説明

印刷プライマーを用いる光学レンズの着色方法、及びかかる印刷プライマーを有する光学着色レンズ

【課題】インクジェット印刷による、透明な印刷プライマーを有する光学レンズの着色方法。レンズ基材を構成する化合物の化学的性質に関わりなく、前記印刷プライマーにインクジェット印刷して着色光学レンズを得る方法。またそれにより得られる着色レンズ。
【解決手段】ベース材料としての、また印刷プライマーの結合剤としての、水分散ポリマーを含有してなる印刷プライマー、及びそれを使用する着色方法。好ましくは、該結合剤のインク受容性を、前記結合剤層へのインクの拡散を改善しうる素材、及び/又は前記結合剤層へのインクの吸収特性を強化しうる素材と組み合わせて強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷で着色できる透明印刷プライマーを有する光学レンズの着色方法である。この着色方法には、前記レンズの基材を構成する化合物の化学的性質を問わずに、前記透明印刷プライマーをインクジェット印刷し、染色(又は着色)光学レンズを得る工程が含まれる。
【0002】
本発明は更に、前記印刷プライマーを含んでなる染色(又は着色)光学レンズに関する。上記着色レンズは、インクジェットプリンタを使用して前記印刷プライマーを着色することで得られる。この種の着色レンズは特に美顔又は医療関連の眼科用途に、又は写真撮影用途においても有用である。
【背景技術】
【0003】
従来の染色(又は着色)光学レンズの調製では、着色液を満たした温度制御されたバスに基材を浸し、それにより基材を染色(又は着色)していた。この方法では、製造再現性、及びおそらくは着色レンズの色の均質性に関する欠点が見られる。更に、着色バスの特性やバス温度の特性が、着色しようとするレンズ基材の化学的性質に特異的であるため、幾つかの組成や処理条件を用意しておくことが必要となる。
【0004】
そこで、特に着色しようとする物体の化学的性質に依存するというこの制約を取り除くため、インクジェットプリンタを使用したレンズの印刷方法が開発された。
【0005】
特許文献1では、レンズの着色方法を記載している。該方法では、熱処理可能な水溶性ポリマーの溶液を基材に塗布し、加熱し、硬化ポリマー層を形成させ、次いで例えばインクジェットプリンタを使用して着色溶液をこの層に塗布し、再び加熱し、それにより硬化後のポリマー層に担持されている色の基材への転写がなされ、次いでレンズをリンスして硬化した水溶性ポリマー層と残留する染料を除去し、着色された基材を得る。
【0006】
しかしながら、この方法は印刷プライマーを堆積させようとする基材の化学的性質に左右されるものであり、また良好な表面の外観を伴う均一な着色を得るためには、昇華段階での温度条件を特異的に調整しなければならない。
【0007】
特許文献2では、インクジェットプリンタを使用したレンズの印刷方法が記載されている。かかる場合には通常、インクをレンズに固定する際に問題点が存在する。この文献では、この問題を解決する手段として、基材に付着させようとするポリマー膜をインクで着色することが開示されている。基材との適合性に基づきインクを選択し、好ましくはインク中に溶解できる樹脂をインクに添加し、基材へのインクの接着性を改善する方法である。しかしながら、この方法ではインクが十分に拡散しないという問題点が残る。インクが基材中に十分拡散しない場合、得られるレンズの外観は均一にならない。
【0008】
新開発の印刷プライマーに関するおびただしい特許文献が存在する。これらの印刷プライマーは、主に裏地(例えばペーパー及び織物)のプリントに用いられる。特許文献3から7では、その説明中に透明プラスチック基材上へのこの種の印刷プライマーの使用が記載されているが、そこで想定されているプラスチックは全て500μm未満の厚を有するフィルムである。これらのフィルムは、特にプレゼンテーション用途(スライドショー)又はパッケージング用途に使用されるものである。
【0009】
その他にも、プラスチック支持体(例えばDVD及びCD)上へのこれらのプライマーの使用に関する文献が存在する。ただし後者の場合、基材及び印刷プライマーの透明度、並びに得られる着色物質の概念は上記の問題点とは無関係である。
【0010】
いずれの特許文献も、インクジェット印刷で着色できる透明印刷プライマーを使用した着色方法を、光学レンズ、より具体的には眼科用のレンズを構成する透明プラスチック基材への適用することに関しては言及していない。より具体的には、いずれの特許文献も、光学レンズを構成する基材の化学的性質と適合する態様での着色方法を記載していない。
【特許文献1】特開2000−314088号公報
【特許文献2】特許第3349116号公報
【特許文献3】米国特許第6695447号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0048073号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0059045号公報
【特許文献6】欧州特許第1288012号公報
【特許文献7】米国特許第6319591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上より本発明の課題は、安定で、透明で、光学レンズ基材に積層させた後でインクで着色でき、及び前記基材の化学的性質とも適合する、というこれらの性質を併せ持つ印刷プライマーを提供することである。更に、構成要素である基材を前記印刷プライマーでコーティングして得た着色光学レンズは光学的に透明でなければならず、また特に眼科用のレンズに関して規定された表面基準に対応していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
鋭意研究の結果、ベース材料としての、また印刷プライマーの結合剤としての、水分散ポリマーを含有してなる印刷プライマーを使用する着色方法を見出すに至った。該方法では、この結合剤のインク受容性は、前記結合剤層へのインクの拡散を改善しうる素材、及び/又は前記結合剤層へのインクの吸収特性を強化しうる素材と組み合わせることで強化される。
【0013】
以上より、本発明の主な態様は、以下の工程を含む光学レンズの着色方法に関する。
a)以下を含む透明印刷プライマーを調製する工程、
(1)水分散ポリマーから構成される結合剤
(2)水分散ポリマー中への1つ以上のインクの拡散を促進する、コロイドを含有する物質、及び/又は
(3)の水分散ポリマー中への1つ以上のインクの吸収を促進する、吸収性ポリマーを含有する物質
b)光学レンズの基材の少なくとも1つの表面(平面、凸面又は凹面)上へ透明印刷プライマーを積層させ、フィルムを形成させる工程、
c)印刷プライマーを乾燥させる工程、
d)インクジェットプリンタを使用して、基材を被覆する印刷プライマー上に印刷する工程、及び
e)インクを乾燥させる工程。
【0014】
本発明の他の態様は、上記着色方法により得られるこの種の着色印刷プライマーを有する着色光学レンズに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の用語の意味は以下のとおりである。「光学レンズ」の用語は、特に眼科用のレンズ及び光学機器用のレンズを意味する。「眼科用のレンズ」の用語は、特に眼鏡フレームに係着するレンズであって、目の保護及び/又は視力の矯正の機能を有し、無限焦点、一焦点、二焦点、三焦点及び累進レンズから選択されるレンズを意味する。「基材」の用語は、光学レンズ、特に眼科用レンズのベースを構成する透明な材料を意味し、この材料は、1つ以上のコーティング、特に印刷プライマーを積層させるための支持体として機能する。「コーティング」の用語は基材及び/又は他のコーティングと接触できるあらゆる層又はフィルムを意味し、特に反射防止コーティング、汚れ防止コーティング、耐衝撃コーティング、耐かき傷コーティング及び極性化コーティングから選択できる。本明細書の態様における「着色される」(又は着色される)の用語は、8%〜90%(それぞれクラス4からクラス0)の透過率を有するものを意味し、それはレンズの全体を通じて透過率が同一であっても(着色レンズ)、また不均一(色勾配レンズ、又はパターン、デザイン、特徴などのグラフィックを含んでなるレンズ)であってもよい。着色光学レンズは、その表面の全部又は一部を着色できる。本明細書の態様における「光学的に透明な」の用語及び本発明の文脈において通常用いられる「透明な」の用語は、可視散乱を示さず、可視回折を示さないことを意味する。
【0016】
本発明の態様の第1の変形では、上記着色方法の工程a)で調製される印刷プライマーは、水分散ポリマー及び吸収性ポリマーを含有してなる。好適には、吸収性ポリマーの量は、吸収性ポリマーと結合剤の乾燥重量の合計に対して10%以上〜98%以下(乾燥重量)である。
【0017】
本発明の態様の第2の変形では、上記着色方法の工程a)で調製される印刷プライマーは、水分散ポリマー及びコロイドを含有してなる。好適には、コロイドの量は、コロイドと結合剤の乾燥重量の合計に対して20%以上〜70%以下である。
【0018】
本発明の態様の第3の変形では、上記着色方法の工程a)で調製される印刷プライマーは、水分散ポリマー、コロイド及び吸収性ポリマーを含有してなる。この場合、コロイドの量は乾燥重量の合計の20%以上〜40%以下(乾燥重量)、吸収性ポリマーの量は乾燥重量の合計の5%以上〜40%以下(乾燥重量)である(前記乾燥重量はコロイド、吸収性ポリマー及び結合剤のそれからなる)。
【0019】
本発明の態様では、結合剤は水分散ポリマーから構成され、該ポリマーはアニオン性、カチオン性又は非イオン性であってよく、ポリウレタン系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリオレフィン系(例えばポリブタジエン、ポリ(スチレン/ブタジエン))、ポリエステル系、ポリ(ビニルピリジン)系、ポリ(ビニルピロリドン)系、ポリ(アクリルアミド)系、ポリ(メタ)アクリルアミド系及びポリ(ビニルエステル)(例えばポリ(酢酸ビニル))からなる群から選択されるポリマーが挙げられる。好適には、本発明の結合剤は水分散アニオン性ポリウレタン、水分散カチオン性ポリウレタン、水分散アニオン性アクリル、水分散カチオン性アクリル、水分散アニオン性メタクリル酸、水分散カチオン性メタクリル酸、水分散アニオン性ブタジエン、水分散カチオン性ブタジエン、水分散アニオン性ポリエステル及び水分散カチオン性ポリエステルから選択される。好ましくは、水分散ポリマーは水分散アニオン性ポリウレタン及び水分散カチオン性アクリルから選択される。この種の水分散ポリマーは一般に「ラテックス」と呼ばれる。
【0020】
本発明の態様において使用できる水分散ポリマーの若干の例として、Baxenden社から市販されているポリウレタン(Witcobond(商標)シリーズ(例えばW234)のポリウレタンなど)、又はCiba社から市販されているアクリル酸塩(Glascol(登録商標)など)が挙げられる。
【0021】
吸収性ポリマーは、例えばポリビニルアルコール、部分加水分解ポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)及びポリ(アルキレンオキシド)などの親水性ポリマーから選択される。好適には、吸収性ポリマーはポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選択される。特に好適には、吸収性ポリマーはポリビニルアルコールである。
【0022】
コロイドの一部は、1nm〜100nmの直径、好ましくは5nm〜30nmの直径を有する無機酸化物から形成されるコロイドから選択される。本発明の好適な変形では、コロイドはアニオン性コロイド状シリカ又はカチオン性コロイド状シリカである。好ましくは、コロイドはアニオン性コロイド状シリカである。
【0023】
以上より、本発明の光学レンズの着色方法の第1の変形では、印刷プライマーは好適には水分散ポリマー(カチオン性アクリルポリマー及びアニオン性ポリウレタンから選択されるポリマー)、並びにポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選択される吸収剤を含有してなる。
【0024】
好ましくは、この本発明の第1の変形では、水分散ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、吸収性ポリマーがポリビニルアルコールである。特に好適には、ポリビニルアルコールの量は、ポリビニルアルコールとアニオン性ポリウレタンの乾燥重量の合計に対して10%以上〜50%以下である。
【0025】
本発明の光学レンズの着色方法の第2の変形では、印刷プライマーは好適には水分散ポリマーを含んでなり、該ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、コロイドがカチオン性コロイド状シリカ及びアニオン性コロイド状シリカから選択される。好ましくは、この本発明の第2の変形では、水分散ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、コロイドがアニオン性コロイド状シリカである。特に好適には、コロイドの量は、コロイドと水分散ポリマーの乾燥重量の合計に対して20%以上〜70%以下、より好適には40%以上〜60%以下である。シリカ粒子をコーティングするポリマーの量は、印刷プライマーが、それを基材上に堆積させた際にフィルムを形成するのに充分な量でなければならない。
【0026】
本発明の光学レンズの着色方法の第3の変形では、印刷プライマーは好適には、水分散ポリマーを含んでなり、該ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、コロイドがアニオン性コロイド状シリカであり、吸収性ポリマーがポリビニルピロリドンである。
【0027】
本発明の印刷プライマー組成物に添加剤(特に光安定剤、架橋剤、融合剤又は界面活性剤)を添加してもよい。
【0028】
本発明の特定実施例によれば、基材上に積層させる印刷プライマー層の厚は0.05μm以上〜25μm以下、好ましくは1μm以上〜10μm以下である。
【0029】
レンズの基材はいかなるタイプでもよい。限定されないが、例えば、本発明で使用できる基材として、一般的に光学用途及び眼科用途で使用される基材を例示として挙げることができる。適切な例としては、以下のタイプの基材が挙げられる。ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタル酸)とポリカーボネートのコポリマー、ポリオレフィン(特にポリノルボルネン)、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)のポリマー及びコポリマー、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマー、特にビスフェノールAに由来する(メタ)アクリル系ポリマー及びコポリマー、チオ(メタ)アクリル系ポリマー及びコポリマー、ウレタン及びチオウレタン系ポリマー及びコポリマー、エポキシ系ポリマー及びコポリマー及びエピスルフィド系ポリマー及びコポリマー。
【0030】
本発明の印刷プライマーは、所望の光学的透明度、及び眼科上の適用範囲(クラス0〜4)全体にわたる、インクジェット印刷による着色適性の両特性を併せ持つ。
【0031】
更に、本発明の印刷プライマーはいかなるタイプの基材にも使用可能であるという利点を有する。
【0032】
本発明の印刷プライマーによる他の効果として、レンズ上にグラフィック(デザイン、パターン及び/又はキャラクター)を描画できることも挙げられ、本発明では、インクジェット印刷技術と前記プライマーとの適合性ゆえに、均一な色合い、色勾配又は少なくとも1つのグラフィック表示を有するレンズを得ることが可能となり、レンズ表面の全部又は一部に印刷を行うことが可能となる。
【0033】
本発明の他の態様は、本明細書に記載の印刷プライマーの使用であって、光学用途又は眼科用途における満足な粘着力を有する印刷可能(すなわち着色可能)なフィルムを、光学レンズ基材の表面に形成させるための使用である。
【0034】
本発明の着色方法には更に、印刷プライマーを積層する前に基材表面を処理する工程a’)を含めてもよい。「表面処理」の用語は、化学物質、熱、コロナ又はプラズマによる処理を意味する。この種の処理は、特に光学レンズ基材へのコーティング(フィルム又は層)の良好な接着を促すために使用できる。化学的性質に応じた処理の選択は、当業者にとって周知である。
【0035】
工程b)において、基材のいずれかの表面、又は基材の両方の表面に印刷プライマーを積層させることができ、また該表面は平面、凹面又は凸面であってもよい。基材に溶液を塗布するための公知のあらゆる積層工程が、本発明の方法中の工程b)に適用できる。光学レンズの1つの表面のみのコーティングが望ましい場合には、スピンコーティング(又は遠心分離)による積層が特に好適であり、基材の両面の全部又は一部を同時にコーティングしようとする場合は、特にディップ塗布(浸漬)により積層させるのが好適である。
【0036】
工程c)及びe)におけるプライマー及びインクの乾燥は、当業者に公知の標準的な条件を採用して実施でき、室温(25℃)〜150℃までの温度範囲で、10分〜2時間の時間で調整できる。非限定的な実施例として、工程e)では100℃で1時間インクを乾燥させてもよい
【0037】
本発明の光学レンズの着色方法は、インクジェットプリンタを使用した、該光学レンズの基材上に積層する上記印刷プライマーの着色に関する。本明細書にて説明したように、上記着色方法は、OA用途又は写真用途で従来使用されている全ての種類のインクジェットプリンタと適合性を有する。当業者は、必要とする画像の解像度レベルに基づいてインクジェットプリンタのカテゴリーを選択する。すなわち、例えば、着色によって微細で詳細なグラフィック表示(例えば写真の画像)を有する着色光学レンズを得ようとする場合には、写真グレードの高解像度インクジェットプリンタの使用が好適である。均一に着色されたレンズ又は色のグラジェントを有するレンズの製造において、光学表面の基準に適合させようとするときは、OAタイプのインクジェットプリンタでも十分である。
【0038】
本発明の具体的実施態様では、上記方法の工程d)で印刷ソフトウェアを使用する。印刷可能な表面にテキスト、デザイン、パターン又は写真を印刷することに適するソフトウェアを本発明において使用してもよい。
【0039】
本発明の他の態様は、印刷プライマーを使用した上記の着色方法で得られた着色光学レンズである。特に好適には、光学レンズは無限焦点、一焦点、二焦点、三焦点又は累進構造の眼科用レンズである。
【0040】
非限定的な態様で本発明を例示する以下の実施例を参照することで、本発明は更に詳細に理解される。
【0041】
実施例1:光学レンズの青色グラジェントでの着色
インクジェットプリンタ:キヤノンi865 Primer
結合剤:アニオン性ポリウレタン:40% W234(Baxenden社製)
コロイド:アニオン性コロイド状シリカ:60% Ludox TM40(Aldrich社製)
【0042】
W234とコロイド状シリカをマグネチックスターラーで撹拌してプライマー溶液を調製した。1時間撹拌後、得られた印刷プライマーをOrma(登録商標)の2つの基材表面上にスピンコーティングで積層させた。スピンコーティング条件を500回転/20秒とした。プライマーを100℃で1時間、オーブンで乾燥させた。プライマー厚は3.6μmであった。印刷プライマーを乾燥させた後、印刷プライマーと基材からなる光学レンズをキヤノンi865プリンタで印刷(着色)した。Powerpoint(登録商標)ソフトウェアを使用して青色のグラジェントを形成した。光学レンズをプリンタのローディングモジュールに設置し、プリンタにはPowerpoint(登録商標)で「青色グラジェント」ファイルを開いているコンピュータに接続した。印刷を実施した。プリンタからレンズを取り出し、直ちに100℃で1時間乾燥させた。光学的な透明性に関する表面基準に適合する、青色グラジェントを有する光学レンズを得た。
【0043】
実施例2:写真タイプのグラフィック表示による光学レンズの着色
インクジェットプリンタ:キヤノンi865 Primer
結合剤:アニオンポリウレタン:70% W234(Baxenden社製)
吸収性ポリマー:ポリビニルアルコール(モル質量=13000〜23000g/mol、加水分解の程度:87〜89%)30% PVOH13(Aldrich社製)
【0044】
95℃で2時間、撹拌しながら水にPVOH13を溶解させ、10重量%濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製した。次いで、W234とコロイド状シリカをマグネチックスターラーで撹拌してプライマー溶液を調製した。1時間撹拌後、印刷プライマーをOrma(登録商標)の2つの基材表面上にスピンコーティングで積層させた。スピンコーティング条件を500回転/20秒とした。プライマーを100℃で1時間、オーブンで乾燥させた。プライマー厚は3.6μmであった。印刷プライマーと基材からなる光学レンズをキヤノンi865プリンタで印刷(着色)した。印刷しようとする写真をWORD(商標)の文書中に挿入した。光学レンズをプリンタのローディングモジュールに設置し、プリンタにはWORD(登録商標)で「写真」ファイルを開いているコンピュータに接続した。印刷を実施した。プリンタからレンズを取り出し、直ちに100℃で1時間乾燥させた。光学的な透明性に関する表面基準に適合する、写真の印刷された光学レンズを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学レンズの着色方法であって、
a)以下を含む透明な印刷プライマーを調製する工程、
(1) 水分散ポリマーから構成される結合剤
(2) 水分散ポリマー中への1つ以上のインクの拡散を促進する、コロイドを含有する物質、及び/又は
(3) の水分散ポリマー中への1つ以上のインクの吸収を促進する、吸収性ポリマーを含有する物質
b)光学レンズの基材の少なくとも1つの、平面、凸面又は凹面状の表面上へ透明な印刷プライマーを積層させ、フィルムを形成させる工程、
c)印刷プライマーを乾燥させる工程、
d)インクジェットプリンタを使用して、基材を被覆する印刷プライマー上に印刷する工程、及び
e)インクを乾燥させる工程、を含む着色方法。
【請求項2】
工程d)における印刷プライマーへの印刷が、テキスト又はグラフィック処理用ソフトウェアと連結しているインクジェットプリンタを使用して、均一な色、色のグラジェント又はグラフィック表示を印刷することからなる、請求項1記載の着色方法。
【請求項3】
工程b)における印刷プライマーの積層を、光学レンズの基材の1つの表面へのスピンコーティング(遠心分離)により実施する、請求項1又は2記載の着色方法。
【請求項4】
工程b)における印刷プライマーの積層を、光学レンズの基材の両方の表面上へのディップコーティング(浸漬)により実施する、請求項1又は2記載の着色方法。
【請求項5】
工程c)及びe)における乾燥を、25℃〜150℃の温度で10分間〜2時間実施する、請求項1から4のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項6】
前記印刷プライマーが水分散ポリマー及び吸収性ポリマーを含有してなる、請求項1から5のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項7】
印刷プライマーが水分散ポリマー及びコロイドを含有してなる、請求項1から6のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項8】
前記水分散ポリマーが、水分散アニオン性ポリウレタン、水分散カチオン性ポリウレタン、水分散アニオン性アクリル、水分散カチオン性アクリル、水分散アニオン性メタクリル酸及び水分散カチオン性メタクリル酸から選択される、請求項1から7のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項9】
前記吸収性ポリマーがポリビニルアルコール、部分加水分解されたポリ(ビニルアルコール/酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロースエーテル、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)及びポリ(アルキレンオキシド)から選択される、請求項1から6及び請求項8のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項10】
前記吸収性ポリマーがポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選択される、請求項9記載の着色方法。
【請求項11】
前記吸収性ポリマーがポリビニルアルコールである、請求項9又は10記載の着色方法。
【請求項12】
前記コロイドが1nm〜100nmの直径を有する無機酸化物から形成されるコロイドから選択される、請求1から5、請求項7及び請求項8のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項13】
無機酸化物から形成される前記コロイドが5nm〜30nmの直径を有する、請求項12記載の着色方法。
【請求項14】
前記コロイドがアニオン性コロイド状シリカ及びカチオン性コロイド状シリカから選択される、請求項12又は13記載の着色方法。
【請求項15】
前記コロイドがアニオン性コロイド状シリカである、請求項14記載の着色方法。
【請求項16】
前記水分散ポリマーが、カチオン性アクリルポリマー及びアニオン性ポリウレタンから選択され、前記吸収性ポリマーがポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコールから選択される、請求項1から6及び請求項8のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項17】
前記水分散ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、前記吸収性ポリマーがポリビニルアルコールである、請求項16記載の着色方法。
【請求項18】
前記水分散ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、前記コロイドがカチオン性コロイド状シリカ及びアニオン性コロイド状シリカから選択される、請求項1から5及び請求項7から8のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項19】
前記水分散ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、前記コロイドがアニオン性コロイド状シリカである、請求項18記載の着色方法。
【請求項20】
前記水分散ポリマーがアニオン性ポリウレタンであり、前記コロイドがアニオン性コロイド状シリカであり、前記吸収性ポリマーがポリビニルピロリドンである、請求項1から19のいずれか1項記載の着色方法。
【請求項21】
前記吸収性ポリマーの乾燥重量が、吸収性ポリマーと水分散ポリマーの乾燥重量の合計に対して10%以上〜98%以下である、請求項6記載の着色方法。
【請求項22】
ポリビニルアルコールの乾燥重量が、ポリビニルアルコールとアニオン性ポリウレタンの乾燥重量の合計に対して10%以上〜50%以下である、請求項21記載の着色方法。
【請求項23】
前記コロイドの乾燥重量が、コロイドと水分散ポリマーの乾燥重量の合計に対して20%以上〜70%以下である、請求項7記載の着色方法。
【請求項24】
前記コロイドの乾燥重量が、コロイドと水分散ポリマーの乾燥重量の合計に対して40%以上〜60%以下である、請求項22記載の着色方法。
【請求項25】
前記コロイドの乾燥重量が、総乾燥重量の20%以上〜40%以上であり、前記吸収性ポリマーの乾燥重量が総乾燥重量の5%以上〜40%以下であり、前記総乾燥重量がコロイド、吸収性ポリマー及び結合剤の乾燥重量からなる、請求項1又は19記載の着色方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか1項記載の、印刷プライマーを用いる着色方法より得られる着色光学レンズ。
【請求項27】
前記印刷プライマーが0.05μm以上〜25μm以下の厚を有するコーティングである、請求項26記載の光学レンズ。
【請求項28】
前記印刷プライマーが1μm以上〜10μm以下の厚を有するコーティングである、請求項26記載の光学レンズ。
【請求項29】
無限焦点、一焦点、二焦点、三焦点又は累進構造の眼科用レンズである、請求項26から28のいずれか1項記載の光学レンズ。

【公表番号】特表2008−528253(P2008−528253A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551711(P2007−551711)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000167
【国際公開番号】WO2006/079715
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(505425373)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラレ ドプテイク) (74)
【Fターム(参考)】