説明

単相3線式電力線の接続判定装置と接続判定方法

【課題】簡単な構成で、一組の電源コンセントが同一の外線P1、P2に接続されているかどうかを判定できる単相3線式電力線の接続判定装置と接続判定方法を提供する。
【解決手段】第1電源コンセントのホット側端子を判別し、交流電圧が印加されるホット側端子の第1ゼロクロス時を検出し、第2電源コンセントのホット側端子を判別し、交流電圧が印加されるホット側端子の第2ゼロクロス時を検出し、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間ΔTが交流電圧周期の整数倍であるときに、第1電源コンセントと第2電源コンセントが同一電力線に接続されていると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相3線式電力線に接続する2種類の電源コンセントが同位相の電力線に接続されているか否かを判定する単相3線式電力線の接続判定装置と接続判定方法に関し、更に詳しくは、2種類の電源コンセントのホット側端子が単相3線式電力線の同一の外線P1、P2に接続されているか否かを判定する単相3線式電力線の接続判定装置と接続判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用の電気機器には、交流100Vを電源とする照明器具、冷蔵庫、テレビジョン受像器などの一般家電機器の他に、消費電力が大きく交流200Vを電源として設計された空調機などの機器があり、これらの機器を共通する電力線で配電する単相3線式の配電方式が一般に採用されている。
【0003】
この配電方式は、図4に示すように、6600Vの高圧配電線101を配電用変圧器102である柱上変圧器で降圧し、中性線Nと外線P1、P2からなる3線の商用電力線が屋内に配線される。中性線Nは、配電用変圧器102の二次巻線の中間タップから引き出され、外線P1、P2は、二次巻線の両端から引き出される。中性線Nは、一般に接地され、中性線Nと外線P1若しくは中性線Nと外線P2に100Vの交流電圧が配電されるとともに、外線P1と外線P2の電位は、逆相の関係にあるので、外線P1と外線P2間には、200Vの交流電圧が配電される。従って、中性線Nと外線P1若しくは中性線Nと外線P2に接続する電源コンセント103に機器の電源プラグを差し込めば、交流100Vの電源が得られ、外線P1と外線P2に接続する電源コンセント104に電源プラグを差し込めば、交流200Vの電源が得られる。
【0004】
一方、交流100Vを給電する電源コンセント103を、中性線Nと外線P1若しくは中性線Nと外線P2のいずれに接続するか、すなわち電源コンセントのホット側端子103pが外線P1と外線P2のいずれに接続するかは、特に制約がなく、また、いずれであっても交流100Vの電源が供給されるので、従来、その接続が問題となることはなかった。
【0005】
しかしながら、近年、スペクトラム拡散変調方式などの変調方式を用い、家庭内に配線される電力線を利用して通信を行ういわゆるPLC(電力線搬送通信)方式が着目され、家庭内の異なる位置に設置された交流100Vを給電する電源コンセント103へ変復調装置105の電源プラグを差し込み、電力線を信号線として、変復調装置に接続する端末機器間のデータ通信を行う電力線搬送通信が実用化されている。
【0006】
この電力線搬送通信において、図4に示すように、送信側の電源コンセント103Aのホット側端子103Apと受信側の電源コンセント103Bのホット側端子103Bpが、それぞれ異なる外線P1、P2に接続されているものとすると、受信側端末に到達する信号は大きく減衰し、良好な通信が保てないものとなった。例えば、10dBmの送信信号の一方の中性線Nと一方の外線P1へ重畳し、同相である中性線Nと一方の外線P1と、異相である中性線Nと外線P2間に表れる電力を比較すると、10KHz以上の周波数帯域で同相間に比べで異相間では30dBm以上減衰し、信号電力が−50dBmとなり復調できない場合が生じていた。
【0007】
そこで、従来、中性線Nと外線P1間と、中性線Nと外線P2間のいずれかに接続を切り換えるスイッチング回路と、変復調装置と、受信データメモリとを備え、一方の配電線間に流れる信号を一度復調して受信データメモリに記憶し、受信データメモリから読み出し、あらためて変調した信号を、スイッチング回路の接続を切り換えて他方の配電線間に出力する電力線路選択装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この電力線路選択装置によれば、電源コンセントのホット側端子が異なる外線P1、P2に接続された端末機器間であっても、電力線路選択装置を介して信号が伝送されるので、減衰することなく受信側端末装置で復調可能となる。
【0008】
【特許文献1】特開平2−50633号公報(第6頁右上欄第5行乃至第7頁右上欄第2行、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この電力線路選択装置を配電線間に接続する従来方法は、大がかりで高価な装置を用意する必要があり、家庭内で電灯線を信号線として使用することにより、可能な限り既存の通信環境を維持したまま通信を行う電力線搬送通信には不向きである。
【0010】
交流100Vを給電する電源コンセントのホット側端子が外線P1、P2のいずれに接続されているかを知ることができれば問題はないが、その接続に特定の制約がなく、また、外観からその接続状態を知ることはできない。その結果、第1電源コンセントと第2電源コンセントが異なる外線に接続されていても、送信信号の信号電力が減衰するだけで、外観からその誤接続を把握できず、その原因に気付かないまま、通信を継続する恐れがあった。
【0011】
一組の電源コンセントのホット側端子が同一の外線P1、P2に接続されていれば、電源コンセントの端子間に給電される交流電圧は、同相となり、異なる外線P1、P2に接続されていれば、逆相となるので、両者の電圧波形を比較して、同相となる関係の一組の電源コンセントを選択すれば、上述の問題は解決される。しかしながら、両者の位相を同時に比較するためには、比較判定装置を一組の電源コンセントのそれぞれに接続させる必要があり、一組の電源コンセントが家庭内の一階と二階など、離れた位置にある場合に両者に接続する長いケーブルを用意することは実用的ではなく、接続状態を簡単に判定することはできなかった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、簡単な構成で、一組の電源コンセントが同一の外線P1、P2に接続されているかどうかを判定できる単相3線式電力線の接続判定装置と接続判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、請求項1の単相3線式電力線の接続判定装置は、接地電位体に接触させ、ほぼ接地電位としたグランド側プローブ端子と単相3線式電力線に接続する電源コンセントの一対のいずれかの端子へ接触させたホット側プローブ端子間の電圧を検出し、高い電位差を検出した一方の端子を、単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続するホット側端子と判別する電圧検出回路と、電源コンセントのホット側端子へ接触させたホット側プローブ端子の交流電圧の電位と、ほぼ接地電位としたグランド側プローブ端子の基準電位を比較し、交流電圧の上昇中に基準電位に交差する立ち上がりゼロクロスポイント、若しくは交流電圧の下降中に基準電位に交差する立ち下がりゼロクロスポイントのいずれか一方のゼロクロス時を検出するゼロクロス検出回路と、
第1電源コンセントのホット側端子へホット側プローブ端子を接触させて検出する第1ゼロクロス時から、第2電源コンセントのホット側端子へホット側プローブ端子を接触させて検出する第2ゼロクロス時までの経過時間を計測する計時手段と、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間が、交流電圧の周期の整数倍であるときに、第1電源コンセントと第2電源コンセントのホット側端子は、共通する第1外線若しくは第2外線に接続されていると判定する接続判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線には、交流電圧が印加され、一方、中性線は接地されるので、ホット側プローブ端子を接触させて高い電位差が検出される側の電源コンセントの端子を、第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続するホット側端子と判別する。
【0015】
第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間は、交流電圧の周期の整数倍であるときには、第1電源コンセントと第2電源コンセントのホット側端子に同相の交流電圧が印加されることとなり、共通する第1外線若しくは第2外線に接続されていると判定できる。第1電源コンセントと第2電源コンセントのホット側端子が、第1外線と第2外線のそれぞれに分かれて接続されている場合には、逆相の交流電圧が印加されるので、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間は、交流電圧の周期の整数倍に半周期ずれ、共通する外線に接続されるとは判定されない。
【0016】
請求項2の単相3線式電力線の接続判定装置は、接地電位体が、接地面に平行に支持した金属板であることを特徴とする。
【0017】
接地面に平行に支持した金属板は、接地面との間に大きな浮遊容量が得られ、ほぼ接地電位とすることができる。従って、単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続するホット側端子との間に高い電位差が発生し、接地された電位差が少ない他側の端子と判別できる。また、グランド側プローブ端子を接地できない場所でも、基準電位をほぼ接地電位とすることができ、ホット側プローブ端子の交流電圧の電位と接地電位と比較するゼロクロスポイントをわずかな誤差で検出できる。
【0018】
金属板は、持ち運び可能な大きさ及び重量とすることにより、第1電源コンセントと第2電源コンセントの近傍で、金属板へグランド側プローブ端子を接触させ、ほぼ接地電位とすることができる。
【0019】
請求項3の単相3線式電力線の接続判定装置は、計時手段が、フリーランカンウターの計数値の差から経過時間を換算する計時タイマであることを特徴とする。
【0020】
フリーランカウンターは、等時間間隔で計数するので、第1ゼロクロス時の計数値と第2ゼロクロス時の計数値の差に、計数時間間隔を乗じて、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間が得られる。
【0021】
請求項4の単相3線式電力線の接続判定方法は、単相3線式電力線に接続する第1電源コンセントの近傍で、グランド側プローブ端子を接地電位体に接触させて、ほぼ接地電位の基準電位とし、基準電位としたグランド側プローブ端子と第1電源コンセントの一対のいずれかの端子へ接触させたホット側プローブ端子間の電圧を検出し、高い電位差を検出した一方の端子を、単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続する第1電源コンセントのホット側端子として、ホット側プローブ端子を接触させ、第1電源コンセントのホット側端子へ接触させたホット側プローブ端子の交流電圧の電位と、接地電位体に接触させたグランド側プローブ端子の基準電位を比較し、交流電圧の上昇中に基準電位に交差する立ち上がりゼロクロスポイント、若しくは交流電圧の下降中に基準電位に交差する立ち下がりゼロクロスポイントのいずれか一方の第1ゼロクロス時を検出し、第1ゼロクスロ時を記憶し、単相3線式電力線に接続する第2電源コンセントの近傍で、グランド側プローブ端子を接地電位体に接触させて、ほぼ接地電位の基準電位とし、基準電位としたグランド側プローブ端子と第2電源コンセントの一対のいずれかの端子へ接触させたホット側プローブ端子間の電圧を検出し、高い電位差を検出した一方の端子を、単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続する第2電源コンセントのホット側端子として、ホット側プローブ端子を接触させ、第2電源コンセントのホット側端子へ接触させたホット側プローブ端子の交流電圧の電位と、接地電位体に接触させたグランド側プローブ端子の基準電位を比較し、第1ゼロクロス時と同じ立ち上がりゼロクロスポイント若しくは立ち下がりゼロクロスポイントで、交流電圧の電位と基準電位が交差する第2ゼロクロス時を検出し、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間が、交流電圧の周期の整数倍であるときに、第1電源コンセントと第2電源コンセントのホット側端子は、共通する第1外線若しくは第2外線に接続されていると判定する、ことを特徴とする。
【0022】
単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線には、交流電圧が印加され、一方、中性線は接地されるので、ホット側プローブ端子を接触させて高い電位差が検出される側の電源コンセントの端子を、第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続するホット側端子と判別する。
【0023】
第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間は、交流電圧の周期の整数倍であるときには、第1電源コンセントと第2電源コンセントのホット側端子に同相の交流電圧が印加されることとなり、共通する第1外線若しくは第2外線に接続されていると判定できる。第1電源コンセントと第2電源コンセントのホット側端子が、第1外線と第2外線のそれぞれに分かれて接続されている場合には、逆相の交流電圧が印加されるので、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間は、交流電圧の周期の整数倍に半周期ずれ、共通する外線に接続されるとは判定されない。
【0024】
請求項5の単相3線式電力線の接続判定方法は、接地電位体が、接地面に平行に支持した金属板であることを特徴とする。
【0025】
接地面に平行に支持した金属板は、接地面との間に大きな浮遊容量が得られ、ほぼ接地電位とすることができる。従って、単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続するホット側端子との間に高い電位差が発生し、接地された他側の端子と判別できる。また、グランド側プローブ端子を接地できない場所でも、ほぼ接地電位の基準電位とすることができ、ホット側プローブ端子の交流電圧の電位と接地電位と比較するゼロクロス時をわずかな誤差で検出できる。
【0026】
金属板は、持ち運び可能な大きさ及び重量とすることにより、第1電源コンセントと第2電源コンセントの近傍で、金属板へグランド側プローブ端子を接触させ、ほぼ接地電位とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1乃至請求項5の発明によれば、第1電源コンセントと第2電源コンセントが、共通する単相3線式電力線に接続されているか否かを、第1電源コンセントと第2電源コンセントについて、個別にホット側端子の電位を基準電位と比較して判定するので、同時に両者の位相を比較するためにケーブルを配線することなく、第1電源コンセントと第2電源コンセントが離れた位置でも判定できる。
【0028】
また、単相3線式電力線を通信線として利用する電力線搬送通信において、送信信号の信号電力が減衰するだけで、外観から接続状態を把握できない第1電源コンセントと第2電源コンセントの誤接続を簡単に検出でき、第1電源コンセントと同一の電力線に接続された第2電源コンセントを選択して、信号電力が減衰しない電力線搬送通信が可能となる。
【0029】
また、請求項1の発明によれば、電圧検出回路、ゼロクロス検出回路、計時手段と、接続判定手段を備えるだけの簡単な装置で、第1電源コンセントと第2電源コンセントとの接続を判定できる。
【0030】
これに加えて請求項2と請求項5の発明によれば、第1電源コンセントと第2電源コンセントが離れた位置に設置されていても、その近傍まで金属板を運び、グランド側プローブ端子を簡単にほぼ接地電位とすることができる。
【0031】
また、電源コンセントのホット側端子の判定と、ゼロクロス時の検出の際に、グランド側プローブ端子を同一の金属板に接触させたまま、ほぼ接地電位とすることができる。
【0032】
また、請求項3の発明によれば、第1ゼロクロス時や第2ゼロクロス時を記憶する記憶回路を備えることなく、フリーランカウンターと簡単な演算回路のみで、経過時間が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態に係る単相3線式電力線の接続判定装置1と接続判定方法を、図1乃至図3を用いて説明する。図1は、接続判定装置1のブロック図、図2は、単相3線式電力線10に、第1電源コンセントAと、4種類の第2電源コンセントB乃至Eが接続された状態を示す電源配線図、図3、第1電源コンセントAに対する第2電源コンセントB乃至Eの各接続状態を判定する方法を示す説明図である。
【0034】
図1に示すように、接続判定装置1は、ホット側プローブ端子2とグランド側プローブ端子3と、これらの一対のプローブ端子2、3間の電圧を検出する電圧検出回路4を備えている。電圧検出回路4で検出する電圧は、グランド側プローブ端子3の電位を基準電位として基準電位に対するホット側プローブ端子2の電位差であり、電圧検出回路4の出力側に接続されるCPU5とゼロクロスポイント検出回路6へ連続出力される。
【0035】
ゼロクロスポイント検出回路6は、リセットボタン7の操作によってリセット信号を入力されると、電圧検出回路4から入力されるプローブ端子2、3間の検出電圧が負から正に転じる立ち上がりゼロクロスポイントのタイミング、すなわち、ホット側プローブ端子2の電位が上昇し、グランド側プローブ端子3の基準電位を越えるタイミングで、タイミング信号を生成し、その出力側に接続されたCPU5へ出力する。
【0036】
CPU5は、これらの回路4、6の他、表示装置8、フリーランカウンタ9、RAM11及びROM12に接続し、後述する第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間ΔTを計測する計時手段と、経過時間ΔTから、第1電源コンセントと第2電源コンセント間の接続状態を判定する接続判定手段を兼ねている。表示装置8は、CPU5の制御によって、電圧検出回路4が検出した電圧や、CPU5の接続判定手段による接続状態の判定結果を表示する。
【0037】
フリーランカンカウンタ9は、図示しないクロックから発信されるクロック信号の周波数を分周し、単相3線式電力線10に流れる交流周波数(例えば、50Hz若しくは60Hz)よりはるかに高い所定周波数で計数を繰り返すもので、CPU5は、最初に立ち上がりゼロクロスポイントを表すタイミング信号がゼロクロスポイント検出回路6から入力された時にフリーランカンカウンタ9から入力される計数値を、第1ゼロクロス時を表す第1計数値としてRAM11へ記憶する。続いて、ゼロクロスポイント検出回路6から立ち上がりゼロクロスポイントを表すタイミング信号が入力される毎に、入力時のフリーランカンカウンタ9から入力される計数値を、入力順に第2計数値、第3計数値・・としてRAM11へ記憶し、接続判定装置1の電源OFFなどで接続判定装置1全体の動作がリセットされるまでこれを繰り返す。第2計数値、第3計数値・・は、第1ゼロクロス時と経過時間を比較する為に、第2電源コンセントから検出される第2ゼロクロス時を表すものであり、計時手段となるCPU5は、第2計数値以下の計数値がRAM11へ記憶される毎に、その計数値から第1計数値を減じた値に、フリーランカンカウンタ9の計数周期を乗じ、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間ΔTを算出する。
【0038】
CPU5は、この算定した経過時間ΔTと、単相3線式電力線10に流れる交流電圧の周期(例えば、交流周波数が50Hzである場合には、20msec)とを比較し、経過時間ΔTが交流電圧の周期の整数倍であるときには、電源コンセント間の接続が同一電力線であると判定して、OKを、整数倍とならない場合には、異なる電力線に接続されていると判定し、NGを、表示装置8へ表示する。
【0039】
尚、ROM12は、ブートプログラムやCPU5の上述の動作を実行するプログラム、表示装置8の表示データ、単相3線式電力線10に流れる可能性のある交流電圧の複数の周期などを記憶するものである。
【0040】
以下、この接続判定装置1を用いて、第1電源コンセントAと、4通りに接続された第2電源コンセントB乃至E間との接続を判定する方法を説明する。ここでは、例えば、図2に示す単相3線式電力線10の中性線Nと外線P1、P2のいずれかを通信線として、第1電源コンセントAに接続された通信装置と、第2電源コンセントB乃至Eのいずれかに接続された通信装置間で、信号電力の減衰がなく信号が伝送されるように、第1電源コンセントAと同一の電力線に接続する第2電源コンセントを、第2電源コンセントB乃至Eから判定するものとする。
【0041】
始めに、基準となる第1電源コンセントAの近傍で、接続判定装置1のグランド側プローブ端子3を、接地電位体に接触させ、ほぼ接地電位の基準電位とする。接地電位体としては、大地に接続されたアース端子が電源コンセントの周囲にあれば、アース端子が望ましいが、周囲に配線されていない場合には、床、壁などを接地電位体に代用する。また、本実施の形態では、持ち運びできる所定の重量と大きさで、大地に対して水平に支持し、更に金属板を床、壁などへ接触させた金属板を接地電位体として用いる。このように水平に支持し、床、壁などへ接触させた金属板は、接地面に対してより大きな静電容量が得られ、金属板へ接触させたグランド側プローブ端子3の電位をほぼ接地電位とすることができる。
【0042】
グランド側プローブ端子3を金属板へ接触させた状態で、ホット側プローブ端子2を第1電源コンセントAの一対のL、R端子に交互に接触させる。ホット側プローブ端子2を第1電源コンセントAのL端子に接触させると、電圧検出回路4が検出したL端子の基準電位に対する電圧が表示装置8に表示され、また、R端子に接触させると、R端子の基準電位に対する電圧が表示装置8に表示される。図2に示すように、第1電源コンセントAのL端子が、単相3線式電力線10の中性線Nに、R端子が外線P1に接続しているものとすると、R端子に100Vの交流電圧が印加されているので、R端子の電圧VRがほぼ0VのL端子の電圧VLに比べて、高い電位差が表示される。従って、以上の操作から、第1電源コンセントAのL端子が接続するグランド側端子と、R端子が外線P1、P2のいずれかに接続するホット側端子であることが判明する。但し、R端子が外線P1、P2のいずれに接続しているかは、不明である。
【0043】
続いて、グランド側プローブ端子3を、ほぼ接地電位の基準電位としたまま、ホット側プローブ端子2をホット側端子と判明した第1電源コンセントAのR端子に接触させ、電圧検出回路4でR端子の電圧を連続して検出させる。尚、上述の操作で、第1電源コンセントAのL端子は、接地された中性線Nに接続していることが判明しているので、この操作では、L端子を接地電位体としてグランド側プローブ端子3を接触させてもよい。
【0044】
電圧検出回路4で連続して検出されるR端子の電圧VRは、ゼロクロスポイント検出回路6へ連続出力され、R端子の電圧VRが負電圧から正電圧に移行する立ち上がりゼロクロスポイントがR端子に印加される交流電圧の周期で検出される。この状態で、操作者がリセットボタン7を操作し、リセット信号をゼロクロスポイント検出回路6へ入力すると、その後最初に検出した立ち上がりゼロクロスポイントのタイミングで、タイミング信号がCPU5に出力される。
【0045】
CPU5は、起動後、最初に立ち上がりゼロクロスポイントを表すタイミング信号が、ゼロクロスポイント検出回路6から入力されると、その時のフリーランカンカウンタ9から入力される計数値を、第1ゼロクロス時tAを表す第1計数値としてRAM11へ記憶する。
【0046】
第1計数値としてRAM11へ記憶されると、CPU5は、第1電源コンセントAに対する検出操作が完了したものとして、その旨を表示装置8へ表示する。操作者は、その表示を確認して、第1電源コンセントAと同一の電力線に接続されか否かを判定しようとする第2電源コンセントの近傍へ接続判定装置1と金属板を運び、第1電源コンセントAに対する操作と同じ操作を繰り返す。
【0047】
第2電源コンセントは、一対のL、R端子の一方が中性線Nに、他方が外線P1、P2のいずれかに接続する4通りの組み合わせで接続された第2電源コンセントB乃至Eのいずれかの接続状態で電力線10に接続している。
【0048】
始めに、第2電源コンセントの近傍で、接続判定装置1のグランド側プローブ端子3を、水平に支持し、床、壁などへ接触させ、水平に支持した金属板に接触させ、ほぼ接地電位の基準電位とする。この状態で、ホット側プローブ端子2を第2電源コンセントの一対のL、R端子に交互に接触させ、表示装置8に高い電位差が表示されたときに接触させていた端子をホット側端子とする。ホット側プローブ端子2をL端子に接触させたときに高い電位差が検出されれば、第2電源コンセントC、Dのいずれかの接続状態であり、R端子に接触させたときに高い電位差が検出されれば、第2電源コンセントB、Eのいずれかの接続状態である。
【0049】
続いて、グランド側プローブ端子3を、ほぼ接地電位の基準電位としたまま、ホット側プローブ端子2を第2電源コンセントの判明したホット側端子に接触させ、電圧検出回路4でホット側端子の電圧を連続して検出する。尚、この操作でも、第2電源コンセントの他側の端子は、接地された中性線Nに接続していることが判明しているので、グランド側プローブ端子3を判明したグランド側端子へ接触させてもよい。
【0050】
電圧検出回路4で連続して検出されるホット側端子の電圧(第2電源コンセントC、Dでは電圧VLは、第2電源コンセントB、Eでは、電圧VR)は、ゼロクロスポイント検出回路6に連続出力され、負電圧から正電圧に移行する立ち上がりゼロクロスポイントがホット側端子に印加される交流電圧の周期で検出される。この状態で、操作者が再びリセットボタン7を操作し、リセット信号をゼロクロスポイント検出回路6へ入力すると、その後最初に検出した立ち上がりゼロクロスポイントのタイミング(図3のtB、tC、tD、tE)で、2度目のタイミング信号がCPU5に出力される。
【0051】
CPU5は、最初のタイミング信号が入力された以降に、再びゼロクロスポイント検出回路6から立ち上がりゼロクロスポイントを表すタイミング信号が入力されると、その時のフリーランカンカウンタ9から入力される計数値を、第2ゼロクロス時を表す第2計数値としてRAM11へ記憶する。
【0052】
第2計数値をRAM11へ記憶すると、CPU5は、第2計数値から第1計数値を減じた値に、フリーランカンカウンタ9の計数周期を乗じ、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間ΔTを算出する。そして算定した経過時間ΔTと、単相3線式電力線10に流れる交流電圧の周期とを比較し、経過時間ΔTが交流電圧の周期の整数倍であるときには、電源コンセント間の接続が同一電力線であると判定して、OKを、整数倍とならない場合には、異なる電力線に接続されていると判定し、NGを、表示装置8へ表示する。例えば、図3に示す接続状態であれば、第2電源コンセントB、Cには、第1電源コンセントAと同相の交流電圧が印加されているので、第2ゼロクロス時tB、tCと第1ゼロクロス時tAの差である経過時間ΔTは、交流周期の整数倍であり、第2電源コンセントB、Cについて検出操作した場合には、表示装置8にOKが表示される。一方、第2電源コンセントD、Eには、第1電源コンセントAと逆相の交流電圧が印加されているので、第2ゼロクロス時tD、tEと第1ゼロクロス時tAの差である経過時間ΔTは、交流周期の整数倍に半周期ずれ、第2電源コンセントD、Eについて操作した場合には、表示装置8にNGが表示される。これらの表示から、操作者は検出操作を行った第2電源コンセントが、第1電源コンセントと同一配電線10に接続されたものかどうかを知ることができる。
【0053】
CPU5は、接続判定装置1全体の動作がリセットされない限り、その後、ゼロクロスポイント検出回路6からタイミング信号が入力されると、その時のフリーランカンカウンタ9から入力される計数値を、第2ゼロクロス時を表す計数値とし、同様に第1ゼロクロス時との比較、判定処理を繰り返す。従って、検出操作を行った第2電源コンセントの接続判定結果でNGの表示が出た場合には、そのまま他の第2電源コンセントについて同じ検出操作を繰り返し、第1電源コンセントと同一配電線10に接続された第2電源コンセントを探し出すことができる。またNGの表示が出た第2電源コンセントについては、逆相で接続されていることが明らかであるので、異相間カプラーを接続するなど、信号電力の減衰を防ぐ手段を講じることができる。
【0054】
上述の実施の形態は、家庭内に配線される単相3線式電力線で説明したが、単相3線式の電力線により配電されるものであれば、商業ビル、工場内の異なる位置に配設される電源コンセント間の接続を判定する場合にも適用できる。
【0055】
また、第1ゼロクロス時から第2ゼロクロス時までの経過時間ΔTを、フリーランカンカウンタの計数値を用いて算定したが、第1ゼロクロス時と第2ゼロクロス時の絶対時間を検出し、その時間差を経過時間ΔTとしてもよい。また、経過時間ΔTは、かならずしも直接求めずに、第1ゼロクロス時から交流電圧の周期で発信信号の発信を繰り返す発信手段を用いて、第2ゼロクロス時に発信信号が発信されたかどうかで、経過時間ΔTが交流電圧周期の整数倍であるかどうかを判定してもよい。
【0056】
また、上述の実施の形態では、第1ゼロクロス時と第2ゼロクロス時は、ホット側プローブ端子の電位の上昇中に、ほぼ接地電位に交差する立ち上がりゼロクロスポイントとしたが、ホット側プローブ端子の電位の下降中に基準電位に交差する立ち下がりゼロクロスポイントを、第1ゼロクロス時と第2ゼロクロス時としてもよい。
【0057】
また、接地電位体は、なるべく大きな金属板を用いて、床や壁等へ接触させるかその近傍で平行に配置するのが望ましいが、L端子若しくはR端子との間でいずれとの電位差が大きいかを判定できれば、より簡単な構造であってもよく、配置位置やその姿勢についても制約する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、単相3線式電力線を信号線として利用する電力線搬送通信において、通信機器を接続する電源コンセントの選定に適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施の形態に係る接続判定装置1のブロック図である。
【図2】単相3線式電力線10に、第1電源コンセントAと、4種類の第2電源コンセントB乃至Eが接続された状態を示す電源配線図である。
【図3】第1電源コンセントAに対する第2電源コンセントB乃至Eの各接続状態を判定する方法を示す説明図である。
【図4】単相3線式の配電方式を示す配電図である。
【符号の説明】
【0060】
1 接続判定装置
2 ホット側プローブ端子
3 グランド側プローブ端子
4 電圧検出回路
5 CPU(計時手段、接続判定回路)
6 ゼロクロスポイント検出回路(ゼロクロス検出回路)
10 単相3線式電力線
N 中性線
P1 第1外線
P2 第2外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地電位体に接触させ、ほぼ接地電位としたグランド側プローブ端子と、単相3線式電力線に接続する電源コンセントの一対のいずれかの端子へ接触させたホット側プローブ端子間の電圧を検出し、高い電位差を検出した一方の端子を、前記単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続するホット側端子と判別する電圧検出回路と、
電源コンセントの前記ホット側端子へ接触させたホット側プローブ端子の交流電圧の電位と、ほぼ接地電位としたグランド側プローブ端子の基準電位を比較し、交流電圧の上昇中に基準電位に交差する立ち上がりゼロクロスポイント、若しくは交流電圧の下降中に基準電位に交差する立ち下がりゼロクロスポイントのいずれか一方のゼロクロス時を検出するゼロクロス検出回路と、
第1電源コンセントの前記ホット側端子へ前記ホット側プローブ端子を接触させて検出する第1ゼロクロス時から、第2電源コンセントの前記ホット側端子へ前記ホット側プローブ端子を接触させて検出する第2ゼロクロス時までの経過時間を計測する計時手段と、
前記第1ゼロクロス時から前記第2ゼロクロス時までの経過時間が、前記交流電圧の周期の整数倍であるときに、前記第1電源コンセントと前記第2電源コンセントの前記ホット側端子は、共通する前記第1外線若しくは前記第2外線に接続されていると判定する接続判定手段と、
を備えたことを特徴とする単相3線式電力線の接続判定装置。
【請求項2】
接地電位体は、接地面に平行に支持した金属板であることを特徴とする請求項1に記載の単相3線式電力線の接続判定装置。
【請求項3】
計時手段は、フリーランカンウターの計数値の差から前記経過時間を換算する計時タイマであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単相3線式電力線の接続判定装置。
【請求項4】
単相3線式電力線に接続する第1電源コンセントの近傍で、グランド側プローブ端子を接地電位体に接触させて、ほぼ接地電位の基準電位とし、
基準電位とした前記グランド側プローブ端子と前記第1電源コンセントの一対のいずれかの端子へ接触させたホット側プローブ端子間の電圧を検出し、高い電位差を検出した一方の端子を、前記単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続する前記第1電源コンセントのホット側端子として、前記ホット側プローブ端子を接触させ、
前記第1電源コンセントのホット側端子へ接触させた前記ホット側プローブ端子の交流電圧の電位と、接地電位体に接触させた前記グランド側プローブ端子の基準電位を比較し、交流電圧の上昇中に前記基準電位に交差する立ち上がりゼロクロスポイント、若しくは交流電圧の下降中に前記基準電位に交差する立ち下がりゼロクロスポイントのいずれか一方の第1ゼロクロス時を検出し、
前記第1ゼロクスロ時を記憶し、
前記単相3線式電力線に接続する第2電源コンセントの近傍で、前記グランド側プローブ端子を接地電位体に接触させて、ほぼ接地電位の基準電位とし、
基準電位とした前記グランド側プローブ端子と前記第2電源コンセントの一対のいずれかの端子へ接触させた前記ホット側プローブ端子間の電圧を検出し、高い電位差を検出した一方の端子を、前記単相3線式電力線の第1外線若しくは第2外線のいずれかに接続する前記第2電源コンセントのホット側端子として、前記ホット側プローブ端子を接触させ、
前記第2電源コンセントのホット側端子へ接触させた前記ホット側プローブ端子の交流電圧の電位と、前記接地電位体に接触させた前記グランド側プローブ端子の基準電位を比較し、前記第1ゼロクロス時と同じ立ち上がりゼロクロスポイント若しくは立ち下がりゼロクロスポイントで、前記交流電圧の電位と基準電位が交差する第2ゼロクロス時を検出し、
前記第1ゼロクロス時から前記第2ゼロクロス時までの経過時間が、前記交流電圧の周期の整数倍であるときに、前記第1電源コンセントと前記第2電源コンセントの前記ホット側端子は、共通する前記第1外線若しくは前記第2外線に接続されていると判定する、
ことを特徴とする単相3線式電力線の接続判定方法。
【請求項5】
接地電位体は、接地面に平行に支持した金属板であることを特徴とする請求項4に記載の単相3線式電力線の接続判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−82723(P2008−82723A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260051(P2006−260051)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】