説明

半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物及び該組成物を用いた半導電性ロール

【課題】 原料液の安定性に優れた半導電性ウレタン形成性組成物、及び過酷な条件でも導電剤のブリードアウトがなく、該組成物を用いた半導電性ロールを提供する。
【解決手段】 ポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)、並びにポリオール(b1)、導電性カーボンからなる導電剤(b2)、及び特定のイオン性化合物からなる制電剤(b3)であって、導電剤(b2)及び制電剤(b3)の、主剤(A)と硬化剤(B)の総和量における各々の含有量が(b2):0.1〜1質量%、(b3):0.001〜10質量%であることを特徴とする半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物及びそれを用いて得られる半導電性ロールにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酷な条件でもブリードアウトによるイオン化合物からなる制電剤のしみ出しがなく、原料液安定性に優れた半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物及び該組成物を用いた半導電性ロールに関するものであり、複写機やプリンター等の電子写真装置における現像ロール、帯電ロール、転写ロール等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴムに導電性を付与する手段として導電性微粉末を添加することが一般に行われている。導電性微粉末として、炭素(カーボンブラック)、金属、金属酸化物等が一般に用いられる。
【0003】
一方、電子写真装置におけるバイアス印加ロールは感光体及びトナーへの非汚染性が要求される。物理的、化学的、電気的な汚染を防ぐため、ゴムロール表層にポリアミド(ナイロン)やアルキッド樹脂等の導電性コーティングを施すことが一般的に行われている(特許文献1、特許文献2、特許文献3等参照)。
【0004】
しかしながら、このような構造を採用すると、工程が複雑となり製造コストが増大するという欠点を有している。
【0005】
これらの問題点を簡便に解決する手段として、ロール表面の内側を化学的に処理する方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
この処理方法は効果的なものであるが、基材の表面抵抗の影響を受けやすいという問題点がある。
【0007】
一方、基材の電気抵抗がカーボンブラック等の導電性微粒子の分散により制御されている場合には、温湿度等の環境による変動は少ないものの、導電性微粒子の分散が不十分なことに起因するばらつきが問題となる。このばらつきの影響は、低解像度の領域では重視されなかったが、プリンター、複写機等電子写真装置の高画質化に伴い改善が要求されるようになった。
【0008】
また、導電化の別の手段として、イオン性の導電材料を用いる方法がある。この方法は、イオン性の導電材料を電気抵抗調整層のポリマーマトリックス中に分子レベルで分散させるものであるので、導電性顔料を電気抵抗調整層中に分散させる上記の方法と比べて電気抵抗のばらつきが小さく、そのために、部分的な帯電不良は画像品質的に問題とならない。しかし、イオン性の導電材料は移行性があるので、経時で帯電ローラ表面へブリードアウトして感光体ドラムを汚染してしまい、そのために画像不良を引き起こすという問題があった。また、イオン性の導電材料は、イオン塩という性質からウレタン樹脂への分散が困難な場合が多く、特にポリエーテルポリオールとの相溶性が乏しいものが多い。更にイオン性の導電材料の多くは吸湿性が高いため、成形時に大気中の水分を吸収し、良好な成形物が得られにくい。また、温湿度等の環境により電気抵抗が変化するという問題点がある。
【0009】
このような問題を解決するための手段として、電気抵抗調整層の表面にバリア機能を有する保護層を設けることが提案されている。この保護層は、帯電ローラとしての機能を損なわないよう、薄肉かつ均一で、表面性が良好であることが必要とされている。この保護層を構成する材料としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂等が提案されている(特許文献5を参照。)。
【0010】
しかしながら、これらの帯電ローラを画像形成装置に搭載して長期間使用すると、帯電ローラの表面保護層の主成分である樹脂材料が少なからず粘着性を帯びているので、帯電ローラの表面保護層が感光体ドラムから残存トナーや紙粉等を拾って汚損してしまい、そのために帯電不良や画像ムラが生じてしまうといった問題があった。
【0011】
【特許文献1】特開平1−66674号公報
【特許文献2】特開平4−67067号公報
【特許文献3】特開平7−20684号公報
【特許文献4】特開平5−158341号公報
【特許文献5】特許第2947019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような特性を全て満足する単層の半導電性ウレタンエラストマーを容易に製造できる製造方法は実現されていない。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑み、従来のチューブ被覆あるいはコーティング等の複層構造を用いることなく、半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物及び該組成物を用いた半導電性ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは検討を重ねた結果、導電性カーボン及び特定のイオン性化合物からなる制電剤を併用することにより前記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明の態様は、
ポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)、並びにポリオール(b1)、導電剤(b2)、及び制電剤(b3)を含有する硬化剤(B)からなる半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物において、
導電剤(b2)が導電性カーボン、制電剤(b3)が炭素数10〜20の脂肪族系不飽和炭化水素基及び1個のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)アニオンとからなるイオン性塩であって、導電剤(b2)及び制電剤(b3)の、主剤(A)と硬化剤(B)の総和量における各々の含有量が(b2):0.1〜1質量%、(b3):0.001〜10質量%であることを特徴とする半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物である。
【0016】
本発明の第二の態様は、
ポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)、並びにポリオール(b1)、導電剤(b2)、及び制電剤(b3)を含有する硬化剤(B)からなる半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物において、
導電剤(b2)が導電性カーボン、制電剤(b3)が炭素数10〜20の脂肪族系不飽和炭化水素基及び2個のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)アニオンとからなるイオン性塩であって、導電剤(b2)及び制電剤(b3)の、主剤(A)と硬化剤(B)の総和量における各々の含有量が(b2):0.1〜1質量%、(b3):0.001〜10質量%であることを特徴とする半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物である。
【0017】
本発明の第三の態様は、
導電剤(b3)が、ケッチェンブラックであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物である。
【0018】
本発明の第四の態様は、
前述のいずれかの半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物を用いた半導電性ロールである。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、半導電性を有し、電気抵抗の温度依存性が小さく、過酷な条件でも制電剤のブリードアウトがない半導電性ウレタンエラストマーの提供が可能となり、また高性能な半導電性ロールを提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、ポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)、並びにポリオール(b1)、導電剤(b2)、及び制電剤(b3)を含有する硬化剤(B)からなる半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物である。
【0021】
主剤(A)は、ポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有するものである。
【0022】
ポリエーテルポリオール(a1)の代わりにポリエステルポリオールを用いた場合は、得られる半導電性ウレタンエラストマーの耐加水分解性が低下するだけでなく、反発弾性も低下する。このため、ロールとして使用した場合、応力が加わった際に適度に変形し、その後応力が開放されると速い回復性が必要であるが、この点で不十分なものとなる。
【0023】
本発明で用いられるポリエーテルポリオール(a1)の数平均分子量は、500超〜5,000が好ましく、1,000〜3,000が特に好ましい。
【0024】
具体的には、以下に示す活性水素基含有化合物を開始剤として、エチレンオキサイド(以後、EOと略す)、プロピレンオキサイド(以後、POと略す)、ブチレンオキサイド、アミレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーからEOのみ又はEOとその他のモノマーの混合物を公知の方法により付加重合することで得られるものである。本発明では、得られる半導電性ウレタンエラストマーの強度、反発弾性等を考慮すると、ポリ(オキシテトラメチレン)ポリオール(以下PTMGと略称する)が好ましい。
【0025】
開始剤としては以下に示すものが挙げられる。
低分子ポリオール類:
エチレングリコール(以下EGと略称する)、1,2−プロパンジオール(以下1,2−PDと略称する)、1,3−PD、1,2−ブタンジオール(以下1,2−BDと略称する)、1,3−BD、1,4−BD、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以下1,6−HDと略称する)、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(以下MPDと略称する)、ネオペンチルグリコール(以下NPGと略称する)、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(以下DMHと略称する)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ、グルコース、フラクトース等
低分子ポリアミン類:
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン等
低分子アミノアルコール類:
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等
その他活性水素基含有化合物:
アンモニア
【0026】
有機ポリイソシアネート(a2)としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート、これらの2種類以上の混合物、これらの有機ジイソシアネートのウレタン変性体、アロファネート変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。
【0027】
本発明の用いる主剤(A)に用いられるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、少なくとも前述のポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られる。このときのイソシアネート基/水酸基のモル比(R値)は1.1〜10が好ましく、特に1.5〜5が好ましい。反応温度は30〜100℃、好ましくは50〜80℃である。
【0028】
このようにして得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート含量が1〜15質量%であり、75℃の粘度は100〜5,000mm/s2 である。
【0029】
本発明に用いられる硬化剤(B)は、ポリオール(b1)、導電剤(b2)、及び制電剤(b3)を含有するものである。
【0030】
このポリオール(b1)としては、数平均分子量が500以下の低分子ポリオール、数平均分子量が500超〜3,000の高分子ポリオールが挙げられる。
【0031】
数平均分子量が500以下の低分子ポリオールとしては、EG、DEG、1,2−PG、1,3−PG、1,3−BD、1,4−BD、NPG、1,6−HG、水素添加ビスフェノールA、グリセリン、TMP、ヘキサントリオールが挙げられる。これらは単独又は2種類以上を組み合わせて使用することもできる。本発明で好ましい低分子ポリオールはTMPである。
【0032】
数平均分子量が500超〜3,000の高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。高分子ポリオールの種類の選択には、主剤との相溶性等を考慮すると、主剤に用いられる高分子ポリオールと同じ成分を選択することが好ましい(例えばポリエーテルポリオールを用いた主剤には、ポリエーテルポリオールを選択する)。本発明においては、本発明で所望される成型物において好適な機械物性が得られるとの観点から、これらのうちポリ(オキシテトラメチレン)ポリオールが特に好適である。
【0033】
本発明に用いられる導電剤(b2)としての導電性カーボンとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ガスブラック、ディスクブラック等、製法や構造の違い等により様々な種類のものが挙げられる。本発明では、ポリオールと配合した際、及び成形性を考慮すると、高い導電性を有するケッチェンブラックが好ましい。
【0034】
導電剤(b2)の配合量は、主剤(A)と硬化剤(B)との総和量に対して、0.1〜1質量%であり、特に0.3〜0.8質量%が好ましい。導電剤(b2)の配合量が少なすぎる場合は、得られるウレタンエラストマーにおける導電性の温度依存性が大きくなる。また配合量が多すぎる場合は、液の粘度が増大し、成形そのものが困難になる。
【0035】
本発明に用いられる制電剤(b3)は、炭素数10〜20の脂肪族系不飽和炭化水素基及び1個又は2個のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)アニオンとからなるイオン性塩であることを特徴とする。
【0036】
炭素数10〜20の脂肪族系不飽和炭化水素基としては、下記に示す一般式(1)で示されるものであり、具体的にはオレイル基、リノレイル基等が挙げられる。
【化1】

【0037】
脂肪族不飽和炭化水素基の炭素数が10未満の場合は、主剤との相溶性が低下してしまい、成型物に均一に制電剤が分散しにくくなる。
【0038】
炭素数10〜20の炭化水素基が飽和炭化水素基である場合は、制電剤の結晶性が大きくなり、高分子量ポリエーテルポリオールが主成分である硬化剤に配合した後、制電剤が析出しやすくなる等の問題がある。
【0039】
ヒドロキシアルキル基としては、下記に示す一般式(2)で示されるものであり、具体的にはメチロール基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【化2】

【0040】
ヒドロキシアルキル基が単なるアルキル基の場合は、経時により制電剤がブリードするおそれがある。一方、本願ではヒドロキシアルキル基であるため、制電剤がウレタン骨格に取り込まれるため、制電剤がブリードするおそれはないと言える。
【0041】
以上の要件を満たす、炭素数10〜20の脂肪族系不飽和炭化水素基及び1個又は2個のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンの具体的なものとしては、以下に示されるものが挙げられる。
【0042】
【化3】

【化4】

【0043】
アニオンが、ビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)アニオン以外のアニオンの場合、常態で液状を保ちにくく、また、主剤や硬化剤との相溶性が低下しやすい。また、水溶性である場合が多く、吸湿性や得られる導電性エラストマーの環境安定性に問題がある。
【0044】
制電剤(b3)の配合量は、主剤(A)と硬化剤(B)との総和量に対して、0.001〜10質量%であり、特に0.01〜5質量%が好ましい。制電剤(b3)の配合量が少なすぎる場合は成型物の導電性が不十分であり、多すぎる場合は、配合量に対して導電性が頭打ちになり、不経済であるばかりか、物性低下や経時によるブリードの原因になるおそれがある。
【0045】
また本発明では、必要に応じて硬化触媒や種々の添加剤、例えば可塑剤、消泡剤、レベリング剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、カーボンやリチウム塩等の導電剤、界面活性剤、反応遅延剤、脱水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料等を適宜用いることができる。
【0046】
硬化触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N′,N′,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の三級アミン、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の反応型三級アミン又はこれらの有機酸塩、1−メチイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等の三量化触媒が挙げられる。
【0047】
本発明の半導電性ロールは、前述の半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物を硬化させて得られるものである。この半導電性ロールを得るには、主剤(A)及び硬化剤(B)を均一に混合し、必要に応じ、巻き込んだ空気を抜く(混合)。次いで、プレヒートした成形型に液を流し込み(注型)、加熱して硬化反応させる。金型のプレヒート温度は60〜150℃が好ましい。硬化条件は60〜200℃にて3〜10時間が好ましい。なお、その後更に常温で1〜7日エージングし、硬化を完全に進め物性を安定化することが好ましい。硬化したら、硬化物を型から取り出す(脱型)。
【0048】
主剤(A)と硬化剤(B)の配合比率は、混合直後に系内に存在するイソシアネート基と水酸基のモル比で、イソシアネート基/水酸基=90/100〜115/100が好ましく、95/100〜110/100が特に好ましい。
【0049】
以上から得られる半導電性ロール、高い反発弾性を有し、また電気抵抗値も半導電性を示すものであり、更に電気抵抗の温度依存性も小さいものであった。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の実施例及び比較例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、実施例中の「%」はそれぞれ「質量%」を意味する。
【0051】
〔主剤用イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの合成〕
製造例1
攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:1Lの反応器に、ポリオール−1を727.3g、MDI−1を272.7gを仕込み、85℃にて3時間反応させたて、イソシアネート基末端プレポリマー(A−1)を得た。A−1のイソシアネート含量は6.1%、75℃の動粘度は1,200mm/s2 であった。
【0052】
製造例2、3
表1に示す仕込みで、実施例1と同様な装置、手順にてイソシアネート基末端プレポリマーA−2、3を得た。製造結果も併せて表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
製造例1〜3、表1において
ポリオール−1:ポリ(オキシテトラメチレン)ポリオール
平均官能基数=2
数平均分子量=2,000
ポリオール−2:ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
平均官能基数=2
数平均分子量=2,000
ポリオール−3:ポリ(エチレンアジペート)ポリオール
平均官能基数=2
数平均分子量=2,000
MDI−1 :4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0055】
〔硬化剤の配合〕
配合例1〜15
表2、3に示す比率にて、ポリオール、導電剤、制電剤、触媒を混合した。使用したイオン導電剤は下記一般式(5)に示されるもので、具体的な内容は表4に示す。硬化剤配合組成及び硬化剤液安定性結果を表2、3に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【化5】

【0059】
【表4】

【0060】
配合例1〜15、表2〜3において
ポリオール−4:ポリ(オキシテトラメチレン)ポリオール
平均官能基数=2
数平均分子量=1,000
ポリオール−5:ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
平均官能基数=2
数平均分子量=1,000
ポリオール−6:ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
平均官能基数=3
数平均分子量=3,000
ポリオール−7:ポリ(エチレンアジペート)ポリオール
平均官能基数=2
数平均分子量=1,000
TMP :トリメチロールプロパン
触媒−1 :N,N′−ジメチルアミノヘキサノール
【0061】
表3の結果から、制電剤に用いられるイオン性化合物のアニオン部において、置換基が炭素数10〜20の脂肪族炭化水素基が飽和系であるもの(B−13)、水酸基を有さないもの(B−14)は、高分子量ポリエーテルポリオールが主成分である硬化剤との相溶性が不十分であることが分かった。よってこれらの硬化剤(B−13、14)は以後の評価を行わなかった。
【0062】
〔硬化物の評価〕
実施例1〜7、比較例1〜6
表5、6に示す配合比で主剤と硬化剤を混合し、脱泡後あらかじめ加温した金型に混合液を注型して、加熱硬化させて、硬化物を得た。硬化条件、各種試験方法は以下に示す通りである。硬化後、外観評価、機械的物性評価、導電性評価を行った。結果を表5、6に示す。
【0063】
硬化条件
主剤、硬化剤をそれぞれ80℃に加温し、表中の配合比にてアジター混合(40秒間)し、真空脱泡後、あらかじめ120℃に余熱しておいた2mm厚シート金型に注型した。120℃のオーブン中に10時間入れて加熱硬化させた後、脱型した。次いで室温にて1週間2次キュアを行い、測定用サンプルを得た。
【0064】
評価試験方法
ブリードアウト試験
上記方法にて得られた2mm厚のシートをガラス板にはさみ、温度:50℃・湿度:90%:期間:1週間の条件下に静置した。その後、ガラス板をシートから外して、そのガラス板にブリードアウト物質が確認できるか否かで評価を行った。
○:ブリード物質が認められない
×:ブリード物質が認めらる
機械的強度
上記方法にて得られた2mm厚のシートを、JIS−K7312にて測定を行った。なお圧縮永久歪みは70℃×22時間・25%圧縮の条件で評価した。
体積抵抗測定
上記にて得られた2mm厚のシートの表面をメタノールにて洗浄し、LL(10℃×15%)条件では2日間、NN(23℃×55%)及びHH(28℃×85%)条件では1日間状態を保持した後測定を行った。測定機器はアドバンテスト社製R8340Aデジタル超抵抗計及びTR42超高抵抗用試料箱を用い、測定電圧は100V、電圧印加30秒後に測定した。環境依存性は、LLの測定値をHHの測定値で除した値の対数値で評価した。体積抵抗値のばらつきは10点測定の最大測定値と最小測定値の比で評価した。
【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
表5、表6から、本発明の半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物から得られた半導電性ウレタンエラストマー(シート)は良好な結果を示した。一方、比較例においては、比較例1は体積抵抗の絶対値そのものが低く、比較例2は機械的物性等は良好であったが体積抵抗のばらつきが非常に大きかった。比較例3は制電剤のブリードが認められ、比較例4は体積抵抗の温度依存性が大きいものであった。比較例5は体積抵抗のばらつきが非常に大きかった。比較例6は反発弾性が他の成型物と比較して、特に小さい値であった。なお比較例3は、成形物の基本的な性能であるブリード性が悪いので以後の評価は行わなかった。
【0068】
〔半導電性ロールの評価〕
実施例8〜14、比較例7〜10
ロール成型方法
主剤、硬化剤をそれぞれ80℃に加温し、表7、8に示すの配合比にてアジター混合(40秒間)し、真空脱泡後、あらかじめ120℃に余熱しておいた直径6mm、長さ270mmステンレス棒を設置した直径19mmの合わせ型のロール金型に注型した。120℃のオーブン中に10時間入れて加熱硬化させた後、脱型した。次いで室温にて1週間2次キュアの後、表面及び末端部分を研磨して直径18mm、長さ230mmのロールを得た。
【0069】
評価方法
ロール電気抵抗測定
上記にて得られたロールの表面をメタノールにて洗浄し、LL(10℃×15%)条件では2日間、NN(23℃×55%)及びHH(28℃×85%)条件では1日間状態を保持した後測定を行った。測定方法は、アルミロール上にロールを設置、シャフト両端に500gづつの荷重を掛け、シャフトとアルミ基準ロール間の抵抗値を測定するという方法である。測定値は、2回転させたときの平均値(測定点数は2回転で300点、理論上2.4度づつの測定点)。測定機器はアドバンテスト社製R8340Aデジタル超抵抗計を用い、測定電圧は100V、電圧印加30秒後に測定した。ロール電気抵抗値のばらつきは10点測定の最大測定値と最小測定値の比で評価した。
【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
表7、8より、本発明の半導電性ロールは、良好な電気抵抗値を示した。一方、比較例7は、やはり電気抵抗値そのものの絶対値が大きく、比較例8、10は電気抵抗の測定値のばらつきが大きい(すなわち導電剤の分散が不均一)ものであった。また、比較例9は、電気抵抗値の環境依存性が大きいものであった。なお比較例11は、表8では良好な結果ではあったが、表6より反発弾性率が小さいので、現実の使用は難しい。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)、並びにポリオール(b1)、導電剤(b2)、及び制電剤(b3)を含有する硬化剤(B)からなる半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物において、
導電剤(b2)が導電性カーボン、制電剤(b3)が炭素数10〜20の脂肪族系不飽和炭化水素基及び1個のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)アニオンとからなるイオン性塩であって、導電剤(b2)及び制電剤(b3)の、主剤(A)と硬化剤(B)の総和量における各々の含有量が(b2):0.1〜1質量%、(b3):0.001〜10質量%であることを特徴とする半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項2】
ポリエーテルポリオール(a1)と有機ポリイソシアネート(a2)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤(A)、並びにポリオール(b1)、導電剤(b2)、及び制電剤(b3)を含有する硬化剤(B)からなる半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物において、
導電剤(b2)が導電性カーボン、制電剤(b3)が炭素数10〜20の脂肪族系不飽和炭化水素基及び2個のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウムカチオンとビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)アニオンとからなるイオン性塩であって、導電剤(b2)及び制電剤(b3)の、主剤(A)と硬化剤(B)の総和量における各々の含有量が(b2):0.1〜1質量%、(b3):0.001〜10質量%であることを特徴とする半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項3】
導電剤(b3)が、ケッチェンブラックであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導電性ウレタンエラストマー形成性組成物を用いた半導電性ロール。


【公開番号】特開2007−297438(P2007−297438A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124769(P2006−124769)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】