説明

印刷システム

【課題】未来の特定期間に予約印刷を行う状況でも、インク無し状態になることなく確実に印刷することができるようにする。
【解決手段】予約する印刷データに応じてそのインク消費量を適切に予測し、これをインク残量に照らして予約可否の判断を行うようにする。また、予約が可である場合には、当該予約印刷で消費される分のインク量を確保しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷システムに関し、特にインクジェット記録装置形態の印刷装置を用いて予約印刷を実行することのできる印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷ジョブの予約や優先順位設定、さらには印刷ジョブで使用する印刷装置の資源予約を行うものとして、印刷ジョブが発生していなくても印刷装置の予約を受け付け、予約された時間帯では予約者の印刷ジョブを優先的にかつ確実に処理するものがある(例えば、特許文献1参照)。この文献には、ネットワークを利用して複数のユーザが印刷装置を共有する印刷システムが開示されている。この印刷システムでは、印刷ジョブを受信していない状態でジョブの予約を受け付け、予約したジョブで使用する資源を確保し、設定された予約時間帯では予約者の印刷ジョブが他のユーザのジョブに対して優先的に処理される。
【0003】
印刷装置の資源としては、紙などの記録媒体のほか、印刷装置で採用している記録方式に従った記録剤等がある。例えばインクジェット記録方式による印刷装置では、記録剤としてインクが用いられ、このインクはインク供給源をなすインクタンクに収納されている。かかる印刷装置では、インク消費量またはインクタンク内のインク残量を計測する手段が設けられる。そしてインク残量が実質的になくなった場合には、ユーザの注意を喚起し、インク補充(インクタンクの交換など)を促すことで、印刷データの印刷途中でインク残量が無くなってしまうような不都合を未然に防止する構成が採用される。インク計測手段としては、例えば印刷データの印字ドット数からインク消費量を算出する手段や、インクタンク等に設けられたセンサによりインク残量を検知する手段が採用される(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−242460号公報(第29頁、図19)
【特許文献2】特開平11−348295号公報(第7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、インクジェット記録装置形態の印刷装置を使用しているユーザが未来の特定期間に多数の印刷を行うことを望む状況において、現在使用中のインクタンクのインク残量で確実に印刷が完了するか否かは、現時点で予測することは困難である。その特定期間に至るまでに、どれ程の量のインクが消費されるか不明であるからである。
【0006】
また、予約に応じて印刷装置の資源の確保を行う特許文献1に開示の構成を適用することで、予約された時間帯で予約者の印刷ジョブを時間的に優先することが可能となる。しかし予約期間内で当該印刷タスク(複数の印刷ジョブで構成されてもよい)の処理中に資源(インク)が無くなるような不都合が生じることなく、確実に印刷を完了させることについては考慮されていなかった。
【0007】
さらに、インクジェット記録装置形態の印刷装置が家庭や小規模のオフィスなどにも広く普及している状況下、ネットワークを介し複数のコンピュータを接続して複数のユーザが印刷装置を共用する場合だけを考慮するのでは不十分である。すなわち、1台の印刷装置に1台のコンピュータを接続して、これを1または複数のユーザがいわばスタンドアローンで使用する状況も想定すべきである。かかる状況下での予約印刷の例としては、例えば、年末に多数の年賀状を印刷する予定がある場合や、今週中に会議の資料を作成して来週始めにこれを複数部印刷する場合などが考えられる。
【0008】
本発明は、インクジェット記録装置形態の印刷装置がどのような印刷システムに適用される場合でも、印刷タスクの処理を予約した期間内で当該処理中にインクが無くなるなどの不都合が生じることなく、確実に印刷が行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明は、インクを吐出するための記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の形態の印刷部を具えた印刷システムであって、
前記インクの残量を検出するインク残量検出手段と、
印刷の予約を行うために、予約期間および印刷量を含む情報を設定するための設定手段と、
前記設定された印刷量から当該予約印刷で使用されるインク量を算出する算出手段と、
当該算出されたインク量より前記インク残量が多いか否かを判断する判断手段と、
該判断手段により肯定判断がなされた場合に、前記予約を受け付ける予約受付手段と、
当該予約が受け付けられたときに前記算出したインク量を確保し、前記予約期間に至ったときに、当該予約された印刷を前記印刷部に実行させる制御手段と、
を具えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、インクを吐出するための記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の形態の印刷部を具えた印刷システムの制御方法であって、
前記インクの残量を検出するインク残量検出工程と、
印刷の予約を行うために、予約期間および印刷量を含む情報を設定するための設定工程と、
前記設定された印刷量から当該予約印刷で使用されるインク量を算出する算出工程と、
当該算出されたインク量より前記インク残量が多いか否かを判断する判断工程と、
該判断工程により肯定判断がなされた場合に、前記予約を受け付ける予約受付工程と、
当該予約が受け付けられたときに前記算出したインク量を確保し、前記予約期間に至ったときに、当該予約された印刷を前記印刷部に実行させる制御工程と、
を具えたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、かかる制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラム、さらにはこれを記憶した記憶媒体にも存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、予約する印刷タスクの印刷データに応じてそのインク消費量を適切に予測し、これをインク残量に照らして予約可否の判断を行うことにより、予約した期間に多数の印刷を行う状況でもインク無し状態になることなく確実に印刷することができる。また、予約受け付けの可否によってインク補充の準備の要否、例えば交換用インクタンクを事前に用意すべきか否かを判断する1つの指標とできることで、ユーザに安心感を与え、予約印刷中にインクがなくなるという事態を未然に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した印刷システムのハードウェア構成の概要を説明するためのブロック図である。
【0014】
本実施形態の印刷システムは、アプリケーションによる各種処理やプリンタドライバによる印刷処理等を実現するためのコンピュータ20と、これに接続されるプリンタ10とから構成されている。コンピュータ20は、プリンタ10が解釈可能な印刷データを生成し、プリンタ10に送信するホスト装置として機能する。そして、受信した印刷データに基づいて、プリンタ10が最適な印刷を行う。
【0015】
図示の印刷システムは、1台の印刷装置に1台のコンピュータが接続され、これを1または複数のユーザがいわばスタンドアローンで使用可能である。しかし印刷システムの構成はこのようなスタンドアローン的なものに限られない。例えば、LAN回線を介してコンピュータ20に1以上のコンピュータを接続し、当該接続されるコンピュータをクライアント、コンピュータ20をプリントサーバとして機能させるように構成することも可能である。
【0016】
コンピュータ20は、各種プログラムを実行するCPU25、コンピュータ20を制御するための各種のプログラムやその他各種の固定データ等が予め不揮発的に記憶されているROM26、データおよびプログラム等を一時的に記憶するRAM27を備える。またコンピュータ20は、プリンタ10等の周辺装置とデータ送受信を行う双方向インターフェース21を備える。CPU25には、カラーディスプレイ等の表示装置22、キーボード,ポインティングデバイス等の入力装置23、および内蔵または外付けの補助記憶装置24が接続される。なお、コンピュータ20の構成はこれに限られないのは勿論である。
【0017】
プリンタ10は、インクジェット方式のカラープリンタである。このプリンタ10は、ブラック、マゼンタ、シアンおよびイエローなどの各色のインクを充填した複数のインクタンクを装着可能であり、このインクを記録ヘッドから記録媒体に吐出することで印刷を行うものである。
【0018】
プリンタ10は、双方向インターフェース11、CPU12、ROM13、RAM14、プリンタエンジン15および操作パネル18を備えて構成される。ここで、双方向インターフェース11は、コンピュータ20等のホスト装置とのデータの送受信を行う。CPU12は各種プログラムを実行し、プリンタ10の全体を制御する。記憶手段であるROM13にはプリンタ10を制御するための各種プログラムや各種固定データ等が予め不揮発的に記憶される一方、RAM14は印刷データその他データの一時保存およびワーク用に使用される。プリンタエンジン15は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体の所定方向に移動(主走査)させる機構および記録媒体を搬送(副走査)する機構等を有し、記録ヘッドおよびこれらの機構を制御しながら印刷動作を実行する。操作パネル18は、プリンタの状態やメニュー等を表示するための表示部と、ユーザからの操作を受け付けるための入力部とを有している。なお、プリンタ10の構成はこれに限られないのは勿論である。
【0019】
図2は、コンピュータ20とプリンタ10とで構築される印刷システムの機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【0020】
本図に示すように、プリンタ10は各種プリンタ機構の制御を行うプリンタ制御部31を有する。プリンタ制御部31上には、インク量管理部32、ステータス情報管理部35およびプリント実行部36が構築される。
【0021】
プリンタ制御部31は、コンピュータ20から送信されたコマンド等を解釈して、印刷データに基づく印刷を実行するための制御を行う。インク量管理部32は、インク消費量計測部33およびインク残量検出部34から構成され、インク量の計測や検知を行う機構部の動作の制御およびインク量の記憶を行う。
【0022】
インク消費量計測部33は、記録ヘッドに配設されるノズルの吐出回数(ドットカウント値)に基づき、これに1回あたりのインク吐出量を乗じることでインク消費量を計測する。そして、印刷の種類毎のインク消費量と、印刷する記録媒体の枚数とをそれぞれ累積し、EEPROMのような書き換え可能な不揮発性メモリに記憶する。ここで、印刷の種類とは、例えばコンピュータ20から送信された印刷データに含まれる文書や写真等の印刷設定情報であり、一意の識別子を付加して管理される。なお、記録ヘッドのインク吐出性を良好な状態に維持または回復する処理、すなわち記録動作以外の動作として行う予備吐出に伴うインク量や、吸引または加圧によってインクをノズルから強制的に排出させる動作において生じるインク量を加味することも好ましい。
【0023】
インク残量検出部34は、インクタンク16に配設したセンサ(光学センサなど)、あるいは上記ドットカウント値に基づく算出方式等、適宜の手段を用いてインクタンク内のインク残量を検出する。なお、インク消費量計測部33に加えてインク残量検出部34を設ける代わりに、インクタンク16のメモリ17に格納された初期インク量(総インク量)から印刷毎にインク使用量を順次減算して行くことで、インク残量を算出するようにすることも可能である。また、インクタンク16内のインク残量が実質的に無くなったことを検出してユーザに報知する機能を実行するものとしてインク残量検出部34を配設することも可能である。
【0024】
ステータス情報管理部35は、プリンタの状態をステータス情報として管理する。そして、インクタンク内のインクが無くなった場合のエラー情報や、インク消費量計測部33で測定したインク消費量および印刷枚数等の変動情報を双方向インターフェース制御部30を介してコンピュータ20に送信する。プリント実行部36は、コンピュータ20から送信された印刷データを解釈して、所定の制御コマンドに対応した印刷制御プログラムの実行を行う。
【0025】
コンピュータ20上には、アプリケーション41とプリンタドライバ42とが構築される。アプリケーション41は、使用用途に応じてテキスト系、グラフィックス系等の各種描画処理を行う。プリンタドライバ42は、アプリケーション41から受け取った描画データを印刷データ生成部46にて、プリンタ10が解釈可能な印刷データとして生成し、双方向インターフェース制御部40を介してプリンタ10に送信する。プリンタドライバ42は、予約設定管理部43、インク使用量算出部44、予約受付制御部45、印刷データ生成部46、インク消費量更新部47、インク消費量テーブル48を有している。
【0026】
予約設定管理部43は、例えば図示しない印刷設定ダイアログボックスの機能ボタン(コンピュータに付随するディスプレイ上に表示可能である)を、ポインティングデバイスを用いてユーザがクリックすると、インク使用量の予約設定ダイアログボックスを表示する。
【0027】
図3はディスプレイ上に表示される予約設定ダイアログボックスの一例を示し、印刷予約期間(印刷の開始日時および終了日時で指定される))や、印刷の種類、印刷予定枚数などの予約条件の入力領域を有する。ここで、印刷の種類とは、インク消費量計測部33の機能について説明したものにほかならない。より具体的には、「文書」,「グラフィクス」,「写真」などの各種類に分類することができる。
【0028】
インク使用量算出部44は、インク消費量テーブル48を参照し、予約設定管理部43で設定した印刷の種類と印刷予定枚数とに基づいて、当該予約に係る印刷タスクの処理時に使用され得るインク量を予測する。
【0029】
図4はインク消費量テーブル48の内容の一例を示し、印刷の種類毎に、これまでのインク消費量と印刷量(本例では印刷枚数)とが対応づけられ、さらに単位印刷量当りのインク消費量すなわち1枚の記録媒体当りの平均インク消費量の算出値が記憶されている。印刷の種類に対応づけられたインク消費量および印刷枚数は、上記インク消費量計測部33の処理によって取得されたものであり、現在までの累積値であって、従って平均インク消費量には相当程度の精度が確保されていると言い得る。また、その精度をさらに向上するために、印刷の種類の他に記録媒体のサイズや種類等が考慮されるものであってもよい。
【0030】
例えば、予約設定管理部43で設定した印刷の種類が「文書」であり、印刷予定枚数が100枚であったとする。この場合、図4のインク消費量テーブル48を参照することにより、1枚あたりの平均インク消費量が5mgであると判断され、当該予約に係る印刷タスクの処理時に消費されるインク量は500mgとなる。
【0031】
予約受付制御部45は、インク無し状態になることなく確実に予約する印刷タスクを処理できるか否かの判断や、予約を受け付けた状態で他の印刷タスクの実行を許可するか否かの判断を行う。インク消費量更新部47は、プリンタ10側のインク消費量計測部33にて計測された情報を受け、この情報をインク消費量テーブル48に反映する。なお、反映するタイミングはインク使用量算出部44にてテーブル48を参照する前であればよく、これにより常に最新情報を利用可能となる。また、プリンタの使用開始時等の印刷履歴がない場合を考慮し、汎用的な印刷データを用いた情報を初期値またはデフォルト値としてテーブル48に記憶させておくことができる。
【0032】
図5は、印刷タスクの予約すなわちインク使用量の予約を申し込んでから予約が完了するまでの動作手順の一例を示すフローチャートである。
【0033】
ユーザはまず、図3について上述したようなインク使用量の予約設定ダイアログボックス上で各種予約条件を入力し(ステップS101)、予約ボタンをクリックすることで申し込みを行う(ステップS102)。
【0034】
これに応じて、プリンタドライバ42はプリンタ10からインクタンク16内のインク残量情報を取得する(ステップS103)。次に、予約設定ダイアログボックスで設定した印刷の種類と印刷予定枚数とに基づいて、予約に係る印刷タスクで使用されるインク量を予測する(ステップS104)。すなわち、印刷の種類に応じた平均使用量に印刷枚数を乗じることで、インク量を算出する。
【0035】
次に、ステップS103で取得したインク残量とステップS104で算出したインク使用量との比較を行い(ステップS105)、インク残量の方がインク使用量の予測値より多いか否かの判断を行う(ステップS106)。ここでの肯定判断は予約の受け付けが完了したことを意味し、プリンタドライバ42は内部的に管理する予約情報を更新し、プリンタに予約を受け付けたことを通知する(ステップS107)。また、このとき、予約が正常に受け付けられたことをユーザに提示する表示等を行うようにしてもよい。
【0036】
一方、ステップS106で否定判断がなされた場合は、予約の申し込みができなかった旨のエラーダイアログボックスを表示する(ステップS108)。このダイアログボックスは、例えば図6に示すように、予約受け付けが不可である旨の表示と、インクタンク16の交換を推奨する旨の表示とを伴うものとすることができる。
【0037】
なお、ステップS105のインク残量とインク使用量との比較処理において、複数色に対応して複数のインクタンクが用いられているのであれば、各色インクタンクについてそれぞれインク残量とインク使用量との比較を行えばよいことは勿論である。また、予約が受け付けられなかった場合のダイアログボックスには、どの色のインクタンクの交換を推奨するかの表示を行えばよい。さらに、インク消費量テーブル48には、各色インク毎の平均使用量を記憶させておくこともできる。
【0038】
図7は、上記予約を受け付けた状態で印刷タスクから印刷要求があった場合の動作手順を示すフローチャートである。ユーザは図示しない印刷設定ダイアログボックス上で印刷の種類や記録媒体サイズ等の印刷条件を入力し(ステップS201)、印刷ボタン等をクリックすることにより印刷開始要求を行う(ステップS202)。
【0039】
プリンタドライバ42は現在インク使用量の予約を受け付けている状態か否かを判断し(ステップS203)、否定判断された場合は、上記印刷設定に基づいた印刷データを生成し(ステップS204)、プリンタ10に出力する(ステップS205)。
【0040】
一方、ステップS203で予約を受け付けた状態であると判断された場合は、予約期間内に現在の印刷タスクが要求されたか否かを判断する(ステップS206)。ここで否定判断された場合は、プリンタドライバ42はプリンタ10からインクタンク16内のインク残量情報を取得し、当該インク残量から先に予約のために確保していたインク使用量を減算して、現在使用可能であるインク残量を算出する(ステップS207)。次に、現在要求されている印刷タスクのインク使用量を印刷データと印刷設定情報とに基いて算出し(ステップS208)、現在使用可能であるインク残量との比較を行う(ステップS209)。そしてステップS210にて、使用可能インク残量の方がインク使用量より多いか否かを判断する。ここでの肯定判断は予約のために確保していたインク量に影響を与えない印刷であることを意味し、ステップS204に移行して、通常印刷時と同様に印刷データの生成およびプリンタ10への出力を行う。一方、ステップS210で使用可能インク残量の方が少ないと判断された場合は、例えば図8に示すような印刷できない旨のエラーダイアログボックスを表示する(ステップS211)。
【0041】
ステップS206で予約した期間内に印刷タスクが要求されたと判断された場合は、例えば図9に示すような予約確認アラートダイアログボックスを表示する。これは、要求された印刷タスクが予約していたものであるか否かをユーザに問い合わせるためのものであり、肯定のためにクリックする「予約印刷」ボタンと、否定のためにクリックする「通常印刷」ボタンとが含まれている。プリンタドライバ42はこれらのいずれかのボタンのクリックに応じ、現在要求されている印刷タスクが予約済みのものか否かを判断する(ステップS212)。ここで否定判断された場合、すなわち図9における「通常印刷」ボタンがクリックされた場合はステップS207に移行し、予約期間内に印刷タスクが要求されていないと判断された場合と同じ手順を実行する。
【0042】
一方、ステップS212で肯定判断された場合、すなわち図9における「予約印刷」ボタンがクリックされた場合は、印刷設定に基づいた印刷データの生成(ステップS204’)およびプリンタ10への出力(ステップS205’)を行う。プリンタ10への出力が終了すると、例えば図10に示すような予約解除確認アラートダイアログボックスを表示する。これは、予約時に想定した印刷タスクが全て完了したことにより予約を解除するか否かをユーザに問い合わせるための表示であり、完了時にクリックする「予約解除」ボタンと、未了時にクリックする「予約継続」ボタンとが含まれている。そして、ステップS213にて予約を解除すると判断された場合は、プリンタドライバ42は内部的に管理する予約情報を更新し、プリンタ10に対しては予約を解除したことを通知する(ステップS214)。この処理により、予約のために確保していたインク使用量を解放することができる。また、ステップS213で予約を継続すると判断された場合は、現在の予約状態を維持したまま印刷を終了する。
【0043】
以上の実施形態によれば、予約した期間に多数の印刷を行う状況でもインクが無くなるという不都合が生じることなく、確実に印刷を実行することが可能となる。また、インク残量が不足することが予測されるような場合には、図6に示したようなエラーダイアログボックスを表示することで、ユーザは交換用インクタンクを事前に用意すべきか否かを判断できる。その結果ユーザに安心感を与え、予約印刷中にインクがなくなるという事態を未然に防ぐことが可能となる。
【0044】
なお、予約期間内に当該予約済み印刷タスクから予約が解除されない場合は、予約期間終了時に強制的に予約の解除を行うことで、インク使用量が確保されたままとなっている状態からシステムを開放することができる。予約期間終了時において当該予約済み印刷タスクからの印刷が続行されている場合は、その印刷が終了した時点で予約解除を行えばよい。
【0045】
また、インク使用量の予約を受け付けた状態で予約開始時点に至るまでは、上述した図3に示すインク使用量の予約設定ダイアログボックスを再度表示し、予約条件の更新を行えるようにすることもできる。その場合は予約しているインク使用量を含めたインク残量に基いて更新が可能であるか否かの判断を行うようにすればよい。さらに、2以上の印刷予約が行われるものであってもよい。
【0046】
以上では、本発明を適用した印刷システムとして、スタンドアローンで印刷装置を使用する実施形態について説明した。しかし本発明は、ネットワークを介して複数のユーザが印刷装置を共有する場合、すなわち印刷装置をネットワークプリンタとして利用する場合にも適用可能である。
【0047】
図11はかかる形態の印刷システムで採用される動作手順の一例を示すフローチャートである。本手順は、概ね図5と同じ処理ステップが採用されているが、図5におけるステップS206を、印刷タスクの判断材料としてユーザID等の識別子をも考慮した処理ステップS1206に変更した点が異なっている。また、図4のインク消費量テーブルについても、ユーザID毎にインク使用領および印刷枚数を管理するようにすれば、平均インク使用量をより精度高く算出することができる。
【0048】
また、本発明は、印刷機能のみを有する印刷装置が用いられる場合だけでなく、複写機能等を併せ持つ所謂マルチファンクションプリンタが印刷装置として用いられる場合にも有効である。このような印刷装置を用いる場合には、例えば原稿を読み取って複写を実行するに先立ち、予約状況の確認やインク残量・インク使用量の確認を行った上で当該複写の可否を判断するようにすることができる。
【0049】
さらに、印刷装置の資源としては、紙などの記録媒体もあり、これを上述と同様に管理することも可能である。しかしインクタンクは、印刷装置の筐体内に完全に収納されて用いられることが多い。従って、ユーザからインク残量を視認しにくい場合が多いこと、また視認し得たとしてもどれ程の印刷が可能かが判りにくいこと、残量無しの場合に直ちに交換ができるよう常備されているとは限らないことなどの理由により、資源としてのインクタンクないしインクの管理を上述のように行うことは好ましいことである。
【0050】
加えて、本発明の範囲には、コンピュータが担当する機能を実現するための上記プリンタドライバのプログラムコードをコンピュータに供給し、コンピュータに格納されたプログラムコードによって作動させるようにしたものも含まれる。
【0051】
この場合、プログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、および通信や記憶媒体などによりプログラムコードをコンピュータに供給する手段も、本発明の範囲に含まれる。
【0052】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROMのほか、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、DVD、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0053】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって本実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0054】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって本実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムのハードウェア構成の概要を説明するためのブロック図である。
【図2】図1の印刷システムの機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【図3】実施形態の印刷システムにおいて印刷を予約する場合に用いられる予約設定ダイアログボックスの一例を示す説明図である。
【図4】印刷予約の受け付けの可否を判断する基準となるインク消費量テーブルの一例を示す説明図である。
【図5】印刷タスクの予約すなわちインク使用量の予約を申し込んでから予約が完了するまでの動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】印刷予約の受け付けが行えない場合に表示するエラーダイアログボックスの一例を示す説明図である。
【図7】予約を受け付けた状態で印刷タスクから印刷要求があった場合の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】図7の手順において、印刷タスクからの印刷要求に応じられない場合に表示するエラーダイアログボックスの一例を示す説明図である。
【図9】図7の手順において、印刷タスクが予約済みのものであるか否かをユーザに確認するために表示するアラートダイアログボックスの一例を示す説明図である。
【図10】図7の手順において、予約した印刷が完了したことにより予約を解除するか否かをユーザに問い合わせるために表示するアラートダイアログボックスの一例を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
10 プリンタ
15 プリンタエンジン
32 インク量管理部
33 インク消費量計測部
34 インク残量検出部
43 予約設定管理部
44 インク使用量算出部
45 予約受付制御部
47 インク消費量更新部
48 インク消費量テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の形態の印刷部を具えた印刷システムであって、
前記インクの残量を検出するインク残量検出手段と、
印刷の予約を行うために、予約期間および印刷量を含む情報を設定するための設定手段と、
前記設定された印刷量から当該予約印刷で使用されるインク量を算出する算出手段と、
当該算出されたインク量より前記インク残量が多いか否かを判断する判断手段と、
該判断手段により肯定判断がなされた場合に、前記予約を受け付ける予約受付手段と、
当該予約が受け付けられたときに前記算出したインク量を確保し、前記予約期間に至ったときに、当該予約された印刷を前記印刷部に実行させる制御手段と、
を具えたことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
印刷時に消費したインク量および印刷量を累積し、単位印刷量あたりのインク消費量を取得する手段をさらに具え、前記算出手段は、前記設定された印刷量に前記単位印刷量あたりのインク消費量を乗じることで、前記算出を行うことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記設定手段はさらに、前記情報として、印刷されるデータの種類を設定可能であり、前記算出手段は前記データの種類に応じて前記算出を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記データの種類には、文書、グラフィクスおよび写真が含まれることを特徴とする請求項3に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記予約受付手段は、前記判断手段により否定判断がなされた場合にはその旨の報知を行うとともに、前記インクの補充の準備を促すことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記予約期間に至る前に印刷要求があった場合に、当該要求に係る印刷で使用されるインク量を算出し、当該算出値よりも、前記インク残量から前記予約で使用されるインク使用量を減算した値の方が多い場合に、当該要求に従って印刷を実行させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記予約期間中に印刷要求があり、かつ当該要求に係る印刷が前記予約された印刷ではない場合に、当該要求に係る印刷で使用されるインク量を算出し、当該算出値よりも、前記インク残量から前記予約で使用されるインク使用量を減算した値の方が多い場合に、当該要求に従って印刷を実行させることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項8】
前記制御手段は、前記予約期間内に前記予約した印刷が行われない場合には、前記確保したインク量を解放することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項9】
前記設定手段は、前記予約期間に至るまでは前記設定される情報の変更を受容することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項10】
前記印刷部に印刷データを供給するデータ供給装置を具え、該装置が前記インク残量検出手段、前記設定手段、前記算出する算出手段、前記判断手段、前記予約受付手段、および前記制御手段を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項11】
インクを吐出するための記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の形態の印刷部を具えた印刷システムの制御方法であって、
前記インクの残量を検出するインク残量検出工程と、
印刷の予約を行うために、予約期間および印刷量を含む情報を設定するための設定工程と、
前記設定された印刷量から当該予約印刷で使用されるインク量を算出する算出工程と、
当該算出されたインク量より前記インク残量が多いか否かを判断する判断工程と、
該判断工程により肯定判断がなされた場合に、前記予約を受け付ける予約受付工程と、
当該予約が受け付けられたときに前記算出したインク量を確保し、前記予約期間に至ったときに、当該予約された印刷を前記印刷部に実行させる制御工程と、
を具えたことを特徴とする印刷システムの制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項13】
請求項11に記載の制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムを記憶した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−304651(P2007−304651A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129433(P2006−129433)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】