説明

半導体装置の製造方法、及び、ウェハ研磨装置

【課題】研磨パッドの摩耗に起因する研磨パッドの剛性低下による悪影響を十分に抑制できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】研磨テーブル1上に設けられた研磨パッド2と、前記研磨パッド2に対してウェハ3を接触させた状態で前記ウェハ3を前記研磨パッド2に対して相対的に移動させて前記ウェハ3を研磨する研磨ヘッド4と、前記研磨パッド2の摩耗後の厚さに応じて前記研磨パッド2の温度を制御する温度制御部6と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、及び、ウェハ研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野などにおいて、ウェハの研磨を行うウェハ研磨装置が用いられる。ウェハ研磨装置としては、ウェハをCMP(Chemical Mechanical Polish)するCMP装置が代表的である。
【0003】
CMP装置は、研磨テーブル(研磨定盤)と、研磨テーブル上に設けられた研磨パッドと、ウェハをフェイスダウンで保持する研磨ヘッドと、を有する。ウェハの研磨は、例えば、研磨パッドにより保持したウェハの被研磨面を研磨パッドに対して接触させた状態で、研磨ヘッドをウェハとともに水平面内で回転させながら、研磨テーブルを水平面内で回転させることにより行う。
【0004】
ここで、研磨パッドは、剛体ではなく弾性体である。このため、CMPの際に、研磨パッドが撓んでしまい、ディッシングという現象が生じる場合がある。
【0005】
特許文献1には、ウェハを研磨する硬質層と、この硬質層の下に配置された高熱伝導性層と、を有する研磨パッドを用いてCMPを行うことによって、硬質層の表面温度が軟化点近傍まで上昇するのを抑制し、ディッシングを抑制することができる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−297784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、研磨パッドの剛性の低下は、温度上昇のみならず、研磨パッドの摩耗によっても発生する。
特許文献1の技術では、研磨パッドの摩耗に起因する研磨パッドの剛性低下による悪影響を十分に抑制することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、研磨パッドによりウェハを研磨する工程を有し、
前記ウェハを研磨する工程では、前記研磨パッドの摩耗後の厚さに応じて前記研磨パッドの温度を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0009】
この製造方法によれば、研磨パッドの摩耗後の厚さに応じて研磨パッドの温度を制御することによって、研磨パッドの剛性を調節することができるので、研磨パッドが摩耗しても、研磨パッドを適切な剛性に調整することができる。よって、研磨パッドの摩耗に起因する研磨パッドの剛性低下による悪影響を十分に抑制することができる。これにより、例えば、ディッシングなどの発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、研磨テーブルと、
前記研磨テーブル上に設けられた研磨パッドと、
前記研磨パッドに対してウェハを接触させた状態で前記ウェハを前記研磨パッドに対して相対的に移動させて前記ウェハを研磨する研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの摩耗後の厚さに応じて前記研磨パッドの温度を制御する温度制御部と、
を有することを特徴とするウェハ研磨装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、研磨パッドの摩耗に起因する研磨パッドの剛性低下による悪影響を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るウェハ研磨装置を示す模式図である。
【図2】実施形態に係る半導体装置の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
【図3】実施形態に係るウェハ研磨装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法のタイムチャートである。
【図5】実施形態に係る研磨パッドの温度と弾性率との関係を示す図である。
【図6】変形例の研磨パッドの温度と弾性率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0014】
図1は実施形態に係るウェハ研磨装置100を示す模式図である。
本実施形態に係るウェハ研磨装置100は、研磨テーブル1と、研磨テーブル1上に設けられた研磨パッド2と、研磨パッド2に対してウェハ3を接触させた状態でウェハ3を研磨パッド2に対して相対的に移動させてウェハ3を研磨する研磨ヘッド4と、研磨パッド2の摩耗後の厚さに応じて研磨パッド2の温度を制御する温度制御部(制御部6)と、を有する。以下、詳細に説明する。
【0015】
研磨テーブル1は、上面が平坦且つ水平な、盤状のテーブル本体11と、このテーブル本体11の中央部より下方に突出している軸部12と、を有している。テーブル本体11の上面には、研磨パッド2が配設されている。
【0016】
研磨パッド2は、例えば、ウェハ3に接触して該ウェハ3を研磨する上層パッド(第1層)21と、上層パッド21の下に位置する下層パッド(第2層)22と、を含む積層構造をなしている。上層パッド21と下層パッド22は、それぞれ平板状に形成されている。
具体的には、例えば、研磨パッド2は、上層パッド21及び下層パッド22の2層構造をなしている。
【0017】
上層パッド21は、下層パッド22よりも弾性率が大きい(硬い)。上層パッド21は、ウェハ3に直接的に接触して該ウェハ3を研磨する機能を有するほか、良好な平坦性でウェハ3を研磨するのに大きく寄与する。
ここで、通常、CMP前のウェハ3には、予め成膜された被研磨膜が持つグローバル段差があり、CMPでは、この段差を解消する。この段差の解消の度合い、すなわちCMPの仕上がり具合を、平坦性という。
【0018】
一方、下層パッド22は、上層パッド21よりも弾性率が小さい(柔らかい)。下層パッド22は、良好な均一性でウェハ3を研磨するのに大きく寄与する。ここで、均一性とは、ウェハ3の面内における膜厚の均一の程度を表す指標である。均一性が良いとは、ウェハ3の面内での膜厚が均一であることを意味する。
【0019】
上層パッド21は、例えば、ウレタン樹脂(ポリウレタン)からなる。このウレタン樹脂は、より具体的には、下記一般式
−[OCONHR1NHCOO−R2]m−[OCONHR1NHCOO−R3]n−
で表される。
ここで、R1〜R3は炭化水素鎖であり、m、nは任意の整数である。
上層パッド21は、例えば、ガラス転移点が60℃未満のウレタン樹脂からなる。このウレタン樹脂のガラス転移点は、例えば、20℃以上である。より具体的には、このウレタン樹脂のガラス転移点は、50℃以下である。
上層パッド21は、引張弾性率が、例えば、240MPa〜300MPa程度である。
なお、上層パッド21は、ポリブタジエンにより構成されていても良い。
【0020】
下層パッド22は、例えば、ポリエチレン、ポリウレタンからなる。なお、下層パッド22を有しない研磨パッド2(単層の研磨パッド2)を用いても良い。
【0021】
研磨ヘッド4は、ウェハ3を保持するリテーナーリング7を下面側に有している。研磨ヘッド4は、リテーナーリング7により保持されたウェハ3をフェイスダウンで保持し、該ウェハ3の被研磨面(図1において下面)を研磨パッド2の上面(上層パッド21の上面)に接触させる。
【0022】
ウェハ研磨装置100は、更に、研磨パッド2を冷却する冷却部5を有している。冷却部5は、例えば、チラーと呼ばれる装置であり、冷却水を外部に供給する。冷却部5は、後述する制御部6の制御下で、冷却水の供給量と、冷却水の温度とを変化させる。
【0023】
ウェハ研磨装置100は、更に、冷却部5からの冷却水を研磨テーブル1へ供給する供給配管51と、研磨テーブル1内に引き回された冷却配管52と、冷却水を研磨テーブル1から冷却部5へ戻す配管53と、を有している。
【0024】
供給配管51の一端は、冷却部5に接続され、供給配管51の他端は、冷却配管52の一端に接続されている。冷却配管52の一端は、例えば、研磨テーブル1の軸部12の下端に位置している。冷却配管52は、軸部12の下端から軸部12の上端へと引き回され、更に、テーブル本体11の上部へと引き回されている。冷却配管52は、テーブル本体11の上部を均一に冷却できるような循環経路で、テーブル本体11の上部において引き回されている。更に、冷却配管52は、テーブル本体11の上部から下端(軸部12の上端)へと引き回され、軸部12の上端から下端へと引き回されている。冷却配管52の他端は、軸部12の下端に位置し、配管53の一端に接続されている。配管53の他端は、冷却部5に接続されている。
【0025】
冷却部5は、供給配管51を通して冷却水を研磨テーブル1内の冷却配管52へ供給する。その冷却水は、冷却配管52の一端から該冷却配管52内に導入され、冷却配管52の他端側へと流れる。つまり、研磨テーブル1内において冷却水が循環する。その後、冷却水は、冷却配管52の他端から、配管53内を通して、冷却部5に戻される。
【0026】
冷却部5は、冷却水を冷却する冷却機構と、冷却水を供給配管51へ圧送するポンプと、を有している。
【0027】
制御部6は、冷却部5の冷却機構及びポンプを制御することによって、冷却水の温度と、冷却水の供給量とを調節する。
【0028】
上述のように冷却水が研磨テーブル1内を循環することによって、研磨テーブル1が冷却される。研磨テーブル1が冷却されることにより、研磨テーブル1上に設けられている研磨パッド2も冷却される。
制御部6が冷却部5を制御して、冷却水の温度と供給量とを調節することにより、研磨パッド2の温度を制御することができる。
研磨パッド2は、温度変化に応じて、その剛性が変化する。
【0029】
ここで、ウェハ研磨装置100は、研磨パッド2の温度を検出する温度検出部(温度センサ)(図示略)を有していることも好ましい。この場合、温度検出部による温度の検出結果が制御部6に入力されるようにし、制御部6では、その検出結果に応じて、研磨パッド2の温度を制御する。
【0030】
研磨パッド2は、その使用時間(稼働時間)が長くなるほど、その厚みが減少する。研磨パッド2の厚みは、研磨パッド2によるウェハ3の研磨や、コンディショナーによる研磨パッド2のコンディショニングにより、減少する。
なお、研磨パッド2において、摩耗によって厚みが減少する部位は、ウェハ3に接触する部位である上層パッド21である。
研磨パッド2は、摩耗によりその厚み(例えば上層パッド21の厚み)が減少するほど、その剛性が低下する。
研磨パッド2の剛性が低下すると、ウェハ3を平坦性良く研磨することが困難となる。
【0031】
そこで、本実施形態では、研磨パッド2の摩耗後の厚みに応じて、研磨パッド2の温度を制御することによって、研磨パッド2の剛性を調節する。これにより、研磨パッド2が摩耗しても、研磨パッド2を適切な剛性に調整することができる。よって、研磨パッド2の摩耗に起因する研磨パッド2の剛性低下による悪影響を抑制することができる。例えば、ウェハ3の研磨時におけるディッシングなどの発生を抑制することができる。
【0032】
ウェハ研磨装置100は、他に、研磨テーブル1を回転させるモータ等の研磨テーブル回転アクチュエータ(図示略)と、研磨ヘッド4を回転させるモータ等の研磨ヘッド回転アクチュエータ(図示略)と、を有している。
ウェハ研磨装置100は、他に、スラリーを貯留するスラリー貯留部(図示略)と、スラリーを研磨パッド2上に吐出するスラリーノズル(図示略)と、スラリー貯留部のスラリーをスラリーノズルへ圧送するポンプ或いはモータ等のスラリー供給アクチュエータ(図示略)と、研磨パッド2の研磨面のコンディショニングを行うコンディショナー(図示略)と、コンディショナーを動作させるコンディショナー駆動アクチュエータ(図示略)と、を有している。
【0033】
制御部6は、各種の制御処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、このCPUの動作用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このCPUの作業領域などとして機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えて構成されている。
制御部6は、冷却部5、研磨テーブル回転アクチュエータ、研磨ヘッド回転アクチュエータ、スラリー供給アクチュエータ、コンディショナー駆動アクチュエータ等の動作制御を行う。
【0034】
このように構成されたウェハ研磨装置100によるウェハ3の研磨(具体的には、例えばCMP)は、以下のようにして行うことができる。
すなわち、研磨ヘッド4のリテーナーリング7によりウェハ3を保持した状態で、ウェハ3の被研磨面を研磨パッド2の上層パッド21の上面に押し当て、スラリーノズルからスラリーを研磨パッド2上に滴下させて、研磨ヘッド4及び研磨テーブル1を回転させる。
これにより、ウェハ3の被研磨面が、上層パッド21の上面に当接した状態で、該上面に対して相対移動するので、ウェハ3の被研磨面が研磨される。
ウェハ研磨装置100の稼働中、研磨パッド2の温度は、随時、制御される。
【0035】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
図2は実施形態に係る半導体装置の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
この製造方法は、研磨パッド2によりウェハ3を研磨する工程を有する。ウェハ3を研磨する工程では、研磨パッド2の摩耗後の厚さに応じて研磨パッド2の温度を制御する。この温度制御により、研磨パッド2の剛性を調節する。以下、詳細に説明する。
【0036】
本実施形態においては、図示していないが、半導体基板上にトランジスタ等の半導体素子が形成され、その上に層間絶縁膜が形成されたものを、下地基板として用いる。この下地基板には、半導体素子間をつなぐ配線構造が形成される。また、半導体基板としては、シリコン基板などを用いることができる。
【0037】
まず、図2(a)に示すように、シリコン基板(図示せず)上に層間絶縁膜201を形成する。この層間絶縁膜201の上に、通常の露光方法でレジストパターンを形成した後、ドライエッチングを行うことにより、複数の配線溝202を層間絶縁膜201に形成する。
次に、層間絶縁膜201上、及び、配線溝202の内部に、バリアメタル膜203を形成する。バリアメタル膜203を形成するには、たとえば、スパッタリング法などを用いることができる。バリアメタル膜203としては、例えばTa膜を用いる。
次に、スパッタリング法により、バリアメタル膜203上にCuシード膜(図示せず)を形成する。次に、電解めっき法により、Cuシード膜をカソードとしてCuめっき膜204を形成する。
このようにして、配線溝202を埋め込むように金属膜を形成することができる。
【0038】
次に、図2(b)に示すように、CMPによる平坦化を行う。これにより、配線溝202内にCu配線(Cuめっき膜206)を形成する。配線溝202外の余剰のCuめっき膜204を除去する。
【0039】
以上のようにして、図2(b)に示す配線構造の半導体装置200が得られる。この後、上述した工程を繰り返すことにより、2層以上の多層配線構造の半導体装置を形成してもよい。
【0040】
ここで、本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、CMPによる平坦化(図2(b)の工程)は、例えば上述のウェハ研磨装置100を用いて行う。
【0041】
上述のように、研磨パッド2は、その使用時間(稼働時間)が長くなるほど、摩耗によってその厚みが減少し、その剛性が低下する。その結果、研磨パッド2の剛性が不足することから、ウェハ3を平坦性良く研磨することが困難となる。
特に、ウェハ3を研磨することによって配線溝202に金属膜を埋め込み形成する場合、ディッシングが発生しやすくなる。
【0042】
ここで、CMP時の研磨パッド2は、埋め込み構造(Cuめっき膜206)の脇のストッパー層205(図2)を支点として、撓みながら、埋め込み構造の表面に接触する。このため、ディッシングが発生する。
【0043】
そこで、本実施形態では、研磨パッド2が摩耗した場合に、研磨パッド2の温度を低下させることによってその剛性を高めることで、ディッシング等の悪影響の発生を抑制するとともに、研磨パッド2の長寿命化を図る。
【0044】
すなわち、制御部6は、摩耗により研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となったか否かを判定し、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となったと判定した場合には、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ以上のときよりも研磨パッド2を低温に制御する。
【0045】
ここで、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となったか否かの判定は、例えば、同一の研磨パッド2によるCMPの処理回数に基づいて行う。例えば、研磨パッド2の厚さが所定の厚さとなるようなCMPの処理回数(以下、上限処理回数)を予め調べておく。そして、同一の研磨パッド2によるCMPの処理回数が上限処理回数を超えた場合に、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となったと判定する。
なお、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となったか否かの判定は、同一の研磨パッド2の稼働時間に基づいて行っても良い。
或いは、研磨パッド2の厚さの実測値に基づいて、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となったか否かを判定しても良い。
また、ここで、「研磨パッド2の厚さが所定の厚さとなる」ということは、例えば、「研磨パッド2の上層パッド21の層厚が初期値の60〜70%となること」などを意味する。
【0046】
より具体的には、制御部6は、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ以上の場合には、研磨パッド2の温度を研磨パッド2の上層パッド21のガラス転移点以上の温度に制御し、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となった場合には、研磨パッド2の温度を研磨パッド2の上層パッド21のガラス転移点未満の温度に制御する。
【0047】
図3はウェハ研磨装置100の制御部6の動作を示すフローチャートである。図3の処理は、例えば、ウェハ研磨装置100の稼働中において、制御部6が随時(例えば所定時間ごとに繰り返し)行う。
図4は本実施形態に係る半導体装置の製造方法のタイムチャートである。図4において、点線のグラフは研磨パッド2の温度を示し、実線のグラフは研磨パッド2の剛性を示す。図4の横軸は、研磨パッド2の摩耗量、縦軸は、研磨パッド2の温度或いは剛性である。
【0048】
図3に示すように、制御部6は、先ず、研磨パッド2の摩耗後の厚さが所定の厚さ未満となったか否かを判定する(ステップS1)。
研磨パッド2の厚さが所定の厚さ以上であれば(ステップS1のN)、制御部6は、研磨パッド2の温度が、上層パッド21のガラス転移点以上の温度(好ましくは、該ガラス転移点よりも高温)となるように、冷却部5を制御する(ステップS2)。
一方、研磨パッド2の厚さが所定の厚さ未満となっていれば(ステップS1のY)、制御部6は、研磨パッド2の温度が、上層パッド21のガラス転移点未満の温度となるように、冷却部5を制御する(ステップS3)。
【0049】
このような制御を行う結果、図4に示すように、研磨パッド2の摩耗量が所定量M以下の場合、すなわち研磨パッド2の厚さが所定の厚さ以上の場合には、研磨パッド2の温度は、上層パッド21のガラス転移点以上の温度に維持される。また、研磨パッド2の摩耗量が所定量Mを越えた場合、すなわち研磨パッド2の摩耗後の厚さが所定の厚さ未満の場合には、研磨パッド2の温度は、上層パッド21のガラス転移点未満の温度に維持される。
【0050】
ここで、図5は実施形態に係るウェハ研磨装置100の研磨パッド2の温度と研磨パッド2の上層パッド21の弾性率との関係を示す図(図5の実線のグラフ)である。また、図5には、比較用に、変形例の研磨パッドの温度とその上層パッドの弾性率との関係を点線で示している。
図6は変形例の研磨パッドの温度とその上層パッドの弾性率との関係を示す図である。
【0051】
変形例の研磨パッドは、現在、CMP装置において一般的に用いられている研磨パッドである。この研磨パッドの上層パッドの材質は、ウレタン樹脂(ポリウレタン)である。ウレタン樹脂はガラス転移点Tg(軟化点)を持つ。このウレタン樹脂のガラス転移点Tgは、約60℃である。このウレタン樹脂は、ガラス転移点Tg以上の温度では、弾性率が低下し、柔らかくなる。
この研磨パッドは、図6に示すように、ガラス転移点Tg未満の温度範囲T3において使用される。この研磨パッドを用いた研磨時の温度はガラス転移点よりも十分に低いので、該研磨パッドの弾性率が不足することはない。ただし、研磨パッドの摩耗に伴い、パッドの剛性が低下する。
【0052】
一方、本実施形態に係る研磨パッド2の上層パッド21のガラス転移点Tg(軟化点)は、図5に示すように、変形例の研磨パッドの上層パッドのガラス転移点Tgよりも低い。
本実施形態に係る研磨パッド2の上層パッド21は、そのガラス転移点Tg以上の温度範囲T1においても、変形例の研磨パッドの上層パッドと同等レベルの弾性率である。
本実施形態に係る研磨パッド2の上層パッド21の弾性率は、そのガラス転移点Tgよりも低温の温度範囲T2においては、温度範囲T1での弾性率よりも大きくなる。
本実施形態に係る研磨パッド2の上層パッド21の弾性率は、温度範囲T2においては、変形例の研磨パッドの上層パッドよりも弾性率が大きい。
【0053】
図4に示すように、研磨パッド2の使用開始当初は、研磨パッド2の温度を、その上層パッド21のガラス転移点Tgよりも高温(図5の温度範囲T1内の温度)に制御する。
研磨パッド2の剛性は、当該研磨パッド2によるCMPの処理回数が増大し、当該研磨パッド2の摩耗量が増大(研磨パッド2の摩耗後の厚さが減少)するとともに、低下する。
【0054】
その後、研磨パッド2の摩耗量が所定量M(図4)を越えた、すなわち研磨パッド2の摩耗後の厚さが所定の厚さ未満となった場合には、研磨パッド2の温度を上層パッド21のガラス転移点未満の温度(図5の温度範囲T2内の温度)へと低下させる(図4の冷却Aを行う)。これにより、研磨パッド2の剛性を一旦改善することができる(図4の剛性改善Bが生じる)。
【0055】
つまり、研磨パッド2が摩耗しても、研磨パッド2を適切な剛性に調整することができる。よって、研磨パッド2の摩耗に起因する研磨パッド2の剛性低下による悪影響(CMPによるディッシングの発生など)を抑制することができる。
また、長期に亘って適切な条件で研磨を行うことができるので、研磨パッド2を長寿命化することができるとともに、ウェハ研磨装置100の稼働率向上、並びに、半導体装置の製造コスト低減が可能である。
【0056】
以上のような実施形態によれば、研磨パッド2の摩耗後の厚さに応じて研磨パッド2の温度を制御することによって、研磨パッド2の剛性を調節するので、研磨パッド2が摩耗しても、研磨パッド2を適切な剛性に調整することができる。よって、研磨パッド2の摩耗に起因する研磨パッド2の剛性低下による悪影響を十分に抑制することができる。これにより、ウェハ3の研磨時におけるディッシングなどの発生を抑制することができる。よって、例えば、金属の埋め込み構造により形成する配線の抵抗値として、設計通りの値を精度良く得ることができ、歩留まりに優れた半導体装置を製造することができる。
【0057】
<変形例>
上記の実施形態では、図5に実線で示されるような特性の研磨パッド2(例えば、上層パッド21が図5に実線で示されるような特性のもの)を用いる例を説明したが、図5に点線で示されるような特性の研磨パッド(例えばその上層パッドが図5に点線で示されるような特性のもの)を用いても良い。
なお、一般的な研磨パッド(つまり、変形例の研磨パッド)の場合、研磨パッドを新品に交換する必要が生じる程度に研磨パッドが摩耗した段階においても、その上層パッドは、ウェハの研磨が可能な程度の厚みを有している(ただし、剛性が不足するため、ウェハを平坦性良く研磨することが困難である)。
そこで、この変形例の場合にも、研磨パッドの摩耗後の厚さが所定の厚さ未満となった場合に、研磨パッドの厚さが所定の厚さ以上のときよりも研磨パッドを低温に制御することによって、上記と同様の効果が得られる。
すなわち、研磨パッドの厚さが所定の厚さ以上のときには、研磨パッドの温度を例えば図5の温度範囲T1に制御し、研磨パッドの厚さが所定の厚さ未満となった場合には、研磨パッドの温度を例えば図5の温度範囲T2に制御すると良い。
【符号の説明】
【0058】
1 研磨テーブル
11 テーブル本体
12 軸部
2 研磨パッド
21 上層パッド
22 下層パッド
3 ウェハ
4 研磨ヘッド
5 冷却部
51 供給配管
52 冷却配管
53 配管
6 制御部
7 リテーナーリング
100 ウェハ研磨装置
200 半導体装置
201 層間絶縁膜
202 配線溝
203 バリアメタル膜
204 Cuめっき膜
205 ストッパー層
206 Cuめっき膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドによりウェハを研磨する工程を有し、
前記ウェハを研磨する工程では、前記研磨パッドの摩耗後の厚さに応じて前記研磨パッドの温度を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記研磨パッドの厚さが所定の厚さ未満となった場合には、前記研磨パッドの厚さが前記所定の厚さ以上のときよりも前記研磨パッドを低温に制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記研磨パッドの厚さが前記所定の厚さ以上の場合には、前記研磨パッドの温度を前記研磨パッドのガラス転移点以上の温度に制御し、
前記研磨パッドの厚さが前記所定の厚さ未満となった場合には、前記研磨パッドの温度を前記研磨パッドのガラス転移点未満の温度に制御することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
研磨テーブルと、
前記研磨テーブル上に設けられた研磨パッドと、
前記研磨パッドに対してウェハを接触させた状態で前記ウェハを前記研磨パッドに対して相対的に移動させて前記ウェハを研磨する研磨ヘッドと、
前記研磨パッドの摩耗後の厚さに応じて前記研磨パッドの温度を制御する温度制御部と、
を有することを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項5】
前記研磨パッドを冷却する冷却部を有し、
前記温度制御部は、前記冷却部を制御することにより、前記研磨パッドの温度を制御することを特徴とする請求項4に記載のウェハ研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−98183(P2013−98183A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236434(P2011−236434)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】