説明

半導体装置

【課題】可撓性回路基板を金属基板の縁部から適切に保護することができる半導体装置の提供。
【解決手段】本発明による半導体装置1は、金属基板と、金属基板上に配置される半導体素子と、金属基板上に一端が配置され、半導体素子と電気的に接続される可撓性回路基板であって、金属基板の縁部を越えて金属基板の外側に延在する可撓性回路基板とを含み、可撓性回路基板における金属基板の縁部上に位置する部位には、金属基板側に板厚付加部材が結合されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
可撓性回路基板を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、放熱体に接しているセラミックス基板と、セラミックス基板に接している金属部材と、該金属部材の上に搭載された電子部品と、セラミックス基板より外側に配置され、電子部品とボンディングワイヤで電気的に接続され、外部に通じる電極(制御端子)と、を有する半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−088215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術のように、制御端子を介して電子部品を外部と電気的に接続する構成では、基板より外側に制御端子が配置されるので、半導体装置のサイズが大きくなるという問題点がある。
【0005】
この点、基板上に可撓性回路基板を直接取り付けることで、基板上の半導体素子と外部との電気的接続を実現する構成では、半導体装置のサイズを小さくできる点で有利である。しかしながら、かかる構成では、可撓性回路基板を基板の縁部から適切に保護する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、可撓性回路基板を金属基板の縁部から適切に保護することができる半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、金属基板と、
前記金属基板上に配置される半導体素子と、
前記金属基板上に一端が配置され、前記半導体素子と電気的に接続される可撓性回路基板であって、前記金属基板の縁部を越えて前記金属基板の外側に延在する可撓性回路基板とを含み、
前記可撓性回路基板における前記金属基板の縁部上に位置する部位には、前記金属基板側に板厚付加部材が結合されることを特徴とする、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可撓性回路基板を金属基板の縁部から適切に保護することができる半導体装置の提供が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例による半導体装置1の要部を示す斜視図である。
【図2】半導体装置1の主要断面図である。
【図3】FPC90の単品状態の断面図である。
【図4】他の実施例によるFPC90の単品状態の断面図である。
【図5】ワイヤボンディングツールを用いたワイヤボンディング時の状態を模式的に示す図である。
【図6】打ち抜きにより形成されるヒートスプレッダ20の縁部のバリを模式的に示す図である。
【図7】プレス成形されたヒートスプレッダに、上述の補強材92を備えていない比較例によるFPCを取り付ける様子を示す図である。
【図8】本実施例によるFPC90をプレス成形されたヒートスプレッダ20に取り付ける様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の一実施例による半導体装置1の要部を示す斜視図である。図2は、半導体装置1の主要断面図である。図3は、FPC90の単品状態の断面図である。尚、図1においては、都合上、図2に示されている半導体装置1の絶縁層30及びヒートシンク40についての図示が省略されている。
【0012】
尚、半導体装置1の上下方向は、半導体装置1の搭載状態に応じて上下方向が異なるが、以下では、便宜上、半導体装置1のヒートスプレッダ20に対して半導体チップ10側を上方とする。また、用語の定義として、「外側」及び「内側」とは、ヒートスプレッダ20の上面に垂直な面直視でヒートスプレッダ20の中心を基準とする。即ち、「外側」とは、面直視でヒートスプレッダ20の中心から離れる側を指す。尚、ヒートスプレッダ20の中心は凡そであればよく、厳密に決定されるべき性質のものでない。
【0013】
半導体装置1は、例えば、ハイブリッド車又は電気自動車で使用されるモータ駆動用のインバータを構成するものであってよい。
【0014】
半導体装置1は、図1及び図2に示すように、半導体チップ10と、ヒートスプレッダ20と、絶縁層30と、ヒートシンク40と、FPC(flexible printed circuit)90とを含む。
【0015】
半導体チップ10は、パワー半導体素子を含む。半導体チップ10は、ヒートスプレッダ20上に半田50により接合される。図示の例では、半導体チップ10は、1つのヒートスプレッダ20に対して2つ設けられ、それぞれ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、FWD(Free Wheeling Diode)である。この場合、IGBTは、上面にエミッタ電極を備え、下面にコレクタ電極を備える。また、FWDは、上面にアノード電極を備え、下面にカソード電極を備える。尚、半導体チップ10が含むパワー半導体素子の種類や数は、任意である。また、半導体チップ10は、IGBTに代えて、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)のような他のスイッチング素子を含んでもよい。
【0016】
半導体チップ10の上面には、第1接続端子12が半田50により固着(接合)される。図示の例では、第1接続端子12のそれぞれの脚部の下端は、それぞれ、IGBTのエミッタ電極と、FWDのアノード電極に半田50により接合される。第1接続端子12の上部は、バスバー(図示せず)に例えばレーザ溶接により接合されてもよい。
【0017】
ヒートスプレッダ20は、半導体チップ10で発生する熱を吸収し拡散する部材である。ヒートスプレッダ20は、例えば銅、アルミなどの熱拡散性の優れた金属から形成される。本例では、一例として、ヒートスプレッダ20は、銅により形成される。銅としては、伝導率が銅材の中で最も高い無酸素銅(C1020)が好適である。
【0018】
ヒートスプレッダ20の上面には、第2接続端子14が半田等により接合される。尚、ヒートスプレッダ20には、半導体チップ10としてのIGBTのコレクタ電極(及び半導体チップ10としてのFWDのカソード電極)が接続されるので、第2接続端子14は、IGBTのコレクタ電極の取り出し部を構成する。第2接続端子14は、第1接続端子12と同様、バスバー(図示せず)に例えばレーザ溶接により接合されてもよい。
【0019】
絶縁層30は、樹脂接着剤や樹脂シートから構成されてよい。絶縁層30は、例えばアルミナをフィラーとした樹脂で形成されてもよい。絶縁層30は、ヒートスプレッダ20とヒートシンク40の間に設けられ、ヒートスプレッダ20とヒートシンク40に接合する。絶縁層30は、ヒートスプレッダ20とヒートシンク40との間の電気的な絶縁性を確保しつつ、ヒートスプレッダ20からヒートシンク40への高い熱伝導性を確保する。
【0020】
ヒートシンク40は、熱伝導性の良い材料から形成され、例えば、アルミなどの金属により形成される。ヒートシンク40は、図2に示すように、下面側にフィン42を備える。フィン42の数や配列態様は任意である。フィン42は、図示のようなストレートフィンであってもよいし、その他、ピンフィンの千鳥配置等で実現されてもよい。半導体装置1の実装状態では、フィン42は、冷却水や冷却空気のような冷却媒体と接触する。このようにして、半導体装置1の駆動時に生じる半導体チップ10からの熱は、ヒートスプレッダ20、絶縁層30を介して、ヒートシンク40のフィン42から冷却媒体へと伝達され、半導体装置1の冷却が実現される。
【0021】
FPC90は、図1及び図2に示すように、ヒートスプレッダ20上に一端が取り付けられる。FPC90は、ヒートスプレッダ20上に例えば接着剤により接合されてもよい。図示の例では、FPC90は、ヒートスプレッダ20側に、幅広の端部90aを有し、この端部90aがヒートスプレッダ20上に接合される。図示の例では、FPC90の端部90aは、ヒートスプレッダ20上における半導体チップ10に隣接する領域に接合される。また、FPC90は、図1及び図2に示すように、端部90aから他端側へと延在する部位がヒートスプレッダ20の縁部を越えてヒートスプレッダ20の外側へと延出する態様で、配置される。
【0022】
FPC90は、図1及び図2に示すように、ヒートスプレッダ20上でボンディングワイヤ80により半導体チップ10に接続される。図示の例では、FPC90は、ボンディングワイヤ80によりIGBT(半導体チップ10の一例)に電気的に接続される。FPC90は、複数個のボンディングワイヤ80で半導体チップ10に接続されてもよい。複数個のボンディングワイヤ80は、例えば、IGBTのスイッチング用の制御線(ゲート信号線、エミッタ信号線)や、チップ温度検出用の線、センス端子等を形成するものであってよい。
【0023】
FPC90は、図3に示すように、FPC本体91と、補強材92とを含む。FPC本体91は、例えば20μm程度の板厚であってよい。FPC本体91の上面(ヒートスプレッダ20に接合される側とは逆側の表面)には、ボンディングワイヤ80に接続される配線(図示せず)が形成(プリント)される。補強材92は、FPC本体91の下面に接合される。補強材92は、FPC本体91の下面に接着剤により貼り付けられてもよい。補強材92は、図2に示すように、FPC90におけるヒートスプレッダ20の縁部上に位置する部位に設けられる。これにより、ヒートスプレッダ20の縁部によるFPC90のFPC本体91の損傷(ひいては配線の損傷)を防止することができる。この観点から、補強材92は、FPC90におけるヒートスプレッダ20の縁部上に位置する部位の全体に亘って設けられる。図示の例では、補強材92は、FPC90における広幅の端部90aの全体に設けられてよい。
【0024】
補強材92は、ヒートスプレッダ20の縁部からFPC本体91(ひいては配線)を保護するのに適切な構成を有する。この観点から、補強材92は、好ましくは、FPC本体91よりも大きい板厚を有する。補強材92は、例えば200μm程度の板厚であってよい。また、補強材92は、上記の保護機能を備える限り、任意の材料から構成されてよいが、好ましくは、FPC本体91と同一の材料(例えばポリイミド)から形成される。
【0025】
このように本実施例によれば、FPC90がヒートスプレッダ20上に接合されるので、ヒートスプレッダ20よりも外側に制御端子を設ける場合に比べて、当該制御端子に関連したスペースが不要となり、半導体装置1の小型化を図ることができる。また、FPC90をヒートスプレッダ20上に接合する場合、上述のように半導体装置1の小型化を図ることができる利点がある反面、ヒートスプレッダ20の縁部によるFPC本体91の損傷(ひいては配線の損傷)の虞があるが、本実施例によれば、補強材92がFPC本体91におけるヒートスプレッダ20の縁部上に位置する部位に設けられるので、ヒートスプレッダ20の縁部からFPC本体91(ひいては配線)を適切に保護することができる。
【0026】
尚、図4に示すように、FPC90は、ヒートスプレッダ20側の端部90aとは逆の他端側にも、補強材92と同様の補強材93を備えてもよい。このような補強材93は、図4に示すように、FPC90の他端側をコネクタに接合させるときに必要とされてよい。他言すると、コネクタに接合させるときに使用される補強材93と同様の素材により、補強材92を形成することできる。この場合、コストの増加なしに補強材92を備えるFPC90を製造することができる。
【0027】
ここで、上述の実施例は、以下で図5を参照して説明するように、特に、FPC90がボンディングワイヤ80により半導体チップ10に接続される場合に好適である。
【0028】
図5は、ワイヤボンディングツールを用いたワイヤボンディング時の状態を模式的に示す図であり、図5(A)は、上述の補強材92を備えていない比較例によるFPCを使用した場合を示し、図5(B)は、本実施例の場合を示す。
【0029】
図5(A)に示すように、ワイヤボンディングツールを用いたワイヤボンディング時には、ワイヤボンディングツールによりボンディングワイヤ80のFPC側端部をFPCに結合する際、FPCにはワイヤボンディングツールから荷重がかけられる。この際、FPCにおけるヒートスプレッダの縁部(角)上に位置する部位(特に、図5(A)の矢印Yで指示される部位)は応力集中しやすくなる。
【0030】
この点、比較例によれば、FPCが補強材92を備えていないので、FPCにおけるヒートスプレッダの縁部上に位置する部位に高応力が発生し、当該部位おける配線パターンに損傷が生じやすくなる。このため、このような比較例では、ワイヤボンディングツール用に十分なスペースを確保する必要性(ボンディングワイヤ80のFPC側接続位置とヒートスプレッダ20の縁部との間に十分な距離を確保する必要性)が生じ、それに伴い半導体装置のサイズの大型化を招く。
【0031】
これに対して、本実施例によれば、FPC90は、上述の如く、ヒートスプレッダ20の縁部上に位置する部位に補強材92を備えているので、ワイヤボンディングツールを用いたワイヤボンディング時においても、FPC90に発生する応力を効果的に低減することができ、FPC90上の配線パターンの損傷を効果的に防止することができる。従って、本実施例によれば、ボンディングワイヤ80のFPC90側接続位置をヒートスプレッダ20の縁部の近傍に設定することで、半導体装置1の小型化を図りつつ、ワイヤボンディングツールを用いたワイヤボンディング時に配線パターンの損傷が生じるのを防止することができる。
【0032】
また、上述の実施例は、以下で図6乃至図8を参照して説明するように、ヒートスプレッダ20が打ち抜きにより形成される場合に好適である。
【0033】
図6は、打ち抜きにより形成されるヒートスプレッダ20の縁部のバリを模式的に示す図である。図6に示すように、ヒートスプレッダ20をプレスで打ち抜くことで形成する場合、ヒートスプレッダ20の縁部には、バリ(プレスバリ)が発生する。このバリは、典型的には、30〜40μmの高さを有する。尚、バリは、典型的には、ヒートスプレッダ20の周縁部の全周に亘って形成される。
【0034】
図7は、プレス成形されたヒートスプレッダに、上述の補強材92を備えていない比較例によるFPCを取り付ける様子を示す図である。図8は、本実施例によるFPC90をプレス成形されたヒートスプレッダ20に取り付ける様子を示す図である。
【0035】
FPCは、ヒートスプレッダにおけるバリが発生する側の表面に接着剤により取り付けられる。尚、これにより、ヒートスプレッダにおけるバリが発生しない側を、絶縁層を介してヒートシンクに接合させることができる。
【0036】
この点、比較例によるFPCは、厚さが例えば20μm程度であり、接着剤の層の厚さは10μm程度である。この場合、図7(B)に模式的に示すように、バリがFPCを突き抜け(又はFPC内部まで侵入し)、FPCの配線をショートさせやすくなる。このため、比較例では、ヒートスプレッダのバリ取りが必要となる。
【0037】
これに対して、本実施例によるFPC90は、比較例と同様、FPC本体91が例えば20μm程度の厚さであり、接着剤の層の厚さが10μm程度である場合でも、FPC90におけるヒートスプレッダ20の縁部上に位置する部位に補強材92を備えているので、バリからFPC90の配線を効果的に保護することができる。即ち、本実施例によれば、ヒートスプレッダ20のバリ取りを不要としつつ、バリからFPC90の配線を効果的に保護することができる。
【0038】
尚、この観点から、補強材92は、好ましくは、ヒートスプレッダ20のバリの高さよりも大きい板厚を有する。この場合、補強材92は、ヒートスプレッダ20に生じるバリの高さの取りうる範囲の最大値よりも大きい板厚に設定されてよい。例えばバリの高さの取りうる範囲が30〜40μmの場合、補強材92は、40μmよりも大きい板厚に設定され、例えば200μm程度であってもよい。
【0039】
尚、以上の実施例においては、ヒートスプレッダ20が特許請求の範囲の「金属基板」に対応し、FPC90が特許請求の範囲の「可撓性回路基板」に対応し、補強材92が特許請求の範囲の「板厚付加部材」に対応している。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0041】
例えば、上述した実施例において、半導体装置1は、ヒートスプレッダ20の上面が樹脂により封止されてもよい。樹脂は、半導体チップ10を保護すると共に、半田50によるヒートスプレッダ20と半導体チップ10との間の接合部の信頼性や、ボンディングワイヤ80とFPC90及び半導体チップ10との接合信頼性を高める役割を果たす。任意の樹脂材料であってよく、例えばエポキシ樹脂やシリコンゲルのようなゲル材料が使用されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 半導体装置
10 半導体チップ
12 第1接続端子
14 第2接続端子
20 ヒートスプレッダ
22 基板
30 絶縁層
40 ヒートシンク
42 フィン
50 半田
80 ボンディングワイヤ
90 FPC
90a 端部
91 FPC本体
92 補強材
93 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、
前記金属基板上に配置される半導体素子と、
前記金属基板上に一端が配置され、前記半導体素子と電気的に接続される可撓性回路基板であって、前記金属基板の縁部を越えて前記金属基板の外側に延在する可撓性回路基板とを含み、
前記可撓性回路基板における前記金属基板の縁部上に位置する部位には、前記金属基板側に板厚付加部材が結合されることを特徴とする、半導体装置。
【請求項2】
前記板厚付加部材は、前記可撓性回路基板における基板材料と同一の材料から構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記可撓性回路基板は、前記半導体素子とボンディングワイヤにより接続される、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属基板は、打ち抜きにより形成され、
前記可撓性回路基板は、前記金属基板における前記打ち抜き時にバリが生じる側に設けられ、
前記板厚付加部材の板厚は、前記金属基板におけるバリの高さよりも大きい、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98465(P2013−98465A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242205(P2011−242205)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】