説明

印刷制御システム

【課題】 ユーザが独自に用意した印刷メディアにおいても、用紙の種類を論理的に追加でき、ファームウェア、プリンタドライバのアップデートなしに印刷が行えるような印刷制御システムを提供する。
【解決手段】 追加する用紙の種類の名称、既存の印刷メディアの中から画像処理方法が近いものをプリンタの操作パネルから選択させ、用紙送り量の調整を別のメディアとして設定できる手段を設けて、論理的に用紙の種類を追加することが可能とする。プリンタドライバ上で表示する際にはプリンタから追加された用紙の種類も表示し、ユーザが指定した場合には、印刷データに加えて用紙送り量を送信し、プリンタはプリンタドライバの用紙送り量を優先して印字機構を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の通信媒体を介して通信可能な印刷装置に対して、「用紙の種類(印刷メディア)」に応じて印刷制御を変える技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタでは用紙の種類に応じて、さまざまな制御情報を持っており、印刷する際には、プリンタドライバを用いて使用する用紙の種類がユーザから指定され、指定された用紙の種類に応じた制御情報を基に印刷を制御する。
【0003】
インクジェットプリンタの多くには、上述した印刷制御情報の中に用紙送り量という項目を持っている。インクジェットプリンタはさまざまな用紙の種類に対応した印刷が要求されるが、それぞれの用紙の種類では紙厚や摩擦などが異なるため、用紙の種類ごとに送り量を調整させて印刷品質の精度を保つようにしている。このような用紙送り量の調整はプリンタ側でのみ保持していればよい情報のため、一般的にはプリンタの操作パネル上から変更が可能となっている。
【0004】
またメーカーが新たに保証する用紙の種類を追加するために、プリンタのファームウェアやプリンタドライバをアップグレードする場合があるが、このようなケースに対応するため、プリンタが保持している用紙の種類に関するすべての情報をプリンタドライバ側に持ってきて、プリンタドライバのアップデートを極力抑えるような方法が開示されている(特開2003−11467号公報)。
【特許文献1】特開2003−11467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の技術では、メーカーが保証するメディアが追加される場合、プリンタの操作パネルには新たなメディアは出てこないため、新たなメディアに対して用紙送り量のような印刷制御情報を変更し、印刷を行うためには、プリンタドライバのアップデートとプリンタのファームウェアのアップデートが必要であった。
【0006】
特開2003−11467ではこのような問題を鑑みて、プリンタドライバのアップデートを行わなくても、新たな用紙の種類に対応できるようにした技術であるが、ファームウェアについてはプリンタにアップデートすることが前提の技術であるため、ユーザが独自に用意したメディアに対しては効果がない。例えば、特定のメディアの画像処理方法で独自に用意した3種類のメディアに印刷を行いたい場合、メディアを変えるたびに印刷制御情報の設定も変更しなければならない。
【0007】
そのため本発明の目的は、ユーザが独自に用意した印刷メディアに対して、既存の印刷メディアの中から画像処理方法が近いものを選択させ、用紙送り量の調整を別のメディアとして設定できる手段を設けることで、論理的に用紙の種類を追加することが可能な印刷制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、用紙の種類を交換して印刷が可能であり、用紙の種類ごとに用紙送り量が設定可能であり、その用紙送り量と用紙の種類のマップが格納されているメモリ装置を備えた印刷装置が、操作パネル上から新しい用紙の種類を追加する用紙の種類登録手段と、前記用紙の種類登録手段により登録された用紙の種類をメモリ装置に格納するための用紙の種類格納手段と、印刷制御装置からの取得要求により前記用紙の種類格納手段により格納された用紙の種類を返信する用紙の種類返信手段と、通常の印刷データに加えて印刷制御装置から用紙送り量が送信されてきた場合、印刷装置に格納されている用紙送り量と用紙の種類のマップよりも印刷制御装置からの用紙送り量を優先して制御を行う印刷制御手段とを備えており、
印刷制御装置が、印刷装置に追加された用紙の種類を取得するために取得要求を送信し、返信を受け取り、別の用紙の種類としてユーザに提供するための用紙の種類列挙手段と、追加された用紙の種類を用いて印刷する場合、印刷装置から取得した画像処理に用いる用紙の種類と同じ画像処理方法により印刷データを作成し、印刷データに加えて印刷装置から取得した用紙送り量を印刷装置に送信する付加情報送信手段とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、既存の印刷メディアの中から画像処理方法が近いものを選択させ、用紙送り量の調整を別のメディアとして設定できる手段を設けることで、論理的に用紙の種類を追加することが可能となり、ファームウェア、プリンタドライバのアップデートなしにユーザが独自に用意した印刷メディアの印刷が行える印刷制御システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
図2は、本発明に係る印刷装置とそれに指示を行う印刷制御装置とを備えた印刷システムの構成例を示す図である。図示のように、プリンタ等の印刷装置がインターフェース回路を介してPCなどのホストコンピュータと接続されている。
【0012】
ホストコンピュータの構成はCPU、メモリ、HDD、ディスプレイ、キーボード、プリンタインターフェースなどを備えており、HDD内には印刷データを作成するプリンタドライバなどの印刷制御装置を有している。
【0013】
プリンタ等の印刷装置の構成はプリンタインターフェース、CPU、ROM、RAM、印字機構などを備えており、ROM内にはホストコンピュータからの印刷データを受信し、ヘッド、キャリッジ、インク供給などの印字機構を制御して最適な印刷を実現させる。
【0014】
図1は、本発明に係る印刷装置とそれに印刷指示を行う印刷制御装置の構成例を示すブロック構成図である。なお本例ではプリンタ、プリンタドライバとして説明をするが、これに限定されるものではない。
【0015】
ホストコンピュータ内のHDDが有しているプリンタドライバは、アプリケーションから図5のようなユーザインターフェースを開いて、シートにおけるボタン、コンボボックスなどの各種コントロールを用いて詳細設定を変更する。そして変更された印刷設定と、アプリケーションからの描画命令に基づいてラスタライズを行い、その後ユーザにより選択された用紙の種類によって色変換を行い、印刷データをプリンタへ送信する。このような一般的な印刷制御手段に加えて、図1のように用紙の種類列挙手段、付加情報送信手段を備えている。
【0016】
<用紙の種類列挙手段>
プリンタドライバは用紙の種類を列挙する必要がある場合(プリンタドライバのUIを開いた時など)、まずプリンタドライバ内で保持している(正式にサポートされている)用紙の種類をHDDから読み出して、リストに対して追加する。そして追加された用紙の種類を取得するために、インターフェース回路を介してプリンタに対して取得要求を行う。もし返信がある場合は、さらにリストに対して追加を行う。このリストはコンボボックス、リストボックスなどさまざまなリストが考えられるが、ここでは問わないものとする。
【0017】
<付加情報送信手段>
プリンタドライバが印刷データをプリンタへ送信する際、さまざまな制御情報を合わせて送信している。これはプリンタドライバ上で設定可能であるが、プリンタでも必要とする情報があることによる。例えばカッターの動作やインクの乾燥時間などがこれにあたる。本発明ではこれに加えて用紙の種類を識別するコードを送信するものとする。これは追加された用紙の種類かどうかをプリンタが判定するために用いられる。
【0018】
一方図1のようにプリンタ内のROMには、一般的な印刷処理を行うプログラムに加えて、印刷制御手段、用紙の種類登録手段、用紙の種類格納手段、用紙の種類返信手段を備えている。
【0019】
<印刷制御手段>
プリンタは、用紙の種類に応じた用紙送り量を保持しており、インターフェース回路を介してプリンタドライバから転送されてくる印刷データに基づいて、印刷イメージの作成を行い、指定された用紙の種類の用紙送り量に従ってキャリッジなどの印字機構を制御して所望の画像を印刷する。また本発明における印刷制御手段では、プリンタドライバから用紙送り量が送られる場合があるため、その場合はプリンタが保持しているよう仕送り量よりもプリンタドライバから送られる用紙送り量を優先させて印字機構を制御する。
【0020】
なお用紙送り量は、用紙の種類の特性(滑りやすさ)を基に設定されるパラメータであり、表面が滑りやすければ紙送り量を多くする補正が設定され、滑りにくければ紙送り量を少なくする補正が設定される。
【0021】
<用紙の種類登録手段>
この用紙送り量の設定は図3のようにプリンタの操作パネル上から設定することができ、パターン印刷した結果を見ながら、サポートしている用紙の種類ごとに用紙送り量を設定する。さらに本発明では図4のように、別のメニューから新しい用紙の種類を登録することが可能であり、新しい用紙の種類を追加するために必要な設定(例えば名称、画像処理に用いる用紙の種類、送り量など)をユーザが入力する。
【0022】
<用紙の種類格納手段>
操作パネル上で登録された用紙の種類について、プリンタ内の情報が記録されるメモリ(例えばフラッシュメモリなど)に対して書き込みを行う。
【0023】
<用紙の種類送信手段>
インターフェース回路を介してプリンタドライバから転送される取得要求により、プリンタが返信できる状態にあるときは、プリンタ内の情報が記録されるメモリ(例えばフラッシュメモリなど)から追加された用紙の種類を読み出し、転送元に対して返信する。このとき追加された用紙の種類が存在しない場合は、「なし」という意味を持った情報を返信する。
【0024】
以下、本実施形態の動作を説明する。
【0025】
<プリンタドライバの処理の流れ>
図6のプリンタドライバの処理におけるフローチャートに基づいて説明をする。
【0026】
プリンタドライバは、ユーザインターフェースが開かれたときにダイアログの初期化処理として、サポートしている用紙の種類をプリンタドライバ内部、もしくは外部ファイルから読み込んでリストを作成する。
【0027】
次にプリンタに追加された用紙の種類をリストするために、プリンタに対して取得要求を送信する。その後プリンタドライバは送信後一定時間の間ポーリングを行い、プリンタからの返信を待つ。プリンタはプリンタ内の情報が記録されるメモリ(例えばフラッシュメモリなど)から追加された用紙の種類を読み出し、追加された用紙の種類があればその情報を、なければ「なし」という情報をプリンタドライバに対して送信する。
【0028】
プリンタドライバはプリンタからの返信があった場合、取得した情報を調べて、追加された用紙の種類が存在するか確認する。もし存在するのであれば、追加された用紙の種類の属性(名称、画像処理方法、用紙送り量)と追加された用紙の種類ということを判別できる情報をリストに登録する。そしてユーザインターフェースに表示する際には、このリストに登録されている名称を用いる。
【0029】
実際に印刷を実行するときには、追加された用紙の種類かどうかを判別し、追加された用紙の種類である場合、プリンタに渡す用紙の種類を画像処理方法で使用する用紙の種類のIDとして、付加情報として用紙送り量を送信する。その後リストに登録されている画像処理方法で印刷データを作成して送信する。このときプリンタはプリンタドライバから送信された用紙送り量を優先させて、印刷制御を行う。
【0030】
<プリンタの処理の流れ>
図7のプリンタの処理におけるフローチャートに基づいて説明をする。
【0031】
プリンタは、ユーザにより図4のような用紙の種類を追加するメニューが選ばれると、用紙の種類の名称、画像処理に用いる用紙の種類、用紙の送り量を登録するようにユーザに対して促す。
【0032】
ユーザが登録すると登録した情報のチェックを行う。画像処理に用いる用紙の種類や用紙の送り量のように、ある選択肢からユーザが選択するような情報は問題ないが、用紙の種類の名称などユーザが任意に選択できる情報については、正常なデータかどうかを判定する必要があるためここで行う。
【0033】
すべてのデータが正常であれば、プリンタ内のメモリ装置(例えばフラッシュメモリ)に対して書き込みを行う。
【0034】
そしてプリンタドライバから追加された用紙の種類の取得要求を受信したときに、プリンタ内のメモリ装置(例えばフラッシュメモリ)から追加された用紙の種類1つ分のデータを読み出し、存在する場合は返信する用紙の種類リストに用紙の種類の名称、画像処理に用いる用紙の種類、用紙の送り量を追加する。この処理を追加された用紙の種類がなくなるまで繰り返す。追加された用紙の種類がない場合は「なし」とわかる情報を返信する用紙の種類リストに追加する。最後に作成した用紙の種類リストをプリンタドライバに対して返信する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック構成図である。
【図2】本発明に係る印刷装置とそれに印刷指示を行う印刷制御装置を備えたシステム構成の例である。
【図3】用紙送り量を設定するために、操作パネル上で表示するメニューの一例である。
【図4】用紙の種類を追加するために、操作パネル上で表示するメニューの一例である。
【図5】印刷設定を変更するために、ホストで表示するプリンタドライバのユーザインターフェースの一例である。
【図6】本発明に係るプリンタドライバにおける、用紙の種類を追加する手順のフローチャートである。
【図7】本発明に係るプリンタにおける、用紙の種類を追加する手順のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信媒体を介して用紙の種類の印刷処理が可能な印刷装置と印刷制御装置であって、
用紙の種類を交換して印刷が可能であり、用紙の種類ごとに用紙送り量が設定可能であり、その用紙送り量と用紙の種類のマップが格納されているメモリ装置を備えており、操作パネル上から新しい用紙の種類を追加する用紙の種類登録手段と、前記用紙の種類登録手段により登録された用紙の種類をメモリ装置に格納するための用紙の種類格納手段と、印刷制御装置からの取得要求により前記用紙の種類格納手段により格納された用紙の種類を返信する用紙の種類返信手段と、通常の印刷データに加えて印刷制御装置から用紙送り量が前記印刷制御装置から送信された場合、印刷装置に格納されている用紙送り量と用紙の種類のマップよりも前記印刷制御装置からの用紙送り量を優先して制御を行う印刷制御手段とを備えた印刷装置と、
前記印刷装置に追加された用紙の種類を取得するために取得要求を送信し、前記印刷装置からの返信を受け取り、別の用紙の種類としてユーザに提供するための用紙の種類列挙手段と、追加された用紙の種類を用いて印刷する場合、前記印刷装置から取得した画像処理に用いる用紙の種類と同じ画像処理方法により印刷データを作成し、印刷データに加えて前記印刷装置から取得した用紙送り量を前記印刷装置に送信する付加情報送信手段とを備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記印刷装置に装填されている用紙サイズを自動的に検知する用紙サイズ検知手段と、自動検知したユーザ定義用紙を印刷装置内の不揮発性メモリに登録するユーザ定義用紙登録手段と、ホストからのユーザ定義用紙に関する要求を受信するユーザ定義用紙コマンド受信手段と、ホストからの取得要求により登録されているユーザ定義用紙をホストへ送信するユーザ定義用紙送信手段とを備えた印刷装置と、
登録されているすべての用紙をユーザに提供するための用紙サイズ列挙手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記印刷装置が個人用ユーザ定義用紙登録手段と、個人用ユーザ定義用紙を印刷装置内のメモリ資源に登録する個人用ユーザ定義用紙格納手段とを備えたことを特徴とする、請求項1記載の印刷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−20593(P2009−20593A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181097(P2007−181097)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】