説明

単結晶ダイヤモンド工具

【課題】接合強度の高い単結晶ダイヤモンド工具を提供する。
【解決手段】単結晶ダイヤモンド工具は、台金10と、台金10上に設けられる第一ロウ材層41と、第一ロウ材層41上に設けられる金属層30と、金属層30上に設けられる第二ロウ材層42と、第二ロウ材層42上に設けられる単結晶ダイヤモンド層20とを備える。金属層30は、銅を50質量%以上含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、単結晶ダイヤモンド工具に関し、より特定的には、台金上に単結晶ダイヤモンド層がロウ付けされた単結晶ダイヤモンド工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、単結晶ダイヤモンド工具は、たとえば特開平4−182366号公報(特許文献1)、特開昭58−163569号公報(特許文献2)、特開昭52−130568号公報(特許文献3)、特開昭63−300803号公報(特許文献4)、および特開昭63−24002号公報(特許文献5)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−182366号公報
【特許文献2】特開昭58−163569号公報
【特許文献3】特開昭52−130568号公報
【特許文献4】特開昭63−300803号公報
【特許文献5】特開昭63−24002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば特許文献1では、台金と、台金にAgまたはAuロウ付けされた歪緩和金属層と、台金と歪緩和金属層とのロウ付けがAgロウ系のときは同質のAgロウで、Au系のときは同質のAuで統一し、台金と歪緩和金属層のロウ付けと共に歪緩和金属層に活性金属層を介し1回のロウ付けで接合されたダイヤモンドとからなることを特徴とするダイヤモンドロウ付け構造体が開示されている。
【0005】
しかしながら、従来の技術では、ロウ付け強度が低いという問題があった。
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、高い接合強度を有する単結晶ダイヤモンド工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った単結晶ダイヤモンド工具は、台金と、台金上に設けられるの第一ロウ材層と、第一ロウ材層上に設けられる金属層と、金属層上に設けられる第二ロウ材層と、第二ロウ材層上に設けられる単結晶ダイヤモンド層とを備え、金属層は、銅を50質量%以上含む。
【0007】
このように構成された単結晶ダイヤモンド工具は、銅を50質量%以上含む金属層が設けられているため、この金属層により、第一および第二ロウ材層に起因する歪を緩和することができ、接合強度を向上させることができる。
【0008】
好ましくは、金属層の厚みは、0.03mm以上0.5mm以下である。
好ましくは、単結晶ダイヤモンド層の厚みは3mm以下である。
【0009】
好ましくは、単結晶ダイヤモンド工具は単結晶ダイヤモンド切削工具である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に従えば、単結晶ダイヤモンド層が高い強度で台金に接続された単結晶ダイヤモンド工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に従った単結晶ダイヤモンド工具の側面図である。
【図2】図1中の矢印IIで示す方向から見た単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。
【図3】図1中の矢印IIIで示す方向から見た単結晶ダイヤモンド工具の正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に従った単結晶ダイヤモンド工具の斜視図である。
【図5】図4で示す単結晶ダイヤモンド工具の分解斜視図である。
【図6】図1中のVIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に従った単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。
【図8】この発明の実施の形態2に従った単結晶ダイヤモンド工具の側面図である。
【図9】単結晶ダイヤモンド層と台金との接合部分を示す図である。
【図10】図9中の矢印Xで示す方向から見た単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。
【図11】この発明の実施の形態3に従った金属層のロウ付け強度試験を説明するための単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。
【図12】この発明の実施の形態3に従った金属層のロウ付け強度試験を説明するための単結晶ダイヤモンド工具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。また、各実施の形態を組合せることも可能である。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った単結晶ダイヤモンド工具の側面図である。図1を参照して、単結晶ダイヤモンド工具1は、台金10と、台金10上に設けられる単結晶ダイヤモンド層20と、台金10と単結晶ダイヤモンド層20との間に介在する金属層30とを有する。金属層30の両面にはロウ材層が塗布されており、金属層30と、台金10および単結晶ダイヤモンド層20とを接合している。
【0014】
結晶ダイヤモンド層(MD:monocristal diamond)の厚みTMDは3mm以下とされる。単結晶ダイヤモンド層20は、すくい面と逃げ面との交線により形成される切刃21を有する。単結晶ダイヤモンド層20は天然ダイヤモンドおよび合成ダイヤモンドのいずれであってもよい。さらに、単結晶ダイヤモンド層20を合成する方法として直接合成法および気相合成法などの方法を用いることができる。
【0015】
図2は、図1中の矢印IIで示す方向から見た単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。図2を参照して、単結晶ダイヤモンド工具1の台金10は五角形であり、その先端が丸められた形状とされている。台金10には取付用の孔11が設けられている。なお、図2で示す五角形に限らず、さまざまな形状の台金10を設けてもよい。
【0016】
図3は、図1中の矢印IIIで示す方向から見た単結晶ダイヤモンド工具の正面図である。図4は、この発明の実施の形態1に従った単結晶ダイヤモンド工具の斜視図である。図5は、図4で示す単結晶ダイヤモンド工具の分解斜視図である。図3から図5を参照して、台金10の先端部と、単結晶ダイヤモンド層20との間には金属層30が介在している。図5で示す分解斜視図において、金属層30はシート状であり、金属層30の両面にロウ材層が塗布されて、金属層30と台金10、および、金属層30と単結晶ダイヤモンド層20とが接合される。
【0017】
図6は、図1中のVIで囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図6を参照して、台金10上に、第一ロウ材層41、金属層30、第二ロウ材層42および単結晶ダイヤモンド層20が設けられている。金属層30の厚みTCuは0.03mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0018】
金属層30は50質量%以上の銅を含む。具体的には、金属層30は、表1から4の青銅鋳物、りん青銅鋳物、黄銅鋳物、高力黄銅鋳物、鉛青銅鋳物、アルミニウム青銅鋳物、無酸素銅、タフピッチ銅、りん脱酸銅、アルミニウム青銅、クローム銅、黄銅、快削黄銅、鍛造用黄銅、ネーバル黄銅、高力黄銅および復水器用黄銅を用いることができる。
【0019】
それぞれの組成を表1から4で示す。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
以上のように構成された単結晶ダイヤモンド工具は、台金10と、台金10上に設けられる第一ロウ材層41と、第一ロウ材層41上に設けられる金属層30と、金属層30上に設けられる第二ロウ材層42と、第二ロウ材層42上に設けられる単結晶ダイヤモンド層20とを含む。金属層30は、銅を50質量%以上含む。金属層30の厚みは0.03mm以上0.5mm以下である。単結晶ダイヤモンド層20の厚みは3mm以下である。
【0025】
単結晶ダイヤモンド工具1は単結晶ダイヤモンド切削工具である。より具体的には、単結晶ダイヤモンドバイト、単結晶ダイヤモンドカッタ、単結晶ダイヤモンドフライスなどにより構成される。第一ロウ材層41および第二ロウ材層42は、Ag−Cu−Ti系、Ag−Cu−Ti−In系を用いることができる。
【0026】
(実施の形態2)
図7は、この発明の実施の形態2に従った単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。図8は、この発明の実施の形態2に従った単結晶ダイヤモンド工具の側面図である。図7および図8を参照して、長尺状のシャンクとしての台金10上に単結晶ダイヤモンド層20が設けられていてもよい。
【0027】
図9は、単結晶ダイヤモンド層と台金との接合部分を示す図である。図10は、図9中の矢印Xで示す方向から見た単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。図9および図10を参照して、超硬、ステンレス鋼、SC材(機械構造用炭素鋼)により構成される台金上に、第一ロウ材層41、金属層30、第二ロウ材層42および単結晶ダイヤモンド層20が設けられている。これらの積層構造において、矢印51で示す方向に第一ロウ材層41および第二ロウ材層42の収縮応力が加わる。また、単結晶ダイヤモンド層20内部に残留する、第二ロウ材層42の収縮応力の反力が矢印52で示される。そして、金属層30内部で緩和および吸収される反力が矢印53で示される。これらの力が釣り合うことにより、ロウ付け時の破損を防止することができる。
【0028】
すなわち、第一ロウ材層41および第二ロウ材層42の塗布および位置決めをした後ロウ付けを行なうときに熱歪が発生する。この熱歪を金属層30で吸収することでロウ付け接合強度を向上させている。
【0029】
(実施の形態3)
図11は、この発明の実施の形態3に従った金属層のロウ付け強度試験を説明するための単結晶ダイヤモンド工具の平面図である。図12は、この発明の実施の形態3に従った金属層のロウ付け強度試験を説明するための単結晶ダイヤモンド工具の側面図である。
【0030】
実施の形態3では、図11および図12で示すように、矢印70で示す方向から、緩衝板60を経由して単結晶ダイヤモンド層20に荷重を加えて、金属層30の破壊が起こるときの荷重を測定した。なお、金属層30と、超硬合金からなる台金10との間にはすべてのサンプルで同じロウ材を用いた。また、金属層30と単結晶ダイヤモンド層20との間にも同じロウ材を用いた。サンプル1から4では、以下の条件で金属層を用いて台金10に単結晶ダイヤモンド層20を接合した。
【0031】
サンプル1では、金属層30として厚みが0.05mmの銅板を用い、アルゴン雰囲気でロウ付けを行なった。
【0032】
サンプル2では、金属層30として厚みが0.1mmの銅板を用い、アルゴン雰囲気中でロウ付けを行なった。
【0033】
サンプル3では、金属層30として厚みが0.05mmの銅板を用い、真空中でロウ付けを行なった。
【0034】
サンプル4では、金属層30として厚みが0.1mmの銅板を用い、真空中でロウ付けを行なった。
【0035】
サンプル1から4におけるロウ材の組成は、80%Ag−18%Cu−2%Ti(質量%)とし、銅板は、無酸素銅とした。
【0036】
剥離強度(剪断強度)は、サンプル1では215.6N/mm2、サンプル2では190.1N/mm2、サンプル3では345.1N/mm2、サンプル4では293.8N/mm2であった。
【0037】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明は、単結晶ダイヤモンド層を用いた工具の分野で用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 単結晶ダイヤモンド工具、10 台金、11 取り付け孔、20 単結晶ダイヤモンド層、21 切刃、30 金属層、41 第一ロウ材層、42 第二ロウ材層、60 緩衝板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金と、
前記台金上に設けられるの第一ロウ材層と、
前記第一ロウ材層上に設けられる金属層と、
前記金属層上に設けられる第二ロウ材層と、
前記第二ロウ材層上に設けられる単結晶ダイヤモンド層とを備え、
前記金属層は、銅を50質量%以上含む、単結晶ダイヤモンド工具。
【請求項2】
前記金属層の厚みは、0.03mm以上0.5mm以下である、請求項1に記載の単結晶ダイヤモンド工具。
【請求項3】
前記単結晶ダイヤモンド層の厚みは3mm以下である、請求項1または2に記載の単結晶ダイヤモンド工具。
【請求項4】
前記単結晶ダイヤモンド工具は単結晶ダイヤモンド切削工具である、請求項1から3のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−251387(P2011−251387A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128096(P2010−128096)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】