説明

半導体装置の製造方法およびその製造装置

【課題】半導体基板のベベル部に付着した付着物を効果的に除去することができ、製品の歩留りの低下を抑制させた半導体装置の製造方法およびこれに用いられる製造装置を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、保持チャック31に保持された半導体基板10のベベル部をリングヒーター30を用いて加熱する工程(a)と、工程(a)の後、吐出ノズル32から噴出された洗浄液33により、半導体基板10のベベル部を洗浄する工程(b)とを備えている。工程(a)では、リングヒーター30をベベル部における上面と側面と下面とを覆うように設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体基板などの洗浄工程に用いる半導体装置の製造装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体素子の高集積化および微細化が進むにつれて、付着物による半導体装置の歩留りの低下が顕著になってきている。その中でも、ドライエッチング時に半導体基板のエッジ付近やベベル部(辺縁部の面取りされた部分)に付着した異物および生成物は、後の工程で使用する設備にパーティクルとして再付着することで、製品の歩留まりが低下する要因の1つとなっている。しかしながら、エッジ付近およびベベル部に付着した異物および生成物の除去は、エッジ付近やベベル部が局部的な位置であること、そして下地膜へのダメージを考慮しなければならないことから非常に困難であり、その除去方法の実施例は数少ない。
【0003】
ここで、ドライエッチング時にベベル部に付着した膜、異物、および生成物などの付着物は、その後の工程で使用する設備のアームあるいはFOUP(Front Opening Unified Pod)等の半導体基板キャリアと接触することでベベル部から剥離した後、設備内に堆積したり、半導体基板の表面に再付着する。その結果、設備内に付着するパーティクルが増加することで設備の稼働率が低下してしまう。また、投影露光時に半導体基板の表面に付着した付着物が障害となりパターン形成が不完全となることで、半導体素子が電気的に絶縁もしくは短絡状態になるなど、歩留りの低下の原因となるおそれがある。これらの不具合を防止するためには、半導体基板のエッジ付近およびベベル部に付着した付着物を効率良く除去する必要がある。そこで、従来の半導体装置の製造工程では、上述の不具合を防ぐため、半導体基板上に膜を形成した後、もしくは半導体基板の加工後に、半導体基板のエッジ部分を洗浄する工程が設けられている。
【0004】
図9は、従来の第1の半導体装置の洗浄装置の概略を示す断面図である。従来の第1の半導体装置の洗浄装置は、図9に示すように、洗浄チャンバー85と、半導体基板83を保持するための回転チャック82と、半導体基板83の表面および裏面をそれぞれ洗浄するための表面洗浄用ノズル84および裏面洗浄用ノズル81とを備えている。この裏面洗浄用ノズル81は半導体基板83の径方向に自由に移動できる構造を有しているため、回転チャック82に吸着保持された半導体基板83を回転させながら薬液を供給することで、半導体基板83の裏面における平面的に見て回転チャック82と重ならない部分を洗浄することができる。この洗浄方法によれば、半導体基板83の裏面までも洗浄することができ、且つ、半導体基板83に供給する薬液の種類や条件などの洗浄条件を変更することができる。その結果、効率良く半導体基板83の裏面におけるエッジ部分に付着した付着物を取り除くことができる(特許文献1参照)。
【0005】
また、図10は従来の第2の半導体装置の洗浄装置の概略を示す断面図である。図10に示すように、従来の第2の半導体装置の洗浄装置は、半導体基板90を保持するための真空チャック96と、ボウル91の内側側面に設けられ、半導体基板90のエッジ部を洗浄するための洗浄機構92とを備えている。洗浄機構92は、半導体基板90のエッジを囲むようにコの字型に形成されたブラシ94と、ブラシ94の外側を囲む洗浄ブラシ93と、ボウル91の側面から半導体基板90のエッジへ水平に洗浄ブラシ93およびブラシ94を移動させるための移送装置95とから構成されている。なお、洗浄ブラシ93およびブラシ94は、ボウル91の側面に形成された開口部を通って、ボウル91の外に備えられた移送装置95と接合されている。また、移送装置95は油圧を利用したアクチュエータにより電気モータの回転を制御するように設けられている。
【0006】
従来の第2の半導体装置の製造装置において、真空チャック96により吸着保持された半導体基板90のエッジを洗浄する際には、半導体基板90を回転させながら、移送装置95により洗浄ブラシ93をボウル91の側面から半導体基板90のエッジまで水平に移動させる。この時、半導体基板90の上面とブラシ94が平面的に見て約1mm分の幅で重なるように、且つ、半導体基板90の下面とブラシ94が平面的に見て約2mm分の幅で重なるように、洗浄ブラシ93のコの字型の凹み部分に半導体基板90のエッジ部を挿入する。半導体基板90とブラシ94が接触する際には、洗浄液がブラシ94から半導体基板90へ一定に噴射される。その後、半導体基板90のエッジの洗浄が完了すると、移送装置95により洗浄ブラシ93をエッジからボウル91の側面まで水平に移動させる。このような従来の第2の半導体装置の製造装置では、エッジを洗浄する際に、ボウル91の内壁にぶつかった反動で付着物が再度半導体基板90の表面を汚染するのを抑制することができる(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−163385号公報
【特許文献2】特開平9−223664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来の第1の半導体装置の製造装置では、裏面洗浄用ノズル81を用いることで、半導体基板の裏面におけるエッジ部分に付着した付着物に対する除去性能を向上させているが、半導体基板の表面におけるエッジ部分およびベベル部は十分に洗浄されていない可能性がある。さらに、半導体基板の裏面におけるエッジ部分のみを制御して局所的に洗浄しているわけではないため、異物が残留するおそれがある。
【0008】
また、上述の従来の第2の半導体装置の製造装置では、ブラシを用いて、ブラシから洗浄液を吐出させることで、半導体基板の両面におけるエッジ部およびベベル部の付着物の除去性能を向上させているが、ブラシが半導体基板と接触し、その接触度合いを制御できないため、異物のクロスコンタミやブラシが半導体基板へ及ぼす物理ダメージが発生するおそれがある。
【0009】
さらに、上述の従来技術は、専ら半導体基板のエッジ付近あるいはベベル部に非連続的に付着する付着物を対象にしたものであり、ドライエッチング時に半導体基板のエッジ付近やベベル部に一様に付着した生成物の除去に関しては、ほとんど考慮されていない。ここで、ドライエッチング時には、主な生成物としてC、H、Fを含んだ粘性を有するポリマーが、厚さが数〜数百nmで半導体基板のエッジ付近やベベル部に連続的に付着する。このため、上述の従来技術による付着物の除去方法では、下地膜や素子形成領域にダメージを与えることなくポリマー膜を溶解させたり、物理的に除去することが難しい。
【0010】
上記の不具合を鑑み、本発明は、半導体基板のベベル部に付着した付着物を効果的に除去することができ、製品の歩留りの低下を抑制させた半導体装置の製造方法およびこれに用いられる製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置の製造方法は、基板保持機構に保持された半導体基板のベベル部を加熱機構を用いて加熱する工程(a)と、前記工程(a)の後、前記半導体基板のベベル部を洗浄液により洗浄する工程(b)とを備えている。
【0012】
この方法によれば、例えばエッチング工程後に半導体基板に付着したポリマー膜に対して、工程(a)で半導体基板のベベル部を加熱することにより、該ベベル部に付着したポリマーの結合の一部を切断させることができ、ポリマー膜を脆化することができる。これにより、ポリマー膜と半導体基板の密着性が悪化するため、工程(b)でベベル部を洗浄することで、該ベベル部に付着したポリマー膜を比較的容易に取り除くことが可能となる。このため、本発明の半導体装置の製造方法では、付着物によるパーティクルの発生を抑制でき、後の工程で使用する設備や半導体基板の素子形成領域上にパーティクルが再付着することを抑えることができる。その結果、従来の方法に比べて良好な歩留まりで、半導体装置を製造することができる。
【0013】
なお、前記工程(a)では、水蒸気により前記半導体基板のベベル部を加熱してもよい。この場合、比較的低温(約100℃)で半導体基板を加熱できるため、半導体基板上に形成された素子に与える熱影響を抑えることができ、素子特性の劣化を引き起こすことなく半導体装置を製造することができる。
【0014】
また、前記工程(a)では、前記ベベル部における上面と側面と下面とを覆うヒーターを用いて加熱してもよい。この場合、半導体基板のベベル部を選択的に加熱することができるため、より効率的にポリマー膜を脆化させ、ポリマー膜の除去効率を向上させることができる。
【0015】
また、前記工程(a)では、レーザーを照射することにより前記半導体基板のベベル部を加熱してもよい。この場合、半導体基板を局所的に加熱することができるため、半導体基板上に形成された素子に与える熱影響をより抑えることができる。なお、前記レーザーの波長は1μm以上であると、より効果的にポリマーの結合を切断させることができるため望ましい。
【0016】
また、前記工程(a)では、前記半導体基板のベベル部に酸素を供給しながら前記ベベル部を加熱してもよい。この場合、酸化作用によりポリマーの結合の切断を促進させることができるため、ポリマーの脆化が起こりやすくなり、ポリマー膜の除去効率を向上させることができる。
【0017】
次に、本発明の半導体装置の製造装置は、半導体基板を保持するための基板保持機構と、前記半導体基板のベベル部を加熱するための加熱機構と、洗浄液を吐出し、前記半導体基板のベベル部を洗浄するための洗浄機構とを備えている。
【0018】
この構成によれば、半導体基板を洗浄する際に、半導体基板のベベル部を選択的に加熱および洗浄することができるため、ベベル部に付着した付着物を効率良く除去することができる。その結果、本発明の半導体装置の製造装置を用いると、付着物によるパーティクルの発生が抑制され、比較的歩留まりが良く半導体装置を製造することが可能となる。
【0019】
なお、前記加熱機構が前記半導体基板のベベル部の上面と下面と側面とを覆うヒーターであれば、より効果的にベベル部に付着した付着物を加熱することができ、付着物の除去効率を向上させることができる。
【0020】
また、前記加熱機構は、レーザーを照射する機構であってもよい。さらに、前記加熱機構は、水蒸気を吐出するノズルを有していてもよい。
【0021】
なお、前記半導体基板のベベル部に酸素を導入するための酸素ガス導入口をさらに備えていてもよい。これにより、酸素を供給しながら半導体基板を加熱することができるため、酸化作用を利用してより効果的に半導体基板を洗浄することができる。
【0022】
また、前記半導体基板のベベル部を冷却するための冷却ガス導入口をさらに備えていてもよい。この場合、半導体基板のベベル部を加熱するだけでなく、冷却することもできるため、半導体基板に付着した付着物に熱ストレスを与えることで、より効果的に付着物を取り除くことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置によれば、半導体基板のベベル部を効率良く加熱して、洗浄することができるため、該ベベル部に付着した付着物と半導体基板の密着性を悪化させ、該付着物を効率良く除去することができる。その結果、パーティクルの発生を抑えることができ、製品の歩留まりの低下が抑制された半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置について図1〜図3(a)、(b)を参照しながら説明する。なお、本発明では、半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置として、例えば銅配線を形成する際のドライエッチング工程後に行われる半導体基板の洗浄方法およびそれに用いられる洗浄装置を挙げて説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる半導体基板の周辺部を示す断面図である。同図に示すように、本発明においては、半導体基板10における辺縁部の面取りされた部分をベベル部(点線で囲まれた部分)12と称し、ベベル部12の側面をベベル端面11とする。ここで、以下に述べる半導体基板10のエッジからの距離は、ベベル端面11を始点としたものとする。なお、半導体基板10の下面上には、保護膜13として窒化膜または酸化膜が形成されている。
【0026】
ここで、ドライエッチング工程時に形成された生成物(ポリマー)は、ドライエッチング後の灰化処理を経て、図2に示すようなポリマー膜となり、半導体基板などに堆積する。図2は、灰化処理後の半導体基板のベベル部を示す断面図である。同図に示すように、ドライエッチング時に生成された付着物はポリマー膜21として、上面上だけでなく下面上にも回り込むように半導体基板10のベベル部に付着する。そのベベル部の下面上に付着したポリマー膜21の膜厚は例えば200nm程度であり、ポリマー膜21は半導体基板10のエッジからの距離がおよそ3mm程度内の領域に付着している。
【0027】
以上のようなポリマー膜が付着した半導体基板の洗浄方法とそれに用いられる洗浄装置について、図3(a)、(b)を用いて説明する。
【0028】
図3(a)、(b)は、それぞれ本実施形態における半導体装置の製造装置の構成を示す断面図および上面図である。同図に示すように、本実施形態における第1の半導体装置の製造装置(第1の製造装置)は、半導体基板10を保持するためのバキュームタイプの保持チャック31と、半導体基板10を洗浄する洗浄液33を吐出するための吐出ノズル32と、半導体基板10のベベル部12(図1参照)における下面と側面と上面とを囲むようにコの字型に形成された抵抗加熱型のリングヒーター30とを備えている。なお、保持チャック31は回転機構を有しており、半導体基板10を回転させながら洗浄を行うことができる。また、リングヒーター30は半導体基板10の主面に平行な方向(矢印方向)に移動することができる。
【0029】
次に、第1の製造装置を用いた半導体基板の洗浄方法について説明する。
【0030】
最初に、半導体基板10を第1の製造装置のチャンバー(図示せず)内に挿入し、バキュームタイプの保持チャック31により所定の場所に固定する。続いて、半導体基板10のエッジ部およびベベル部を囲むように、リングヒーター30を設置し、例えば300℃で3分間、半導体基板10を加熱する。
【0031】
次に、半導体基板10のエッジ部およびベベル部に向けて、吐出ノズル32より、例えば純水33を1000mL/minの流量で120秒間吐出する。これにより、半導体基板10に付着したポリマー膜21が除去される。なお、従来の加熱工程が設けられていない製造方法では、純水により半導体基板10を洗浄しても、ポリマー膜21を完全に除去することができなかった。以上の方法により、半導体基板10の洗浄を行うことができる。
【0032】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、リングヒーター30により半導体基板10のエッジ部およびベベル部を選択的に加熱することで、該ベベル部に付着したポリマーの結合の一部が切断され、ポリマー膜21(図2参照)を脆化させることができるため、半導体基板10とポリマー膜21との密着性を悪くすることができる。これにより、後の工程で水を半導体基板へ噴出することで比較的容易にベベル部に付着したポリマー膜21を除去することが可能となる。その結果、付着物によるパーティクルの発生を抑制でき、後の工程で使用する設備や半導体基板10の素子形成領域上にパーティクルが再付着することを抑えることができるので、従来の方法に比べて製品の歩留まりを向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法では、高温での熱処理を長時間加えるなどの過剰な洗浄処理を行う必要がないため、半導体基板上に形成された素子の特性劣化を引き起こすことなく、半導体基板を洗浄することができる。
【0034】
なお、本実施形態の製造方法においては、半導体基板の温度としては、250℃以上とすることが好ましい。この理由について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態における半導体基板の加熱温度とベベル部における欠陥数を示す図である。同図が示すように、半導体基板の温度が高くなるほど、ベベル部における欠陥数も少なくなり、付着物の除去性能が向上することがわかる。従って、本発明においては、250℃以上の温度になるように半導体基板を加熱することが好ましい。
【0035】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置について図5を参照しながら説明する。なお、本実施形態における第2の半導体装置の製造装置(第2の製造装置)は、リングヒーターの構成が上述の第1の製造装置と異なっている。従って、リングヒーター以外の第1の製造装置と同様な構成部分については、簡単に述べる。
【0036】
図5は、第2の製造装置の構成を示す断面図である。同図に示すように、第2の製造装置は、半導体基板10を保持するための保持チャック31と、半導体基板10を洗浄する洗浄液33を吐出するための吐出ノズル32と、半導体基板10のベベル部12(図1参照)における下面と側面と上面とを囲むようにコの字型に形成された抵抗加熱型のリングヒーター30とを備えている。ここで、第2の製造装置では、リングヒーター30は酸素ガス導入口35を有しており、半導体基板10へ酸素を導入しながら加熱処理を行うことができる。
【0037】
次に、第2の製造装置を用いた半導体基板の洗浄方法について説明する。なお、上述の第1の実施形態の製造方法と同様な部分は簡略化して述べる。
【0038】
最初に、半導体基板10を第2の製造装置のチャンバー(図示せず)内に挿入し、保持チャック31により所定の場所に固定する。その後、半導体基板10のエッジ部およびベベル部を囲むように、リングヒーター30を設置し、酸素ガス導入口35より酸素を供給しながら、半導体基板10を例えば300℃で3分間加熱する。なお、酸素ガスは例えば500mL/minの流量で半導体基板10へ導入する。
【0039】
次に、半導体基板10のエッジ部およびベベル部に向けて、吐出ノズル32より例えば純水33を1000mL/minの流量で120秒間吐出する。これにより、半導体基板10に付着したポリマー膜21が除去される。以上の方法により、半導体基板10の洗浄を行うことができる。
【0040】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、第1の実施形態の製造方法と同様に、リングヒーター30により半導体基板10のエッジ部およびベベル部を選択的に加熱することで、該ベベル部に付着したポリマーの結合の一部を切断させることができる。さらに、酸素を供給しながら半導体基板10を加熱することで、酸化作用によりポリマーの結合の切断を促進させることができるため、ポリマー膜21の脆化がより起こりやすく、第1の実施形態の製造方法に比べて、ベベル部に付着したポリマー膜21をより効率的に除去することが可能となる。その結果、パーティクルの発生が抑制され、歩留まりが比較的良好な半導体装置を製造することが可能となる。
【0041】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置について図6を参照しながら説明する。なお、本実施形態における第3の半導体装置の製造装置(第3の製造装置)は、加熱機構としてリングヒーターの代わりにレーザー光源を備えている点が第1の製造装置と異なっている。従って、第1の製造装置と同様な構成部分については簡単に述べる。
【0042】
図6は、第3の製造装置の構成を示す断面図である。同図に示すように、第3の製造装置は、半導体基板を保持するための保持チャックと、半導体基板10を洗浄する洗浄液33を吐出するための吐出ノズル32と、レーザー光42を発振するためのレーザー光源41と、レーザー光源41からのレーザー光42を半導体基板10のベベル部12(図1参照)へ集光させるレーザー集光レンズ43とを備えている。なお、レーザー光42はレーザー光源41より発振され、レーザー集光レンズ43により半導体基板10上に集光されることで、半導体基板10のベベル部を局所的に加熱することができる。また、半導体基板10を回転させながらレーザー光42を照射することにより、半導体基板10の辺縁部全体を加熱することができる。
【0043】
次に、第3の製造装置を用いた半導体基板の洗浄方法について説明する。
なお、上述の第1の実施形態の製造方法と同様な部分は簡略化して述べる。
【0044】
最初に、半導体基板10を第3の製造装置のチャンバー(図示せず)内に挿入し、保持チャック31により所定の場所に固定する。その後、半導体基板10を回転させながら、半導体基板のエッジ部およびベベル部にレーザー光42を照射する。ここで、例えば炭酸ガスレーザー(波長が10.6μm)を用いて、出力0.5Wで3分間の照射を行う。また、この時の半導体基板10の回転数は例えば500rpmである。
【0045】
次に、半導体基板10のエッジ部およびベベル部に向けて吐出ノズル32より例えば純水33を吐出することで、半導体基板10に付着したポリマー膜21を除去する。以上の方法により、半導体基板10の洗浄を行うことができる。
【0046】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、レーザー照射により半導体基板10のエッジ部およびベベル部を選択的に加熱することで、該ベベル部に付着したポリマーの結合の一部を切断させ、ポリマー膜21を脆化させることができる。これにより、半導体基板10とポリマー膜21との密着性が悪化するため、比較的容易にポリマー膜21を除去することが可能となる。その結果、パーティクルが製品に混入することを抑制でき、良好な歩留まりで半導体装置を製造することができる。
【0047】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法では、加熱機構としてレーザーを用いることで、第1の実施形態に比べてより局所的に半導体基板10を加熱することが可能となる。これにより、半導体基板10に形成された素子に与える熱影響を小さくすることができるため、素子特性の劣化を引き起こすことなく、半導体装置を製造することができる。
【0048】
また、本実施形態の製造方法で用いるレーザーの波長としては、1μm以上であることが望ましい。ここで、ドライエッチング時に生成するポリマー膜21の主成分はフルオロカーボン系の物質であり、ポリマー膜21はC−H結合およびC−F結合から主に構成されている。そして、これらの結合の波長吸収帯は赤外線領域(1μm以上)に広く存在する。従って、赤外線領域(1μm以上)の波長を有するレーザーを用いることで、より効果的にポリマーの結合を切断させることができる。
【0049】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置について図6を参照しながら説明する。なお、本実施形態における第4の半導体装置の製造装置(第4の製造装置)は、加熱機構として、リングヒーターの代わりにノズルを備えている点が上述の第1の製造装置と異なっている。従って、第1の実施形態と同様な構成部分については、簡単に述べる。
【0050】
図7は、第4の製造装置の構成を示す断面図である。同図に示すように、第4の製造装置は、半導体基板10を保持するための保持チャック31と、半導体基板10を洗浄するための吐出ノズル32と、半導体基板10のエッジ部およびベベル部に水蒸気52を吐出するためのノズル51とを備えている。
【0051】
第4の製造装置では、水蒸気発生装置(図示せず)で生成された水蒸気52をノズル51より半導体基板10へ供給することで、半導体基板10のベベル部を加熱することができる。
【0052】
次に、第4の製造装置を用いた半導体基板の洗浄方法について説明する。なお、上述の第1の実施形態の製造方法と同様な部分は簡略化して述べる。
【0053】
最初に、半導体基板10を第4の製造装置のチャンバー(図示せず)内に挿入し、保持チャック31により所定の場所に固定する。その後、半導体基板10を回転させながら、半導体基板10のエッジ部およびベベル部に向けて、ノズル51より水蒸気52を吐出する。ここでは、水蒸気52を例えば1500mL/minの流量で2分間噴出する。また、半導体基板10の回転数は例えば1000rpmである。
【0054】
次に、半導体基板10のエッジ部およびベベル部に向けて吐出ノズル32より例えば純水33を吐出することで、半導体基板10に付着したポリマー膜21を除去する。以上の方法により、半導体基板10の洗浄を行うことができる。
【0055】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、水蒸気52により半導体基板10のエッジ部およびベベル部を選択的に加熱することで、該ベベル部に付着したポリマー膜21を膨潤させ、ポリマーの結合の一部を切断させることができる。これにより、ポリマー膜21を脆化させることで、ポリマー膜21と半導体基板10との密着性が悪化するため、比較的容易にポリマー膜21を除去することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の半導体装置の製造方法では、水蒸気を用いることにより、比較的低温(約100℃)で半導体基板を加熱できるため、半導体基板10に形成された素子に与える熱影響を抑えることができ、素子特性の劣化を引き起こすことなく半導体装置を製造することができる。
【0057】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置について図8を参照しながら説明する。なお、本実施形態における第5の半導体装置の製造装置(第5の製造装置)は、第1の製造装置に冷却ガス導入口がさらに備えられた構成となっている。従って、第1の製造装置と同様な構成部分については、簡単に述べる。
【0058】
図8は、第5の製造装置の構成を示す断面図である。同図に示すように、第5の製造装置は、半導体基板10を保持するための保持チャック31と、半導体基板10を洗浄するための吐出ノズル32と、半導体基板10のベベル部12(図1参照)における下面と側面と上面とを囲むようにコの字型に形成された抵抗加熱型のリングヒーター30と、半導体基板10のベベル部に冷却ガスを供給するための冷却ガス導入口61とを備えている。
【0059】
第5の半導体装置では、冷却ガス62を冷却ガス導入口61より半導体基板10へ供給することで、半導体基板10のベベル部を冷却することができる。
【0060】
次に、第5の製造装置を用いた半導体基板の洗浄方法について説明する。なお、上述の第1の実施形態の製造方法と同様な部分は簡略化して述べる。
【0061】
最初に、半導体基板10を第5の製造装置のチャンバー(図示せず)内に挿入し、保持チャック31により所定の場所に固定する。続いて、半導体基板10のエッジ部およびベベル部を囲むように、リングヒーター30を設置し、例えば300℃で3分間、半導体基板10を加熱する。
【0062】
次に、冷却ガス導入口61より冷却ガス62を半導体基板10のエッジ部およびベベル部に向けて吹き付ける。ここで、冷却ガス62としては、例えば液体窒素(77K)で冷却したHe(ヘリウム)ガスを用いる。この場合、半導体基板10のベベル部に作用するHeガスの温度は約−100℃となる。
【0063】
続いて、半導体基板10のエッジ部およびベベル部に向けて吐出ノズル32より例えば純水33を吐出することで、半導体基板10に付着したポリマー膜21を除去する。以上の方法により、半導体基板10の洗浄を行うことができる。
【0064】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、リングヒーター30により半導体基板10のエッジ部およびベベル部を選択的に加熱することで、該ベベル部に付着したポリマーの結合の一部を切断させることができ、ポリマー膜21を脆化させることできる。さらに、半導体基板10のベベル部を加熱した後、急激に冷却することで、該ベベル部に熱ストレスを付加することにより、ポリマー膜21と半導体基板10との密着性をより悪化させることができる。その結果、本実施形態の半導体装置の製造方法では、より効率的にポリマー膜21を除去することが可能となる。
【0065】
なお、本発明における各実施形態の製造方法では、銅配線を形成する際のドライエッチング工程後における半導体基板の洗浄方法を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。また、ポリマー膜を除去する工程では、純水を半導体基板へ噴出して洗浄する物理的な方法を挙げたが、これに限定されるものではなく、化学な洗浄方法を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の半導体装置の製造方法およびそれに用いられる製造装置は、例えばドライエッチング工程後の半導体基板の洗浄に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる半導体基板の周辺部を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る灰化処理後の半導体基板のベベル部を示す断面図である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ第1の製造装置の構成を示す断面図および上面図である。
【図4】第1の実施形態における半導体基板の加熱温度とベベル部における欠陥数を示す図である。
【図5】本発明の第2の製造装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の製造装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の製造装置の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の第5の製造装置の構成を示す断面図である。
【図9】従来の第1の半導体装置の洗浄装置の概略を示す断面図である。
【図10】従来の第2の半導体装置の洗浄装置の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
10 半導体基板
11 ベベル端面
12 ベベル部
13 保護膜
21 ポリマー膜
30 リングヒーター
31 保持チャック
32 吐出ノズル
33 洗浄液
35 酸素ガス導入口
41 レーザー光源
42 レーザー光
43 レーザー集光レンズ
51 ノズル
52 水蒸気
61 冷却ガス導入口
62 冷却ガス
81 裏面洗浄用ノズル
82 回転チャック
83 半導体基板
84 表面洗浄用ノズル
85 洗浄チャンバー
90 半導体基板
91 ボウル
92 洗浄機構
93 洗浄ブラシ
94 ブラシ
95 移送装置
96 真空チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持機構に保持された半導体基板のベベル部を加熱機構を用いて加熱する工程(a)と、
前記工程(a)の後、前記半導体基板のベベル部を洗浄液により洗浄する工程(b)とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)では、水蒸気により前記半導体基板のベベル部を加熱する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)では、前記ベベル部における上面と側面と下面とを覆うヒーターを用いて加熱する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)では、レーザーを照射することにより前記半導体基板のベベル部を加熱する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記レーザーの波長は1μm以上である請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)では、前記半導体基板のベベル部に、酸素を供給しながら前記ベベル部を加熱する請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(a)では、加熱温度が250度以上である請求項3〜6のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(a)の後、且つ、前記工程(b)の前に、前記半導体基板のベベル部を冷却する工程(c)をさらに備えている請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記(b)では、前記半導体基板のベベル部に水を吐出する請求項1〜8のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記工程(a)の前に、ドライエッチングにより前記半導体基板を加工する工程をさらに備えている請求項1〜9のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体基板を保持するための基板保持機構と、
前記半導体基板のベベル部を加熱するための加熱機構と、
洗浄液を吐出し、前記半導体基板のベベル部を洗浄するための洗浄機構とを備えている半導体装置の製造装置。
【請求項12】
前記加熱機構は、前記半導体基板のベベル部の上面と下面と側面とを覆うヒーターである請求項11に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項13】
前記加熱機構は、水蒸気を吐出するノズルを有している請求項11に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項14】
前記加熱機構は、レーザーを照射する機構である請求項11に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項15】
前記レーザーの波長は1μm以上である請求項14に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項16】
前記半導体基板のベベル部に酸素を導入するための酸素ガス導入口をさらに備えている請求項11〜15のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項17】
前記半導体基板のベベル部を冷却するための冷却ガス導入口をさらに備えている請求項11〜16のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−130893(P2008−130893A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315508(P2006−315508)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】