周縁部を除いて、針状結晶配列体21が形成される。本実施の形態では、前記コンタクト層8の一表面8aが光取り出し面である。
【0090】
発光素子61は、前述した発光素子1と同様の効果を有する。また発光素子61の構成は、発光層7をInGaN系の半導体、またはGaN系の半導体によって形成するサファイア基板を用いた発光素子において、特に有効である。これはサファイア基板が絶縁体であるので、GaAs基板の場合のように、基板の裏面に電極を形成しても半導体層と電気的に接続することができないので、基板の一表面2a上にカソードとアノードの電極を取る必要があるためである。
【0091】
図10は、本発明の他の実施の形態の発光素子71の断面図である。図11は、発光素子71の平面図である。本実施の形態の発光素子71と、前述した発光素子61とは同様な構成を有するので、同様な構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0092】
発光素子71は、基板62側の面から光を取り出す方式(Junction down タイプ)の発光素子であって、基板62と、基板62の厚み方向の一表面62aに積層される複数の半導体層63を含む積層体72と、針状結晶配列体21と含んで構成される。基板62と、積層体72とを含んで発光素子本体74が形成される。
【0093】
積層体64は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、第1電極66および第2電極75を含んで構成される。第2電極75は、コンタクト層8の厚み方向の一表面8aの周縁部を除く全面にわたって形成される。第2電極75は、前記第1および第2電極5,9と同様の物質によって形成される。
【0094】
針状結晶配列体21は、基板62の厚み方向の他表面62b上の全面にわたって形成される。本実施の形態では、基板62の厚み方向の他表面62bが光取り出し面である。
【0095】
発光素子71は、前述した発光素子61と同様の効果を達成し、さらに第2電極75をコンタクト層8の一表面8aの全面にわたって大きく形成することができるので、発光素子61と比較して半導体中に電流が拡散しやすくなり、発光強度を向上させることができる。
【0096】
図12は、本発明の実施の一形態の発光素子81を示す断面図であり、図13の切断面線XI−XIから見て示す。図13は、発光素子81の平面図であり、発光素子81の光の出射方向の下流側から見て示す。図13において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。発光素子81は、前述した実施の形態の発光素子1と同様の構成を有するので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0097】
発光素子81は、基板2と、基板2の厚み方向の一表面2aに順次に積層されるバッファ層6、発光層7およびコンタクト層8と、第1電極5と、電気絶縁膜82と、針状結晶配列体21とを含んで構成される。基板2と、バッファ層6と、発光層7と、コンタクト層8と、第1および第2電極5,9と、電気絶縁膜82とを含んで発光素子本体84が形成される。
【0098】
電気絶縁膜82は、コンタクト層8の一表面8aの周縁部と、バッファ層6、発光層7コンタクト層8および基板2の、前記厚み方向に垂直なそれぞれの端面上に、これらを覆って設けられる。電気絶縁膜82は、前述した電気絶縁膜54と同様の物質によって形成される。第2電極9は、その端部14が、電気絶縁膜54に積層されるように、コンタクト層8の一表面8a上に設けられる。
【0099】
針状結晶配列体21は、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上、および前記厚み方向に垂直な方向の表面84b上に設けられる。本実施の形態では、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a、および前記厚み方向に垂直な方向の表面84bが光取り出し面であり、第2電極9の前記厚み方向の一表面9aと、コンタクト層8の前記厚み方向の一表面8aと、電気絶縁膜82の前記厚み方向の一表面82aと、電気絶縁膜82の前記厚み方向に垂直な方向で、半導体層とは反対側の表面82bとが含まれる。針状結晶配列体21は、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上では、第2電極9のボンディングワイヤ接続部11を除く部分に積層して設けられる。針状結晶体22のうち、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上に形成される部分では、針状結晶体22は、前記厚み方向に沿って延び、電気絶縁膜82の前記表面82b上に積層される部分では、針状結晶体22は、前記表面82bに垂直な方向に延びる。
【0100】
電気絶縁膜82の前記厚み方向の一表面82aと、電気絶縁膜82の前記厚み方向に垂直な方向で、半導体層とは反対側の表面82bとが連なる角部では、前記針状結晶体22のうち、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上に形成される部分と、電気絶縁膜82の前記表面82b上に積層される部分との間で、発光素子本体84から所定の方向に針状結晶体22が延びる。前記針状結晶配列体21は、電気絶縁膜82の前記表面82b上において、前記基板2の前記厚み方向の中央部の側方まで形成される。
【0101】
発光素子81では、前記発光素子1と同様な効果を達成することができる。発光素子本体84が放射する光のうち10%〜30%の光は、前記厚み方向に垂直な方向における発光素子本体84の端面から放射されるので、前記厚み方向に垂直な方向における発光素子本体84の端面上にも針状結晶配列体21を形成することによって、前記端面からの光を外部に効率的に取り出すことができ、光の取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0102】
図14は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子91の平面図であり、発光素子91の光に出射方向下流側から見て示す。図14において図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子91と、前述した実施の形態の発光素子81とは、第2電極の形状が異なるのみであって、他の構成は同様であるので、同様の構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。本発明の形態では、発光素子81において第2電極9を、前述した図5に示す実施の形態の発光素子41における第2電極42に置き換えて構成される。このような構成であっても前述した発光素子81と同様の効果を達成することができる。
【0103】
図15は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子101の平面図であり、発光素子101の光に出射方向下流側から見て示す。図15において図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子101と、前述した実施の形態の発光素子51,81とは同様な構成である。本実施の形態の発光素子101は、前述した発光素子51において、発光素子81と同様に、積層体56の前記厚み方向に垂直な方向の端面上にも針状結晶配列体21を設けた構成である。したがって、発光素子101は、発光素子51,81と同様の効果を達成することができる。
【0104】
図16は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子111の作製手順を示すフローチャートである。図17は、作製工程における発光素子111の断面図である。発光素子111の作製手順は、図4に示すフローチャートと同様であり、図4に示すフローチャートの各工程に加えて、ステップs1とステップs2との間に、電気絶縁膜を形成する工程を追加したものである。図17(1)は、電気絶縁膜54が形成されたウエハ30の断面図であり、図17(2)は第1および第2電極5,9を形成した後のウエハ30の断面図であり、図4(3)はレジスト膜34が形成されたウエハ30の断面図であり、図17(4)はレジスト膜34が除去されたウエハ30の断面図である。発光素子111は、前述した発光素子51,81と同様な構成を有し、同様の構成には同様の参照符号を付してその説明を省略する。
【0105】
ステップa1は、前述した図4のフローチャートのステップs1と同様であるので、説明を省略する。次にステップa2では、電気絶縁膜54の前駆体となる絶縁層を、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の積層体を覆うように、SiO2によって形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングによって絶縁層の一部を除去して、図17(1)に示すようにコンタクト層8の厚み方向の一表面8aの周縁部と、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の前記厚み方向に垂直な方向の端面とを覆う電気絶縁膜54を形成する。
【0106】
次にステップa3では、第2電極9の前駆体となる金属層を、前記バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8ならびに電気絶縁膜54の積層体を覆うように形成した後、スパッタリングによって形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングによって金属層の一部を除去して図17(2)に示すように第2電極9を形成する。またステップa3では、前述した図4のフローチャートのステップs2と同様にして、第1電極5を形成する。
【0107】
次にステップa4では、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9の積層体と、基板2の一表面2aとを覆って、スピンコートによって感光性レジストを塗布してレジスト膜34を形成する。
【0108】
次にステップa5では図17(3)に示すように、ステップs4で形成したレジスト膜34の所定の位置に孔112を形成する。本実施の形態では、レジスト膜34のうち、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9の積層体が露出するように孔112を形成する。
【0109】
次にステップa6に移る。ステップa6〜ステップa10までの各工程は、前述した図4のフローチャートのステップs5〜ステップs9までの各工程にそれぞれ対応するので、説明を省略する。
【0110】
このようにして作製された発光素子111は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9が積層されて成る積層体の、ウエハ30を除く表面に針状結晶配列体21が形成され、前述した発光素子81と同様な効果を達成することができる。
【0111】
図18は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子121の断面図である。発光素子121は、前述した発光素子111の製造手順において、レジスト膜34の孔112を、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9の積層体の前記厚み方向の一表面のみが露出するように形成して、他は発光素子111を製造する製造手順と同様な手順によって作製される。発光素子本体の1方向の表面にのみ針状結晶配列体21を形成することによって、たとえばプリンタ向けの半導体発光素子として用いることができる。
【0112】
本発明のさらに他の実施の形態において、前述した各実施の形態における電気絶縁膜は、窒化物によって形成されてもよい。このような窒化物としては、たとえばSiNなどが挙げられる。
【0113】
前述した各実施の形態では、発光素子本体が発光ダイオードによって実現されるが、本発明のさらに他の実施の形態では、発光素子本体がレーザダイオードまたはエレクトロルミネッセンスによって形成されてもよい。
【0114】
本実施のさらに他の形態では、前述した各実施の形態において、針状結晶配列体21の光が出射される側の表面を覆って樹脂層を形成してもよい。このような樹脂層は、発光素子からの光を透過し、かつ針状結晶配列体の屈折率よりも屈折率が低くなるように形成される。このような樹脂層は、たとえばポリイミド、BCBなどによって形成される。
【0115】
本発明の実施のさらに他の形態では、前述した各実施の形態において、オーミックコンタクト層8および電極部9の少なくともいずれか一方と、針状結晶配列体21とに介在させて、ZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ針状結晶配列体21に含まれる物質から成る金属膜を設けてもよい。このような金属膜を設けることによって、針状結晶配列体21とこの針状結晶配列体21に接触する発光素子本体の表面部とのオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0116】
なお、本発明は以上の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何等差し支えない。たとえば、図5、図6、図8、図10、図12、図14、図15、図17および図18に示す各実施の形態の半導体素子41,51,61,71,81,91,101,111,121において、前記発光層7を、発光層である活性層と、活性層の厚み方向の両側にそれぞれ設けられる障壁層とに代えて発光素子を構成してもよい。障壁層は、そのバンドギャップが活性層のバンドギャップよりも大きくなるように形成される。バッファ層6と活性層との間に介在される障壁層を第1障壁層とし、活性層とコンタクト層8との間に介在される障壁層を第2障壁層とすると、基板2、バッファ層6、第1障壁層、活性層、第2障壁層およびコンタクト層は、たとえば、以下の表1の材料の組み合わせによって形成される。表1では、発光素子41,51,81,91,101,111,121をAタイプとし、発光素子61,71をBタイプとする。
【0117】
【表1】
【0118】
このような構成であっても、同様の効果を達成することができ、さらに障壁層を設けることによって、内部量子効率を向上させて発光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施の一形態の半導体発光素子1を示す断面図である。
【図2】半導体発光素子1の平面図である。
【図3】発光素子1の作製手順を示すフローチャートである。
【図4】作製工程における発光素子1の断面図である。
【図5】本発明の実施の他の形態の発光素子41の平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の発光素子51の断面図である。
【図7】発光素子51の平面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態の発光素子61の断面図である。
【図9】発光素子61の平面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態の発光素子71の断面図である。
【図11】発光素子71の平面図である。
【図12】本発明の実施の一形態の発光素子81を示す断面図である。
【図13】発光素子81の平面図である。
【図14】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子91の平面図である。
【図15】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子101の平面図である。
【図16】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子111の作製手順を示すフローチャートである。
【図17】作製工程における発光素子111の断面図である。
【図18】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子121の断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1,41,51,61,71,81,91,101,111,121 発光素子
2,62 基板
3,63 半導体層
4,56,64,72 積層体
20,65,74,84 発光素子本体
21 針状結晶配列体
22 針状結晶体
34 レジスト膜
35,112 孔
54,82 電気絶縁膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(Light Emitting Diode:略称LED)、レーザダイオード(Laser Diode:略称LD)およびエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:略称EL)などの面発光型の半導体発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型の半導体発光素子の高出力化を図るために、内部量子効率、あるいは外部量子効率を向上させる努力が行われている。半導体発光素子は、発光ダイオード、レーザダイオードおよびエレクトロルミネッセンスなどによって実現される。内部量子効率は、主にダブルへテロ構造および多重量子井戸(Multiple Quantum Well:略称MQW)構造などの、半導体発光素子の構造によって向上させることができる。外部量子効率は、半導体発光素子の最外層と空気との屈折率差によって、前記最外層と空気との界面に、この界面に垂直な法線に関して斜め方向から入射する光が、前記界面で全反射して光取り出し効率が低下するのを抑制することによって向上させることができる。たとえば前記最外層の屈折率n1=3.5としたとき、空気の屈折率n2=1であり、臨界角が約16°となる。
【0003】
外部量子効率を向上させるために、従来の技術では、半導体発光素子の表面に凹凸を形成することによって、凹凸の基端面に斜めから入射する光が前記基端面に関して臨界角度以下であっても、凹凸面には臨界角度以上の角度となる斜め方向からの入射光とさせている。
【0004】
第1の従来の技術では前記凹凸は、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術によって規則的に形成され、光取り出し面となる半導体層の表面での全反射を抑止して、光取り出し効率を高めている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
また第2の従来の技術では前記凹凸は、光取り出し面となる表面を持つ半導体層に、ポーラス、つまり様々な形状を持つ多数の微細孔(空隙)を、ウェットエッチングによって不規則に形成することによって形成され、活性層から発せられた光が、光取り出し面となる半導体層の表面で全反射することを抑止して、光取り出し効率を向上させている(たとえば特許文献2参照)。
【0006】
また第3の従来の技術では前記凹凸は、光を外部に取り出すための光取り出し面上にブロックコポリマーと呼ばれるマスク材を形成し、ドライエッチングを行うことによって、半導体発光素子の電流拡散層または透明膜上に形成される(たとえば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−196152号公報
【特許文献2】特開2005−244201号公報
【特許文献3】特開2003−218383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1および第3の従来の技術では、ドライエッチングを用いて凹凸を形成することによって、半導体発光素子あるいは透明膜にダメージを与えるおそれがあり、半導体発光素子の信頼性が低下してしまう。またエッチングに大掛かりな真空装置が必要となるという問題がある。
【0009】
第2の従来の技術では、AlGaAs系の半導体発光素子の場合、光吸収しないAlGaAs層が凹凸層と電流拡散層とを兼ねるようにすると、AlGaAs層はAlを含むために酸化して劣化し、酸化の問題がないGaAs層が凹凸層と電流拡散層とを兼ねるようにすると、GaAs層は光吸収を行うので、いずれにしても凹凸層の形成に適切な材料がないという問題がある。また多孔質化領域における半導体層の表面が大気に直接曝されることがないように、保護膜を形成するか、あるいは半導体層の表面が酸化されていることが望ましいとされるが、このような保護膜または酸化膜の形成は難しく、また多孔質化領域に信頼性を確保したオーミック電極を形成するのは難しい。また基板側から光を取り出す方式(Junction Down タイプ)のLEDでは、サファイア基板に、多孔質化領域を設けることは困難である。
【0010】
したがって本発明の目的は、半導体発光素子の信頼性を低下させることなく、光取り出し効率を向上させることができ、大掛かりな装置を必要とせずに低コストで作製することができる半導体発光素子およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体発光素子は、面発光型の半導体発光素子本体と、
前記半導体発光素子本体の、光を取り出すための光取り出し面上に設けられ、前記光取り出し面に垂直な方向に配向する複数の針状結晶体が配列されて形成される針状結晶配列体とを含み、
前記針状結晶配列体は、
前記針状結晶体のアスペクト比が3以上100以下に選ばれ、
複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、109本/cm2以上1012本/cm2以下に選ばれ、
前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過し、
前記半導体発光素子本体のうち前記光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さく選ばれることを特徴とする。
【0012】
また本発明の半導体発光素子は、前記半導体発光素子本体が、
基板と、
前記基板の厚み方向の一表面上に、前記厚み方向に積層される複数の半導体層を含んで形成される積層体とを有し、
前記光取り出し面は、前記半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体が、導電性を有し、前記厚み方向において前記基板から最も離反する前記半導体層に接触して設けられることを特徴とする。
【0014】
また本発明の半導体発光素子は、前記光取り出し面が、前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体発光素子本体の端面を含むことを特徴とする。
【0015】
また本発明の半導体発光素子は、前記半導体発光素子本体が、
前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体層の端面上に設けられ、前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過する電気絶縁膜を含んで構成され、
前記光取り出し面が、
前記電気絶縁膜の前記半導体層とは反対側の表面を含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって形成され、発光スペクトルのピーク波長が、500nm以上850nm未満であることを特徴とする。
【0017】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体の光吸収端が200nm以上350nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって構成され、発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満であることを特徴とする。
【0018】
また本発明の半導体発光素子は、前記針状結晶配列体が、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物から成ることを特徴とする。
【0019】
また本発明の半導体発光素子は、前記発光素子本体のうち、前記針状結晶配列体と接する表面部が、
ZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質から成る金属膜、
またはZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質を、濃度が1019cm−3以上となるように含む半導体膜のうち少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。
【0020】
また本発明の半導体発光素子の製造方法は、半導体発光素子本体の表面を覆ってレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜のうち、予め定める部分を除去して前記表面の一部を露出させ、
前記レジスト膜およびレジスト膜から露出する前記表面の前記一部に微小粒子を付着させ、
予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中で、前記微小粒子を成長核として針状結晶を成長させ、
成長した針状結晶のうち、前記表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜とともに除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、針状結晶配列体は、半導体発光素子本体の光を取り出すための光取り出し面上に設けられる。針状結晶配列体は、前記光取り出し面上に、針状結晶体を結晶成長させることによって形成される。従来の技術のようにドライエッチングを用いて凹凸を形成する場合では、ドライエッチングによって半導体発光素子本体にダメージを与えてしまうおそれがあるが、本発明では、針状結晶体は結晶成長によって形成されるので、半導体発光素子あるいは光取り出し面上に形成されている透明膜などに与えるダメージを軽減することができる。針状結晶配列体は、たとえば液相法によって形成することができるので、ドライエッチングのような大掛かりな真空装置が不必要となり、低コストで半導体発光素子を製造することができる。
【0022】
また半導体発光素子本体の一部をエッチングするのではなく、半導体発光素子本体に針状結晶配列体を設けるので、半導体発光素子本体の表面に電極が設けられていても、この電極を覆って針状結晶配列体を設けることができるので、設計の自由度が向上する。
【0023】
半導体発光素子本体からの光は、針状結晶配列体に入射し、針状結晶配列体を透過して、外部に放射される。針状結晶配列体は、半導体発光素子本体のうち光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さいので、半導体発光素子本体からの到来する光が、半導体発光素子本体と針状結晶配列体との界面で反射してしまうことを抑制することができる。また針状結晶体は、光取り出し面に垂直な方向に配向し、すなわち光取り出し面に垂直な方向に延びて形成されるので、針状結晶配列体と、針状結晶配列体から光が放射される側の媒体との界面における反射を抑制できる。その結果、針状結晶配列体に半導体発光素子本体から入射する光のうち取り出しが可能な光が入射する角度である有効立体角度を大きくすることができ、これによって光の取り出し効率を向上させることができる。また複数の針状結晶体は、回折格子として機能し、臨界角度以上の角度で前記針状結晶配列体と、針状結晶配列体から光が放射される側の媒体との界面に入射する光の、+1次または−1次の回折光を出射することができるので、光取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0024】
針状結晶体のアスペクト比が3未満であると、針状結晶配列体が回折格子として十分に機能しない。また針状結晶体のアスペクト比が100を超えると、発光素子をピックアップする際に折れやすくなるという問題がある。なお、折れを防ぐため樹脂などの保護膜で針状結晶体を覆ってもよいが、アスペクト比が大きすぎると保護膜の種類によっては収縮により針状結晶体が折れやすくなるという問題がある。針状結晶配列体を回折格子として十分に機能させ、十分な強度の針状結晶体を得るためには、針状結晶体のアスペクト比を5以上10以下にすることが望ましい。
【0025】
複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、109本/cm2未満であると、針状結晶配列体に入射する光が、針状結晶体によって回折しないので、光取り出し効率を十分に向上させることができない。また複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、1012本/cm2を超えると、回折光として取り出せる光の針状結晶体への入射角度が小さくなり、光取り出し効率を十分に向上させることができない。したがって、複数の針状結晶体の、前記厚み方向に垂直な面における単位面積あたりの数を、109本/cm2以上1012本/cm2以下にすることによって、針状結晶配列体に入射する光を、針状結晶体によって回折させ、かつ回折光として取り出せる光の針状結晶体への入射角度を大きくして、光の取り出し効率を大きく向上させることができる。
【0026】
また本発明によれば、基板と基板に積層される複数の半導体層を含んで構成される積層体層を含んで構成される積層体を有する半導体発光素子本体では、半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面から出射する光の割合が大きいので、半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面のうちの少なくともいずれか一方を光取り出し面として針状結晶配列体を形成することによって、光取り出し効率をより向上させることができる。
【0027】
また本発明によれば、針状結晶配列体は、導電性を有し、厚み方向において基板から最も離反した半導体層に接触して設けられるので、前記半導体層に電流を効果的に拡散することができる。これによって半導体発光素子全体に電流が拡散し、発光強度を向上させることができる。
【0028】
また本発明によれば、前記厚み方向に垂直な方向における半導体発光素子本体の端面上にも針状結晶配列体が形成される。半導体発光素子の10%〜30%の光は、前記厚み方向に垂直な方向における半導体発光素子本体の端面から放射されるので、この光を外部に効率的に取り出すことができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0029】
また本発明によれば、針状結晶配列体は、導電性を有し、厚み方向において基板から最も離反する半導体層に接触して設けられる場合には、前記半導体層の前記厚み方向に垂直な方向における端面上に電気絶縁膜を設け、この電気絶縁膜上(半導体層とは反対側の表面)にも針状結晶配列体を形成するとよい。この場合、導電性の針状結晶配列体と半導体層との間に電気絶縁膜が設けられるので、針状結晶配列体によって複数の半導体層が短絡してしまうことが防止され、また、前記厚み方向に垂直な方向における半導体発光素子本体の端面から放射される光を外部に効率的に取り出すことができ、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0030】
また本発明によれば、発光素子本体の前記各半導体層は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長が500nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体によって形成され、これに対して針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nm未満であるので、前記半導体発光素子の光の波長に対して針状結晶配列体が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。前記III−V族化合物半導体は、たとえばAlGaAs系の半導体およびInGaAlP系の半導体などによって実現される。
【0031】
また本発明によれば、発光素子本体の前記各半導体層は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体またはII−VI族化合物半導体によって形成され、これに対して針状結晶配列体の光吸収端が200nm以上350nm未満であるので、前記半導体発光素子の光の波長に対して針状結晶配列体が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。前記III−V族化合物半導体は、たとえばGaN系の半導体によって実現され、II−VI族化合物半導体は、たとえばZnSe系の半導体およびZnTe系の半導体によって実現される。
【0032】
また本発明によれば、針状結晶配列体の材料を、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物によって形成すると、この酸化物に含まれるZn、MgおよびCaに応じて、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上500nm未満の範囲の所定の波長にすることができる。たとえばZnOを用いると、針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nmとすることができ、たとえばMgZnOまたはCaZnOを用いると、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上350nm未満とすることができる。
【0033】
また本発明によれば、針状結晶配列体と接する表面部が、ZnおよびMgから成る少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質から成る金属膜、またはZnおよびMgおよび少なくとも1種以上であり、かつ針状結晶配列体に含まれる物質と同じ物質を、その濃度が1019cm−3以上となるように含んでいるので、針状結晶配列体とこの針状結晶配列体に接触する表面部とのオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0034】
また本発明によれば、半導体発光素子本体の表面を覆ってレジスト膜を形成して、前記レジスト膜のうち、予め定める部分を除去して前記表面の一部を露出させ、前記レジスト膜およびレジスト膜から露出する前記表面の前記一部に微小粒子を付着させ、予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中で、前記微小粒子を成長核として針状結晶を成長させ、成長した針状結晶のうち、前記表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜とともに除去することによって、半導体発光素子本体の光を取り出すための光取り出し面上に、光取り出し面に垂直な方向に配向する複数の針状結晶体が配列されて形成される針状結晶配列体を形成することができる。
【0035】
従来の技術のようにドライエッチングを用いて凹凸を形成する場合では、ドライエッチングによって半導体発光素子本体にダメージを与えてしまうおそれがあるが、本発明では、針状結晶配列体が結晶成長によって形成されるので、半導体発光素子本体にダメージを与えるおそれを軽減させて、針状結晶配列体を形成することができ、半導体発光素子本体の信頼性を低下させることなく、光取り出し効率を向上させることができる。針状結晶配列体は、たとえば液相法によって形成することができ、作製工程にドライエッチングを必要としない。したがって、大掛かりな真空装置が不必要となるので、前記半導体発光素子を低コストで作製することができる。
【0036】
また針状結晶配列体は、エッチングによって形成するのではなく、結晶成長させて形成されるので、半導体発光素子本体が表面部に電極を有していても、電極に関係なく針状結晶配列体を形成することができるので、光の取り出し効率を向上させることができる。半導体発光素子本体の表面で、針状結晶配列体を形成する領域の制限がなく、またレジスト膜から露出した表面部分にだけ針状結晶配列体を形成することができるので、設計の自由度を向上させることができ、たとえば、照明用の半導体発光素子では、半導体発光素子本体の複数の方向の表面に針状結晶配列体を形成し、プリンタ向けの半導体発光素子では、1方向の表面に針状結晶配列体を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、本発明の実施の一形態の半導体発光素子1(以下、発光素子1ともいう)を示す断面図であり、図2の切断面線I−Iから見て示す。図2は、半導体発光素子1の平面図であり、半導体発光素子1の光の出射方向の下流側から見て示す。図2において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。以下、半導体発光素子を、発光素子という。発光素子1は、面発光型の発光素子であり、本発明の実施の形態では、発光ダイオードによって実現される。
【0038】
発光素子1は、基板2と、基板2の厚み方向の一表面2aに積層される複数の半導体層3を含む積層体4と、基板2の厚み方向の他表面2b上に形成される第1電極5と、針状結晶配列体21と含んで構成される。基板2と、積層体4と、第1電極5とを含んで発光素子本体20が形成される。
【0039】
基板2は、p型およびn型のうちの一方の導電型で、かつ単結晶の半導体によって形成される。本発明の実施の形態では、基板2は、n型のガリウム砒素(GaAs)によって形成される。第1電極5は、前記基板2の他表面2bの全面にわたって形成される。第1電極5は、Cr(クロム)とAu(金)との積層膜によって形成される。
【0040】
積層体4は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8および第2電極9を含んで構成される。基板2の一表面2a上にバッファ層6が積層され、バッファ層6に発光層7が積層され、発光層7に第2電極9が積層される。バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8から成る半導体積層体は、略直方体形状に形成される。
【0041】
バッファ層6は、基板2と同じ導電型の半導体によって形成され、たとえばn型のガリウム砒素(GaAs)またはn型のガリウム窒素(GaN)によって形成される。バッファ層6の厚さは、0.1〜0.3μmに選ばれる。以後、半導体の導電型を示すとき、n型を「n−」と記載し、p型を「p−」と記載する場合がある。
【0042】
発光層7は、バッファ層6がn−GaAsによって形成される場合、p−AlGaAsあるいはp−InGaAlAsによって構成され、バッファ層6がGaNによって形成される場合p−InGaNによって構成される。発光層7の厚さは、0.5μm〜1.0μmに選ばれる。
【0043】
コンタクト層8は、基板2と異なる他方の導電型の半導体によって形成され、本実施の形態ではp型の半導体によって形成される。コンタクト層8は、たとえば発光層7がp−AlGaAsあるいはp−InGaAlAsによって形成される場合、p−GaAsによって形成され、発光層7がp−InGaNによって形成される場合、p−GaNによって形成される。コンタクト層8の厚さは、0.01μm〜0.05μmに選ばれる。
【0044】
コンタクト層8は、後述する針状結晶配列体21に含まれる物質と同じ物質を、その濃度(不純物濃度)が1019cm−3以上となるように含んで構成される。本実施の形態では、コンタクト層8は不純物として亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)および炭素(C)を含む。これによって、針状結晶配列体21とこの針状結晶に接触するコンタクト層8とのオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0045】
コンタクト層8の前記厚み方向の一表面8aに第2電極9が積層して形成される。第2電極9は、放射状に形成され、前記一表面8aの中央部に設けられるボンディングワイヤ接続部11と、ボンディングワイヤ接続部11から放射状に延びる放射状延在部12とを含んで構成される。放射状延在部12は、矩形状となる前記一表面8aの各角部13に向かって延びる。放射状延在部12の角部13に臨む端部14は、前記角部13から離間する。第2電極9は、Cr(クロム)とAu(金)との積層膜によって形成され、厚さは、発光素子本体20が発する波長の光に対する表皮厚さよりも小さくなるように形成され、たとえば0.3μm〜0.5μmに選ばれる。また電極9の放射状延在部12の幅は、2μm程に選ばれる。
【0046】
第2電極9を放射状に形成することによって、各半導体層3の全領域にわたって電流が拡散しやすくなり、発光強度を向上せることができる。
【0047】
針状結晶配列体21は、前記積層体4の厚み方向の一表面4a上に設けられ、第2電極9のボンディングワイヤ接続部11および周縁部15を除く部分に積層して設けられる。前記積層体4の前記厚み方向の一表面4aは、主たる発光面である。また前記積層体4の前記厚み方向の一表面4aは、光取り出し面であり、第2電極9の前記厚み方向の一表面9aと、コンタクト層8の前記厚み方向の一表面8aとが含まれる。発光素子1は、ウエハに各半導体層3を形成するための半導体膜、各電極5,9を形成するための金属膜および針状結晶配列体21を積層した後、ダイシングを行ってチップに分割して形成される。ダイシングライン上に針状結晶配列体21が形成されると、ダイシング中に針状結晶配列体21にダメージが与えられ、はがれが生じてしまうので、針状結晶配列体21は、ダイシングラインである積層体4の厚み方向の一表面4aの周縁辺から内側に退避し、周縁部15を除いて形成される。
【0048】
針状結晶配列体21は、積層体4の厚み方向の一表面4aに垂直な方向に配向する複数の針状結晶体22が配列されて形成される。コンタクト層8の厚み方向の一表面8a上には第2電極9が形成されるので、コンタクト層8の厚み方向の一表面8aと第2電極9の厚み方向の一表面9aとの間には段差が形成されるが、第2電極9の厚さは薄いので、コンタクト層8の厚み方向の一表面8aと第2電極9の厚み方向の一表面9aとが仮想一平面に含まれるものとする。針状結晶配列体21は、結晶基部23と、結晶基部23から突出する複数の針状結晶体22とを含んで形成される。
【0049】
針状結晶配列体21は、酸化物、たとえば酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)、酸化カルシウム亜鉛(CaZnO)または酸化チタン(TiO)によって形成される。
【0050】
発光素子本体20の各半導体層3を、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長が500nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体によって形成される場合、針状結晶配列体21は、光吸収端が300nm以上500nm未満となるように形成される。針状結晶配列体21の光吸収端を300nm以上500nm未満にするには、針状結晶配列体21をZnOによって形成すればよい。発光層7を、AlGaAsまたはInGaAsPを用いて形成すると、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長は500nm以上850nm未満になる。このように各半導体層3および針状結晶配列体21を形成すると、発光素子本体20の光の波長に対して針状結晶配列体21が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0051】
また発光素子本体20の各半導体層3を、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満となるような、III−V族化合物半導体によって形成される場合、針状結晶配列体21は、光吸収端が200nm以上350nm未満となるように形成される。針状結晶配列体21の光吸収端を200nm以上350nm未満とするには、針状結晶配列体21をMgZnOまたはCaZnOによって形成すればよい。発光層7をGaNによって形成すると、発光素子1の発光スペクトルのピーク波長は350nm以上850nm未満になる。このように各半導体層3および針状結晶配列体21を形成すると、発光素子本体20の光の波長に対して針状結晶配列体21が透明となり、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0052】
針状結晶配列体21の材料を、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物によって形成すると、この酸化物に含まれるZn、MgおよびCaに応じて、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上500nm未満の範囲の所定の波長にすることができる。たとえばZnOを用いると、前述したように針状結晶配列体の光吸収端が300nm以上500nmとすることができ、たとえばMgZnOまたはCaZnOを用いると、針状結晶配列体の光吸収端を200nm以上350nm未満とすることができる。
【0053】
針状結晶配列体21は、発光素子本体20が発する波長の光を透過するように形成される。針状結晶配列体21が透過する光は、発光素子本体20が発する波長帯域で、80%〜90%程度である。これによって針状結晶配列体21が、発光素子本体20からの光を吸収したり、散乱したりすることが抑制される。
【0054】
また針状結晶配列体21は、発光素子本体20のうち光取り出し面が形成される部分、すなわちコンタクト層8および第2電極9よりも屈折率が小さく選ばれる。また針状結晶配列体21は、光を放射する側の媒質の屈折率よりも屈折率が大きく選ばれる。光を放射する側の媒質は、本発明の実施の形態では、空気である。針状結晶配列体21の屈折率は、空気の屈折率よりも小さく選ばれる。
【0055】
結晶基部23の前記光取り出し面に垂直な方向の厚さ(本実施の形態では前記厚み方向の厚さ)T1は、針状結晶配列体21の前記光取り出し面に垂直な方向の厚さT2の30%〜50%を占める。針状結晶体22の先端部は、結晶基部23から離反するにつれて、先細状となっている。前記厚さT2は、針状結晶配列体21の平均の厚さである。
【0056】
各針状結晶体22のアスペクト比は、3以上100以下に選ばれ、好ましくは5以上10以下に選ばれる。針状結晶体22のアスペクト比は、前記一表面4aに垂直な方向の針状結晶体22の平均の長さをL1とし、針状結晶体22の平均の外径をL2としたとき、L1をL2で除算して求められる。針状結晶体22の平均の長さL1は、所定の数の針状結晶体22の長さの相加平均である。針状結晶体22の平均の外径L2は、各針状結晶体22における長さ方向に垂直な方向における外径の平均値の相加平均である。針状結晶体22の外径は、針状結晶体22において長さ方向に予め定める間隔で測定された、長さ方向に垂直な方向における外径の平均値を、所定の数の針状結晶体22について求めて、相加平均した値である。針状結晶体の長さL1および外径L2は、SEM(Scanning
Electron Microscope)による針状結晶体22の断面像を観察して、実測して求める。針状結晶配列体21は、液相法によって結晶成長させるので、針状結晶体22は、縦方向、すなわちこの針状結晶体22が形成される面に垂直に配向し、結晶方向を揃えて成長する。これによって1次回折光または−1次回折光として取り出すことができる有効立体角度が大きくなるので、光の取り出し効率が向上する。たとえば前記厚さT2は、1μm程度に選ばれ、前記長さL1は、700nm程度に選ばれ、長さL2は、200nm程度に選ばれる。
【0057】
針状結晶体22のアスペクト比が3未満であると、針状結晶配列体21が回折格子としての十分に機能しない。また針状結晶体22のアスペクト比が100を超えると、発光素子をピックアップする際に折れやすくなるという問題がある。したがって針状結晶体22のアスペクト比を、3以上100未満とし、好ましくは5以上10以下にすることによって、針状結晶配列体21を回折格子として十分に機能させることができるとともに、十分な強度の針状結晶を得ることができる。
【0058】
また複数の針状結晶体22の単位面積あたりの数が、109本/cm2以上1012本/cm2以下に選ばれ、好ましくは109本/cm2以上1010本/cm2以下に選ばれ、さらに好ましくは3×109本程度に選ばれる。複数の針状結晶体22の単位面積あたりの数が、109本/cm2未満であると、針状結晶配列体21に入射する光が回折しないので、光取り出し効率を十分に向上させることができない。また複数の針状結晶体22の単位面積あたりの数が1012本/cm2を超えると、回折光として取り出せる光の針状結晶体22への入射角度が小さくなり、光取り出し効率を十分に向上させることができない。したがって、複数の針状結晶体22の、前記厚み方向に垂直な仮想一平面における単位面積あたりの数を109本/cm2以上1012本/cm2以下とすることによって、針状結晶配列体21に入射する光を、針状結晶体22によって回折させて、かつ針状結晶配列体21に入射する光の針状結晶体22による回折角度を大きくして、光の取り出し効率を大きく向上させることができる。
【0059】
たとえば発光層7をGaAs系の半導体によって形成した場合では、針状結晶体22の間隔L3を、200nm〜300nmピッチとすると、−1次または+1次の回折光の影響によって、光の取り出し効率が上昇し、針状結晶配列体21を設けない場合と比較して、光取り出し効率を約1.5倍とすることができる。
【0060】
針状結晶配列体21は、導電性を有するものを選択するとよい。針状結晶配列体21の抵抗率は、2×10−4Ω・cm〜7×10−4Ω・cmに選ばれる。針状結晶配列体21が導電性を有するので、ボンディングワイヤ接続部11に供給される電流を、発光素子全体に拡散させることができ、発光強度を向上させることができる。
【0061】
針状結晶配列体21は、後述するように液相法によって結晶成長させて形成されるようにするとよい。これによってエッチングによる発光素子本体20へのダメージを軽減させ、信頼性を低下することなく、針状結晶配列体21を形成して、光取り出し効率を向上させることができる。
【0062】
また、針状結晶配列体21を液相法によって結晶成長する場合、針状結晶配列体21の積層体4側の端部は、連続体(結晶基部23)となり、光取り出し面を覆う。すなわち、コンタクト層8よりも屈折率の小さな結晶基部23が光取り出し面を覆うことになり、光取り出し面と、結晶基部23との界面における反射を抑制することができ、光取り出し効率を向上させることができる。また結晶基部23は、保護膜の役割を果たし、経時変化によるコンタクト層8および第2電極9の酸化などによる劣化を防ぎ、発光素子1の信頼性を向上させることができる。
【0063】
図3は、発光素子1の作製手順を示すフローチャートである。図4は、作製工程における発光素子1の断面図である。図4(1)は、半導体層31,32,33が積層されたウエハ30の断面図であり、図4(2)はバッファ層6、発光層7およびコンタクト層8が形成されたウエハ30の断面図であり、図4(3)は第1および第2電極5,9を形成した後のウエハ30の断面図であり、図4(4)はレジスト膜34が形成されたウエハ30の断面図であり、図4(5)はレジスト膜34が除去されたウエハ30の断面図である。
【0064】
作製手順をスタートすると、ステップs0からステップs1に移る。ステップs1では、図4(1)に示すように、基板2の前駆体であるウエハ30の厚み方向の一表面30a上に、有機金属気相成長(MOCVD)法によって、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の前駆体である半導体層31,32,33を順番にエピタキシャル成長させて積層した後、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて図4(2)に示すように各半導体層31,32,33の一部を除去することによって、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8を形成する。
【0065】
次にステップs2では、第2電極9の前駆体となる金属層を、前記バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の積層体を覆うようにスパッタリングによって形成し、フォトリソグラフィまたはエッチングによって金属層の一部を除去して図4(3)に示すように第2電極9を形成する。またウエハ30の前記積層体が形成される面とは反対側の面上に、第1電極5となる金属層をスパッタリングによって形成し、フォトリソグラフィまたはエッチングを用いて、この金属層の一部を除去して図4(3)に示すように第1電極5を形成する。
【0066】
次にステップs3では、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8ならびに第2電極9の積層体4、ならびに基板2を覆って、スピンコートによって感光性レジストを塗布してレジスト膜34を形成する。
【0067】
次にステップs4では図4(4)に示すように、ステップs3で形成したレジスト膜34の所定の位置に孔35を形成する。感光性レジストがポジ型であれば、レジスト膜34のうち、積層体4の周縁部およびボンディングワイヤ接続部11に積層される部分を除いて、積層体4に積層される部分を露光した後、エッチングによって露光した部分を除去して孔35を形成する。また感光性レジストがネガ型であれば、ポジ型で露光しない部分を露光して、露光しなかった部分をエッチングによって除去して孔35を形成する。エッチングには、ウェットエッチングを用いる。
【0068】
次にステップs5では、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に微小粒子を付着させる。レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に、コロイド溶液を塗布することによって微小粒子を付着させる。
【0069】
コロイド溶液は、0.03mol/LのNaOHメタノール水溶液(以下、第1水溶液という)と、0.01mol/Lの酢酸亜鉛(Zn(CH3COO)2・2H2O)のメタノール水溶液(以下、第2水溶液という)とを、第1水溶液を65mlとし第2水溶液を125mlとして攪拌しながら室温(28℃程度)で混合し、60℃で2時間加熱することによって作製される。このように形成されたコロイド溶液は、粒径が10nm以下の酸化亜鉛のコロイド粒子を含む。コロイド溶液を作製する時に、酢酸亜鉛(Zn(CH3COO)2・2H2O)がメタノール溶液に溶けにくければ、40℃程度に加熱するとよい。
【0070】
ステップs5では、前記コロイド溶液を、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に、スピンコートによって塗布した後、予め定める温度(約130℃)で焼結を行う。これによってコロイド粒子をレジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に付着させることができる。その後、純水によってレジスト膜34が形成されたウエハ30を洗浄する。洗浄することによって、密着強度の弱いコロイド粒子は洗い流されるので、スピンコートおよび焼結ならびに洗浄を数回繰り返して、微小粒子から成るシード層を、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に積層して作製する。
【0071】
次にステップs6では、予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中に、前記微小粒子を付着させたウエハ30を浸漬して、前記シード層に含まれる微小粒子を成長核として針状結晶を成長させる。予め定める物質を含むアルカリ性の溶液は、まず0.02Mの硫酸亜鉛水溶液(ZnSO4・7H2O)と、フッ化アンモニウム(NH4F)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、硝酸アンモニウムNH4NO3、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)の少なくとも一種類のアンモニウム塩とを混合して、NH4+とZn2+とのモル比がNH4+:Zn2+=X:1であり、かつX=20〜50となる水溶液を作製した後、この水溶液に、NaOH水溶液を加えて、pH9〜pH13のアルカリ性溶液とすることによって作製される。
【0072】
ステップs6では、シード層が形成されたウエハ30を、前述したNH4+とZn2+を含むアルカリ性の水溶液中に設置し、水溶液の温度を60℃に保持して、1日〜10日放置する。ステップs6によって、レジスト膜34およびレジスト膜34から露出する積層体4の表面に、針状結晶が成長する。その後、針状結晶が形成されたウエハ30を水溶液から取り出し、純水によって洗浄した後、室温にて乾燥させる。
【0073】
次にステップs7では図4(5)に示すように、ステップs6で成長した針状結晶のうち、レジスト膜34から露出する積層体4の表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜34とともに剥離液によって除去することによって、積層体4に針状結晶配列体21を形成する。
【0074】
次にステップs8ではウエハ30を切断して、発光素子1を作製した後、ステップs9に移り作製手順を終了する。
【0075】
従来の技術のようにドライエッチングを用いて発光素子の表面に凹凸を形成する場合では、ドライエッチングによって発光素子にダメージを与えてしまうおそれがあるが、本発明の製造方法によれば、針状結晶配列体21が結晶成長によって形成されるので、発光素子本体20に与えるダメージを軽減し、針状結晶配列体21を形成することができる。その結果、発光素子1の信頼性を低下させることなく、光取り出し効率を向上させることができる。針状結晶配列体21は、前述したように液相法によって形成することができ、作製工程にドライエッチングを必要としない。したがって大掛かりな真空装置が不必要となるので、発光素子1を低コストで作製することができる。
【0076】
また針状結晶配列体21は、発光素子本体20が表面部に第2電極9を有していても、針状結晶配列体21を形成することができるので、光の取り出し効率を向上させることができる。このように、発光素子本体20の表面で、針状結晶配列体21を形成する領域の制限がなく、またレジスト膜34から露出した表面部分に針状結晶配列体21を形成することができるので、設計の自由度を向上させることができる。
【0077】
発光素子1では、針状結晶体22が光取り出し面に垂直な方向に配向し、すなわち光取り出し面に垂直な方向に延びて形成されるので、針状結晶配列体21と、針状結晶配列体21から光が放射される側の媒体との界面における反射を抑制可能である。その結果、針状結晶配列体21に発光素子本体から入射する光のうち取り出しが可能な光が入射する角度である有効立体角度を大きくすることができ、これによって光の取り出し効率を向上させることができる。また複数の針状結晶体22は、回折格子としても機能し、臨界角度以上の角度で前記針状結晶配列体21と、針状結晶配列体21から光が放射される側の媒体との界面に入射する光の、+1次または−1次の回折光を出射することができるので、光取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0078】
発光素子1では、III−V族化合物半導体によって各半導体層3が形成されるが、各半導体層3は、II−VI族化合物半導体によって形成されてもよい。各半導体層3をII−VI族化合物半導体によって形成する場合、たとえば、基板2をn−ZnSeやn−GaAsによって形成し、バッファ6層をn−ZnSeによって形成し、発光層7をZnSe(ZnSeCd)またはZnTeによって形成し、コンタクト層8をZnSe−ZnTe超格子などによって形成し、針状結晶配列体21を、MgZnOまたはCaZnOによって形成すればよい。このような構成であっても、同様の効果を達成することができる。
【0079】
図5は、本発明の実施の他の形態の発光素子41の平面図であり、発光素子41の光の出射方向の下流側から見て示す。図5において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子41と、前述した実施の形態の発光素子1とは、第2電極の形状が異なるのみであって、他の構成は同様であるので、同様の構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。本発明の形態では、第2電極42が、厚み方向から見て矩形状に形成され、コンタクト層8の一表面8aの中央部に形成される。第2電極42は、その周縁部を除いて、針状結晶配列体21から露出する。このような構成であっても、前述した実施の形態と同様の効果を達成することができる。また第2電極42が前記コンタクト層8の一表面8aの中央部に設けられるので、第2電極42によって発光層7からの光が妨げられにくくなり、光の取り出し効率をより向上させることができる。
【0080】
図6は、本発明の他の実施の形態の発光素子51の断面図である。図7は、発光素子51の平面図であり、発光素子51の光の出射方向の下流側から見て示す。図7において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子51と、前述した発光素子1とは同様な構成を有するので、同様の構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0081】
本発明の実施の形態では、基板2の厚み方向の一表面2aの周縁部を除いて、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8が積層される。コンタクト層8の厚み方向の一表面8aの周縁部と、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の前記厚み方向に垂直なそれぞれの端面とには、保護膜である電気絶縁膜54が設けられる。電気絶縁膜54は、透光性を有し、発光層7からの光を透過する。電気絶縁膜54は、SiO2によって形成される。
【0082】
第2電極53は、コンタクト層8の一表面8aの中央部から、所定の方向に延びて前記電気絶縁膜54に積層されて、基板2の一表面2aにも積層されて設けられる。第2電極53のうち、基板2に積層される部分がボンディングワイヤ接続部55となる。第2電極53は、第2電極9と同じ材料によって形成され、第2電極9の厚さと等しい厚さを有する。コンタクト層8の一表面8a上に積層される部分53aは、直方体形状に形成される。
【0083】
針状結晶配列体21は、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8、ならびに第2電極53および電気絶縁膜54の積層体56の、前記厚み方向の一表面56aのうち、周縁部を除く部分に積層される。針状結晶配列体21の構成は、前述した針状結晶配列体21と同様であり、液相法によって形成される。
【0084】
発光素子51は、前述した実施の形態の発光素子1と同様の効果を達成することができる。また積層体56の表面上にボンディングワイヤ接続部55が形成されるのではなく、第2電極53が、基板2に引き出されるので、積層体56の前記一表面56aのほぼ全面にわたって針状結晶配列体21を形成することができ、光の取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0085】
図8は、本発明の他の実施の形態の発光素子61の断面図である。図9は、発光素子61の平面図であり、発光素子61の光の出射方向の下流側から見て示す。図9において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子61と、前述した発光素子1とは同様な構成を有するので、同様な構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0086】
発光素子61は、基板62と反対側の面から光を取り出す方式(Junction Up タイプ)の発光素子であって、基板62と、基板62の厚み方向の一表面62aに積層される複数の半導体層63を含む積層体64と、針状結晶配列体21と含んで構成される。基板62と、積層体64とを含んで発光素子本体65が形成される。
【0087】
基板62は、非導電性(絶縁性)を有する単結晶基板によって形成され、たとえばサファイア基板によって形成される。
【0088】
積層体64は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、第1電極66および第2電極67を含んで構成される。基板62の一表面62a上にバッファ層6が積層され、バッファ層6に発光層7が積層され、発光層7に第2電極67が積層される。バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8から成る半導体積層体は、略直方体形状に形成される。前記半導体積層体は、その角部が切り欠かれて形成され、バッファ層6の厚み方向の一表面6aが、発光層7およびコンタクト層8から露出する。発光層7およびコンタクト層8から露出するバッファ層6の一表面6aに積層して、第1電極66が形成される。またコンタクト層8の厚み方向の一表面8aのうち、前記第1電極66から最も離反する位置、すなわち厚み方向の一方から見て前記第1電極66が形成される角部と対角の角部に、第2電極67が形成される。このように第1および第2電極66,67を配置することによって、各半導体層3に電流を拡散しやすくすることができる。第1および第2電極66,67は、前記第1および第2電極5,9と同様の物質によって形成される。
【0089】
前記コンタクト層8の厚み方向の一表面8aのうち、第2電極67が形成される領域および、周縁部を除いて、針状結晶配列体21が形成される。本実施の形態では、前記コンタクト層8の一表面8aが光取り出し面である。
【0090】
発光素子61は、前述した発光素子1と同様の効果を有する。また発光素子61の構成は、発光層7をInGaN系の半導体、またはGaN系の半導体によって形成するサファイア基板を用いた発光素子において、特に有効である。これはサファイア基板が絶縁体であるので、GaAs基板の場合のように、基板の裏面に電極を形成しても半導体層と電気的に接続することができないので、基板の一表面2a上にカソードとアノードの電極を取る必要があるためである。
【0091】
図10は、本発明の他の実施の形態の発光素子71の断面図である。図11は、発光素子71の平面図である。本実施の形態の発光素子71と、前述した発光素子61とは同様な構成を有するので、同様な構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0092】
発光素子71は、基板62側の面から光を取り出す方式(Junction down タイプ)の発光素子であって、基板62と、基板62の厚み方向の一表面62aに積層される複数の半導体層63を含む積層体72と、針状結晶配列体21と含んで構成される。基板62と、積層体72とを含んで発光素子本体74が形成される。
【0093】
積層体64は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、第1電極66および第2電極75を含んで構成される。第2電極75は、コンタクト層8の厚み方向の一表面8aの周縁部を除く全面にわたって形成される。第2電極75は、前記第1および第2電極5,9と同様の物質によって形成される。
【0094】
針状結晶配列体21は、基板62の厚み方向の他表面62b上の全面にわたって形成される。本実施の形態では、基板62の厚み方向の他表面62bが光取り出し面である。
【0095】
発光素子71は、前述した発光素子61と同様の効果を達成し、さらに第2電極75をコンタクト層8の一表面8aの全面にわたって大きく形成することができるので、発光素子61と比較して半導体中に電流が拡散しやすくなり、発光強度を向上させることができる。
【0096】
図12は、本発明の実施の一形態の発光素子81を示す断面図であり、図13の切断面線XI−XIから見て示す。図13は、発光素子81の平面図であり、発光素子81の光の出射方向の下流側から見て示す。図13において、図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。発光素子81は、前述した実施の形態の発光素子1と同様の構成を有するので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0097】
発光素子81は、基板2と、基板2の厚み方向の一表面2aに順次に積層されるバッファ層6、発光層7およびコンタクト層8と、第1電極5と、電気絶縁膜82と、針状結晶配列体21とを含んで構成される。基板2と、バッファ層6と、発光層7と、コンタクト層8と、第1および第2電極5,9と、電気絶縁膜82とを含んで発光素子本体84が形成される。
【0098】
電気絶縁膜82は、コンタクト層8の一表面8aの周縁部と、バッファ層6、発光層7コンタクト層8および基板2の、前記厚み方向に垂直なそれぞれの端面上に、これらを覆って設けられる。電気絶縁膜82は、前述した電気絶縁膜54と同様の物質によって形成される。第2電極9は、その端部14が、電気絶縁膜54に積層されるように、コンタクト層8の一表面8a上に設けられる。
【0099】
針状結晶配列体21は、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上、および前記厚み方向に垂直な方向の表面84b上に設けられる。本実施の形態では、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a、および前記厚み方向に垂直な方向の表面84bが光取り出し面であり、第2電極9の前記厚み方向の一表面9aと、コンタクト層8の前記厚み方向の一表面8aと、電気絶縁膜82の前記厚み方向の一表面82aと、電気絶縁膜82の前記厚み方向に垂直な方向で、半導体層とは反対側の表面82bとが含まれる。針状結晶配列体21は、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上では、第2電極9のボンディングワイヤ接続部11を除く部分に積層して設けられる。針状結晶体22のうち、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上に形成される部分では、針状結晶体22は、前記厚み方向に沿って延び、電気絶縁膜82の前記表面82b上に積層される部分では、針状結晶体22は、前記表面82bに垂直な方向に延びる。
【0100】
電気絶縁膜82の前記厚み方向の一表面82aと、電気絶縁膜82の前記厚み方向に垂直な方向で、半導体層とは反対側の表面82bとが連なる角部では、前記針状結晶体22のうち、発光素子本体84の前記厚み方向の一表面84a上に形成される部分と、電気絶縁膜82の前記表面82b上に積層される部分との間で、発光素子本体84から所定の方向に針状結晶体22が延びる。前記針状結晶配列体21は、電気絶縁膜82の前記表面82b上において、前記基板2の前記厚み方向の中央部の側方まで形成される。
【0101】
発光素子81では、前記発光素子1と同様な効果を達成することができる。発光素子本体84が放射する光のうち10%〜30%の光は、前記厚み方向に垂直な方向における発光素子本体84の端面から放射されるので、前記厚み方向に垂直な方向における発光素子本体84の端面上にも針状結晶配列体21を形成することによって、前記端面からの光を外部に効率的に取り出すことができ、光の取り出し効率をさらに向上させることができる。
【0102】
図14は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子91の平面図であり、発光素子91の光に出射方向下流側から見て示す。図14において図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子91と、前述した実施の形態の発光素子81とは、第2電極の形状が異なるのみであって、他の構成は同様であるので、同様の構成には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。本発明の形態では、発光素子81において第2電極9を、前述した図5に示す実施の形態の発光素子41における第2電極42に置き換えて構成される。このような構成であっても前述した発光素子81と同様の効果を達成することができる。
【0103】
図15は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子101の平面図であり、発光素子101の光に出射方向下流側から見て示す。図15において図解を容易にするために針状結晶配列体21に斜線を付して示している。本実施の形態の発光素子101と、前述した実施の形態の発光素子51,81とは同様な構成である。本実施の形態の発光素子101は、前述した発光素子51において、発光素子81と同様に、積層体56の前記厚み方向に垂直な方向の端面上にも針状結晶配列体21を設けた構成である。したがって、発光素子101は、発光素子51,81と同様の効果を達成することができる。
【0104】
図16は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子111の作製手順を示すフローチャートである。図17は、作製工程における発光素子111の断面図である。発光素子111の作製手順は、図4に示すフローチャートと同様であり、図4に示すフローチャートの各工程に加えて、ステップs1とステップs2との間に、電気絶縁膜を形成する工程を追加したものである。図17(1)は、電気絶縁膜54が形成されたウエハ30の断面図であり、図17(2)は第1および第2電極5,9を形成した後のウエハ30の断面図であり、図4(3)はレジスト膜34が形成されたウエハ30の断面図であり、図17(4)はレジスト膜34が除去されたウエハ30の断面図である。発光素子111は、前述した発光素子51,81と同様な構成を有し、同様の構成には同様の参照符号を付してその説明を省略する。
【0105】
ステップa1は、前述した図4のフローチャートのステップs1と同様であるので、説明を省略する。次にステップa2では、電気絶縁膜54の前駆体となる絶縁層を、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の積層体を覆うように、SiO2によって形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングによって絶縁層の一部を除去して、図17(1)に示すようにコンタクト層8の厚み方向の一表面8aの周縁部と、バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8の前記厚み方向に垂直な方向の端面とを覆う電気絶縁膜54を形成する。
【0106】
次にステップa3では、第2電極9の前駆体となる金属層を、前記バッファ層6、発光層7およびコンタクト層8ならびに電気絶縁膜54の積層体を覆うように形成した後、スパッタリングによって形成し、フォトリソグラフィおよびエッチングによって金属層の一部を除去して図17(2)に示すように第2電極9を形成する。またステップa3では、前述した図4のフローチャートのステップs2と同様にして、第1電極5を形成する。
【0107】
次にステップa4では、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9の積層体と、基板2の一表面2aとを覆って、スピンコートによって感光性レジストを塗布してレジスト膜34を形成する。
【0108】
次にステップa5では図17(3)に示すように、ステップs4で形成したレジスト膜34の所定の位置に孔112を形成する。本実施の形態では、レジスト膜34のうち、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9の積層体が露出するように孔112を形成する。
【0109】
次にステップa6に移る。ステップa6〜ステップa10までの各工程は、前述した図4のフローチャートのステップs5〜ステップs9までの各工程にそれぞれ対応するので、説明を省略する。
【0110】
このようにして作製された発光素子111は、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9が積層されて成る積層体の、ウエハ30を除く表面に針状結晶配列体21が形成され、前述した発光素子81と同様な効果を達成することができる。
【0111】
図18は、本発明の実施のさらに他の形態の発光素子121の断面図である。発光素子121は、前述した発光素子111の製造手順において、レジスト膜34の孔112を、バッファ層6、発光層7、コンタクト層8、電気絶縁膜54ならびに第2電極9の積層体の前記厚み方向の一表面のみが露出するように形成して、他は発光素子111を製造する製造手順と同様な手順によって作製される。発光素子本体の1方向の表面にのみ針状結晶配列体21を形成することによって、たとえばプリンタ向けの半導体発光素子として用いることができる。
【0112】
本発明のさらに他の実施の形態において、前述した各実施の形態における電気絶縁膜は、窒化物によって形成されてもよい。このような窒化物としては、たとえばSiNなどが挙げられる。
【0113】
前述した各実施の形態では、発光素子本体が発光ダイオードによって実現されるが、本発明のさらに他の実施の形態では、発光素子本体がレーザダイオードまたはエレクトロルミネッセンスによって形成されてもよい。
【0114】
本実施のさらに他の形態では、前述した各実施の形態において、針状結晶配列体21の光が出射される側の表面を覆って樹脂層を形成してもよい。このような樹脂層は、発光素子からの光を透過し、かつ針状結晶配列体の屈折率よりも屈折率が低くなるように形成される。このような樹脂層は、たとえばポリイミド、BCBなどによって形成される。
【0115】
本発明の実施のさらに他の形態では、前述した各実施の形態において、オーミックコンタクト層8および電極部9の少なくともいずれか一方と、針状結晶配列体21とに介在させて、ZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ針状結晶配列体21に含まれる物質から成る金属膜を設けてもよい。このような金属膜を設けることによって、針状結晶配列体21とこの針状結晶配列体21に接触する発光素子本体の表面部とのオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0116】
なお、本発明は以上の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何等差し支えない。たとえば、図5、図6、図8、図10、図12、図14、図15、図17および図18に示す各実施の形態の半導体素子41,51,61,71,81,91,101,111,121において、前記発光層7を、発光層である活性層と、活性層の厚み方向の両側にそれぞれ設けられる障壁層とに代えて発光素子を構成してもよい。障壁層は、そのバンドギャップが活性層のバンドギャップよりも大きくなるように形成される。バッファ層6と活性層との間に介在される障壁層を第1障壁層とし、活性層とコンタクト層8との間に介在される障壁層を第2障壁層とすると、基板2、バッファ層6、第1障壁層、活性層、第2障壁層およびコンタクト層は、たとえば、以下の表1の材料の組み合わせによって形成される。表1では、発光素子41,51,81,91,101,111,121をAタイプとし、発光素子61,71をBタイプとする。
【0117】
【表1】
【0118】
このような構成であっても、同様の効果を達成することができ、さらに障壁層を設けることによって、内部量子効率を向上させて発光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施の一形態の半導体発光素子1を示す断面図である。
【図2】半導体発光素子1の平面図である。
【図3】発光素子1の作製手順を示すフローチャートである。
【図4】作製工程における発光素子1の断面図である。
【図5】本発明の実施の他の形態の発光素子41の平面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の発光素子51の断面図である。
【図7】発光素子51の平面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態の発光素子61の断面図である。
【図9】発光素子61の平面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態の発光素子71の断面図である。
【図11】発光素子71の平面図である。
【図12】本発明の実施の一形態の発光素子81を示す断面図である。
【図13】発光素子81の平面図である。
【図14】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子91の平面図である。
【図15】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子101の平面図である。
【図16】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子111の作製手順を示すフローチャートである。
【図17】作製工程における発光素子111の断面図である。
【図18】本発明の実施のさらに他の形態の発光素子121の断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1,41,51,61,71,81,91,101,111,121 発光素子
2,62 基板
3,63 半導体層
4,56,64,72 積層体
20,65,74,84 発光素子本体
21 針状結晶配列体
22 針状結晶体
34 レジスト膜
35,112 孔
54,82 電気絶縁膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光型の半導体発光素子本体と、
前記半導体発光素子本体の、光を取り出すための光取り出し面上に設けられ、前記光取り出し面に垂直な方向に配向する複数の針状結晶体が配列されて形成される針状結晶配列体とを含み、
前記針状結晶配列体は、
前記針状結晶体のアスペクト比が3以上100以下に選ばれ、
複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、109本/cm2以上1012本/cm2以下に選ばれ、
前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過し、
前記半導体発光素子本体のうち前記光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さく選ばれることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記半導体発光素子本体は、
基板と、
前記基板の厚み方向の一表面上に、前記厚み方向に積層される複数の半導体層を含んで形成される積層体とを有し、
前記光取り出し面は、前記半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記針状結晶配列体は、導電性を有し、前記厚み方向において前記基板から最も離反する前記半導体層に接触して設けられることを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記光取り出し面は、前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体発光素子本体の端面を含むことを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記半導体発光素子本体は、
前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体層の端面上に設けられ、前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過する電気絶縁膜を含んで構成され、
前記光取り出し面は、
前記電気絶縁膜の前記半導体層とは反対側の表面を含むことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記針状結晶配列体は、光吸収端が300nm以上500nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって形成され、発光スペクトルのピーク波長が、500nm以上850nm未満であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記針状結晶配列体は、光吸収端が200nm以上350nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって構成され、発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記針状結晶配列体は、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物から成ることを特徴とする請求項6または7記載の半導体発光素子。
【請求項9】
請求項3に係る請求項8記載の半導体発光素子であって、
前記発光素子本体のうち、前記針状結晶配列体と接する表面部は、
ZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質から成る金属膜、
またはZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質を、濃度が1019cm−3以上となるように含む半導体膜のうち少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項10】
半導体発光素子本体の表面を覆ってレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜のうち、予め定める部分を除去して前記表面の一部を露出させ、
前記レジスト膜およびレジスト膜から露出する前記表面の前記一部に微小粒子を付着させ、
予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中で、前記微小粒子を成長核として針状結晶を成長させ、
成長した針状結晶のうち、前記表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜とともに除去することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項1】
面発光型の半導体発光素子本体と、
前記半導体発光素子本体の、光を取り出すための光取り出し面上に設けられ、前記光取り出し面に垂直な方向に配向する複数の針状結晶体が配列されて形成される針状結晶配列体とを含み、
前記針状結晶配列体は、
前記針状結晶体のアスペクト比が3以上100以下に選ばれ、
複数の前記針状結晶体の単位面積あたりの数が、109本/cm2以上1012本/cm2以下に選ばれ、
前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過し、
前記半導体発光素子本体のうち前記光取り出し面が形成される部分の屈折率よりも屈折率が小さく選ばれることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記半導体発光素子本体は、
基板と、
前記基板の厚み方向の一表面上に、前記厚み方向に積層される複数の半導体層を含んで形成される積層体とを有し、
前記光取り出し面は、前記半導体発光素子本体の前記厚み方向の端面のうちの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記針状結晶配列体は、導電性を有し、前記厚み方向において前記基板から最も離反する前記半導体層に接触して設けられることを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記光取り出し面は、前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体発光素子本体の端面を含むことを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記半導体発光素子本体は、
前記厚み方向に垂直な方向における前記半導体層の端面上に設けられ、前記半導体発光素子本体が発する波長の光を透過する電気絶縁膜を含んで構成され、
前記光取り出し面は、
前記電気絶縁膜の前記半導体層とは反対側の表面を含むことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記針状結晶配列体は、光吸収端が300nm以上500nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって形成され、発光スペクトルのピーク波長が、500nm以上850nm未満であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記針状結晶配列体は、光吸収端が200nm以上350nm未満であり、
前記発光素子本体の前記各半導体層は、III−V族化合物半導体によって構成され、発光スペクトルのピーク波長が350nm以上850nm未満であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記針状結晶配列体は、Zn、MgおよびCaから成る群から選ばれる少なくとも1種以上を含む酸化物から成ることを特徴とする請求項6または7記載の半導体発光素子。
【請求項9】
請求項3に係る請求項8記載の半導体発光素子であって、
前記発光素子本体のうち、前記針状結晶配列体と接する表面部は、
ZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質から成る金属膜、
またはZnおよびMgの少なくとも1種以上であり、かつ前記針状結晶配列体に含まれる物質を、濃度が1019cm−3以上となるように含む半導体膜のうち少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項10】
半導体発光素子本体の表面を覆ってレジスト膜を形成し、
前記レジスト膜のうち、予め定める部分を除去して前記表面の一部を露出させ、
前記レジスト膜およびレジスト膜から露出する前記表面の前記一部に微小粒子を付着させ、
予め定める物質を含むアルカリ性の溶液中で、前記微小粒子を成長核として針状結晶を成長させ、
成長した針状結晶のうち、前記表面に成長した部分を除く残部を、レジスト膜とともに除去することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−299953(P2007−299953A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127018(P2006−127018)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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