説明

半導体装置

【課題】製造時以外にデータの書き込みが可能であり、書き換えによる偽造を防止可能な半導体装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、単純な構造のメモリから構成される安価な半導体装置の提供を課題とする。
【解決手段】単結晶半導体基板上に形成された電界効果トランジスタと、電界効果トラン
ジスタの上に設けられた第1の導電層と、第1の導電層上に設けられた有機化合物層と、
有機化合物層上に設けられた第2の導電層とを有し、第1の導電層と有機化合物と前記第
2の導電層とで記憶素子を構成する。また、上記構成において、アンテナを具備すること
によって、非接触でデータの送受信が可能な半導体装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記憶素子を有する半導体装置に関し、特に当該記憶素子として有機化合物層を
含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料を用いた電子デバイスの開発が広く行われており、発光素子である有機
ELや有機TFT等の開発が行われている。また、有機材料を用いた記憶素子の研究も行
われており、例えば、有機ダイオードを利用したマスクROM等がある(例えば、特許文
献1)。この記憶素子においては、製造時以外ではデータの書き込み(追記)を行うこと
ができず使い勝手が良くなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−516964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、チップ製造時以外にデータの書き込みが可能であり、偽造の防止可能な半
導体装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、単純な構造の記憶素子から構
成される安価な半導体装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を講ずる。
【0006】
本発明の半導体装置は、単結晶半導体基板上に形成された電界効果トランジスタと、電
界効果トランジスタの上方に設けられた記憶回路とを有し、電界効果トランジスタは単結
晶半導体基板をチャネル領域として形成されており、記憶回路は、第1の導電層と、有機
化合物層と、第2の導電層とが順に積層された有機メモリ素子を有することを特徴として
いる。なお、ここでいう有機メモリ素子とは、少なくとも一対の導電層間に有機化合物層
が挟まれた構造を有している素子を指す。
【0007】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、単結晶半導体基板をチャネル領域として形成
された電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタの上方に設けられた記憶回路と、
アンテナとして機能する導電層とを有し、記憶回路は、第1の導電層と、有機化合物層と
、第2の導電層とが順に積層された有機メモリ素子を有し、アンテナとして機能する導電
層と第1の導電層とが同じ層に設けられていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、単結晶半導体基板をチャネル領域として形成
された電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタの上方に設けられた記憶回路と、
記憶回路の上方に設けられたアンテナとして機能する導電層とを有し、記憶回路は、第1
の導電層と、有機化合物層と、第2の導電層とが順に積層された有機メモリ素子を有し、
アンテナとして機能する導電層は、電界効果トランジスタと電気的に接続するように貼り
合わされて設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、記憶回路が、電界効果ト
ランジスタと電気的に接続された第1の導電層と、第1の導電層の端部を覆うように設け
られた絶縁層と、第1の導電層および絶縁層上に設けられた有機化合物層と、有機化合物
層上に設けられた第2の導電層とを有する有機メモリ素子を有していることを特徴として
いる。
【0010】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、記憶回路が、前記電界効
果トランジスタと電気的に接続された第1の導電層と、前記第1の導電層の端部を覆うよ
うに設けられた絶縁層と、前記絶縁層に覆われていない前記第1の導電層および前記絶縁
層の端部を覆うように設けられた有機化合物層と、前記有機化合物層および前記前記有機
化合物層に覆われていない前記絶縁層を覆うように設けられた第2の導電層とを有する有
機メモリ素子を有していることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、第1の導電層と第2の導
電層の一方または両方が透光性を有することを特徴としている。この構成は、光学的作用
を加えることによって記憶回路にデータを書き込む(追記)場合に必要となる。
【0012】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、有機メモリ素子が電圧を
印加する書き込み処理により不可逆的に抵抗が変化することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、記憶回路にデータを書き
込んだ場合に、有機メモリ素子の第1の導電層と第2の導電層間の距離が変化することを
特徴としている。データの書き込みによる第1の導電層と第2の導電層間の距離の変化は
、有機メモリ素子の場所によって異なり、広くなる部分や狭くなる部分が生じる。
【0014】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、有機化合物層が電子輸送
材料またはホール輸送材料であることを特徴としている。また、より具体的には、有機化
合物層の導電率が10-15S/cm以上10-3S/cm以下であることを特徴としている

【0015】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、有機化合物層の膜厚が5
〜60nmであることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、記憶回路として有機メモ
リ素子の他に、DRAM(Dynamic Random Access Memory
)、SRAM(Static Random Access Memory)、FeRA
M(Ferroelectric Random Access Memory)、マス
クROM(Read Only Memory)、PROM(Programmable
Read Only Memory)、EPROM(Electrically Pr
ogrammable Read Only Memory)、EEPROM(Elec
trically Erasable Read Only Memory)及びフラッ
シュメモリから選択された1つまたは複数を有することを特徴としている。
【0017】
また、本発明の半導体装置の他の構成は、上記構成において、電源回路、クロック発生
回路、データ復調/変調回路及びインターフェイス回路から選択された1つ又は複数を有
することを特徴としている。
【0018】
また、本発明において、有機化合物層は、蒸着法、液滴吐出法、スクリーン印刷法、ス
ピンコート法等を用いて形成することができる。なお、液滴吐出法とは、導電物や絶縁物
等の材料を含んだ組成物の液滴(ドットともいう)を選択的に吐出(噴射)して任意の場
所に形成する方法であり、その方式によってはインクジェット法とも呼ばれている。
【発明の効果】
【0019】
本発明を用いることによって、記憶素子の製造時以外にデータの書き込み(追記)が可
能であり、書き換えによる偽造を防止可能な半導体装置を得ることができる。また、本発
明の半導体装置は、移動度や応答速度が良好な単結晶半導体層をチャネル部としたトラン
ジスタを有するため、高速動作が可能である。また、本発明では、単純な構成の記憶素子
を形成することが可能であるため、安価で高集積化された記憶素子を有する半導体装置を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図2】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図3】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図4】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図5】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図6】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図7】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図8】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図9】本発明の半導体装置およびその駆動方法を説明する図。
【図10】本発明の半導体装置およびその駆動方法を説明する図。
【図11】本発明の半導体装置およびその駆動方法を説明する図。
【図12】本発明のレーザ照射装置の一例を示す図。
【図13】本発明の半導体装置およびその駆動方法を説明する図。
【図14】本発明の半導体装置の構成の一例を説明する図。
【図15】本発明の半導体装置の使用形態の一例を説明する図。
【図16】本発明の半導体装置における有機メモリ素子の電流電圧特性を示す図。
【図17】本発明の半導体装置における有機メモリ素子の電流電圧特性を示す図。
【図18】本発明の半導体装置の使用形態の一例を説明する図。
【図19】本発明の半導体装置の使用形態の一例を説明する図。
【図20】本発明の半導体装置の使用形態の一例を説明する図。
【図21】本発明の半導体装置における有機メモリ素子の電流電圧特性を示す図。
【図22】本発明の半導体装置における有機メモリ素子の電流電圧特性を示す図。
【図23】本発明の半導体装置における有機メモリ素子の電流電圧特性を示す図。
【図24】本発明の半導体装置における有機メモリ素子の素子構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説
明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様
々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実
施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の
構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用い、繰り返しの説明を省
略する場合がある。
【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の半導体装置の構成の一例について、図1〜3を用いて以下
に説明する。
【0023】
本発明の半導体装置は、複数の回路が集積された構成を有し、複数の電界効果トランジ
スタ(FET)を含む層351と、複数の記憶素子を含む層352が順に積層された構成
を有する(図1)。複数の電界効果トランジスタを含む層351は様々な回路を構成し、
複数の記憶素子を含む層352はデータを記憶する記憶回路を有している。
【0024】
次に、上記構成を有する半導体装置の断面構造について説明する。まず、複数の電界効
果トランジスタを含む層351の断面構造について説明する(図2(A))。
【0025】
電界効果トランジスタは、単結晶半導体基板302上に形成される。単結晶半導体基板
302は、nウェル303、304とpウェル305、306が形成され、フィールド酸
化膜307によってそれぞれ分離されている。また、上記構成に限られず、n型の単結晶
半導体基板を用いるときにはpウェルを、p型の単結晶半導体基板を用いるときにはnウ
ェルのみをそれぞれ設けた構成としてもよい。
【0026】
ゲート絶縁膜308〜311は、熱酸化法により形成された薄膜である。ゲート312
〜315は、CVD法により100〜300nmの厚さで形成した多結晶シリコン層31
2a〜315aと、50〜300nmの厚さで形成したシリサイド層312b〜315b
からなる。また、サイドウォール324〜327は、全面に絶縁層を形成後、異方性エッ
チングにより、ゲート312〜315の側壁に絶縁層を残存させることにより形成するこ
とができる。
【0027】
pチャネル型FET316のソース・ドレイン領域328と、pチャネル型FET31
8のソース・ドレイン領域330には、p型の導電型を付与する不純物元素が添加されて
いる。一方、nチャネル型FET317のソース・ドレイン領域329と、nチャネル型
FET319のソース・ドレイン領域331には、n型の導電型を付与する不純物元素が
添加されている。
【0028】
また、pチャネル型FET316の低濃度不純物領域(LDD領域)320と、pチャ
ネル型FET318の低濃度不純物領域(LDD領域)322には、p型の導電型を付与
する不純物元素が添加されている。nチャネル型FET317の低濃度不純物領域(LD
D領域)321と、nチャネル型FET319の低濃度不純物領域(LDD領域)323
には、n型の導電型を付与する不純物元素が添加されている。これらの低濃度不純物領域
は、イオン注入法やイオンドープ法で自己整合的に形成された領域である。なお、本実施
の形態の半導体装置は上記構成に限られず、サイドウォールやLDD領域を設けなくとも
よいし、サリサイド構造としてもよい。
【0029】
また、pチャネル型FET316、318と、nチャネル型FET317、319を覆
うように、絶縁層332、333が設けられており、これらの絶縁層332、333は、
表面を平坦化するために設けられた薄膜である。
【0030】
ソース配線またはドレイン配線334〜341は、ソース配線またはドレイン領域32
8〜331に接する配線であり、絶縁層332、333にそれぞれ設けられたコンタクト
ホールを充填する配線である。そして、ソース配線とドレイン配線334〜341を覆う
ように、絶縁層342、343が設けられており、これらの絶縁層342、343も、表
面を平坦化するために設けられた薄膜である。
【0031】
次に、複数の電界効果トランジスタを含む層351上に、複数の記憶素子を含む層35
2が積層された半導体装置の断面構造について説明する(図2(B)参照)。
【0032】
絶縁層343上に、第1の導電層345、有機化合物層346、第2の導電層347が
順に積層されており、この積層体が記憶素子350に相当する。有機化合物層346同士
の間には、絶縁層348が設けられている。複数の記憶素子350上には、絶縁層349
が設けられている。図2(B)に示すように電界効果トランジスタ上に複数の記憶素子を
単純な構成(パッシブマトリクス型)で設けることによって、より微細な構造を容易に集
積化することが可能となり、低コストで大容量の記憶素子を有する半導体装置を提供する
ことが可能となる。
【0033】
次に、上記図2(B)とは異なる半導体装置の断面構造について図3を用いて説明する

【0034】
絶縁層343上に、電界効果トランジスタに接続されたソース・ドレイン配線に接続す
るように、第1の導電層361〜364が設けられ、第1の導電層361〜364に接す
るように有機化合物層365〜368が設けられる。さらに、有機化合物層365〜36
8に接するように第2の導電層369が設けられる。第1の導電層361〜364または
第2の導電層369は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)または透光性を
有するインジウム錫酸化物(ITO)等の公知の導電性材料を用いて形成することができ
る。また、有機化合物層365〜368は、蒸着法や液滴吐出法を用いて形成することが
できる。液滴吐出法を用いて形成すると、有機化合物層を所望の場所に選択的に形成する
ことができるためマスクが不要となる。また、必要最低限の材料で済むため、材料の利用
効率が向上するといった利点を有している。
【0035】
第1の導電層361〜364のいずれか1つと、第2の導電層369の積層体が記憶素
子371〜374のいずれか1つに相当する。有機化合物層365〜368の間には、絶
縁層370が設けられている。また、複数の記憶素子371〜374上には、絶縁層37
5が設けられている。なお、図3に示した半導体装置の構成において、電界効果トランジ
スタを含む層351に設けられた電界効果トランジスタは、記憶素子371〜374への
書き込みまたは読み込みの際にスイッチング素子として働くため、pチャネル型FETま
たはnチャネル型FETのどちらか一方の構成を用いて設けることが好ましい。上記構成
とすることによって、移動度や応答速度が良好な単結晶半導体層をチャネル部としたトラ
ンジスタを有するため高速な動作が可能であり、動作周波数を向上させた半導体装置を提
供することが可能となる。
【0036】
次に、非接触でデータを送受信する機能を有する半導体装置の構成について、図4、図
5を用いて以下に説明する。
【0037】
図4に示す半導体装置は、複数の回路が集積された構成を有し、複数の電界効果トラン
ジスタを含む層401と、複数の記憶素子を含む層402が順に積層されており、複数の
記憶素子を含む層402の周囲に、アンテナとして機能する導電層403が設けられた構
成を有する(図4(A)、(B))。なお、図4(A)は上面図、図4(B)は斜視図を
示している。
【0038】
上記構成を有する半導体装置の断面構造について図5(A)を用いて説明する。
【0039】
図5(A)において、複数の電界効果トランジスタを含む層401は、pチャネル型F
ET316、nチャネル型FET317、pチャネル型FET318、nチャネル型FE
T319を有している。なお、これらのFETの構造は上記図2(B)で示した通りであ
るので、ここでは、その説明を省略する。
【0040】
pチャネル型FET316、nチャネル型FET317、pチャネル型FET318、
nチャネル型FET319を覆うように絶縁層342、343が設けられ、絶縁層343
上に複数の記憶素子を含む層402が設けられている。また、複数の記憶素子を含む層4
02の周囲には、アンテナとして機能する導電層403が設けられている。
【0041】
複数の記憶素子を含む層402は、絶縁層343上に、第1の導電層445、有機化合
物層446、第2の導電層447が順に積層されており、この積層体が記憶素子450に
相当する。有機化合物層446の間には、絶縁層448が設けられている。
【0042】
また、アンテナとして機能する導電層403は、第1の導電層445と同じ層に設けら
れている。導電層403上には、絶縁層448、449が設けられている。アンテナとし
て機能する導電層403は、波形整形回路や整流回路を構成するトランジスタに接続され
ている。非接触で外部から送られてきたデータは波形整形回路や整流回路で処理された後
、読み込み回路や書き込み回路を介して有機メモリ素子とデータのやりとり(データの書
き込みや読み込み)が行われる。ここでは、導電層403は、pチャネル型FET316
のソースまたはドレイン配線334と、nチャネル型FET319のソースまたはドレイ
ン配線341に接続されている。導電層403としては、銅(Cu)、アルミニウム(A
l)、銀(Ag)、金(Au)等の材料を用いて形成することができる。また、第1の導
電層445と同じ工程で作製しても良い。
【0043】
次に、上記図5(A)とは異なる半導体装置の断面構造について図5(B)を用いて説
明する。より詳しくは、図5(A)における複数の記憶素子を含む層402の構造が異な
る半導体装置の断面構造について説明する。
【0044】
図5(B)において、複数の電界効果トランジスタを含む層401は、上記図3で示し
た構成と同様に設けることができる。複数の記憶素子を含む層402は、ソース・ドレイ
ン配線336、338に接続するように、第1の導電層462、463が設けられ、第1
の導電層462、463に接するように有機化合物層466、467が設けられている。
さらに、有機化合物層466、467に接するように第2の導電層469が設けられてい
る。
【0045】
第1の導電層462、463のどちらかと、有機化合物層466、467のどちらかと
、第2の導電層469の積層体が記憶素子472、473のどちらかに相当する。有機化
合物層466、467の間には、絶縁層470が設けられている。また、複数の記憶素子
472、473上には、絶縁層475が設けられている。
【0046】
図5(B)の半導体装置の構成において、第1の導電層462、463と接続する電界
効果トランジスタは、記憶素子472、473への書き込みまたは読み込みの際にスイッ
チング素子として働くため、pチャネル型FETまたはnチャネル型FETのどちらか一
方の構成を用いて設けることが好ましい。また、その他の電界効果トランジスタは、pチ
ャネル型FETまたはnチャネル型FETのどちらか一方の構成で設けてもよいし、pチ
ャネル型FETまたはnチャネル型FETの両方を設けてもよいし、pチャネル型FET
またはnチャネル型FETをあわせてCMOS回路として設けてもよい。
【0047】
このように図4、図5に示すように、アンテナとして機能する導電層を形成することに
よって、非接触でデータを送受信する機能を有する半導体装置を提供することができる。
このような半導体装置は、非接触でデータの送受信を行う無線チップ等に利用することが
できる。また、無線チップ等は微細な構造を要求される場合が多いが、図5に示す構造を
用いることによって安価で高集積化された記憶素子を有する半導体装置を提供することが
できる。
【0048】
次に、非接触でデータを送受信する場合において、上記図4、図5と異なる半導体装置
の構成について、図6〜図8を用いて以下に説明する。
【0049】
本発明の半導体装置は、複数の回路が集積された構成を有し、複数の電界効果トランジ
スタを含む層501と、複数の記憶素子を含む層502が順に積層して設けられた基板と
、アンテナとして機能する導電層503が設けられた基板とが貼り合わされた構成を有す
る(図6(A)、(B))。なお、図6(A)は上面図、図6(B)は斜視図を示してい
る。
【0050】
次に、上記構成を有する本発明の半導体装置の断面構造について図7を用いて以下に説
明する。
【0051】
複数の電界効果トランジスタを含む層501は、pチャネル型FET316、nチャネ
ル型FET317、pチャネル型FET318、nチャネル型FET319を有している
。これらのFETの構造は上記図2(B)で示した通りであるので、ここでは、その説明
を省略する。
【0052】
また、複数の記憶素子を含む層502は、図5(A)を用いて説明した複数の記憶素子
を含む層402と同様に設けることができる。
【0053】
複数の電界効果トランジスタを含む層501と複数の記憶素子を含む層502とを含む
基板と、導電層503が設けられた基板504は、導電性粒子506を含む樹脂505に
より貼りあわされている。なお、貼り合わせて素子を形成する方法としては、例えば、円
形の半導体基板と複数の導電層が設けられた基板504とを貼り合わせた後に、貼り合わ
された円形の半導体基板と基板504とを分断して個々の素子に分離して設けることがで
きる。また、複数の導電層が設けられた基板504上にあらかじめ分断されたSi基板を
貼り合わせた後に、基板504を分断して個々の素子を形成してもよいし、半導体基板と
基板504をそれぞれ分断した後に貼り合わせることによって個々の素子を形成してもよ
い。
【0054】
そして、pチャネル型FET316のソース・ドレイン配線334及びnチャネル型F
ET319のソース・ドレイン配線341と、導電層503とは、導電性粒子506を介
して電気的に接続する。なお、ここでは導電性微粒子を含む異方性導電フィルムを用いて
接続した場合を示したが、他にも、銀ペースト、銅ペースト、カーボンペースト等の導電
性接着剤や半田接合を行う方法を用いてもよい。
【0055】
次に、図7に示した構成とは異なる半導体装置の断面構造について図8を用いて説明す
る。より詳しくは、図7の構成と、複数の記憶素子を含む層502の構造が異なる半導体
装置の断面構造について説明する。
【0056】
複数の電界効果トランジスタを含む層501は、図5(B)で示したように形成するこ
とができる。複数の記憶素子を含む層502は、図5(B)を用いて説明した、複数の記
憶素子を含む層402と同じ構造である。そして、上記図7の構成と同様、複数の電界効
果トランジスタを含む層501と複数の記憶素子を含む層502とを含む基板と、導電層
503が設けられた基板504は、導電性粒子506を含む樹脂505により貼りあわさ
れている。そして、ソース・ドレイン配線334、341と、導電層503とは、導電性
粒子506を介して電気的に接続する。
【0057】
このように上記図6〜図8に示すように、複数の電界効果トランジスタを含む層501
と複数の記憶素子を含む層502が順に積層して設けられた基板にアンテナとして機能す
る導電層503を貼り合わせて設けることによって、上記図5に示した構造に比べて容易
に導電層503の面積を大きく形成することができる。導電層の面積を広く形成すること
によって、導通抵抗を低く抑えることができるため、非接触でデータを送受信する際に半
導体装置の通信距離をのばすことができる。
【0058】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、上記実施の形態1で示した記憶素子の構成に関して以下に説
明する。
【0059】
本発明において、上記実施の形態で示した記憶素子(以下、有機メモリ素子とも記す)
は、有機化合物層を有していることを特徴とする。なお、メモリは有機メモリ素子のみを
含んでいてもよいし、他の記憶素子を含んでいてもよい。有機メモリ素子を含むメモリ(
以下、有機メモリとも記す)は、有機化合物の材料を利用したものであり、当該有機化合
物層に光または電気的作用を加えることにより電気抵抗の変化を生じさせるものである。
【0060】
次に、有機メモリの構成について図13を用いて説明する。有機メモリは、メモリセル
21がマトリクス状に設けられたメモリセルアレイ22、デコーダ23、24、セレクタ
25、読み出し/書き込み回路26を有する。なお、図13に示す有機メモリの構成は、
図2(B)、図5(A)における複数の記憶素子を含む層402または図7における複数
の有機メモリ素子を含む層502の記憶素子の構造(パッシブマトリクス型)に対応して
いる。
【0061】
メモリセル21は、ビット線Bx(1≦x≦m)に接続される第1の導電層と、ワード
線Wy(1≦y≦n)に接続される第2の導電層と、有機化合物層とを有する。有機化合
物層は、第1の導電層と第2の導電層の間に設けられる。
【0062】
次に、メモリセルアレイ22の上面構造と断面構造について図9を用いて説明する。な
お、メモリセルアレイ22は、上記実施の形態で示した電界効果トランジスタを含む層(
以下、基板30と記す)上に、第1の方向に延在する第1の導電層27と、第1の方向と
異なる方向第2の方向(例えば、垂直な方向)に延在する第2の導電層28と、有機化合
物層29とを有する。第1の導電層27と第2の導電層28は、ストライプ状に、互いに
交差するように形成される。隣接する有機化合物層29の間には、絶縁層33が設けられ
る。また、第2の導電層28に接するように、保護層として機能する絶縁層34が設けら
れる。
【0063】
第1の導電層27と第2の導電層28は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(A
g)等の公知の導電性材料を用いて形成する。また、有機化合物層29は蒸着法や液滴吐
出法を用いて形成することができる。液滴吐出法を用いた場合、各メモリセルに選択的に
有機化合物層を設けることができるため、材料の利用効率を向上することができる。
【0064】
光によりデータの書き込みを行う場合、第2の導電層28は透光性を有するように形成
する。透光性を有する導電層は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明な導電性材料を
用いて形成するか、又は、透明な導電性材料でなくても、光を透過する厚さで形成する。
また、上記実施の形態において、記憶素子上にアンテナとして機能する導電層が設けてあ
る場合には、データの書き込む部分の記憶素子の上方には導電層を設けず、光を照射でき
る開口窓を設けておく。また、記憶素子の下方に設けてある電界効果トランジスタに光が
照射されないように、遮光膜を設けておくとよい。具体的には、図2(B)に示す半導体
装置に光学的作用を加えてデータを書き込む際には、絶縁層332、333、342また
は343の少なくとも一層を遮光性を有する膜で形成する。好ましくは342または34
3の少なくとも一方を遮光性の膜で形成する。
【0065】
有機化合物層29は、導電性を有する(好ましくは、導電率が10-15S/cm以上1
-3S/cm以下)有機化合物材料を用いることができる。例えば、4,4’−ビス[N
−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’
−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD
)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称
:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニ
ルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(
N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:
DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物
やフタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジル
フタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等の正孔輸送性の高い物質
を用いることができる。
【0066】
また、他にも有機化合物材料として電子輸送性が高い材料を用いることができ、例えば
トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8
−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[
h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格また
はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料や、ビス[2−(2−ヒドロキシ
フェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒ
ドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などのオキサゾ
ール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに
、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル
)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−ter
t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:O
XD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェ
ニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフ
ェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリ
アゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソ
キュプロイン(略称:BCP)等の化合物等を用いることができる。
【0067】
また、他の有機化合物材料として、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(
1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略
称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−[2−(1,1,7,7
−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン、ペリフランテン、
2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチ
ルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略
称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニ
ウム(略称:Alq3)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン
(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2
,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等が挙げられる。また、
上記発光材料を分散してなる層を形成する場合に母体となる材料としては、9,10−ジ
(2−ナフチル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のア
ントラセン誘導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等
のカルバゾール誘導体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称
:Znpp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略
称:ZnBOX)などの金属錯体等を用いることができる。また、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム(略称:Alq3)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン
(略称:DNA)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−
アルミニウム(略称:BAlq)等を用いることができる。なお、上述した有機化合物は
単層で設けてもよいし積層して設けてもよく、実施者が適宜選択すればよい。
【0068】
また、他にも光または電気的作用を加えることによって電気抵抗が変化する材料を用い
ることができる。例えば、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)
をドープした共役高分子を用いることができる。ここで共役高分子としては、ポリアセチ
レン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレ
ンエチニレン類等を用いることができる。また、光酸発生剤としては、アリールスルホニ
ウム塩、アリールヨードニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホン酸
p−ニトロベンジルエステル、スルホニルアセトフェノン類、Fe−アレン錯体PF6
等を用いることができる。
【0069】
また、上記構成とは異なる構成として、第1の導電層27と有機化合物層29の間、も
しくは第2の導電層28と有機化合物層29の間に、整流性を有する素子を設けてもよい
(図9(D)参照)。整流性を有する素子とは、代表的には、ショットキーダイオード、
PN接合を有するダイオード、PIN接合を有するダイオード、あるいはゲート電極とド
レイン電極を接続したトランジスタである。もちろん、他の構成のダイオードでも構わな
い。ここでは、第1の導電層と有機化合物層の間に、半導体層44、45を含むPN接合
ダイオードを設けた場合を示す。半導体層44、45のうち、一方はN型半導体であり、
他方はP型半導体である。このように、整流作用を有する素子を設けることにより、メモ
リセルの選択性を向上し、読み出しや書き込み動作のマージンを向上させることができる

【0070】
上記の通り、本実施の形態で示した有機メモリ素子は、一対の導電層間に有機化合物層
を設ける単純な構成を有するため、作製工程が単純であり、高集積化させた有機メモリ素
子を有する半導体装置を低コストで提供することができる。また、上記構成とすることに
よって、製造時以外にもデータの書き込み(追記)が可能であるため、ユーザーが適宜必
要なときにデータを書き込むことができる。また、本発明の有機メモリは、不揮発性メモ
リであるため、データを保持するための電池を内蔵する必要がなく、小型、薄型、軽量の
半導体装置を提供することができる。また、上述した有機メモリは、データの書き込み(
追記)は可能であるが、データの書き換えを行うことはできない。そのため、当該有機メ
モリを用いることによって、偽造を防止し、セキュリティを確保した半導体装置を提供す
ることができる。
【0071】
次に、有機メモリにデータの書き込みを行う際の動作について説明する。データの書き
込みは、光学的作用又は電気的作用により行うが、まず、電気的作用によりデータの書き
込みを行う場合について説明する(図13参照)。なお、書き込みはメモリセルの電気特
性を変化させることで行うが、ここでは、メモリセルの初期状態(電気的作用を加えてい
ない状態)をデータ「0」、電気特性を変化させた状態を「1」とする。
【0072】
メモリセル21にデータ「1」を書き込む場合、まず、デコーダ23、24およびセレ
クタ25によってメモリセル21を選択する。具体的には、デコーダ24によって、メモ
リセル21に接続されるワード線W3に所定の電圧V2を印加する。また、デコーダ23
とセレクタ25によって、メモリセル21に接続されるビット線B3を読み出し/書き込
み回路26に接続する。そして、読み出し/書き込み回路26からビット線B3へ書き込
み電圧V1を出力する。こうして、当該メモリセル21を構成する第1の導電層と第2の
導電層の間には電圧Vw=V1−V2を印加する。電位Vwを適切に選ぶことで、当該導
電層間に設けられた有機化合物層29を物理的もしくは電気的変化させ、データ「1」の
書き込みを行う。具体的には、読み出し動作電圧において、データ「1」の状態の第1の
導電層と第2の導電層の間の電気抵抗が、データ「0」の状態と比して、大幅に小さくな
るように変化させるとよい。例えば、(V1、V2)=(0V、5〜15V)、あるいは
(3〜5V、−12〜−2V)の範囲から適宜選べば良い。電圧Vwは5〜15V、ある
いは−5〜−15Vとすればよい。なお、この場合に、有機化合物層を挟んで設けられた
一対の導電層間の距離が変化する場合がある。
【0073】
なお、非選択のワード線および非選択のビット線には、接続されるメモリセルにデータ
「1」が書き込まれないよう制御する。例えば、非選択のワード線および非選択のビット
線を浮遊状態とすればよい。メモリセルを構成する第1の導電層と第2の導電層の間は、
ダイオード特性など、選択性を確保できる特性を有する必要がある。
【0074】
一方、メモリセル21にデータ「0」を書き込む場合は、メモリセル21には電気的作
用を加えなければよい。回路動作上は、例えば、「1」を書き込む場合と同様に、デコー
ダ23、24およびセレクタ25によってメモリセル21を選択するが、読み出し/書き
込み回路26からビット線B3への出力電位を、選択されたワード線W3の電位あるいは
非選択ワード線の電位と同程度とし、メモリセル21を構成する第1の導電層と第2の導
電層の間に、メモリセル21の電気特性を変化させない程度の電圧(例えば−5〜5V)
を印加すればよい。
【0075】
次に、光学的作用によりデータの書き込みを行う場合について説明する(図9(B)(
C)参照)。この場合、透光性を有する導電層側(ここでは第2の導電層28とする)か
ら、有機メモリ素子に含まれる有機化合物層29にレーザ光を照射することにより行う。
ここでは、所望の部分の有機メモリ素子に含まれる有機化合物層29に選択的にレーザ光
を照射して有機化合物層29を破壊する。破壊された有機化合物層は、絶縁化するため、
他の有機メモリ素子と比較すると抵抗が大きくなる。このように、レーザ光の照射により
、有機化合物層29を挟んで設けられた2つの導電層間の電気抵抗が変化することを利用
してデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を照射していない有機化合物層を含む有
機メモリ素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、所望の部分
の有機メモリ素子に含まれる有機化合物層に選択的にレーザ光を照射して破壊することに
よって電気抵抗を大きくする。
【0076】
また、有機化合物層29として、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸
発生剤)をドープした共役高分子を用いた場合、レーザ光を照射すると、照射された部分
だけが導電性が増加し、未照射の部分は導電性を有しない。そのため、所望の部分の有機
メモリ素子に含まれる有機化合物層に選択的にレーザ光を照射することにより、当該有機
メモリ素子の電気抵抗が変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レー
ザ光を照射していない有機化合物層を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き
込む際は、所望の部分の有機化合物層に選択的にレーザ光を照射して導電性を増加させる

【0077】
レーザ光を照射する場合、有機メモリ素子に含まれる有機化合物層29の電気抵抗の変
化は、メモリセル21の大きさによるが、μmオーダの径に絞ったレーザ光の照射により
実現する。例えば、径が1μmのレーザビームが10m/secの線速度で通過するとき
、1つのメモリセル21が含む有機化合物を含む層にレーザ光が照射される時間は100
nsecとなる。100nsecという短い時間内で相を変化させるためには、レーザパ
ワーは10mW、パワー密度は10kW/mm2とするとよい。また、レーザ光を選択的
に照射する場合は、パルス発振のレーザ照射装置を用いて行いることが好ましい。
【0078】
ここで、レーザ照射装置の一例に関して、図12を用いて簡単に説明する。レーザ照射
装置1001は、レーザ光を照射する際の各種制御を実行するコンピュータ(以下、PC
1002と示す。)と、レーザ光を出力するレーザ発振器1003と、レーザ発振器10
03の電源1004と、レーザ光を減衰させるための光学系(NDフィルタ)1005と
、レーザ光の強度を変調するための音響光学変調器(Acousto−Optic Mo
dulator ; AOM)1006と、レーザ光の断面を縮小するためのレンズおよ
び光路を変更するためのミラー等で構成される光学系1007、X軸ステージ及びY軸ス
テージを有する移動機構1009と、PCから出力される制御データをデジタル−アナロ
グ変換するD/A変換部1010と、D/A変換部から出力されるアナログ電圧に応じて
音響光学変調器1006を制御するドライバ1011と、移動機構1009を駆動するた
めの駆動信号を出力するドライバ1012と、被照射物上にレーザ光の焦点を合わせるた
めのオートフォーカス機構1013を備えている(図12)。
【0079】
レーザ発振器1003としては、紫外光、可視光、又は赤外光を発振することが可能な
レーザ発振器を用いることができる。レーザ発振器としては、KrF、ArF、XeCl
、XeF等のエキシマレーザ発振器、He、He−Cd、Ar、He−Ne、HF等の気
体レーザ発振器、YAG、GdVO4、YVO4、YLF、YAlO3などの結晶にCr、
Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmをドープした結晶を使った固体レーザ発振
器、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザ発振器を用いる
ことができる。なお、固体レーザ発振器においては、基本波か第2高調波〜第5高調波を
適用するのが好ましい。
【0080】
次に、レーザ照射装置を用いた照射方法について述べる。有機化合物層29が設けられ
た基板30が移動機構1009に装着されると、PC1002は図外のカメラによって、
レーザ光を照射する有機化合物層29の位置を検出する。次いで、PC1002は、検出
した位置データに基づいて、移動機構1009を移動させるための移動データを生成する

【0081】
この後、PC1002が、ドライバ1011を介して音響光学変調器1006の出力光
量を制御することにより、レーザ発振器1003から出力されたレーザ光は、光学系10
05によって減衰された後、音響光学変調器1006によって所定の光量になるように光
量が制御される。一方、音響光学変調器1006から出力されたレーザ光は、光学系10
07で光路及びビームスポット形状を変化させ、レンズで集光した後、基板30上に該レ
ーザ光を照射する。
【0082】
このとき、PC1002が生成した移動データに従い、移動機構1009をX方向及び
Y方向に移動制御する。この結果、所定の場所にレーザ光が照射され、レーザ光の光エネ
ルギー密度が熱エネルギーに変換され、基板30上に設けられた有機化合物層に選択的に
レーザ光を照射することができる。なお、ここでは移動機構1009を移動させてレーザ
光の照射を行う例を示しているが、光学系1007を調整することによってレーザ光をX
方向およびY方向に移動させてもよい。
【0083】
上記の通り、レーザ光の照射によりデータの書き込みを行う本発明の構成は、半導体装
置を簡単に大量に作製することができる。従って、安価な半導体装置を提供することがで
きる。
【0084】
続いて、有機メモリからデータの読み出しを行う際の動作について説明する(図13、
図10参照)。データの読み出しは、メモリセルを構成する第1の導電層と第2の導電層
の間の電気特性が、データ「0」を有するメモリセルとデータ「1」を有するメモリセル
とで異なることを利用して行う。例えば、データ「0」を有するメモリセルを構成する第
1の導電層と第2の導電層の間の実効的な電気抵抗(以下、単にメモリセルの電気抵抗と
呼ぶ)が、読み出し電圧においてR0、データ「1」を有するメモリセルの電気抵抗を、
読み出し電圧においてR1とし、電気抵抗の差を利用して読み出す方法を説明する。なお
、R1<<R0とする。読み出し/書き込み回路は、読み出し部分の構成として、例えば
、図10(A)に示す抵抗素子46と差動増幅器47を用いた回路26を考えることがで
きる。抵抗素子46は抵抗値Rrを有し、R1<Rr<R0であるとする。抵抗素子46
の代わりにトランジスタ48を用いても良いし、差動増幅器47の代わりにクロックトイ
ンバータ49を用いることも可能である(図10(B))。クロックトインバータ49に
は、読み出しを行うときにHi、行わないときにLoとなる、信号又は反転信号が入力さ
れる。勿論、回路構成は図10に限定されない。
【0085】
メモリセル21からデータの読み出しを行う場合、まず、デコーダ23、24およびセ
レクタ25によってメモリセル21を選択する。具体的には、デコーダ24によって、メ
モリセル21に接続されるワード線Wyに所定の電圧Vyを印加する。また、デコーダ2
3とセレクタ25によって、メモリセル21に接続されるビット線Bxを読み出し/書き
込み回路26の端子Pに接続する。その結果、端子Pの電位Vpは、VyとV0が抵抗素
子46(抵抗値Rr)とメモリセル21(抵抗値R0もしくはR1)による抵抗分割によ
って決定される値となる。従って、メモリセル21がデータ「0」を有する場合には、V
p0=Vy+(V0−Vy)*R0/(R0+Rr)となる。また、メモリセル21がデ
ータ「1」を有する場合には、Vp1=Vy+(V0−Vy)*R1/(R1+Rr)と
なる。その結果、図10(A)では、VrefをVp0とVp1の間となるように選択す
ることで、図10(B)では、クロックトインバータの変化点をVp0とVp1の間とな
るように選択することで、出力電位Voutが、データ「0」/「1」に応じて、Lo/
Hi(もしくはHi/Lo)が出力され、読み出しを行うことができる。
【0086】
例えば、差動増幅器をVdd=3Vで動作させ、Vy=0V、V0=3V、Vref=
1.5Vとする。仮に、R0/Rr=Rr/R1=9とすると、メモリセルのデータが「
0」の場合、Vp0=2.7VとなりVoutはHiが出力され、メモリセルのデータが
「1」の場合、Vp1=0.3VとなりVoutはLoが出力される。こうして、メモリ
セルの読み出しを行うことができる。
【0087】
上記の方法によると、有機メモリ素子の電気抵抗の状態は、抵抗値の相違と抵抗分割を
利用して、電圧値で読み取っている。勿論、読み出し方法は、この方法に限定されない。
例えば、電気抵抗の差を利用する以外に、電流値の差を利用して読み出しても構わない。
また、メモリセルの電気特性が、データ「0」と「1」とで、しきい値電圧が異なるダイ
オード特性を有する場合には、しきい値電圧の差を利用して読み出しても構わない。
【0088】
このように、本実施の形態を用いることによって、有機メモリ素子の構成を単純に設け
ることができるため、微細な構造を有するつまり大容量を有する有機メモリ素子を備えた
半導体装置を低コストで設けることができる。また、上述した有機メモリは、データの追
記は可能であるが書き換えは不可能であるため、当該有機メモリを備えた半導体装置は偽
造等を効果的に防止することができる。
【0089】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0090】
(実施の形態3)
上述の通り、本発明の半導体装置は、メモリを必須の構成要素としており、本実施の形
態では上記の実施の形態2とは異なる構成のメモリについて図11を用いて以下に説明す
る。
【0091】
図11(A)において、メモリ216は、メモリセル221がマトリクス状に設けられ
たメモリセルアレイ222、デコーダ223、224、セレクタ225、読み出し/書き
込み回路226を有する。なお、ここで示すメモリ216の構成はあくまで一例であり、
センスアンプ、出力回路、バッファ等の他の回路を有していてもよい。
【0092】
メモリセル221は、ビット線Bx(1≦x≦m)に接続する第1の配線と、ワード線
Wy(1≦y≦n)に接続する第2の配線と、トランジスタ240と、記憶素子241と
を有する。また、記憶素子241は、一対の導電層の間に、有機化合物層が挟まれた構造
を有する。トランジスタのゲート電極はワード線と接続され、ソース電極もしくはドレイ
ン電極のいずれか一方はビット線と接続され、残る一方は記憶素子が有する2端子の一方
と接続される。記憶素子の残る1端子は共通電極(電位Vcom)と接続される。つまり
、図11示す有機メモリの構成は、図3、図5(B)における複数の記憶素子を含む層4
02または図8における複数の記憶素子を含む層502の記憶素子の構造(アクティブマ
トリクス型)に対応している。
【0093】
例えば、図3に示す半導体装置において、光学的作用によりデータの書き込みを行う場
合、第2の導電層369は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透光性がある材料により
形成するか、又は光を透過する厚さで形成する。また、電界効果トランジスタに光が照射
されないように、絶縁層342、343または370のうち少なくとも1つを遮光性の材
料で設けることが好ましい。また、図4〜図8に示すようにアンテナとして機能する導電
層を設ける場合には、データを書き込む記憶素子の部分は光を照射できるように開口窓を
設けておくことが好ましい。
【0094】
一方、電気的作用によりデータの書き込みを行う場合、第1の導電層361〜364と
第2の導電層369に用いる材料に特に制約はない。
【0095】
有機化合物層365〜368としては、上記の実施の形態において説明した通りであり
、上述したいずれかの材料の単層または積層した構造を用いることができる。
【0096】
有機化合物層として、上述したいずれかの有機化合物材料を用いた場合には、データの
書き込みはレーザ光等の光学的作用や電気的作用を加えることによって行う。また、光酸
発生剤をドープした共役高分子材料を用いた場合、データの書き込みは光学的作用により
行う。データの読み出しは、有機化合物層の材料には依存せず、いずれの場合であっても
、電気的作用により行う。
【0097】
次に、メモリ216にデータの書き込みを行うときの動作について説明する(図11参
照)。
【0098】
まず、電気的作用によりデータの書き込みを行うときの動作について説明する。なお、
書き込みはメモリセルの電気特性を変化させることで行うが、メモリセルの初期状態(電
気的作用を加えていない状態)をデータ「0」、電気特性を変化させた状態を「1」とす
る。
【0099】
ここでは、n行m列目のメモリセル221にデータを書き込む場合について説明する。
メモリセル221にデータ「1」を書き込む場合、まず、デコーダ223、224および
セレクタ225によってメモリセル221を選択する。具体的には、デコーダ224によ
って、メモリセル221に接続されるワード線Wnに所定の電圧V22を印加する。また
、デコーダ223とセレクタ225によって、メモリセル221に接続されるビット線B
mを読み出し/書き込み回路226に接続する。そして、読み出し/書き込み回路226
からビット線Bmへ書き込み電圧V21を出力する。
【0100】
こうして、メモリセルを構成するトランジスタ240をオン状態とし、記憶素子241
に、共通電極及びビット線とを電気的に接続し、おおむねVw=Vcom−V21の電圧
を印加する。電位Vwを適切に選ぶことで、当該導電層間に設けられた有機化合物層29
を物理的もしくは電気的変化させ、データ「1」の書き込みを行う。具体的には、読み出
し動作電圧において、データ「1」の状態の第1の導電層と第2の導電層の間の電気抵抗
が、データ「0」の状態と比して、大幅に小さくなるように変化させるとよく、単に短絡
(ショート)させてもよい。なお、電位は、(V21、V22、Vcom)=(5〜15
V、5〜15V、0V)、あるいは(−12〜0V、−12〜0V、3〜5V)の範囲か
ら適宜選べば良い。電圧Vwは5〜15V、あるいは−5〜−15Vとすればよい。なお
、この場合に、有機化合物層を挟んで設けられた一対の導電層間の距離が変化する場合が
ある。
【0101】
なお、非選択のワード線および非選択のビット線には、接続されるメモリセルにデータ
「1」が書き込まれないよう制御する。具体的には、非選択のワード線には接続されるメ
モリセルのトランジスタをオフ状態とする電位(例えば0V)を印加し、非選択のビット
線は浮遊状態とするか、Vcomと同程度の電位を印加するとよい。
【0102】
一方、メモリセル221にデータ「0」を書き込む場合は、メモリセル221には電気
的作用を加えなければよい。回路動作上は、例えば、「1」を書き込む場合と同様に、デ
コーダ223、224およびセレクタ225によってメモリセル221を選択するが、読
み出し/書き込み回路226からビット線Bmへの出力電位をVcomと同程度とするか
、ビット線Bmを浮遊状態とする。その結果、記憶素子241には、小さい電圧(例えば
−5〜5V)が印加されるか、電圧が印加されないため、電気特性が変化せず、データ「
0」書き込みが実現される。
【0103】
続いて、光学的作用によりデータの書き込みを行う場合について説明する。この場合、
レーザ照射装置232により、透光性を有する第2の導電層側から、有機化合物層に対し
て、レーザ光を照射することにより行う。
【0104】
有機化合物層として、有機化合物材料を用いた場合、レーザ光の照射により、有機化合
物層が酸化又は炭化して絶縁化する。そうすると、レーザ光が照射された記憶素子241
の抵抗値は増加し、レーザ光が照射されない記憶素子241の抵抗値は変化しない。また
、光酸発生剤をドープした共役高分子材料を用いた場合、レーザ光の照射により、有機化
合物層に導電性が与えられる。つまり、レーザ光が照射された記憶素子241には導電性
が与えられ、レーザ光が照射されない記憶素子241には導電性が与えられない。
【0105】
次に、電気的作用により、データの読み出しを行う際の動作について説明する。データ
の読み出しは、記憶素子241の電気特性が、データ「0」を有するメモリセルとデータ
「1」を有するメモリセルとで異なることを利用して行う。例えば、データ「0」を有す
るメモリセルを構成する記憶素子の電気抵抗が読み出し電圧においてR0、データ「1」
を有するメモリセルを構成する記憶素子の電気抵抗が読み出し電圧においてR1とし、電
気抵抗の差を利用して読み出す方法を説明する。なお、R1<<R0とする。読み出し/
書き込み回路は、読み出し部分の構成として、例えば、図11(B)に示す抵抗素子24
6と差動増幅器247を用いた回路226を考えることができる。抵抗素子は抵抗値Rr
を有し、R1<Rr<R0であるとする。抵抗素子246の代わりに、トランジスタ25
0を用いても良いし、差動増幅器247の代わりにクロックトインバータ251を用いる
ことも可能である(図11(C))。勿論、回路構成は図11に限定されない。
【0106】
n行m列目メモリセル221からデータの読み出しを行う場合、まず、デコーダ223
、224およびセレクタ225によってメモリセル221を選択する。具体的には、デコ
ーダ224によって、メモリセル221に接続されるワード線Wnに所定の電圧V24を
印加し、トランジスタ240をオン状態にする。また、デコーダ223とセレクタ225
によって、メモリセル221に接続されるビット線Bmを読み出し/書き込み回路226
の端子Pに接続する。その結果、端子Pの電位Vpは、VcomとV0が抵抗素子246
(抵抗値Rr)と記憶素子241(抵抗値R0もしくはR1)による抵抗分割によって決
定される値となる。従って、メモリセル221がデータ「0」を有する場合には、Vp0
=Vcom+(V0−Vcom)*R0/(R0+Rr)となる。また、メモリセル22
1がデータ「1」を有する場合には、Vp1=Vcom+(V0−Vcom)*R1/(
R1+Rr)となる。その結果、図11(B)では、VrefをVp0とVp1の間とな
るように選択することで、図11(C)では、クロックトインバータの変化点をVp0と
Vp1の間となるように選択することで、出力電位Voutが、データ「0」/「1」に
応じて、Lo/Hi(もしくはHi/Lo)が出力され、読み出しを行うことができる。
【0107】
例えば、差動増幅器をVdd=3Vで動作させ、Vcom=0V、V0=3V、Vre
f=1.5Vとする。仮に、R0/Rr=Rr/R1=9とし、トランジスタ240のオ
ン抵抗を無視できるとすると、メモリセルのデータが「0」の場合、Vp0=2.7Vと
なりVoutはHiが出力され、メモリセルのデータが「1」の場合、Vp1=0.3V
となりVoutはLoが出力される。こうして、メモリセルの読み出しを行うことができ
る。
【0108】
上記の方法によると、記憶素子241の抵抗値の相違と抵抗分割を利用して、電圧値で
読み取っている。勿論、読み出し方法は、この方法に限定されない。例えば、電気抵抗の
差を利用する以外に、電流値の差を利用して読み出しても構わない。また、メモリセルの
電気特性が、データ「0」と「1」とで、しきい値電圧が異なるダイオード特性を有する
場合には、しきい値電圧の差を利用して読み出しても構わない。
【0109】
また、上述した有機メモリは、データの追記は可能であるが書き換えは不可能であるた
め、当該有機メモリを備えた半導体装置は偽造等を効果的に防止することができる。
【0110】
なお、本実施の形態は上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0111】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の半導体装置を無線チップ3060として用いた場合の通信
手順について、以下に簡単に説明する(図14参照)。
【0112】
まず、無線チップ3060が含むアンテナ3050がリーダ/ライタ3070からの電
波を受信する。そうすると、電源発生手段3030において、共振作用により起電力が発
生する。そして、無線チップ3060が含むICチップ3040が起動して、制御手段3
020により、記憶手段3010内のデータが信号化される。
【0113】
次に、無線チップ3060が含むアンテナ3050から信号を発信する。そうすると、
リーダ/ライタ3070が含むアンテナにより送信された信号を受信する。受信した信号
は、リーダ/ライタ3070が含むコントローラを介して、データ処理装置に送信され、
ソフトウエアを用いてデータ処理が行われる。なお上記通信手順は、コイル型のアンテナ
を用い、無線チップのコイルとリーダ/ライタのコイル間に誘導されて発生する磁束を利
用した電磁誘導方式を用いた場合を例示しているが、マイクロ波帯の電波を使った電波方
式を用いてもよい。
【0114】
また、本実施の形態の無線チップは、素子形成層への電源電圧の供給を電源(バッテリ
)を搭載せず電波により行うパッシブ型を用いてもよいし、素子形成層への電源電圧の供
給をアンテナの代わりに電源(バッテリ)を搭載させて行うアクティブ型を用いてもよい
し、電波と電源により電源電圧を供給してもよい。
【0115】
無線チップ3060は、非接触で通信を行う点、複数読取りが可能である点、データの
書き込みが可能である点、様々な形状に加工可能である点、選択する周波数によっては、
指向性が広く、認識範囲が広い点等の利点を有する。無線チップ3060は、非接触によ
る無線通信で人や物の個々の情報を識別可能なICタグ、ラベル加工を施して目標物への
貼り付けを可能としたラベル、イベントやアミューズメント向けのリストバンド等に適用
することができる。また、無線チップ3060を樹脂材料により成型加工してもよいし、
無線通信を阻害する金属に直接固定してもよい。さらに、無線チップ3060は、入退室
管理システムや精算システムといった、システムの運用に活用することができる。
【0116】
次に、半導体装置を無線チップとして実際に使用するときの一形態について説明する。
表示部3210を含む携帯端末の側面には、リーダ/ライタ3200が設けられ、品物3
220の側面には無線チップ3230が設けられる(図15(A)参照)。品物3220
が含む無線チップ3230にリーダ/ライタ3200をかざすと、表示部3210に品物
の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に商品の説明等の商
品に関する情報が表示される。また、商品3260をベルトコンベアにより搬送する際に
、リーダ/ライタ3240と、商品3260に設けられた無線チップ3250を用いて、
該商品3260の検品を行うことができる(図15(B)参照)。このように、システム
に無線チップを活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加
価値化を実現する。
【0117】
なお、本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0118】
(実施の形態5)
本発明の半導体装置に有機メモリを一体化する場合、以下のような特徴を有することが
好ましい。
【0119】
読み出し時間は、無線チップ内の論理回路の動作周波数(典型的には10kHz〜1M
Hz)で動作させるために、1nsec〜100μsecであることが好ましい。本発明
では、読み出し動作は有機化合物の特性を変化させる必要がないため、読み出し時間とし
て100μsec以下を実現することができる。
【0120】
書き込み時間は勿論短い方がよいが、書き込み動作は頻繁に行われることは少なく、用
途によっては、100nsec〜10msec/bitが許容される範囲である。例えば
、256bitの書き込みを行う場合、10msec/1bitとすると2.56秒の時
間を要する。本発明では、書き込み動作は有機化合物の特性を変化させる必要があり、読
みだし動作より時間を要するが、書き込み時間として10msec以下を実現することが
できる。書き込み電圧を高くすることや、書き込みを並列化することで、書き込み時間を
低減することが可能である。
【0121】
メモリの記憶容量は64bit〜64Mbit程度であることが好ましい。無線チップ
の使用形態として、無線チップ内にはUID(Unique Identifier;固
有識別子)や他のわずかな情報のみを格納し、主データは他のファイルサーバを用いる場
合、64bit〜8kbit程度を有すればよい。無線チップ内部に履歴情報などのデー
タを格納する場合には、メモリの記憶容量は多い方がよく、8kbit〜64Mbit程
度を有することが好ましい。
【0122】
また、無線チップの通信距離は、チップの消費電力と密接に関わり、一般的に消費電力
が小さい方が大きい通信距離を実現することができる。特に、読み出し動作では1mW以
下とすることが好ましい。書き込み動作では、用途によって通信距離が短くても構わない
場合があり、読みだし動作よりは大きな消費電力でも許容され、例えば5mW以下とする
ことが好ましい。本発明において、読み出し時の有機メモリの消費電力は、勿論、記憶容
量や動作周波数に依存するが、10μW〜1mWを実現することが出来る。書き込み動作
は、読み出し動作よりも高い電圧を必要とすることから消費電力も増加する。これも記憶
容量や動作周波数に依存するが、50μW〜5mWを実現することが出来る。
【0123】
メモリセル面積は、小さいことが好ましく、100nm角〜30μm角を実現すること
ができる。メモリセルにトランジスタを有さないパッシブ型では配線幅でメモリセル面積
が決まり、最小加工寸法程度の小型のメモリセルサイズを実現できる。また、メモリセル
にトランジスタ1個を有するアクティブ型では、トランジスタを配置する面積が増大する
ものの、容量素子を有するDRAMや複数のトランジスタを用いるSRAMと比して小型
のメモリセル面積を実現できる。メモリセル面積30μm角以下を実現することで、1k
bitメモリであればメモリセルアレイ面積を1mm角以下とすることが可能となる。ま
た、メモリセル面積100nm角程度を実現することで、64Mbitメモリであればメ
モリセルアレイ面積を1mm角以下とすることが可能となる。その結果、チップ面積を小
さく抑えることが可能となる。
【0124】
なお、これらの有機メモリの特徴は、記憶素子の特性に依存する。記憶素子の特性とし
て、電気的な書き込みを行う場合に必要な電圧は、読み出しにおいて書き込みが行われな
い範囲で低い電圧で書き込めることが好ましく、5〜15V、より好ましくは5〜10V
とするとよい。また、書き込み時に記憶素子に流れる電流値は、1nA〜30μA程度と
することが好ましい。このような値とすることで、消費電力を低く抑え、また、昇圧回路
を小型にしてチップ面積を小さくすることが可能となる。記憶素子に電圧を印加して特性
を変化させるのに要する時間は、有機メモリの書き込み時間に対応して、100nsec
〜10msecとすることが好ましい。記憶素子面積は、100nm角〜10μm角とす
ることが好ましい。このような値とすることで、小型のメモリセルを実現してチップ面積
を小さくすることが可能となる。
【0125】
なお、本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【0126】
(実施の形態6)
本発明の半導体装置の用途は広範にわたるが、例えば、情報を記憶して表示する電子機
器に用いることができる。上記電子機器として、その具体例を図18に示す。
【0127】
図18(A)は炊飯器であり、筐体2001、表示部2002、操作ボタン2003、
蓋2004、取っ手2005等を含む。上記実施の形態に示した半導体装置を炊飯器に設
けることによって、様々なデータを記憶させ、そのデータを表示部2002を用いて表示
することができる。例えば、白米、おかゆ、山菜ごはん等を作るさいのレシピ(水分量や
お米の量等)をあらかじめ記憶させておき、ユーザーが操作ボタン2003を操作するこ
とによって、知りたい情報を簡単に検索することができる。また、例えばごはんのやわら
かさやかたさ等に関して、ユーザー自身が自分の好みに合わせてデータを書き込む(追記
)ことができる。
【0128】
図18(B)は電子レンジであり、筐体2101、表示部2102、操作ボタン210
3、窓2104、取っ手2105等を含む。上記実施の形態に示した半導体装置を電子レ
ンジに設けることによって、様々なデータを記憶させ、そのデータを表示部2102を用
いて表示することができる。例えば、様々な料理のレシピとその材料の加熱・解凍時間等
をあらかじめ記憶させておき、ユーザーが操作ボタン2103を操作することによって、
知りたい情報を簡単に検索することができる。また、データとして記憶されていないユー
ザーのオリジナル料理のレシピ等をデータとして書き込むことができる。
【0129】
図18(C)は洗濯機であり、筐体2201、表示部2202、操作ボタン2203、
蓋2204、ホース2205等を含む。上記実施の形態に示した半導体装置を洗濯機に設
けることによって、様々なデータを記憶させ、そのデータを表示部2202を用いて表示
することができる。例えば、洗濯の方法や衣類の量に対する水量や洗剤の分量等をあらか
じめ記憶させておき、ユーザーが操作ボタン2203を操作することによって、知りたい
情報を簡単に検索することができる。また、ユーザーの好みに合わせた洗濯の方法をデー
タとして書き込むことができる。
【0130】
なお、本発明の半導体装置の適用は図18に示したものに限られず、他にもテレビ受像
器、携帯電話をはじめとする携帯情報端末、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ナビゲーシ
ョンシステム等に利用することができる。また、本発明の半導体装置を携帯電話に適用し
た場合に関して図20を用いて説明する。携帯電話は、筐体2700、2706、パネル
2701、ハウジング2702、プリント配線基板2703、操作ボタン2704、バッ
テリ2705とを有する。パネル2701はハウジング2702に脱着自在に組み込まれ
、ハウジング2702はプリント配線基板2703に嵌着される。ハウジング2702は
パネル2701が組み込まれる電子機器に合わせて、形状や寸法が適宜変更される。プリ
ント配線基板2703には、パッケージングされた複数の半導体装置が実装されており、
このうちの1つとして、本発明の半導体装置を用いることができる。プリント配線基板2
703に実装される複数の半導体装置は、コントローラ、中央処理ユニット(CPU、C
entral Processing Unit)、メモリ、電源回路、音声処理回路、
送受信回路等のいずれかの機能を有する。
【0131】
パネル2701は、接続フィルム2708を介して、プリント配線基板2703と一体
化される。上記のパネル2701、ハウジング2702、プリント配線基板2703は、
操作ボタン2704やバッテリ2705と共に、筐体2700、2706の内部に収納さ
れる。パネル2701が含む画素領域2709は、筐体2700に設けられた開口窓から
視認できるように配置されている。
【0132】
本発明の半導体装置は、小型、薄型、軽量であることを特徴としており、上記特徴によ
り、電子機器の筐体2700、2706内部の限られた空間を有効に利用することができ
る。また、本発明の半導体装置は、単純な構造の記憶回路を有することを特徴としており
、上記特徴により、安価で、高集積化された記憶回路を有する半導体装置を用いた電子機
器を提供することができる。さらに、本発明の半導体装置は、不揮発性であって、追記が
可能な記憶回路を有することを特徴としており、上記特徴により、高機能化と高付加価値
化を実現した電子機器を提供することができる。また、本発明の半導体装置は、移動度や
応答速度が良好な単結晶半導体層をチャネル部としたトランジスタを有するため、高速な
動作が可能であり、動作周波数を向上させた半導体装置を用いた電子機器を提供すること
ができる。
【0133】
また、本発明の半導体装置は無線チップとしても利用可能であり、例えば、紙幣、硬貨
、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、
乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類及び電子機器等に設けて使用す
ることができる。これらの例に関して図19を用いて説明する。
【0134】
紙幣、硬貨とは、市場に流通する金銭であり、特定の地域で貨幣と同じように通用する
もの(金券)、記念コイン等を含む。有価証券類とは、小切手、証券、約束手形等を指す
(図19(A)参照)。証書類とは、運転免許証、住民票等を指す(図19(B)参照)
。無記名債券類とは、切手、おこめ券、各種ギフト券等を指す(図19(C)参照)。包
装用容器類とは、お弁当等の包装紙、ペットボトル等を指す(図19(D)参照)。書籍
類とは、書物、本等を指す(図19(E)参照)。記録媒体とは、DVDソフト、ビデオ
テープ等を指す(図19(F)参照)。乗物類とは、自転車等の車両、船舶等を指す(図
19(G)参照)。身の回り品とは、鞄、眼鏡等を指す(図19(H)参照)。食品類と
は、食料品、飲料等を指す。衣類とは、衣服、履物等を指す。保健用品類とは、医療器具
、健康器具等を指す。生活用品類とは、家具、照明器具等を指す。薬品類とは、医薬品、
農薬等を指す。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(テレビ
受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等を指す。
【0135】
紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類等に無線チップを設けることにより、
偽造を防止することができる。また、包装用容器類、書籍類、記録媒体等、身の回り品、
食品類、生活用品類、電子機器等に無線チップを設けることにより、検品システムやレン
タル店のシステムなどの効率化を図ることができる。乗物類、保健用品類、薬品類等に無
線チップを設けることにより、偽造や盗難の防止、薬品類ならば、薬の服用の間違いを防
止することができる。無線チップの設け方としては、物品の表面に貼ったり、物品に埋め
込んだりして設ける。例えば、本ならば紙に埋め込んだり、有機樹脂からなるパッケージ
なら当該有機樹脂に埋め込んだりするとよい。また、後に光学的作用を加えて書き込み(
追記)をする場合には、チップに設けられた記憶素子の部分に光が照射できるように透明
な材料で形成しておくことが好ましい。さらに、一度書き込んだデータの書き換えが不可
能である記憶素子を用いることによって、効果的に偽造を防止することが可能となる。ま
た、ユーザーが商品を購入した後のプライバシー等の問題についても、無線チップに設け
られた記憶素子のデータを消去するシステムを設けておくことによって解決することがで
きる。
【0136】
このように、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子
機器等に無線チップを設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効
率化を図ることができる。また乗物類に無線チップを設けることにより、偽造や盗難を防
止することができる。また、動物等の生き物に埋め込むことによって、個々の生き物の識
別を容易に行うことができる。例えば、家畜等の生き物に無線チップを埋め込むことによ
って、生まれた年や性別または種類等を容易に識別することが可能となる。
【0137】
以上のように、本発明の半導体装置はデータを記憶する物品あればどのようなものにで
も設けて使用することができる。なお、本実施の形態は、上記実施の形態と自由に組み合
わせて行うことができる。
【実施例1】
【0138】
本実施例では、基板上に有機メモリ素子を作製し、その有機メモリ素子に電気的作用に
よりデータの書き込みを行った結果について説明する。
【0139】
有機メモリ素子は、基板上に、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物
層、第2の導電層の順に積層した素子であり、第1の導電層は酸化珪素を含んだインジウ
ム錫酸化物、第1の有機化合物層は4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−
フェニルアミノ]ビフェニル(TPDと略称されることがある)、第2の有機化合物層は
、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NP
Dと略称されることがある)、第2の導電層はアルミニウムにより形成した。また、第1
の有機化合物層は10nm、第2の有機化合物層は50nmの膜厚で形成した。また、素
子のサイズは2mm×2mmであった。
【0140】
まず、電気的作用によりデータの書き込みを行う前と、電気的作用によりデータを書き
込んだ後の、有機メモリ素子の電流電圧特性の測定結果について、図16を用いて説明す
る。
【0141】
図16は、横軸が電圧値、縦軸が電流値であり、プロット261は電気的作用によりデ
ータを書き込む前の有機メモリ素子の電流電圧特性、プロット262は電気的作用により
データを書き込んだ後の有機メモリ素子の電流電圧特性を示す。なお、電気的作用は、電
圧を0Vより徐々に上げていくことで行った。プロット261に示したように、電圧を上
げるにつれて徐々に電流値が大きくなるが、約20Vで急激に電流値が大きくなることが
わかる。つまり、20Vでこの素子は書き込みができることを示している。従って、プロ
ット261の20V以下のカーブは、書き込みが行われていないメモリセルの電流電圧特
性であり、一方、プロット262は書き込みが行われたメモリセルの電流電圧特性を示し
ている。
【0142】
また、図16から、データの書き込み前と、データの書き込み後とで、有機メモリ素子
の電流電圧特性には大きな変化がみられる。例えば、印加電圧1Vでは、データ書き込み
前の電流値は4.8×10-5mAであるのに対し、データ書き込み後の電流値は1.1×
102mAであり、データの書き込み前と、データの書き込み後では、電流値に7桁の変
化が生じている。
【0143】
このように、データの書き込み前と、データの書き込み後では、有機メモリ素子の抵抗
値に変化が生じており、この有機メモリ素子の抵抗値の変化を、電圧値又は電流値により
読み取れば、記憶回路として機能させることができる。
【0144】
なお、上記のような有機メモリ素子を記憶回路として用いる場合、データの読み出し動
作の度に、有機メモリ素子には所定の電圧値(短絡しない程度の電圧値)が印加され、そ
の抵抗値の読み取りが行われる。従って、上記の有機メモリ素子の電流電圧特性には、読
み出し動作を繰り返し行っても、つまり、所定の電圧値を繰り返し印加しても、変化しな
いような特性が必要となる。
【0145】
そこで、データの読み出し動作を行った後の有機メモリ素子の電流電圧特性の測定結果
について、図17を用いて説明する。
【0146】
なお、この実験では、データの読み出し動作を1回行う度に、有機メモリ素子の電流電
圧特性を測定した。ここでは、データの読み出し動作を複数回行うことにより、有機メモ
リ素子の電流電圧特性の測定を行った。また、この電流電圧特性の測定は、電気的作用に
よりデータの書き込みが行われて抵抗値が変化した有機メモリ素子と、抵抗値が変化して
いない有機メモリ素子の、2つの有機メモリ素子に対して行った。
【0147】
図17は、横軸が電圧値、縦軸が電流値、プロット272は電気的作用によりデータの
書き込みが行われて抵抗値が変化した有機メモリ素子の電流電圧特性、プロット271は
抵抗値が変化していない有機メモリ素子の電流電圧特性を示す。
【0148】
プロット271から分かるように、書き込みを行う前の有機メモリ素子の電流電圧特性
は、電圧値が1V以上のときに特に良好な再現性を示す。同様に、プロット272から分
かるように、書き込みを行って抵抗値が変化した有機メモリ素子の電流電圧特性は、特に
良好な再現性を示す。
【0149】
上記の結果から、データの読み出し動作を複数回繰り返し行っても、その電流電圧特性
は変化しないことが分かる。従って、上記の有機メモリ素子を記憶回路として用いること
ができる。
【実施例2】
【0150】
次に、図24に示すような基板上に有機メモリ素子を作製した試料1〜試料6において
、有機メモリ素子に電気的にデータの書き込みを行ったときの電流電圧特性の測定結果を
図21〜23に示す。なお、ここでは、有機メモリ素子に電圧を印加して、有機メモリ素
子を短絡させて書き込みを行った。
【0151】
図21〜23は、それぞれ、横軸が電圧、縦軸が電流密度値、丸印のプロットはデータ
を書き込む前の有機メモリ素子の電流電圧特性の測定結果、四角印のプロットはデータを
書き込んだ後の、有機メモリ素子の電流電圧特性の測定結果を示す。また、試料1〜試料
6の水平面における大きさは、2mm×2mmである。
【0152】
試料1としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の導電層の順に積層した素
子である。ここでは、図24(A)に示すように、第1の導電層を酸化珪素を含むITO
で形成し、第1の有機化合物層をTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウムで形成し
た。また、第1の有機化合物層を厚さ50nmで形成した。試料1の電流電圧特性の測定
結果を図21(A)に示す。
【0153】
また、試料2としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の導電層の順に積
層した素子である。ここでは、図24(B)に示すように、第1の導電層を酸化珪素を含
むITOで形成し、第1の有機化合物層を、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,
8,8,−テトラシアノキノジメンタン(F4−TCNQと略称されることがある)を添
加したTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウムで形成した。また、第1の有機化合
物層を厚さ50nmで、F4−TCNQを0.01wt%添加して形成した。試料2の電
流電圧特性の測定結果を図21(B)に示す。
【0154】
また、試料3としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、
第2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図24(C)に示すように、第1の
導電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層をTPDで形成し、第2の
有機化合物層をF4−TCNQで形成し、第2の導電層をアルミニウムで形成した。また
、第1の有機化合物層を厚さ50nmで形成し、第2の有機化合物層を厚さ1nmで形成
した。試料3の電流電圧特性の測定結果を図22(A)に示す。
【0155】
また、試料4としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図24(D)に示すように、第1の導
電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層をF4−TCNQで形成し、
第2の有機化合物層をTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウムで形成した。また、
第1の有機化合物層を厚さ1nmで形成し、第2の有機化合物層を厚さ50nmで形成し
た。試料4の電流電圧特性の測定結果を図22(B)に示す。
【0156】
また、試料5としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図24(E)に示すように、第1の導
電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層を、F4−TCNQを添加し
たTPDで形成し、第2の有機化合物層をTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウム
で形成した。また、第1の有機化合物層を厚さ40nmで、F4−TCNQを0.01w
t%添加して形成した。また、第2の有機化合物層を厚さ40nmで形成した。試料5の
電流電圧特性の測定結果を図23(A)に示す。
【0157】
また、試料6としては、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第
2の導電層の順に積層した素子である。ここでは、図24(F)に示すように、第1の導
電層を酸化珪素を含むITOで形成し、第1の有機化合物層をTPDで形成し、第2の有
機化合物層をF4−TCNQを添加したTPDで形成し、第2の導電層をアルミニウムで
形成した。また、第1の有機化合物層を厚さ40nmで形成した。また、第2の有機化合
物層を厚さ10nmで、F4−TCNQを0.01wt%添加して形成した。試料6の電
流電圧特性の測定結果を図23(B)に示す。
【0158】
図21〜23に示す実験結果からも、試料1〜試料6において、有機メモリ素子の短絡
前後で、有機メモリ素子の電流電圧特性に大きな変化がみられる。また、これらの試料の
有機メモリ素子において、各有機メモリ素子が短絡する電圧にも再現性があり、誤差は0
.1V以内であった。
【0159】
次に、試料1〜試料6の書き込み電圧、及び書き込み前後の特性を表1に示す。
【表1】

【0160】
表1において、書き込み電圧(V)は、各有機メモリ素子が短絡するときの印加電圧を
示す。また、R(1V)は、書き込み後の有機メモリ素子に電圧を1V印加したときの電
流密度を、書き込み前の有機メモリ素子に電圧を1V印加したときの電流密度で除算した
値である。同様に、R(3V)は、書き込み後の有機メモリ素子に電圧を3V印加した時
の電流密度を、書き込み前の有機メモリ素子に3V印加した時の電流密度で除算した値で
ある。即ち、有機メモリ素子の書き込み前後における電流密度の変化を示す。印加電圧が
3Vの場合と比較して1V印加した場合、有機メモリ素子の書き込み前と書き込み後の電
流密度の変化は10の4乗以上と大きいことが分かる。
【符号の説明】
【0161】
302 単結晶半導体基板
303 nウェル
304 nウェル
305 pウェル
306 pウェル
307 フィールド酸化膜
308 ゲート絶縁膜
309 ゲート絶縁膜
310 ゲート絶縁膜
311 ゲート絶縁膜
312 ゲート
312a 多結晶シリコン層
312b シリサイド層
313 ゲート
313a 多結晶シリコン層
313b シリサイド層
314 ゲート
314a 多結晶シリコン層
314b シリサイド層
315 ゲート
315a 多結晶シリコン層
315b シリサイド層
316 pチャネル型FET
317 nチャネル型FET
318 pチャネル型FET
319 nチャネル型FET
320 低濃度不純物領域(LDD領域)
321 低濃度不純物領域(LDD領域)
322 低濃度不純物領域(LDD領域)
323 低濃度不純物領域(LDD領域)
324 サイドウォール
325 サイドウォール
326 サイドウォール
327 サイドウォール
328 ソース・ドレイン領域
329 ソース・ドレイン領域
330 ソース・ドレイン領域
331 ソース・ドレイン領域
332 絶縁層
333 絶縁層
334 ソース・ドレイン配線
335 ソース・ドレイン配線
336 ソース・ドレイン配線
337 ソース・ドレイン配線
338 ソース・ドレイン配線
339 ソース・ドレイン配線
340 ソース・ドレイン配線
341 ソース・ドレイン配線
342 絶縁層
343 絶縁層
345 第1の導電層
346 有機化合物層
347 第2の導電層
348 絶縁層
349 絶縁層
350 記憶素子
351 層
352 層
361 第1の導電層
362 第1の導電層
363 第1の導電層
364 第1の導電層
365 有機化合物層
367 有機化合物層
368 有機化合物層
369 第2の導電層
370 絶縁層
371 記憶素子
372 記憶素子
373 記憶素子
374 記憶素子
375 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶半導体基板をチャネル領域として形成された電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタの上方に設けられた記憶回路とを有し、
前記記憶回路は、第1の導電層と、有機化合物層と、第2の導電層とが順に積層された記憶素子を有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−77535(P2011−77535A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259096(P2010−259096)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2005−304375(P2005−304375)の分割
【原出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】