説明

半導体装置の製造方法

【課題】接着シートを半導体ウエハと同時に切断可能である半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体であり、該半導体ウエハが区分されている積層体を作製する工程、前記半導体ウエハ及び前記接着シートを切断し、次いで前記接着シートと前記ダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップを得る工程、前記接着シート付き半導体チップを半導体チップ搭載用支持部材に接着する工程とを備え、前記接着シートが、高分子量成分を少なくとも含有し、Bステージ状態の前記接着シートの25℃における破断伸びが40%超であり、25℃で900Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率が4000MPa未満であり、前記ダイシングテープが、引っ張り変形時に降伏点を有さないものである半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置の製造方法として、半導体ウエハの裏面に接着シートとダイシングテープを貼付け、その後、半導体ウエハ、接着シート及びダイシングテープの一部をダイシング工程で切断する半導体ウエハ裏面貼付け方式が、一般的に用いられている。この例として、接着シートをダイシングテープ上に付設し、これを半導体ウエハに貼り付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
この半導体ウエハ裏面貼付け方式の製造方法では、半導体ウエハのダイシング時に接着シートも同時に切断することが必要であるが、ダイヤモンドブレードを用いた一般的なダイシング方法においては、半導体ウエハと接着シートとを同時に切断するために切断速度を遅くする必要があり、コストの上昇を招いていた。
【0004】
1パッケージあたりの記憶容量を増大させる目的で、近年、パッケージ中のチップの積層枚数は増加している。それに従い、チップ又は半導体ウエハの厚さは、バックグラインド工程等で薄くすることが行われており、厚さ100μm以下、より薄くは70μm以下、さらに薄くは55μm以下、最も薄くは35μm以下の半導体ウエハが製造されている。
【0005】
半導体ウエハが薄くなると、ダイシング時に半導体ウエハが割れやすくなるため、製造効率が大幅に悪化し、上記の問題はさらに深刻になってきている。このような薄いウエハは反りやすく、割れやすいため、これに使用する接着シートは、従来のものより、より柔らかいことが必要になっている。
【0006】
一方、半導体ウエハを区分する方法として、半導体ウエハを完全に切断せずに、折り目となる溝を加工する方法や、切断予定ライン上の半導体ウエハ内部にレーザー光を照射して改質領域を形成する方法等、半導体ウエハを容易に区分する工程を施し、その後に外力を加えるなどして切断する方法が近年提案されている。
【0007】
前者の方法はハーフカットダイシング、後者の方法はステルスダイシング(例えば、特許文献5、6参照)と呼ばれる。これらの方法は、特に半導体ウエハの厚さが薄い場合にチッピング等の不良を低減する効果があり、カーフ幅を必要としないことから収率向上効果等を期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−226796号公報
【特許文献2】特開2002−158276号公報
【特許文献3】特開平02−032181号公報
【特許文献4】国際公開第04/109786号
【特許文献5】特開2002−192370号公報
【特許文献6】特開2003−338467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、上述のハーフカットダイシング又はステルスダイシングを用いて、上記半導体ウエハ裏面貼付け方式により半導体装置を製造するためには、接着シートを半導体ウエハと同時に切断する必要が生じるが、従来の一般的なダイシングテープを用いた場合には、接着シートを半導体ウエハと同時に切断することは困難である。特許文献4に記載される接着シートでは、この切断が可能なことが示されている。記載される接着シートよりも、より柔らかく伸びやすい接着シート、即ち、接着シートが高分子量成分を少なくとも含有する接着シートであって、Bステージ状態の前記接着シートの25℃における破断伸びが40%超であり、25℃で900Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率が4000MPa未満である接着シートである場合には、確かに切断可能であるが、従来のダイシングテープと接着シートの組合せでは、十分に満足できる破断ができなかった。
【0010】
しかし、ウエハの反りや割れを防止するために、これに使用する接着シートは、特許文献4に記載される接着シートより、未硬化状態においてより柔らかいシートが求められている。また、硬化後もやわらかいシートは、多段に積層した半導体パッケージ(スタックドパッケージ)等の用途では、反りが小さく、また応力緩和性が高いため、信頼性に優れるなど極めて重要である。
【0011】
しかしながら、従来の製造方法で用いられる接着シートは、低弾性であることと、外部応力による破断性は両立せず、接着シートと半導体ウエハを同時に切断することが困難であった。以上の点から、接着シートと半導体ウエハを同時に切断できる半導体装置の製造方法が求められていた。
【0012】
本発明は、通常に行われる接着シート及び半導体ウエハの切断条件において、接着シートを半導体ウエハと同時に切断可能である半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、(1)接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体であって、該半導体ウエハが区分されている積層体を作製する工程(工程I)、前記半導体ウエハ及び前記接着シートを切断し、次いで前記接着シートと前記ダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップを得る工程(工程II)、前記接着シート付き半導体チップを半導体チップ搭載用支持部材に接着する工程(工程III)とを備える、半導体装置の製造方法であって、
前記接着シートが、高分子量成分を少なくとも含有し、Bステージ状態の前記接着シートの25℃における破断伸びが40%超であり、25℃で900Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率が4000MPa未満であり、
前記ダイシングテープが、引っ張り変形時に降伏点を有さないものであることを特徴とする半導体装置の製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、(2)前記ダイシングテープが、一層以上の粘着剤層及び一層以上の基材層からなり、基材層の少なくとも一層が有機酸又は金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と、金属イオンとを含む材料からなることを特徴とする前記(1)に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、(3)前記金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料が、アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部が、金属の陽イオンによって分子間で疑似架橋を形成しているアイオノマー樹脂を含む材料であることを特徴とする前記(2)に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、(4)前記ダイシングテープの基材層が、エチレン−メタクリル酸共重合体基材、スチレン−ブチレン−エチレン共重合体基材、ポリ塩化ビニル基材、エチレン−酢酸ビニル共重合体基材、水添スチレン−ブタジエン共重合体基材、ポリエチレン基材、ポリプロピレン基材、塩素を含まないモノマを共重合したポリマー基材から選ばれる少なくとも1層を含むことを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【0017】
また、本発明は、(5)前記工程(I)において、半導体ウエハをハーフカットダイシング又はステルスダイシングにより区分することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、(6)前記工程(I)において、厚さが100μm以下の半導体ウエハをステルスダイシングにより区分し、工程(II)においてエキスパンドにより半導体ウエハ及び接着シートを切断することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、(7)前記工程(I)における接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体が、接着シートとダイシングテープを張り合わせてなるダイシングテープ一体型接着シートを用いて、該接着シートの上に半導体ウエハを積層して得られるものであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通常に行われる接着シート及び半導体ウエハの切断条件において、接着シートを半導体ウエハと同時に切断可能である半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における工程Iaの好適な一実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明における工程Ibの好適な一実施形態を示す概念図である。
【図3】本発明における工程Icの好適な一実施形態を示す概念図である。
【図4】本発明における工程Idの好適な一実施形態を示す概念図である。
【図5】本発明における工程Ibの好適な一実施形態を示す概念図である。
【図6】本発明における工程IIの好適な一実施形態を示す概念図である。
【図7】本発明における工程II後の半導体ウエハ及び接着シートが切断された状態を示す概念図である。
【図8】本発明における工程Id、工程Ib及び工程IIの一実施形態を示す概念図である。
【図9】本発明における工程IIIの好適な一実施形態を示す概念図である。
【図10】本発明における工程IIIの他の好適な実施形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法は、接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体であって、該半導体ウエハが区分されている積層体を作製する工程(工程I)、前記半導体ウエハ及び前記接着シートを切断し、次いで前記接着シートと前記ダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップを得る工程(工程II)、前記接着シート付き半導体チップを半導体チップ搭載用支持部材に接着する工程(工程III)とを備える、半導体装置の製造方法であって、前記接着シートが、高分子量成分を少なくとも含有し、Bステージ状態の前記接着シートの25℃における破断伸びが40%超であり、25℃で900Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率が4000MPa未満であり、前記ダイシングテープが、引っ張り変形時に降伏点を有さないものであることを特徴とする。
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0024】
(ダイシングテープ)
本発明の製造方法で用いるダイシングテープは、ダイシングテープの引っ張り変形時に降伏点を有さないものである。ここで、「降伏」とは、荷重−伸び線図、応力−ひずみ線図等で見られるように物体に働く応力が弾性限度を超えると荷重又は応力の増大がないのに変形が徐々に進行する現象のことを指し、「降伏点」とは、弾性挙動の最大荷重、最大応力値における点のことを指す。降伏点を有するダイシングテープとは、幅10mm×長さ30mmの短冊形状のダイシングテープについて、万能試験機(株式会社オリエンテック製、テンシロンUCT−5T型)を用い、温度25℃、引張速度5mm/分の条件で引っ張り試験を行い、ダイシングテープが破断するまでの応力とひずみを測定し、ひずみをX軸、応力をY軸にそれぞれプロットした場合に、傾きdY/dXが正の値から0又は負の値に変化する応力値をとるものである。すなわち、降伏点を有さないダイシングテープとは、前記傾きdY/dXが正の値から0又は負の値に変化する応力値をとらないものである。
【0025】
降伏点を有するダイシングテープを用いた場合、前記工程IIにおいてダイシングテープに外力を加えて半導体ウエハ及び接着シートを切断する際に、半導体ウエハ及び接着シートに応力がかからず、周辺のダイシングテープばかりが伸びて変形を起こすため、半導体ウエハ及び接着シートが切断できないか又は切断残りが生じ、本発明の目的を達成できない。
【0026】
これに対し、本発明では降伏点を有さないダイシングテープを用いることにより、応力が半導体ウエハ及び接着シートにかかりやすく、破断性が良くなり、半導体ウエハ及び接着シートを同時に切断することができる。特に、ダイシングテープを放射状に伸展することによって均一にチップ間隔を広げる、いわゆるエキスパンドにより半導体ウエハ及び接着シートを切断する場合、ダイシングテープが均一に伸長するので破断性が良くなる。さらに、薄い半導体ウエハ、例えば、厚さが100μm以下の半導体ウエハを用いた場合は、チッピング等の不良を低減するべくステルスダイシング又はハーフカットダイシングにより半導体ウエハを区分した後、エキスパンドにより半導体ウエハ及び接着シートを切断することが好ましいが、この際に降伏点を有さないダイシングテープを用いることにより、半導体ウエハ及び接着シートを同時に切断することができるため好適である。
【0027】
本発明の製造方法で用いるダイシングテープは、一層以上の粘着剤層及び一層以上の基材層からなることが好ましく、一層の粘着剤層と一層の基材層からなることがより好ましい。また、前記基材層は、少なくとも一層が、有機酸又は金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と、金属イオンとを含む材料からなること、すなわち、有機酸と金属イオンとを含む材料、又は金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料からなることが好ましく、金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料からなることがより好ましい。
【0028】
前記有機酸と金属イオンとを含む材料としては、有機酸と金属の陽イオンを含むものである。有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、フェノール性水酸基を有する化合物等が挙げられ、これらのなかでも、錯体を形成しやすい点で、カルボン酸が好ましい。金属イオンとしては、例えば、周期率表第IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、VIIB及びVIIIBから選択される1種又は2種以上の金属カチオンが挙げられ、これらのなかでも、架橋点を形成しやすく、安価で低毒性の観点から亜鉛イオンまたはナトリムイオンが好ましく、亜鉛イオンがより好ましい。金属イオンを含有させるには、有機酸に、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩等の形態で添加すれば良く、具体的には酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが用いられる。有機酸と金属イオンを含む材料における有機酸の含有量は、ダイシングテープの伸長性を保持するという観点から95〜99.9質量%であることが好ましく、金属イオンの含有量は上記と同様の観点から0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0029】
金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料としては、アミノ基、イミノ基、水酸基、エーテル基、ピリジル基、イミダゾリル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、スルホン基、オキシム基、ヒドロキサム基、リン酸基、ケトン基などの金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料であり、これらのなかでも、降伏点を有さない上、低温での伸びが優れ、フィルムに成形した際の伸びの異方性が小さい点で、カルボキシル基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料が好ましく、アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部が金属の陽イオンによって分子間で擬似架橋を形成しているアイオノマー樹脂を含む材料であることがより好ましい。前記アクリル系共重合体1分子中のカルボキシル基の含有量は、0.05〜5質量%であることが好ましい。また、前記アクリル系共重合体1分子中のカルボキシル基の10〜100%が金属の陽イオンによって分子間で擬似架橋を形成していることが好ましい。
【0030】
前記アクリル系共重合体としては、オレフィン系単量体とα,β−不飽和カルボン酸単量体との共重合体が好ましい。オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられ、これらのなかでも、エチレンが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;などが挙げられ、これらのなかでも、(メタ)アクリル酸が好ましい。さらに、単量体として、前記オレフィン系単量体又はα,β−不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な単量体、例えば、(メタ)アクリル酸ラウリル(メタ)アクリロニトリル、α−クロル(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有ビニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族系単量体;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリート等の水酸基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミドおよびそのN置換化合物;アリルアルコール等の不飽和アルコール;(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を用いても良い。これらの単量体を共重合してなるアクリル系共重合体のなかでも、エチレン−メタクリル酸共重合体が好ましい。
【0031】
アクリル系重合体の重量平均分子量は、2万〜30万の範囲であることが好ましい。なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算して求めることができる。
【0032】
金属イオンとしては、例えば、周期率表第IA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVA、IVB、VA、VB、VIA、VIB、VIIB及びVIIIBから選択される1種又は2種以上の金属の陽イオンが挙げられ、これらのなかでも、亜鉛イオンまたはナトリムイオンが好ましく、亜鉛イオンがより好ましい。金属イオンを含有させるには、金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物に、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩等の形態で添加すれば良く、具体的には酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが用いられる。
【0033】
これらのなかでも、エチレン−メタクリル酸共重合体のカルボキシル基の一部が亜鉛イオンによって分子間で擬似架橋を形成しているアイオノマー樹脂が好ましい。このようなアイオノマー樹脂の市販品としては、三井・デュポンポリケミカル株式会社製、「ハイミラン」が挙げられる。
【0034】
本発明では、金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンを含む材料における金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物の含有量は、ダイシングテープの伸長性を保持するという観点から95〜99.9質量%であることが好ましく、金属イオンの含有量は上記と同様の観点から0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0035】
本発明では、ダイシングテープの基材層が一層以上の層からなる場合、少なくとも一層が、前記有機酸又は金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と、金属イオンとを含む材料からなることが好ましく、残りの層はエチレン−メタクリル酸共重合体基材、スチレン−ブチレン−エチレン共重合体基材、ポリ塩化ビニル基材、エチレン-酢酸ビニル共重合体基材、水添スチレン-ブタジエン共重合体基材、ポリエチレン基材、ポリプロピレン基材、塩素を含まないモノマを共重合したポリマー基材から選ばれる少なくとも1層を含むことが好ましい。
【0036】
前記ダイシングテープは、接着シートを一時的に固定することが出来る粘着剤層を基材層の片面に備えており、該粘着剤層は一層以上から形成されていることが好ましい。粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリルゴム、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を主成分とする粘着剤が挙げられ、これらのなかでもアクリルゴムを主成分とする粘着剤が好ましい。アクリルゴムには、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−2ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−2,3エポキシプロピル、アクリロニトリルなど極性基、官能基を有する一般的なアクリルモノマをアクリルゴムの粘着剤に使用できるが、より好ましくは、少なくともアクリル酸−2エチルヘキシル、アクリル酸−2ヒドロキシエチルの2成分を含むアクリルゴムに、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートをウレタン結合で反応させエネルギー線照射硬化部を持たせている光反応性アクリルゴムを粘着剤に含むものが良い。
【0037】
ダイシングテープは、基材層の片面に粘着剤層を構成する粘着剤を塗布乾燥することによって作成できる。基材層は通常フィルム状であるが、前記基材層を構成する材料をフィルムに成型する際、伸びを均一にする為にウエハラミネート時に張力を調整することが好ましい。また、基材層は、必要に応じてプライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理を行っても良い。粘着剤層を構成する粘着剤は、特に液状成分の比率、高分子量成分のガラス転移温度(以下、「Tg」と言う。)を調整することによって適度なタック強度を有することが好ましい。
【0038】
上記ダイシングテープの厚さ(A)は、特に制限はなく、接着シートの厚さ(B)やダイシンテープ一体型接着シートとして用いた場合の用途によって適宜、定められるものであるが、経済性が良く、テープとしての取扱い性が良いという点で5〜300μmであることが好ましく、10〜160μmであることがより好ましい。また、ダイシングテープにおける粘着剤層の厚さは5〜70μmであることが好ましく、10〜30μmであることが好ましい。前記粘着剤層の厚さが5μm未満では、粘着力が低下する傾向にあり、70μm超ではコストアップにつながり、ダイシング時にウエハが破損しやすくなる。また、ダイシングテープにおける基材層の厚さは5〜300μmであることが好ましく、40〜150μmであることがより好ましく、110〜140μmであることが特に好ましい。前記基材層の厚さが5μm未満ではダイシング時に基材層が切断される可能性があり、300μm超ではコストアップにつながる可能性がある。さらに基材層が、前記アイオノマー樹脂を含む材料からなる層を含む場合、その層の厚さは全基材層の厚さの2割以上であることが好ましい。
【0039】
(接着シート)
本発明の製造方法で用いる接着シートは、それを介してダイシングテープと半導体ウエハを接着するものであり、前記接着シートは、高分子量成分を少なくとも含有し、Bステージ状態の前記接着シートの25℃における破断伸びが40%超であり、25℃で900Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率が4000MPa未満であることにより、接着シートと半導体ウエハを同時に切断することが可能になる。このような接着シートとしては、例えば、日立化成工業株式会社製、商品名:HS−230、HS−270、HS−260等を用いることができる。
【0040】
前記接着シートが高分子量成分を含んでいない場合、接着シートを構成する組成物をシート状に成形した際に、シートの均一性及び柔軟性が不十分となり、前記破断伸びが40%以下では、接着シートが割れやすくなり、前記弾性率が4000MPa以上では、接着シートが割れやすくなり、かつ、ウエハ貼り付け時の接着性が低くなる傾向にある。
【0041】
前記破断伸びを40%超にするには、接着シートを構成する組成物の可とう性、じん性を向上させることが有効であり、例えば、高分子量成分の量、高分子量成分のTg、フィラーの量を適宜調整することが有効である。
【0042】
前記破断伸びは、40〜300%であることが好ましく、100〜200%であることがより好ましい。接着シートの破断伸びは、幅5mm、チャック間距離20mm、厚さ50μmの試料について、引っ張り試験機を用いて引っ張り速度0.2m/分で応力、ひずみ曲線を測定し、それから、下記式により得たものである。
【0043】
破断伸び(%)=((破断時の試料のチャック間長さ(mm)−20)/20)×100
また、前記弾性率を4000MPa未満にするには、例えば、アクリルゴムなどの柔軟な高分子量成分の量を適宜調整することが有効である。前記弾性率は1000〜4000MPaであることが好ましく、1000〜3000MPaであることがより好ましい。弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE−V4)を使用し、接着シートを構成する組成物の硬化物に引張荷重をかけて、周波数900Hz、昇温速度5℃/分の条件で−50℃から100℃まで測定する、温度依存性測定モードによって測定できる。
【0044】
また、前記接着シートは、Bステージ状態の接着シートの60℃で10Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率が0.1〜20MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましく、0.1〜5MPaであることが特に好ましい。前記弾性率が0.1MPa未満であると、半導体ウエハに貼付した後に接着シートが半導体ウエハから剥離したり、ずれたりする傾向がある。前記弾性率が20MPa超であると、半導体ウエハへのラミネート性が悪化する傾向がある。前記弾性率を0.1〜20MPaの範囲に調整する手段として、弾性率の増大に寄与するフィラーの含有量と弾性率の低減に寄与するアクリルゴムなどの柔軟な高分子量成分の含有量を適宜調整するなどがある。
【0045】
また、前記接着シートは、ダイシングテープの粘着剤層面と貼り合わせた時、ダイシングテープと接着シートとの90°はく離試験による接着力が、20N/m以上100N/m以下であることが好ましい。前記接着力が20N/m以上100N/m以下であることにより、工程IIにおいて半導体ウエハと接着シートを切断する際に、ダイシングテープと接着シートとがはく離せず、結果として接着シートが破断し易く、さらには、次の接着シートとダイシングテープ間の剥離がし易く、半導体チップのピックアップ性に優れる点で好ましい。前記接着力が20N/m未満の場合、ダイシングテープを延伸した時に、半導体ウエハが破断し、個片化して半導体チップになる際に内部応力が開放されて、半導体チップとダイシングテープの界面がはく離し、反りが生じるため、徐々にピックアップが困難になる傾向がある。また、接着力が100N/m超であると、ピックアップが困難でチップの割れ等が生じ易くなる。前記接着力を20N/m以上100N/m以下にする手段として、接着力の増大に寄与する液状エポキシ成分の含有量と接着力の低減に寄与するフィラーの含有量を適宜調整するなどがある。
【0046】
さらに、前記接着シートは、上記各特性に加えて、半導体素子搭載用支持部材に、半導体チップを実装する場合に要求される耐熱性及び耐湿性を有するものであることが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法で用いられる接着シートは、高分子量成分を少なくとも含有する。高分子量成分は、前記接着シートの特性を満足するものであれば特に制限はないが、接着シートの粘着性や強度を良好なものとするために、Tgが−30℃〜50℃で、重量平均分子量が5万〜100万であることが好ましい。前記Tgが50℃を超えると、接着シートの柔軟性が低い点で不都合であり、Tgが−30℃未満であると、接着シートの柔軟性が高すぎるため、半導体ウエハ切断時に接着シートが切断し難い点で都合が悪い。また、重量平均分子量が5万未満であると接着シートの耐熱性が徐々に低下する点で不都合であり、重量平均分子量が100万を超えると、接着シートの流動性が徐々に低下する点で不都合である。
【0048】
半導体ウエハ切断時における、接着シートの切断性や耐熱性の観点から、Tgが−20℃〜40℃で重量平均分子量が10万〜90万の高分子量成分がより好ましく、Tgが−10℃〜30℃で重量平均分子量が50万〜90万の高分子量成分が特に好ましい。
【0049】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値であり、ポンプとして株式会社日立製作所製、商品名:L−6000を使用し、カラムとして日立化成工業株式会社製、商品名:ゲルパック(Gelpack)GL−R440、ゲルパックGL−R450及びゲルパックGL−R400M(各10.7mm(直径)×300mm)をこの順に連結したカラムを使用し、溶離液としてテトラヒドロフラン(以下、「THF」と言う。)を使用し、試料120mgを、THF:5mlに溶解させたサンプルについて、流速1.75mL/分で測定することができる。
【0050】
高分子量成分として、具体的には、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ブタジエンゴム、アクリルゴム、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート及びこれらの混合物などが挙げられる。特に、官能基を有する重量平均分子量が10万以上である高分子量成分が好ましく、該官能基はポリマー鎖中に有していても、ポリマー鎖末端に有していてもよい。前記官能基としては、例えば、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。これらのなかでも、エポキシ基を有する高分子量成分が好ましく、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどの官能性モノマを含有するモノマを重合して得た、重量平均分子量が10万以上であるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体等が好ましい。
【0051】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリルエステル共重合体、エポキシ基含有アクリルゴム等を挙げることができ、エポキシ基含有アクリルゴムを用いることがより好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体等からなるゴムである。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体中のエポキシ基含有モノマの量は、0.5〜6.0質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがより好ましく、0.8〜5.0質量%であることが特に好ましい。前記エポキシ基含有モノマの量が0.5〜6.0質量%であると、接着シートの接着力が確保し易く、またゲル化を防止し易くなる。
【0052】
前記高分子量成分の含有量は、接着シートを構成する組成物の全体積の20〜90体積%であることが好ましい。
【0053】
前記接着シートは、上記特性を満足するものであれば特に制限はないが、適当なタック強度を有し、シート状での取り扱い性が良好であることから、高分子量成分の他に、熱硬化性成分及びフィラーを含むことが好ましく、さらにこれらの他に、硬化促進剤、触媒、添加剤、カップリング剤等を含んでも良い。
【0054】
熱硬化性成分としては、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂及びそれらの樹脂硬化剤などが用いられ、耐熱性が高い点で、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;多官能エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;複素環含有エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。これらのなかでも、ニ官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0055】
本発明において用いられるエポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。例えば、アミン類;ポリアミド;酸無水物;ポリスルフィド;三フッ化ホウ素;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類;フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂;などが挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が好ましい。
【0056】
前記熱硬化性成分の含有量は、接着シートを構成する組成物の全質量の10〜90%であることが好ましい。
【0057】
フィラーは、Bステージ状態の接着シートの破断強度、破断伸びの低減、接着シートを構成する組成物の取り扱い性の向上、熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、チクソトロピック性の付与等を目的として配合することが好ましい。フィラーとしては、無機フィラーが好ましく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物等が挙げられる。熱伝導性向上のためには、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。
【0058】
また、溶融粘度の調整や、チクソトロピック性の付与のためには、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が好ましい。また、耐湿性を向上させるためにはアルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、アンチモン酸化物等が好ましい。これらフィラーの形状については特に制限はない。
【0059】
前記フィラーの配合量は、接着シートを構成する組成物の全質量の5〜70質量%であることが好ましく、35〜60質量%であることがより好ましい。前記配合量が多くなると、接着シートの貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題が起きやすくなるので50質量%以下とすることが特に好ましい。一方、前記配合量が少ない場合は、接着シートの耐熱性が低下する傾向がある。また、フィラーの比重は1〜10g/cmであることが好ましい。
【0060】
接着シートを構成する組成物は、高分子量成分、さらに必要に応じて熱硬化性成分、フィラー及び他の成分を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製した後、キャリアフィルム上に上記ワニスの層を形成させ、加熱乾燥した後、キャリアフィルムを除去して得ることができる。上記の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。上記の加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であれば特に制限はないが、通常、60℃〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
【0061】
上記接着シートの製造における、上記ワニスの調製に用いる有機溶媒は、材料を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等を使用することが好ましい。前記有機溶媒の使用量は、接着シート製造後の残存揮発分が、全質量基準で、0.01〜3質量%であれば特に制限はないが、耐熱信頼性の観点からは全質量基準で、0.01〜2.0質量%が好ましく、全質量基準で、0.01〜1.5質量%がさらに好ましい。
【0062】
接着シートは、単層構造でもよいが、切断可能である範囲で多層構造としてもよい。多層構造とする場合は、接着シートを複数層重ね合わせても、接着シートと他のフィルムを重ね合わせてもよい。例えば、熱可塑樹脂フィルム、粘着剤、熱硬化樹脂フィルムを組み合せ、それらフィルムの両面に接着シートを重ね合わせて、多層構造の接着シートにしても良い。
【0063】
前記接着シートの厚さ(B)は、特に制限はなく、50μm以下であることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。前記厚さ(B)が1μm未満であると応力緩和効果や接着性が、徐々に乏しくなる傾向があり、50μmを超えると経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えられず、破断が困難になる傾向がある。なお、接着性が高く、また、半導体装置を薄型化できる点で、前記接着シートの厚さ(B)は3〜40μmであることがより好ましく、パッケージが薄くなり、ダイシングテープの厚さ(A)が100μm程度の場合に、破断性が向上することから、5〜20μmであることがさらに好ましい。
【0064】
本発明の製造方法では、接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体を用いるが、半導体ウエハの厚さ(C)と接着シートの厚さ(B)との比、(C)/(B)は、2〜20であることが好ましい。半導体ウエハに対して接着シートが薄いと、半導体ウエハの切断の衝撃で接着シートが切断しやすくなる点で好ましく、逆に厚いと、接着シートが切断されずに半導体チップ間に残り、半導体チップのピックアップ性が悪化する傾向にある。また、ダイシングテープの厚さ(A)と接着シートの厚さ(B)との比、(A)/(B)は、2〜30であることが好ましく、10〜25であることがより好ましく、15〜25であることが特に好ましい。例えば、接着シート、ダイシングテープの膜厚の組合せとしてはダイシングテープ:110μm、接着シート:10μm、この場合の(A)/(B)は11、ダイシングテープ:110μm、接着シート:5μm、この場合の(A)/(B)は22である。(A)/(B)が2未満であると、ダイシングテープに比べて接着シートが厚いため、ダイシングテープのみの部分に比べて接着シートが積層している部分が伸びにくく、結果として接着シートが徐々に割れにくくなるため好ましくない。特に、半導体ウエハの端部にはみ出した接着シートが破断しにくくなる。一方、(A)/(B)が30を超えると、ダイシングテープに比べて、接着シートが薄いため、ダイシングテープ部分に張力が掛かった場合に、早い段階で半導体ウエハの端部にはみ出した接着シートが割れてしまい、半導体ウエハに十分に張力が掛かる前に、接着シートが割れた部分のみに張力が不均一に掛かり、結果として接着シートが部分的に割れにくくなるため好ましくない。
【0065】
本発明の製造方法では、前記ダイシングテープと接着シートをそれぞれ個別に用いても構わないが、半導体ウエハへのラミネート工程が一回で済み、作業の効率化が可能となる点で、接着シートとダイシングテープを張り合わせたダイシングテープ一体型接着シートとして用いることが好ましい。前記ダイシングテープ一体型接着シートは、接着シートをダイシングテープの粘着剤層面に積層することで得ることができる。ダイシングテープの粘着剤層面に接着シートを積層する方法としては、印刷の他、予め作成した接着シートの粘着剤層面をダイシングテープ上にプレス、ホットロールラミネートする方法が挙げられるが、連続的に製造でき、効率が良い点でホットロールラミネート方法が好ましい。積層に先立って、接着シートを予めウエハ形状に形成することが好ましい。ウエハ形状に形成する方法としては、予め別のフィルム上にワニスを塗工、乾燥しフィルム状接着剤を形成し、これをウエハ形状に打ち抜き加工する方法が挙げられる。
【0066】
半導体ウエハを接着シート面にラミネートする方法は、ウエハの反りを小さくし、室温(25℃)での取扱い性を良くするため、40〜100℃の間で行なうことが好ましい。
【0067】
(半導体装置の製造法)
以下に、本発明の半導体装置の製造方法の各工程I〜IIIについて説明する。
【0068】
本発明の半導体装置の製造方法は、接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体であって、該半導体ウエハが区分されている積層体を作製する工程(工程I)、前記半導体ウエハ及び前記接着シートを切断し、次いで前記接着シートと前記ダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップを得る工程(工程II)、前記接着シート付き半導体チップを半導体チップ搭載用支持部材に接着する工程(工程III)とを備えるものである。
【0069】
以下、図1〜図10に基づいて本発明の半導体装置の製造方法の好適な一実施形態を説明する。
【0070】
[工程I]
まず、工程Iでは、接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体であって、該半導体ウエハが区分されている積層体を作製する。
【0071】
本工程Iでは、接着シートとダイシングテープをそれぞれ個別に用いる場合と、ダイシングテープ一体型接着シートとして用いる場合があり、作業の効率が良い点でダイシングテープ一体型接着シートを用いる方が好ましい。
【0072】
接着シートとダイシングテープをそれぞれ個別に用いる場合は、例えば、半導体ウエハに接着シートを貼り付ける工程(工程Ia)と、半導体ウエハを区分する工程(工程Ib)と、接着シートにダイシングテープを貼り付ける工程(工程Ic)とを、(工程Ia)−(工程Ib)−(工程Ic)又は(工程Ib)−(工程Ia)−(工程Ic)若しくは(工程Ia)−(工程Ic)−(工程Ib)の順で備える。ダイシングテープ一体型接着シートとして用いる場合は、半導体ウエハにダイシングテープ一体型接着シートを貼り付ける工程(工程Id)と、半導体ウエハを区分する工程(工程Ib)とを、(工程Id)−(工程Ib)又は(工程Ib)−(工程Id)の順で備える。
【0073】
まず、接着シートとダイシングテープをそれぞれ個別に用いる場合について、説明する。
【0074】
図1には、半導体ウエハAに接着シート1を貼り付ける工程(工程Ia)を、図2には、半導体ウエハAの切断予定ライン4上にレーザー光を照射して、ウエハ内部に改質領域(切断予定部)5を形成して、半導体ウエハAを区分する工程(工程Ib)を、図3には、接着シート1に粘着剤層2aと基材層2bとからなるダイシングテープ2を貼り付ける工程(工程Ic)を、それぞれ示す。
【0075】
半導体ウエハAとしては、単結晶シリコンの他、多結晶シリコン、各種セラミック、ガリウム砒素等の化合物半導体などが使用される。半導体ウエハの厚さは特に制限されないが、20〜1000μmであることが好ましく、30〜100μmであることがより好ましい。
【0076】
上記工程Iaにおける接着シート1を半導体ウエハAに貼り付ける温度、即ち、ラミネート温度は、0℃〜170℃の範囲であることが好ましく、半導体ウエハAの反りを少なくするためには、20℃〜130℃の範囲であることがより好ましく、20℃〜80℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0077】
また、工程Ibの後に工程Iaを行う場合、ラミネート工程での応力や変形により半導体ウエハAが破断することを防止するため、半導体ウエハAが変形しないように支持してラミネートを行うことが好ましい。
【0078】
上記工程Ibにおける、半導体ウエハAを区分する加工方法としては、ダイシングカッター等により、半導体ウエハAを完全に切断せずに、折り目となる溝を加工する方法(ハーフカットダイシング)や、切断予定ライン上の半導体ウエハA内部にレーザー光を照射して改質領域を形成する方法(ステルスダイシング)等、その後に外力等を加えることで、容易に半導体ウエハAを切断することができる方法が挙げられる。特に、半導体ウエハの厚さが100μm以下の薄い場合は、チッピング低減やクラック低減の目的でステルスダイシングにより区分することが好ましい。
【0079】
なお、半導体ウエハAのレーザー加工の方法については、特開2002−192370号公報及び特開2003−338467号公報に記載の方法を使用することができる。装置については、例えば、株式会社東京精密製のMAHOHDICING MACHINEを使用することができる。
【0080】
なお、これらの方法を用いて半導体ウエハを区分するとは、外力により切断できるように予め切断のきっかけを作った状態;又はこの状態の後、さらに外力を加え半導体ウエハがほぼ切断され、一部のみがつながっている状態;さらに外力を加え半導体ウエハが切断されているが互いに接触するか、数μm以下の僅かな間隙を挟んで隣り合う状態;又はさらに外力を加え半導体ウエハが切断されて、数μm以上1mm以下の間隙を挟んで隣り合う状態;を指す。
【0081】
また、半導体ウエハ及び接着シートを切断するとは、半導体ウエハが完全に切断されていない場合には、両者を同時に切断すること、既に半導体ウエハが切断されている場合には、最終的に両者がいずれも切断されている状態にすることを示す。
【0082】
半導体ウエハAへのレーザー光の照射は、半導体ウエハAの表面、即ち、回路が形成されている面から行なってもよく、また半導体ウエハAの裏面、つまり、回路が形成されていない、接着シートを貼り付ける側の面から行なってもよい。
【0083】
工程Ibを工程Iaや、後述する工程Id又は工程Icの後に行う場合には、接着シート1や、ダイシングテープ2側からも半導体ウエハAにレーザー光を照射することが可能になる点で、接着シート1や、ダイシングテープ2として、レーザー光を透過するものを用いることが好ましい。
【0084】
また、切断できなかった部分を認識しやすい点で、接着シート1はダイシングテープ2と透明性や色調が異なるものであることが好ましい。
【0085】
工程Ibにおいては、例えば、下記の条件で、上記のレーザー加工装置を用いて半導体ウエハAの内部に集光点を合わせ、切断予定ライン4に沿って半導体ウエハAの表面側からレーザー光を照射し、半導体ウエハAの内部に改質領域5を形成する。この改質領域5により、切断予定ラインに沿って半導体ウエハAを切断することができる。改質領域5は、多光子吸収により、半導体ウエハ内部が、局所的に加熱溶融することにより形成された溶融処理領域であることが好ましい。
【0086】
(レーザー加工条件)
(A)半導体ウエハ:シリコンウエハ(厚さ75μm、外径6インチ)
(B)レーザー光源:半導体レーザー励起Nd:YAGレーザー
波長:1064nm
レーザー光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:20μJ/パルス
レーザー光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ倍率:50倍
NA:0.55
レーザー光波長に対する透過率:60パーセント
(D)半導体基板が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
工程Icにおいては、従来公知の方法により、ダイシングテープ2を、接着シート1の半導体ウエハAが貼り付けられている面とは反対の面に貼り付ければよい。貼り付ける温度、即ちラミネート温度は、0℃〜60℃の範囲で行われることが好ましく、10℃〜40℃の範囲で行われることがより好ましく、15℃〜30℃の範囲で行われることがさらに好ましい。
【0087】
工程Ibの後に工程Icを行う場合、ラミネート工程での応力や変形により半導体ウエハAが切断することを防止するため、半導体ウエハAが変形しないように支持してラミネートを行うことが好ましい。
【0088】
本発明の半導体装置の製造方法において、工程Iは、作業の効率性の点で、ダイシングテープ一体型接着シートを用いて行ってもよい。即ち、半導体ウエハにダイシングテープ一体型接着シートを貼り付ける工程(工程Id)と、半導体ウエハを区分する工程(工程Ib)とを、(工程Id)−(工程Ib)又は(工程Ib)−(工程Id)の順で備える。
【0089】
図4には、半導体ウエハAにダイシングテープ一体型接着シート3を貼り付ける工程(工程Id)を、図5には、半導体ウエハAを、ダイシングソー23によりハーフカットして区分する工程(工程Ib)を、それぞれ示す。
【0090】
なお、半導体装置の製造方法において、半導体ウエハAに接着シート1及びダイシングテープ2を貼り付ける方法とダイシング方法の組み合わせは、特に限定されるものではない。作業性や効率性の観点からは、半導体ウエハAにダイシングテープ一体型接着シート3を貼り付け、ステルスダイシングにより半導体ウエハを区分する組み合わせであることが最も好ましい。
【0091】
上記工程Idにおいて、半導体ウエハAにダイシングテープ一体型接着シート3を貼り付ける際には、半導体ウエハAとダイシングテープ一体型接着シート3における接着シートの1面が接するように貼り付ける。貼り付ける温度、即ち、ラミネート温度は、20℃〜170℃の範囲であることが好ましく、半導体ウエハAの反りを少なくするためには20℃〜130℃の範囲であることがより好ましく、20℃〜60℃の範囲であることが特に好ましい。
【0092】
[工程II]
工程IIでは、前記工程Iで作製した半導体ウエハが区分されている積層体の前記半導体ウエハ及び前記接着シートを切断し、次いで前記接着シートと前記ダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップを得る。
【0093】
本工程IIにおいて、半導体ウエハA及び接着シート1の切断は、ダイシングテープ2又はダイシングテープ一体型接着シート3に外力を加えることで行うことができる。図6には、ダイシングテープ2を、エキスパンドすることで半導体ウエハA及び接着シート1を、切断する工程を、図7には半導体ウエハA及び接着シート1が切断された状態の概念図を、それぞれ示す。また、図8には、半導体ウエハAにダイシングテープ一体型接着シート3を貼り付ける工程(工程Id)、半導体ウエハAの切断予定ライン上にレーザー光を照射して、半導体ウエハ内部に改質領域(切断予定部)5を形成して、半導体ウエハを区分する工程(工程Ib)、ダイシングテープ2又はダイシングテープ一体型接着シート3に外力を加えて半導体ウエハA及び接着シート1を切断する工程をまとめて示す。
【0094】
ダイシングテープ2又はダイシングテープ一体型接着シート3に加える外力は、例えば、前記工程Iにおいて半導体ウエハの区分をハーフカットダイシングにより行なった場合には、曲げ方向やねじれ方向に加えることが好ましく、ステルスダイシングにより行なった場合には、引っ張り(エキスパンド)方向に加えることが好ましい。例えば、ステルスダイシングにより区分された半導体ウエハの場合は、市販のウエハ拡張装置を用いてダイシングテープ2又はダイシングテープ一体型接着シート3の両端を引っ張り、外力を加えることで半導体ウエハA及び接着シート1の切断を行うことができる。特に、厚さが100μm以下の半導体ウエハの場合は、チッピング低減やクラック低減の目的で前記工程Iにおいてステルスダイシングにより区分することが好ましく、本工程IIにおいてエキスパンドにより半導体ウエハA及び接着シート1の切断を行なうことが好ましい。
【0095】
より具体的には、図6に示すように、ステージ13上に配置されたダイシングテープ2の周辺部にリング11を貼り付け、固定し、ついで突き上げ部12を上昇させることで、ダイシングテープ2に両端から張力をかける。このときの突き上げ部が上昇する速度を、エキスパンド速度とし、突き上げ部が上昇した高さ14をエキスパンド量とすると、本発明では、エキスパンド速度は10〜1000mm/秒であることが好ましく、10〜200mm/秒であることがより好ましく、50〜150mm/秒であることが特に好ましい。前記エキスパンド速度が10mm/秒未満であると、半導体ウエハ及び接着シートの切断が、徐々に困難となる傾向があり、1000mm/秒を超えると、ダイシングテープが、徐々に破断しやすくなる傾向がある。また、エキスパンド量は5〜30mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましく、15〜20mmであることが特に好ましい。前記エキスパンド量が、5mm未満であると、半導体ウエハ及び接着シートの切断が、徐々に困難となる傾向があり、30mmを超えると、徐々にダイシングテープが破断しやすくなる傾向がある。上記のエキスパンド速度が10〜1000mm/秒、エキスパンド量が5〜30mmの切断条件は、通常に行われる接着シート及び半導体ウエハの切断条件であり、本発明はかかる切断条件において接着シートを半導体ウエハと同時に切断することが可能となる。
【0096】
このようにダイシングテープ2を引っ張り、外力を加えることで、半導体ウエハA内部の改質領域を起点として半導体ウエハAの厚さ方向に割れが発生し、この割れが半導体ウエハAの表面と裏面、さらには、半導体ウエハAと密着する接着シート1の裏面まで到達し、半導体ウエハA及び接着シート1が破断、即ち、切断される。
【0097】
なお、エキスパンド量が30mmを超す場合には、ダイシングテープ2の基材層として、塩化ビニル基材を使用することが好ましいが、エキスパンド量が少ない場合は、各種ポリオレフィン基材を使用することが好ましい。
【0098】
また、エキスパンドは室温(25℃)で行ってもよいが、必要に応じて−50℃〜100℃の間で調整して行なっても良い。10℃以下に冷却すると接着シートが脆くなり破断性が向上する点で好ましく、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下である。−50℃未満になると結露が著しい点、ダイシングテープ2の伸びが低下する点、さらに、ダイシングテープ2の粘着剤が硬くなり、エキスパンド時に割れを生じ伸びが不均一になるなどといった不具合が生じる傾向がある。
【0099】
本発明の製造方法において用いる接着シートは、低弾性であり、かつ外部応力による破断性に優れるため、接着シートの切断不良による歩留低下を防ぐことができる。
【0100】
ダイシングテープ2の粘着剤層にUV硬化粘着剤を使用している場合は、エキスパンドの前又は後にダイシングテープ2に半導体ウエハAが貼り付けられている面の反対面側から紫外線を照射し、UV硬化粘着剤を硬化させる。これにより、UV硬化粘着剤と接着シートとの密着力が低下することになり、切断後に、接着シートとダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップをピックアップする作業がし易くなる。
【0101】
本工程IIでは、半導体ウエハ及び接着シートを切断した後、接着シートとダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップを得る。図9又は図10に示すような吸着コレット21、針扞22(図9参照)等を用いて、複数の個片化された接着シート付き半導体チップをピックアップし、接着シート付き半導体チップを得る。接着シートとダイシングテープ間の剥離がし易く、半導体チップのピックアップ性に優れる点で、接着シートとダイシングテープと間の接着力は、90°はく離試験おいて、20N/m以上100N/m以下であることが好ましい。
【0102】
[工程III]
工程IIIでは、前記工程IIで得た接着シート付き半導体チップを半導体チップ搭載用支持部材に接着する。本工程IIIでは、半導体チップ搭載用支持部材の半導体チップ搭載部に載せ、接着シートを加熱硬化する。加熱硬化は、通常100〜220℃の間で行われる。図9又は図10には、接着シート付き半導体チップ6を半導体チップ搭載用支持部材7に接着する工程を、それぞれ示す。
【0103】
本発明の製造方法において、半導体装置の製造方法は、上記工程に制限するものではなく、任意の工程を含み得る。例えば、工程Ia又は工程Idを行った後、工程IIを行う前のいずれかの段階において、接着シートに紫外線、赤外線若しくはマイクロ波を照射する工程又は、接着シートを加熱若しくは冷却する工程を含んでいてもよい。工程IIIを行った後には、必要に応じ、ワイヤボンディング工程、封止工程等が含まれるものとする。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を、詳細に説明するが、本発明はこれらに制限するものではない。
【0105】
[ダイシングテープ一体型接着シートの作製]
(実施例1)
接着シートとして、日立化成工業株式会社製、商品名:HS−270(分子量80万のアクリルゴムを含有する、厚さ10μmのシート)を用いた。ダイシングテープとして、アイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名:ハイミラン1855)基材にアクリル系粘着剤を塗布したダイシングテープ(基材層厚さ100μm、粘着剤層厚さ10μm)を用いた。前記接着シートをダイシングテープの粘着剤層面に積層し、実施例1のダイシングテープ一体型接着シートを得た。前記ダイシングテープは引っ張り変形時に降伏点を示さず、且つ、ダイシングテープの厚さAと接着シートの厚さBの比、A/Bは11である。
【0106】
なお、上記で用いた接着シート及びダイシングテープの物性について以下の方法により測定した。
【0107】
(1) Bステージ状態の接着シートの25℃における破断伸び
幅5mm、長さ20mm、厚さ50μmの試料について、引っ張り試験機を用いて、チャック間距離20mm、引っ張り速度0.2m/分で応力、ひずみ曲線を測定し、下記式より、破断伸びを求めたところ200%であった。
【0108】
破断伸び(%)=((破断時の試料のチャック間長さ(mm)−20)/20)×100
(2)Bステージ状態の接着シートの25℃で900Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率
動的粘弾性測定装置(レオロジ社製、DVE−V4)を使用し、接着シートを構成する組成物の硬化物に引張荷重をかけて、周波数900Hz、昇温速度5℃/分の条件で−50℃から100℃まで測定する、温度依存性測定モードによって温度25℃の値を測定したところ、1100MPaであった。
【0109】
(3)ダイシングテープの降伏点の有無
幅10mm×長さ30mmの短冊形状のダイシングテープについて、万能試験機(株式会社オリエンテック製、テンシロンUCT−5T型)を用い、温度25℃、引張速度5mm/分の条件で引っ張り試験を行い、ダイシングテープが破断するまでの応力とひずみを測定し、ひずみをX軸、応力をY軸にそれぞれプロットした場合に、傾きdY/dXが正の値から0又は負の値に変化する応力値をとるものを「降伏点有り」とし、前記傾きdY/dXが正の値から0又は負の値に変化する応力値をとらないものを「降伏点無し」とした。
【0110】
(実施例2)
接着シートとして、日立化成工業株式会社製、商品名:HS−270(分子量80万のアクリルゴムを含有する、厚さ5μmのシート)を用いた。ダイシングテープとして、アイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名:ハイミラン1855)基材にアクリル系粘着剤を塗布したダイシングテープ(基材層厚さ120μm、粘着剤層厚さ10μm)を用いた。前記接着シートをダイシングテープの粘着剤層面に積層し、実施例2のダイシングテープ一体型接着シートを得た。前記ダイシングテープは引っ張り変形時に降伏点を示さず、且つ、ダイシングテープの厚さAと接着シートの厚さBの比、A/Bは26である。
【0111】
(比較例1)
接着シートとして、日立化成工業株式会社製、商品名:HS−270(分子量80万のアクリルゴムを含有する、厚さ10μmのシート)を用いた。ダイシングテーフとして、高圧重合法により作成したポリエチレンフィルム基材にアクリル系粘着剤を塗布したダイシングテープ(基材層厚さ80μm、粘着剤層厚さ10μm)を用いた。前記接着シートをダイシングテープの粘着剤層面に積層し、比較例1のダイシングテープ一体型接着シートを得た。
【0112】
前記ダイシングテープは引っ張り変形時に降伏点を有し、且つ、ダイシングテープの厚さAと接着シートの厚さBの比、A/Bは1.8である。
【0113】

実施例1、2及び比較例1で得られたダイシングテープ一体型接着シートについて、以下の評価を行なった。
【0114】
[接着力の評価]
幅10mmのダイシングテープ一体型接着シートと厚さ300μmの半導体ウエハをホットロールラミネータ(80℃、0.3m/分、0.3MPa)で貼り合わせた後、ダイシングテープと接着シートの界面で剥離するようにTOYOBALWIN製、UTM−4−100型テンシロンを用いて、25℃の雰囲気中で、90°の角度で、50mm/分の引張り速度で剥がしたときの90°ピール強度を求めた。結果を表1に示す。
【0115】
[破断性の評価]
厚さ50μm、外径12インチの半導体ウエハにレーザー光を照射し、半導体ウエハ内部に改質領域を形成した。
【0116】
次に、半導体ウエハとダイシングテープ一体型接着シートの接着シートが接するように、ホットロールラミネータ(デュポン株式会社製、「Riston(商品名)」)を用いて、60℃でラミネートした。ダイシングテープの外周部にはステンレス製のリングを貼付けた。続いて、エキスパンド装置により、リングを固定しダイシングテープをエキスパンドし、5mm角の半導体チップを作製した。このエキスパンド条件はエキスパンド速度が30mm/秒、エキスパンド量が15mmであった。その際、半導体ウエハと接着シートが同時に切断されたものが、90%以上であったものを○(破断性良好)として評価し、90%未満であったものを×(破断性不良)として評価した。結果を表1に示す。
【表1】

【0117】
表1より、実施例1及び2では、接着シートと半導体ウエハを同時に切断することができ破断性に優れているのに対し、比較例1では劣っていることが分る。
【符号の説明】
【0118】
1…接着シート、2…ダイシングテープ、2a…粘着剤層、2b…基材層、3…ダイシングテープ一体型接着シート、4…切断予定ライン、5…改質領域、6…接着シート付き半導体チップ、7…半導体チップ搭載用支持部材、11…リンク、12…突き上げ部、13…ステージ、14…突き上げ部が上昇した高さ(エキスパンド量)、21…吸着コレット、22…針扞、23…ダイシングソー、A…半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体であって、該半導体ウエハが区分されている積層体を作製する工程(工程I)、前記半導体ウエハ及び前記接着シートを切断し、次いで前記接着シートと前記ダイシングテープ間で剥離して接着シート付き半導体チップを得る工程(工程II)、前記接着シート付き半導体チップを半導体チップ搭載用支持部材に接着する工程(工程III)とを備える、半導体装置の製造方法であって、
前記接着シートが、高分子量成分を少なくとも含有し、Bステージ状態の前記接着シートの25℃における破断伸びが40%超であり、25℃で900Hzにおける動的粘弾性測定による弾性率が4000MPa未満であり、
前記ダイシングテープが、引っ張り変形時に降伏点を有さないものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ダイシングテープが、一層以上の粘着剤層及び一層以上の基材層からなり、基材層の少なくとも一層が有機酸又は金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と、金属イオンとを含む材料からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料が、アクリル系共重合体のカルボキシル基の一部が、金属の陽イオンによって分子間で疑似架橋を形成しているアイオノマー樹脂を含む材料であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ダイシングテープの基材層が、エチレン−メタクリル酸共重合体基材、スチレン−ブチレン−エチレン共重合体基材、ポリ塩化ビニル基材、エチレン−酢酸ビニル共重合体基材、水添スチレン−ブタジエン共重合体基材、ポリエチレン基材、ポリプロピレン基材、塩素を含まないモノマを共重合したポリマー基材から選ばれる少なくとも1層を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程Iにおいて、半導体ウエハをハーフカットダイシング又はステルスダイシングにより区分することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程Iにおいて、厚さが100μm以下の半導体ウエハをステルスダイシングにより区分し、工程IIにおいてエキスパンドにより半導体ウエハ及び接着シートを切断することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程Iにおける接着シートを介してダイシングテープと半導体ウエハが積層してなる積層体が、接着シートとダイシングテープを張り合わせてなるダイシングテープ一体型接着シートを用いて、該接着シートの上に半導体ウエハを積層して得られるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−74136(P2010−74136A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115653(P2009−115653)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】