説明

印刷データ作成装置、印刷データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】同色のインクを複数のインクジェットヘッドを用いて吐出させる場合に、インクジェットヘッドのノズルを均等に使用して品質の良好な画像を再現することができる印刷データを作成する印刷データ作成装置、印刷データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、白インクを吐出する4つのインクジェットヘッドを備える。パーソナルコンピュータは、所定の画素へ白インクを吐出させるインクジェットヘッドの数を画素毎に示す白ノズル使用数データ147を算出する。そして、各インクジェットヘッドに1つずつ割り当てられている、所定の画素への白インクの吐出が可能な4つの対応ノズルから、白ノズル使用数データ147に示されている数のノズルを、インクの吐出回数が少ないノズルから優先して使用ノズルとして抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷データ作成装置、印刷データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関し、詳細には、複数のインクジェットヘッドを用いた印刷を実行するのに適した印刷データを作成する印刷データ作成装置、印刷データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被印刷媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット印刷装置では、インク供給源からインクジェットヘッドの複数の吐出チャンネルにインクを導き、発熱素子や圧電素子等のアクチュエータを選択的に駆動させることで、吐出チャンネルの先端に設けられたノズルからインクを吐出させている。そして、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色の三原色に各画素の色を分解し、吐出するインクの濃度を各色毎に調整してカラー画素を形成している。また、被印刷媒体の色や明度等の制約を受けることなく、より再現性の優れた高品質の画像を印刷するために、白(W)のインクを使用する印刷装置も知られている。この印刷装置によると、濃色(例えば、黒色)の被印刷媒体に白色の画素を形成することが可能であり、白色の下地を形成した後、この下地の上にカラーの画素を形成することで画像品質を向上させることもできる。
【0003】
そして、印刷に要する時間を短縮させるために、同色のインクを複数のインクジェットヘッドを用いて吐出させるインクジェット印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特に、白インクを用いて印刷を行う場合、十分な白さを確保するためにインクの重ね打ちをすることが多いが、複数のインクジェットヘッドを使用して白インクを吐出させることで、効率よく印刷を行うことができる。また、複数のインクジェットヘッドから同位置に重複してインクの吐出が行われる可能性を低下させて、吐出されたインクが粒状となることを避け、自然な階調を再現することを可能とした印刷装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−2005号公報
【特許文献2】特開平3−158247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の印刷装置では、複数のインクジェットヘッドのうちの特定のヘッドの使用頻度が高いと、使用頻度の低いインクジェットヘッドのノズルが乾いてしまい、インクの吐出に悪影響を与えるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、同色のインクを複数のインクジェットヘッドを用いて吐出させる場合に、インクジェットヘッドのノズルを均等に使用して品質の良好な画像を再現することができる印刷データを作成する印刷データ作成装置、印刷データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の印刷データ作成装置は、複数のノズルが等間隔に配列されたノズル列を有する複数のインクジェットヘッドから、同一画素に同一色の特定インクを吐出させることが可能な印刷データを画像データに基づいて作成する印刷データ作成装置であって、それぞれの前記インクジェットヘッドに1つずつ割り当てられている、所定の画素への前記特定インクの吐出が可能なノズルのうち、前記特定インクを吐出させるノズルである使用ノズルの数を、画像を構成する画素毎に前記画像データから算出する使用数算出手段と、前記特定インクの吐出回数を前記ノズル毎に記憶する吐出回数記憶手段と、前記画素への前記特定インクの吐出が可能な前記インクジェットヘッドの数と同数のノズルから、前記使用数算出手段によって算出された数のノズルを、前記吐出回数記憶手段に記憶されている前記吐出回数がより少ないノズルを優先させて前記使用ノズルとして画素毎に抽出する使用ノズル抽出手段と、前記使用ノズル抽出手段によって抽出された前記使用ノズルを使用して前記特定インクを各画素に対して吐出させる印刷データを作成する印刷データ作成手段とを備えている。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の印刷データ作成装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記使用数算出手段は、前記画像データにおける前記特定インクの色の階調値に対する多値への誤差拡散処理を行うことにより、前記使用ノズルの数を画素毎に算出することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の印刷データ作成装置は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記印刷データは、各ノズルに対してインクを吐出させるか否かを制御する2値のデータであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記ノズル列に配列された前記ノズルの数、前記ノズル列における前記ノズルの配列間隔、及び前記画像の解像度により、各インクジェットヘッドに1つずつ割り当てられている、各画素への前記特定インクの吐出が可能なノズルを特定する対応ノズル特定手段を備えている。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記使用数算出手段によって算出された前記使用ノズルの数が、前記画素への前記インクの吐出が可能な前記インクジェットヘッドの数と同数となった画素、及びゼロとなった画素を、前記使用ノズル抽出手段による前記使用ノズルの抽出を行う画素から除外する除外手段を備えている。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記特定インクの色が白色であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項7に記載の印刷データ作成プログラムは、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
【0013】
また、本発明の請求項8に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、請求項7に記載の印刷データ作成プログラムを記録している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の印刷データ作成装置によると、所定の画素への特定インクの吐出が可能な複数のノズルのうち、特定インクを吐出させる使用ノズルの数、すなわち、使用されるインクジェットヘッドの数が画素毎に算出される。そして、実際に特定インクを吐出させる使用ノズルを、吐出回数が少ないノズルから優先して抽出することができる。従って、複数のノズルを均等に使用することが可能となり、ノズルの使用頻度に偏りが生じることを防ぐことができる。よって、使用頻度の低いノズルが乾くことによる画像品質の低下を防止することができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の印刷データ作成装置は、請求項1に記載の発明の効果に加え、特定インクの色の階調値に対して多値への誤差拡散処理を行うことで、使用ノズルの数を算出することができる。これにより、誤差分の情報を周囲の画素に拡散させることができるため、閾値法等の他の処理を用いる場合に比べて品質の良い画像を印刷させる印刷データを作成することができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の印刷データ作成装置は、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、印刷データが、各ノズルに対してインクを吐出させるか否かを制御する2値のデータであるため、インクの吐出量を安定させて品質の良い画像を印刷させることができると共に、印刷装置を容易に制御することができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、ノズル列に配列されたノズルの数、ノズルの配列間隔、及び画像の解像度により、各画素と、この画素への特定インクの吐出が可能なノズルとを対応付けることができる。これにより、各画素に対して実際に特定インクを吐出させるノズルを容易に決定することができる。
【0018】
また、本発明の請求項5に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、特定インクを吐出可能な全てのインクジェットヘッドからインクを吐出させる画素、及びいずれのインクジェットヘッドからも特定インクを吐出させない画素については、使用ノズルの抽出を行う処理の対象から除外することができる。従って、無駄な処理を行うことなく迅速に、ノズルを均等に使用する印刷データを作成することができる。
【0019】
また、本発明の請求項6に記載の印刷データ作成装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の効果に加え、複数のインクジェットヘッドから吐出される特定インクの色が白色であるため、他のインクよりも多くの量を必要とする白色のインクを、複数のインクジェットを用いて吐出させる印刷データを作成することができる。そして、これら複数の白色用インクジェットヘッドを、乾燥から保護することができる。
【0020】
また、本発明の請求項7に記載の印刷データ作成プログラムは、コンピュータに実行させることにより、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
【0021】
また、本発明の請求項8に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、請求項7に記載の印刷データ作成プログラムを記憶しているため、当該記録媒体に記録されている印刷データ作成プログラムをコンピュータに読み取らせて動作させることにより、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明に係る印刷データ作成装置として、公知の布帛印刷用のインクジェットプリンタ1(図1及び図2参照)に印刷を実行させるための印刷データを作成する、公知のパーソナルコンピュータ100(図3参照)を例に挙げて説明する。
【0023】
まず、図1を参照して、インクジェットプリンタ1について説明する。図1は、インクジェットプリンタ1の平面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、左右方向を長手方向とする平面板状のベース2を底面に備えており、また、装置全体を覆う箱状の本体カバー3を備えている。ベース2の略中央には、前後方向に延びるレール4が配設されており、このレール4は、取り換え可能な平板状のプラテン5を、ベース2の前後方向(副走査方向)に移動可能に支持している。また、レール4の後端部には、プラテン5をレール4に沿って移動させるためのステッピングモータであるプラテン駆動モータ7が配設されている。プラテン5は、ベース2の前後方向を長手方向とする略長方形状の板状部材であり、その上面には、例えばTシャツ等の布帛からなる被印刷媒体が平行に載置される。
【0024】
また、プラテン5の上方で、且つ本体カバー3の内部における奥側(図1における上側)には、4つのインクジェットヘッド11〜14を搭載した第一キャリッジ10を左右方向に案内するための第一ガイドレール16が架設されている。そして、第一ガイドレール16の左端付近には第一キャリッジモータ17が、右端付近にはプーリ(図示外)が設けられており、第一キャリッジモータ17とプーリとの間にキャリッジベルト(図示外)が架設されている。このキャリッジベルトは第一キャリッジ10に固定されており、第一キャリッジモータ17が駆動することによって、キャリッジベルトに固定された第一キャリッジ10が、第一ガイドレール16に沿って左右方向(主走査方向)に移動する。
【0025】
本体カバー3の右端部には、4つのインクカートリッジ31〜34を収容する第一インクカートリッジ収容部30が配設されている。そして、各インクカートリッジ31〜34は、適度な柔軟性を有するインク供給用チューブ36によって、第一キャリッジ10に搭載されたそれぞれのインクジェットヘッド11〜14に連結されている。インクジェットプリンタ1では、第一キャリッジ10のインクジェットヘッド11〜14は全て白(W)インクを吐出するために設けられており、4つのインクカートリッジ31〜34にはその全てに白インクが収容されている。
【0026】
また、プラテン5の上方で、且つ本体カバー3の内部における手前側(図1における下側)には、第二キャリッジ20を左右方向に案内するための第二ガイドレール26が、第一ガイドレール16と平行に架設されている。そして、第二キャリッジ20は4つのインクジェットヘッド21〜24を搭載しており、第一キャリッジ10と同様に、第二キャリッジモータ27とプーリ(図示外)との間に架設されたキャリッジベルト(図示外)によって左右方向に移動する。
【0027】
本体カバーの左端部には、4つのインクカートリッジ41〜44を収容する第二インクカートリッジ収容部40が配設されている。そして、各インクカートリッジ41〜44は、インク供給用チューブ46によって、第二キャリッジ20に搭載されたそれぞれのインクジェットヘッド21〜24に連結されている。第二キャリッジ20の4つのインクジェットヘッド21〜24は、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インク、ブラック(K)インクのそれぞれを吐出するために設けられており、インクカートリッジ41〜44にはシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれが収容されている。
【0028】
また、インクジェットプリンタ1の右側手前の位置には、インクジェットプリンタ1の操作を行うための操作パネル50が配設されている。この操作パネル50には、ディスプレイ51、印刷開始ボタン52、印刷中止ボタン53、プラテン送りボタン54、矢印ボタン55、エラーランプ56、データ受信ランプ57等が設けられている。ディスプレイ51は操作画面等の各種画像を表示し、印刷開始ボタン52は印刷を開始させるためのボタンであり、印刷中止ボタン53は印刷動作を中止させるためのボタンである。また、プラテン送りボタン54は、プラテン5への布帛の載置や布帛の取り外しが可能な位置へプラテンを移動させるためのボタンであり、矢印ボタン55は、ユーザがメニューの選択等を行う際に用いられる。また、エラーランプ56は、発光することによりエラーが生じたことを示し、データ受信ランプ57は、印刷データを受信したことを示す。
【0029】
ここで、インクジェットヘッド11〜14,21〜24について説明する。各インクジェットヘッド11〜14,21〜24の底面には、微細なノズルが直線上に等間隔で128個配列されたノズル列が設けられている。このノズル列におけるノズルの配列方向は、副走査方向(インクジェットプリンタ1の前後方向)に平行となっている。また、インクジェットプリンタ1では、ノズルの配列間隔は1/150インチとなっており、各インクジェットヘッド11〜14,21〜24の128個のノズルには、後方に位置するノズルから順に1から128までのノズル番号が付されている。そして、各キャリッジには、4つのノズル列が平行となるように4つのインクジェットヘッドが並設されており、1つの画素へは、各インクジェットヘッドに設けられた同一番号のノズルの各々からインクの吐出が可能となっている。例えば、詳細は後述するが、印刷データ上に設定された副走査方向の座標であるY座標の値が1である画素へは、インクジェットヘッド11における1番のノズル、インクジェットヘッド12における1番のノズル、インクジェットヘッド13における1番のノズル、及びインクジェットヘッド14における1番のノズルの計4つのノズルから白インクを吐出させることが可能となっている。さらに、インクジェットヘッド21における1番のノズルからシアンインクを、インクジェットヘッド22における1番のノズルからマゼンタインクを、インクジェットヘッド23における1番のノズルからイエローインクを、インクジェットヘッド24における1番のノズルからブラックインクを吐出させることができる。
【0030】
また、各インクジェットヘッド11〜14,21〜24には、各ノズルに対応する位置に1つずつ、インクを吐出するための吐出チャンネル(図示外)が設けられている。また、各吐出チャンネルには、各々別個に駆動される圧電アクチュエータ(図示外)が設けられている。そして、各吐出チャンネルからのインクの吐出が圧電アクチュエータによって各々制御され、インクの液滴はノズルから下向きに吐出される。尚、キャリッジ10,20の移動範囲における左右いずれかの端部には、インクジェットヘッド11〜14,21〜24のメンテナンスを行う図示外のキャッピング機構、パージ機構等が設けられている。
【0031】
次に、図2を参照して、インクジェットプリンタ1の電気的構成について説明する。図2は、インクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、インクジェットプリンタ1には、インクジェットプリンタ1の制御を司るCPU60が設けられている。そして、このCPU60には、ROM61、RAM62、ヘッド駆動部71、モータ駆動部72、表示制御部76、入力検知部77、及びUSBインタフェース79がバス65を介して接続されている。
【0032】
ROM61には、インクジェットプリンタ1の動作を制御するための制御プログラムや、印刷処理を実行するための印刷実行プログラム等を記憶したプログラム記憶エリアと、プログラムの実行に必要な設定や初期値、データ等の情報を記憶したプログラム関係情報記憶エリアとが設けられている。また、ROM61にはその他各種記憶エリアが設けられている。
【0033】
RAM62には、パーソナルコンピュータ100から受信した印刷データを記憶する受信印刷データ記憶エリア、印刷開始ボタン52の押下により印刷が実行されている印刷データを記憶する印刷中データ記憶エリア、その他各種記憶エリアが設けられている。
【0034】
ヘッド駆動部71は、インクを吐出するインクジェットヘッド11〜14,21〜24に接続されている。そして、各インクジェットヘッド11〜14,21〜24の各吐出チャンネルに設けられた圧電アクチュエータを駆動する。
【0035】
モータ駆動部72は、第一キャリッジ10を動作させる第一キャリッジモータ17と、第二キャリッジ20を動作させる第二キャリッジモータ27と、プラテン5を送り出すタイミングや速度を調整するプラテンローラ(図示外)を動作させるプラテン駆動モータ7とに接続されている。そして、これらのモータを駆動する。
【0036】
表示制御部76は、ディスプレイ51、エラーランプ56、データ受信ランプ57等に接続されており、CPU60からの制御によりこれらの表示処理を行う。また、入力検知部77は、印刷開始ボタン52、印刷中止ボタン53、プラテン送りボタン54、矢印ボタン55等に接続されており、これらの入力の検知を行う。そして、USBインタフェース79によって、インクジェットプリンタ1がパーソナルコンピュータ100を含めた外部機器に接続される。
【0037】
このような構成のもと、本実施の形態のインクジェットプリンタ1は、パーソナルコンピュータ100から印刷データを受信し、ユーザによって布帛がプラテン5へ載置されて印刷開始ボタン52が押下されることで、印刷処理を開始する。印刷処理では、まず、白インクを吐出する第一キャリッジ10の移動経路が記録開始位置となるように、プラテン5をプラテン駆動モータ7の駆動によって本体の後方(奥側)へ移動させる。次いで、インクジェットプリンタ1は、第一キャリッジ10を左右方向へ移動させながら、印刷データに従ってインクジェットヘッド11〜14による白インクの吐出を行うことで、1ラインの記録を行う。ここで、印刷データは「C、M、Y、K、W1、W2、W3、W4」の8つのデータによって構成されている。そして、インクジェットヘッド11はW1に、インクジェットヘッド12はW2に、インクジェットヘッド13はW3に、インクジェットヘッド14はW4に基づいて、各ノズルからの白インクの吐出を行う。次いで、1ラインの記録が終了すると、プラテン5を副走査方向に移動させて次のラインの記録を行い、これらの動作を繰り返し行うことで白色の印刷を完了させる。
【0038】
次いで、インクジェットプリンタ1は、第二キャリッジ20の移動経路が記録開始位置となるようにプラテン5を前方へ移動させて、第一キャリッジ10と同様の動作を第二キャリッジ20に実行させることで、CMYKの各インクの吐出を行う。そして、インクを吐出させる処理が完了すると、布帛の取り外しが可能となる位置までプラテン5を移動させて、印刷処理を終了する。
【0039】
次に、図3乃至図5を参照して、パーソナルコンピュータ100について説明する。図3は、パーソナルコンピュータ100の電気的構成を示すブロック図であり、図4は、パーソナルコンピュータ100のRAM112の構成を示す模式図である。また、図5は、パーソナルコンピュータ100のハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)116の構成を示す模式図である。パーソナルコンピュータ100は、例えばUSB等の規格に基づく通信ケーブルによってインクジェットプリンタ1に接続される。そして、パーソナルコンピュータ100では、ユーザが各種アプリケーションを用いて作成した画像データに基づいて印刷データが作成され、この印刷データがインクジェットプリンタ1へ送信されて印刷が行われる。
【0040】
図3に示すように、パーソナルコンピュータ100には、その制御を司るCPU110が設けられている。そして、CPU110には、ROM111、RAM112、CD−ROMドライブ115、HDD116、表示制御部126、入力検知部127、及びUSBインタフェース129がバス114を介して接続されている。
【0041】
ROM111には、CPU110が実行するBIOS等のプログラムが記憶されている。CD−ROMドライブ115には記録媒体であるCD−ROM131が挿入され、このCD−ROM131に記録されているデータがCD−ROMドライブ115によって読み出される。CD−ROM131には、本発明に係る印刷データ作成プログラムが組み込まれたプリンタドライバや、このプログラムの実行時に使用される設定やテーブル等のデータが記憶されている。そして、CD−ROMドライブ115によって読み出されたデータは、後述するHDD116(図5参照)に設けられた各種記憶エリアに記憶される。
【0042】
表示制御部126は、操作画面を表示するためのモニタ133に接続され、このモニタ133の表示を制御する。また、入力検知部127は、ユーザが操作の入力を行うためのキーボード135やマウス136に接続され、これらの入力の検知を行う。そして、USBインタフェース129によって、パーソナルコンピュータ100がインクジェットプリンタ1を含めた外部機器に接続され、データの送受信が可能となる。
【0043】
RAM112には、図4に示すように、入力画像データ記憶エリア1121、指定解像度記憶エリア1122、変換CMYKWデータ記憶エリア1123、白ノズル使用数記憶エリア1124、印刷データ記憶エリア1125等の各種記憶エリアが設けられている。入力画像データ記憶エリア1121には、印刷データを作成する基になる入力画像データ(図6に示す画像データ141)が一時的に記憶される。指定解像度記憶エリア1122には、ユーザによって指定された解像度「R」が記憶される。変換CMYKWデータ記憶エリア1123には、入力画像データから変換された256階調の変換CMYKWデータ146(図6参照)が記憶される。白ノズル使用数記憶エリア1124には、白ノズル使用数データ147(図6参照)が記憶される。この白ノズル使用数データ147は、各インクジェットヘッド11〜14に1つずつ割り当てられている、所定の画素への白インクの吐出が可能なノズル(以下、「対応ノズル」という)のうち、実際に白インクを吐出させるノズルの使用数を画素毎に示すデータである。換言すると、白ノズル使用数データ147は、白用の4つのインクジェットヘッド11〜14のうち、所定の画素への白インクの吐出を行うインクジェットヘッドの数を、画素毎に示す。印刷データ記憶エリア1125には、インクジェットヘッド11〜14,21〜24を駆動させるための「C、M、Y、K、W1、W2、W3、W4」の2階調の印刷データ148(図6参照)が記憶される。これらの各種データについては後述する。
【0044】
HDD116には、図5に示すように、プログラム記憶エリア1161、プログラム関係情報記憶エリア1162、カラー変換テーブル記憶エリア1163、白変換テーブル記憶エリア1164、プリンタ情報記憶エリア1165、白ノズル吐出回数記憶エリア1166、画像データ記憶エリア1167等の各種記憶エリアが設けられている。プログラム記憶エリア1161には、プリンタドライバ(印刷データ作成プログラム)を始めとするパーソナルコンピュータ100で実行される各種のプログラムが記憶される。プログラム関係情報記憶エリア1162には、プログラムの実行に必要な設定や初期値、データ等の情報が記憶される。カラー変換テーブル記憶エリア1163には、sRGB形式によって表現される入力画像データの色情報を、CMYK空間によって表現されるレベルの情報に変換するためのカラー変換テーブル161(図7参照)が記憶される。白変換テーブル記憶エリア1164には、入力画像データの色情報を白インクレベル(W値)の情報に変換するための白変換テーブル162(図8参照)が記憶される。プリンタ情報記憶エリア1165には、それぞれのインクジェットプリンタ毎に、ノズル列に設けられたノズルの数「n」、ノズルの配列間隔「L」等のインクジェットプリンタの情報が記憶されている。白ノズル吐出回数記憶エリア1166には、白用のインクジェットヘッド11〜14に設けられたノズルについての白インクの吐出回数がノズル毎に記憶されている。画像データ記憶エリア1167には、複数の画像データ141が記憶される。これらの詳細については後述する。
【0045】
次に、図6乃至図9を参照して、本実施の形態の印刷データ作成過程で発生する各データについて説明する。図6は、印刷データ作成過程のデータ推移図であり、図7は、カラー変換テーブル161のデータ構成図であり、図8は、白変換テーブル162のデータ構成図である。また、図9は、256階調のW値に対する5値への誤差拡散結果と、白インクを吐出する対応ノズルの数との対応を示した説明図である。
【0046】
図6に示すように、印刷データ148を作成するための基になるデータは、RAM112の入力画像データ記憶エリア1121に記憶されている画像データ141である。この画像データ141は、画像編集用アプリケーション等によって作成されてHDD116の画像データ記憶エリア1167に記憶された画像データのうち、印刷の実行が指示された画像データであり、sRGB形式の256階調で各画素の色が表現されている。sRGB形式とは、IEC(国際電気標準会議)が定める色空間の国際規格であり、デジタルカメラやプリンタ、モニタ等の多くのPC周辺機器では、sRGB形式に則った色調整を行うことで、入力と出力との間の色の差異を極力少なくしている。
【0047】
そして、画像を構成する各画素のsRGB値が、CMYKW形式のデータである変換CMYKWデータ146に変換される。CMYKW形式とは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Y)、白(W)の5色を用いる色の表現方法であり、C値、M値、Y値、K値、W値の256階調によって各画素の色が表現されて、各インクの吐出量が決定される。この変換CMYKWデータ146への変換には、カラー変換テーブル161及び白変換テーブル162が用いられる。
【0048】
図7に示すように、カラー変換テーブル161は、sRGB形式の256階調で表現されたデータを、CMYK形式の256階調で表現されるデータに変換するためのテーブルである。そして、各sRGB値に対応するCMYK値が各々定義されている。このカラー変換テーブル161は、公知の手法によって作成されてあらかじめHDD116に記憶されており、画像データ141は、カラー変換テーブル161によってCMYK形式のカラーインクレベルデータに変換される。
【0049】
また、図8に示すように、白変換テーブル162は、sRGB形式の256階調で表現されたデータを、W形式の256階調で表現されるデータに変換するためのテーブルである。この白変換テーブル162は、公知の手法によって作成されてあらかじめHDD116に記憶されており、画像データ141は、白変換テーブル162によってW形式の白インクレベルデータに変換される。そして、カラーインクレベルデータのCMYK値と、白インクレベルデータのW値とにより、256階調の変換CMYKWデータ146が構成される。
【0050】
そして、256階調の変換CMYKWデータ146のCMYK値に対し、2値への誤差拡散処理(S13、図10参照)が行われることにより、2階調(吐出させるか否か)で表される印刷データ148におけるC、M、Y、Kの各値が算出される。誤差拡散処理は、256階調のデータを印刷階調に落として2値化するための公知の処理である。
【0051】
ここで、本実施の形態では、CMYKの各インクに加えて白インクを用いることで、黒色等の印刷メディアに対して白色の画素を形成することが可能となると共に、白色の下地を形成した後に、この下地の上にカラーの画素を形成することもできる。これにより、印刷メディアの色に関わらず、品質の高い画像を印刷することができる。さらに、インクジェットプリンタ1では、白インクを吐出するための4つのインクジェットヘッド11〜14を備えているため、白インクの重ね打ちを行うことができ、短時間で十分な白さを印刷メディア上に再現することができる。また、4つのインクジェットヘッド11〜14のうち、実際に白インクを吐出させるインクジェットヘッドの数を変化させることで、白さを変化させることもできる。
【0052】
そこで、256階調の変換CMYKWデータ146のW値に対しては、5値への誤差拡散処理(S15、図10参照)が行われることにより、実際に白インクを吐出させるインクジェットヘッドの数、すなわち、白インクを吐出させる対応ノズルの数(以下、「白ノズル使用数」という。)が算出される。この処理では、公知である多値への誤差拡散法が用いられる。多値への誤差拡散法では、1つの固定閾値を設ける2値への誤差拡散法とは異なり、複数の閾値を設けることで、3値以上の多値のデータを算出することができる。これにより、本実施の形態では、256階調のW値から、4〜0のいずれかの値が白ノズル使用数Hとして画素毎に算出され、白ノズル使用数データ147として記憶される。
【0053】
そして、図9に示すように、算出されたHの値が4である場合には、白用の4つのインクジェットヘッド11〜14に1つずつ割り当てられた4つの対応ノズルのうち、全ての対応ノズルから白インクが吐出される。その結果、吐出位置には最も大きい白色のドット(大大ドット)が形成される。また、算出されたHの値が3である場合には、4つの対応ノズルのうちの3つから白インクが吐出され、大ドットが形成される。Hの値が2である場合には、4つの対応ノズルのうちの2つから白インクが吐出され、中ドットが形成される。Hの値が1である場合には、いずれか1つの対応ノズルからインクが吐出されて、小ドットが形成される。そして、Hの値が0である場合には、いずれの対応ノズルからも白インクは吐出されない。
【0054】
しかし、従来、白ノズル使用数が1から3のいずれかである場合には、ノズルの使用頻度に偏りが生じる場合があった。例えば、白ノズル使用数が3である場合、インクジェットヘッド11〜13から白インクを吐出させるように印刷データを作成すると、インクジェットヘッド14の使用頻度が他のインクジェットヘッド11〜14の使用頻度よりも低くなる。すると、使用頻度の低いインクジェットヘッドのノズルが乾いてしまい、これがインクの吐出に悪影響を与える原因となっていた。
【0055】
そこで、パーソナルコンピュータ100は、Wデータ算出処理(図11乃至図15参照)において、4つの対応ノズルを均等に使用するためのWデータを白ノズル使用数データ147により算出する。具体的には、白用のインクジェットヘッド11〜14に設けられたノズルについてのインクの吐出回数をノズル毎に記憶しておき、吐出回数がより少ないノズルから優先して使用するように、印刷データ148におけるW1〜W4のデータを算出する。そして、この印刷データ148により、インクジェットプリンタ1の動作が制御されることとなる。
【0056】
次に、図10乃至図15を参照して、本発明の特徴である印刷データ作成処理について説明する。図10は、パーソナルコンピュータ100で行われる印刷データ作成処理のフローチャートであり、図11は、印刷データ作成処理で実行されるWデータ算出処理のサブルーチンのフローチャートである。また、図12は、Wデータ算出処理で実行される使用ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートであり、図13は、使用ノズル抽出処理で実行される3ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートである。また、図14は、使用ノズル抽出処理で実行される2ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートであり、図15は、使用ノズル抽出処理で実行される1ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートである。以下、フローチャートの各ステップについて「S」と略記する。
【0057】
ユーザが所望の画像データ141を選択し、解像度等の指定をして印刷実行を指示することにより、以下に示す印刷データ作成処理が開始される。印刷データ作成処理は、プリンタドライバを動作させるプログラム中の印刷データ作成プログラムに基づいて、CPU110によって実行される。
【0058】
図10に示すように、印刷データ作成処理が開始されると、HDD116の画像データ記憶エリア1167から印刷対象の画像データ141が読み出される。そして、読み出された画像データ141がRAM112の入力画像データ記憶エリア1121にセットされると共に、ユーザによって指定された印刷画像の解像度「R」が指定解像度記憶エリア1122に記憶される(S11)。
【0059】
次いで、入力画像データ記憶エリア1121に記憶されている画像データ141が、変換CMYKWデータ146に変換される(S12)。この処理は、先述したように、カラー変換テーブル161及び白変換テーブル162が参照されることで行われる。そして、変換CMYKWデータ146におけるCMYK値に対して2値への誤差拡散処理が行われ(S13)、この2値のCMYK値が、印刷データ148におけるCMYKの値として印刷データ記憶エリア1125に記憶される(S14)。次いで、変換CMYKWデータにおけるW値に対して5値への誤差拡散処理が行われる。これにより、白インクを吐出させる対応ノズルの数である白ノズル使用数Hが画素毎に算出され、白ノズル使用数データ147として白ノズル使用数記憶エリア1124に記憶される(S15)。そして、Wデータ算出処理が行われる(S16)。
【0060】
図11に示すように、Wデータ算出処理が開始されると、画像を構成する複数の画素の1つが注目される(S21)。次いで、注目された画素についての白ノズル使用数Hが、白ノズル使用数記憶エリア1124から読み出される(S22)。そして、白ノズル使用数Hの値が「4」であるか否かが判断される(S25)。「4」である場合には(S25:YES)、各インクジェットヘッド11〜14に1つずつ割り当てられている、注目されている画素についての白インクの吐出が可能な4つの対応ノズルのうち、全ての対応ノズルから白インクを吐出させる。そこで、注目されている画素についてのW1〜W4のデータ全てが、白インクを吐出させることを示す「1」とされて(S26)、S33の判断へ移行する。
【0061】
また、注目された画素についての白ノズル使用数Hが「4」でない場合には(S25:NO)、白ノズル使用数が「0」であるか否かが判断される(S29)。「0」である場合には(S29:YES)、4つの対応ノズルのいずれからも白インクを吐出させない。よって、注目されている画素についてのW1〜W4のデータ全てが、白インクを吐出させないことを示す「0」とされて(S30)、S33の判断へ移行する。また、白ノズル使用数が「0」でない場合には(S29:NO)、使用ノズル抽出処理が行われる(S31)。
【0062】
図12に示すように、使用ノズル抽出処理では、まず、注目されている画素への白インクの吐出を行うことが可能な4つの対応ノズルを特定する対応ノズル特定処理が行われる(S41)。
【0063】
ここで、対応ノズル特定処理について説明する。先述したように、HDD116のプリンタ情報記憶エリア1165には、インクジェットプリンタ1に関する各種情報が記憶されている。詳細には、各ノズル列に設けられたノズルの数「n=128(個)」、ノズルの配列間隔「L=1/150(インチ)」、白インク用のインクジェットヘッドの数「4(個)」等の情報が記憶されている。そして、これらの値と、RAM112の指定解像度記憶エリア1122に記憶された解像度「R」とにより、プラテン5の副走査方向の移動距離等が決定される。
【0064】
例えば、ユーザによって指定された解像度が600dpi(dot per inch)であれば、まず、副走査方向をY方向、主走査方向をX方向とする、1単位の長さが1/600インチであるXY座標が画像データ上に設定される。そして、キャリッジリターンの度に行われるプラテン5の副走査方向における移動の距離が決定される。本実施の形態では、1回目が1/600インチ(座標の1単位当たりの長さ)、2回目が1/600インチ、3回目が1/600インチに設定される。そして、インクジェットプリンタ1におけるノズル間隔が1/150インチであるため、3回目の移動後の印刷が終了した時点でY軸方向における512画素分の幅だけ印刷が完了する。よって、次の移動距離(4回目の移動距離)が509/600インチとなり、ここまでの一連の動作を1サイクルとして、キャリッジ10,20及びプラテン5が繰り返し動作する。
【0065】
よって、Y座標が0である画素から順に印刷が開始される場合、Y座標が0〜3である画素へは、各インクジェットヘッドの最も後方(図1における上方)に位置するノズルであるノズル番号が「1」のノズルからインクが吐出される。また、Y座標が4〜7である画素へはノズル番号「2」のノズルから、Y座標が508〜511である画素へはノズル番号「128」のノズルからインクが吐出されることとなる。そして、2回目のサイクルでは、Y座標が512〜515である画素へはノズル番号「1」のノズルから、Y座標が1020〜1023である画素へはノズル番号「128」のノズルからインクが吐出される。
【0066】
そして、以上のような操作をキャリッジリターンの度に行う場合、対応ノズルのノズル番号は、画素のY座標の値を「y」とすると、yをLRで割った余りAを求めて、(y−A)/LRをnで割った余りに1を加えた値として特定される。例えば、解像度Rが600dpiである場合、インクジェットプリンタ1ではLが1/150、nが128であり、「L×R=600/150=4」となる。よって、Y座標の値が「y」である画素の対応ノズルのノズル番号は、yを4で割った余りAを求めて、(y−A)/4を128で割った余りに1を加えることで特定できる。このように、プラテン5のキャリッジリターン毎の副走査方向における移動距離、各ノズル列に設けられたノズルの数「n」、ノズルの配列間隔「L」、及び解像度「R」により、注目されている画素への白インクの吐出が可能な4つの対応ノズルを特定することができる。
【0067】
次いで、図12の説明に戻り、注目されている画素についての対応ノズルが特定されると(S41)、特定された4つの対応ノズルの吐出回数が、HDD116の白ノズル吐出回数記憶エリア1166から読み出される(S42)。詳細には、特定された対応ノズルのノズル番号を「t」とすると、インクジェットヘッド11に1つ割り当てられた対応ノズルの吐出回数が「K1_t」、インクジェットヘッド12に1つ割り当てられた対応ノズルの吐出回数が「K2_t」として読み出される。同様に、インクジェットヘッド13の対応ノズルの吐出回数が「K3_t」、インクジェットヘッド14の対応ノズルの吐出回数が「K4_t」として読み出される。次いで、注目されている画素についての白ノズル使用数Hが「3」であるか否かが判断される(S43)。「3」であれば(S43:YES)、実際に白インクを吐出させるノズル(使用ノズル)を、吐出回数が少ない対応ノズルから優先して3つ抽出する3ノズル抽出処理が行われる(S44)。
【0068】
図13に示すように、3ノズル抽出処理では、4つの対応ノズルの吐出回数が比較され、吐出回数が最大値をとる対応ノズルが1つであるか否かが判断される(S51)。1つであれば(S51:YES)、W1〜W4のデータのうち、吐出回数が最大値をとっていないノズルに対応する3つのWデータが、白インクを吐出させることを示す「1」とされて(S52)、使用ノズル抽出処理(図12参照)へ戻る。また、吐出回数が最大値をとる対応ノズルが1つでなければ(S51:NO)、最大値をとる複数の対応ノズルから、使用ノズルとしないノズルが1つ選択される(S53)。この処理では、例えば乱数等を用いて無造作にノズルを選択してもよいし、所定の規則に従って選択してもよい。いずれの方法を用いてノズルを選択しても、本発明によると、選択されたそのノズルは、次回以降の使用ノズル抽出処理では使用ノズルとして選択され易くなるため、ノズルの使用頻度に偏りが生じることはない。次いで、選択されなかった3つのノズルに対応する3つのWデータが、白インクを吐出させることを示す「1」とされて(S54)、使用ノズル抽出処理へ戻る。
【0069】
また、図12に示すように、注目されている画素についての白ノズル使用数Hが「3」でなければ(S43:NO)、白ノズル使用数Hが「2」であるか否かが判断される(S45)。「2」であれば(S45:YES)、使用ノズルを2つ抽出する2ノズル抽出処理が行われる(S46)。
【0070】
図14に示すように、2ノズル抽出処理では、まず4つの対応ノズルの吐出回数が比較され、吐出回数が最小値をとる対応ノズルが1つであるか否かが判断される(S61)。1つであれば(S61:YES)、吐出回数が最小値をとっているノズルに対応するWデータが、白インクを吐出させることを示す「1」とされる(S62)。次いで、2番目に小さい吐出回数をとっているノズルが1つであるか否かが判断され(S63)、1つであれば(S63:YES)、そのノズルに対応するWデータが「1」とされて(S64)、使用ノズル抽出処理へ戻る。また、2番目に小さい吐出回数をとっているノズルが1つでなければ(S63:NO)、吐出回数が2番目に小さい2又は3のノズルの1つが使用ノズルとして選択される。この処理におけるノズルの選択方法は、先述したS53(図13参照)の処理と同様に、いずれの方法を用いてもよい。そして、選択されたノズルに対応するWデータが「1」とされて(S66)、使用ノズル抽出処理へ戻る。
【0071】
また、4つの対応ノズルのうち、吐出回数が最小値をとる対応ノズルが1つでなければ(S61:NO)、最小値をとる対応ノズルが2つであるか否かが判断される(S69)。2つであれば(S69:YES)、その2つのノズルに対応するWデータが、白インクを吐出させることを示す「1」とされて(S70)、使用ノズル抽出処理へ戻る。また、吐出回数が最小値をとる対応ノズルが3つ、又は4つであれば(S69:NO)、その3つ以上の対応ノズルから2つが使用ノズルとして選択される(S71)。そして、選択されたノズルに対応するWデータが「1」とされて(S72)、使用ノズル抽出処理へ戻る。
【0072】
また、図12に示すように、注目されている画素についての白ノズル使用数Hが「3」でも「2」でもない場合、すなわち「1」である場合には(S45:NO)、使用ノズルを1つ抽出する1ノズル抽出処理が行われる(S47)。
【0073】
図15に示すように、1ノズル抽出処理では、4つの対応ノズルの吐出回数が比較されて、吐出回数が最小値をとる対応ノズルが1つであるか否かが判断される(S81)。1つであれば(S81:YES)、そのノズルに対応するWデータが、白インクを吐出させることを示す「1」とされて(S82)、使用ノズル抽出処理へ戻る。また、吐出回数が最小値をとる対応ノズルが1つでなければ(S81:NO)、最小値をとる複数のノズルから1つが使用ノズルとして選択される(S83)。そして、選択されたノズルに対応するWデータが「1」とされて(S84)、使用ノズル抽出処理へ戻る。
【0074】
そして、図12に示すように、所定数のノズルを使用ノズルとして抽出する処理(S44,S46,S47)が終了すると、「1」とされたWデータに対応するノズルの吐出回数に1を加算する処理が行われる(S48)。そして、Wデータ算出処理(図11参照)へ戻り、S33の判断へ移行する。S33では、全ての画素についてのWデータの算出処理が行われたか否かが判断される(S33)。これらの処理が、画像を構成する全ての画素について行われていなければ(S33:NO)、S21の処理へ戻り、次の順の画素についてWデータの算出処理が行われる。全ての画素についての処理が行われた場合には(S33:YES)、印刷データ作成処理(図10参照)へ戻り、処理を終了する。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態のパーソナルコンピュータ100によると、4つのインクジェットヘッド11〜14に1つずつ割り当てられている、所定の画素への白インクの吐出が可能な4つの対応ノズルのうち、白インクを吐出させる使用ノズルの数である白ノズル使用数Hが画素毎に算出される。そして、インクの吐出回数が少ないノズルから優先して使用ノズルとして抽出され、抽出された使用ノズルに白インクを吐出させる印刷データ148が作成される。従って、複数のノズルを均等に使用することができ、使用頻度に偏りが生じることを防ぐことができる。よって、使用頻度の低いノズルが乾くことによる画像品質の低下を防止することができる。
【0076】
また、変換CMYKWデータ146のWデータに5値への誤差拡散処理を行うことで、白ノズル使用数を算出することができる。これにより、誤差分の情報を周囲の画素に拡散させることができるため、閾値法等の他の処理を用いる場合に比べて品質の良い画像を印刷させる印刷データを作成することができる。また、印刷データ148が2値のデータであるため、インクの吐出量を安定させて品質の良い画像を印刷させることができると共に、インクジェットプリンタ1を容易に制御することができる。また、4つの対応ノズルの全てに白インクを吐出させる場合、及びいずれの対応ノズルからも白インクを吐出させない場合には、使用ノズル抽出処理(図12参照)が行われないため、無駄な処理を行うことなく迅速に印刷データ148を作成することができる。また、他の色よりも多量のインクを必要とする白インクを、4つのインクジェットヘッド11〜14を均等に用いて吐出させる印刷データ148を作成することができるため、インクジェットヘッド11〜14を乾燥から保護しつつ、素早い印刷を行うことができる。
【0077】
尚、上記第一の実施形態において、図10のS15で5値への誤差拡散処理を行うことによって白ノズル使用数データ147を算出するパーソナルコンピュータ100のCPU110が、本発明の「使用数算出手段」として機能する。また、パーソナルコンピュータ100のHDD116における白ノズル吐出回数記憶エリア1166が「吐出回数記憶手段」に相当し、図12乃至図15に示す使用ノズル抽出処理を行うCPU110が「使用ノズル抽出手段」として機能する。また、図10に示すS14及びS16で印刷データを作成するCPU110が「印刷データ作成手段」として機能し、図12に示すS41で、注目されている画素へのインクの吐出が可能な対応ノズルを特定する処理を行うCPU110が「対応ノズル特定手段」として機能する。また、図11に示すS25及びS29で、白ノズル使用数Hが4又は0である画素を、使用ノズル抽出処理(S31)を行う画素から除外するCPU110が「除外手段」として機能する。
【0078】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、様々な変形が可能であることは言うまでもない。まず、本実施の形態では、変換CMYKWデータ146のWデータに5値への誤差拡散処理を行うことによって、実際に白インクを吐出させるインクジェットヘッドの数(白ノズル使用数)を示す白ノズル使用数データ147が算出される(S15、図10参照)。しかし、白ノズル使用数データ147の算出方法はこれに限定されない。例えば、4つの閾値を設定し、その閾値に応じて閾値法を用いて5値の白ノズル使用数データ147を算出してもよい。
【0079】
また、ノズルの吐出回数の記憶方法も適宜変更が可能である。例えば、本発明ではノズルの使用頻度に偏りが生じることを回避するために吐出回数を記憶する。従って、本実施の形態では、4つの対応ノズルの全てにインクを吐出させる場合には(S25:YES)、吐出回数を加算していない。しかし、吐出回数の加算は、対応ノズルの全てに白インクを吐出させる場合にも行ってよい。
【0080】
また、注目されている画素についての対応ノズルのノズル番号を特定する対応ノズル特定処理(S41、図12参照)も変更が可能である。先述したように、所定の画素への白インクの吐出が可能な対応ノズルは、プラテン5のキャリッジリターン毎の副走査方向における移動距離、注目画素のY座標「y」、ノズル列に設けられたノズルの数「n」、ノズルの配列間隔「L」、及び解像度「R」が決定することで一義的に特定される。そして、本実施の形態では、これらの値を用いてノズル番号nを計算により求めている。しかし、Y座標とノズル番号とを対応付けるテーブルをあらかじめHDD116等に記憶させておき、テーブルにY座標を当てはめることでノズル番号を割り出してもよい。より具体的には、先述した計算方法を用いてY座標の各値とノズル番号とを対応付け、対応を示すテーブルをあらかじめ作成しておく。このテーブルは、キャリッジリターン毎の副走査方向の移動距離と、使用されるインクジェットプリンタのノズル数及びノズル間隔と、ユーザによって指定される解像度とに応じてあらかじめ複数作成しておくことが望ましい。そして、対応ノズル特定処理では、副走査方向の移動距離、ノズル数、ノズル間隔、及び解像度に応じたテーブルが参照されることで、画素のY座標の値からノズル番号が特定される。これにより、ノズル番号を割り出す処理を迅速に行うことができる。
【0081】
また、本実施の形態では、sRGB形式の画像データ141が、カラー変換テーブル161及び白変換テーブル162によって256階調の変換CMYKWデータ146に変換され、この変換CMYKWデータ146から2階調の印刷データ148が作成される場合を例示している。しかし、このようなデータ形式は任意に変更が可能である。例えば、画像データ141はCMYK形式やHSV形式等の他の色空間によって表現されるデータであってもよいし、階調も256階調に限られない。また、印刷データ148のデータ形式も、例えばCMYW形式等の他のデータ形式を採用することもできる。
【0082】
また、インクジェットプリンタ1の構成も適宜変更が可能である。例えば、本実施の形態では、白用のインクジェットヘッドを4つ備えたインクジェットプリンタ1に用いられる印刷データ148の作成を例に挙げて説明した。しかし、特定のインクを吐出するインクジェットヘッドを複数備えたインクジェットプリンタを用いる場合であれば、本発明を適用することができる。例えば、白インクを吐出させるインクジェットヘッドの数がNであれば、変換CMYKWデータ146におけるWデータの256階調を、多値への誤差拡散処理等を用いてN+1階調に変換すればよい。また、白インク以外のインクを複数のインクジェットヘッドから吐出させる場合でも本発明を適用できる。また、1つのキャリッジに8つのインクジェットヘッドを搭載し、各インクジェットヘッドからC、M、Y、K、W、W、W、Wのインクを吐出させるインクジェットプリンタにも本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】インクジェットプリンタ1の平面図である。
【図2】インクジェットプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】パーソナルコンピュータ100の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】パーソナルコンピュータ100のRAM112の構成を示す模式図である。
【図5】パーソナルコンピュータ100のHDD116の構成を示す模式図である。
【図6】印刷データ作成過程のデータ推移図である。
【図7】カラー変換テーブル161のデータ構成図である。
【図8】白変換テーブル162のデータ構成図である。
【図9】256階調のW値に対する5値への誤差拡散結果と、白インクを吐出する対応ノズルの数との対応を示した説明図である。
【図10】パーソナルコンピュータ100で行われる印刷データ作成処理のフローチャートである。
【図11】印刷データ作成処理で実行されるWデータ算出処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図12】Wデータ算出処理で実行される使用ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図13】使用ノズル抽出処理で実行される3ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図14】使用ノズル抽出処理で実行される2ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートである。
【図15】使用ノズル抽出処理で実行される1ノズル抽出処理のサブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1 インクジェットプリンタ
10 第一キャリッジ
11〜14 インクジェットヘッド
100 パーソナルコンピュータ
110 CPU
111 ROM
112 RAM
115 CD−ROMドライブ
116 HDD
131 CD−ROM
141 画像データ
146 変換CMYKWデータ
147 白ノズル使用数データ
148 印刷データ
1121 入力画像データ記憶エリア
1123 変換CMYKWデータ記憶エリア
1124 白ノズル使用数記憶エリア
1125 印刷データ記憶エリア
1166 白ノズル吐出回数記憶エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが等間隔に配列されたノズル列を有する複数のインクジェットヘッドから、同一画素に同一色の特定インクを吐出させることが可能な印刷データを画像データに基づいて作成する印刷データ作成装置であって、
それぞれの前記インクジェットヘッドに1つずつ割り当てられている、所定の画素への前記特定インクの吐出が可能なノズルのうち、前記特定インクを吐出させるノズルである使用ノズルの数を、画像を構成する画素毎に前記画像データから算出する使用数算出手段と、
前記特定インクの吐出回数を前記ノズル毎に記憶する吐出回数記憶手段と、
前記画素への前記特定インクの吐出が可能な前記インクジェットヘッドの数と同数のノズルから、前記使用数算出手段によって算出された数のノズルを、前記吐出回数記憶手段に記憶されている前記吐出回数がより少ないノズルを優先させて前記使用ノズルとして画素毎に抽出する使用ノズル抽出手段と、
前記使用ノズル抽出手段によって抽出された前記使用ノズルを使用して前記特定インクを各画素に対して吐出させる印刷データを作成する印刷データ作成手段とを備えたことを特徴とする印刷データ作成装置。
【請求項2】
前記使用数算出手段は、前記画像データにおける前記特定インクの色の階調値に対する多値への誤差拡散処理を行うことにより、前記使用ノズルの数を画素毎に算出することを特徴とする請求項1に記載の印刷データ作成装置。
【請求項3】
前記印刷データは、各ノズルに対してインクを吐出させるか否かを制御する2値のデータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷データ作成装置。
【請求項4】
前記ノズル列に配列された前記ノズルの数、前記ノズル列における前記ノズルの配列間隔、及び前記画像の解像度により、各インクジェットヘッドに1つずつ割り当てられている、各画素への前記特定インクの吐出が可能なノズルを特定する対応ノズル特定手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷データ作成装置。
【請求項5】
前記使用数算出手段によって算出された前記使用ノズルの数が、前記画素への前記インクの吐出が可能な前記インクジェットヘッドの数と同数となった画素、及びゼロとなった画素を、前記使用ノズル抽出手段による前記使用ノズルの抽出を行う画素から除外する除外手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の印刷データ作成装置。
【請求項6】
前記特定インクの色が白色であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷データ作成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の印刷データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための印刷データ作成プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−226651(P2009−226651A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72619(P2008−72619)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】