説明

半田除去方法およびリペア方法

【課題】 隣接する部品との間隔が150μm以下の狭い間隔で実装される0402チップ部品を除去した後にランド上に残留する半田を確実に除去することができる半田除去方法およびリペア方法を提供する。
【解決手段】不良部品を除去した後に、ランド6に残留する半田4を除去する吸取りノズル5の開口をランド6上方に近接して配置する。熱風吹き出し口7から熱風12が吹き出しランド6に残留する半田4を加熱溶融し、吸取りノズル5の開口からランド6に残留する半田4を吸引する。半田4を吸引した後にランド6に残留する半田4の高さを計測してランド6に残留する半田量の適否を判断する。そして、残留する半田量が適量であると判断された場合には、加熱溶融を終了し、残留する半田量が不適量であると判断された場合には、ランド6に残留する半田4を再び吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装される不良部品を除去した後に前記基板に設けられるランドに残留する半田を除去する半田除去方法および当該半田除去方法を用いるリペア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の不良部品の除去工程を説明する説明図である。図8(a)は、不良部品を除去する前の状態を示す図であり、図8(b)は、不良部品を除去した後の状態を示す図である。基板83には、チップ部品などの電子部品が半田付けされて様々な機能が実現される。印刷マスクを用いて半田ペーストが基板83に印刷または転写され、電子部品は、リフロー加熱されて基板83に半田付けされる。基板83に半田ブリッジまたは不良部品などが生じた場合には、不良部品81は除去されて新しい部品が搭載されるリペアが行われる。
【0003】
電子部品は、ランド82上の半田84を介して基板83に固定されるが、不良部品81を除去する際に、不良部品81の除去に伴って不良部品81を固定する半田84は、ランド82から完全に除去されるのではなく、一部の半田84aが除去され、残余の半田84bは、そのままランド82上に残される。ランド82に残された半田84bの量は、電子部品端子によってばらつく傾向があるので、ランド82上に残留した全ての半田84bはいったん除去されてランド82上が平坦化された後に、必要に応じて半田が追加されて新たに電子部品が搭載される。
【0004】
ランド82に残留する半田84bを除去する一般的な方法としては、ヒータにより残留する半田84を半田溶融温度以上に加熱して、吸取りノズル85の中心軸の位置に設けられた貫通孔からランド82上に残留する半田84bを吸取る方法が知られている。
【0005】
図9は、従来のランド82の面積よりもノズルの開口が広い吸取りノズル85を用いて半田84bを除去する説明図である。0.6mm×0.3mm部品(以下「0603チップ部品」という)および1.0mm×0.5mm部品(以下「1005チップ部品」という)のランドに対するノズル内径の違いによる半田吸取り方法を説明する。0603チップ部品および1005チップ部品用のランドサイズでは、吸取りを行うランド82の面積よりも吸取りノズルの先端開口が大きい吸取りノズル85を用いて一度に吸取っている。たとえば、ランドサイズが300μm×450μmの1005チップ部品用ランドに対しては、開口部内径が500μmの吸取りノズル85が用いられる。
【0006】
しかし、基板83に隣接して実装される部品の間隔が150μm以下である場合(以下「狭隣接実装」という)において、ランド82の面積よりもノズルの開口が広い吸取りノズル85を使用すると、吸取りノズル85と隣接する部品端までの距離が100μm程度になって、吸取りノズル85が隣接部品と接触して隣接部品が位置ずれを起こすなどの悪影響を及ぼす可能性が高くなる。
【0007】
したがって、0603チップ部品および1005チップ部品が狭隣接実装される場合には、ランドサイズよりも小さいノズル径をもつ吸取りノズルを使用する必要がある。ランドサイズの最も短い辺の長さに合わせたノズル内径を使用した場合、たとえばランドサイズ300μm×450μmに対して吸取りノズル内径が300μmの場合には、ノズル内径が大きく吸引力が大きいので、1回の処理でノズル外に存在するはんだも吸取ることができる。さらに、ランドサイズに対して極端にノズル内径が小さい場合、たとえばランドサイズ300μm×450μmに対し吸取りノズル内径が100μmの場合には、ランド上面で吸取りノズルを前後左右に移動させることによって、周辺部品に影響なく半田を吸取ることができる。
【0008】
図10は、従来の金属繊維を編みこんだ材料86を用いて残留する半田84bを除去する説明図である。金属繊維を編みこんだ材料86は、ランド82上に残留した半田84bに当接して、金属繊維を編みこんだ材料86が半田ごて87で加熱されることによってランド82上に残留した半田84bを液状に溶融し、溶融した半田84bを毛細管現象によって金属繊維で吸取る。特許文献1には、金属繊維を用いて半田を吸取るソルダ除去方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平4−258369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、電子部品の小型化に伴い電子部品の狭隣接実装が進んでおり、代表的な微小チップである0.4mm×0.2mm部品(以下「0402チップ部品」という)用のランドサイズは、たとえば190μm×200μmであり、ランド自体が微小である。0402チップ部品と、0402チップ部品に隣接する部品との間隔が150μm以下の狭隣接実装の場合において、吸取りノズルの内径が半田除去を行うランドよりも大きいときは、吸取りノズル先端部が隣接部品に接触して隣接部品の位置ずれまたは破損を起こす可能性がある。吸取りノズル先端部の外径は、ノズル内径+100μmである。
【0011】
ランドサイズよりも小さい吸取りノズルを使用して、吸取りノズルを一定の場所に固定して処理を行うと、吸取りノズル内径が小さく吸引力が小さいので、ほとんど半田の吸取り処理を行うことができない。1回での吸取り処理を可能にするためには、吸着ノズル内圧を高真空にするためにポンプ等を設置しなければならないので装置コストが掛かり、さらに真空に要する時間が長くなるのでリペアに要する時間が長くなる。吸取りノズルをランド表面と平行な平面上で移動させると、吸取りノズルが隣接する部品と接触し、またはレジスト表面を破損させる可能性がある。
【0012】
特許文献1に記載される金属繊維は、複数の金属の線を網目状に織り込んでいるので、微小なランドにおいて使用するとランド上から出てしまい、金属繊維が隣接部品の半田まで吸い取る可能性がある。さらに、微小なランドで用いることができるように加工するためには高いコストを要する。柔軟な金属繊維を的確に半田を除去する位置へ移動させるのは困難であり、金属繊維の交換も必要になる。
【0013】
本発明の目的は、隣接する部品との間隔が150μm以下の狭い間隔で実装される0402チップ部品を除去した後にランド上に残留する半田を確実に除去することができる半田除去方法およびリペア方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基板に設けられたランドに半田付けされた電子部品を除去した後に、前記ランドに残留する半田を発熱部によって加熱溶融し、ノズル部によって除去する半田除去方法であって、
前記ノズル部は、先端部に半田を吸引するためのノズル孔が開口する開口部を有し、
前記開口部を前記ランド上方に近接して配置する第1工程と、
前記発熱部によって前記ランドに残留する半田を加熱溶融する第2工程と、
前記開口部から前記ランドに残留する半田を吸引する第3工程と、
前記半田を吸引した後に前記ランドに残留する半田の高さを計測して前記ランドに残留する半田量の適否を判断する第4工程とを備え、
第4工程で前記残留する半田量が適量であると判断された場合には、前記加熱溶融を終了し、前記残留する半田量が不適量であると判断された場合には、前記第3工程と前記第4工程とを再び行うことを特徴とする半田除去方法である。
【0015】
また本発明は、基板に実装された電子部品を除去する工程と、前記電子部品を除去した後に前記電子部品が半田付けされたランドに残留する半田を除去する工程と、前記半田が除去された前記ランドに半田を供給する工程と、半田が供給された前記ランドに電子部品を実装する工程とを備えるリペア方法であって、
前記電子部品を除去した後に前記ランドに残留する半田を除去する工程は、前記半田除去方法が用いられることを特徴とするリペア方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板に設けられたランドに半田付けされた電子部品を除去した後に、前記ランドに残留する半田を発熱部によって加熱溶融し、ノズル部によって除去するにあたって、ノズル部は、先端部に半田を吸引するためのノズル孔が開口する開口部を有する。第1工程では、開口部をランド上方に近接して配置する。第2工程では、発熱部によってランドに残留する半田を加熱溶融する。第3工程では、開口部からランドに残留する半田を吸引する。第4工程では、半田を吸引した後にランドに残留する半田の高さを計測してランドに残留する半田量の適否を判断する。そして、第4工程で残留する半田量が適量であると判断された場合には、加熱溶融を終了し、残留する半田量が不適量であると判断された場合には、第3工程と第4工程とを再び行うので、隣接する部品との間隔が150μm以下の狭い間隔で実装される0402チップ部品を除去した後にランド上に残留する半田を確実に除去することができる。
【0017】
また本発明によれば、前記半田除去方法が用いられるので、隣接する部品との間隔が150μm以下の狭い間隔で実装される0402チップ部品を除去した後にランド上に残留する半田を確実に除去することができるリペア方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の形態である半田除去方法を示す説明図である。図1(a)は、吸取りノズル5を下降させた状態を示す図である。ランド6上の半田4には、ノズル部である吸取りノズル5の本体装着部付近の両側に設けられた発熱部である熱風吹き出し口7から熱風12が吹き付けられる。熱風は装置本体のノズル部装着口の上方に設けられた熱源にエアーを吹き付けることで熱風として吹き出し、半田4を加熱溶融させている。熱風吹き出し口7の周囲は、微小領域の局所加熱をするために局所加熱用金属カバー8で覆われる。赤外線ヒータ11は、半田4が残留する基板3の裏面側に設置され、基板3の裏面が加熱される。ランド6に残留する半田4は、基板3の両面側から加熱され、半田4の温度が融点に達して半田4は溶融する。
【0019】
図1(b)は、吸取りノズル5で半田4を吸取る状態を示す図である。吸取りノズル5は、降下して半田4表面の酸化膜14を打破し半田4を吸取るが、吸取りノズル5の開口面積が、半田除去処理を行うランド6の面積よりも小さいので、ノズル5の外側のランド6上に残留する半田4は、半田4の表面を覆う酸化膜14のために完全に吸引することができずランド6上に残留する。
【0020】
図1(c)は、吸取りノズル5の吸引状態を維持したまま上昇させた状態を示す図である。1回目の吸取り処理が終了した後に、吸取りノズル5の吸引状態を維持したまま吸取りノズル5を上昇させると、ランド淵に残留する半田4はランド6の中心部に集まる傾向がある。半田4の表面が酸化膜14で覆われているために吸取ることができない吸取りノズル5の外側にある半田4も、ランド6の中心部に集まってくる。1回の吸取りでは、レジスト表面13と同一平面に突出する半田4を完全に吸取ってランド面の平坦処理を行うことはできないが、図1(a)〜(c)に示す吸取り処理を複数回行うことによって確実にランド面に残留する半田4の処理を行うことができる。
【0021】
図2は、本発明の第1の形態である半田除去方法のフローチャートである。不具合が発生した不良部品を除去したときは、ステップ1に移る。ステップA1で不良部品が除去された基板3は、残留半田除去装置冶具に取り付けられる。ステップA2では、吸取りノズル5は、不良部品を除去した後に半田4が残留するランド6に位置決めされる。ステップA3では、位置決めされた吸取りノズル5は、ランド6に向かって下降する。吸取りノズル5は、たとえばモータ駆動によって移動させてもよく、または吸取りノズル5が降下する下限に下限制限ストッパを設けて手動で移動させてもよい。図1(a)は、ステップA3の状態を示す。その後、ステップA4に進んでランド6に残留する半田4は、基板3の上下方向から加熱される。ステップA5では、加熱される半田4が融点に達した後にステップA6に進み、吸取りノズル5は、溶解した半田4の吸取りを開始する。図1(b)および(c)は、ステップA6の状態を示す。
【0022】
ステップA7では、吸取りノズル5がランド6上の半田4を吸取った後に、残留する半田4の状態を確認するために、図示しないレーザ変位計によってランド6上に残留する半田4の高さを計測する。残留する半田4が、レジスト表面13と同一面から突出していない場合には、ステップA8に進み、半田4の加熱を停止し、半田除去方法の全ての工程が終了する。残留する半田4の高さが、レジスト表面13と同一面から突出している場合には、再びステップA6に戻って残留する半田4の吸取りが行われる。基板3の上下方向から残留半田が加熱される状態は、ステップA7において残留する半田4の高さがレジスト表面13から突出しておらず、ステップA8に進み半田4の加熱が停止されるまで維持される。
【0023】
図3は、加熱時間と半田4の温度との関係を示すグラフである。横軸は加熱時間(s)を表し、縦軸は半田4の温度(℃)を示す。半田4の加熱は、予め半田4が溶解する温度条件の抽出を行った温度プロファイルによって行われる。半田4の温度が上昇し融点に達すると半田4は溶解するが、半田4が溶解していることの確認は、半田4を融点以上に加熱した後に、リペア装置1に付加される図示しないリペア箇所を映し出すモニタによって行われる。
【0024】
半田4の温度が融点以上であることを確認した後に、吸取りノズル5によって残留する半田4の吸取りが行われる。基板3および周辺部品に熱損傷を与えないために、できるだけ低い温度でかつ短時間で半田4を除去することが望ましい。具体的には残留する半田4の温度は、半田4の溶解温度より10℃〜20℃高いことが望ましい。本実施形態においては、半田4の温度は約230℃〜240℃に維持される。
【0025】
【表1】

【0026】
表1は、7種の0402部品用ランド6において、ランドサイズ短辺の長さ以下の内径を有する吸取りノズル5を使用した場合の半田除去効果を示す。除去効果の有無は、半田4の吸取り処理を1回行った場合と同一場所で3回行った場合の結果を比較して判断される。1回の吸取り処理では、レジスト表面13の位置まで確実に残留する半田4の除去を行うことができないが、3回の吸取り処理を行うことによってレジスト表面13の位置まで確実に残留する半田4の除去を行うことができる場合に、除去効果有りと判断する。
【0027】
吸取りノズル5の吸引力は常に一定にして、ノズル径の異なる吸取りノズル5を用いて半田除去処理を行った。ノズルの吸引力を大きくすると、1回で吸引することができる半田量は増加する。しかし、3回の吸取り処理を行うことによって半田4の除去を行うことができる微小なノズルの吸引力を大きくするには、ノズルの内圧を高真空にする必要があるので、多大な装置コストおよび真空引き時間を要するという問題があるためである。
【0028】
表1に示すように0402部品において用いられるランドの面積が40000μm(ランドサイズ200μm×200μm)未満のランド6においては、1回の吸取り処理を行うよりも同一場所で3回吸取り処理を行う方がランド6の半田4は吸取ることができるという結果を得た。0402部品において用いられるランド面積が40000μm(ランドサイズ200μm×200μm)以上のランド6においては、半田4の吸取り処理を3回行った場合の効果は表れなかった。吸取りノズル5の内径が200μmの場合は、ノズルが大きいので吸引力が大きくなり1回の処理で残留する半田4の除去を行うことができるからである。したがって、これらの結果から同一場所で3回吸取りを行う効果が現れるランド面積は40000μm未満であることが分かる。
【0029】
図4は、0402部品用ランドの吸取りノズルと半田除去率との関係を示すグラフである。横軸は、ノズル内径(μm)を示し、縦軸は半田の除去率(%)を示す。ひし形は吸取り処理を1回行った場合を示し、正方形は吸取り処理を3回行った場合を示す。ノズル内径が150μmおよび100μmの吸取りノズル5においては、1回処理より3回処理の方が、半田除去率が高い。破線は、レジスト表面13と同一平面まで半田4が除去されているか否かの合否を表す半田除去率を示す。
【0030】
吸取り処理を1回行った場合には、ノズル内径150μmおよび100μmのノズルではレジスト表面13の位置までの半田吸取り処理はできないが、吸取り処理を3回行う場合には、ノズル内径150μmおよび100μmのノズルは共にレジスト表面13の位置まで半田4を除去することができる。同一場所で複数回吸取り処理を行うことによって確実に半田除去処理ができることを示している。
【0031】
吸取りノズル内径がランド短辺長さよりも大きい吸取りノズル内径200μmのノズルでは、1回の吸取り処理の時点でレジスト表面13の位置まで半田4が除去されている。したがって、0402部品用ランドにおいてもノズル径が大きくなると吸引力が大きくなるために吸取り処理は1回でよいことが分かる。しかし、吸取りノズルの外径がランドサイズ短辺の長さよりも長くなるとノズル隣接部品に接触する可能性が高くなる。
【0032】
吸取りノズル内径が100μm未満のノズルは、ノズル先端が微小なために加工に限界があり現在は作製されていない。ノズル内径が100μm未満のノズルが今後作製された場合には、ノズル内径が100μm未満のノズルにも効果はあるものと推測する。しかし、0402部品用ランドに対して、吸取りノズル内径が100μmのノズルを用いて複数回半田吸取り処理を繰り返すと、吸取りノズル先端径が小さいために先端付近に除去された半田が詰まりノズルの吸引力が低下する可能性がある。
【0033】
したがって、望ましくは吸取りノズルのノズル内径はランドの最も短い辺の長さより小さくかつ概ねランドの最も短い辺の長さに近傍する吸取りノズル内径150μmで半田4の吸取り処理を行うことが良い。残留する半田量の適否は、レジスト表面13を基準として判断される。残留する半田4を除去した後に部品実装に必要な半田量のコントロールをし易くするためである。
【0034】
図5は、0603部品用ランド(ランドサイズ200μm×280μm)の吸取りノズルと半田除去率との関係を示すグラフである。横軸は、ノズル内径(μm)を示し、縦軸は半田4の除去率(%)を示す。ひし形は吸取り処理を1回行った場合を示し、正方形は吸取り処理を3回行った場合を示す。三角形はノズルを移動させながら吸取り処理を3回行った場合を示す。破線は、レジスト表面13と同一平面まで半田4が除去されているか否かの合否を表す半田除去率を示す。ランド6の短い辺の長さである200μmとほぼ同等のノズル内径200μmを用いた場合の除去率では、1回処理と3回処理とであまり変化がなく1回処理でほぼ確実に処理を行うことができることが分かる。
【0035】
ノズル内径100μmおよび150μmを用いた場合には、1回の吸取り処理では極端に除去率が悪くなり、同じノズル径を用いて場所を変化させずに同じ位置で3回吸取り処理を行った場合でも除去率は低い。吸取りノズル5を前後左右に移動して処理を行った場合においては除去率が良い。ランドサイズに対して、ランド6の短い辺の長さとほぼ同様のノズル径を用いた場合には、1回処理で処理を行うことができるが、ランド6の短い辺の長さよりも小さいノズルを用いた場合は、ノズルを移動させることによって処理を行う必要がある。
【0036】
図6は、1005部品用ランド(ランドサイズ300μm×450μm)の吸取りノズルと半田除去率との関係を示すグラフである。横軸は、ノズル内径(μm)を示し、縦軸は半田の除去率(%)を示す。ひし形は吸取り処理を1回行った場合を示し、正方形は吸取り処理を3回行った場合を示す。三角形はノズルを移動させながら吸取り処理を3回行った場合を示す。破線は、レジスト表面13と同一平面まで半田4が除去されているか否かの合否を表す半田除去率を示す。1005部品用ランドにおいては、吸取りノズル内径が300μmの場合には1回の吸取り処理でレジスト表面13の位置まで半田4を除去することができる。
【0037】
しかし、吸取りノズル内径が100μmおよび200μmのようにランドサイズに対し極端に小さいノズルを用いて1回の吸取り処理、または同一場所で3回の吸取り処理を行っても効果はない。1回の吸取り処理後に吸取りノズル5を上昇させる際に、吸引状態を維持したまま上昇させるために、吸取りノズル5の外に存在する半田4がランド6の中心に集まる傾向があるが、吸取りノズル内径面積に対してランド面積が大きすぎると、ランド端の半田4はランド6の中心に集まり難くなるので、同一場所で複数回の処理を行っても効果が現れない。吸取りノズル5を前後左右に移動させながら半田4を吸取ることによって、レジスト表面13の位置まで半田4を除去することができる。
【0038】
【表2】

【0039】
表2は、部品と、隣接する部品との間隔を変化させた場合の吸取りノズル先端と隣接部品との接触の有無を示す。吸取りノズルの内径がランドサイズの短辺の長さと同等である吸取りノズル5の吸取りノズル外径は内径+100μmである。隣接部品間隔が150μm以下になると間隔が狭いためにノズルと部品端とが接触し、吸取りノズル5は前後左右に移動することができなくなる可能性が非常に高くなる。そこで、ノズルが隣接部品に接触して隣接部品が位置ズレを起こすことを防ぐために、同一場所で吸取りノズルの上昇および下降を行うことが望ましい。
【0040】
図7は、本発明の第2の形態であるリペア方法のフローチャートである。電子部品に不具合が発生したときは、ステップB1に移る。ステップB1では、不良部品が実装されている基板3はリペア装置1の基板ステージにセットされる。ステップB2では基板3上に実装された複数のチップ部品から不良部品が指定され、リペア装置1に備えられた部品除去冶具と不良部品とが位置決めされる。部品除去冶具は、不良部品を確実に吸着することができる部品吸着ノズルおよび部品を確実に把持することができる部品把持用ピンセットを使用することが望ましい。部品吸取りノズルは、残留する半田処理に使用される吸取りノズルと同等の形状である。ステップB3では、不良部品と位置決めされた部品除去冶具は下降してステップB4に進み、基板3の上面と下面から指定された不良部品を局所的に加熱する。
【0041】
ステップB5では、加熱によって不良部品がランド6に半田付けされる半田4が溶融し、ステップB6では、不良部品は、部品除去冶具に把持されて強制的に基板3から除去される。ステップB7では、不良部品を把持した部品除去冶具は上昇し、ステップB8に進み不良部品の加熱は終了する。ステップB9では、不良部品を把持した部品除去冶具は図示しない部品交換ステージへ移動して不良部品を放出する。不良部品が放出された後に、ステップB10に進んでランド上に残留する半田4の除去が行われる。半田4の除去は、本発明の第1の形態において説明した半田除去方法を用いて行われる。半田4が除去された後に、ステップB11で新たにディスペンサ機構部を半田4が除去されたランド6に位置決めする。ディスペンサ機構部をランド6に位置決めした後に、ステップB12に進み半田ペーストシリングを下降させる。ステップB13では、半田ペーストシリングによって半田ペーストがランド6に塗布される。
【0042】
ステップB14では、代替部品が部品交換ステージにセットされ、ステップB15では、代替部品を把持するために部品吸着冶具は部品交換ステージへ移動する。ステップB16では、部品交換ステージへ移動した部品吸着冶具は、下降して代替部品を把持する。ステップB17では、代替部品を把持した部品吸着冶具は上昇して基板ステージへ移動する。ステップB18では、代替部品を把持した部品吸着冶具は代替部品が半田付けされるランド6に位置決めされる。ステップB19では、代替部品を把持した部品吸着冶具は下降し、ステップB20では、代替部品をランド6にセットして放出する。ステップB21では、ランド6にセットされた代替部品は加熱されステップB22に進み半田4の温度が溶融温度以上になった後にステップB23で部品吸着冶具は上昇する。このようにして代替部品が実装されることによってリペア工程は終了する。
【0043】
このように、基板3に設けられたランド6に半田付けされた電子部品を除去した後に、ランド6に残留する半田4を熱風吹き出し口7によって加熱溶融し、吸取りノズル5によって除去するにあたって、吸取りノズル5は、先端部に半田4を吸引するための開口とランド6に残留する半田4を加熱溶融する熱風吹き出し口7とを有する。開口をランド6上方に近接して配置し、熱風吹き出し口7によってランド6に残留する半田4を加熱溶融する。開口からランド6に残留する半田4を吸引した後に、ランド6に残留する半田4の高さを計測してランド6に残留する半田量の適否を判断する。残留する半田量が適量であると判断された場合には、加熱溶融を終了し、残留する半田量が不適量であると判断された場合には、再び半田4を吸引するので、隣接する部品との間隔が150μm以下の狭い間隔で実装される0402チップ部品を除去した後にランド上に残留する半田4を確実に除去することができる。
【0044】
さらに、吸取りノズル5は、ランド6と直交する方向において下降および上昇が可能であり、吸取りノズル5は吸引力を維持して下降および上昇を行うので、吸取りノズル5の外側にある半田4も、ランド6の中心部に集まり、吸取り処理を複数回行うことによって確実にランド面6に残留する半田4の処理を行うことができる。
【0045】
さらに、ランド6に残留する半田4の高さがランド6の周囲に設けられるレジスト表面13より突出する高さである場合に不適合と判断するので、残留する半田4を除去した後に部品実装に必要な半田量のコントロールが容易になる。
【0046】
さらに、吸取りノズル5は、隣接する電子部品との間隔が最も狭いランド6に配置された状態で、前記吸取りノズル5の先端部と前記隣接する電子部品とは間隔を空けて離間しているので、ノズルが隣接部品に接触して隣接部品が位置ズレを起こすことを防ぐことができる。
【0047】
さらに、吸取りノズル5の先端部内径は、ランド6の周辺を構成する最も短い辺よりも短いので、ノズルが隣接部品に接触して隣接部品が位置ズレを起こすことを防ぐことができる。
【0048】
さらに、隣接する部品との間隔が150μm以下の狭い間隔で実装される0402チップ部品を除去した後にランド上に残留する半田4を確実に除去することができるリペア方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の形態である半田除去方法を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の形態である半田除去方法のフローチャートである。
【図3】加熱時間と半田の温度との関係を示すグラフである。
【図4】0402部品用ランドの吸取りノズルと半田除去率との関係を示すグラフである。
【図5】0603部品用ランド(ランドサイズ200μm×280μm)の吸取りノズルと半田除去率との関係を示すグラフである。
【図6】1005部品用ランド(ランドサイズ300μm×450μm)の吸取りノズルと半田除去率との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の形態であるリペア方法のフローチャートである。
【図8】従来の不良部品の除去工程を説明する説明図である。
【図9】従来のランド82の面積よりもノズルの開口が広い吸取りノズル85を用いて半田84bを除去する説明図である。
【図10】従来の金属繊維を編みこんだ材料86を用いて残留する半田84bを除去する説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 リペア装置
3,83 基板
4,84,84a,84b 半田
5,85 吸取りノズル
6,82 ランド
7 熱風吹き出し口
8 局所加熱用金属カバー
11 赤外線ヒータ
12 熱風
13 レジスト表面
14 酸化膜
81 不良部品
86 金属繊維を編み込んだ材料
87 半田ごて

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられたランドに半田付けされた電子部品を除去した後に、前記ランドに残留する半田を発熱部によって加熱溶融し、ノズル部によって除去する半田除去方法であって、
前記ノズル部は、先端部に半田を吸引するためのノズル孔が開口する開口部を有し、
前記開口部を前記ランド上方に近接して配置する第1工程と、
前記発熱部によって前記ランドに残留する半田を加熱溶融する第2工程と、
前記開口部から前記ランドに残留する半田を吸引する第3工程と、
前記半田を吸引した後に前記ランドに残留する半田の高さを計測して前記ランドに残留する半田量の適否を判断する第4工程とを備え、
第4工程で前記残留する半田量が適量であると判断された場合には、前記加熱溶融を終了し、前記残留する半田量が不適量であると判断された場合には、前記第3工程と前記第4工程とを再び行うことを特徴とする半田除去方法。
【請求項2】
前記ノズル部は、前記ランド部と直交する方向において下降および上昇が可能であり、
前記第3工程では、前記ノズル部は吸引力を維持して下降および上昇を行うことを特徴とする請求項1に記載の半田除去方法。
【請求項3】
前記第4工程では、前記ランドに残留する半田の高さが前記ランドの周囲に設けられるレジストの表面より突出する高さである場合に不適合と判断することを特徴とする請求項1または2に記載の半田除去方法。
【請求項4】
前記ノズル部は、隣接する電子部品との間隔が最も狭いランドに配置された状態で、前記ノズル部の先端部と前記隣接する電子部品とは間隔を空けて離間していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半田除去方法。
【請求項5】
前記ノズル部の先端部内径は、前記ランドの周辺を構成する最も短い辺よりも短いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半田除去方法。
【請求項6】
基板に実装された電子部品を除去する工程と、前記電子部品を除去した後に前記電子部品が半田付けされたランドに残留する半田を除去する工程と、前記半田が除去された前記ランドに半田を供給する工程と、半田が供給された前記ランドに電子部品を実装する工程とを備えるリペア方法であって、
前記電子部品を除去した後に前記ランドに残留する半田を除去する工程は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の半田除去方法が用いられることを特徴とするリペア方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−103319(P2010−103319A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273650(P2008−273650)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】