説明

半導体関連部品搬送ケース

【課題】揮発性炭化水素等の少ないプロピレン系樹脂組成物を用い製造され、特に半導体およびその関連部品を収納した場合に、特に揮発性物質などによる内容物への汚染や汚染による不具合の発生などの影響のないプロピレン系樹脂製の射出成形半導体関連部品搬送ケースを提供する。
【解決手段】 プロピレン系重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤が0.03〜0.2重量部の範囲で配合された、揮発性成分含有量が10重量ppm以下のプロピレン系樹脂組成物を成形材料として使用して、その材料の射出成形後の揮発性成分含有量を15重量ppm以下とすることにより、ケース内に収納した半導体関連部品の揮発性物質による汚染の影響を少なくした半導体関連部品搬送ケース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性炭化水素等の少ないプロピレン系樹脂組成物を用い製造された射出成形半導体関連部品搬送ケースに関する。詳しくは、メタロセン触媒を用いたオリゴマー成分の極めて少ないプロピレン系樹脂組成物を用い製造された射出成形半導体関連部品搬送ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体は、耐熱性、成形性、透明性、耐薬品性に優れるという特徴により、各種工業材料、各種容器、日用品、フィルムおよび繊維など様々な用途に幅広く使用されている。しかしながら、ポリマー中に含有する低分子量成分や残留物質による揮発成分は、加工時の発煙、異臭等の発生原因になるばかりか、加工後でも臭気、色相に悪影響を与えることがある。
【0003】
近年、コンピューター等の電子機器の普及・発展には著しいものがある。コンピューター等には半導体ウエハー・ディスクやハードディスク等の記憶ディスクの半導体関連部品が使用されている。コンピューター等の組み立ておいてはこの半導体関連部品を組み立てラインに供するためこれを運搬、移送する必要性があり、従来ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の搬送ケースがこの目的のため用いられてきた。ここで半導体関連部品とは、シリコンウエハー、ハードディスク、ディスク基板、ICチップ、光磁気ディスク、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスクの磁気抵抗ヘッド等のことをいう。
【0004】
しかしながら、コンピューターの記憶容量を増大させるために半導体関連部品がより高度に集積化されるに伴い、上記の搬送用ケースに収納された半導体関連部品に性能上の不具合が発生する頻度が増加する問題が生じた。具体的には、記憶ディスクに有機物や酸性ガスが付着することからくる記憶ディスクの動作不良等の不具合があげられる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
これらポリプロピレン系重合体にかかわる問題を解決するために、重合後に低分子量成分を洗浄除去する方法(例えば、特許文献1、2参照。)や塊状重合後の液相部分を分離除去する方法(例えば、特許文献3、4参照。)が提案されているが、これら文献において、熱成形によりプロピレン分子が切断されることによる揮発性成分の増加は考慮されておらず、製品におけるクリーン性は十分なレベルではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的または課題は、かかる従来技術の状況において、揮発性成分含有量が極めて少なく、シリコンウエハーやハードディスク等の半導体関連部品搬送の際にも性能低下を起こさないクリーン性に優れた射出成形された半導体関連部品搬送ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々鋭意検討を行った結果、半導体関連部品搬送ケース材料から発生する炭化水素等の微量ガスが半導体関連部品に作用し沈着することから上記の不具合を発生させることに着目し、ポリプロピレン系重合体材料に酸化防止剤を所定の割合で添加することにより、熱成形を行った製品における炭化水素等の揮発性成分が特定の値以下である、半導体関連部品搬送の際に性能低下を起こさない半導体関連部品搬送ケースを製造できることを見出し本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明の第1の特徴は、プロピレン系重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤が0.03〜0.2重量部の範囲で配合された、揮発性成分含有量が10重量ppm以下のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られる、射出成形後の揮発性成分含有量が15重量ppm以下であることを特徴とする半導体関連部品搬送ケース、にある。
本発明の第2の特徴は、プロピレン系重合体100重量部に対する、フェノール系酸化防止剤の配合量の下限が下記式1を満足することを特徴とする前記した半導体関連部品搬送ケース、にある。
式1 3.0×10−3T−0.67
(但し、単位は重量部、Tは成形温度である。また、0.03以下の値は、0.03とする。)
本発明の第3の特徴は、プロピレン系重合体の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が2.0〜3.5の範囲であることを特徴とする前記した半導体関連部品搬送ケース、にある。
【0009】
本発明の第4の特徴は、成形温度が、170〜300℃の範囲であることを特徴とする前記した半導体関連部品搬送ケース、にある。
本発明の第5の特徴は、プロピレン系重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤の配合量が、下記式1で表される量以上であり、0.2重量部以下の範囲である、揮発性成分含有量が10重量ppm以下のプロピレン系樹脂組成物を、成形温度170〜300℃の範囲で射出成形し、射出成形後の揮発性成分含有量が15重量ppm以下である半導体関連部品搬送ケースを得ることを特徴とする半導体関連部品搬送ケースの製造方法、にある。
式1 3.0×10−3T−0.67
(但し、単位は重量部、Tは成形温度である。また、0.03以下の値は、0.03とする。)
上記の手段により、本発明の課題を解決することができたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体関連部品搬送ケースは、揮発成分量が少ないため、従来のケースと比べ極めて内容物の汚染が生じにくく、高集積回路用半導体等の搬送に非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、オリゴマー成分含有量が少ないポリプロピレン系重合体から成形された半導体関連部品搬送ケースである。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるポリプロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体、あるいはプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を意味する。それらの中で、プロピレン単独重合体およびプロピレンとエチレンとのランダム共重合体が好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、好ましくはプロピレン単位を90〜99.5重量%、さらに好ましくは92〜99重量%、エチレン単位を好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜8重量%含んでなるものである。
【0012】
本発明で用いるポリプロピレン系重合体は、ポリマー内に含まれるハロゲン含有量、例えば、塩素の含有量が10重量ppm以下であり、好ましくは5重量ppm以下である。ハロゲン含有量が多いと腐食性を発現することになるので、好ましくない。
また、本発明で用いるポリプロピレン系重合体は、揮発性成分量が10重量ppm以下であり、好ましくは8重量ppm以下であり、さらに好ましくは5重量ppm以下である。揮発性成分量が多いと、半導体関連部品へ付着し好ましくない。
【0013】
本発明の揮発性成分とは、発生原因として多く場合が考えられるが、主な要因の一つは、重合により製造されたポリプロピレン系重合体の製造法の違いに起因する固有の問題が原因する場合が多い。チーグラー触媒によるポリプロピレン系重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定して、Mw/Mn(分子量分布の指標)を求めると、触媒の種類、重合条件により若干異なるが、約4〜9であるのに対して、メタロセン触媒によるプロピレン系重合体は、約2〜3と、分子鎖の長さが非常にそろっているといえる。そうすれば、揮発性成分の発生の原因になるのではないかと予測されそうな、未反応モノマー、ダイマー、低分子量化合物、非晶質成分、オリゴマーなどの、比較的低分子量の成分の含有量が、通常は5重量%以下、3重量%以下、好ましくは1重量%以下と少ないために、メタロセン触媒によるポリプロピレン系重合体を使用することが揮発性成分の発生の原因を原料の段階で、4ppm、5ppm、8ppmというような、いわゆる10重量ppm以下に止めることができる。一方、チーグラー触媒によるポリプロピレン系重合体の場合には、分子量分布が比較的広く、低分子量域を潜在的に多く含むために、揮発性成分をプロピレン系重合体という、いわゆる成形用ポリマーの原料段階で、12ppm、16ppm、19ppmというような、いわゆる10重量ppm以上に含まれている場合が多い。
【0014】
これは、成形加工という加熱段階に付しても、メタロセン型のプロピレン系重合体は、フェノール系酸化防止剤の機能を相対的に高めることができる。特に成形前に対して成形後の揮発性成分の発生をメタロセン触媒による方が、チーグラー触媒による場合に比較して有利である。チーグラー型の場合に原料段階の揮発性成分12〜14重量ppmの原料を、それに特定のフェノール系酸化防止剤を添加して、慣用の射出成形により成形をしたケースの成形品の揮発性成分の含有量が28〜32重量ppm程度と予測されるのに対して、メタロセン型の場合に、例えば、4〜5重量ppmのものを、同様に慣用の射出成形により成形をしたケースの成形品の場合には、それの揮発性成分の含有量が10〜14重量ppm程度になるような傾向を示す場合があり、メタロセン型の方が、チーグラー型に比較して、射出成形に付しても、相対的に揮発性成分の発生を抑制するという点で予期せぬ挙動である。
勿論、揮発性成分は、ポリプロピレン系重合体の副生成物ばかりでなく、重合溶媒、共重合に供されるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、触媒、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの不活性飽和炭化水素溶剤や液状α−オレフィンなどのポリマー洗浄溶液、回収溶剤のような重合体の製造の段階で混入するものもありえる。さらに、フェノール系酸化防止剤、加工助剤のような各種添加剤から混入する場合の想定できるので、半導体関連部品輸送ケースの成形には、ポリマー、洗浄、抽出、添加剤を含むあらゆる観点からの対策を留意する必要がある。
【0015】
本発明で用いるポリプロピレン系重合体は、公知のオレフィン重合触媒を用いて製造することができるが、好ましくはメタロセン触媒を用いる。
本発明で用いるポリプロピレン系重合体を得るために用いられる触媒系は、公知のメタロセン触媒系が使用できるが、好ましくは、メチルアルモキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物やフッ素含有ホウ素化合物を助触媒として使用しない触媒系が用いられる。アルミニウムオキシ化合物を用いて重合すると生成ポリマー中に存在するAl量が多くなり、また、フッ素含有ホウ素化合物を用いて重合すると生成ポリマー中に存在するハロゲン量が多くなる。本発明にかなうハロゲン含有量のポリプロピレン系重合体を得るためには、触媒除去工程の負荷を非常に大きくせねばならず、実用的でない。
【0016】
本発明にかなうポリプロピレン系重合体を得るためには、以下に述べる成分[A]、成分[B]および必要に応じて使用する成分[C]を組み合わせて得られる触媒系を用いることが好ましい。
成分[A]メタロセン錯体:共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物。
成分[B]助触媒:化合物[B]とメタロセン錯体[A]を反応させることにより、該メタロセン錯体[A]を活性化することのできる化合物。
成分[C]有機アルミニウム化合物。
メタロセン触媒としては、担持型が好ましい。メタロセン錯体を担持する担体の具体例としては、シリカ、アルミナ等の無機酸化物もしくはポリプロピレン系重合体等の有機物を挙げることができ、成分[A]を粉末状体に担持したもの、あるいは必要に応じて、さらに成分[C]有機アルミニウム化合物と接触させたものなどが挙げられる。
【0017】
担持メタロセン触媒の特に好ましい例としては、担体が助触媒の機能を兼ねたイオン交換性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、以下に述べる成分[A]、成分[B]および必要に応じて添加される成分[C]を組み合わせて得られる。
成分[A]メタロセン錯体:共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表第4〜6族の遷移金属化合物。
成分[B]助触媒:イオン交換性層状ケイ酸塩。
成分[C]有機アルミニウム化合物。
上記の成分[A]としては、具体的には、次の一般式[I]で表される化合物を使用することができる。
Q(C4−a)(C4−b)MXY ・・・[I]
上記の一般式[I]において、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。Mは、周期律表第4〜6族遷移金属を表し、中でもチタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示す。RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のRまたは2個のRがそれぞれ結合してC4〜C10環を形成していてもよい。aおよびbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例として、アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。メタロセン錯体として、具体的には次の化合物を挙げることができる。
【0018】
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(6)エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(7)エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(14)メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド
(15)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド
(16)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(17)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(18)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(19)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(20)ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(21)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(22)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(23)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物などの他の第4、5、6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が挙げられる。本発明の触媒成分および触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
【0019】
成分[B]イオン交換性層状ケイ酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。イオン交換性層状ケイ酸塩として粘土化合物を使用することができ、粘土化合物の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
(1)1:1型構造が主要な構成層であるディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族
(2)2:1型構造が主要な構成層であるモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群
本発明で使用する珪酸塩は、上記(1)、(2)の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。
これら珪酸塩を酸、塩、アルカリ、酸化剤、還元剤、有機溶剤などで化学処理することにより活性向上を図ることができる。
【0020】
酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の表面の不純物を除く、あるいは層間陽イオンの交換を行なうほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられるが、好ましくは無機酸、特に好ましくは硫酸である。
酸処理条件に特に制限はないが、好ましくは5〜50重量%の酸の水溶液を60〜100℃の温度で1〜24時間反応させるような条件であり、その途中で酸の濃度を変化させてもよい。酸処理した後、通常洗浄が行われる。洗浄とは処理系内に含まれる酸をイオン交換性層状珪酸塩から分離除去する操作である。
塩類処理で用いられる塩類としては、特開平8−127613号公報に記載の各種塩類が例示されるが、本発明においては塩類として、特定の陽イオンを含有するものを選択して使用することが好ましい。陽イオンの種類については1から4価の金属陽イオンが好ましく、特にLi、Ni、Zn、Hfの陽イオンが好ましい。具体的な塩類としては、次のものを例示することができる。陽イオンがLiのものとしては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、Li(ClO)、Li(C)、LiNO、Li(OOCCH)、Li(C)等を挙げることができる。陽イオンがNiのものとしては、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等を挙げることができる。陽イオンがZnのものとしては、Zn(OOCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI等を挙げることができる。陽イオンがHfのものとしては、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI等を挙げることができる。
【0021】
化学処理後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100〜800℃で実施可能であり、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが、例えば800℃以上)は好ましくない。構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、または減圧下である。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0022】
成分[C]の有機アルミニウム化合物は、必要に応じて任意的に使用される成分であり、一般式[2]で示される化合物が適当である。
(AlR3−P・・・[2]
有機アルミニウム化合物は、単独又は複数種混合して、あるいは併用して使用することができる。また、有機アルミニウム化合物は、触媒調製時だけでなく、予備重合あるいは本重合時にも添加して使用することができる。
式[2]中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。pは1〜3の、qは1〜2の整数である。Rとしては、アルキル基が好ましく、またXは、それがアルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が好ましい。これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0023】
本発明に使用されるメタロセン触媒は、本重合が行われる前に予備重合処理することが望ましい。予備重合に供されるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、1,3−ブタジエン等のジエン化合物、スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物を用いることができる。
この予備重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒(成分[A]と成分[B]の合計)1gあたり、0.01〜1000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
【0024】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、あるいは不存在下に行われる。本発明においては、固体触媒(固体触媒を予備重合処理した場合は、予備重合で生成した重合体を含まない。)当たりのポリマー生成量をできるだけ大きくすることが望ましい。ポリマー生成量を大きくするために、重合温度、重合圧力はいずれも高めに設定することが望ましい。
通常、重合温度は60〜90℃、重合圧力は1.5〜4MPa程度から選択される。特に、バルク重合の場合、重合温度は60〜80℃で、重合圧力は温度と相関して2.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。一方、気相重合の場合は、重合温度は70〜90℃で、1.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。さらに、固体触媒の滞留時間を長くすることによっても、固体触媒当たりのポリマー生産量を上げることが可能であるが、あまり長くし過ぎると生産性に影響を与える。好ましい滞留時間は、1〜8時間、さらに好ましくは1〜6時間である。担体を含めた固体触媒1gあたりのポリマー生産量は20kg以上、好ましくは25kg以上、さらに好ましくは30kg以上となるように、重合条件を設定することが望ましい。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。更に、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。
【0025】
本発明においては、重合終了後、得られたプロピレン系重合体を、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの不活性飽和炭化水素溶剤や液状α−オレフィンなどを用いて、さらに好ましくは炭素数3または4の不活性炭化水素溶剤や液状α−オレフィンを用いて、洗浄を行うことが好ましい。
洗浄方法としては、特に制限はなく、撹拌槽での接触処理後上澄みのデカンテーション、向流洗浄、サイクロンによる洗浄液との分離など、公知の方法を用いることができる。また、洗浄前あるいは洗浄と同時に、失活剤を添加してもよい。失活剤に関しては、特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類など、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0026】
本発明に用いられるポリプロピレン系重合体には、一般な各種フェノール系酸化防止剤が使用可能である。具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ブチレ−テッドヒドロキシトルエン)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレ−ト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンを挙げることができる。本発明の効果を阻害しない範囲で、他の酸化防止剤を併用することも可能であるが、リン、硫黄を含む酸化防止剤を使用すると、含まれるリン、硫黄が内容物に対し悪影響を及ぼし、製品性能を損なう可能性があるため望ましくない。
【0027】
本発明に用いられるフェノール系酸化防止剤の添加量は、プロピレン系重合体100重量部に対し、0.03〜0.2重量部の範囲である。フェノール系酸化防止剤の添加量が0.03重量部未満であると、熱によるポリプロピレンの劣化を防止できず、揮発性成分量が増加するため不適である。フェノール系酸化防止剤の添加量が0.2重量部を超えると、酸化防止剤に由来するアウトガスの発生が懸念され、製造費用が高くなり、製品の色合いが悪化する懸念があるため不適である。また、配合量が多くなれば、ブルーミングにより、半導体内容物を直接汚染するばかりでなく、揮発性成分として認識される場合も有り得るので注意を要する。この配合量は、射出成形という、高温溶融状態下でも、特定のフェノール系酸化防止剤が、メタロセン型のポリプロピレン系重合体の揮発性成分の発生を抑制するとともに、酸化防止剤自体も揮発性成分とはならないという新たな知見である。
【0028】
また、本発明に用いられるフェノール系酸化防止剤の添加量の下限は、プロピレン系重合体100重量部に対し、下記式1を満足するように調整されていることが望ましい。
式1 3.0×10−3T−0.67
(但し、単位は重量部、Tは成形温度である。また、0.03以下の値は、0.03とする。)
これは、射出成形において、本発明の半導体関連部品搬送ケースを得る際、該ケースが大きいものや薄いもの、複雑な形状の場合、成形温度を高くする必要がある。しかし、成形温度が高温であるほど熱劣化は促進され、揮発性成分が増加するため、フェノール系酸化防止剤は多く必要となる。反面、フェノール系酸化防止剤を多く加える程、色相は悪化する。そこで、製品の実用上要求される成形性、揮発性成分量および色相を考慮したときに、この関係式で表されるフェノール系酸化防止剤の添加量が最も効果的となる。成形温度は、射出成形機のシリンダー設定温度をさす。
このように、半導体関連部品搬送ケースという特殊な用途に於いて、ケースの揮発性物質による影響を考慮して、ポリプロピレン系樹脂の適正な成形温度に従った、フェノール系酸化防止剤の挙動に着目して、その添加量までの関係を定量的に解析するにより課題を解決する手法は、本発明者等の知見による成果である。
【0029】
本発明のポリプロピレン系重合体において、使用する造核剤は一般な各種の公知の造核剤が使用可能である。
造核剤としては、立体障害性アミド化合物、有機ジカルボン酸金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩等が使用される。
【0030】
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物は、揮発性成分含有量が10重量ppm以下のものを用いられる。揮発性成分含有量が10重量ppmを越えると、熱成形後の成形体において揮発性成分が増加し、半導体に付着し汚染が起こる懸念がある点で不適である。揮発性成分含有量の測定は、ガスクロマトグラム/質量分析法を用いて行なわれる。
【0031】
本発明の半導体関連部品搬送ケースを製造するには、上記で説明したポリプロピレン系重合体に上述した添加剤を含有したプロピレン系樹脂組成物を、公知の方法で射出成形することによって得られる。
なお、ここで半導体関連部品とは、特に限定されないが、例えば、シリコンウエハー、ハードディスク、ディスク基板、ICチップ、光磁気ディスク、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスクの磁気抵抗ヘッド等のことをいう。
【0032】
本発明の半導体関連部品搬送ケースは、揮発性成分含有量が20重量ppm以下でなければならない。揮発性成分含有量が20重量ppmを越えると揮発性成分が半導体に付着し汚染が起こる懸念がある点で不適である。
【0033】
半導体関連部品搬送ケースの揮発性成分の含有量を15ppm以下にする理由は、半導体部品の種類によっては、揮発性成分の影響を比較的受けにくいもの、または、非常に受けやすい部品もありますが、しかし、リスクを考えると、揮発性成分の影響を受けやすいものを対象にして許容できる最大の揮発性成分の含有量を設定しなければならない。さらに、蓋付きケース、蓋無しにケースとでは、収納後に時間が経過すればケース内に蓄積する揮発性成分の量に違いがある。本発明のケースの場合には、あらゆる場合を想定して、半導体関連部品の輸送期間、ケースへの収納期間なども総合的に検討して半導体関連部品に影響がないという許容量は15ppm以下という臨界値を設定したものであり、本発明者の知見に基づくものである。勿論、ケースの揮発性成分の含有量が、13重量ppm以下、11重量ppm以下と、より低くなることがより適正である。一方で、ケースの揮発性成分の含有量を20重量ppm、30重量ppm、40重量ppmと高く設定すれば、原料の調整、成形条件をゆるく設定できるが、部品搬送の性能低下をより適性に防止する課題を達成するためには、樹脂原料、射出成形というような全体の作業も考慮しながら、しかも半導体関連部品に対する影響を無くすという課題を達成する為の15重量ppm以下は臨界値である。
【0034】
半導体関連部品の輸送用ケースとは、大型、小型を含む厚さが0.01〜10mm程度のものを含む、薄肉成形品、厚肉成形品と、任意の厚さのポリプロピレン系重合体の製品であり、大きさも、半導体関連部品の大きさや、一度の部品の収納数などを考慮して、その大きさの寸法は、約5〜1000mmと任意に設計をすることができる。形状も、部品を適正に収納できるものであれば、特に限定されるものではなく、四角のケース、丸型、トレー型、容器、筒型、カップ、コンテナー、箱型、パレット型など任意のケースが対象であり、蓋の有無も設計変更の範囲内である。
【0035】
射出成形は、原則慣用の各種射出成形機を利用して容易に成形できる。例えば、スクリュー速度が1000〜1800mm程度の高速射出成形も適している。成形温度も170〜300℃、場合によっては、220〜320℃程度において実施する場合には、揮発性成分の低分子量成分の分解による発生を抑制しょうとする場合には、成形温度をできるだけ低く抑えて、成形速度を上げることが、フェノール系酸化防止剤の効能を成形の面から補足できるとともに、ケース内の揮発性成分の含有量を20重量ppm以下にするためには、ポリプロピレン系樹脂の揮発性成分の発生の原因の一つとも考えられる、過酷な高温溶融状態の環境にできるだけ長い時間放置しないような、射出成形温度、成形速度、低圧射出成形法など、射出成形条件を工夫するということも好ましい対策の一つである。

【実施例】
【0036】
次に実施例をあげて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれら実施例によって制約を受けるものではない。なお、以下の実施例、比較例において、重合体の物性測定は下記の方法に従ったものである。
(1)メルトフローレート(MFR):JIS−K6921−2:1997付属書(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)融点(Tm):セイコー社製DSCを用い、サンプル量は5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させた後に1分間保持し、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときのピーク温度で評価した。
(3)結晶化温度(Tc):セイコー社製DSCを用い、サンプル量は5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させたときのピーク温度で評価した。
(4)エチレン含有量の測定:エチレンコモノマー由来のポリマー中のエチレン単位含有量(単位:重量%)は、得られたポリマーをプレスし、シート状に成形したものをIR法により測定した。具体的には730cm−3付近に観測されるメチレン鎖由来ピーク高さから算出した。
(5)揮発性成分量の測定:試料200mgをGERSTEL社製TDS管に充填、TDS管をGERSTEL社製 TDS−A装置に挿入し、Heを流しながら100℃−30分間加熱、加熱期間中、ガスはTENAXを充填したGERSTEL社製CIS4に導入されCIS4を−150℃に冷却することにより試料より発生した揮発成分を捕集した。
捕集された成分は320℃まで急速に加熱気化させることによりガスクロマトグラムに導入した。導入されたガスは次の条件でガスクロマトグラム/質量分析法で測定した。
【0037】
装置:HP6890
カラム:DB−5ms 0.25mm×30m
温度:40℃×5min→10℃/min〜300℃×15min
検出器:HP5973N
炭化水素量の定量は、n−ヘプタンを溶媒として濃度が1、5、及び10μg/mlの炭素数20の脂肪族直鎖飽和炭化水素を試料と同条件で測定を行いガスクロマトグラム/質量分析法で測定し検量線を作成し、定量は炭素数20の脂肪族直さ飽和炭化水素換算で行った。
(6)製品の熱成形:東芝機械社製射出成形機IS100GNに樹脂ペレットを供給し、射出1次圧力50Mpa、金型冷却水温度40℃、冷却時間15.0秒にて厚さ2.0mmの平板を成形した。成形温度は180〜290℃の範囲で変更した。
(7)色相
熱成形により得られたシート状試験片を使用し、JIS K7105:1998に準拠して測定した。測定によって得られる値のうち、黄色度を示すYI値を評価した。YI値は、正の値であるほど黄色が強く、負の値であるほど青色が強いことを示す。
【0038】
(製造例1)
(1)触媒の調製
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
(i)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
酸処理:ゼパラブルフラスコに蒸留水1130g、96%硫酸750gを加え内温を90℃に保ち、そこに平均粒径25μmの造粒スメクタイト(水沢化学社製ベンクレイSL)300gを添加し5時間反応させた。洗浄:1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH=3.69まで洗浄した。このときの洗浄倍率は1/10000以下であった。この段階の固体を一部乾燥させて酸処理による溶出率を求めたところ33.5%であった。
塩類処理:硫酸リチウム1水和物211gを蒸留水521gに溶かし、さらに上記酸処理で得られた固体100g(乾燥重量)を加え室温で120分撹拌した。このスラリーを濾過し、得られた固体に蒸留水3000g加え5分間室温で撹拌した。更にこのスラリーを濾過した。得られた固体に蒸留水2500gを加え5分撹拌後再び濾過した。この操作をさらに4回繰り返した。得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後53μm以上の粗大粒子を除去しさらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイトを得た。
【0039】
(ii)珪酸塩の活性化処理
上記の化学処理スメクタイト200gを内容積3Lの攪拌翼のついたガラス製反応器に導入し、ノルマルヘプタン750ml、さらにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(500mmol)を加え、室温で攪拌した。1時間後、ノルマルヘプタンにて洗浄(残液率1%未満)し、スラリーを2000mLに調製した。
【0040】
(iii)予備重合触媒の調製
次に、(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリド3mmolのトルエンスラリー870mLとトリイソブチルアルミニウム(15mmol)のヘプタン溶液42.6mLを、あらかじめ室温にて1時間反応させておいた混合液を、上記の化学処理スメクタイトスラリーに加え、1時間攪拌した。続いて、窒素で十分置換を行った内容積10Lの攪拌式オートクレーブにノルマルヘプタン2.1Lを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製したモンモリロナイト/錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、その温度を維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。回収した予備重合触媒スラリーから、上澄みを約3L除き、トリイソブチルアルミニウム(30mmol)のヘプタン溶液を170mL添加し、10分間撹拌した後に、40℃にて減圧下熱処理した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.30gを含む予備重合触媒が得られた。
【0041】
(2)プロピレン系重合体の製造
内容積270Lの攪拌装置付き液相重合槽、内容積400Lの失活槽、スラリー循環ポンプ、循環ライン液力分級器、濃縮器、向流ポンプおよび洗浄液受け槽からなる失活洗浄システム、二重管式熱交換器と流動フラッシュ槽からなる高圧脱ガスシステム、さらに低圧脱ガス槽および乾燥器などを含む後処理系を組み込んだプロセスにより、プロピレン・エチレン共重合体の連続製造を実施した。上記で製造した予備重合触媒を流動パラフィン(東燃社製:ホワイトレックス335)に濃度15重量%で分散させて、触媒成分として0.35g/hrで液相重合槽に導入した。さらにこの重合槽に液状プロピレンを40kg/hr、エチレンを0.4kg/hr、水素を0.25g/hr、トリイソブチルアルミニウムを18g/hrで連続的に供給し、内温を70℃に保持し、重合を行った。液相重合槽からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして12.0kg/hrとなるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/hrで供給した。さらに液状プロピレンを40kg/hr供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。ポリマーは分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m/hrの流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出した。一方、分級器、濃縮器を経て、ポリマーと分離された液状プロピレンは、40kg/hrで洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は34.3kg、エチレン含量=0.75wt%、MFR=30.6g/10分、Tm=141.7℃であった。
【0042】
(製造例2)
(1)触媒の調整
(i)チーグラー触媒の調整
攪拌翼、温度計、ジャケット、冷却コイルを備えた100Lの反応器に、Mg(OEt) :30molを仕込み、次いで、Ti(OBu) を、仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、Ti(OBu) /Mgのモル比が0.60となるように仕込んだ。さらに、トルエンを19.2kg仕込み、攪拌しながら昇温した。139℃で3時間反応させた後、130℃に降温して、MeSi(OPh) のトルエン溶液を、先に仕込んだMg(OEt) 中のマグネシウムに対して、MeSi(OPh) /Mgのモル比が0.67になるように添加した。なお、ここで用いたトルエン量は、7.8kgであった。添加終了後、130℃で2時間反応させ、その後、室温に降温し、Si(OEt)を添加した。Si(OEt)の添加量は、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、Si(OEt)/Mgのモル比が0.056となるようにした。
次に、得られた反応混合物に対して、マグネシウム濃度が、0.57(mol/L・TOL)になるように、トルエンを添加した。さらに、フタル酸ジエチル(DEP)を、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、DEP/Mgのモル比が0.10になるように添加した。得られた混合物を、引き続き攪拌しながら−10℃に冷却し、TiClを2時間かけて滴下して均一溶液を得た。なお、TiClは、先に仕込んだMg(OEt)中のマグネシウムに対して、TiCl/Mgのモル比が4.0になるようにした。TiCl 添加終了後、攪拌しながら0.5℃/minで15℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。次いで、再び0.5℃/minで50℃まで昇温し、同温度で1時間保持した。さらに、1℃/minで118℃まで昇温し、同温度で1時間処理を行った。処理終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/73になるように洗浄し、スラリーを得た。
次に、ここで得られたスラリーに、室温で、トルエンとTiCl を添加した。なお、TiCl は、先に仕込んだMg(OEt) 中のマグネシウムに対して、TiCl /Mg(OEt) のモル比が5.0となるようにした。また、トルエンは、TiCl 濃度が、2.0(mol/L・TOL)になるように調製した。このスラリーを攪拌しながら昇温し、118℃で1時間反応を行った。反応終了後、攪拌を停止し、上澄み液を除去した後、トルエンで、残液率=1/150となるように洗浄し、固体成分のスラリーを得た。さらに上記で得られた固体成分のうち、400gを、攪拌翼、温度計、冷却ジャケットを有する別の反応器に移送し、ノルマルヘキサンを加えて、固体成分の濃度として5.0(g/l)になるように希釈した。得られたスラリーを攪拌しながら、15℃で、トリメチルビニルシラン、TEAおよびTBMDESを添加した。ここで、TBMDESは、t−ブチルメチルジエトキシシランを示し、t−ブチルは、ターシャリーブチル基を示す。なお、TEA、トリメチルビニルシラン、TBMDESの添加量は、それぞれ、上記固体成分中の固体成分1gに対して、3.1(mmol)、0.2(ml)、0.2(ml)となるようにした。添加終了後、引き続き攪拌しながら、15℃で1時間保持し、さらに、30℃に昇温して、同温度で2時間攪拌した。
【0043】
(ii)予備重合
次に、再び15℃に降温し、同温度を保持しながら、反応器の気相部に、1.2kgのプロピレンガスを72分かけて定速でフィードして予備重合を行った。フィード終了後、攪拌を停止して上澄み液を除去した後、ノルマルヘキサンで洗浄を行い、予備重合触媒成分のスラリーを得た。なお、残液率は、1/12とした。得られた予備重合触媒成分は、上記固体成分1gあたり、3.1gのプロピレン重合体を有していた。
【0044】
(2)プロピレン系重合体の製造
重合は製造例1で用いたのと同じ反応器システムを用いて行った。上記で得られた予備重合触媒成分を流動パラフィン(東燃社製:ホワイトレックス335)に濃度2重量%で分散させて、触媒成分として0.2g/hrで導入した。この反応器に液状プロピレンを32.8kg/hr、エチレンを0.26kg/hr、水素を4.0g/hr、トリエチルアルミニウムを6.6g/hr、TBEDMS(t−ブチルメチルジエトキシシラン、ここで、t−ブチルは、ターシャリーブチル基を示す)を0.011g/hrで連続的に供給し、内温を70℃に保持し重合を行った。液相重合槽1からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして13.8kg/hrとなるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/hrで供給した。さらに液状プロピレンを40kg/hr供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。ポリマーは分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m/hrの流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出した。一方、分級器、濃縮器を経て、ポリマーと分離された液状プロピレンは、40kg/hrで洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は69.0kg、C2含量=4.2wt.%、MFR=25.5g/10分、Tm=140.1℃であった。
【0045】
(実施例1)
(1)樹脂組成物の製造
製造例1で得られたパウダー100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤のペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ社製 イルガノックス1010;以下RA1010と略す。分子量1178 g/molである。)0.03重量部を添加し、スーパーミキサーで窒素シール後、3分間混合した。その後、パウダーは東芝機械社製2軸押出機TEM35を用いホッパーを窒素シールしながらシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpm,押出量15kg/hで造粒し、プロピレン−エチレン系樹脂組成物のペレットを得た。
本ペレットの揮発性成分量の測定を行った。また、前述の熱成形方法により、成形温度を230℃とし製品を作成し揮発性成分量の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
酸化防止剤として、パウダー100重量部に対してフェノール系酸化防止剤のRA1010を0.05重量部添加する以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
(実施例3)
酸化防止剤として、パウダー100重量部に対してフェノール系酸化防止剤のRA1010を0.10重量部添加する以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
【0047】
(実施例4)
酸化防止剤として、パウダー100重量部に対して1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(チバ社製 イルガノックス1330;以下RA1330と略す。分子量は775 g/molである。)0.05重量部添加する以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
【0048】
(実施例5)
造核剤として、パウダー100重量部に対して2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(住友化学工業社製 スミライザーGS;以下SMGSと略す。分子量は549g/molである。)0.05重量部添加する以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
酸化防止剤として、パウダー100重量部に対してフェノール系酸化防止剤のRA1010を0.01重量部添加する以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
(比較例2)
酸化防止剤として、パウダー100重量部に対してフェノール系酸化防止剤のRA1010を0.3重量部添加する以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
(比較例3)
製造例2で得られたパウダーを使用する以外は実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
(実施例6)
熱成形温度を200℃とする以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
【0050】
(比較例4)
熱成形温度を260℃とする以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
(実施例7)
熱成形温度を200℃とする以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
(比較例5)
熱成形温度を260℃とする以外は、実施例3と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
(実施例8)
酸化防止剤として、パウダー100重量部に対してフェノール系酸化防止剤のRA1010を0.15重量部添加する以外は、比較例4と同様にして樹脂組成物、射出成形体を得た。得られた結果を表1に示す。
【0051】
【表1】


実施例ではプロピレン系重合体に酸化防止剤を所定の割合で含有しているので、製品の揮発性成分量が低減されている。
対して、比較例1では酸化防止剤が所定量に不足しているため、成形時、熱によるプロピレン分子の切断が抑制できず、成形品の揮発性成分量が増大している。比較例2では成形前、成形後でともに揮発性成分量が多く、半導体関連部品搬送ケースに不適である。比較例3では酸化防止剤の配合量が極端に多いため、色相が悪化し、黄色身を帯びて外観が悪くなっているため半導体関連部品搬送ケースに不適である。比較例4、比較例5では酸化防止剤の配合量が成形温度に対し不足しているために、成形後の揮発性成分量が多く、半導体関連部品搬送ケースに不適である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用い製造された半導体関連部品搬送ケースは、揮発性成分含有量が非常に少ないポリプロピレン系重合体から射出成形で成形されているので、従来のケースと比べ極めて内容物の汚染が生じにくく、高集積回路用半導体等の搬送に有効に用いることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0053】
【非特許文献1】超クリーン化技術 東レリサーチセンター(2005年7月)
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特公昭53−4107号公報
【特許文献2】特公昭58−41283号公報
【特許文献3】特開平10−17612号公報
【特許文献4】特開平10−17613号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤が0.03〜0.2重量部の範囲で配合された、揮発性成分含有量が10重量ppm以下のプロピレン系樹脂組成物を用いて得られる、射出成形後の揮発性成分含有量が15重量ppm以下であることを特徴とする半導体関連部品搬送ケース。

【請求項2】
プロピレン系重合体100重量部に対する、フェノール系酸化防止剤の配合量の下限が下記式1を満足することを特徴とする請求項1に記載の半導体関連部品搬送ケース。
式1 3.0×10−3T−0.67
(但し、単位は重量部、Tは成形温度である。また、0.03以下の値は、0.03とする。)

【請求項3】
プロピレン系重合体の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が2.0〜3.5の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体関連部品搬送ケース。

【請求項4】
成形温度が、170〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の半導体関連部品搬送ケース。

【請求項5】
プロピレン系重合体100重量部に対し、フェノール系酸化防止剤の配合量が、下記式1で表される量以上であり、0.2重量部以下の範囲である、揮発性成分含有量が10重量ppm以下のプロピレン系樹脂組成物を、成形温度170〜300℃の範囲で射出成形し、射出成形後の揮発性成分含有量が15重量ppm以下である半導体関連部品搬送ケースを得ることを特徴とする半導体関連部品搬送ケースの製造方法。
式1 3.0×10−3T−0.67
(但し、単位は重量部、Tは成形温度である。また、0.03以下の値は、0.03とする。)


【公開番号】特開2011−162210(P2011−162210A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24347(P2010−24347)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】