説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】GaAs電界効果トランジスタのごとき半導体装置の製造方法で、配線の形成予定箇所でのウェットエッチングによってリークパスが生じるのを防止する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、GaAs基板21上にGaAs電界効果トランジスタを製造する際に電極とこの電極に繋がる配線とを同じ成膜工程で形成する方法であり、GaAs基板の上にSiOx膜25Aを形成し、SiOx膜上にSiN膜を形成し、電極形成予定箇所に第1の開口を有する第1レジスト31を形成し、第1の開口でRIEによりSiN膜を除去すると共にSiOx膜を所定膜厚まで除去し、第1のレジストを除去し、電極の形成予定箇所と配線の形成予定箇所を含む領域に第2の開口を有する第2のレジスト34を形成し、ウェットエッチングにより所定膜厚のSiOx膜を除去し、電極の形成予定箇所と配線の形成予定箇所に金属膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特に、GaAs基板上に形成されたホールセンサ集積回路等に含まれるGaAs電界効果トランジスタのごとき半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaAsの基板(またはウエハ)の上にホールセンサ集積回路等を形成して成る半導体装置の製造方法において、当該ホールセンサ集積回路等に含まれる複数のGaAs電界効果トランジスタの各々を形成する工程では、先ず、GaAs基板の上にレジストパターンを形成し、アライメントマークを形成し、イオンを注入し、その後にアニール工程を経てソースおよびドレインの各領域(高濃度イオン注入領域)およびチャネル層を完成する。次に、ソース領域およびドレイン領域の上にはオーミック接合により接合されるソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成し、さらにチャネル層の上にはショットキー接合により接合されるゲート電極を形成する。ソース電極およびドレイン電極の形成では、イメージリバースパターニングを行った後に、これらの電極を形成する金属を蒸着法により成膜し、その後にリフトオフにより余分な金属を除去して完成する。またゲート電極の形成では、チタン・タングステン(Ti/W)をスパッタリング法により成膜し、レジストパターニングを行った後に反応性イオンエッチング(RIE)で電極を形成し、レジスト剥離を行って完成する。
【0003】
上記のごときショットキー接合性の金属をゲート電極としてチャネル層上に形成した構造を有する電界効果トランジスタを「MESFET(Metal-Semconductor Field Effect Transistor)」という。MESEFTではGaAs等の化合物半導体が利用される。
【0004】
GaAs基板上にホールセンサ集積回路等を形成して成る半導体装置の製造方法において、電極の形成工程について、本出願人は、先に、GaAs基板上で成膜されたシリコン酸化膜をドライエッチングによって所定の膜厚までエッチングし、その後にバッファードふっ酸(BHF)によるウェットエッチングによって電極の形成予定箇所におけるシリコン酸化膜(SiO膜)を除去し、これによって上記ドライエッチングによるプラズマダメージを防止するようにした半導体装置の製造方法を出願した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−124234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1で開示された半導体装置の製造方法において、GaAs基板の上に複数のGaAs電界効果トランジスタを作る場合に、各GaAs電界効果トランジスタの金属配線部、あるいは複数のGaAs電界効果トランジスタの各々の間等を接続する金属配線部の形成は、対応する電極を形成する工程と同じ工程によって同じ金属材料を用いて一緒に行われるようになっている。配線の形成が電極の形成と同じ工程で行われる場合には、電極の形成予定箇所におけるシリコン酸化膜を除去する目的で上記ウェットエッチングが行われる結果、配線の形成予定箇所におけるシリコン酸化膜の表面がエッチングされることになってしまう。その結果、配線の形成予定箇所におけるシリコン酸化膜の表面に細かい多数の亀裂が生じる。この亀裂はリークパスを生じることになり、その結果、その後に当該シリコン酸化膜の上に配線膜を堆積させると、当該配線膜とGaAs基板との間の絶縁を確保することが困難になるという問題が提起される。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決することにあり、GaAs基板上に形成されたGaAs電界効果トランジスタのごとき半導体装置の製造方法で、配線の形成を電極を形成する工程で同時に行う際、ドライエッチングによるプラズマダメージを防止すると共に、配線の形成予定箇所でのウェットエッチングによってリークパスが生じるのを防止できる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0007】
さらに本発明の目的は、GaAs基板上に形成された少なくとも1つのGaAs電界効果トランジスタを含む半導体装置であって、配線とGaAs基板との間にリークパスを生じない構造を有した半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置およびその製造方法は、上記目的を達成するために、次のように構成される。
【0009】
第1の半導体装置の製造方法(請求項1に対応)は、GaAs基板上にGaAs電界効果トランジスタを製造する際に電極とこの電極に繋がる配線とを同じ成膜工程で形成する方法であり、GaAs基板の上にシリコン酸化膜を形成する工程、シリコン酸化膜の上にシリコン窒化膜を形成する工程、電極の形成予定箇所に第1の開口を有する第1のレジストパターンを形成する工程、第1の開口で、ドライエッチングにより、シリコン窒化膜を除去すると共にシリコン酸化膜を所定の膜厚まで除去する工程、第1のレジストパターンを除去する工程、電極の形成予定箇所と配線の形成予定箇所を含む領域に第2の開口を有する第2のレジストパターンを形成する工程、ウェットエッチングにより、露出する所定の膜厚のシリコン酸化膜を除去する工程、電極の形成予定箇所と配線の形成予定箇所に金属膜を形成する工程を有し、これらの工程が順次に実施される。
【0010】
上記の第1の半導体装置の製造方法によれば、電極の形成予定箇所のシリコン酸化膜を除去するために行われるBHFによるウェットエッチング工程において、配線の形成予定箇所に存在するシリコン酸化膜の部分は、シリコン窒化膜で保護されているため、ダメージを受けることなく、その結果としてその形成される配線とGaAs基板との間の絶縁性を確保することが可能となる。また配線の金属膜を作るためのレジスト開口部を、電極を作るためのレジスト開口部の形成と同一の工程で形成することが可能であり、製造工程を削減することが可能となる。
【0011】
第2の半導体装置の製造方法(請求項2に対応)は、上記の第1の製造方法において、さらに、GaAs基板上にシリコン窒化膜を形成する工程の前に、電極の形成予定箇所に第3の開口を有する第3のレジストパターンを形成する工程と、電極の形成予定箇所でドライエッチングによりシリコン酸化膜を所定の膜厚まで除去する工程と、第3のレジストパターンを除去する工程とを備えている。
【0012】
上記の第2の半導体装置の製造方法によれば、ドライエッチング(RIE)により電極の形成予定箇所のシリコン酸化膜を所定膜厚まで除去した後にシリコン窒化膜を形成するようにしたため、ウェットエッチングを行う際のシリコン酸化膜の浸食、すなわちシリコン窒化層のオーバーハングを削減することができ、電極部分に隙間を生じることなく製造することができる。
【0013】
第3の半導体装置の製造方法(請求項3に対応)は、上記の製造方法において、金属膜の下層に、シリコン窒化膜とショットキー接合で接合される金属層が成膜されることを特徴とする。
【0014】
第1の半導体装置(請求項4に対応)は、GaAs基板上に形成される少なくとも1つのGaAs電界効果トランジスタを含んで構成され、同じ成膜工程で形成される電極とこの電極に繋がる配線と有する半導体装置であり、さらにGaAs基板上の所定の箇所に形成されたシリコン酸化膜の表面上であって配線の存在箇所にシリコン窒化膜を備えることを特徴とする。この構成によって、シリコン酸化膜にリークパスが生じるのを防止でき、金属配線部とGaAs基板との間の高い絶縁性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による半導体装置の製造方法によれば、GaAs基板上に形成されたGaAs電界効果トランジスタの製造方法において、配線の形成を電極を形成する工程で同時に行う際、ドライエッチングによるプラズマダメージを防止でき、さらに配線の形成予定箇所のシリコン酸化膜をシリコン窒化膜で保護するようにしたため、ウェットエッチングで電極部分に対応するシリコン酸化膜を除去するとき配線部分でのウェットエッチングによってリークパスが生じるのを防止することができ、金属配線とGaAs基板との間の絶縁性を高く保持することができる。
【0016】
また本発明による半導体装置によれば、GaAs基板上に形成された少なくとも1つのGaAs電界効果トランジスタを含む半導体装置において配線とGaAs基板との間にリークパスを生じない構造を有し、配線とGaAs基板との間の高い絶縁性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
まず、図1〜図3を参照して、本発明に係る半導体装置の構造について説明する。図1は半導体装置の平面図、図2は図1におけるA−A線断面の図、図3は図1におけるB−B線断面の図である。
【0019】
本実施形態で説明する半導体装置は、GaAs基板上に形成された集積回路に含まれる1つのGaAs電界効果トランジスタである。なお本発明に係る半導体装置は1つのGaAs電界効果トランジスタに限定されない。2つ以上のGaAs電界効果トランジスタによって構成されるホールセンサ集積回路等の集積回路であってもよい。
【0020】
図1は、GaAsの基板(ウエハ)の表面上に形成された1つのGaAs電界効果トランジスタの平面パターンの例を示している。図1において、一点鎖線ブロック10内に1つのGaAs電界効果トランジスタが存在している。このGaAs電界効果トランジスタにおいて、左右両側の2つの長方形領域11A,11Bはソース電極を示し、中央の1つの長方形領域12はドレイン電極を示している。2つのソース電極11A,11Bの各々とドレイン電極12との間の領域にはゲート電極13A,13Bが形成されている。ゲート電極13A,13Bも2つの電極部分として形成されている。
【0021】
図2に示すように、2つのソース電極11A,11BはGaAs基板21の表面上に形成された2つのソース領域22A,22Bの上にそれぞれ蒸着によって形成されている。1つのドレイン電極12はGaAs基板21の表面上に形成されたドレイン領域23の上に蒸着によって形成されている。ソース電極11A,11Bとドレイン電極12は同じ蒸着工程によって形成される。またソース領域22A,22Bとドレイン領域23は共にイオンが高濃度に注入された領域となっている。さらに2つのゲート電極13A,13Bの各々は、GaAs基板21の表面上に形成された2つのチャネル層24A,24Bの上にそれぞれ蒸着によって形成されている。チャネル層24Aはソース領域22Aとドレイン領域23との間に位置し、チャネル層24Bはソース領域22Bとドレイン領域23との間に位置している。
【0022】
図1に示すように、一方のソース電極11Aとドレイン電極12との間に配置されたゲート電極13Aと、他方のソース電極11Bとドレイン電極12との間に配置されたゲート電極13Bとの間は、金属配線部14で接続されている。この金属配線部14は、図2および図3に示すようにGaAs基板21上に形成されたチャネル層24A,24Bの表面上に蒸着によりゲート電極13A,13Bを形成する時に、同じ蒸着によって同時に形成されるものである。その結果、金属配線部14は、図3に示すごとくGaAs基板21の表面に形成された2層構造の膜部25の上にショットキー接合で接合される。この金属配線部14を以下では「ショットキー金属配線部14」と呼ぶ。
【0023】
また図1で、例えば右側のソース電極11Bには他の金属配線部15が接続されている。上記した2つのソース電極11A,11Bとドレイン電極12が蒸着によって形成される時に、金属配線部15は同じ蒸着によって同時に形成される。その結果、金属配線部15は、図2に示すごとく、GaAs基板21の表面上に形成された2層構造の膜部25の上に接合される。
【0024】
金属配線部15は、後述するように、例えばAuGe(500Å)/Ni(50Å)/Au(6000Å)/Ti(50Å)の4層構造の金属配線部であり、最下層に500Åの膜厚のAuGe膜を成膜する。この金属配線部15を以下では「オーミック金属配線部15」と呼ぶ。
【0025】
図2および図3に示された上記の2層構造の膜部25は、GaAs基板21の上において、ソース電極11A,11Bが接合される表面(ソース領域22A,22Bの表面)、ドレイン電極12が接合される表面(ドレイン領域23の表面)、およびゲート電極13A,13Bが接合される表面(チャネル層24A,24Bの表面の一部)を除いた残りのすべての表面上に形成されている。この2層構造の膜部25において、下層膜25Aは例えば膜厚が1500ÅのSiOx膜(シリコン酸化膜)であり、上層膜25Bは例えば膜厚500ÅのSiN膜(シリコン窒化膜)である。SiOx膜25Aは、例えば代表的にSiO膜である。
【0026】
上層膜のSiN膜25Bは、当該GaAs電界効果トランジスタを製造するプロセスでBHFによるウェットエッチング(BHFエッチバック)を行う段階において、下層膜のSiOx膜25Aを保護し、SiOx膜25Aの表面にリークパスが生じるのを確実に防止する。
【0027】
本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタの構造によれば、GaAs基板21とショットキー金属配線部14との間、およびGaAs基板21とオーミック金属配線部15との間には2層構造の膜部25が設けられるため、従来の半導体装置の構造とは異なって、下層膜であるSiOx膜25Aの表面にはリークパスは生ぜず、GaAs基板21と金属配線部14,15との間の絶縁性を確実に保持することができる。
【0028】
なお本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタの構造と、従来の製造方法で作られた従来のGaAs電界効果トランジスタの構造とを対比するために、図4と図5に従来のGaAs電界効果トランジスタの構造を示す。図4は前述の図2に対応し、図5は前述の図3に対応している。図4と図5において、図2と図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。相違点は、従来のGaAs電界効果トランジスタの構造の場合には、上記の2層構造の膜部25の代わりに、一層のSiOx膜26が用いられている点である。このSiOx膜26の表面には、当該GaAs電界効果トランジスタを製造するプロセスでウェットエッチング(BHFエッチバック)を行う段階においてSiOx膜26の表面にリークパスが生じる。このため、ショットキー金属配線部14またはオーミック金属配線部15に電流が流れると、例えば高温にて、ショットキー金属配線部14またはオーミック金属配線部15からGaAs基板21へ矢印27のごとくリーク電流が流れることになる。
【0029】
次に、図6を参照して前述したGaAs電界効果トランジスタの製造方法の特徴的工程の第1の例を説明する。この製造方法ではSiN膜を成膜する工程を含んでいる点に特徴がある。
【0030】
図6は、図1に示したA−A線断面におけるソース電極11Bおよびショットキー金属部15の一部とそれらの繋ぎ部分とについて、GaAs電界効果トランジスタの製造方法の特徴的工程(図6の(A)〜(I))を示す。
【0031】
まず、特徴的工程を説明する前に、GaAs電界効果トランジスタを製造する方法の一般的な全体工程を説明する。
【0032】
GaAs電界効果トランジスタの製造方法の全体工程は、順次に実施されるドレイン領域/ソース領域/チャネル層の形成工程と、ゲート電極形成工程と、ドレイン電極/ソース電極の形成工程とから構成されている。
【0033】
ドレイン領域/ソース領域/チャネル層の形成工程は、従来技術と同様に、アライメントマークが形成されたGaAs基板にドレイン領域とソース領域を構成する高不純物濃度活性層を形成する。そのため、GaAs基板の表面に数百オングストローム(Å)の酸化膜を形成し、適当なマスクを通して、例えば160keV、2.0×1013/cm2の条件で高ドーズのSi+イオン注入を行う。次にそのGaAs基板にチャネル層を形成するために、適当なマスクを通して、Si+を例えば120keV、2.0×1012/cm2の条件でイオン注入する。その後、SiO2膜(キャップ膜)をGaAs基板上に堆積し、そのGaAs基板をアニール炉の中に入れ、水素雰囲気中で例えば850℃で約15分間加熱し、キャップ膜のアニールを行う。それによりSiイオンが活性化され、ドレイン領域/ソース領域/チャネル層が形成される。
【0034】
ゲート電極形成工程は、さらに細かく述べると、次の工程(1)〜(9)から成る。
(1)無機系絶縁層堆積工程
(2)第1のレジストパターニング工程
(3)ドライエッチングによりゲート電極を形成する部分の第1の開口により露出する無機系絶縁層を所定の膜厚までエッチングする工程
(4)第1のレジスト剥離工程
(5)イメージリバースパターニングにより第1のレジストパターンの第1の開口の位置と同一の箇所に第1の開口より開口幅の広い第2の開口を有する第2のレジストパターニング工程
(6)アッシング工程
(7)ウェットエッチングにより第1の開口により露出していた所定の膜厚の無機系絶縁層を取り除くまでエッチングする工程
(8)ゲート電極用メタル堆積工程
(9)リフトオフ工程
【0035】
ドレイン電極/ソース電極の形成工程は、さらに細かく述べると、次の工程(1)〜(8)から成る。
(1)第1のレジストパターニング工程
(2)ドライエッチングによりドレイン電極およびソース電極を形成する部分の第1の開口により露出する無機系絶縁層を所定の膜厚までエッチングする工程
(3)第1のレジスト剥離工程
(4)イメージリバースパターニングにより第1のレジストパターンの第1の開口の位置と同一の箇所に第1の開口より開口幅の広い第2の開口を有する第2のレジストパターニング工程
(5)アッシング工程
(6)ウェットエッチングにより第1の開口により露出していた所定の膜厚の残りの無機系絶縁層をエッチングする工程
(7)ドレイン電極およびソース電極となる金属を堆積する工程
(8)リフトオフ工程
【0036】
本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタの製造方法の工程上の特徴点は、上記のドレイン領域/ソース領域/チャネル層の形成工程でSiO2膜をGaAs基板上に堆積しその後にキャップ膜アニールを行った後に、当該SiO2膜上にSiN膜(具体的には例えばSi膜)を成膜する点である。
【0037】
次に、上記の図6を参照して、GaAs電界効果トランジスタの製造方法の特徴的工程((A)〜(I))を説明する。
【0038】
第1の工程(図6(A)):
GaAs基板21の表面上、ソース領域22Bに対応するソース電極(11B)の形成予定箇所とショットキー金属配線部(15)の形成予定箇所とを含む表面領域にSiOx膜すなわち代表的にはSiO膜(キャップ膜)25Aを成膜する。SiO膜25Aの膜厚は例えば1500Åである。
【0039】
第2の工程(図6(B)):
SiO膜25Aの表面上にSiN膜25Bが成膜される。SiN膜25Bの膜厚は例えば500Åである。SiO膜25AとSiN膜25Bとによって、前述した2層構造の膜部25が形成されることになる。
【0040】
第3の工程(図6(C)):
SiN膜25Bの上に全面的にレジスト31を形成し、その後、ソース電極(11B)の形成予定箇所に対応するレジスト31の部分にレジストパターニングによって開口部32が形成される。なおソース電極(11B)と共に、他のソース電極(11A)やドレイン電極(12)も形成されるので、これらの電極の形成予定箇所に対応するレジスト31の部分にも同じレジストパターニングによって開口部が形成される。この点については、以下の工程においても、ソース電極(11B)に関して実施される処理は、同様にソース電極(11A)やドレイン電極(12)に関しても実施される。
【0041】
第4の工程(図6(D)):
レジスト31の開口部32を利用して矢印33のごとくRIE(反応性イオンエッチング)を行い、開口部32内で露出するSiN膜25Bの全部とSiO膜25Aの一部を除去する(窓開け工程)。RIEによって残ったSiO膜25A−1の膜厚は例えば500Åである。RIEを行った後、開口部32の内部では残部としてのSiO膜25A−1の表面が露出している。
【0042】
第5の工程(図6(E)):
レジスト31が除去される。その結果、GaAs基板21上ではSiN膜25Bと残部としてのSiO膜25A−1とが露出する。
【0043】
第6の工程(図6(F)):
GaAs基板21上におけるSiN膜25BとSiO膜25A−1の上に全面的にレジスト34を形成し、その後、ソース電極(11B)の形成予定箇所およびオーミック金属配線部(15)の形成予定箇所に対応するレジスト34の部分にレジストパターニングによって開口部35が形成される。なおソース電極(11B)と共に、他のソース電極(11A)やドレイン電極(12)も形成されるので、これらの電極の形成予定箇所に対応するレジスト34の部分にも同じレジストパターニングによって開口部が形成される。開口部35では、SiN膜25Bと残部としてのSiO膜25A−1とが露出する。
【0044】
第7の工程(図6(G)):
開口部35に対して矢印36に示すごとくバッファードふっ酸(BHF)によるウェットエッチングを行う。このウェットエッチングによって、上記の第4の工程によってソース電極(11B)の形成予定箇所についてはSiN膜25Bが除去されているので、残部としてのSiO膜25A−1が除去される。その結果、ソース領域22Bの表面が露出する。また、このウェットエッチングにおいて、他のSiO膜25Aの部分は、その上面にSiN膜25Bが形成されているため、除去されず、かつリークパスが生じることもない。すなわち、オーミック金属配線部(15)の形成予定箇所についてはウェットエッチングは行われない。
【0045】
第8の工程(図6(H)):
蒸着が行われ、ソース電極11Bとオーミック金属配線部15を形成するための金属が堆積される。堆積される金属としては、例えば4層構造の金属であり、AuGe(500Å)/Ni(50Å)/Au(6000Å)/Ti(50Å)である。最下層はAuGe(500Å)であり、中間層Ni(50Å)およびAu(6000Å)であり、最上層はTi(50Å)である。ソース電極11Bはソース領域22B上に形成され、オーミック金属配線部15はSiN膜25B上に形成される。電極の膜厚を中間層において6000ÅのAuを用いることにより、SiN成膜時の段差増加による電極亀裂の発生を防止することができる。
【0046】
第9の工程(図6(I)):
ここではリフトオフが実施される。リフトオフによって、ソース電極、ドレイン電極、オーミック金属配線部等以外の箇所に堆積した金属37を除去する。またその後にレジスト34も除去される。
【0047】
上記のGaAs電界効果トランジスタの製造方法の特徴的工程(図6の(A)〜(I))によれば、第7の工程(図6(G))でソース領域22B上のSiO膜25A−1を除去するためウェットエッチングを行うときに、SiN膜25Bが存在するため、オーミック金属配線部(15)の形成予定箇所に対応するSiO膜25Aにリークパスが生じることない。このため、オーミック金属配線部15とGaAs基板21との絶縁性を確実に保持することができる。
【0048】
図7を参照して、本実施形態による製造方法で作られたGaAs電界効果トランジスタ101と、従来の製造方法で作られたGaAs電界効果トランジスタ102とについて、ショットキー金属配線部14でのリーク電流を比較する。
【0049】
GaAs電界効果トランジスタ101では、図1および図2に示した構造において、ソース電極11またはドレイン電極12とショットキー金属配線部14との間に直流電源103で電圧を印加し、電流計104により流れるリーク電流を計測した。GaAs電界効果トランジスタ102では、従来の構造において、ソース電極またはドレイン電極とゲート電極に接続された金属配線部102bとの間に同様に直流電源103で電圧を印加し、電流計104により流れるリーク電流を計測した。GaAs電界効果トランジスタ102において、102cはGaAs基板であり、102dはSiO膜である。
【0050】
上記の結果を、横軸が印加電圧(V)でありかつ縦軸がリーク電流(A)であるグラフ105に示す。グラフ105に示されるように、SiN膜を有さずSiO膜102dのみを有するGaAs電界効果トランジスタ101ではリーク電流特性106を有し、SiN膜を有するGaAs電界効果トランジスタ102ではリーク電流特性107を有する。この比較結果で明らかなように、GaAs電界効果トランジスタ101によれば、GaAs電界効果トランジスタ102に比較して、リーク電流は1/1E8(1000万分の1)に減少する。
【0051】
次に、図8を参照して、本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタの製造方法の特徴的工程の第2の例を説明する。
【0052】
この製造方法では、前述した第1の例に基づくSiN膜25Bを成膜する工程を含むと共に、BHFによるウェットエッチングを行う際のSiN膜のオーバーハングを防止する構造を有する点に特徴がある。当該オーバーハングを防止することにより、ウェットエッチングを行う際のシリコン酸化膜の浸食を削減でき、電極部分に隙間を生じるのを防止できる。
【0053】
図8において、本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタの製造方法は、順次に工程(A)、工程41、工程42、工程43が実施される。
【0054】
工程(A)は、図6で説明した第1の工程(A)と同じである。工程42は4つの工程(B1)〜(E1)を有し、図6に示すごとく工程(B)〜(E)と実質的に同じ工程から成る工程である。工程43は3つの工程(G1)〜(I1)を有し、図6に示すごとく工程(G)〜(I)と実質的に同じ工程から成る工程である。図8において、図6で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
第2の例に基づく製造方法では、工程42に含まれる工程(B1)で、GaAs基板21の上に形成されたSiO膜25Aの上にSiN膜25Bを成膜する前の段階で、工程41が実施される。工程41は、電極(11B)の形成予定箇所に第3の開口51を有する第3のレジスト52を形成する工程(J)と、電極の形成予定箇所でRIE(矢印53)によりSiOx膜25A−1を所定の膜厚(例えば500Å)まで除去する工程(K)と、第3のレジスト52を除去する工程(L)とを有している。
【0056】
なお図8において、工程43にて符号54は電極の部分を示し、符号55は金属配線部を示している。金属配線部55とGaAs基板21との間には、表面をSiN膜25Bで保護されたSiOx膜25Aが絶縁膜として介在する。
【0057】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、GaAs基板上に、リークパスを生じさせないで金属配線部とGaAs基板との間の絶縁性が確保されたGaAs電界効果トランジスタを製造する方法として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る半導体装置(GaAs電界効果トランジスタ)の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】従来の半導体装置(GaAs電界効果トランジスタ)についての図2と同様な図である。
【図5】従来の半導体装置(GaAs電界効果トランジスタ)についての図3と同様な図である。
【図6】本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタの製造方法について特徴的工程の第1の例を示す工程図である。
【図7】本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタと従来のGaAs電界効果トランジスタの各々のリーク電流特性を対比するグラフである。
【図8】本実施形態に係るGaAs電界効果トランジスタの製造方法について特徴的工程の第2の例を示す工程図である。
【符号の説明】
【0060】
11A,11B ソース電極
12 ドレイン電極
13A,13B ゲート電極
14 金属配線部
15 金属配線部
21 GaAs基板
22A,22B ソース領域
23 ドレイン領域
24A,24B チャネル層
25 膜部
25A,26 SiOx膜(SiO膜)
25B SiN膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaAs基板上にGaAs電界効果トランジスタを製造する際に電極とこの電極に繋がる配線とを同じ成膜工程で形成する半導体装置の製造方法であって、
前記GaAs基板の上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン酸化膜の上にシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記電極の形成予定箇所に第1の開口を有する第1のレジストパターンを形成する工程と、
前記第1の開口で、ドライエッチングにより、前記シリコン窒化膜を除去すると共に前記シリコン酸化膜を所定の膜厚まで除去する工程と、
前記第1のレジストパターンを除去する工程と、
前記電極の形成予定箇所と前記配線の形成予定箇所を含む領域に第2の開口を有する第2のレジストパターンを形成する工程と、
ウェットエッチングにより、露出する所定の膜厚の前記シリコン酸化膜を除去する工程と、
前記電極の形成予定箇所と前記配線の形成予定箇所に金属膜を形成する工程と、
を含んで成ることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記GaAs基板上に前記シリコン窒化膜を形成する前記工程の前に、
前記電極の形成予定箇所に第3の開口を有する第3のレジストパターンを形成する工程と、
前記電極の形成予定箇所でドライエッチングにより前記シリコン酸化膜を所定の膜厚まで除去する工程と、
前記第3のレジストパターンを除去する工程と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜の下層に、前記シリコン窒化膜とショットキー接合で接合される金属層が成膜されることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
GaAs基板上に形成される少なくとも1つのGaAs電界効果トランジスタを含んで構成され、同じ成膜工程で形成される電極とこの電極に繋がる配線と有する半導体装置において、
前記GaAs基板上の所定の箇所に形成されたシリコン酸化膜の表面上であって前記配線の存在箇所にシリコン窒化膜を備えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−251884(P2008−251884A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92047(P2007−92047)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】