説明

半導体装置、半導体装置の実装構造体、半導体装置の製造方法、および半導体装置の実装構造体の製造方法

【課題】外部接続用電極が狭ピッチであっても、高い接続信頼性を簡易に実現することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】外部接続用電極を備えた半導体装置であって、前記外部接続用電極が、半導体基板上に形成されたメタル層12と、メタル層12と接触するように形成され、かつメタル層12の一部を露出させる開口部13aを有する絶縁層13と、絶縁層13の開口部13aから露出するメタル層12と電気的に接続するように形成されたバリアメタル層14と、を備え、バリアメタル層14が、絶縁層13に垂直な平面とバリアメタル層14の表面とが交わって形成される線分のうち、絶縁層13の開口部13aの周囲の領域に対応する部分に、曲率半径を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の実装構造体、半導体装置の製造方法、および半導体装置の実装構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の実装構造体の一種に、LSIなどの半導体素子の電極端子上にはんだバンプなどの突起電極を形成してなる半導体装置をフェイスダウンで回路基板に実装するフリップチップ実装にかかる実装構造体がある。フリップチップ実装においては、通常、はんだバンプを加熱した状態で回路基板の電極端子へ向けて圧接する。
【0003】
LSIなどの半導体素子の電極端子上にはんだバンプを形成する方法としては、スクリーン印刷やディスペンスや電解メッキで電極端子上にはんだを供給した後、その供給されたはんだを、リフロー炉でその融点以上に加熱する工法が一般的に採用されている。この工法によれば、半導体素子の電極端子上に突起状のはんだバンプを形成することができる。また、はんだバンプを用いる場合は、半導体素子と回路基板との間の空隙に封止樹脂を充填させて、半導体素子の電極端子と回路基板の電極端子との接合強度を補強している。
【0004】
ところで近年、半導体素子の高密度化と電極端子の多ピン化の両立を図るべく、半導体素子の電極端子の狭ピッチ化および面積縮小化が進められており、特に、狭ピッチ化の進展が著しい。そのため、従来のフリップチップ実装のように、電極端子を半導体素子の外周部に1列で配置したり、2列で千鳥状に配置しただけでは、電極端子間で短絡が発生したり、半導体素子と回路基板との熱膨張係数の差に起因する反りによって接続不良などが発生することがあった。
【0005】
そこで、電極端子間ピッチを広げるために、電極端子を碁盤の目のようにエリア状に配置する、所謂エリア配置が採用されるようになってきた。つまり、半導体素子の外周部にのみ電極端子を1列または2列で配列するよりも、電極端子を碁盤目のようにエリア状に配置したほうが、電極端子を配置する領域の面積を大きくとれるので、電極端子間ピッチを広げることができる。
【0006】
しかし、近年ではエリア配置でも狭ピッチ化の進展が著しい。また、半導体素子と回路基板との間の距離も縮まってきた。そのため、エリア配置であっても、フリップチップ実装工法の加熱および圧接工程において、溶融したはんだが変形し、はんだの表面張力によりはんだバンプ同士が繋がる不良、所謂はんだブリッジ不良が発生するようになってきた。
【0007】
このような問題に対応するために、バンプを2層構造にすることが提案されている。
【0008】
例えば、金や銅から成る金属製突起電極の表面を覆うように、金属粒子を含有した絶縁性皮膜を形成した2層構造のバンプが、特許文献1に提案されている。このようにすれば、絶縁性皮膜や金属製突起電極がフリップチップ実装時に溶融せずに、半導体素子と回路基板との間に注入した封止樹脂の硬化収縮による圧縮方向の力によって金属粒子が絶縁性皮膜を突き破ることで電気的導通を得ることができるので、電極端子間での短絡を防ぐことができ、電極端子の狭ピッチ化に対応できる。
【0009】
しかしながら、近年、半導体素子の電極端子の狭ピッチ化の要求が非常に厳しくなってきており、それに伴い、電極端子の面積縮小化も進んでいる。そのため、特許文献1に記載されているように、絶縁性皮膜を突き破った金属粒子が電極端子と拡散接合せずに接触するのみで電気的な導通を確保する接続形態では、半導体素子の電極端子の面積が小さくなると当然、半導体素子の電極端子と回路基板の電極端子との間に介在する金属粒子の数が少なくなり、その結果、接続抵抗が高くなって、信号の伝送損失が増大するという問題が起こる。
【0010】
そこで、フリップチップ実装時に溶融しない高融点の下層電極の上に、はんだから成る上層電極を形成した2層構造のバンプが、例えば、特許文献2に提案されている。このようにすれば、はんだ一層から成るバンプよりも、はんだの量を減らすことができるので、フリップチップ実装時に平面方向へ押し出されるはんだの量が減り、はんだブリッジ不良の発生を防ぐことができる。その上、はんだが電極端子と拡散接合するので、接続抵抗を低くでき、信号の伝送を損なうこともない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−282617号公報
【特許文献2】特開平9−97791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら近年、配線ルールの微細化や信号処理の高速化の要求がさらに高まってきており、これらの要求に対応する目的で、半導体素子の電極端子の更なる狭ピッチ化(例えば、10〜50μm)が図られるようになってきた。
【0013】
図7は特許文献2に記載された従来の半導体装置を概念的に示す断面図である。図7に示すように、半導体素子1の図示しない電極端子上には、フリップチップ実装時に溶融しない高融点の下層電極3aの上に、はんだから成る上層電極3bを形成した2層構造のバンプ2が設けられており、この半導体素子1を回路基板4上にフリップチップ実装する際には、半導体素子1のバンプ2と回路基板4の電極端子5との位置を合わせた後、半導体素子1を加熱しながら回路基板4へ向けて加圧して、上層電極3bのはんだを溶融することにより、半導体素子1を回路基板4上に搭載する。
【0014】
しかしながら、半導体素子の電極端子の狭ピッチ化が、例えば、10〜50μmまで進展すると、はんだの体積の絶対量が微小となるので、はんだの体積に対してはんだの表面積が増し、はんだの表面を覆うはんだ酸化皮膜の含有率が多くなる。したがって、フラックスを用いてはんだ酸化皮膜を除去することが望まれるが、電極端子間ピッチが10〜50μmまで狭くなると、フラックスを用いた場合、フラックス洗浄工程において半導体素子の中央部のフラックスを除去しきれず、その除去できなかったフラックスが残渣として残る。この残渣は、アンダーフィル封止を阻害する。また、フラックスの残渣とはんだ接合部との線膨張係数が違うために、フラックスの残渣が加熱に伴い膨張すると、半導体素子の半導体基板に垂直な方向の引張応力がはんだ接合部に加わり、このフラックスの残渣による引張応力がはんだ接合部の破断応力を上回ると、はんだクラックが発生する。よって、フラックスの残渣は、急激な温度差が発生する環境下において、はんだクラックを発生させる。
【0015】
また、特許文献2に記載された従来の半導体装置において、半導体素子1の下層電極3aは、回路基板4に対向する上面が平坦な円柱状となっている。そのため、フラックスを用いずにフリップチップ実装を行うと、半導体素子1の下層電極3aの上面と、回路基板4の電極端子5の上面とがいずれも平坦であるために、溶融している上層電極3bのはんだに一様に応力が加わり、硬いはんだ酸化皮膜で覆われた上層電極3bのはんだが圧縮されてつぶされ、応力が水平方向に作用して下層電極3aの周囲にはんだがはみだし、隣接する下層電極3a上に形成されたはんだ同士が繋がって、はんだブリッジ不良が発生する。その上、はんだ酸化皮膜を破ることができずに、オープン不良が発生する。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑み、電極端子が狭ピッチであっても、高い接続信頼性を簡易に確保できる半導体装置、半導体装置の実装構造体、半導体装置の製造方法、および半導体装置の実装構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置は、外部接続用電極を備えた半導体装置であって、前記外部接続用電極が、半導体基板上に形成されたメタル層と、前記メタル層と接触するように形成され、かつ前記メタル層の一部を露出させる開口部を有する絶縁層と、前記絶縁層の開口部から露出する前記メタル層と電気的に接続するように形成されたバリアメタル層と、を備え、前記バリアメタル層が、前記絶縁層に垂直な平面と前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分に、曲率半径を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の半導体装置の他の側面は、前記絶縁層の開口部内の任意の点を通り、かつ前記絶縁層に垂直な平面と、前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の領域に対応する部分の曲率半径Rtが、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分の曲率半径Rz以上の大きさであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の半導体装置の他の側面は、前記絶縁層の開口部の領域に対応する前記バリアメタル層の表面が平坦であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の半導体装置の他の側面は、前記絶縁層の開口部の形状が直径Aの円形であり、前記バリアメタル層を平面視したときの形状が直径Bの円形であり、前記バリアメタル層を平面視したとき前記直径Aの円形と前記直径Bの円形の中心が一致しており、(B−A)の値が、前記絶縁層の表面からの前記バリアメタル層の高さHの1.4〜2倍であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の半導体装置の他の側面は、前記外部接続用電極が複数個形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の半導体装置の実装構造体は、上記した半導体装置と、前記半導体装置の前記絶縁層の開口部に対向するように電極端子が設けられた基板と、前記半導体装置の前記バリアメタル層と前記基板の電極端子とを電気的に接続するはんだ接合部と、を備えた半導体装置の実装構造体であって、前記絶縁層の開口部の中心と前記基板の電極端子の中心とが前記絶縁層の開口部内で偏心していることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、メタル層を有する半導体基板上に、前記メタル層と接触し、かつ前記メタル層の一部を露出させる開口部を有する絶縁層を形成する工程と、無電解めっき工法により前記絶縁層の開口部からバリアメタル層を成長させる工程と、を具備することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の半導体装置の製造方法の他の側面は、成長した前記バリアメタル層が、前記絶縁層に垂直な平面と前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分に、曲率半径を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の半導体装置の製造方法の他の側面は、成長した前記バリアメタル層において、前記絶縁層の開口部内の任意の点を通り、かつ前記絶縁層に垂直な平面と、前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の領域に対応する部分の曲率半径Rtが、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分の曲率半径Rz以上の大きさであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の半導体装置の製造方法の他の側面は、成長した前記バリアメタル層において、前記絶縁層の開口部の領域に対応する表面が平坦であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の半導体装置の製造方法の他の側面は、前記絶縁層を形成する際に、前記絶縁層の開口部の形状が直径Aの円形となるようにし、前記バリアメタル層を成長させる際に、前記バリアメタル層を平面視したときの形状が直径Bの円形となり、かつ、(B−A)の値が、前記絶縁層の表面からの前記バリアメタル層の高さHの1.4〜2倍となるようにすることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の半導体装置の実装構造体の製造方法は、上記した半導体装置のバリアメタル層と基板の電極端子とを対向させる工程と、対向する前記バリアメタル層と前記電極端子との間に介在するはんだをその融点以上に加熱しながら、前記半導体装置と前記基板とを接近させる工程と、を具備し、前記はんだを加熱しながら、前記半導体装置と前記基板とを接近させることにより、前記はんだの表面を覆う酸化皮膜が破れ、前記はんだが加圧されて、その加圧される第1方向に垂直な第2方向に押し出され、その第2方向に膨らんだはんだ接合部が形成されることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の半導体装置の実装構造体の製造方法の他の側面は、前記はんだを加圧した後、前記半導体装置の絶縁層に垂直な方向に前記半導体装置と前記基板を引き離す工程を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、外部接続用電極が狭ピッチであっても、高い接続信頼性を簡易に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の構造を示す拡大断面図
【図2】本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法を示す工程別断面図
【図3】本発明の実施の形態1における半導体装置の実装構造体の製造方法を示す工程別断面図
【図4】本発明の実施の形態2における半導体装置の構造を示す拡大断面図
【図5】本発明の実施の形態2における半導体装置の実装構造体の製造方法を示す工程別断面図
【図6】本発明の実施の形態3における半導体装置の実装構造体の製造方法を示す工程別断面図
【図7】従来の半導体装置を概念的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的または概念的に示している。また図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は図面作成の都合上から、実際とは異なる。なお、以下の実施の形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は一例であって特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
また、以下の実施の形態では、電子部品として半導体素子を例に説明する。また、電子部品が実装される基板として半導体基板を例に説明する。しかし、電子部品と、その電子部品が実装される基板はこれらに限定されるものではない。例えば、電子部品として、電極端子間ピッチが狭いコンデンサや、コイル、抵抗などの受動部品を用いる場合も、同様の効果が得られる。
【0034】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における半導体装置の構造を示す拡大断面図である。
【0035】
この実施の形態1における半導体装置は、半導体素子11の表面に外部接続用電極を備える。その外部接続用電極は、詳しくは、図1に示すように、半導体素子11の半導体基板上に形成されたメタル層(電極端子の一例)12と、メタル層12と接触するように形成され、かつメタル層12の一部を露出させる開口部13aを有する絶縁層13と、絶縁層13の開口部13aから露出するメタル層12と電気的に接続するように形成されたバリアメタル層14と、を備える。
【0036】
さらに、この実施の形態1における半導体装置の外部接続用電極は、バリアメタル層14と接触するように形成されたはんだ15を備える。そのはんだ15の表面は、はんだ酸化皮膜15aで覆われている。
【0037】
半導体素子11には構成材料として、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、ガリウム砒素などを用いることができる。また、メタル層12には構成材料として、例えば、Al、Al−Cu,Al−Si−Cuなどを用いることができ、絶縁層13には構成材料として、例えばSiを用いることができる。この実施の形態1では、メタル層12の構成材料としてAlを用いる場合について説明する。
【0038】
さらに、この実施の形態1における半導体装置において、絶縁層13の開口部13aは直径Aの円形状をしており、好適には、円形状のメタル層12の中心と絶縁層13の開口部13aの中心は一致している。また、バリアメタル層14は、平面視したときに直径Bの円形状をしている。そして、バリアメタル層14を平面視したとき、絶縁層13の開口部13a(直径Aの円形)とバリアメタル層14(直径Bの円形)の中心が一致している。
【0039】
さらに、バリアメタル層14の表面は、登頂部14aと周囲部14bに区分できる。登頂部14aは、絶縁層13の開口部13aの領域に対応して形成されており、半導体素子11のメタル層12の表面に平行な円板状をしており、平坦または略平坦である。周囲部14bは登頂部14aの周囲に形成されており、絶縁層13(または半導体基板)に垂直で、かつ絶縁層13の開口部13aを通らない平面によって切断した断面形状は半円状をしている。
【0040】
したがって、バリアメタル層14は、絶縁層13(または半導体基板)に垂直な平面とバリアメタル層14の表面とが交わって形成される線分のうち、絶縁層13の開口部13aの周囲の領域に対応する部分(バリアメタル層14の周囲部14b)に、曲率半径Rzを有する。
【0041】
また、バリアメタル層14の登頂部14aが平坦または略平坦であるので、絶縁層13の開口部13a内の任意の点を通り、かつ絶縁層13(または半導体基板)に垂直な平面と、バリアメタル層14の表面とが交わって形成される線分のうち、絶縁層13の開口部13aの領域に対応する部分(バリアメタル層14の登頂部14a)の曲率半径Rtが、絶縁層13の開口部13aの周囲の領域に対応する部分(バリアメタル層14の周囲部14b)の曲率半径Rz以上の大きさとなる。なお、登頂部14aが平坦である場合、その曲率半径Rtは無限大となる。
【0042】
バリアメタル層14は、例えば、Ni−P等から成る。この実施の形態1では、バリアメタル層14が、Ni−P上にAuフラッシュめっきを形成して成る場合について説明する。
【0043】
また、この実施の形態1における半導体装置では、絶縁層13の表面からのバリアメタル層14(登頂部14a)の高さをHとしたとき、絶縁層13の開口部13aの直径(開口径)Aは、バリアメタル層14の高さHの1.5〜2倍である。
【0044】
また、この実施の形態1における半導体装置では、バリアメタル層14の直径Bと、絶縁層13の開口径Aと、バリアメタル層14の高さHとの間に、
(バリアメタル層14の直径B)=(絶縁層13の開口径A)+(1.4〜2)×(バリアメタル層14の高さH)
の関係が成立している。
【0045】
さらに、この実施の形態1における半導体装置では、複数個の外部接続用電極が等間隔で碁盤目のようにエリア状に配列されており、外部接続用電極のピッチをCとしたとき、ピッチCは、バリアメタル層14の直径Bの1.3〜2倍である。なお、ピッチとは、隣接するメタル層12の中心間距離のことである。
【0046】
続いて、図1に示す構造を有する半導体装置の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1における半導体装置の製造方法を示す工程別断面図である。
【0047】
まず、図2(a)に示す通り、メタル層12を有する半導体基板上に、メタル層12と接触し、かつメタル層12の一部を露出させる開口部13aを有する絶縁層13を形成する。このとき、絶縁層13の開口部13aを、その形状が直径Aの円形となり、かつ、その中心が円形状のメタル層12の中心と一致するように形成する。
【0048】
次に、図2(b)に示す通り、無電解めっき工法により絶縁層13の開口部13aからバリアメタル層14を成長させる。このとき、成長したバリアメタル層14を平面視したときの形状が直径Bの円形となり、かつ、バリアメタル層14の直径Bと、絶縁層13の開口部13aの直径(開口径)Aと、絶縁層13の表面からのバリアメタル層14の高さHとの間に、
(バリアメタル層14の直径B)=(絶縁層13の開口径A)+(1.4〜2)×(バリアメタル層14の高さH)
の関係が成立するようにバリアメタル層14を成長させる。
【0049】
具体的には、Alからなるメタル層12の表面から不純物を除去した後、半導体素子11を亜鉛めっき液に浸漬して、メタル層12のAlとZnとの置換反応を行う。次に、メタル層12からZn核を除去した後、半導体素子11を、再度、亜鉛めっき液に漬け、より微細なZn核をメタル層12のAl上に成長させる。次に半導体素子11をNi−Pめっき液中に浸漬してZnを溶解し、Ni−P皮膜をメタル層12のAl上に成長させる。このとき、絶縁層13の表面からのNi−Pの高さ(バリアメタル層14の登頂部14aの高さ)Hが、絶縁層13の開口径Aの1/2〜2/3になるまで成長させる。更に、半導体素子11を無電解金めっき液に浸漬して、Ni−P上にAu皮膜を薄く成長させる。
【0050】
無電解めっき工法では、高さ方向と平面方向が一定の割合で成長するため、絶縁層13の開口部13aの端点を起点に、絶縁層13の表面からのバリアメタル層14の高さHの0.7〜1倍の半径を有する球面の一部が、絶縁層13の開口部13aの周囲の領域(登頂部14aの周囲)に形成される。したがって、絶縁層13の円形状の開口部13aから無電解めっき工法によりバリアメタル層14を成長させることで、平面視したときに、絶縁層13の開口部13aと中心が一致する直径Bの円形状をしており、表面が、平坦または略平坦な登頂部14aと、曲率半径を有する周囲部14bとに区分される、上述したバリアメタル層14が形成される。
【0051】
次に、成長したバリアメタル層14上に、表面がはんだ酸化皮膜15aで覆われたはんだ15を形成する。例えばPETなどから成るベース材上に形成された粘着剤にはんだ粉を貼付け、はんだ転写基材を形成する。はんだ粉には、例えば、Sn−3.0Ag−0.5Cuを用いることができる。また、粘着剤には、例えばゴム系樹脂を用いることができる。そして、はんだ転写基材を半導体素子11のバリアメタル層14に対向するように配置し、加熱して、半導体素子11へ向けて加圧する。加熱によりはんだ粉とバリアメタル層14が拡散接合する。その後、バリアメタル層14上のはんだにフラックスを塗布し、リフロー炉ではんだを溶融させた後、フラックスを洗浄すると、図2(c)に示すように、はんだ15とはんだ酸化皮膜15aが形成される。
【0052】
以上の方法によれば、メタルマスクなどを用いないため位置あわせをする必要がなく、簡易にメタルバンプを有する半導体装置を形成することができる。
【0053】
続いて、図1に示す構造を有する半導体装置を用いた実装構造体の製造方法について、図3を用いて説明する。図3は本発明の実施の形態1における半導体装置の実装構造体の製造方法を示す工程別断面図である。
【0054】
この実施の形態1では、図1に示す半導体装置を実装する基板として、他の半導体装置の半導体基板を用いる。つまり、この実施の形態1では、複数個の半導体装置を積層する場合について説明する。また、この実施の形態1では、図1に示す構造の外部接続用電極を有する半導体装置同士を積層する場合について説明する。
【0055】
すなわち、図3(a)に示すように、下側の半導体装置が図1に示す半導体装置である場合、上側の半導体装置の半導体素子21には、下側の半導体装置のメタル層12に対向する位置にメタル層(電極端子の一例)22が形成されている。そして、上側の半導体装置の外部接続用電極は、下側の半導体装置の外部接続用電極と同様に、上側の半導体素子21の半導体基板上に形成されたメタル層22と、メタル層22と接触するように形成され、かつメタル層22の一部を露出させる開口部23aを有する絶縁層23と、絶縁層23の開口部23aから露出するメタル層22と電気的に接続するように形成されたバリアメタル層24と、バリアメタル層24と接触するように形成されたはんだ25を備え、そのはんだ25の表面が、はんだ酸化皮膜25aで覆われている。
【0056】
なお、はんだ15、25は、例えば、SnAg、SnAgCu、SnZn、SnZnBi、SnPb、SnBi、SnAgBiIn、SnIn、In、Snなどの組成から成る。
【0057】
上記した半導体装置同士を積層する際には、まず、図3(a)に示すように、下側の半導体素子11の絶縁層13の開口部13aと上側の半導体素子21のメタル層22とが対向するように、上側の半導体素子21と下側の半導体素子11の少なくとも一方を移動させる。好適には、下側の半導体素子11の絶縁層13の開口部13aの中心または下側の半導体素子11のメタル層12の中心と、上側の半導体素子21の絶縁層23の開口部23aの中心または上側の半導体素子21のメタル層22の中心とが一致するようにする。これにより、下側の半導体装置のバリアメタル層14と上側の半導体装置のメタル層22が対向する。
【0058】
次に、例えば、上側の半導体素子21を、対向するバリアメタル層14、24間に介在するはんだ15、25の融点以上に加熱しながら、下側の半導体素子11へ向けて加圧して、対向する半導体装置同士を接近させる。この上側の半導体素子21の加熱により、対向するはんだ15、25が、その融点以上の温度に加熱されて、溶融する。なお、下側の半導体素子11を加熱してもよいし、上側と下側の両方の半導体素子21、11を加熱してもよい。また、下側の半導体素子11を加圧してもよいし、上側と下側の両方の半導体素子21、11を加圧してもよい。
【0059】
上側の半導体素子21を加熱しながら、下側の半導体素子11へ向けて加圧すると、対向するはんだ酸化皮膜15aとはんだ酸化皮膜25aが接触した後、対向するバリアメタル層14とバリアメタル層24との間のギャップが徐々に狭くなり、はんだ酸化皮膜15a、25aが破れて、図3(b)に示すように、溶融しているはんだ15、25が、圧縮ないしは加圧され、押しつぶされ、水平方向(はんだ15、25が加圧される第1方向に垂直な第2方向)へ押し出される。
【0060】
押し出されたはんだ15、25は、図3(b)に示すように、対向するバリアメタル層14、24の周囲部間のギャップにぬれ広がる。このギャップは、対向するバリアメタル層14、24の登頂部間のギャップよりも広く、かつ、はんだ15、25は曲率半径を有するバリアメタル層14、24の周囲部の接線方向に対して一定の接触角をもってぬれようとするため、図3(b)に示すように、はんだ15、25は大きくはみだすことなく、水平方向(はんだ15、25が加圧される第1方向に垂直な第2方向)に膨らんだ太鼓状または樽状のはんだ接合部31を形成する。この状態で、大気に触れるはんだ接合部31の表面が酸化して、新たなはんだ酸化皮膜31aが形成される。
【0061】
次に、この実施の形態1では、図3(c)に示すように、上側の半導体素子21をはんだ接合部31が円柱状または、くびれを有する円柱状になるまで引き上げる。そして、下側の半導体素子11の絶縁層13(または半導体基板)に垂直な方向に上側の半導体素子21と下側の半導体素子11を引き離した後、円柱状または、くびれを有する円柱状となったはんだ接合部31のはんだを、その凝固点まで冷却して凝固させることで、積層型半導体装置を得る。
【0062】
以上の工程により、下側の半導体装置と、下側の半導体装置の絶縁層13の開口部13aに対向するようにメタル層(電極端子の一例)22が設けられた上側の半導体基板(上側の半導体素子21の半導体基板)と、下側の半導体装置のバリアメタル層14と上側の半導体基板のメタル層22とを電気的に接続するはんだ接合部31と、を備えた半導体装置の実装構造体を得ることができる。
【0063】
この実施の形態1では、例えば、下側の半導体素子11は、外形サイズが10mm×10mm、厚みが0.2mmであり、上側の半導体素子21は、外形サイズが6mm×6mm、厚みが0.15mmであり、バリアメタル層14、24は、直径B=35μm、高さH=10μmであり、メタル層12、メタル層22は、ピッチC=50μmで等間隔に、1チップあたり10,000ピン配置されている。また、絶縁層13、23の開口部は、例えば、直径A=15μmの円形である。
【0064】
以上説明した製造工程によって得られた半導体装置の実装構造体(積層型半導体装置)を断面観察した結果、はんだがはみだすことなく、かつバリアメタル層とはんだの界面に隙間が無い状態で、対向する外部接続用電極同士が接合されていることが観察された。また、10,000ピン安定して接続を確保することができた。これは、メタル層の表面と平行な円板状の登頂部と、曲率半径を有する周囲部とからなるバリアメタル層の表面同士が接近した後離間したので、はんだが球面の一部を成す周囲部の全面にぬれ広がりながら引き上げられたからである。
【0065】
なお、平面視したときのバリアメタル層の直径Bと、絶縁層の開口径Aとの差分の値が、バリアメタル層の高さHの1.4倍より小さければ、バリアメタル層の周囲部の曲率半径が小さくなるので、はんだを圧縮ないしは加圧した後に引きげても、はんだがぬれる面積が少なくなり、はんだブリッジ不良が発生する。一方、平面視したときのバリアメタル層の直径Bと、絶縁層の開口径Aとの差分の値が、バリアメタル層の高さHの2倍より大きければ、隣接するバリアメタル層間のスペースが狭くなり、無電解めっき工法によってバリアメタル層を形成する際にめっきブリッジ不良が発生したり、バリアメタル層上にはんだを転写する際に、はんだブリッジ不良が発生する。このような理由から、平面視したときのバリアメタル層の直径Bと、絶縁層の開口径Aとの差分の値は、バリアメタル層の高さHの1.4〜2倍が望ましい。
【0066】
以上のように、この実施の形態1によれば、外部接続用電極が50μmピッチのように狭ピッチであっても、はんだ接合において、はんだがつぶれたり、バリアメタル層とはんだとの界面に酸化皮膜が残存することなく、良好な接続を得ることができる。
【0067】
なお、この実施の形態1では、対向するバリアメタル層14、24の両方にはんだ15、25が形成されている場合について説明したが、無論、いずれか一方のバリアメタル層にのみはんだが形成されていてもよい。
【0068】
(実施の形態2)
続いて、本発明の実施の形態2について、前述した実施の形態1と異なる点を中心に説明し、前述した実施の形態1で説明した部材に対応する部材については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0069】
図4は本発明の実施の形態2における半導体装置の構造を示す拡大断面図である。この実施の形態2における半導体装置は、絶縁層13の開口径A1’の大きさが、その絶縁層13の表面からのバリアメタル層14の高さH1’以下である点で、前述した実施の形態1と異なる。
【0070】
すなわち、この実施の形態2における半導体装置は、半導体素子11の表面に外部接続用電極を備える。その外部接続用電極は、詳しくは、図4に示すように、半導体素子11の半導体基板上に形成されたメタル層(電極端子の一例)12と、メタル層12と接触するように形成され、かつメタル層12の一部を露出させる開口部13aを有する絶縁層13と、絶縁層13の開口部13aから露出するメタル層12と電気的に接続するように形成されたバリアメタル層14と、を備える。但し、この実施の形態2では、前述した実施の形態1と異なり、バリアメタル層14上にはんだは形成されていない。
【0071】
半導体素子11には構成材料として、例えば、シリコン、シリコンカーバイド、ガリウム砒素などを用いることができる。また、メタル層12には構成材料として、例えば、Al、Al−Cu,Al−Si−Cuなどを用いることができ、絶縁層13には構成材料として、例えばSiを用いることができる。この実施の形態2では、メタル層12の構成材料としてAlを用いる場合について説明する。
【0072】
また、この実施の形態2における半導体装置において、絶縁層13の開口部13aは直径A1’の円形状をしており、好適には、円形状のメタル層12の中心と絶縁層13の開口部13aの中心は一致している。また、バリアメタル層14は、平面視したときに直径B1’の円形状をしている。そして、バリアメタル層14を平面視したとき、絶縁層13の開口部13a(直径A1’の円形)とバリアメタル層14(直径B1’の円形)の中心が一致している。
【0073】
また、バリアメタル層14の表面は、登頂部14aと周囲部14bに区分できる。登頂部14aは、前述した実施の形態1と同様に、絶縁層13の開口部13aの領域に対応して形成されており、半導体素子11のメタル層12の表面に平行な円板状をしており、平坦または略平坦である。周囲部14bも、前述した実施の形態1と同様に、登頂部14aの周囲に形成されており、絶縁層13(または半導体基板)に垂直で、かつ絶縁層13の開口部13aを通らない平面によって切断した断面形状は半円状をしている。
【0074】
バリアメタル層14は、例えば、Ni−P等から成る。この実施の形態2では、バリアメタル層14が、Ni−P上にAuフラッシュめっきを形成して成る場合について説明する。
【0075】
また、この実施の形態2における半導体装置では、絶縁層13の表面からのバリアメタル層14(登頂部14a)の高さをH1’としたとき、絶縁層13の開口部13aの直径(開口径)A1’は、バリアメタル層14の高さH1’の0.5〜1.0倍である。
【0076】
また、前述した実施の形態1と同様に、この実施の形態2における半導体装置においても、バリアメタル層14の直径B1’と、絶縁層13の開口径A1’と、バリアメタル層14の高さH1’との間に、
(バリアメタル層14の直径B1’)=(絶縁層3の開口径A1’)+(1.4〜2)×(バリアメタル層14の高さH1’)
の関係が成立している。
【0077】
さらに、この実施の形態2における半導体装置では、複数個の外部接続用電極が等間隔で碁盤目のようにエリア状に配列されており、外部接続用電極のピッチをCとしたとき、ピッチCは、バリアメタル層14の直径B1’の1.3〜2倍である。なお、ピッチとは、隣接するメタル層12の中心間距離のことである。
【0078】
以上説明した半導体装置の製造方法は、前述した実施の形態1と同様であるので、その説明は省略する。
【0079】
続いて、図4に示す構造を有する半導体装置を用いた実装構造体の製造方法について、図5を用いて説明する。図5は本発明の実施の形態2における半導体装置の実装構造体の製造方法を示す工程別断面図である。
【0080】
この実施の形態2においても、前述した実施の形態1と同様に、図4に示す半導体装置を実装する基板として、他の半導体装置の半導体基板を用いる。つまり、この実施の形態2においても、複数個の半導体装置を積層する場合について説明する。また、この実施の形態2においても、図4に示す構造の外部接続用電極を有する半導体装置同士を積層する場合について説明する。但し、この実施の形態2では、前述した実施の形態1と異なり、一方の半導体装置の外部接続用電極にのみはんだが形成されている。
【0081】
すなわち、図5(a)に示すように、この実施の形態2では、下側の半導体装置が図4に示す半導体装置である。一方、上側の半導体装置の半導体素子21には、下側の半導体装置のメタル層12に対向する位置にメタル層(電極端子の一例)22が形成されている。そして、上側の半導体装置の外部接続用電極は、下側の半導体装置の外部接続用電極と同様に、上側の半導体素子21の半導体基板上に形成されたメタル層22と、メタル層22と接触するように形成され、かつメタル層22の一部を露出させる開口部23aを有する絶縁層23と、絶縁層23の開口部23aから露出するメタル層22と電気的に接続するように形成されたバリアメタル層24とを備える。さらに、上側の半導体装置の外部接続用電極は、バリアメタル層24と接触するように形成されたはんだ25を備え、そのはんだ25の表面が、はんだ酸化皮膜25aで覆われている。はんだ25は、例えば、SnAg、SnAgCu、SnZn、SnZnBi、SnPb、SnBi、SnAgBiIn、SnIn、In、Snなどの組成から成る。
【0082】
上記した半導体装置同士を積層する際には、実施の形態1と同様に、まず、図5(a)に示すように、下側の半導体素子11の絶縁層13の開口部13aと上側の半導体素子21のメタル層22とが対向するように、上側の半導体素子21と下側の半導体素子21の少なくとも一方を移動させる。好適には、下側の半導体素子11の絶縁層13の開口部13aの中心または下側の半導体素子11のメタル層12の中心と、上側の半導体素子21の絶縁層23の開口部23aの中心または上側の半導体素子21のメタル層22の中心とが一致するようにする。これにより、下側の半導体装置のバリアメタル層14と上側の半導体装置のメタル層22が対向する。
【0083】
次に、実施の形態1と同様に、例えば、上側の半導体素子21を、対向するバリアメタル層14、24間に介在するはんだ25の融点以上に加熱しながら、下側の半導体素子11へ向けて加圧して、対向する半導体装置同士を接近させる。この上側の半導体素子21の加熱により、上側の半導体装置に設けられたはんだ25が、その融点以上の温度に加熱されて、溶融する。なお、下側の半導体素子11を加熱してもよいし、上側と下側の両方の半導体素子21、11を加熱してもよい。また、下側の半導体素子11を加圧してもよいし、上側と下側の両方の半導体素子21、11を加圧してもよい。
【0084】
上側の半導体素子21を加熱しながら、下側の半導体素子11へ向けて加圧すると、溶融しているはんだ25の表面を覆うはんだ酸化皮膜25aが下側の半導体装置のバリアメタル層14に接触した後、対向するバリアメタル層14とバリアメタル層24との間のギャップが徐々に狭くなり、はんだ酸化皮膜25aが破れ、溶融しているはんだ25が、下側の半導体装置のバリアメタル層14の表面のAuにぬれ広がるとともに、下側の半導体装置のバリアメタル層14の平坦部(登頂部14a)に集中的に応力がかかるために圧縮ないしは加圧されて、水平方向(はんだ25が加圧される第1方向に垂直な第2方向)に押し出される。
【0085】
押し出されたはんだ25は、対向するバリアメタル層14、24の周囲部間のギャップにぬれ広がる。このギャップは、対向するバリアメタル層14、24の登頂部間のギャップよりも広く、かつ、はんだ25は曲率半径を有するバリアメタル層14、24の周囲部の接線方向に対して一定の接触角をもってぬれようとするため、はんだ25は大きくはみだすことなく、水平方向(はんだ25が加圧される第1方向に垂直な第2方向)に膨らんだ太鼓状または樽状のはんだ接合部を形成する。この状態で、大気に触れるはんだ接合部の表面が酸化して、新たなはんだ酸化皮膜が形成される。
【0086】
次に、図5(b)に示すように、半導体素子21をはんだ接合部31が円柱状または、くびれを有する円柱状になるまで引き上げる。そして、下側の半導体素子11の絶縁層13(または半導体基板)に垂直な方向に上側の半導体素子21と下側の半導体素子11を引き離した後、円柱状または、くびれを有する円柱状となったはんだ接合部31のはんだを、その凝固点まで冷却して凝固させることで、積層型半導体装置を得る。
【0087】
以上の工程により、下側の半導体装置と、下側の半導体装置の絶縁層13の開口部13aに対向するようにメタル層(電極端子の一例)22が設けられた上側の半導体基板(上側の半導体素子21の半導体基板)と、下側の半導体装置のバリアメタル層14と上側の半導体基板のメタル層22とを電気的に接続するはんだ接合部31と、を備えた半導体装置の実装構造体を得ることができる。
【0088】
この実施の形態2では、例えば、下側の半導体素子11は、外形サイズが10mm×10mm、厚みが0.2mmであり、上側の半導体素子21は、外形サイズが8mm×8mm、厚みが0.15mmであり、下側のバリアメタル層14は、直径B1’=24μm、高さH1’=10μmであり、上側のバリアメタル層24は、直径B2’=28μm、高さH2’=12μmであり、メタル層12、メタル層22は、ピッチC=35μmで等間隔に、1チップあたり26,000ピン配置されている。また、絶縁層13、23の開口部は、例えば、直径A1’、A2’=8μmの円形である。
【0089】
以上説明した製造工程によって得られた半導体装置の実装構造体(積層型半導体装置)を断面観察した結果、はんだがはみだすことなく、かつバリアメタル層とはんだの界面に隙間が無い状態で、対向する外部接続用電極同士が接合されていることが観察された。また、26,000ピン安定して接続を確保することができた。
【0090】
以上のように、この実施の形態2によれば、前述した実施の形態1よりも外部接続用電極が狭ピッチ(例えば、35μm)であっても、はんだ接合において、はんだがつぶれたり、バリアメタル層とはんだとの界面に酸化皮膜が残存することなく、良好な接続を得ることができる。
【0091】
なお、この実施の形態2では、対向するバリアメタル層14、24の一方のバリアメタル層24にのみはんだ25が形成されている場合について説明したが、無論、バリアメタル層14にのみはんだが形成されていてもよいし、両方のバリアメタル層14、24にはんだが形成されていてもよい。
【0092】
(実施の形態3)
続いて、本発明の実施の形態3について、前述した実施の形態2と異なる点を中心に説明し、前述した実施の形態1および2で説明した部材に対応する部材については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0093】
この実施の形態3は、複数個の半導体装置が積層された実装構造体において、上側の半導体素子21の外形サイズが前述した実施の形態2に比べて大きい点で、前述した実施の形態2と異なる。
【0094】
図6は本発明の実施の形態3における半導体装置の実装構造体の製造方法を示す工程別断面図である。この実施の形態3における半導体装置の実装構造体の構成要素およびその材料は前述した実施の形態2と同様である。しかし、前述した実施の形態2と比べて、上側の半導体素子21の外形サイズが10×10mmと大きい。例えば、下側の半導体素子11は、外形サイズが16mm×16mm、厚みが0.2mmであり、上側の半導体素子21は、外形サイズが10mm×10mm、厚みが0.15mmであり、バリアメタル層14、24は、平面視したときの直径が28μm、高さが10μmであり、メタル層12、メタル層22は、50μmピッチ(隣接するメタル層の中心間距離)で等間隔に、1チップあたり20,000ピン配置されている。また、絶縁層13、23の開口部は、例えば直径10μmの円形である。
【0095】
以下に、この実施の形態3における半導体装置の実装構造体の製造方法について述べる。
【0096】
まず、前述した実施の形態2と同様に、下側の半導体素子11の絶縁層13の開口部13aと上側の半導体素子21のメタル層22とが対向するように、上側の半導体素子21と下側の半導体素子11の少なくとも一方を移動させる。好適には、下側の半導体素子11の絶縁層13の開口部13aの中心または下側の半導体素子11のメタル層12の中心と、上側の半導体素子21の絶縁層23の開口部23aの中心または上側の半導体素子21のメタル層22の中心とが一致するようにする。これにより、下側の半導体装置のバリアメタル層14と上側の半導体装置のメタル層22が対向する。
【0097】
次に、前述した実施の形態2と同様に、例えば、上側の半導体素子21を、対向するバリアメタル層14、24間に介在するはんだ25の融点以上に加熱する。その結果、上側の半導体装置に設けられたはんだ25が、その融点以上の温度に加熱されて、溶融する。また、上側の半導体素子21が熱膨張により延び、図6(a)に示すように、下側の半導体素子11の絶縁層13の開口部13aの中心または下側の半導体素子11のメタル層12の中心と上側の半導体素子21の絶縁層23の開口部23aの中心または上側の半導体素子21のメタル層22の中心がずれた状態になる。
【0098】
この状態で、例えば、上側の半導体素子21を下側の半導体素子11へ向けて加圧すると、はんだ酸化皮膜25aが下側の半導体装置のバリアメタル層14に接触し、はんだ酸化皮膜25aで覆われたはんだ25が圧縮ないしは加圧されて、押しつぶされ、水平方向(はんだ25が加圧される第1方向に垂直な第2方向)に押し出される。このとき、バリアメタル層14をバリアメタル層24に投影する方向にバリアメタル層14とバリアメタル層24とが重なる面積が、実施の形態2よりも小さいために、圧縮応力が実施の形態2よりも高くなり、より容易にはんだ酸化皮膜25が破れる。
【0099】
押し出されたはんだ25は、下側の半導体装置のバリアメタル層14の金表面上で、曲率半径を有するバリアメタル層14の周囲部にまでぬれ広がる。その後、上側の半導体素子21を引き上げることにより、溶融しているはんだ25は、曲率半径を有するバリアメタル層14、24の周囲部の接線方向に対して一定のぬれ角でぬれ、図6(b)に示すように、斜め円柱状のはんだ接合部31が形成される。この状態で、大気に触れるはんだ接合部31の表面が酸化して、新たなはんだ酸化皮膜が形成される。
【0100】
その後、はんだ接合部31のはんだを、その凝固点まで冷却して凝固させることにより、下側の半導体装置と、下側の半導体装置の絶縁層13の開口部13aに対向するようにメタル層(電極端子の一例)22が設けられた上側の半導体基板(上側の半導体素子21の半導体基板)と、下側の半導体装置のバリアメタル層14と上側の半導体基板のメタル層22とを電気的に接続するはんだ接合部31と、を備え、下側の半導体装置の絶縁層13の開口部13aと上側の半導体基板のメタル層22の中心とが、下側の半導体装置の絶縁層13の開口部13a内で偏心している半導体装置の実装構造体(積層型半導体装置)を得ることができる。
【0101】
このように、対向するメタル層12、22間に、例えば5μmの位置ズレが起きても、対向するバリアメタル層14、24の平坦部(登頂部)の接近時に、そのバリアメタル層14、24の平坦部(登頂部)同士の重なり合う面積が、前述した実施の形態2よりも小さくなるので、圧縮応力が実施の形態2よりも増し、はんだ酸化皮膜25aを破ることが容易になる。さらにバリアメタル層14、24が平坦部(登頂部)の周囲に曲率半径を有するので、バリアメタル層14、24の平坦部(登頂部)の間からはみ出したはんだが、バリアメタル層14、24間の空隙を充填した後、対向するバリアメタル層14、24を離間することで、斜め円柱状のはんだ接合部31を形成することが可能になる。特に大型の半導体素子では、半導体素子自体の熱膨張により、半導体素子のコーナー部においてズレ量が大きくなるが、この実施の形態3によれば、位置ズレが起こっても、良好な接続を得ることができる。
【0102】
以上のように、この実施の形態3によれば、薄型および大型の半導体素子を積層する場合に、外部接続用電極が狭ピッチであっても、はんだ接合において、はんだがつぶれたり、バリアメタル層とはんだとの界面に酸化皮膜が残存することなく、良好な接続を得ることができる。
【0103】
なお、この実施の形態3では、対向するバリアメタル層14、24の一方のバリアメタル層24にのみはんだ25が形成されている場合について説明したが、無論、バリアメタル層14にのみはんだが形成されていてもよいし、両方のバリアメタル層14、24にはんだが形成されていてもよい。
【0104】
以上の各実施の形態1〜3によれば、圧縮ないしは加圧されて水平方向へ押し出されたはんだが、曲率半径を有するバリアメタル層14、24の周囲部の接線方向に対して一定の接触角をもってぬれようとするため、はんだブリッジ不良の発生を防止することができる。
【0105】
また、はんだを圧縮ないしは加圧した後に、半導体素子11と半導体素子21との間の隙間を広げ、はんだ接合部31を円柱状または斜め円柱状にしたので、フラックスの残渣があっても、封止樹脂が半導体素子11と半導体素子21との間に行き渡りやすくなり、良好なアンダーフィル封止を達成することができる。したがって、フラックスを用いることができるので、はんだ酸化皮膜を破ることができずにオープン不良が発生することもない。
【0106】
したがって、各実施の形態1〜3によれば、外部接続用電極が狭ピッチであっても、高い接続信頼性を簡易に確保することが可能となる。
【0107】
なお、上記した各実施の形態1〜3では、登頂部が平坦ないしは略平坦でかつ周囲部に曲率半径を有する突起状のバリアメタル層14、24同士をはんだ接合部31で電気的に接続する場合について説明したが、このようなバリアメタル層は少なくとも一方の半導体素子に形成されていればよく、他方の半導体素子には、たとえば、Cuピラー等の柱状の外部接続用電極や、面状のバリアメタル層を設けてもよい。
【0108】
また、上記した各実施の形態1〜3では、複数個の半導体装置を積層する場合について説明したが、無論、回路基板等の、半導体装置の半導体基板以外の基板に、半導体装置を実装する場合も同様に実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、外部接続用電極が狭ピッチであっても、高い接続信頼性を簡易に実現することができ、狭ピッチ化が進展する半導体素子などを実装する実装分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 半導体素子
2 2層構造のバンプ
3a 下層電極
3b 上層電極
4 回路基板
5 電極端子
11 半導体素子
12 メタル層
13 絶縁層
13a 絶縁層の開口部
14 バリアメタル層
14a 登頂部
14b 周囲部
15 はんだ
15a はんだ酸化皮膜
21 半導体素子
22 メタル層
23 絶縁層
23a 絶縁層の開口部
24 バリアメタル層
25 はんだ
25a はんだ酸化皮膜
31 はんだ接合部
31a はんだ酸化皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続用電極を備えた半導体装置であって、
前記外部接続用電極が、
半導体基板上に形成されたメタル層と、
前記メタル層と接触するように形成され、かつ前記メタル層の一部を露出させる開口部を有する絶縁層と、
前記絶縁層の開口部から露出する前記メタル層と電気的に接続するように形成されたバリアメタル層と、
を備え、前記バリアメタル層が、前記絶縁層に垂直な平面と前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分に、曲率半径を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁層の開口部内の任意の点を通り、かつ前記絶縁層に垂直な平面と、前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の領域に対応する部分の曲率半径Rtが、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分の曲率半径Rz以上の大きさであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁層の開口部の領域に対応する前記バリアメタル層の表面が平坦であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁層の開口部の形状が直径Aの円形であり、
前記バリアメタル層を平面視したときの形状が直径Bの円形であり、
前記バリアメタル層を平面視したとき前記直径Aの円形と前記直径Bの円形の中心が一致しており、
(B−A)の値が、前記絶縁層の表面からの前記バリアメタル層の高さHの1.4〜2倍である
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記外部接続用電極が複数個形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置と、
前記半導体装置の前記絶縁層の開口部に対向するように電極端子が設けられた基板と、
前記半導体装置の前記バリアメタル層と前記基板の電極端子とを電気的に接続するはんだ接合部と、
を備えた半導体装置の実装構造体であって、
前記絶縁層の開口部の中心と前記基板の電極端子の中心とが前記絶縁層の開口部内で偏心している
ことを特徴とする半導体装置の実装構造体。
【請求項7】
メタル層を有する半導体基板上に、前記メタル層と接触し、かつ前記メタル層の一部を露出させる開口部を有する絶縁層を形成する工程と、
無電解めっき工法により前記絶縁層の開口部からバリアメタル層を成長させる工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
成長した前記バリアメタル層が、前記絶縁層に垂直な平面と前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分に、曲率半径を有することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
成長した前記バリアメタル層において、前記絶縁層の開口部内の任意の点を通り、かつ前記絶縁層に垂直な平面と、前記バリアメタル層の表面とが交わって形成される線分のうち、前記絶縁層の開口部の領域に対応する部分の曲率半径Rtが、前記絶縁層の開口部の周囲の領域に対応する部分の曲率半径Rz以上の大きさであることを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
成長した前記バリアメタル層において、前記絶縁層の開口部の領域に対応する表面が平坦であることを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁層を形成する際に、前記絶縁層の開口部の形状が直径Aの円形となるようにし、
前記バリアメタル層を成長させる際に、前記バリアメタル層を平面視したときの形状が直径Bの円形となり、かつ、(B−A)の値が、前記絶縁層の表面からの前記バリアメタル層の高さHの1.4〜2倍となるようにする
ことを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1記載の半導体装置のバリアメタル層と基板の電極端子とを対向させる工程と、
対向する前記バリアメタル層と前記電極端子との間に介在するはんだをその融点以上に加熱しながら、前記半導体装置と前記基板とを接近させる工程と、
を具備し、前記はんだを加熱しながら、前記半導体装置と前記基板とを接近させることにより、前記はんだの表面を覆う酸化皮膜が破れ、前記はんだが加圧されて、その加圧される第1方向に垂直な第2方向に押し出され、その第2方向に膨らんだはんだ接合部が形成されることを特徴とする半導体装置の実装構造体の製造方法。
【請求項13】
前記はんだを加圧した後、前記半導体装置の絶縁層に垂直な方向に前記半導体装置と前記基板を引き離す工程を具備することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の実装構造体の製造方法。

【図4】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89886(P2013−89886A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231310(P2011−231310)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】