説明

半導体素子基板及び該素子基板を用いたインクジェットヘッド、及びそれらに用いられる半導体素子基板の電気接続方法

【課題】 ILB接続における線膨脹係数の差に起因する電気接続部の接続不良を抑制する。
【解決手段】 本発明の半導体素子基板101は、電極パッド106と半導体素子とが形成された半導体素子基板であって、電極パッドを加熱する専用の接続用ヒーター110を、電極パッドを電気接続可能な温度に加熱できる範囲内に配したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子基板及び該素子基板を用いたインクジェットヘッド、及びそれらに用いられる半導体素子基板の電気接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の分野では、高集積化を実現するため、TABやFPC等のフレキシブル配線シートを用いたものが知られている。
【0003】
図8は、このようなフレキシブル配線シートを用いた、従来の半導体装置の電気接続部の一例を示す図である。図8(a)は平面図であり、図8(b)は図8(a)のE−E断面図である。
【0004】
図8(a)、(b)において、101はシリコン(Si)等からなる半導体素子基板であり、102は電気配線パターンとなるフライングリードの1種であるフライングリード105が形成されたフレキシブル配線シートである。フレキシブル配線シート102には、長方形の開口であるデバイスホール103が形成され、この開口内に半導体素子基板101が配置され固定される。また、フレキシブル配線シート102の上表面には、ポリイミド等の絶縁性の樹脂からなる平板状のベースフィルム104が形成されている。フライングリード105は、ベースフィルム104の下表面に銅箔等の導電性材料からなる金属箔を接着し、フォトリソ技術を用いて所望の形状をパターニングすることで得られる。パターニング後のフライングリード105の下表面には、金や錫や半田などのメッキ処理が施され、更に金属面を露出したくない領域にはレジスト層108などにより被覆保護されている。この時、フレキシブル配線シート内の配線(図示せず)や、本体接続用電極パッドであるアウターリード(図示せず)等も形成される。
【0005】
また、フライングリード105は、フレキシブル配線シート102からデバイスホール103の開口内に延在して形成されている。半導体素子基板101の表面には、複数の電極パッド106がAl(アルミニウム)等の材料で形成されている。電極パッド106は、スタッドバンプ107を介して、デバイスホール103の開口内に延在しているフライングリード105の先端部と電気的に接続されている。
【0006】
電極パッド106の上には、予め、Au(金)等の金属材料で形成された突起物であるスタッドバンプ107を設ける。このスタッドバンプ107上に接続したいフライングリード105を位置させ、フライングリード105の上方よりボンディングツール(図示せず)を用いて押圧することで、フライングリード105とスタッドバンプ107との接合を行なう。これにより、フライングリード105と電極パッド106とは、電気的に接続される。
【0007】
この時、良好な接続状態が得られるように、半導体素子基板101とフレキシブル配線シート102とを固定している支持部材109は、ボンディングステージ上に真空吸着等で固定される。また、ワーク全体を加熱して、フライングリード105とスタッドバンプ107との接続の効率を向上させている。
【0008】
上述の電気接続時に行なうワークの加熱方法としては、ヒーターブロックとワークとの接触による熱伝導により加熱する方式が一般的である。しかしながら、両者を完全に密着できない等で熱伝導効率が悪い場合等では、以下の様な加熱方式が知られている。実開昭64−18735号公報(特許文献1)には、加熱光源と集中照射する集光部とを半導体組立装置に備え、半導体素子基板101及びフライングリード105を放射加熱して電気接続する方式が記載されている。
【0009】
なお、通常このような接続方法はILB(Inner Lead B nding)と呼ばれている。
【0010】
このILB方式は大きく二つに大別される。一つは、半導体素子基板の全てのフライングリード、又は半導体素子基板の一辺のフライングリードとスタッドバンプとを、ボンディングツールによって一括で接続するギャングボンディング方式である。もう一つは、フライングリードとスタッドバンプとを、個別に一つずつ選択的に順次接続していくシングルポイントボンディング方式がある。
【0011】
ギャングボンディング方式及びシングルポイントボンディング方式のどちらの方式においても、電気接続する部分は、高温に加熱した状態で接合される。フライングリードとスタッドバンプとの接合をギャングボンディング方式により行なう場合には、ボンディングツールの温度は約500℃にまで加熱する必要がある。また、シングルポイントボンディング方式ではワーク温度を約200℃の温度に加熱する必要がある。そして、いずれの方式においても、高温状態のボンディングツール又はワークを、電極パッド上に配されたフライングリードの上から押圧して導通接触部を加熱接合する。
【0012】
絶縁性有機樹脂を主体とするベースフィルム104やCu(銅)を主体とするフライングリード105の線膨張係数は、Si(シリコン)等からなる半導体素子基板101の線膨張係数に比べてはるかに大きい。従って、半導体素子基板101上の接続電極(電極パッド106)とフライングリード105との相対位置関係は、フレキシブル配線シート102の熱膨脹に伴って位置ずれが生じてしまう。
【0013】
そのため、特開2003−7765号公報(特許文献2)には、フライングリードの配列ピッチを、あらかじめベースフィルムの伸び量を考慮した上で決定する接続方法が記載されている。また、フライングリードの幅をスタッドバンプとの相対的なずれ量よりも広くすることにより、フライングリードとスタッドバンプの相対的なずれ量を吸収することも記載されている。
【特許文献1】実開昭64−18735号公報
【特許文献2】特開2003−7765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年、半導体素子基板はシュリンク化が求められるケースが増えてきている。半導体素子基板上の電気接続箇所は増加する傾向にあるが、半導体素子基板のサイズはコストの関係である程度限定されるので、電気接続部には狭ピッチ化が要求される。そのため、電極のパッドサイズは縮小化され、必然的にスタッドバンプも縮小化となる。また、フライングリードの幅も小さいサイズにする必要があるため、接続部の面積は小さくなる。
【0015】
このような狭ピッチ化された接続部に対してILB接続する場合、熱膨張により伸びたフライングリードと、狭ピッチ化された隣接電極パッドと、が接触してショートモードの電気接続不良が顕著に顕われることになる。
【0016】
また、フレキシブル配線シートと半導体素子基板とは、ともに支持部材に固定された状態で加熱され、熱膨張した状態でフレキシブル配線シートのフライングリードと半導体素子基板の電極とが電気接続される。その後、フレキシブル配線シートと半導体素子基板とは、常温まで冷却される。フライングリードと電極パッドとはスタッドバンプを介して加熱接合されているため、この冷却の過程で、半導体素子基板とフレキシブル配線シートとの線膨張係数の差により、電気接続部には応力が発生する。この応力は、電極パッドとスタッドバンプとの接合部及びスタッドバンプとフライングリードとの接合部に集中して作用し、電気接続部には剥がれ(断線)が発生する。
【0017】
また、電気接続部の狭ピッチ化により、従来よりフライングリードの幅が細くなる。冷却過程で発生する応力は、この細くなったフライングリードで吸収されることになる。しかし、接合面積が縮小された状態においては、接合強度が低下している状態であるため、より剥がれやすい状態となる。
【0018】
インクジェットプリンターは、近年の高画質化・高速化に伴って、インク滴を吐出する吐出口の多数化・高密度化してきている。そのため、吐出口の他にインク滴を吐出するための記録素子や該記録素子を駆動する駆動素子等が形成されている半導体素子基板上の配線数や電気接続部数は増えていく方向にある。
【0019】
しかしながら、インクジェットプリンターのような、インク滴の高精度な吐出精度が要求される半導体装置の場合、予め、半導体素子基板とフレキシブル配線シートとを支持部材に固定しておくことが必要となるので、同様に上述したような課題が生じる。
【0020】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、ILB接続における線膨脹係数の差に起因する電気接続部の接続不良を抑制することができる半導体素子基板及び該素子基板を用いたインクジェットヘッドを提供することを目的としている。また、それらに用いられる半導体素子基板の電気接続方法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的を解決するための本発明は、電極パッドと半導体素子とが形成された半導体素子基板であって、前記電極パッドを加熱する専用の接続用ヒーターを、電極パッドを電気接続可能な温度に加熱できる範囲内に配したことを特徴とする。
【0022】
また、他の本発明は、電極パッドと、該電極パッド上に形成されたスタッドバンプと、半導体素子と、が形成された半導体素子基板の電気接続方法において、フライングリードを前記スタッドバンプの上に非接触に配する工程と、電極パッドを電気接続可能な温度に加熱できる範囲内に配された前記電極パッドを加熱する専用の接続用ヒーターを加熱する工程と、前記接続用ヒーターが前記電極パッドへ接続に必要な熱エネルギーを供給可能な温度に達する工程と、前記フライングリードを前記電極パッドへ押圧する工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
また、他の本発明は、第1の部材の有する第1の電極と第2の部材が有する第2の電極との接続方法であって、前記第1の電極と前記第2の電極との電気接合を形成する際に、前記第1の部材に前記第1の電極を加熱する専用の加熱手段を設け、先に前記加熱手段を用いて前記第1の電極の方を一定の温度に加熱した後、前記第1の電極と前記第2の電極との接合を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ILB接続における線膨脹係数の差に起因する電気接続部の接続不良を抑制することができる半導体素子基板及び該素子基板を用いたインクジェットヘッド、及びそれらに用いられる半導体素子基板の電気接続方法を提供することができる。
【0025】
また、本発明における電気接続部は、電極パッドとフライングリードとの導通可能な接続を構成している部位若しくは構成する部位であり、両者が直接接合可能な材料の場合には、両者間に他の材料を介在させることは本発明の本質ではない。但し、両者の間に両材料の接続を容易にできる他の材料を介在させた方が好ましい場合には、例えば、スタッドバンプとして用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に各実施形態を用いて説明する本発明は、半導体素子基板等の第1の部材の有する第1の電極と配線シート等の第2の部材が有するフライングリード等の第2の電極との接続方法である。本発明は、第1の部材の第1の電極と第2の部材の第2の電極との電気接合を形成する際に、第1の部材に第1の電極を加熱する専用の加熱手段を設け、先にその加熱手段を用いて第1の電極の方を一定の温度に加熱するものである。そして、第1の電極が電気接続可能な温度に加熱された後に、第1の電極と第2の電極との接合を行なうものである。
【0027】
(第1の実施態様)
図1は、本発明の第1の実施態様に係る半導体素子基板のILB接続部の模式図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。
【0028】
図1(a)、(b)において、半導体素子が形成された半導体素子基板101の電極パッド106の直下乃至下方に絶縁層112を介して電極パッド106を加熱する専用の接続用ヒーター110を成膜・配置したものである。接続用ヒーター110は、半導体素子基板101の機能を損なうことなく、電極パッド106をILB接続等の電気接続可能な温度に加熱できる範囲内に配されている。絶縁層112に関しては半導体成膜に使用されるSiN等で構成し、接続用ヒーター110と電気接続する電極パッド106とは、この絶縁層112にて電気的導通を遮断している。接続用ヒーター110は、通電によって発熱するTaSiN等で構成された発熱抵抗層の上に導通可能に一定の間隔を介して対向配置されるAl等の電極層(電気配線)を積層して形成される。そして、2つの電極層となる接続用ヒーター電極111の間の発熱抵抗層が発熱することで接続用ヒーター110となる。なお、この接続用ヒーター110の構成は一例であって、発熱効率の良い金属材料であれば、これに限定されるものではない。
【0029】
図2は、本実施態様に係る半導体素子基板のILB接続部と電気接続するILB接続装置200の一部を含む模式図である。図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B断面図である。
【0030】
図2(a)、(b)において、ILB接続装置200には半導体素子基板101の接続用ヒーター電極111に導通可能に接触する電極接触部201を備える。この電極接触部201には、接続用ヒーターを発熱させるための電力を供給するための電源202を備えている。
【0031】
接続用ヒーター110を発熱させるための手順を以下に説明する。
【0032】
各電極パッド106に対応するフライングリード105を、電極パッド106上のスタッドバンプ105の上方に配置する。なお、フライングリード105は、半導体素子基板101の電極パッド106へ外部から電気信号や駆動電力等を供給するための電気配線部材の一例としてのフレキシブル配線シートにリード部材として突出・延在して設けられたものである。
【0033】
本実施形態では、この際に、フライングリード105とスタッドバンプ105とは非接触の状態である。少なくとも、両者は熱の伝導が生じない程度の接触に止まることが好ましい。このように、両者が実質的に非接触であることで、フライングリード105はILB接続直前まで加熱されない状態となり、フライングリード105の熱膨張による変形(特にリードの延在方向の伸び)を抑えることができる。
【0034】
次いで、電源202からの電力を接続用ヒーター110へ供給する。そして、電力の供給を受け加熱された接続用ヒーター110が所定の温度(電極パッド106へILB接続等電気接続に必要な熱エネルギーを供給可能な温度)に達した状態で、フライングリード105と電極パッド106との接続を開始する。フライングリード105は、電極パッド105上のスタッドバンプ107を介して冶具で押圧されるが、この際に、フライングリード105は、従来のような、高温のボンディングツールやワークによって押圧されることはない。ILB接続に要する熱エネルギーは、電極バッド106の下方に配された接続用ヒーター110から供給される。このようにして、スタッドバンプ107とフライングリード105との電気接続が完了した後、電力供給としての電源202からの電圧印加を終了させる。また、ILB接続装置200の電極接触部201と半導体素子基板101の接続用ヒーター電極111との接触を解除し、不要となったILB接続装置200を半導体素子基板101から退避させる。このようなILB接続の際に、半導体素子基板101の接続用ヒーター電極111に供給する電力は、ILB接続に必要な熱エネルギーを供給可能な温度となるように、電圧値や電流値を必要に応じて任意に設定することができる。
【0035】
従って、熱膨張によるフライングリード105の変位は殆んど発生していない状態での電気接続が可能となり、フライングリード105の電気接続不良の抑制が可能となる。また、フライングリード105が殆んど変位していない状態で電気接続しているので、冷却の過程及び常温まで戻った状態において、電気接続部には殆んど応力が掛かっていない状態を作ることが可能となる。また、ILB接続を行なう温度の制御が容易になるとともに、従来に較べて大きな熱エネルギーを電極パッド106及びスタッドバンプ107に付与することができるので、より短時間の昇温が可能となる。更に、フライングリード105が不必要に加熱されないために、常温への冷却時間を短縮することが可能となる。よって、ILB接続に要する時間を短縮することが可能となる。
【0036】
なお、複数の電気接続部のILB接続を行う場合において、その全てが接続完了になるまで接続用ヒーターを加熱しているので、初期に接続完了した箇所は、接続した部位を通してフライングリード105に熱が伝わる。この状態は、全ての電気接続部の接続完了後、接続用ヒーターへの電力供給を止めるまで継続する。そのため、その間は、フライングリード105の熱膨張による変位が発生する。しかしながら、一箇所の接続に要する時間は、シングルポイントボンディング方式で約0.05秒以下と短く、仮に一度に接続する箇所が30箇所の場合でも、フライングリードに熱が伝わる時間は約1.5秒程度で済む。そのため、ILB接続開始まで加熱されていなかったフライングリード105は、ボンディング時に必要な温度にまで昇温する状態には至らない。従って、電気接続完了後、接続用ヒーター110による加熱終了までに僅かにフライングリード105の変位が発生する場合があるものの、電気接続後の冷却過程及び常温へ戻った状態での電気接続部に掛かる応力が殆んど無い状態を作ることが可能となる。
【0037】
この半導体素子基板101は、半導体装置に組み込まれて製品となった状態での実使用環境温度が基本的に常温環境の下で使用され、従来のILB接続のような高温の下で使用されることはない。そのため、本実施形態において製造された半導体素子基板101の電気接続部においては、殆んど応力が掛からない状態を作ることができる。そのため、電気接合部の信頼性を向上させることが可能となる。
【0038】
本実施形態が適用できる一例として、図3に示す、プリンター等に搭載されるインクジェットヘッドを挙げることができる。
【0039】
図3のインクジェットヘッドは、半導体素子基板101の表面側に設けられている流路形成部材116に、インク滴等の記録液を吐出するための吐出口117の列が配置されている。その吐出口117と対向する流路形成部材116内の位置には、記録素子である吐出エネルギー発生素子(例えば、発熱抵抗体で構成された吐出用ヒーター120)が配されている。インクジェットへッドは、このような半導体素子基板101としての記録素子基板と、記録液を半導体素子基板101(記録素子基板)へ供給する支持部材109と、フレキシブル配線シート102と、を含んで構成される。フレキシブル配線シート102は、記録液を吐出するために各吐出エネルギー発生素子へ電気パルスを印加するための部材である。また、各色インクタンク118から記録液を支持部材109へ供給するインク供給ユニット119も含まれている。
【0040】
インクジェットヘッドを用いた半導体素子基板に関しては、インク滴を吐出させる吐出エネルギー発生素子の一例としての吐出ヒーター120と接続用ヒーター電極111とは、電気回路上で分離されている。そのため、実際の製品としての使用に関しては、インクを吐出するという製品の機能に対して何ら弊害を発生させない構成となっている。
【0041】
本実施形態によるILB接続を、上述したインクジェットヘッドの記録素子基板と記録素子を駆動する電力を供給するフライングリードとのILB接続に適用する場合においても、上述したような効果を奏することができる。
【0042】
(第2の実施態様)
図4は、第2の実施態様を説明する図であり、接続用ヒーター110を半導体素子基板101上の電極パッド106の直下ではなく、半導体素子基板面に沿って側方の近傍に配置したものである。図4(a)は平面図であり、図4(b)は図4(a)のC−C断面図である。なお、本実施形態においても、接続用ヒーター110は、半導体素子基板101の機能を損なうことなく、電極パッド106をILB接続等の電気接続可能な温度に加熱できる範囲内に配されている。なお、電極パッド106に対するフライングリード105のILB接続の方法は第1の実施形態と同様である。
【0043】
本実施形態のILB接続によると、絶縁層112の上に、電極パッド106やこれに接続される電気配線を形成する必要がない。そのため、電極パッド106と絶縁層112との密着性や電気配線の絶縁層112端部の段差カバレッジ性といった信頼性に影響を与える要因を考慮する必要がない。
【0044】
更に、本実施形態をインクジェットヘッドに用いた場合、インクを吐出させる吐出ヒーター120と接続用ヒーター110とを同じヒーター材で同時に形成することができ、工程の統一化と簡略化が可能となる。
【0045】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態を説明する図であり、半導体素子基板101上の電極接続部付近にDi(ダイオード)センサーなどの温度検出手段113を配置したものである。なお、電極パッド106に対するフライングリード105のILB接続の方法は第1の実施形態と同様である。
【0046】
この場合、接続用ヒーター110を加熱した状態における電気接続部の温度制御を容易に行なう手段として温度検知手段113を設けている。温度検出手段113からの出力信号は、温度検出用電極114から外部へ出力される。これにより、電気接続部の温度を測定し、必要な温度の上限や下限を、電力供給の断続により、温度制御を行なうことができる構成としている。温度検出手段113は熱特性により、複数配置しても良い。
【0047】
また、本実施形態は、インクジェットヘッドの記録素子基板となる半導体素子基板として適用可能である。
【0048】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施態様を説明する図であり、半導体素子基板101の接続用ヒーター110に電圧を印加する場所を、フレキシブル配線シートの外部接続用端子列に含まれる端子115にしたものである。この外部接続用端子列は、半導体素子基板101の電極パッド106へ供給される電気信号や駆動電力等をフレキシブル配線テープを介して受ける際の電極パッドである。なお、電極パッド106に対するフライングリード105のILB接続の方法は第1の実施形態と同様である。
【0049】
この場合、電極パッド106とフライングリード105とのILB接続をする前に、接続用ヒーター電極111のILB接続を行ない、端子115を介して外部電源からの電圧印加を行なう構成としている。
【0050】
また、本実施形態は、インクジェットヘッドの記録素子基板となる半導体素子基板として適用可能である。
【0051】
本実施形態は、半導体素子基板101の接続用ヒーター電極115が基板のスペース上の問題で設置できない場合や、接続用ヒーター電極115が縮小化されてILB接続装置200の電極接触部201との十分な接触面積が確保できない場合において有効である。
【0052】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態を説明する図であり、半導体素子基板101の接続用ヒーター電極111に与える電圧を、パルス信号による印加手段にしたものである。図7(a)は平面図であり、図7(b)は図7(a)のD−D断面図である。
【0053】
図7(a)、(b)において、ILB接続装置200の構成としは、電源202と電極接触部201との間に、パルス信号変換ユニット203を配置する。なお、電極パッド106に対するフライングリード105のILB接続の方法は第1の実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態は、インクジェットヘッドの記録素子基板となる半導体素子基板として適用可能である。
【0055】
この場合、一定の電圧による印加が可能となり、接続用ヒーター110の温度を一定に保つことが容易となる。具体的には、接続用ヒーター111の熱特性を基にパルス信号の印加時間を予め設定することで、要求される温度へ到達後、温度変動を一定の範囲内におさめる制御が容易となる。
【0056】
以上、第1〜第5の各実施形態を用いて説明した本発明は、半導体素子基板に成膜による発熱抵抗体となる専用の接続用ヒーターを配置し、その接続用ヒーターで加熱した状態でILB接続を行なう。そして、フライングリードはボンディング直前まで加熱されないため、フライングリードの熱膨張による変形が殆んど発生しない状態で電気接続が可能となる。そのため、冷却後の常温下では電気接続部に掛かる応力が殆んどない状態を作ることができ、電気接続部の剥がれ(断線)が抑制可能となる。これにより電気接続部の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施態様に係る半導体素子基板のILB接続部の模式図である。
【図2】第1の実施態様に係る半導体素子基板のILB接続部と電気接続するILB接続装置200の一部を含む模式図である。
【図3】インクジェットヘッドの模式的断面図である。
【図4】第2の実施態様を説明する図である。
【図5】第3の実施形態を説明する図である。
【図6】第4の実施形態を説明する図である。
【図7】第5の実施形態を説明する図である。
【図8】従来の半導体装置の電気接続部の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
101 半導体素子基板
102 フレキシブル配線シート
103 デバイスホール
104 ベースフィルム
105 フライングリード
106 電極パッド
107 スタッドバンプ
108 レジスト層
109 支持部材
110 接続用ヒーター
111 接続用ヒーター電極
112 絶縁層
113 温度検出手段(Diセンサー等)
114 温度検出用電極
115 端子
116 流路形成部材
117 吐出口
118 インクタンク
119 インク供給ユニット
120 吐出用ヒーター
201 電気接触部
202 電源
203 パルス信号変換ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極パッドと半導体素子とが形成された半導体素子基板であって、
前記電極パッドを加熱する専用の接続用ヒーターを、電極パッドを電気接続可能な温度に加熱できる範囲内に配したことを特徴とする半導体素子基板。
【請求項2】
前記接続用ヒーターは、前記電極の下方に絶縁層を介して配されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子基板。
【請求項3】
前記接続用ヒーターは、半導体素子基板面に沿って、前記電極の側方に配されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項の半導体素子と、
前記半導体素子に配された、記録液を吐出するエネルギーを発生させるための吐出エネルギー発生素子と、
前記電極パッドと電気接続する端子を備え、前記エネルギー発生素子へ電気パルスを印加するための電気配線部材と、
を有することを特徴とするインクジェットへッド。
【請求項5】
電極パッドと、該電極パッド上に形成されたスタッドバンプと、半導体素子と、が形成された半導体素子基板の電気接続方法において、
フライングリードを前記スタッドバンプの上に非接触に配する工程と、
電極パッドを電気接続可能な温度に加熱できる範囲内に配された前記電極パッドを加熱する専用の接続用ヒーターを加熱する工程と、
前記接続用ヒーターが前記電極パッドへ接続に必要な熱エネルギーを供給可能な温度に達する工程と、
前記フライングリードを前記電極パッドへ押圧する工程と、
を有することを特徴とする半導体素子基板の電気接続方法。
【請求項6】
第1の部材の有する第1の電極と第2の部材が有する第2の電極との接続方法であって、
前記第1の電極と前記第2の電極との電気接合を形成する際に、前記第1の部材に前記第1の電極を加熱する専用の加熱手段を設け、先に前記加熱手段を用いて前記第1の電極の方を一定の温度に加熱した後、前記第1の電極と前記第2の電極との接合を行なうことを特徴とする接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−152367(P2009−152367A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328707(P2007−328707)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】