説明

印刷システム用光沢付与システム

【課題】高速大量印刷可能で光沢を均質化可能な印刷システムを実現できるようにする。
【解決手段】印刷エンジンにより媒体上に印刷された画像の光沢水準を検出するためのシステムを提供する。このシステムは、媒体上に印刷粒子を固着させる固着用部材510と、固着用部材510表面の光沢値を検出するセンサ524と、固着用部材510表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像光沢水準に関連付ける手段520と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、大まかには印刷システム内で用いるのに適したセンサシステムに関し、より詳細には複数個の印刷エンジン(print engine、marking engine又はIME:image marking engineのこと。以下同様)のうち何れによって画像を印刷しても光沢均質性が保たれるようにする校正システムに関する。なお、本センサを使用できる印刷システムとしては、例えば、複数個の印刷エンジンを備え高集積並列印刷アーキテクチャ(tightly integrated parallel printing architecture)に従い構成されている印刷システムがある。
【背景技術】
【0002】
コピアやプリンタといった事務機の保守に広く見受けられる動向としてはモジュール方式の採用がある。モジュール方式とは、マシン内に設けるべきサブシステムのうち何個かを互いに別のモジュールとして構成し、それらのモジュールを単位としてマシンを組み上げる、という組織だったやり方のことを言う。この方式に従い構成されているマシンについては、モジュールを取り外して同種の新モジュールと交換するという作業によってその保守を行うことができ、またこの作業は迅速に済ますことができ、従って顧客とのビジネス関係を際だって柔軟なものにすることができる。即ち、各サブシステムが互いに別のモジュールになっているため、保守を請け負うサービス代理店の係員は不具合モジュールの取外と交換を行うだけでよく、従って保守のための来訪を短時間で済ますことができる。そのモジュールの実際の修理は、別の場所にあるサービス代理店又は修理業者の施設内で行えばよい。また、希望する顧客は、事務機サプライ販売店等からすぐ手に入る在庫品・規格品を購入するようにしてもよいし、マシンは借りるが一連のモジュールは必要時に購入するというやり方をとってもよい。
【0003】
こういった画像形成装置に対しては、より高速で大量に処理できるようにすることが顧客から要請されている。しかし、マシンを構成する個々のシステムにはそれぞれ速度上の限界があるため、仮に高速化を試みたとしても、高速化要請に応じた結果として様々な問題が生じてしまうか、高速化要請に応じられるが大きくて嵩張る装置になってしまうか、或いはその双方である。普通、大きくて嵩張る高速プリンタは非常に高価であり大抵は採算に合わないから、この種の装置に対し納得して出費できまたこの装置の本質的なやっかいさを是認できるのは、顧客の中でもわずかな比率を占めるに過ぎない超大量印刷顧客だけである。こういった問題点を克服し高速印刷を実現する上で非常に有用なやり方としては、印刷エンジンモジュールを複数個用いるというやり方がある。しかしながら、印刷エンジンモジュールを複数個用いる集積並列印刷マシンの中にはそのシステム内に複数個のフューザを備えるものがあり、その種のシステムでは、多色フューザの信頼性が一般に低めであることのほか、フューザが違うと光沢の均質性が違うということが懸念されている。即ち、フューザ間に製造公差の違い、状態の違い、構成部品の違い等があるため、光沢については印刷エンジン毎に異なる偏差が現れる。そのため、光沢を均質化できる印刷システムが求められている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5568246号明細書
【発明の開示】
【0005】
本発明は、光沢水準検出システム、印刷システム、光沢水準検出方法等として実施できる。本発明の一実施形態に係るシステムは、先に示した問題点を解決するため、媒体上に印刷粒子を固着させる固着用部材と、固着用部材表面の光沢値を検出するセンサと、固着用部材表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像の光沢水準に関連付ける手段と、を備え、印刷エンジンにより媒体上に印刷された画像の光沢水準を検出するシステムである。
【0006】
本システムには、更に、固着用部材表面の光沢を調整するコントローラを設けることができる。センサがコントローラと通信し、検出された光沢値又は光沢水準が所定の目標光沢範囲外であった場合にコントローラが制御信号を発生させるようにしてもよい。コントローラは、この制御信号により例えばパラメータであるフューザ温度(光沢付与ロール温度)、融着速度(フューザ速度)及びフューザニップ圧のうち1個又は複数個を調整する。また、センサとしては光学センサを使用でき、光学センサには固着用部材の表面略全体に亘り光沢分布を調べるためにマッピング手段を設けることができる。マッピング手段はコントローラと通信し、コントローラはマッピングにより判明した光沢均質性の度合いが所定の目標範囲外であった場合に制御信号を発生させる。なお、関連付け手段はルックアップテーブルを含む構成とすることができ、固着用部材はフューザ部材乃至光沢付与部材として実現でき、マッピング手段は固着用部材上で光学センサを移送するアセンブリを有する構成とすることができる。
【0007】
本発明の他の実施形態に係る印刷システムは、先に示した問題点を解決するため、その固着用部材により媒体(同じ媒体でも別々の媒体でもよい)上に印刷粒子を固着させる融着システムをそれぞれ有する複数個の印刷エンジンと、これらの印刷エンジンのうち第1印刷エンジン内の融着システムにより印刷された画像と第2印刷エンジン内の融着システムにより印刷された画像との間で光沢均質性を保持させるための校正システムであって固着用部材表面の光沢値を検出する少なくとも1個のセンサを有する校正システムと、固着用部材表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像光沢水準に関連付ける手段(校正システムの一部としてもよい)と、を備える印刷システムである。
【0008】
本システムには、更に、各印刷エンジン内固着用部材表面の光沢を調整するコントローラを設けることができる。センサがコントローラと通信し、検出された光沢値又は光沢水準が所定の目標光沢範囲外であった場合にコントローラが制御信号を発生させるようにしてもよい。コントローラは、この制御信号により例えば各印刷エンジン内固着用部材の温度水準を調整する。上掲のものに相当するマッピング手段として、各印刷エンジン内固着用部材上で光学センサを移送するアセンブリを有するものを設けてもよい。
【0009】
本発明の更に他の実施形態に係る方法は、先に示した問題点を解決するため、(光学)センサにより固着用部材表面の光沢値を検出するステップと、固着用部材表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像光沢水準に変換するステップとを、印刷エンジンにより媒体上に印刷された画像の光沢水準が検出されるよう実行する方法である。
【0010】
本方法では、更に、コントローラにより固着用部材表面の光沢を調整するステップを実行することができる。この調整に当たり、検出された光沢値又は光沢水準が所定の目標光沢範囲外であった場合に制御信号を発生させるようにしてもよい。また、この調整は、例えば、パラメータである光沢付与ロール温度(フューザ温度)、フューザ速度(融着速度)及びフューザニップ圧のうち1個又は複数個を変化させることによって行う。
【0011】
本発明の更なる実施形態に係る印刷システムは、その固着用部材により媒体(同じ媒体でも別々の媒体でもよい)上に印刷粒子を融着させる融着システムをそれぞれ有する複数個の印刷エンジンを備える印刷システムにおいて、先に示した問題点を解決するため、センサシステム及び校正システムを有する高集積並列印刷アーキテクチャを設け、このセンサシステム又は校正システムには、媒体上に融着した印刷粒子により形成される光沢を直接的又は間接的に示す情報を得るためのセンサを設け、複数個の印刷エンジンのうち第1印刷エンジン内の融着システムにより印刷された画像と第2印刷エンジン内の融着システムにより印刷された画像との間の光沢均質性を、校正システムにより保持させるようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、電子写真印刷装置の概略を一部立面図的に且つ一部模式図的に示す。ここで例示している電子写真印刷装置は、複数個の印刷エンジン乃至印刷装置を組み合わせた構成を有するディジタルコピア/プリンタにおいて使用されるものである。本発明は、そういった複合的ディジタルコピア/プリンタの多くに適用できる。なお、本願特許請求の範囲においては、静電写真方式、インクジェット方式、ホットメルト方式その他の方式に従い画像を生成でき印刷物を出力できるマシンであればその出力様式如何を問わずどのようなマシンをも、「印刷装置」又は「印刷エンジン」と称することとしている。従って、本願特許請求の範囲における「印刷装置」又は「印刷エンジン」には光学レンズ式コピア、ディジタルプリンタ、ファクシミリ機、多機能機等が含まれ得る。
【0013】
図中の電子写真モジュール乃至IME1はある種のマシンのハードウェア内にその構成部分として組み込まれるものである。静電写真印刷の分野においてよく行われているように、この電子写真モジュール1には、電子写真方式に従い所望の画像を形成するのに必要とされる多数の基本的ハードウェア構成要素が組み込まれている。画像形成先となるのは回転するフォトレセプタ2の表面であり、このフォトレセプタ2の周囲には各所各所に電子写真サブシステムが配置されている。配置されているのは、クリーニング装置(図中「クリーナ」)3、荷電コロトロン4又はこれに等価な装置、露出ステーション(図中「ROS」(raster output scanner))8、現像機ユニット(図中「現像機」)5、転写コロトロン6、フューザ7等のシステムである。一般的な装置においては概略この通りにサブシステムが使用、構成及び配置されるが、これは一例に過ぎない。即ち、電子写真プリンタを実際に構成する際、この例に例えば更にコロトロンを追加する、クリーニング装置を追加する、といった変形を施すことが可能であるし、多色プリンタであれば、複数個の現像機ユニットを設けることも可能である。これら電子写真サブシステムの制御はCPU(central processing unit)によって行われる。CPUは、例えばDMA(developed mass area)、転写電流、フューザ温度等、様々な電子写真パラメータを調整することによって、高品質印刷物を作成させる。
【0014】
なかでも現像機ユニット5は、本件技術分野においてよく行われているように、概ね、ハウジングと、その中に配置されている現像剤送給源とを備えている。現像剤送給源内にあるのは、通常、キャリア粒子が付加されたトナー粒子である。トナー粒子等の現像剤は、フォトレセプタ2その他の荷電レセプタの表面に形成されている静電潜像へと送給され、この静電潜像を現像する。現像機ユニット5は、電子写真モジュール1と一体に構成しておくことも、また電子写真モジュール1から分離できるよう構成しておくことも可能である。本発明を多色印刷可能な形態で実施する際には、現像機ユニット5を複数個設け、各現像機ユニット5がフォトレセプタ2上の静電潜像を互いに別色の原色トナーで現像するようにすればよい。
【0015】
図2に、図1に示した如き印刷エンジンを複数個備える印刷システム10を模式的に示す。この印刷システム10においては、高集積並列文書印刷を行えるよう複数個の印刷エンジンが接続され連携している。各印刷エンジンは、例えば、複数個の画素から構成されている画像データを受け取って処理(印刷等)を実行する。各印刷エンジンは、この画像データを、例えばコンピュータネットワークからのディジタル画像信号という形態にて、適当な通信チャネルを介し受け取ることができる。その際の通信チャネルとしては、電話回線、コンピュータケーブル、ISDN(integrated services digital network)回線等が使用される。ジョブを発生させるクライアントは通常はこのコンピュータネットワーク内にあり、クライアントが発生させるジョブはそれぞれ画像データを含んでおり、この画像データは複数枚の電子化頁から構成されており、この画像データには一組の処理指令が埋め込まれ又は付加されている。各ジョブは、画像データを含みPostScript(登録商標)等のPDL(page description language)による記述表現に変換され、また、そのシステム内で使用しているPDLと異なるPDLを用いて入力画像データが表現されていた場合には、例えばコントローラのインタフェースユニット内に配置してある適切な変換ユニットによって、入力に係るPDLから当該システム内のPDLへとその記述表現言語/形態が変換される。なお、画像データはこれ以外のリモート画像源から取り込むこともできる。その例としては、フロッピーディスク(「FLOPPY」は登録商標)、ハードディスク、スキャナ等といった各種の記憶/格納/入力媒体を想定できる。
【0016】
オペレータがスキャナを操作して文書を走査すること、即ちオンサイト画像入力も可能である。その場合も、複数個の画素から構成されているディジタル画像データがインタフェースユニットに送られる。スキャナからであれコンピュータネットワークからであれ、ディジタル画像データを受け取ったインタフェースユニットはそのディジタル画像データを処理し、プログラミングされているジョブを実行するのに必要な形態に変換する。このインタフェースユニットはディジタル印刷システムの一部分とするのが望ましいが、ディジタル画像データをディジタル印刷システムにて利用できる形態へと変換する機能をコンピュータネットワーク又はスキャナに分け持たせてもよい。印刷システム10はこのようなディジタル印刷システムとして構成することができる。
【0017】
より詳細には、図示されている印刷システム10は、その主要構成要素として第1印刷エンジン12、第2印刷エンジン14及びフィニッシャアセンブリ16を備えており、これら3個の構成要素は、3個の移送アセンブリ18、20及び24によって連結されている。例えば、第1印刷エンジン12から吐出される印刷済媒体は、第2印刷エンジン14の上側にある横方向バイパス経路である移送アセンブリ24によって、フィニッシャアセンブリ16に送ることができる。但し、媒体の両面に印刷したい場合は、第1印刷エンジン12から吐出される印刷済媒体を1個目の縦方向移送路である移送アセンブリ18に送り、移送アセンブリ18内の反転器92によって反転した上で(裏返した上で)第2印刷エンジン14に送り、第2印刷エンジン14にてその媒体の裏面に印刷させることができる。裏面印刷を終えた媒体は2個目の縦方向移送路である移送アセンブリ20に送られ、必要に応じ移送アセンブリ20内の反転器94によって再度反転した上で、フィニッシャアセンブリ16に送ることができる。タンデム配置した印刷エンジン群による並列片面印刷及び両面印刷実現手法については、既に詳細に知られているので特許文献1を参照して理解されたい。なお、印刷用紙をより信頼性良く取り扱いシステム内ジャミング時の後片づけを簡便化するため、しばしば印刷エンジン群を片面モードで動作させることがある。印刷エンジンから印刷済面を上にして吐出されてくるシート状媒体は、フィニッシャアセンブリ16内に山積みにする前に反転させる必要がある。管理ステーション30は、所望の印刷ジョブをその仔細に亘りオペレータが随意に管理、コントロールできるようにしている部材である。
【0018】
図2にその概略が示されている印刷エンジン12及び14は、従来通り、複数個の媒体送給トレイ32を備えている。各媒体送給トレイ32は、その所属先印刷エンジンの印刷エンジン部34にて印刷を施すことができる媒体を保持している。一般に、保持する媒体のサイズは媒体送給トレイ32毎に異なっており、また保持する媒体の属性(粗さ、被覆、重量等)を媒体送給トレイ32毎に異なるものにすることができる。これら複数個の媒体送給トレイ32は経路としてハイウェイ36を共用しており、媒体はこのハイウェイ36を通って印刷エンジン部34に移送される。ここで言う「ハイウェイ」経路とは媒体が比較的高速で移送される媒体移送経路のことであり、印刷エンジン内に形成されている画像転写ゾーン内を除けば、どの媒体移送経路も媒体を高速で移送できるハイウェイとするのが望ましいし、またそういったハイウェイは様々な形態にて実現できると認められよう。ハイウェイ速度が一般に印刷エンジン内速度より高い速度に設定されるのは、一つには、並列印刷システムを構成する印刷エンジン内でのシート状媒体移送速度をその印刷エンジンにとり最適な速度としながらも、複数個の印刷エンジンからやってくるシート状媒体を印刷エンジン毎にとりまとめる段にて別々の印刷エンジンからのシート状媒体をまぜこぜにしないでまとめられるようにするのに、印刷エンジン内速度より高い速度にシート状媒体を加速してハイウェイにより移送する必要があるからである。これと同じことは、何も印刷されていない媒体を複数個の印刷エンジンに流すときについても言える。なお、媒体を所定ハイウェイ速度でシステム内移送するための手段としては、複数個のニップドライブローラ40、42等、これをプロセス方向に駆動するモータ(図示せず)、位置センサ(図示せず)、その他関連する制御アセンブリ(図示しないベルト、ガイドロッド、フレーム等)を用いればよい。また、逆に言うと、印刷エンジンにてこれから印刷を施そうとしている媒体は、一般に、その印刷エンジンの画像転写ゾーン内ではハイウェイ速度より低い速度で移送しなければならない。「画像転写ゾーン」とは、印刷エンジン部34のうち、画像をシート状媒体に転写する処理や(ある種の印刷エンジンでは)画像をシート状媒体に融着させる処理といた処理を、そのシート状媒体のある部分に施す部分であると言ってよい。図示されている各印刷エンジン12、14は反転器アセンブリ50を備えており、この反転器アセンブリ50は従来と同じく単一の印刷エンジン内で媒体への両面印刷を行うのに有用である。より詳細には、媒体の片面への印刷を終えた後その媒体を反転器アセンブリ50に送って反転させ、そして折返し経路52を通して画像転写ゾーンに送り返せば、1個の印刷エンジン内で両面印刷を行うことができる。
【0019】
図3に、他の並列印刷システムアーキテクチャ例を示す。この図においては、特に、高速ハイウェイと印刷エンジンとの間の速度バッファとして用いられるよう反転器アセンブリを配置した例が示されている。また、このシステムにおける反転器には、位置合わせ機能をも持たせることができる。この図に示すアーキテクチャにおいては、4個の印刷エンジン100、102、104及び108が、送給モジュール110と仕上げモジュール112との間に設けられている。これらの印刷エンジンは白黒、多色、カスタム多色等、互いに別種の印刷エンジンとすることができ、システム内で移送される媒体に高速並列印刷を施すのに使用されている。これらの印刷エンジンは、それぞれ、その印刷エンジンの入口に隣あったところに入口側反転器アセンブリ120を、また同じく出口に隣あったところに出口側反転器アセンブリ122を備えている。先にも述べたように、印刷エンジン(例えば100)にて画像転写処理を施している最中の媒体移送速度は比較的低い印刷エンジン内速度であるが、印刷エンジンの外、特にシステム構成要素間に介在している高速ハイウェイでは媒体をより高いハイウェイ速度で移送することができる。反転器アセンブリ120においては、ハイウェイ126からハイウェイ速度で出てきた媒体を、その印刷エンジン(例えば100)の画像転写ゾーンに入る前に、より低い速度に落としている。これは、反転器によってハイウェイ126から取り込んだ媒体を高速のまま反転器アセンブリ120内に受け止め、より低い印刷エンジン内速度に調整したモータをプロセス方向とは逆方向に運転し、そしてその低い速度で画像転写ゾーン内に媒体を移送することにより、実現できる。更に、画像転写ゾーンにおける印刷が済んだ媒体はその画像転写ゾーンから印刷エンジン内速度で吐出される。この媒体は、例えば、出口側反転器アセンブリ122内に印刷エンジン内速度で受け止められ、その印刷エンジン(例えば100)から取り出されるよう移送され、高速ハイウェイにハイウェイ速度で再突入する。また、入口側又は出口側の反転器アセンブリ120又は122をバイパスする用紙経路130を追加することも、本発明の実施形態の一つである。加えて、先に言及した媒体位置合わせ機能は、その設置場所乃至種類を問わずまたアーキテクチャの如何を問わず、反転器アセンブリに持たせることができる。それによって、媒体のスキュー(斜め位置ずれ)や横方向位置ずれを直し又は緩和することができる。
【0020】
図4に、各印刷エンジン内に設けられているフューザシステム7を示す。各フューザシステム7は、媒体上に積み重なっている印刷粒子例えばトナー粒子のうち一番上の層と接触する融着部材(図中「フューザロール」)510と、この融着部材510と対向して媒体を挟み込み加圧する加圧ロール512と、融着部材511に併置されている(例えば組み込まれている)加熱素子511と、を備えている。また、光沢校正システム520は、光沢水準監視制御機能を有する形で光沢水準検出システムを実施したものであり、各フューザシステム7により共用されている。即ち、この光沢校正システム520は、各フューザシステム7にて検出される光沢水準が所定の目標範囲内になるよう、それら複数個のフューザシステム7それぞれにおける光沢水準を監視・制御することによって、どの印刷エンジンにより印刷した画像間でも光沢均質性が保持されるようにしている。この光沢校正システム520は、各フューザシステム7にて形成される光沢の水準を制御するための外観コントローラ522と、外観センサとを備えている。外観センサには、種類として、図4に「フューザロールセンサ」として示されているフューザ側光沢センサ524と、図1に「媒体センサ」として示されている媒体側光沢センサ526とがあり得る。外観センサ524又は526は、印刷画像の光沢水準をその印刷手段たる印刷エンジン全てについて検出する(調べる)ために設けられている。外観センサ524又は526は外観コントローラ522と通信し、外観コントローラ522は、センサからの情報から見て印刷画像の光沢水準が所定の目標範囲外であると判断できる場合に制御信号を発生させる。即ち、光沢校正システム520は、外観センサ524又は526から光沢校正システム520(その外観コントローラ522)に実時間で送られてくる計測結果に基づき、各フューザシステム7を調整して印刷画像の最終外観(光沢)を所定の目標範囲内に保持する。なお、外観センサ524及び526は光学センサとすることができる。
【0021】
例えば、図1に示すように媒体側光沢センサ526を設けたとする。この媒体側光沢センサ526は、フューザシステム7から出てきた媒体の光沢を監視し、その結果得られた光沢検出値を光沢校正システム520にフィードバックする。光沢校正システム520にフィードバックされてくるこのデータ(光沢検出値)又はそれから導出される印刷画像光沢水準は、フューザシステム7のパラメータ、例えばフューザ温度、フューザ速度、融着部材510と加圧ロール512の間のニップ圧(フューザニップ圧)等のうち1個又は複数個の調整に用いられる。好ましくは、動作に際し、光沢パッチ発生器528により光沢試験パッチ(コントロールパッチ)を発生させる。光沢パッチ発生器528は、露出ステーション8によって画像形成面上にコントロールパッチを記録し現像ステーション5によってそのコントロールパッチを現像する、という形態でも実現できるし、図1の如く別体のユニットとしても実現できる。発生した光沢試験パッチは媒体上に融着され媒体側光沢センサ526による計測の対象になる。媒体側光沢センサ526は、媒体全幅に亘りパッチを計測する全幅アレイセンサとすることもできる。
【0022】
また、図4に示されているように、外観センサとしてフューザ側光沢センサ524を設けてもよい。このフューザ側光沢センサ524は融着部材510の光沢を監視するためのセンサであり、固着用部材であればフューザロール(融着部材・フューザ部材)に限らず光沢付与ロール(光沢付与部材)に対しても、同様に好適に使用できる。図示されているフューザ側光沢センサ524はエミッタ及びレシーバを備えており、融着部材510の回転と並行して光沢付与ロール510の一端から他端までゆっくりと移送されこれを走査する。この動作はウォームアップ期間に行うことができる。このような走査によって、融着部材510の表面略全体に亘り光沢分布を調べる(マッピングする)ことができ、外観コントローラ522は、これにより判明した光沢均質性の度合いが所定の目標範囲外であった場合等に、制御信号を発生させパラメータを調整して融着部材510表面の光沢を調整することができる。フューザ側光沢センサ524をロール510の一端から他端へと移送する手法乃至アセンブリとしては様々な手法乃至アセンブリを用い得る。図4に示した移送アセンブリ530においては、センサハウジングがそのベアリングによって一対のスライドレールに取り付けられており、センサハウジングに固定されステッパモータ(図中そのプーリを示してある)により動かされるタイミングベルトによって、フューザ側光沢センサ524の位置が制御されている。なお、こういった移送アセンブリ530によってではなく、フューザ側光沢センサ524を全幅センサとして構成し、それによって融着部材510の全幅(全長)に亘り計測を行うようにしてもよい。
【0023】
ここに、エミッタを動作させ融着部材7に対しある入射角で光を入射すると、その光のうち幾分かがレシーバに向け反射される一方、他の幾分かは散乱されることになる。本発明の発明者が発見したところによれば、この散乱の程度は、融着部材510の熱せられ具合によるその融着部材510の表面特性の変化に、依存している。例えば、その表層がVITON(登録商標)及びTEFLON(登録商標)から形成されている融着部材510においては、加熱によってその反射特性が変化し、またこの変化と同等視することができる光沢水準変化が融着先媒体上に現れる。これに加え、ローラ510の表面に、光沢変化指示子としてまた別の素材を付加しておくようにしてもよい。何れにせよ、複数個の融着部材510間で光沢を平衡させるには、レシーバからの(アナログ)信号が変化したかを調べその結果に応じフューザ7のパラメータを調整すればよい。例えばある融着部材510から検出された光沢値又はそれから導出した光沢水準が基準に比べ実質的に低くなった場合、当該低い光沢を呈したロール510の温度を上げればよい。温度の上げ幅は、低い光沢を呈したロール510から検出された光沢水準とその基準値/基準水準との相互比較によって決定すればよく、そうして決定した温度幅に応じ且つルックアップテーブル又は数式を使用して、その種のフューザ7について横方向空間毎に設定されている温度を修正すればよい。
【0024】
ここで言うルックアップテーブルは光沢校正システム520に設けられており、融着部材510により形成される光沢を調整するため、上掲のパラメータについての調整値を格納している。格納されているパラメータ調整値はある種の媒体属性、例えばその媒体の基本重量、生地・手触り、被覆等をも考慮に入れて定められたものであり、使用に当たってはその時々の媒体属性から見て適切なパラメータ調整値が読み出される。ルックアップテーブル内に格納しておく光沢の基準値/基準水準は、予め、媒体種別毎の一連の最適化試験を通じて定めた値である。即ち、ある所与の属性(値)を有する媒体について基準光沢をどのような値/水準に設定するかは、実験を通じて予め決定しておけばよい。このルックアップテーブルは、例えば、基板属性情報等が格納されているROM(read only memory)により実現できる。例えば、所望乃至所要の基板属性(値)に対応するアドレスを指定してROM上の記憶にアクセスすれば適切なパラメータ調整値が得られる、という形態で実現できる。加えて、光沢校正システム520は、フューザシステム7間で光沢水準計測結果に差分があるかどうかも調べる。この差分は理想的には0になるべきものである。
【0025】
図5に、現像によって生じた光沢に係るデータを曲線として示す。この曲線は、図1に示した電子写真印刷マシンについて、基準光沢対温度の関係を示す曲線である。例えば、図2に示すタンデム構成印刷システムにおいては、印刷エンジン毎に1個ずつ合計2個のフューザシステム7が設けられている。仮に、それらフューザシステム7のうち一方で所与設定下で光沢基準値より高い水準の光沢が検出されているのなら、そのフューザシステム7の温度を下げればよい。逆に、他方のフューザシステム7がどうであるかも曲線それ自体により分かる。更に、注目している領域について曲線を表す式が分かっているのならその導関数も決定できる。決定された導関数(即ち勾配を示す式)に基づき導出した勾配を、基準曲線に対するそのフューザシステム7の現実位置(現在そのフューザシステム7によりもたらされている光沢)の差分と共に用いれば、そのフューザシステム7にて基準光沢(基準状態)を回復するのに必要な温度変更幅を求めることができる。このプロセスは全体としてウォームアップ期間中に行うことができる。また、融着部材510と加圧ロール512との間のニップ圧を調整することによって、或いはそのニップ(融着部材510と加圧ロール512の隙間)を媒体が通過する速度を調整することによって、光沢値/光沢水準を変えることができる。
【0026】
この光沢水準検出システム乃至光沢校正システム520はフューザシステム7における欠陥の検出にも使用できる。その場合、センサ524又は526によって観測されたエリアの反射率が低ければ、そのエリアから観測によって得られる出力電圧が低くなるため、そのことを以てそのエリアに欠陥ありと判断できる。こうして欠陥の存在及び位置が判明し或いは走査や全幅計測によってその分布が判明した時点で、図4中のスケジューラ532に対して欠陥についての通知が発せられる。ここに、集積並列印刷マシン全体では複数個の印刷エンジンがあり従って複数個のフューザ7がある。従って、欠陥の影響を受けているエリアに高い光沢を付与する必要があるジョブが入力されたときに、同じ印刷マシン内の別のフューザシステム7即ち抵触する欠陥がないフューザシステム7を選び、そのフューザシステム7にそのジョブを送ればよい。スケジューラ532は上掲の通知に応じてまたジョブの入力に際してこの処理を実行する。更にこのとき、「このロール510には欠陥エリアがあるので早く交換せよ」との警告をユーザ又はサービス担当者に送るとよい。
【0027】
光沢校正システム520には第1及び第2動作モードがある(但しこれらの動作モードが必須であるとは言えない)。第1動作モードにおいては、光沢校正システム520は、ウォームアップルーチン実行中に、その融着部材乃至フューザロール510の表面光沢値即ちフューザ側光沢検出値に基づき、各フューザシステム7における光沢水準を調整する。第1動作モードの特に有用な点としては、融着部材510全体に亘る光沢特性乃至光沢均質性を知ることができる点を挙げられよう。また、第2動作モードにおいては、光沢校正システム520は、印刷モード中に、媒体表面上に融着された印刷粒子による媒体光沢の値即ち媒体側光沢検出値に基づき、各フューザシステム7における光沢水準を調整する。第2動作モードの特に有用な点としては、融着部材510の光沢特性乃至光沢均質性を実時間ベースで知ることができる点を挙げられよう。光沢校正システム520に設けられているスケジューリングシステム532は、各フューザシステム7の光沢特性乃至光沢均質性について周期的にポーリングする(問い合わせを行う)。即ち、融着部材510、媒体又はその双方についての光沢検出動作を起動させることにより、周期的に光沢値乃至光沢水準を検出して通知させる。
【0028】
要約すると、本願において提供されるセンサシステムは、印刷エンジンによって媒体上に印刷された画像の光沢水準を検出するためのシステムであって、媒体上に印刷粒子を固着させる固着用部材と、固着用部材表面の光沢値を検出する光学センサと、固着用部材表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像光沢水準に関連付けるコントローラと、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】複数個使用される印刷エンジンを本発明の実施形態における特徴部分と共にまた一部立面図的に且つ一部模式図的に示した概略図である。
【図2】本発明の実施形態における印刷エンジンの配置を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態における印刷エンジンの配置を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態にて使用される外観センサを示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るシステムの機能を適正に保持するのに使用できるデータ曲線の例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1,12,14,100,102,104,108 電子写真モジュール又は印刷エンジン、7 フューザ又はフューザシステム、10 印刷システム、34 印刷エンジン部、510 融着部材又はフューザロール、520 光沢校正システム、522 外観コントローラ、524,526 光沢センサ又は外観センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷エンジンにより媒体上に印刷された画像の光沢水準が検出されるよう、
媒体上に印刷粒子を固着させる固着用部材と、
固着用部材表面の光沢値を検出するセンサと、
固着用部材表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像光沢水準に関連付ける手段と、
を備えるシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、更に、固着用部材表面の光沢を調整するコントローラを備えるシステム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、センサがコントローラと通信し、検出された光沢値又は光沢水準が所定の目標光沢範囲外であった場合にコントローラが制御信号を発生させるシステム。
【請求項4】
その固着用部材により媒体上に印刷粒子を固着させる融着システムをそれぞれ有する複数個の印刷エンジンと、
これらの印刷エンジンのうち第1印刷エンジン内の融着システムにより印刷された画像と第2印刷エンジン内の融着システムにより印刷された画像との間で光沢均質性を保持させるための校正システムであって固着用部材表面の光沢値を検出する少なくとも1個のセンサを有する校正システムと、
固着用部材表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像光沢水準に関連付ける手段と、
を備える印刷システム。
【請求項5】
印刷エンジンにより媒体上に印刷された画像の光沢水準が検出されるよう、
センサにより固着用部材表面の光沢値を検出するステップと、
固着用部材表面から検出された光沢値を媒体上における印刷画像光沢水準に変換するステップと、
を実行する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−154817(P2006−154817A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337964(P2005−337964)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】