半導体発光素子の製造方法
【課題】LEDダイ底面にマザー基板との接続電極を備えるLED素子では、ゴミやバリなどに対する実装制限を緩和するため接続電極を突起させることが好ましい。このLED素子を簡単に効率よく製造できるようにする。
【解決手段】突起電極12,13を備えるLEDダイ16と粘着シート31を準備し、この粘着シート31の粘着層31aにLEDダイ16の底面が接触するように突起電極12,13を沈み込ませながら、粘着シート31上にLEDダイを配列し、粘着シート31とともにLEDダイ16を蛍光体層で覆ってから蛍光体層11を切断し、個片化したLED素子10を得る。
【解決手段】突起電極12,13を備えるLEDダイ16と粘着シート31を準備し、この粘着シート31の粘着層31aにLEDダイ16の底面が接触するように突起電極12,13を沈み込ませながら、粘着シート31上にLEDダイを配列し、粘着シート31とともにLEDダイ16を蛍光体層で覆ってから蛍光体層11を切断し、個片化したLED素子10を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面に接続用電極を備え、側面と上面に蛍光体層等の樹脂を被覆した半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで半導体発光素子(以下とくに断らない限りLED素子と呼ぶ)は、ダイサイズが小さかったため、LED素子とマザー基板との間の電極間ピッチの違いを補正する回路基板(インターポーザともいう)上に実装されることが多かった。この回路基板は、セラミックや金属、樹脂などからなる板材に電極を形成したものである。
【0003】
最近では高輝度化にともないLED素子も大型化し、1mm×(0.5〜1)mm程度のものも入手できるようになってきた。このサイズになるとLED素子底面にマザー基板と同じピッチの接続電極が形成できるようになるのでインターポーザ用の回路基板が不要になる。
【0004】
このようなLED素子の好ましい一形態として、LED素子の上面と側面に蛍光体層等の樹脂層を被覆し、底面に突起した接続電極を有するものがある。この樹脂層は、LED素子に含まれる透明絶縁基板と空気との間の屈折率変化を緩和し発光効率を改善したり、蛍光体を含有させLED素子の発光色を白くしたりしている。また突起電極は、このLED素子をマザー基板に実装するとき、ごみ等の異物やバリ等の加工上の不要物に対する実装時の制約を緩和する。
【0005】
上面と側面を樹脂層で被覆し、底面に突起電極を備えるLED素子の製造方法としては、LEDダイ(以下上面又は側面に樹脂層を備えていない状態の半導体発光素子をLEDダイと呼び、上面及び側面に樹脂層を備え状態の半導体発光素子であるLED素子と呼んで区別する)と粘着シートを準備し、このLEDダイの電極面が粘着シートと接続するようにして粘着シート上に複数のLEDダイを配列し、このLEDダイの上面と側面を樹脂等で封止してから、最後に個片化してLED素子を得る製造方法が知られている。
【0006】
例えば特許文献1の図12から図15には転写用の耐熱シート42(粘着シート)上にバンプ8(突起電極)を有する発光素子4(LEDダイ)を配列させ、この発光素子4を封止部材6(樹脂等)が入ったトレー44に沈め、発光素子4を封止部材6で封止し、最後に封止部材6を備えた発光装置2に個片化する工程が示されている。なお発光装置2は図19,20に示されるように基板3(インターポーザ用の回路基板)にフリップチップ実装される。
【0007】
特許文献2の図2には、両面粘着材フィルム24(粘着シート)上に発光素子1(LEDダイ)を配列し、発光素子1に硬化前の樹脂封止層3bを塗布し、発光素子1を封止する工程が示されている。なお特許文献2では図3,4で示すように、その後、両面粘着材フィルム24を剥がし、電極面側にインターポーザ層5を形成し、最後に個片化している。
【0008】
特許文献1,2で示したLED素子の製造方法は、個片化したLEDダイを粘着シートに配列させたものであったが、ウェハーから直接的にLED素子を製作する方法もある。例えば特許文献3の図1には、LEDチップ(LEDダイ)が連結して配列したウェハーに対しLEDチップの境界部に溝12を形成し、スキージでLEDチップの光出射面と側面を蛍光体層13で封止してから、ダイシングシート24(粘着シート)上にウェハー1
1を貼り付け、最後に溝12を薄い切断具25で切断し封止層を備えた発光素子(LED素子)に個片化する工程が示されている。なお突起したp電極7及びn電極8は予めウェハー状態で形成しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−261325号公報 (図12〜図15)
【特許文献2】特開2004−363279号公報 (図2〜図4)
【特許文献3】特許3978514号公報 (図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3のようにウェハーを直接的に加工してLED素子を得る方法は、LEDダイが密集しているため加工効率が良く、LEDダイの並べ替えもないのでパッケージの外形精度も高い。しかしながらLEDダイの側面まで封止しようとするとLEDダイ間の溝を太くせざるを得ず、例えば特許文献3のように封止材である蛍光体が十分に機能するためには幅が300〜500μm程度必要になる。このように発光に関わらない太い領域があると、削り量が多くなるばかりでなく、LEDダイの取り個数が減り好ましくない。さらに不良品のLEDダイも最後まで加工することになったり、LEDダイごとの発光特性の違いを補正できなくなったりもする。以上のようにウェハーから直接的にLED素子を得る方法は加工上のメリットが小さくなる。
【0011】
特許文献2のように個片化したLEDダイを粘着シートに貼り付け直した後、封止・個片化を行なう場合、ウェハーに対し通常のダイシング条件以外の制限がないためウェハーの削り量が少なく取り個数も減らない。また不良品のLEDダイはダイシング直後廃棄可能であり、粘着シートに特性のそろったLEDダイを選別して配列させることも可能になる。しかしながら特許文献2に示したLEDダイは底面積が小さいものを想定しているため追加工によりインターポーザ層を形成していた。この結果、ダイ側面を封止した後の工程が長くなっていた。
【0012】
これに対しウェハー段階で突起電極を形成しておけば、LEDダイが高精度・高密度で配列しているうえ、ウェハー自体が硬質であることから電極形成に対する効率が良い。しかしながら特許文献1に示されるような封止工程では、LEDダイの厚さが変動したり、LEDダイの底面積が変動したりすると、バンプ上面から液面までの高さ一定にならず、突起電極の突起量が一定しないという課題がある。
【0013】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子を簡便に効率よく製造する半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子の製造方法において、
前記突起電極を備えるダイと、シート上に粘着層を備える粘着シートとを準備する準備工程と、
前記粘着層に前記ダイの底面が接触するように前記粘着層に前記突起電極を沈み込ませながら、前記粘着シート上に前記ダイを配列する配列工程と、
前記粘着シートとともに前記ダイの側面を前記樹脂層で覆う被覆工程と、
前記樹脂層を切断し、個片化した前記半導体発光素子を得る個片化工程とを
備えることを特徴とする。
【0015】
前記樹脂層が蛍光体を含有し、前記被覆工程において、前記ダイの側面とともに前記ダイの上面を前記樹脂層で被覆しても良い。
【0016】
前記樹脂層が反射材を含有する第1の樹脂層と蛍光体を含有する第2の樹脂層からなり、前記被覆工程において前記第1の樹脂層で前記ダイの側面を被覆し、その後前記第2の樹脂層で前記ダイの上面を被覆しても良い。
【0017】
前記樹脂層が蛍光体を含有する第3の樹脂層と反射材を含有する第4の樹脂層からなり、前記準備工程の前に前記ダイの上面を前記第3の樹脂層で被覆し、被覆工程において前記ダイの側面とともに前記第3の樹脂層の側面を前記第4の樹脂層で被覆しても良い。
【0018】
前記被覆工程において金型を使って前記樹脂層を形成しても良い。
【0019】
前記配列工程において前記粘着シートを加熱しておいても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、突起電極を有するダイを粘着シートに配置する際に、粘着層に突起電極を沈み込ませ、粘着層とダイの底面を接触させている。このため粘着シートごとダイを覆うように樹脂層を形成してもダイの底面には樹脂層が形成されない。このため突起電極の突起量は樹脂層形成前後で変化しない。この結果、上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子を簡便に効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態におけるLED素子の外観を示す図。
【図2】図1に示すLED素子の断面図。
【図3】図1に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図4】図1に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図5】本発明の第2実施形態におけるLED素子の外観を示す図。
【図6】図5に示すLED素子の断面図。
【図7】図5に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図8】本発明の第3実施形態におけるLED素子の外観を示す図。
【図9】図8に示すLED素子の断面図。
【図10】図8に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図11】図8に示すLED素子の製造工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図1〜11を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。さらに特許請求の範囲に記載した発明特定事項との関係をカッコ内に記載している。
(第1実施形態)
【0023】
添付図1〜4を参照して本発明の第1実施形態を詳細に説明する。まず図1と図2によりLED素子10の構造を説明する。図1は本発明の実施形態におけるLED素子10の外観を示す図であり、(a)が上面図、(b)が正面図、(c)が底面図である。LED素子10を上面から眺めると、長方形の蛍光体層11(樹脂層)だけが見える(a)。LED素子10を正面から眺めると、蛍光体層11の下に突起電極12,13が見える(b)。LED素子10を下から眺めると、蛍光体層11に囲まれた半導体層14が見え、さ
らに半導体層14の内側に突起電極12,13が見える(c)。LEDダイ16の底面は1.0mm×0.5mmであり、蛍光体層11の幅は0.2mmである。この結果、LED素子10は1.4mm×0.9mmとなり、サーフェースマウンタ(表面実装機)で扱いやすい大きさになっている。
【0024】
次に図2によりLED素子10の内部構造を説明する。図2は図1のAA線に沿ったLED素子10の断面図である。LED素子10において、LEDダイ16はサファイア基板15と半導体層14、保護膜17、突起電極12,13からなり、LEDダイ16の上面と側面は蛍光体層11で覆われている。このときLEDダイ16の底面には蛍光体層11が存在しない。なおLEDダイ16はサファイアを透明絶縁基板としたウェハーから切り出されたものであり、ウェハー状態で突起電極12,13が形成されている。
【0025】
サファイア基板15は、厚さが70〜150μm程度でLEDダイ16の平面的な外形を決める。サファイア基板15の下面に形成された半導体層14は、p型半導体層14c上に発光層14b、n型半導体層14aが積層した積層体である。さらにp型半導体層14cは複数の金属からなる金属層とp型GaNの積層体であり、厚さが1μm程度である。この金属層は反射層を含み、発光層14bから下向きに出射する光線を上側に向ける。発光層14bは厚さが100nm程度であり青色光を出射する。n型半導体層14aは、n型GaN層と格子定数を調整するバッファ層からなり厚さが5μm程度である。保護膜17は半導体層14を覆い、p型半導体層14cの占める領域及びn型半導体層14aの露出した領域に開口部を備えている。それぞれの開口部においてp型半導体層14cと突起電極12、並びにn型半導体層14aと突起電極13が接続する。
【0026】
突起電極12,13は銅メッキで形成されたメッキバンプであり、厚さが10〜30μmで、表面に錫層を備えている。なお突起電極13は、n型半導体層14aの露出部が小さいため、一部が保護膜17を介してp型半導体層14cと積層している。また突起電極12,13は、それぞれアノードとカソードであり、マザー基板と接続するための接続電極となっている。ここでマザー基板とは抵抗やコンデンサなど他の電子部品とともにLED素子10を実装する基板である。
【0027】
蛍光体層11は蛍光体を含有するシリコーン樹脂であり、LEDダイ16から出射してくる青色光の一部を蛍光体層11中の蛍光体が波長変換する。この波長変換した光と青色光の残りが混色してLED素子10の発光色を白色化する。
【0028】
次に図3と図4によりLED素子10の製造方法を説明する。図3及び図4はLED素子10の製造工程の説明図である。なおLEDダイ16は図2よりも簡略化して描いているため、例えば保護膜17(図2参照)は図示していない(以下同様)。
【0029】
まず(a)で示す準備工程において、下面に突起電極12,13を備えたLEDダイ16と粘着シート31を準備する。粘着シート31は大判であり、多数のLEDダイ16が搭載されるが、図3及び図4では説明のため搭載するLEDダイ16を2個で示している。LEDダイ16は図2で説明したようにサファイア基板15の下に半導体層14が形成され、この半導体層14に突起電極12,13が接続している。なお保護膜17(図2参照)は図示していない。粘着シート31は厚さが数10μmの樹脂シート31b上に、厚さが20〜100μmの粘着層31aを積層したものである。この粘着層31aは突起電極12,13の高さよりも厚い。
【0030】
次に(b)で示す配列工程において、粘着シート31の粘着層31aにLEDダイ16の底面が接触するように突起電極12,13を粘着層31aに埋め沈み込ませながら、粘着シート31上にLEDダイ16を配列する。まず粘着シート31を支持台32上に配置
し、支持台32により粘着シート31を加熱する。この加熱により粘着層31aが軟化し、LEDダイ16を沈み込ませ易くする。次にピッカー(又はソーター)でLEDダイ16を一個ずつ粘着シート31上に配置していく。また、いったん他の粘着シート(図示せず)に複数のLEDダイ16を配列させておき、この複数のLEDダイ16を一括して粘着シート31に貼り付け(転写し)ても良い。
【0031】
なお本実施形態では粘着層31aを支持台32で加熱しているが、ピッカーにヒーターを取り付けLEDダイ16を加熱しながら粘着シート31上に配置しても良い。粘着層31aは低温ないし紫外線で粘着力を失うものが好ましい。高温で粘着力を失う場合はLEDダイ16を配置するときに粘着層31aを加熱せず、圧力だけでLEDダイ16を沈み込ませる。粘着層31aと突起電極12,13の高さが同じ場合は突起電極12,13が樹脂シート31b表面に当たるまでLEDダイ16を粘着層31aに押し込んでも良い。
【0032】
次に(c)及び(d)で示す被覆工程において、粘着シート31とともにLEDダイ16を蛍光体層11で覆う。まず粘着シート31を金型33の下蓋33b上にのせ、上蓋33aで粘着シート31を密封する(c)。次に金型33内の隙間に硬化前の蛍光体樹脂を注入し、金型33を加熱して蛍光体樹脂を硬化させ蛍光体層11を形成する(d)。
【0033】
(c)及び(d)はトランスファー成型をイメージして図示しているが、コンプレッション成型でも良い。また蛍光体層11を形成する手法は金型33に限定されず、塗布法やスキージであっても良い。この場合、蛍光体層11を硬化させたら所望の厚さにするため蛍光体層11を研磨することが好ましい。
【0034】
最後に(e)〜(g)に示す個片化工程において、蛍光体層11を切断し、個片化したLED素子10を得る。まず蛍光体層11を形成した粘着シート31を金型33から取り出す(e)。次に粘着シート31を残すようにしてLEDダイ16の間の蛍光体層11を切断する(f)。最後に粘着シート31から個別のLED素子10を取り外す(g)。前述したように冷却、紫外線照射、加熱などで粘着シート31の粘着力を失わせておくことが望ましい。
【0035】
なお本実施形態では粘着シート31にLEDダイ16を載せたまま蛍光体層11を切断しLED素子10を取り外していた。他の手順として、金型33から粘着シート31を取り出した後(e)、LEDダイ16が蛍光体層11で連結したもの(擬似ウェハーと呼ぶ)の蛍光体層11側をダイシングシートに貼り付け、粘着シート31を剥がしてもよい。この場合、電極面の洗浄が可能となり、擬似ウェハー状態で電気特性や光学特性の検査を行ってしまえるので、LED素子10の個片化と同時にLED素子10を搬送テープに収納できる。
(第2実施形態)
【0036】
第1実施形態ではLEDダイ16の上面及び側面を被覆する樹脂が蛍光体体層11であった。しかしながら被覆用の樹脂は蛍光体層11に限られない。前述したように樹脂層は、LED素子に含まれる透明絶縁基板と空気との間の屈折率の変化を緩和し発光効率を改善させる他、樹脂に蛍光体を含有させればLED素子の発光色を白くでき、樹脂に反射性微粒子を含有させれば反射部材としても機能する。例えばLEDダイ16の上面を蛍光体層で被覆し、側面を反射性の樹脂層(以下反射層と呼ぶ)で被覆しても良い。このようなLED素子の簡便で効率的な製造方法を実施形態2,3で説明する。以下、添付図5〜7を参照しながら本発明の第2実施形態について詳細に説明する。
【0037】
まず図5と図6により本実施形態で製造するLED素子40の構造を説明する。図5はLED素子40の外観を示す図であり、(a)が上面図、(b)が正面図、(c)が底面
図である。LED素子40を上面から眺めると、長方形の蛍光体層41(第2の樹脂層)だけが見える(a)。LED素子40を正面から眺めると、蛍光体層41の下に反射層42(第1の樹脂層)が見え、さらに反射層42の下側に突起電極12,13が見える(b)。LED素子40を下から眺めると、反射層42に囲まれた半導体層14が見え、さらに半導体層14の内側に突起電極12,13が見える(c)。なおLEDダイ16は図2で示した第1実施形態におけるLEDダイ16と同じものである。
【0038】
次に図6によりLED素子40の内部構造を説明する。図6は図5のBB線に沿ったLED素子40の断面図である。LEDダイ16の側面には反射層42が付着している。蛍光体層41はLEDダイ16の上面と反射層42の上部を覆っている。蛍光体層41は図1,2で示したLED素子10の蛍光体層11と同様にシリコーン樹脂である。反射層42は酸化チタン等の反射性微粒子を混練したシリコーン樹脂(以下反射性樹脂と呼ぶ)である。LED素子40の側方及び下方に向う光線は、反射層42とp型半導体層14cに含まれる金属反射層により反射しLED素子40の上方に向う。このようにLED素子40は側方に向う光線がないので扱い易い。
【0039】
次に図7によりLED素子40の製造方法を説明する。LEDダイ16と粘着シート31を準備する準備工程は、図3(a)の準備工程と同じなので図示していない。(b−2)は突起電極12,13を粘着層に沈み込ませるようにしてLEDダイ16を粘着シート31上に配列する配列工程である。なお(b−2)は、図3(b)の配列工程と同じものであるが、見やすくするため本図では支持台32(図3参照)を描かなかった。
【0040】
(d−2)及び(e−2)で示す被覆工程において、LEDダイ16の側面及び上面をそれぞれ反射層42及び蛍光体層41で被覆する。(d−2)はLEDダイ16の間隙に反射層42を充填する工程を示している。このとき適量の反射性樹脂(硬化前)をディスペンサーにより間隙に充填しても良いが、LEDダイ16のサファイア基板上面が隠れるくらいまで反射性樹脂を塗布し硬化させ、サファイア基板上面が露出するまで反射性樹脂を研磨し反射層42を形成する方が効率的である。次に(e−2)に示すようにLEDダイ16及び反射層42の上部に蛍光体層41を形成する。このときLEDダイ16及び反射層42の上部の蛍光体層41は塗布で形成しても良いし、蛍光体を含有する蛍光体シートを貼り付けても良い。
【0041】
最後に(f−2)及び(g−2)に示す個片化工程において、図4(f)及び(g)で示した第1実施形態の個片化工程と同様に、蛍光体層41と反射層42を切断し、個片化したLED素子40を得る。
(第3実施形態)
【0042】
以下、添付図8〜11を参照しながら本発明の第3実施形態について詳細に説明する。まず図8と図9により本実施形態で製造するLED素子60の構造を説明する。図8はLED素子60の外観を示す図であり、(a)が上面図、(b)が正面図、(c)が底面図である。LED素子60を上面から眺めると、外周部に存在する反射層62とその内側にある長方形の蛍光体層61が見える(a)。LED素子60を正面から眺めると、反射層62と反射層62の下にある突起電極12,13が見える(b)。LED素子60を下から眺めると、反射層62に囲まれた半導体層14が見え、さらに半導体層14の内側に突起電極12,13が見える(c)。なお半導体層14及び突起電極12,13が含まれるLEDダイ16(図9参照)は図2で示した第1実施形態におけるLEDダイ16と同じものである。
【0043】
次に図9によりLED素子60の内部構造を説明する。図9は図8のCC線に沿ったLED素子60の断面図である。LED素子60において、LEDダイ16の上面に蛍光体
層61があり、LEDダイ16及び蛍光体層61の側面に反射層62が付着している。蛍光体層61は図1,2で示したLED素子10の蛍光体層11と同様に蛍光体を含有したシリコーン樹脂である。反射層62は、図5〜7で示した反射層42と同様に、酸化チタン等の反射性微粒子を含有したシリコーン樹脂からなる。LED素子40の側方及び下方に向う光線は、反射層62とp型半導体層14cに含まれる金属反射層により反射しLED素子60の上方に向う。このようにLED素子60もLED素子40(図5参照)と同様に側方に向う光線がないので扱い易い。
【0044】
次に図10及び図11によりLED素子60の製造方法を説明する。図10は、LEDダイ16aと粘着シート31を準備する準備工程の前に、LEDダイ16(図9参照)のサファイア基板15上に蛍光体層61を被覆する工程を示している。なお図10,11においてLEDダイ16aは、図2、9で示したLEDダイ16に対し、上面(図10では下側)が蛍光体層61で被覆されているのでサフックスaを追加して区別している。
【0045】
まず突起電極形成前のLEDダイが配列して連結するウェハー30を準備する(a)。ウェハー30はサファイア基板15上に複数の半導体層14が形成されている。なおウェハー30上には数千から数万個の半導体層14が形成されるが、本図では説明のため3個だけ示している。また本図では半導体層14がウェハー30上で分離しているが、他の例として半導体層に含まれるn型半導体層がウェハー全面に形成され、p型半導体層だけが分離していることもある。
【0046】
次に突起電極12,13を形成する(b)。最初にウェハー30の上面全体にスパッタ法でメッキ用共通電極膜を形成し、続いてホトリソグラフィ法で突起電極12,13を設ける領域に開口を有するレジスト膜を形成する。次に電解メッキ法で突起電極12,13を成長させ、その後レジスト膜を除去し、最後にメッキ電極12,13をマスクとしてメッキ用共通極膜の露出部を除去する。
【0047】
次にサファイア基板15の下面に蛍光体層61を形成する(c)。蛍光体層61は塗布法で形成しても良いし、蛍光体シートを貼り付けても良い。最後にウェハー30をLEDダイ16aに個片化する(d)。個片化は、ダイシングでもスクライブ・ブレーク法でも良い。
【0048】
LEDダイ16aが出来上がったら、次に図11に示すようにLEDダイ16aの側面を樹脂で被覆する工程に移る。LEDダイ16aと粘着シート31を準備する準備工程は、図3(a)の準備工程と同等なので図示していない。(b−3)は突起電極12,13を粘着層に沈み込ませるようにしてLEDダイ16aを粘着シート31上に配列する配列工程である。なお(b−3)も、図3(b)の配列工程と同等であるが、見やすくするため本図では支持台32(図3参照)を描かなかった。
【0049】
(d−3)で示す被覆工程において、LEDダイ16a及び蛍光体層61の側面を反射層42で被覆する。LEDダイ16aの間隙に適量の反射性樹脂(硬化前)をディスペンサーにより間隙に充填しても良いが、蛍光体層61の上面が隠れるくらいまで反射性樹脂を塗布し硬化させ、蛍光体層61が露出するまで反射性樹脂を研磨し反射層62を形成する方が効率的である。
【0050】
最後に(f−3)及び(g−3)に示す個片化工程において、図4(f)及び(g)で示した第1実施形態の個片化工程と同様に、反射層62を切断し、個片化したLED素子60を得る。
【符号の説明】
【0051】
10,40,60…LED素子(半導体発光素子)、
11,41,61…蛍光体層、
12,13…突起電極、
14…半導体層、
14a…n型半導体層、
14b…発光層、
14c…p型半導体層、
15…サファイア基板、
16,16a…LEDダイ(ダイ)、
17…保護膜、
31…粘着シート、
31a…粘着層、
31b…樹脂シート、
32…支持台、
33…金型、
33a…上蓋、
33b…下蓋。
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面に接続用電極を備え、側面と上面に蛍光体層等の樹脂を被覆した半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで半導体発光素子(以下とくに断らない限りLED素子と呼ぶ)は、ダイサイズが小さかったため、LED素子とマザー基板との間の電極間ピッチの違いを補正する回路基板(インターポーザともいう)上に実装されることが多かった。この回路基板は、セラミックや金属、樹脂などからなる板材に電極を形成したものである。
【0003】
最近では高輝度化にともないLED素子も大型化し、1mm×(0.5〜1)mm程度のものも入手できるようになってきた。このサイズになるとLED素子底面にマザー基板と同じピッチの接続電極が形成できるようになるのでインターポーザ用の回路基板が不要になる。
【0004】
このようなLED素子の好ましい一形態として、LED素子の上面と側面に蛍光体層等の樹脂層を被覆し、底面に突起した接続電極を有するものがある。この樹脂層は、LED素子に含まれる透明絶縁基板と空気との間の屈折率変化を緩和し発光効率を改善したり、蛍光体を含有させLED素子の発光色を白くしたりしている。また突起電極は、このLED素子をマザー基板に実装するとき、ごみ等の異物やバリ等の加工上の不要物に対する実装時の制約を緩和する。
【0005】
上面と側面を樹脂層で被覆し、底面に突起電極を備えるLED素子の製造方法としては、LEDダイ(以下上面又は側面に樹脂層を備えていない状態の半導体発光素子をLEDダイと呼び、上面及び側面に樹脂層を備え状態の半導体発光素子であるLED素子と呼んで区別する)と粘着シートを準備し、このLEDダイの電極面が粘着シートと接続するようにして粘着シート上に複数のLEDダイを配列し、このLEDダイの上面と側面を樹脂等で封止してから、最後に個片化してLED素子を得る製造方法が知られている。
【0006】
例えば特許文献1の図12から図15には転写用の耐熱シート42(粘着シート)上にバンプ8(突起電極)を有する発光素子4(LEDダイ)を配列させ、この発光素子4を封止部材6(樹脂等)が入ったトレー44に沈め、発光素子4を封止部材6で封止し、最後に封止部材6を備えた発光装置2に個片化する工程が示されている。なお発光装置2は図19,20に示されるように基板3(インターポーザ用の回路基板)にフリップチップ実装される。
【0007】
特許文献2の図2には、両面粘着材フィルム24(粘着シート)上に発光素子1(LEDダイ)を配列し、発光素子1に硬化前の樹脂封止層3bを塗布し、発光素子1を封止する工程が示されている。なお特許文献2では図3,4で示すように、その後、両面粘着材フィルム24を剥がし、電極面側にインターポーザ層5を形成し、最後に個片化している。
【0008】
特許文献1,2で示したLED素子の製造方法は、個片化したLEDダイを粘着シートに配列させたものであったが、ウェハーから直接的にLED素子を製作する方法もある。例えば特許文献3の図1には、LEDチップ(LEDダイ)が連結して配列したウェハーに対しLEDチップの境界部に溝12を形成し、スキージでLEDチップの光出射面と側面を蛍光体層13で封止してから、ダイシングシート24(粘着シート)上にウェハー1
1を貼り付け、最後に溝12を薄い切断具25で切断し封止層を備えた発光素子(LED素子)に個片化する工程が示されている。なお突起したp電極7及びn電極8は予めウェハー状態で形成しておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−261325号公報 (図12〜図15)
【特許文献2】特開2004−363279号公報 (図2〜図4)
【特許文献3】特許3978514号公報 (図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3のようにウェハーを直接的に加工してLED素子を得る方法は、LEDダイが密集しているため加工効率が良く、LEDダイの並べ替えもないのでパッケージの外形精度も高い。しかしながらLEDダイの側面まで封止しようとするとLEDダイ間の溝を太くせざるを得ず、例えば特許文献3のように封止材である蛍光体が十分に機能するためには幅が300〜500μm程度必要になる。このように発光に関わらない太い領域があると、削り量が多くなるばかりでなく、LEDダイの取り個数が減り好ましくない。さらに不良品のLEDダイも最後まで加工することになったり、LEDダイごとの発光特性の違いを補正できなくなったりもする。以上のようにウェハーから直接的にLED素子を得る方法は加工上のメリットが小さくなる。
【0011】
特許文献2のように個片化したLEDダイを粘着シートに貼り付け直した後、封止・個片化を行なう場合、ウェハーに対し通常のダイシング条件以外の制限がないためウェハーの削り量が少なく取り個数も減らない。また不良品のLEDダイはダイシング直後廃棄可能であり、粘着シートに特性のそろったLEDダイを選別して配列させることも可能になる。しかしながら特許文献2に示したLEDダイは底面積が小さいものを想定しているため追加工によりインターポーザ層を形成していた。この結果、ダイ側面を封止した後の工程が長くなっていた。
【0012】
これに対しウェハー段階で突起電極を形成しておけば、LEDダイが高精度・高密度で配列しているうえ、ウェハー自体が硬質であることから電極形成に対する効率が良い。しかしながら特許文献1に示されるような封止工程では、LEDダイの厚さが変動したり、LEDダイの底面積が変動したりすると、バンプ上面から液面までの高さ一定にならず、突起電極の突起量が一定しないという課題がある。
【0013】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子を簡便に効率よく製造する半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体発光素子の製造方法は、上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子の製造方法において、
前記突起電極を備えるダイと、シート上に粘着層を備える粘着シートとを準備する準備工程と、
前記粘着層に前記ダイの底面が接触するように前記粘着層に前記突起電極を沈み込ませながら、前記粘着シート上に前記ダイを配列する配列工程と、
前記粘着シートとともに前記ダイの側面を前記樹脂層で覆う被覆工程と、
前記樹脂層を切断し、個片化した前記半導体発光素子を得る個片化工程とを
備えることを特徴とする。
【0015】
前記樹脂層が蛍光体を含有し、前記被覆工程において、前記ダイの側面とともに前記ダイの上面を前記樹脂層で被覆しても良い。
【0016】
前記樹脂層が反射材を含有する第1の樹脂層と蛍光体を含有する第2の樹脂層からなり、前記被覆工程において前記第1の樹脂層で前記ダイの側面を被覆し、その後前記第2の樹脂層で前記ダイの上面を被覆しても良い。
【0017】
前記樹脂層が蛍光体を含有する第3の樹脂層と反射材を含有する第4の樹脂層からなり、前記準備工程の前に前記ダイの上面を前記第3の樹脂層で被覆し、被覆工程において前記ダイの側面とともに前記第3の樹脂層の側面を前記第4の樹脂層で被覆しても良い。
【0018】
前記被覆工程において金型を使って前記樹脂層を形成しても良い。
【0019】
前記配列工程において前記粘着シートを加熱しておいても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体発光素子の製造方法によれば、突起電極を有するダイを粘着シートに配置する際に、粘着層に突起電極を沈み込ませ、粘着層とダイの底面を接触させている。このため粘着シートごとダイを覆うように樹脂層を形成してもダイの底面には樹脂層が形成されない。このため突起電極の突起量は樹脂層形成前後で変化しない。この結果、上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子を簡便に効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態におけるLED素子の外観を示す図。
【図2】図1に示すLED素子の断面図。
【図3】図1に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図4】図1に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図5】本発明の第2実施形態におけるLED素子の外観を示す図。
【図6】図5に示すLED素子の断面図。
【図7】図5に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図8】本発明の第3実施形態におけるLED素子の外観を示す図。
【図9】図8に示すLED素子の断面図。
【図10】図8に示すLED素子の製造工程の説明図。
【図11】図8に示すLED素子の製造工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図1〜11を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。さらに特許請求の範囲に記載した発明特定事項との関係をカッコ内に記載している。
(第1実施形態)
【0023】
添付図1〜4を参照して本発明の第1実施形態を詳細に説明する。まず図1と図2によりLED素子10の構造を説明する。図1は本発明の実施形態におけるLED素子10の外観を示す図であり、(a)が上面図、(b)が正面図、(c)が底面図である。LED素子10を上面から眺めると、長方形の蛍光体層11(樹脂層)だけが見える(a)。LED素子10を正面から眺めると、蛍光体層11の下に突起電極12,13が見える(b)。LED素子10を下から眺めると、蛍光体層11に囲まれた半導体層14が見え、さ
らに半導体層14の内側に突起電極12,13が見える(c)。LEDダイ16の底面は1.0mm×0.5mmであり、蛍光体層11の幅は0.2mmである。この結果、LED素子10は1.4mm×0.9mmとなり、サーフェースマウンタ(表面実装機)で扱いやすい大きさになっている。
【0024】
次に図2によりLED素子10の内部構造を説明する。図2は図1のAA線に沿ったLED素子10の断面図である。LED素子10において、LEDダイ16はサファイア基板15と半導体層14、保護膜17、突起電極12,13からなり、LEDダイ16の上面と側面は蛍光体層11で覆われている。このときLEDダイ16の底面には蛍光体層11が存在しない。なおLEDダイ16はサファイアを透明絶縁基板としたウェハーから切り出されたものであり、ウェハー状態で突起電極12,13が形成されている。
【0025】
サファイア基板15は、厚さが70〜150μm程度でLEDダイ16の平面的な外形を決める。サファイア基板15の下面に形成された半導体層14は、p型半導体層14c上に発光層14b、n型半導体層14aが積層した積層体である。さらにp型半導体層14cは複数の金属からなる金属層とp型GaNの積層体であり、厚さが1μm程度である。この金属層は反射層を含み、発光層14bから下向きに出射する光線を上側に向ける。発光層14bは厚さが100nm程度であり青色光を出射する。n型半導体層14aは、n型GaN層と格子定数を調整するバッファ層からなり厚さが5μm程度である。保護膜17は半導体層14を覆い、p型半導体層14cの占める領域及びn型半導体層14aの露出した領域に開口部を備えている。それぞれの開口部においてp型半導体層14cと突起電極12、並びにn型半導体層14aと突起電極13が接続する。
【0026】
突起電極12,13は銅メッキで形成されたメッキバンプであり、厚さが10〜30μmで、表面に錫層を備えている。なお突起電極13は、n型半導体層14aの露出部が小さいため、一部が保護膜17を介してp型半導体層14cと積層している。また突起電極12,13は、それぞれアノードとカソードであり、マザー基板と接続するための接続電極となっている。ここでマザー基板とは抵抗やコンデンサなど他の電子部品とともにLED素子10を実装する基板である。
【0027】
蛍光体層11は蛍光体を含有するシリコーン樹脂であり、LEDダイ16から出射してくる青色光の一部を蛍光体層11中の蛍光体が波長変換する。この波長変換した光と青色光の残りが混色してLED素子10の発光色を白色化する。
【0028】
次に図3と図4によりLED素子10の製造方法を説明する。図3及び図4はLED素子10の製造工程の説明図である。なおLEDダイ16は図2よりも簡略化して描いているため、例えば保護膜17(図2参照)は図示していない(以下同様)。
【0029】
まず(a)で示す準備工程において、下面に突起電極12,13を備えたLEDダイ16と粘着シート31を準備する。粘着シート31は大判であり、多数のLEDダイ16が搭載されるが、図3及び図4では説明のため搭載するLEDダイ16を2個で示している。LEDダイ16は図2で説明したようにサファイア基板15の下に半導体層14が形成され、この半導体層14に突起電極12,13が接続している。なお保護膜17(図2参照)は図示していない。粘着シート31は厚さが数10μmの樹脂シート31b上に、厚さが20〜100μmの粘着層31aを積層したものである。この粘着層31aは突起電極12,13の高さよりも厚い。
【0030】
次に(b)で示す配列工程において、粘着シート31の粘着層31aにLEDダイ16の底面が接触するように突起電極12,13を粘着層31aに埋め沈み込ませながら、粘着シート31上にLEDダイ16を配列する。まず粘着シート31を支持台32上に配置
し、支持台32により粘着シート31を加熱する。この加熱により粘着層31aが軟化し、LEDダイ16を沈み込ませ易くする。次にピッカー(又はソーター)でLEDダイ16を一個ずつ粘着シート31上に配置していく。また、いったん他の粘着シート(図示せず)に複数のLEDダイ16を配列させておき、この複数のLEDダイ16を一括して粘着シート31に貼り付け(転写し)ても良い。
【0031】
なお本実施形態では粘着層31aを支持台32で加熱しているが、ピッカーにヒーターを取り付けLEDダイ16を加熱しながら粘着シート31上に配置しても良い。粘着層31aは低温ないし紫外線で粘着力を失うものが好ましい。高温で粘着力を失う場合はLEDダイ16を配置するときに粘着層31aを加熱せず、圧力だけでLEDダイ16を沈み込ませる。粘着層31aと突起電極12,13の高さが同じ場合は突起電極12,13が樹脂シート31b表面に当たるまでLEDダイ16を粘着層31aに押し込んでも良い。
【0032】
次に(c)及び(d)で示す被覆工程において、粘着シート31とともにLEDダイ16を蛍光体層11で覆う。まず粘着シート31を金型33の下蓋33b上にのせ、上蓋33aで粘着シート31を密封する(c)。次に金型33内の隙間に硬化前の蛍光体樹脂を注入し、金型33を加熱して蛍光体樹脂を硬化させ蛍光体層11を形成する(d)。
【0033】
(c)及び(d)はトランスファー成型をイメージして図示しているが、コンプレッション成型でも良い。また蛍光体層11を形成する手法は金型33に限定されず、塗布法やスキージであっても良い。この場合、蛍光体層11を硬化させたら所望の厚さにするため蛍光体層11を研磨することが好ましい。
【0034】
最後に(e)〜(g)に示す個片化工程において、蛍光体層11を切断し、個片化したLED素子10を得る。まず蛍光体層11を形成した粘着シート31を金型33から取り出す(e)。次に粘着シート31を残すようにしてLEDダイ16の間の蛍光体層11を切断する(f)。最後に粘着シート31から個別のLED素子10を取り外す(g)。前述したように冷却、紫外線照射、加熱などで粘着シート31の粘着力を失わせておくことが望ましい。
【0035】
なお本実施形態では粘着シート31にLEDダイ16を載せたまま蛍光体層11を切断しLED素子10を取り外していた。他の手順として、金型33から粘着シート31を取り出した後(e)、LEDダイ16が蛍光体層11で連結したもの(擬似ウェハーと呼ぶ)の蛍光体層11側をダイシングシートに貼り付け、粘着シート31を剥がしてもよい。この場合、電極面の洗浄が可能となり、擬似ウェハー状態で電気特性や光学特性の検査を行ってしまえるので、LED素子10の個片化と同時にLED素子10を搬送テープに収納できる。
(第2実施形態)
【0036】
第1実施形態ではLEDダイ16の上面及び側面を被覆する樹脂が蛍光体体層11であった。しかしながら被覆用の樹脂は蛍光体層11に限られない。前述したように樹脂層は、LED素子に含まれる透明絶縁基板と空気との間の屈折率の変化を緩和し発光効率を改善させる他、樹脂に蛍光体を含有させればLED素子の発光色を白くでき、樹脂に反射性微粒子を含有させれば反射部材としても機能する。例えばLEDダイ16の上面を蛍光体層で被覆し、側面を反射性の樹脂層(以下反射層と呼ぶ)で被覆しても良い。このようなLED素子の簡便で効率的な製造方法を実施形態2,3で説明する。以下、添付図5〜7を参照しながら本発明の第2実施形態について詳細に説明する。
【0037】
まず図5と図6により本実施形態で製造するLED素子40の構造を説明する。図5はLED素子40の外観を示す図であり、(a)が上面図、(b)が正面図、(c)が底面
図である。LED素子40を上面から眺めると、長方形の蛍光体層41(第2の樹脂層)だけが見える(a)。LED素子40を正面から眺めると、蛍光体層41の下に反射層42(第1の樹脂層)が見え、さらに反射層42の下側に突起電極12,13が見える(b)。LED素子40を下から眺めると、反射層42に囲まれた半導体層14が見え、さらに半導体層14の内側に突起電極12,13が見える(c)。なおLEDダイ16は図2で示した第1実施形態におけるLEDダイ16と同じものである。
【0038】
次に図6によりLED素子40の内部構造を説明する。図6は図5のBB線に沿ったLED素子40の断面図である。LEDダイ16の側面には反射層42が付着している。蛍光体層41はLEDダイ16の上面と反射層42の上部を覆っている。蛍光体層41は図1,2で示したLED素子10の蛍光体層11と同様にシリコーン樹脂である。反射層42は酸化チタン等の反射性微粒子を混練したシリコーン樹脂(以下反射性樹脂と呼ぶ)である。LED素子40の側方及び下方に向う光線は、反射層42とp型半導体層14cに含まれる金属反射層により反射しLED素子40の上方に向う。このようにLED素子40は側方に向う光線がないので扱い易い。
【0039】
次に図7によりLED素子40の製造方法を説明する。LEDダイ16と粘着シート31を準備する準備工程は、図3(a)の準備工程と同じなので図示していない。(b−2)は突起電極12,13を粘着層に沈み込ませるようにしてLEDダイ16を粘着シート31上に配列する配列工程である。なお(b−2)は、図3(b)の配列工程と同じものであるが、見やすくするため本図では支持台32(図3参照)を描かなかった。
【0040】
(d−2)及び(e−2)で示す被覆工程において、LEDダイ16の側面及び上面をそれぞれ反射層42及び蛍光体層41で被覆する。(d−2)はLEDダイ16の間隙に反射層42を充填する工程を示している。このとき適量の反射性樹脂(硬化前)をディスペンサーにより間隙に充填しても良いが、LEDダイ16のサファイア基板上面が隠れるくらいまで反射性樹脂を塗布し硬化させ、サファイア基板上面が露出するまで反射性樹脂を研磨し反射層42を形成する方が効率的である。次に(e−2)に示すようにLEDダイ16及び反射層42の上部に蛍光体層41を形成する。このときLEDダイ16及び反射層42の上部の蛍光体層41は塗布で形成しても良いし、蛍光体を含有する蛍光体シートを貼り付けても良い。
【0041】
最後に(f−2)及び(g−2)に示す個片化工程において、図4(f)及び(g)で示した第1実施形態の個片化工程と同様に、蛍光体層41と反射層42を切断し、個片化したLED素子40を得る。
(第3実施形態)
【0042】
以下、添付図8〜11を参照しながら本発明の第3実施形態について詳細に説明する。まず図8と図9により本実施形態で製造するLED素子60の構造を説明する。図8はLED素子60の外観を示す図であり、(a)が上面図、(b)が正面図、(c)が底面図である。LED素子60を上面から眺めると、外周部に存在する反射層62とその内側にある長方形の蛍光体層61が見える(a)。LED素子60を正面から眺めると、反射層62と反射層62の下にある突起電極12,13が見える(b)。LED素子60を下から眺めると、反射層62に囲まれた半導体層14が見え、さらに半導体層14の内側に突起電極12,13が見える(c)。なお半導体層14及び突起電極12,13が含まれるLEDダイ16(図9参照)は図2で示した第1実施形態におけるLEDダイ16と同じものである。
【0043】
次に図9によりLED素子60の内部構造を説明する。図9は図8のCC線に沿ったLED素子60の断面図である。LED素子60において、LEDダイ16の上面に蛍光体
層61があり、LEDダイ16及び蛍光体層61の側面に反射層62が付着している。蛍光体層61は図1,2で示したLED素子10の蛍光体層11と同様に蛍光体を含有したシリコーン樹脂である。反射層62は、図5〜7で示した反射層42と同様に、酸化チタン等の反射性微粒子を含有したシリコーン樹脂からなる。LED素子40の側方及び下方に向う光線は、反射層62とp型半導体層14cに含まれる金属反射層により反射しLED素子60の上方に向う。このようにLED素子60もLED素子40(図5参照)と同様に側方に向う光線がないので扱い易い。
【0044】
次に図10及び図11によりLED素子60の製造方法を説明する。図10は、LEDダイ16aと粘着シート31を準備する準備工程の前に、LEDダイ16(図9参照)のサファイア基板15上に蛍光体層61を被覆する工程を示している。なお図10,11においてLEDダイ16aは、図2、9で示したLEDダイ16に対し、上面(図10では下側)が蛍光体層61で被覆されているのでサフックスaを追加して区別している。
【0045】
まず突起電極形成前のLEDダイが配列して連結するウェハー30を準備する(a)。ウェハー30はサファイア基板15上に複数の半導体層14が形成されている。なおウェハー30上には数千から数万個の半導体層14が形成されるが、本図では説明のため3個だけ示している。また本図では半導体層14がウェハー30上で分離しているが、他の例として半導体層に含まれるn型半導体層がウェハー全面に形成され、p型半導体層だけが分離していることもある。
【0046】
次に突起電極12,13を形成する(b)。最初にウェハー30の上面全体にスパッタ法でメッキ用共通電極膜を形成し、続いてホトリソグラフィ法で突起電極12,13を設ける領域に開口を有するレジスト膜を形成する。次に電解メッキ法で突起電極12,13を成長させ、その後レジスト膜を除去し、最後にメッキ電極12,13をマスクとしてメッキ用共通極膜の露出部を除去する。
【0047】
次にサファイア基板15の下面に蛍光体層61を形成する(c)。蛍光体層61は塗布法で形成しても良いし、蛍光体シートを貼り付けても良い。最後にウェハー30をLEDダイ16aに個片化する(d)。個片化は、ダイシングでもスクライブ・ブレーク法でも良い。
【0048】
LEDダイ16aが出来上がったら、次に図11に示すようにLEDダイ16aの側面を樹脂で被覆する工程に移る。LEDダイ16aと粘着シート31を準備する準備工程は、図3(a)の準備工程と同等なので図示していない。(b−3)は突起電極12,13を粘着層に沈み込ませるようにしてLEDダイ16aを粘着シート31上に配列する配列工程である。なお(b−3)も、図3(b)の配列工程と同等であるが、見やすくするため本図では支持台32(図3参照)を描かなかった。
【0049】
(d−3)で示す被覆工程において、LEDダイ16a及び蛍光体層61の側面を反射層42で被覆する。LEDダイ16aの間隙に適量の反射性樹脂(硬化前)をディスペンサーにより間隙に充填しても良いが、蛍光体層61の上面が隠れるくらいまで反射性樹脂を塗布し硬化させ、蛍光体層61が露出するまで反射性樹脂を研磨し反射層62を形成する方が効率的である。
【0050】
最後に(f−3)及び(g−3)に示す個片化工程において、図4(f)及び(g)で示した第1実施形態の個片化工程と同様に、反射層62を切断し、個片化したLED素子60を得る。
【符号の説明】
【0051】
10,40,60…LED素子(半導体発光素子)、
11,41,61…蛍光体層、
12,13…突起電極、
14…半導体層、
14a…n型半導体層、
14b…発光層、
14c…p型半導体層、
15…サファイア基板、
16,16a…LEDダイ(ダイ)、
17…保護膜、
31…粘着シート、
31a…粘着層、
31b…樹脂シート、
32…支持台、
33…金型、
33a…上蓋、
33b…下蓋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子の製造方法において、
前記突起電極を備えるダイと、シート上に粘着層を備える粘着シートとを準備する準備工程と、
前記粘着層に前記ダイの底面が接触するように前記粘着層に前記突起電極を沈み込ませながら、前記粘着シート上に前記ダイを配列する配列工程と、
前記粘着シートとともに前記ダイの側面を前記樹脂層で覆う被覆工程と、
前記樹脂層を切断し、個片化した前記半導体発光素子を得る個片化工程とを
備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層が反射材を含有する第1の樹脂層と蛍光体を含有する第2の樹脂層からなり、前記被覆工程において前記第1の樹脂層で前記ダイの側面を被覆し、その後前記第2の樹脂層で前記ダイの上面を被覆することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層が蛍光体を含有する第3の樹脂層と反射材を含有する第4の樹脂層からなり、前記準備工程の前に前記ダイの上面を前記第3の樹脂層で被覆し、被覆工程において前記ダイの側面とともに前記第3の樹脂層の側面を前記第4の樹脂層で被覆することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層が蛍光体を含有し、前記被覆工程において、前記ダイの側面とともに前記ダイの上面を前記樹脂層で被覆することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記被覆工程において金型を使って前記樹脂層を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記配列工程において前記粘着シートを加熱することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項1】
上面と側面が樹脂層により被覆され底面に突起電極を備える半導体発光素子の製造方法において、
前記突起電極を備えるダイと、シート上に粘着層を備える粘着シートとを準備する準備工程と、
前記粘着層に前記ダイの底面が接触するように前記粘着層に前記突起電極を沈み込ませながら、前記粘着シート上に前記ダイを配列する配列工程と、
前記粘着シートとともに前記ダイの側面を前記樹脂層で覆う被覆工程と、
前記樹脂層を切断し、個片化した前記半導体発光素子を得る個片化工程とを
備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層が反射材を含有する第1の樹脂層と蛍光体を含有する第2の樹脂層からなり、前記被覆工程において前記第1の樹脂層で前記ダイの側面を被覆し、その後前記第2の樹脂層で前記ダイの上面を被覆することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂層が蛍光体を含有する第3の樹脂層と反射材を含有する第4の樹脂層からなり、前記準備工程の前に前記ダイの上面を前記第3の樹脂層で被覆し、被覆工程において前記ダイの側面とともに前記第3の樹脂層の側面を前記第4の樹脂層で被覆することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂層が蛍光体を含有し、前記被覆工程において、前記ダイの側面とともに前記ダイの上面を前記樹脂層で被覆することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記被覆工程において金型を使って前記樹脂層を形成することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記配列工程において前記粘着シートを加熱することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−256678(P2012−256678A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128232(P2011−128232)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
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