説明

半導体装置における配線形成方法

【課題】 絶縁膜の誘電率上昇や絶縁性劣化を引き起こすことが無く、レジストポイズニングを効果的に抑制でき、かつ、低廉なコストで実施できる半導体装置における配線形成方法を提供することである。
【解決手段】 半導体装置における配線形成方法において、
絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜形成工程で形成された絶縁膜にビアを形成するビア形成工程と、
前記ビア形成工程でビアが形成された絶縁膜の表面に、レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質または該物質を含有する組成物の膜を形成する膜形成工程と、
前記膜形成工程の後、所定のパターンを形成するパターン形成工程
とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置における配線形成方法に関する。特に、絶縁膜加工プロセス(特に、リソグラフィープロセス)におけるレジストポイズニングの問題を改善できるダマシン配線形成方法(特に、デュアルダマシン配線形成方法、中でも、ビアファーストデュアルダマシン配線形成方法)に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)は、益々、集積度が高くなっており、これに伴って集積回路を構成するトランジスタ等の半導体素子は小型化されている。この小型化により半導体素子の動作速度は向上するものの、集積度の向上によって配線量が増大する為、配線の増大による遅延時間がLSIの動作速度を律速するようになっている。配線に起因する遅延時間は配線抵抗(R)と配線容量(C)との積(RC)によって決まることから、配線抵抗と配線容量との低減が求められている。
【0003】
この配線抵抗の低抵抗化は、配線の主材料をAlからCuに変更することで達成できる。尚、配線材料による更なる低抵抗化は困難である。
【0004】
さて、微細化の進行に伴い、集積度を上げ、半導体1チップに搭載される半導体素子の数が増加すると、これら多数の半導体素子を結線して動作させる為に、信号を伝達する為の信号配線のみではなく、電源を供給する為の電源配線も増加し、配線総数は増加して行く一方である。従って、配線の高密度化によって、配線容量は増加せざるを得ない状況にある。よって、配線による遅延時間を短縮し、所期の性能を確保する為には、配線容量を低減することが要求されている。この要求を満たす為、層間絶縁膜として、比誘電率がより低い材料を用いる必要がある。そして、低誘電率絶縁膜材料(Low-k材料)の研究開発、かつ、デバイスへの適用が、鋭意、推し進められている。
【0005】
ところで、配線形成プロセスは、絶縁膜を溝状に加工した後、溝状部分にメッキ手段によって銅を埋め込み、この後で溝外の余分な銅をCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって除去するダマシン法が一般的である。特に、上層配線と下層配線との間を接続する為のビアと、上層配線溝とを、同時に、加工するデュアルダマシン法は、プロセスの簡略化、ビアの低抵抗化を実現できる為、広く用いられている。尚、デュアルダマシン法の中でも、上層配線と下層配線とを結ぶビアを下層配線の上に加工した後に、上層配線を加工するビアファーストデュアルダマシン配線形成法は、リソグラフィープロセスの重ね合せ誤差のビア抵抗変動に与える影響が小さいことが知られていることから、好ましいと言われている。とは言うものの、同配線形成法は、上層配線加工時のリソグラフィー工程でレジストパターン解像不良(レジストポイズニング)が発生する為、レジストポイズニングを抑制し、基板加工に高精度なレジストパターンを如何に形成するかが問題になっている。
【0006】
このような問題を解決するために、通常、ビアを形成した後、加熱工程、薬液による洗浄工程、UV処理工程、プラズマ処理工程などの工程を追加し、フォトレジストの解像を阻害する絶縁膜由来の不純物(特に、塩基性不純物)を除去・失活させる手法が提案されている。
【0007】
すなわち、図5(従来のビアファーストデュアルダマシン配線形成法の工程図)に示される如く、ビアの加工を行なった後で、レジストポイズニング抑制処理(例えば加熱処理、薬液による洗浄処理、UV処理、プラズマ処理)を行っている。
【特許文献1】US2002/0090822A1
【特許文献2】US2002/0127876A1
【特許文献3】US2002/0111017A1
【特許文献4】USP6319809
【特許文献5】特開2003−229481号公報
【特許文献6】特開2003−57828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献には、リソグラフィープロセスの前処理として、基板を加熱処理、酸化性プラズマ処理、酸化性薬液処理、UV照射を行なうことが開示されている。特に、熱処理は一般的なものとして知られている。そして、この種の前処理は、フォトレジスト中の化学反応を阻害する塩基性不純物を除去でき、レジストポイズニングを抑制する目的において一応の効果を奏している。
【0009】
しかしながら、加熱処理、薬液による洗浄処理、UV処理、或いはプラズマ処理と言った如きのレジストポイズニング抑制処理では、脆弱な低誘電率絶縁膜の表面が、直接、薬液や紫外線やプラズマに曝される為、絶縁膜は誘電率が大きくなったり、絶縁性が劣化する等の問題が起きる。例えば、薬液処理では、低誘電率絶縁膜表面に薬液が直接触れる為、薬液に含まれる化学物質により絶縁膜が変質する。かつ、絶縁膜が吸水してしまう問題も起きる。熱処理やUV照射あるいはプラズマ処理では、露出している絶縁膜の表面が酸化されてしまい、誘電率が大きくなる。
【0010】
更には、リソグラフィープロセスを行なう前に、別途の追加処理が必要となることから、配線パターン形成プロセスが煩雑化し、生産性が低下する問題も起きる。例えば、ポイズニング抑制処理として加熱処理を採用した場合において、或る程度の効果を得る為には、基板を250℃以上の高温で30〜60分程度アニールする必要が有り、半導体製造の生産性を大きく落としてしまう。
【0011】
そして、LSIの集積度の高まりに伴って、微細化は益々進んでいることから、レジストポイズニングの影響は益々顕著になって来ることは容易に予測される。そして、従来の如きのレジストポイズニング抑制処理では対応できないことは容易に理解される。
【0012】
従って、本発明が解決しようとする課題は、絶縁膜の誘電率上昇や絶縁性劣化を引き起こすことが無く、レジストポイズニングを効果的に抑制でき、かつ、低廉なコストで実施できる半導体装置における配線形成方法を提供することである。特に、絶縁膜加工プロセス(リソグラフィープロセス)におけるレジストポイズニングの問題を大幅に改善できるダマシン配線形成方法(特に、デュアルダマシン配線形成方法、中でも、ビアファーストデュアルダマシン配線形成方法)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決する為の検討を鋭意推し進めて行く中に、上記特許文献の技術は、ビアが形成された絶縁膜を、直接、薬剤や電磁波で攻撃し、即ち、絶縁膜中に侵入して該絶縁膜中のレジストポイズニングを惹起する物質を消失させていることから種々の問題が起きているのであろうと考えるに至った。
【0014】
そして、更なる検討が行われて行った結果、絶縁膜中に侵入して該絶縁膜を直接に攻撃するのでは無く、レジストポイズニングを惹起する物質が絶縁膜から発生して此方(絶縁膜の上層)側に入って来たならば、この物質がレジスト膜に到達する前に捕捉してしまえば問題は解決されるであろうとの啓示を得るに至った。そして、更なる検討の結果、ビアが形成された絶縁膜の表面に所定厚の膜Aを設けておき、この膜Aの構成樹脂自体にレジストポイズニングを惹起する物質と反応する基を有する樹脂Bを選定するとか、或いは膜A中にレジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質Bを添加しておけば、膜A自体が絶縁膜中に侵入して絶縁膜を攻撃する恐れは小さく、そして絶縁膜中から発生して来たレジストポイズニングを惹起する物質は膜Aを通ってレジスト膜に到達する前に膜A中の樹脂Bや物質Bによって捕捉され、レジストポイズニングを効果的に抑制できるであろうとの結論に到達するに至った。
上記知見を基にして本発明が達成されたものである。
【0015】
すなわち、前記の課題は、半導体装置における配線形成方法において、
絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜形成工程で形成された絶縁膜にビアを形成するビア形成工程と、
前記ビア形成工程でビアが形成された絶縁膜の表面に、レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質または該物質を含有する組成物の膜を形成する膜形成工程と、
前記膜形成工程の後、所定のパターンを形成するパターン形成工程
とを具備することを特徴とする半導体装置における配線形成方法によって解決される。
【0016】
特に、半導体装置における配線形成方法において、
絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜形成工程で形成された絶縁膜にビアを形成するビア形成工程と、
前記ビア形成工程でビアが形成された絶縁膜の表面に、レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質または該物質を含有する組成物の膜を形成する膜形成工程と、
前記膜形成工程の後、レジストポイズニングを惹起する物質との反応性を高める為の反応促進工程と、
前記膜形成工程の後、所定のパターンを形成するパターン形成工程
とを具備することを特徴とする半導体装置における配線形成方法によって解決される。
【0017】
尚、膜形成工程にあっては、特に、ビア内の少なくとも表面に上記の膜が設けられるように行われる。中でも、ビア内に上記膜材料が充填されるように行われる。
【0018】
上記の半導体装置における配線形成方法における反応促進工程は、特に、電磁波(紫外線(光)とか放射線をも含む)照射工程であったり、熱処理(加熱処理)工程であったりする。勿論、両者が併用されても良い。前記工程は、膜形成工程後であるものの、パターン形成工程の前に完了していても良く、又、パターン形成工程に引き続いて行われても良く、或いはパターン形成に際して初めて行われたものでも良い。特に、レジストポイズニングを惹起する物質との反応を促進せしめる為の処理が、光照射であったり、加熱処理であったりする場合は、パターン形成に際して光照射や加熱処理が行われることから、格別な処理を行わなくても済むようになる。
【0019】
レジストポイズニングを惹起する物質(例えば、塩基性物質)と反応する物質としては、該レジストポイズニングを惹起する物質(塩基性物質)と反応する化学種(反応基を持つ化合物)であれば良い。例えば、カルボキシル基やフェノール基に代表される酸性基や、シラノール基、アルコール基のような塩基性窒素化合物と反応性を有する官能基を持つものが挙げられる。この反応性の基を持つ物質(化合物)は、格別な操作が施されなくても反応が開始されるものでも良く、又、光や熱を加えることにより、塩基性化合物との反応性が発現するようなものでも良い。例えば、成膜後の追加処理で、塩基性化合物と反応する化学種を発生させることも出来る。例えば、光酸発生剤や熱酸発生剤を含有する組成物を用いれば、各々、光照射や熱処理を施すことによって膜内に酸を発生させ、その酸と塩基性化合物を反応させることが出来る。そして、こうした物質の反応性を高める為に、放射線照射や熱処理の工程を追加することも出来るが、このような場合においても絶縁膜表面は膜で被覆されているので、従来方法で生じる低誘電率絶縁膜特性の劣化は起こらない。
【発明の効果】
【0020】
上記のように構成させた本発明が実施されたならば、ダマシン配線形成(即ち、パターン形成の為のリソグラフィープロセス)に際して、絶縁膜(特に、層間絶縁膜)から発生したレジストポイズニングを惹起する物質、例えば塩基性不純物は、膜形成工程で設けられた膜中の反応性化合物または基と反応し、そこで捕捉(トラップ)されてしまい、上層のフォトレジスト膜には到達せず、レジストポイズニングの発生が防止されるようになる。
【0021】
すなわち、本発明者は、レジストポイズニングの抑制を、ポイズニング物資そのものを除去したり、ポイズニング物資の無い工程や材料を検討するのではなく、ポイズニング物質が発生しても、レジスト材料に影響を与えなければよいと考えたのである。そして、ポイズニング物質が塩基性である性質を利用し、仮に、ポイズニング物質が発生しても、そのポイズニング物質を膜中の化合物との化学反応で失活・中和・トラップさせれば良いと考えたことに基づくものである。
【0022】
そして、デュアルダマシン配線形成にあっては、例えば平坦化工程において応用したならば、工程を少なくでき、それだけコストも低廉になる。
【0023】
尚、特許文献6には、「高さ/直径で示されるアスペクト比が1以上のホールを有する基板にレジストを被覆しリソグラフィープロセスを利用して基板上に画像を転写する方法による半導体装置の製造において使用され、レジストを被覆する前の該基板に被覆して基板表面を平坦にするために用いる、ポリマー溶液を含有するギャップフィル材形成組成物」が開示されており、又、段落番号[0102]等においては、「本発明のリソグラフィー用ギャップフィル材形成組成物は、架橋触媒を添加する事が出来る。その架橋触媒としては、架橋反応の進行を制御できる化合物であり、熱により酸を発生する化合物、光により酸を発生する化合物等が挙げられる。好ましくは、p−トルエンスルホン酸、またはピリジウムp−トルエンスルホン酸などの化合物である。架橋触媒の添加量は、使用する塗布溶媒、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、架橋剤の添加量100重量部に対して0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部である。」旨の開示がされている。すなわち、一見すると、「酸」が含まれていることから、恰も、本発明と同様な効果を奏するかのように思われる。
【0024】
しかしながら、特許文献6に記載の材料を用いての試験が本発明者によって行われたが、特許文献6のものではレジストポイズニングの抑制効果を得ることが出来なかった。しかも、特許文献6にあっては、レジストポイズニングの抑制についての考えは皆無で、かつ、レジストポイズニングの抑制の文言すら無い。すなわち、特許文献6にあっては、p−トルエンスルホン酸などの添加の目的は、リソグラフィー用ギャップフィル材形成組成物の架橋を行わせる為のものと記載されているに過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、半導体装置における配線形成方法である。特に、絶縁膜加工プロセス(特に、リソグラフィープロセス)におけるレジストポイズニングの問題を改善できるダマシン配線形成方法である。更には、デュアルダマシン配線形成方法である。中でも、ビアファーストデュアルダマシン配線形成方法である。そして、基板上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を有する。又、絶縁膜形成工程で形成された絶縁膜にビアを形成するビア形成工程を有する。又、ビア形成工程でビアが形成された絶縁膜の表面に、レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質または該物質を含有する組成物の膜を形成する膜形成工程Aを有する。そして、必要に応じて、好ましくは、膜形成工程Aによって設けられた膜(或いは、膜中の物質)とレジストポイズニングを惹起する物質との反応性を高める為の反応促進工程を有する。又、膜形成工程Aの後、所定のパターンを形成する為にレジスト膜を設ける工程(パターン形成工程)を具備する。膜形成工程Aにあっては、特に、ビア内の少なくとも表面に上記の膜が設けられるように行われる。中でも、ビア内に上記膜材料が充填されるように行われる。上記反応促進工程は、特に、電磁波(例えば、電子線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線、X線、その他の放射線)照射工程であったり、熱処理(加熱処理)工程であったりする。勿論、両者が併用されても良い。前記工程は、膜形成工程後であるものの、パターン形成工程の前に完了していても良く、又、パターン形成工程に引き続いて行われても良く、或いはパターン形成に際して初めて行われたものでも良い。特に、レジストポイズニングを惹起する物質との反応を促進せしめる為の処理が、光照射であったり、加熱処理であったりする場合は、パターン形成に際して光照射や加熱処理が行われることから、格別な処理を行わなくても済むようになる。レジストポイズニングを惹起する物質(例えば、塩基性物質)と反応する物質としては、該レジストポイズニングを惹起する物質(塩基性物質)と反応する化学種(反応基を持つ化合物)である。例えば、カルボキシル基やフェノール基に代表される酸性基や、シラノール基、アルコール基のような塩基性窒素化合物と反応性を有する官能基を持つものが挙げられる。この反応性の基を持つ物質(化合物)は、格別な操作が施されなくても反応が開始するものでも良く、又、光や熱を加えることにより、塩基性化合物との反応性が発現するようなものでも良い。
以下、更に詳しく説明する。
【0026】
図1(a)はポイズニングの発生メカニズムの説明図、図1(b)はポイズニングの抑制メカニズム(本発明)の説明図である。
【0027】
すなわち、光照射によって発生した酸(レジストポイズニング物質と反応する酸)と、絶縁膜から発生した塩基性物質(レジストポイズニング物質)とは、絶縁膜上に設けられた膜中で反応する。そして、この反応により、ポイズニング物質はビア内で中和(反応・消失)されてレジストまで到達しない。従って、残渣やトレンチ線幅のシュリンクが発生しない。
【0028】
ポイズニング物質を中和する目的で発生させる酸は、ポイズニングに最も敏感なレジスト塗布・露光・露光後ベークと言ったリソグラフィー工程の直前もしくはレジスト露光工程中で発生させることが望ましい。そうすることによって、発生した酸が目的外の反応で消費されることなく、所望の機能を十分に果たすことが可能になる。
【0029】
組成物としての基本的な物性として、熱により酸を発生させる時の温度は100℃〜400℃が好ましい。更に好ましくは200℃〜300℃である。本温度範囲より低い温度領域で酸が発生するような化合物は、非常に反応性に富む為、組成物の保存安定性が問題となる。一方、本温度範囲より高い温度領域では、塗布膜を形成する為の樹脂(バインダ)が熱分解し、適当な塗膜を得ることが出来にくい。
【0030】
光により酸を発生させる為の光源は、光酸発生剤から効率的に酸を発生させることが可能な光源であれば使用できる。光源としてはランプやエキシマレーザーが挙げられ、その波長は10nm〜400nmのものが効果的である。例えば、リソグラフィー工程で使用される13.5nm,157nm,193nm,248nm,365nmなどの波長の光が挙げられる。尚、リソグラフィー工程で使用されるような単波長光である必要は無く、ブロードバンド光であっても光酸発生剤が光反応を起こすのに適する光源であれば良い。
【0031】
レジストポイズニングを惹起する物質(例えば、塩基性物質)と反応する物質を含む膜を構成する塗料は、レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質(例えば、熱又は光によって酸を発生する化合物)と、前記物質(化合物)を支持する為のバインダ樹脂と、溶媒と、必要に応じてその他の添加剤とを含む。尚、バインダ樹脂そのものがレジストポイズニングを惹起する物質と反応する基を持つものであれば、例えば熱又は光によって酸を発生する化合物は特別に含まれてなくても良い。
【0032】
尚、ビアファーストデュアルダマシン配線形成方法の場合には、リソグラフィープロセスの前に、基板を平坦化する目的で、開口したビアを充填するビアフィル工程がある。このビアフィル工程における平坦化材に、上記レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質(例えば、熱又は光によって酸を発生する化合物)が含まれておれば、工程数を増やさずとも、本発明の目的が達成される。従って、この場合には、組成物として、レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質(例えば、光酸発生剤)と、ベースになる通常の平坦化材料である架橋反応基を含有する樹脂と、少なくとも2個の架橋形成官能基を持つ架橋剤と、架橋触媒と、溶媒と、その他の必要に応じて加えられる添加剤とを含む。
【0033】
本発明で用いられる光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化合物、スルホン化合物、スルホネート化合物などを使用できる。但し、特に平坦化工程に続くリソグラフィー工程で使用される露光光源の光に感じて酸を発生する化合物が好ましい。又、平坦化工程では、組成物を塗布した後、塗膜中の溶剤を除去したり、硬化反応を進行させる為に加熱工程が実施される場合があるから、そのような熱工程では分解しない程度の耐熱性を有するものが好ましい。
【0034】
その他の平坦化材料成分としては、以下のようなものが挙げられる。尚、上述の光酸発生に障害とならないものであれば通常のものを使用できる。樹脂としては、例えばポリp−ビニルフェノール、ポリp−ビニルフェノールの臭素化物、p−ビニルフェノールとスチレンとの共重合体、p−ビニルフェノールとメタクリル酸メチルとの共重合体、p−ビニルフェノールとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの共重合体、及びp−ビニルフェノールとアクリル酸ブチルとの共重合体等が挙げられる。架橋剤としては、例えばメラミン系、置換尿素系、エポキシ基を含有するポリマー系等が挙げられる。好ましくは、メトキシメチル化グリコウリルやメトキシメチル化メラミン等の化合物である。特に、好ましくは、テトラメトキシメチルグリコールウリルやヘキサメトキシメチロールメラミンが挙げられる。架橋触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸やピリジウムp−トルエンスルホン酸などの化合物が挙げられる。溶媒としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、シクロヘキサノン等を用いることができる。これらの有機溶媒は単独で、又は二種以上の組合せで使用できる。
【0035】
以下、更に具体的に説明する。
図2は本発明の第1実施形態を示す説明図である。
本実施形態においては、従来のデュアルダマシン配線形成工程におけるビア形成(加工)工程の後、本発明のレジストポイズニング抑制処理工程を実施したものである。
【0036】
すなわち、先ず、図2(a)に示される如く、下層配線層1上にポーラスLow-k絶縁材料で絶縁膜(ビア層2および上層配線層3)を形成する。この後、図2(b)に示される如く、上層配線層3上にフォトレジスト膜4を塗布し、所定のパターンに露光・現像する。そして、図2(c)に示される如く、所定パターンのフォトレジスト膜4をマスクとして、ビア層2および上層配線層3にビア5を形成する。
【0037】
ビア5の形成後、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート(光酸発生剤)と、p−ビニルフェノールとメタクリル酸メチルとの共重合体(バインダ樹脂)と溶媒とからなる塗料を上層配線層3の上から塗布する。勿論、ビア5が上記塗料で完全に充填されるように塗布する。そして、ビア5内が上記光酸発生剤を含む塗膜で埋められると共に上層にも上記光酸発生剤を含む乾燥塗膜6が設けられた後、紫外線を照射する(図2(d)参照)。これによって、絶縁膜(ビア層2および上層配線層3)から発生したレジストポイズニング物質(塩基性物質)は塗膜6中の光酸発生剤からの酸と反応(中和反応)する。尚、塗膜6によってビア5は完全に充填されたものとなっているが、塗膜中の光酸発生剤からの酸と絶縁膜から発生したレジストポイズニング(塩基性物質)とを反応させる為に設けられたものであるから、ビア5の側壁表面が覆われるような状態のものでも良い。
【0038】
上記中和反応工程(図2(d))後に、塗膜6をH/Heプラズマアッシングにより除去する(図2(e)参照)。
【0039】
この後、従来と同様に行い、即ち、平坦化材を設けて開口したビアを平坦化(図2(f)参照)した後、反射防止膜およびフォトレジスト膜を塗布(図2(g)参照)し、この後で露光して所定パターンのフォトレジスト膜を得る(図2(h)参照)。
【0040】
上記のようにして所定パターンのフォトレジスト膜が形成(図2(h)参照)されたならば、このレジスト膜にはレジストポイズニング物質(塩基性物質)が作用することが無いので、レジストポイズニング物質に起因した前述の問題が解決される。
【0041】
図3は本発明の第2実施形態を示す説明図である。
本実施形態においては、ビアファーストデュアルダマシン配線形成工程では、その後に段差平坦化工程が有る為、ビアフィル工程にレジストポイズニング抑制処理工程を同時に行うようにしたものである。この同時に行うと言うことは工程的に有利である。すなわち、ビアフィル工程とレジストポイズニング抑制工程を同時に行ない、Low-k絶縁膜を加工した場合を以下で説明する。
【0042】
図3(a),(b),(c)の工程は前記実施形態で説明した図2(a),(b),(c)の工程と同じである。
図3(c)の工程後、図3(d)に示される如く、平坦化材の塗膜7を設ける。勿論、この塗膜7中には、レジストポイズニング物質(塩基性物質)と反応する物質(例えば、光酸発生剤)が含まれている。レジストポイズニング物質(塩基性物質)と反応する物質(例えば、光酸発生剤)を含む塗膜7が設けられた後、紫外線照射(露光)を行う(図3(e)参照)。或いは、紫外線照射の代わりに加熱処理を行う。この露光または加熱処理によって、絶縁膜(ビア層2および上層配線層3)から発生したレジストポイズニング物質(塩基性物質)は塗膜7中の光酸発生剤からの酸と反応(中和反応)する。
【0043】
従って、この後に行われるフォトリソグラフィープロセスにあっては、レジスト膜にはレジストポイズニング物質(塩基性物質)が作用することが無いので、レジストポイズニング物質に起因した前述の問題が解決される。かつ、本実施形態では、格別なポイズニング抑制処理工程は無く、即ち、従来からの工程によって兼用させるようにしたから、工程数の削減になり、引いてはコストが低廉になる。
【0044】
図4は本発明の第3実施形態を示す説明図である。
本実施形態においては、レジストポイズニング物質(塩基性物質)を中和する酸を発生させる露光とフォトレジストをパターニングする露光とが同時に行なわれる場合である。すなわち、図4(d)に示される如く、パターニング時の露光光の一部がフォトレジスト8を透過し、平坦化材の塗膜7に達すると、平坦化材に含まれるレジストポイズニング物質(塩基性物質)と反応する物質(例えば、光酸発生剤)より酸が発生する。そして、この発生した酸はビア側壁から拡散してきた塩基性不純物を中和する。
【0045】
従って、この後に行われるフォトリソグラフィープロセスにあっては、レジスト膜にはレジストポイズニング物質(塩基性物質)が作用することが無いので、レジストポイズニング物質に起因した前述の問題が解決される。かつ、本実施形態では、格別なポイズニング抑制処理工程は無く、即ち、従来からの工程によって兼用させるようにしたから、工程数の削減になり、引いてはコストが低廉になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の原理説明図
【図2】本発明の第1実施形態の説明図
【図3】本発明の第1実施形態の説明図
【図4】本発明の第1実施形態の説明図
【図5】従来例の説明図
【符号の説明】
【0047】
1 下層配線層
2 ビア層
3 上層配線層
4 フォトレジスト膜
5 ビア
6 塗膜
7 光酸発生剤含有平坦化材塗膜


代 理 人 宇 高 克 己


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置における配線形成方法において、
絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜形成工程で形成された絶縁膜にビアを形成するビア形成工程と、
前記ビア形成工程でビアが形成された絶縁膜の表面に、レジストポイズニングを惹起する物質と反応する物質または該物質を含有する組成物の膜を形成する膜形成工程と、
前記膜形成工程の後、所定のパターンを形成するパターン形成工程
とを具備することを特徴とする半導体装置における配線形成方法。
【請求項2】
膜形成工程の後、レジストポイズニングを惹起する物質との反応性を高める為の反応促進工程を具備することを特徴とする請求項1の半導体装置における配線形成方法。
【請求項3】
反応促進工程が電磁波照射工程であることを特徴とする請求項2の半導体装置における配線形成方法。
【請求項4】
反応促進工程がパターン形成工程における光照射工程であることを特徴とする請求項2又は請求項3の半導体装置における配線形成方法。
【請求項5】
反応促進工程が熱処理工程であることを特徴とする請求項2の半導体装置における配線形成方法。
【請求項6】
反応促進工程がパターン形成工程における熱処理工程であることを特徴とする請求項2又は請求項5の半導体装置における配線形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−234756(P2007−234756A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52623(P2006−52623)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(504371594)次世代半導体材料技術研究組合 (82)
【Fターム(参考)】