説明

半導体素子用の電気回路基板

【課題】 放熱特性を確保しながら、実装信頼性を向上できる半導体素子用の電気回路基板を提供する。
【解決手段】 絶縁基板1上に、半導体素子6のリード端子に応じて設けられた信号端子2を設ける。絶縁基板1上に、半導体素子6の放熱部8に面する位置に、はんだ付着が可能な複数のはんだ付着部3を設ける。各はんだ付着部3間に、はんだ非付着部5を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子であるQFN(Quad Flat Non-Leaded Package)パッケージ等のパッケージIC(集積回路)が装着されるパッケージIC用の電気回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ICを収納したパッケージICは、電気回路基板に実装(装着)されて使用されることが多い。以下では、パッケージICとしてQFNパッケージを例に挙げて説明を行う。
【0003】
例えば図4(a)、(b)に示すように、QFNパッケージ20は、電気回路基板に対し表面実装が可能であり、IC(図示せず)を収納する正方形板状のパッケージ本体22の4方向(4周辺部)にそれぞれ各リード端子24を有しているが、それらの各リード端子24がICを収納するQFNパッケージ20の下(つまり、パッケージ本体22の表面内)にあり、それら各リード端子24がパッケージ本体22の外部に突出していないという特徴を有している。
【0004】
また、QFNパッケージ20は、IC自身の放熱特性を改善させる目的で、図4(c)に示すように、ICを搭載するパッケージ本体22の底面に各リード端子24の他、ダイパッド部26と呼ばれる放熱目的の端子が設けられていることも特徴としている。
【0005】
これらの各特徴により、QFNパッケージ20は、小型化を実現することが可能で、携帯機器などの小型化が要求される電気回路に多く採用されるようになってきている。
【0006】
また、QFNパッケージ20では、放熱特性を改善するためにパッケージ本体22の底面に設けたダイパッド部26も、図5に示すように、電気回路基板の絶縁基板41における端子部46に対し、はんだにより接合するが、このダイパッド部26と端子部46との接合に関しても、各リード端子24と各信号端子44との間でのはんだ部44aの実装信頼性を確保するために、ダイパッド部26または端子部46へのはんだの使用量を考慮して設計を行う必要がある。
【0007】
そこで、QFNパッケージ20において、ICを搭載したパッケージ本体22の底面のダイパッド部26と端子部46との接合に関しては、端子部46の全面に、はんだを塗布するのではなく、はんだを塗布するエリア46aに分割して、パッケージ本体22の電気回路基板への実装信頼性の改善を図ることが考えられた。このようにして、はんだ量を考慮した電気回路基板の設計を行い、実装信頼性の改善を図っていた。
【特許文献1】特開2001−257304(公開日:2001年9月21日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の構成では、実装信頼性が充分ではないという問題を生じている。つまり、QFNパッケージ20の電気回路基板への従来の技術では、その実装写真である図6に示すように、図6にて黒い部分は、ダイパッド部26に対応する、はんだ接合部56における、はんだ56cの部分であるが、白く見える部分である"ボイド56d"と呼ばれるものが発生している。このボイド56dは、ICを搭載したQFNパッケージ20を電気回路基板に対し実装する際に塗布した、はんだに含まれているフラックスが気化したもの、あるいは、塗布した、はんだの酸化物および電気回路基板の導体露出部分の酸化物が化学反応して発生したガスが、接合に用いた、固化はんだの中に閉じ込められたことにより発生すると考えられている。
【0009】
この”ボイド56d”が図6に示すように数多く発生すると、はんだ接合部56の接合強度は確実に低下し、QFNパッケージ20の電気回路基板への実装信頼性も低下してしまう。
【0010】
また、従来の他の技術としての特許文献1では、パッケージ本体側の各信号端子の側面に凹部を形成して、その凹部内にもはんだを入り込ませて、その入り込んだはんだによるアンカー効果により実装信頼性の向上を図っている。
【0011】
しかしながら、上記凹部を形成する手間や、上記凹部内にはんだを入り込ませる手間が必要であり、構成や実装方法が複雑化して電気回路基板への実装信頼性を確保できないという問題を生じている。
【0012】
本発明の目的は、QFNパッケージなどのパッケージICを電気回路基板に実装する際、パッケージICの放熱特性を考慮しつつ、かつパッケージICの実装信頼性を確保できる、パッケージIC用の電気回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体素子用の電気回路基板は、上記課題を解決するために、絶縁基板と、絶縁基板上に、半導体素子のリード端子に応じて設けられた信号端子と、絶縁基板上における、半導体素子の放熱部に面する位置に設けられた、はんだ付着が可能な、複数のはんだ付着部と、上記各はんだ付着部間に形成された、はんだ非付着部とを有していることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、半導体素子のリード端子に応じて設けられた信号端子と、上記リード端子とを互いに電気的に接続することで、上記半導体素子を絶縁基板上に実装(搭載)して外部と電気的に接続できる。
【0015】
また、上記構成では、半導体素子の放熱部に面する位置に設けられた、はんだ付着が可能な、複数のはんだ付着部と、上記放熱部とを、互いに、はんだにより接続することにより、上記半導体素子をより強固に絶縁基板上に実装できると共に、上記半導体素子の内部(例えばIC)からの熱を、放熱部、上記はんだ、および上記各はんだ付着部を介して外部に効率よく放出できて、上記半導体素子の動作を安定化できる。
【0016】
その上、上記構成は、各はんだ付着部間にはんだ非付着部を形成したから、複数のはんだ付着部と上記放熱部とを、互いに、はんだにより接続するときに、加熱より溶融した上記はんだ、上記はんだのフラックス、および、加熱はんだと接触した部分から発生したガスを、上記はんだ非付着部を通して外部に排気できるので、上記ガスに起因する固化はんだ内でのボイドの形成を抑制できて、複数のはんだ付着部と上記放熱部との間の接合強度および放熱特性の上記ボイドの形成による低下を回避できる。
【0017】
この結果、上記構成は、半導体素子を搭載して、上記半導体素子からの放熱特性を確保しながら、半導体素子との接合強度の低下を防止できて、上記半導体素子の実装信頼性を改善できる。
【0018】
上記半導体素子用の電気回路基板では、前記各はんだ付着部は、導電体金属膜からなっていることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、各はんだ付着部が導電体金属膜からなっているので、はんだとの親和性が高く、半導体素子との接合強度を確保できて、上記半導体素子の実装信頼性を改善できる。
【0020】
上記半導体素子用の電気回路基板においては、前記各はんだ付着部は、互いに等間隔に配置されていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、複数の各はんだ付着部と放熱部との各接合強度を、より均一化できるから、上記各接合強度がアンバランス(不均一化)することによる半導体素子との接合強度の低下を回避できて、上記半導体素子の実装信頼性を改善できる。
【0022】
上記半導体素子用の電気回路基板では、前記各はんだ付着部は、はんだへの親和性が前記絶縁基板より大きいものであることが望ましい。
【0023】
上記構成によれば、絶縁基板を、はんだへの親和性が各はんだ付着部より小さいので、各はんだ付着部から絶縁基板へのはんだの流出を抑制できて、上記はんだを各はんだ付着部上に保持できる。
【0024】
この結果、上記構成は、前述の発生したガスを、前記はんだ非付着部を通して外部に排気できることを確実化できるので、上記ガスに起因する固化はんだ内でのボイドの形成を回避できて、複数のはんだ付着部と上記放熱部との間の接合強度および放熱特性の上記ボイドの形成による低下を回避できる。
【0025】
上記半導体素子用の電気回路基板においては、前記信号端子は、リード端子に面する位置にはんだ付着端子部と、はんだ非付着端子部とを備えていてもよい。
【0026】
上記構成によれば、信号端子に、はんだ非付着端子部を設けたことにより、リード端子に面する位置に設けたはんだ付着端子部へのはんだ付着量を制御できて、信号端子とリード端子との間のはんだによる接合を安定化できる。
【0027】
上記半導体素子用の電気回路基板では、前記信号端子は、半導体素子の周辺部に形成された複数のリード端子に応じてそれぞれ設けられていてもよい。
【0028】
上記半導体素子用の電気回路基板においては、前記信号端子は、半導体素子の周辺部に形成された複数のリード端子に応じた閉曲線上に沿ってそれぞれ設けられていてもよい。
【0029】
上記半導体素子用の電気回路基板では、前記各はんだ付着部は、前記閉曲線の内部にそれぞれ形成されていてもよい。
【0030】
上記半導体素子用の電気回路基板においては、前記はんだ非付着部は、各はんだ付着部間に露出した絶縁基板の表面であることが好ましい。
【0031】
上記半導体素子用の電気回路基板では、前記はんだ非付着部の幅は、各はんだ付着部の短辺より小さくなっていることが望ましい。
【0032】
上記半導体素子用の電気回路基板においては、前記各はんだ付着部は、前記放熱部と形状が相似しており、互いに等しい大きさであってもよい。
【0033】
上記半導体素子用の電気回路基板では、前記はんだ非付着部に、前記絶縁基板を厚さ方向に貫通するスルーホールが設けられていてもよい。
【0034】
上記構成によれば、はんだ非付着部にスルーホールを設けたことにより、各はんだ付着部上の各はんだおよびそれらと接触した部分から発生した前述のガスは、はんだ非付着部を介してスルーホールを通り外部に対し、より確実に排気できて、ボイドの形成をより確実に回避できて、複数のはんだ付着部と上記放熱部との間の接合強度および放熱特性の上記ボイドの形成による低下を防止できる。
【0035】
上記半導体素子用の電気回路基板においては、前記はんだ非付着部の交差部に、前記スルーホールが設けられていてもよい。前記スルーホールの大きさは、前記はんだ非付着部の幅より大きく設定されていてもよい。上記スルーホールの形状(絶縁基板の表面方向の断面形状)は、製造が容易なことから円形が好ましく、その直径がはんだ非付着部の幅より大きく、はんだ付着部の短辺の長さより小さく(より望ましくは1/2以下)であることが望ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る半導体素子用の電気回路基板は、以上のように、絶縁基板上に、半導体素子のリード端子に応じて設けられた信号端子と、半導体素子の放熱部に面する位置に設けられた、はんだ付着が可能な、複数のはんだ付着部と、上記各はんだ付着部間に形成された、はんだ非付着部とを有している構成である。
【0037】
それゆえ、上記構成は、各はんだ付着部間にはんだ非付着部を形成したから、複数のはんだ付着部と上記放熱部とを、互いに、はんだにより接続するときに、加熱より溶融した上記はんだ、上記はんだのフラックス、および、加熱はんだと接触した部分から発生したガスを、上記はんだ非付着部を通して外部に排気できるので、上記ガスに起因する固化はんだ内でのボイドの形成を抑制できて、複数のはんだ付着部と上記放熱部との間の接合強度および放熱特性の上記ボイドの形成による低下を回避できる。
【0038】
この結果、上記構成は、半導体素子を搭載して、上記半導体素子からの放熱特性を確保しながら、半導体素子との接合強度の低下を防止できて、上記半導体素子の実装信頼性を改善できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明に係るパッケージIC用の電気回路基板における実施の各形態について図1ないし図4に基づいて説明すると以下の通りである。
【0040】
(実施の第一形態)
本発明に係るパッケージIC用の電気回路基板における実施の第一形態は、図1に示すように、絶縁基板1と、その絶縁基板1上に搭載するパッケージIC(半導体素子)6のリード端子(図示せず)に応じて設けられた信号端子2と、絶縁基板1上における、パッケージIC6のダイパッド部(放熱部)8に面する位置に設けられた、はんだ付着が可能な、複数のはんだ付着部3と、上記各はんだ付着部3間に形成された、はんだ非付着部5とを有している。
【0041】
上記パッケージIC6としては、セラミックスや封止樹脂などを略直方体形状(長方形板状)に成形してなるパッケージ本体の内部にICを封止して備え、パッケージ本体の底面側に放熱部および接地用端子として機能する、ダイパッド部8を備えたものであればよいが、例えば図4に示すQFNパッケージ20が好適なものとして挙げられる。
【0042】
上記ダイパッド部8は、上記リード端子より広い面積(上記底面の面積の10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、かつ、75%以下、より望ましくは80%、さらに望ましくは90%以下)を有する導電体金属の膜からなるものが好ましい。
【0043】
上記導電性金属としては、アルミニウム、銅、銀、金またはそれらの合金からなるものが挙げられる。上記導電性金属は、そのはんだ付着性(つまりはんだ親和性)が絶縁基板1のはんだ付着性より大きいものである。よって、溶融したはんだは、導電体金属の膜上では、上記膜の表面上をその表面に沿って広がるが、絶縁基板1上でははじかれて(すなわち接触角が小さい)玉状になる。
【0044】
また、上記パッケージIC6のリード端子は、帯状の上記導電性金属からなり、パッケージIC6に内蔵するICに必要な端子数に応じて、複数、パッケージIC6のパッケージ本体における4つの各周辺部に沿って、より好ましくは上記各周辺部の底面側に沿って設けられていることが望ましい。また、上記各リード端子は、それらの長手方向が設置された辺部の長手方向に対しほぼ直交するように設けられていることが好ましい。よって、上記各リード端子は、上記4つの各周辺部にそれぞれ形成されている場合では、上記4つの各周辺部により形成される閉曲線上に並んで、かつ規則性を備えてそれぞれ配列されていることになる。
【0045】
上記絶縁基板1の素材としては、電気絶縁性と良好な熱電導性を有しているものであればよいが、窒化アルミニウム(AlN)やアルミナといったセラミックス、ガラス繊維または炭素繊維にて強化されたエポキシ樹脂といった繊維強化樹脂が挙げられる。強度と成形性の観点からは繊維強化樹脂が好ましい。
【0046】
電気絶縁性とは、抵抗値(RT)が1010(Ω・cm)以上、より望ましくは1012(Ω・cm)以上のものをいう。良好な熱伝導性とは、熱伝導率(RT)が、18(W/m・k)以上、より効果的なのは60(W/m・k)以上、最も良いのは140(W/m・k)以上のものをいう。
【0047】
前記信号端子2は、帯状の上記導電性金属からなり、絶縁基板1上に、上記各リード端子の配置や向きに応じて、複数、それぞれ形成されている。よって、上記各リード端子が上記4つの各周辺部にそれぞれ形成されている場合では、上記各信号端子2は、上記4つの各周辺部により形成される閉曲線上に並んで、かつ規則性を備えてそれぞれ配列されていることになる。
【0048】
また、各信号端子2は、それぞれ、対応するリード端子と対面する位置に、はんだ付着端子部2aと、それ以外の部分であるはんだ非付着端子部2bとを備えている。
【0049】
はんだ付着端子部2aは、導電性金属が露出しており、良好なはんだ付着性を有している。また、はんだ付着端子部2aは、実装されるパッケージIC6の底面外周より外方に突出していることが好ましい。上記突出量は、パッケージIC6の外周側面での各リード端子の高さ(パッケージIC6の厚さ方向の長さ)に応じた長さ、例えば同じ長さが望ましい。
【0050】
はんだ非付着端子部2bは、はんだ付着端子部2aが有するはんだへの親和性より、はんだへの親和性が小さいものであり、その小さい親和性により、上記はんだ付着端子部2aからはんだが外方(つまり、信号端子2の長手方向外側)に侵出することを抑制して、上記はんだ付着端子部2a上でのはんだ量を、より均一化するためのものである。このようなはんだ非付着端子部2bは、表面に酸化物層を形成することで作製できる。
【0051】
そして、前記複数の各はんだ付着部3は、上記導電性金属の膜からなり、絶縁基板1上における、パッケージIC6のダイパッド部8に面する位置に、ダイパッド部8に面する位置を分割するように設けられている。各はんだ付着部3は、上記導電性金属からなるので、はんだ付着が可能なものとなっている。
【0052】
各はんだ付着部3は、ダイパッド部8の形状(長方形状)と相似で、小さい形状が好ましく、互いに等間隔にて碁盤やチェスの枡目状に互いにそれぞれ配列されていることが望ましい。上記等間隔は、その等間隔の隙間部分にてはんだ非付着部5を形成するので、各はんだ付着部3の短手方向端部における長さの1/2以下、より好ましくは1/3以下、さらに好ましくは1/4以下であり、上記長さの1/20以上、より望ましくは1/10以上、さらに望ましくは1/8以上である。
【0053】
また、各はんだ付着部3は、それらを囲む仮想外周辺が、ダイパッド部8の外周辺と互いに平行に、かつ上記等間隔により離間して配置されていることが好ましい。このように各はんだ付着部3が配置されているときは、各はんだ付着部3は、それらを囲む仮想外周辺の中心がダイパッド部8の外周辺の中心と一致するように配置されていることになる。
【0054】
前記はんだ非付着部5は、上記各はんだ付着部3間に形成された、上記等間隔の幅となる溝状のものであり、その底面には絶縁基板1が露出しているものである。上記各はんだ付着部3、および各信号端子2は、絶縁基板1状に、フォトリソグラフィーの技術を用いて形成でき、また、上記両者を同時に形成してもよい。
【0055】
次に、本実施の第一形態の電気回路基板に対して、パッケージIC6を実装する方法について説明する。まず、ダイパッド部8に対面する、複数に分割された各はんだ付着部3上にのみと、各信号端子2の各はんだ付着端子部2aとに対し、スクリーン印刷などの塗布操作によりはんだペーストを塗布する。なお、ダイパッド部8上に、各はんだ付着部3の大きさと等しいエリアと、パッケージIC6の各リード端子上とに対し、はんだペーストを塗布してもよい。
【0056】
続いて、電気回路基板の絶縁基板1上の各はんだ付着端子部2aと、それらに対応するパッケージIC6の各リード端子とを合わせように、パッケージIC6を絶縁基板1上に載置し、加熱、押圧、超音波信号、またはそれらの組み合わせによりはんだペーストの溶媒を除去し、はんだペーストのはんだを溶融させると溶融したはんだは、ダイパッド部8、各はんだ付着部3の双方上に広がった後、冷却して上記はんだを固化させ、パッケージIC6を絶縁基板1上に対し、電気的、かつ機械的に接続して実装する。
【0057】
この実装のとき、このように設計された本発明に係る電気回路基板に対し、QFNパッケージなどのパッケージIC6を実装したとき、はんだ中に含まれるフラックスが気化したガスおよびはんだや各はんだ付着部3の酸化物が化学反応して発生したガスは、電気回路基板の各はんだ付着部3が分割された部分、すなわち導電体が露出していない部分である、溝状のはんだ非付着部5を通して外部に流出する。
【0058】
この結果、上記ガスに起因するボイドの発生を抑えることが可能となり、ボイドの発生が抑えられれば、上記パッケージIC6の電気回路基板への実装信頼性は高まることとなる。
【0059】
ところで、上記パッケージIC6としての図4に示すQFNパッケージは、図2に示すQFP("Quad Flat Package"の略)パッケージ30と比較して各リード端子24がパッケージ本体22の周辺部の下に直接装着されて存在するので、電気回路基板への実装後のパッケージ本体22に対しストレスが加わったとき、上記ストレスを吸収し難く(QFPパッケージ30では、外方に突出して可撓性を有するリード端子34部分でパッケージ本体32へのストレスを吸収できる)、実装信頼性を確保し難いことがある。
【0060】
しかしながら、本実施の第一形態では、各信号端子2に、はんだ付着端子部2aと、それ以外の部分であるはんだ非付着端子部2bとをそれぞれ備えたことで、はんだが侵出し難いはんだ非付着端子部2bの形成によって、上記各はんだ付着端子部2a上でのはんだ量を、互いにより均一化できるから、上記ストレスを各はんだ付着端子部2aでの各接合部で分散して受けることになって、上記ストレスによる、上記パッケージIC6や電気回路基板の破損を抑制できる。
【0061】
(実施の第二形態)
本発明に係るパッケージIC用の電気回路基板における実施の第二形態について、図3に基づき説明する。なお、本実施の第二形態では、上記実施の第一形態と同一の機能を有する部材に関しては同一の部材番号を付与してそれらの説明を省いた。
【0062】
本実施の第二形態の電気回路基板は、その設計条件としてパッケージIC6の裏面に部品および導体がない場合であり、図3に示すものである。すなわち、本実施の第二形態は、図1の電気回路基板の構造に加えて、分割された各はんだ付着部3間の、溝状のはんだ非付着部5にスルーホール4を絶縁基板1に設置した形状としている。上記スルーホール4は、絶縁基板1をその厚さ方向にて貫通するものであり、その絶縁基板1の表面方向断面が円形に形成されていることが好ましい。また、上記スルーホール4は、溝状の各はんだ非付着部5の交差部分に配置されていることが望ましい。上記スルーホール4の直径は、はんだ非付着部5の幅より大きく、はんだ付着部3の短手方向の端部の長さより小さいことが好ましい。
【0063】
次に、本実施の第二形態の電気回路基板に対して、パッケージIC6を実装する方法について説明する。まず、ダイパッド部8に対面する、複数に分割された各はんだ付着部3上にのみと、各信号端子2の各はんだ付着端子部2aとに対し、スクリーン印刷などの塗布操作によりはんだペーストを塗布する。なお、ダイパッド部8上に、各はんだ付着部3の大きさと等しいエリアと、パッケージIC6の各リード端子上とに対し、はんだペーストを塗布してもよい。何れの塗布方法においても、設置したスルーホール4に、はんだが流れ込まない様にスルーホール4や、その周辺には、はんだペーストを塗布しないように考慮した設計とする。
【0064】
続いて、電気回路基板の絶縁基板1上の各はんだ付着端子部2aと、それらに対応するパッケージIC6の各リード端子とを合わせように、パッケージIC6を絶縁基板1上に載置し、加熱、押圧、超音波信号、またはそれらの組み合わせによりはんだペーストの溶媒を除去し、はんだペーストのはんだを溶融させると溶融したはんだは、ダイパッド部8、各はんだ付着部3の双方上に広がった後、冷却して上記はんだを固化させ、パッケージIC6を絶縁基板1上に対し、電気的、かつ機械的に接続して実装する。
【0065】
このように設計された本実施の第二形態の電気回路基板に対し、パッケージIC6を実装した時、実装時に発生するガスは、図1に示した電気回路基板のときと同じように導体が露出していない部分である溝状の各はんだ非付着部5に流出し、さらにスルーホール4から絶縁基板1の裏面へと流出させることが可能となる。また、スルーホール4を通じて、パッケージIC6からの放熱をさせることも可能となるので、放熱特性も改善される。
【0066】
図6の実装時の電気回路基板における要部透視平面図に示した電気回路基板は、図5に示したスルーホールがないものの実装の様子であるが、図5に示す電気回路基板の各エリア46a間の、はんだが塗布されない位置の端子部46にスルーホールを設けることが考えられる。通常この放熱特性改善用のスルーホールは径の小さい(直径0.3mmが標準的)ものである。このようなスルーホールを設けても、実装時に、端子部46の導電体露出部分から、はんだがスルーホール内に流れ、スルーホールがはんだにて埋まってしまい、このスルーホールからはボイドの原因となるガスが抜けないため、ボイドの減少には効果が小さく、実装信頼性の改善の効果は少ないという不都合を生じている。
【0067】
しかしながら、本実施の形態では、分割された各はんだ付着部3間の、溝状のはんだ非付着部5にスルーホール4を絶縁基板1に設置したので、上記不都合を回避できる。また、本実施の第二形態においては、スルーホール4の大きさを前述したように規定することにより、上記不都合をより確実に防止できる。
【0068】
以上のように本発明によれば、QFNパッケージなどのパッケージIC6に対応した電気回路基板の設計を考慮することによって、パッケージIC6の実装時に実装信頼性の向上した電気回路基板を実現することが可能となる。また、電気回路基板への設計条件に前述したように制約がなければ、これに加えてパッケージIC6の放熱特性がさらに向上した電気回路基板を実現することも可能となるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る、パッケージIC6などの半導体素子用の電気回路基板は、半導体素子の放熱特性を確保しながら、半導体素子の実装信頼性を向上できるので、携帯機器などの電子機器の分野や、コンピュータなどの情報機器の分野に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る半導体素子用の電気回路基板における実施の第一形態の要部平面図である。
【図2】上記半導体素子としてのQFPパッケージの概要を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】本発明に係る半導体素子用の電気回路基板における実施の第一形態の要部平面図である。
【図4】上記半導体素子としてのQFNパッケージの概要を示し、(a)は正面図、(b)は表面(上面)側からの斜視図、(c)は裏面側からの斜視図である。
【図5】QFNパッケージに対する従来の電気回路基板の概略平面図である。
【図6】QFNパッケージの従来の電気回路基板への実装したときはんだ接合部を示す透視平面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 絶縁基板
2 信号端子
3 はんだ付着部
5 はんだ非付着部
6 パッケージIC(半導体素子)
8 ダイパッド部(放熱部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
絶縁基板上に、半導体素子のリード端子に応じて設けられた信号端子と、
絶縁基板上における、半導体素子の放熱部に面する位置に設けられた、はんだ付着が可能な、複数のはんだ付着部と、
上記各はんだ付着部間に形成された、はんだ非付着部とを有していることを特徴とする半導体素子用の電気回路基板。
【請求項2】
前記各はんだ付着部は、導電体金属膜からなっていることを特徴とする請求項1記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項3】
前記各はんだ付着部は、互いに等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項4】
前記各はんだ付着部は、はんだへの親和性が前記絶縁基板より大きいものであることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項5】
前記信号端子は、リード端子に面する位置にはんだ付着端子部と、はんだ非付着端子部とを備えていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項6】
前記信号端子は、半導体素子の周辺部に形成された複数のリード端子に応じてそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項7】
前記信号端子は、半導体素子の周辺部に形成された複数のリード端子に応じた閉曲線上に沿ってそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項6記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項8】
前記各はんだ付着部は、前記閉曲線の内部にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項7記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項9】
前記はんだ非付着部は、各はんだ付着部間に露出した絶縁基板の表面であることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項10】
前記はんだ非付着部の幅は、各はんだ付着部の短辺より小さくなっていることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項11】
前記各はんだ付着部は、前記放熱部と形状が相似しており、互いに等しい大きさに設けられていることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項12】
前記はんだ非付着部に、前記絶縁基板を厚さ方向に貫通するスルーホールが設けられていることを特徴とする請求項1ないし11の何れか1項に記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項13】
前記はんだ非付着部の交差部に、前記スルーホールが設けられていることを特徴とする請求項12記載の半導体素子用の電気回路基板。
【請求項14】
前記スルーホールの大きさは、前記はんだ非付着部の幅より大きく設定されていることを特徴とする請求項12または13に記載の半導体素子用の電気回路基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−147723(P2006−147723A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333582(P2004−333582)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】