説明

印刷方法

【課題】ガラス基板やプラスチックフィルム等の可撓性基板上へ、高精細パターンを潰れの発生せず、平坦性を損なわずに形成する印刷方法を提供するものである。
【解決手段】インキ剥離性のフィルム基材上に、インキ液膜を塗工する工程と、該インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を得る工程と、必要な画像パターンを凹部とした凸版を該予備乾燥インキ膜に押し当て、該予備乾燥インキ膜から不必要な画像パターンを該凸版の凸部に転移させる工程と、該インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターン上に受像層を塗工する工程と、該受像層を予備乾燥し、予備乾燥受像層膜を得る工程と、該インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥受像層膜を、該予備乾燥インキ膜による画像パターン諸共、目的の被印刷基板表面上へ転写する工程と、を備えることを特徴とする印刷方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基板やプラスチックフィルムなどの可撓性基板上へ、高精細パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フラットパネルディスプレイは、省エネルギー、省スペース、可搬性等の点から据え置き型、壁掛け型、携帯型の表示装置として様々な用途に広く利用されている。
【0003】
特に、近年では、表示装置の軽量化、薄型化、耐衝撃性向上等の目的から、プラスチック基板を用いた可撓性を有するディスプレイが注目されている。
【0004】
しかしながら、従来のフラットパネルディスプレイは、何れもガラス基板を使用して製造した物であり、プラスチック基板上に製造することは難しかった。
【0005】
その理由は、フラットパネルディスプレイを構成する部材の加工には高温での加熱工程とフォトリソ工程とが含まれており、プラスチック類には適合しないためである。
【0006】
例えば、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造に於いては、感光性樹脂のパターニングにあたって、現像、洗浄、ベーキングなどの工程があり、熱や水分によるプラスチック基板の損傷や伸縮が生じる。
【0007】
又、液晶ディスプレイの駆動素子である薄膜トランジスタの製造工程では、シリコン半導体や絶縁膜の形成に300℃以上の高温工程を含み、プラスチック基板の損傷や伸縮を生じる。
【0008】
又、フォトリソ工程は、製膜、露光、現像、剥離を感光性材料ごとに行うが、プラスチック基板やフィルムは、ガラス基板より柔軟であるために、これら加工・工程を適正に実施するには、製造設備も大掛かりとなり、製造のコストが高くなる。
【0009】
以上のことから、フォトリソ工法以外の工法で、プラスチック基板上へ樹脂類を精密にパターニングする技術が求められていた。一つに印刷技術がある。
【0010】
プラスチック基板への印刷方法の一つとして、インクジェット法が検討されている。インクジェット法は、所定の部分にのみ所望の材料をパターニングできることから材料の利用効率が高く、版も使用しないことから、最も簡便なパターニング方法として期待されている。
【0011】
しかしながら、現状のインクジェットのインク液滴の直径は数十μmであり、着弾精度も数μm程度あるため、10μm程度のパターニングを形成する方法としては、採用することができない。
【0012】
又、インクジェット法を用いて精密なパターニングをするためには、あらかじめ基板上にフォトリソ工程により障壁を形成しなければならず、カラーフィルタのブラックマトリクスや印刷方式の薄膜トランジスタ配線などの10μm程度のパターニングを形成する方法としては、障壁という余分なパターン形成が含まれるので採用することができない。
【0013】
インクジェット法以外の方法としては、スクリーン印刷法が挙げられる。スクリーン印
刷法は、電子部品における配線や抵抗体、誘電体の印刷などで実用化されている。
【0014】
しかしながら、孔版印刷であることからインキはペースト状の高粘度のものに限られ、又、スクリーンメッシュの精細度から数十μm程度の厚膜の印刷法としては採用できても、10μm前後の薄さが要求されるパターンを形成する方法としては、採用できない。
【0015】
そこで、インクジェット法及びスクリーン印刷法以外の方法として、特許文献1に記載されているように、フィルムへ乾燥インキ膜を予め設けたいわゆるドライフィルムから、熱圧によりパターン除去した後、残ったパターンを基板に転写する転写方法が考案されている。
【0016】
しかしながら、フィルムからインキ層を転写する際に熱圧を用いるために、フィルムの膨張・収縮や版の変形、インキ層の溶融・軟化を伴うことから、数十mm程度の微小なパターンの再現性を得ることが困難である。又、熱圧を均一に与えるための装置も複雑になり、大画面への対応も困難となってしまう。
【0017】
又、特許文献2に記載するように、版胴に巻きつけたブランケット上にインキを塗工・予備乾燥してインキ膜を形成し、その後、画像パターンを凹部として形成された凸版をインキ膜に押圧することによりブランケット上に画像パターンを形成し、最後に、ブランケット上の画像パターンを被印刷基板上に転写し、被印刷基板上に画像パターンを形成する印刷方法が試みられている。この方法は、インキ膜厚を調整することが容易である。この印刷法ではインキ剥離性のブランケット上に画像パターンを形成することから、被印刷基板へのインキ転写性が良好である。又、薄膜での微細パターン形成が可能である。
【0018】
しかしながら、特許文献2の方法は、シリコーンゴム又はシリコーン樹脂から成るブランケット上でインキの予備乾燥を行う時に、ブランケット表面のインキ濡れ性や転写性が不安定になるという問題点を有していた。これはブランケットが版胴に固定されたまま乾燥を行うために均一な予備乾燥が困難であり、塗工されたインキ中の溶剤がブランケット内に吸収されてブランケットが膨潤していき、部分的な転写性や精度のバラつきができてしまうことが原因である。
【0019】
又、転写後のクリーニングやブランケットの乾燥による膨潤量の調整を転写毎に行う必要があるため、連続加工に不向きである。又、ブランケットが版胴に固定されているので、予めパターンが形成された基板上に転写する場合に、ブランケット上のパターンと基板上のマークとの位置合わせが困難である。
【0020】
一方、特許文献2の有する課題を鑑みて発明された特許文献3の方法は、巻き取りロールから供給されたインキ剥離性のフィルム基板上にインキ液膜を塗工して設け、該インキ液膜を予備乾燥して予備乾燥インキ膜を得た後、必要な画像部パターンを凹部とした凸版を該予備乾燥インキ膜に押し当て、非画像部を該凸版の凸部に転移させ、該インキ剥離性のフィルム基板上に残された画像パターンを目的の被印刷基板表面上へ転写するというものである。
【0021】
この方法では、インキ剥離性のフィルム基板の作製にあたり、フィルム基板表面の平滑性を維持したままフィルム基板表面の濡れ性を低くすることが可能であり、該インキ剥離性のフィルム基板を巻き出し装置から順次繰り出して常に新しいインキ剥離性のフィルム基板を印刷に使用することができるため、安定した連続印刷が可能で、再現性の高い高精細パターンを形成することができる。
【0022】
又、インキ剥離性のフィルム基板が光学的に透明であることで、インキ剥離性の基板表
面に残された画像パターンやアライメントマーク越しに、被印刷基板上の画像パターンやアライメントマークを確認することができることから、転写位置を正確に合わせこむことが容易となり再現性の高い高精細パターンを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開平9−90117号公報
【特許文献2】特開2001−56405号公報
【特許文献3】特開2008−105400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、特許文献3の方法は、インキ剥離性のフィルム基板上に残された予備乾燥インキ膜からなる画像パターンを、ローラーを用いて被印刷基板に押圧して転写する際に、転写されたパターンが所望の設計値よりも大きくなる「潰れ」と平坦性が低下するという問題点を有していた。
【0025】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、ガラス基板やプラスチックフィルム等の可撓性基板上へ、高精細パターンを「潰れ」と平坦性を損なわずに形成する印刷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の課題を解決するための請求項1に記載の発明は、インキ剥離性のフィルム基材上に、インキ液膜を塗工する工程と、該インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を得る工程と、必要な画像パターンを凹部とした凸版を該予備乾燥インキ膜に押し当て、該予備乾燥インキ膜から不必要な画像パターンを該凸版の凸部に転移させる工程と、該インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターン上に受像層を塗工する工程と、該受像層を予備乾燥し、予備乾燥受像層膜を得る工程と、該インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥受像層膜を、該予備乾燥インキ膜による画像パターン諸共、目的の被印刷基板表面上へ転写する工程と、を備えることを特徴とする印刷方法としたものである。
【0027】
請求項2に記載の発明は、前記インキ剥離性のフィルム基材は、フィルム基材上にシリコーン樹脂を積層して成ることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法としたものである。
【0028】
請求項3に記載の発明は、前記受像層が、ダイコーターを用いて塗布されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷方法としたものである。
【0029】
請求項4に記載の発明は、前記受像層の乾燥状態の厚さが、インキ液膜による画像パターンの乾燥状態の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の印刷方法としたものである。
【0030】
請求項5に記載の発明は、前記受像層の乾燥状態の厚さが、0.05μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の印刷方法としたものである。
【0031】
請求項6に記載の発明は、前記インキ液膜が、カラーフィルタのブラックマトリクスの形成に用いる黒色着色組成物であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の印刷方法としたものである。
【0032】
請求項7に記載の発明は、前記インキ液膜が、ダイコーターを用いて形成されることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の印刷方法としたものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、上述の特徴を有することから、下記に示す効果を奏する。
【0034】
すなわち、インキ剥離性のフィルム基板上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターン上に受像層を塗工し、該受像層膜を該予備乾燥インキ膜による画像パターン諸共目的の被印刷基板表面上へ転写することで、該予備乾燥インキ膜による画像パターンが受像層に支持されたまま転写されるため、画像パターンの潰れを生ずること無く平坦性の高い高精細パターンを形成することができる。
【0035】
又、インキ剥離性のフィルム基板を、支持基板上にシリコーン樹脂を積層して形成する場合は、支持基板表面の平滑性を維持したまま支持基板表面の濡れ性を低くすることが可能で、被印刷基板表面への転写性を高め、平坦性の高い高精細パターンを再現良く形成することができる。
【0036】
又、ダイコーターを用いて受像層を塗布した場合は、受像層膜をより均一に形成することができ、より平坦性の高いパターンを形成することができる。
【0037】
又、受像層の乾燥状態の厚さが、インキ膜による画像パターンの乾燥状態の厚さよりも大きい場合は、より平坦性の高いパターンを形成することができる。
【0038】
又、受像層の乾燥状態の厚さが、0.05μm以上10μm以下にした場合は、より平坦性の高いパターンを形成することができる。
【0039】
又、前記インキ液膜が、カラーフィルタのブラックマトリクスの形成に用いる黒色着色組成物である場合、より効率的に平坦性の高い受像層付きブラックマトリクス基板を形成することができる。
【0040】
又、ダイコーターを用いてインキ液膜を形成する場合、単一色のインキを均一に塗布することができ、より平坦性の高い高精細パターンを形成することができる。
【0041】
以上のことから、本発明によれば、ガラス基板やプラスチックフィルム等の可撓性基板上へ、平坦性が高く、画像パターンの潰れが無い高精細パターンを容易に低コストで製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係り、インキ液膜の形成にダイコーターを用いた場合の印刷方法を説明する工程図の一部である。
【図2】(d)〜(f)は本発明の一実施形態に係り、インキ液膜の形成にダイコーターを用いた場合の印刷方法を説明する工程図の残りの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明による印刷方法を、一実施形態に基づいて、図1を参照して説明する。
【0044】
図1(a)は、本発明の一実施形態である印刷方法における、インキ剥離性のフィルム基板1上のインキ剥離層12の上にインキ液膜2を塗工する工程を示し、図1(b)は、必要な画像パターンを凹部とした凸版4を予備乾燥インキ膜2に押し当てる工程を示し、
図1(c)は、必要な画像パターンを凹部とした凸版からインキ剥離性のフィルム基板1を剥離し、予備乾燥インキ膜2から不必要な画像パターンを該凸版4の凸部に転移させる工程を示し、図2(d)は、インキ剥離性のフィルム基板1上に残された画像パターン上に受像層6を塗工する工程を示し、図2(e)は、インキ剥離性のフィルム基板1上に残された予備乾燥受像層膜6を、目的の被印刷基板7へ押し当てる工程を示し、図2(f)は、目的の被印刷基板7からインキ剥離性のフィルム基板1を剥離し、インキ剥離性のフィルム基板1から、予備乾燥受像層膜6を、予備乾燥インキ膜2による画像パターン諸共、目的の被印刷基板7に転写する工程を示す。
【0045】
受像層を挿入すると「潰れ」が生じないのは、受像層がインキ膜パターンに印加される熱圧を吸収して、インキ膜パターンに加わる熱圧を緩和するからである。
【0046】
(フィルム基板上にインキ液膜を塗工する工程)
図1(a)に示すように、支持基板11にインキ剥離層12が積層されたインキ剥離性のフィルム基板1上に、ダイコーター3を用いてインキ液膜2を塗工する。
【0047】
インキ剥離性のフィルム基板には、プラスチック等の可撓性基板を支持基板として加工したものを使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースなどのフィルム、シートを用いることができる。さらに光透過性の基板を用いることにより、パターンの重ね合わせ時にアライメントを容易とすることができる。これら可撓性基板は、長尺の巻取りロールで供給され、ブランケットへ加工された後使用される。
【0048】
上記のインキ剥離性のフィルム基板には、シリコーンオイル、シリコーンワニスで代表される離型剤を塗っても良いし、あるいはシリコーンゴムの薄膜層を形成してもよい。
又、同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴムも利用され得るし、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、普通のゴムに混ぜて剥離性を出す等の使い方をしてもよい。これらシリコーン系の塗膜は通常フィルム基板との密着は低いが、熱硬化性又は紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して、よりフィルム基板との密着性の高い樹脂層を、アンカー層として予めフィルム基板上に設け、その上層に設けることもできる。
【0049】
具体的なシリコーンとしては、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化ふぇにるシリコーンオイル、或いはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体等、変性したものを用いることができる。
【0050】
シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、又はシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、或いは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせ等が用いられ、その他ゴム硬度を調節するためのポリシロキサンが適宜用いられる。
【0051】
又、インキ剥離性のフィルム基板は、上記支持基板に無機膜を設けた後、シランカップリング剤による表面処理を施したものを用いてもよい。
【0052】
シランカップリング剤としては、トリメトキシシラン類、トリエトキシシラン類等を用いることができる。このシランカップリング剤の一部位は、ビニル基、エポキシ基、アミ
ノ基、メタクリル基、メルカプト基等の有機化合物との反応性基を有するものから選ぶことができ、或いはアルキル基やその一部にフッ素原子が置換されたものやシロキサンが結合して、表面自由エネルギーの小さな表面を形成できる置換基が結合したものを用いることができる。前者の反応性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤で基板表面を処理した後、所定の表面自由エネルギーになるよう他のモノマー成分を塗工して、結合させることができる。反応性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を用いることができ、モノマーとして、スチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、ラウリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を用いることができる。又、反応性基を有さないシランカップリング剤としてはメチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等を用いることができる。但し、アルキル基に限定されるものではない。
【0053】
上記シランカップリング剤を上記支持基板に固定化する方法としては、シランカップリング剤に対する公知の表面処理方法を用いることができる。例えば、シランカップリング剤を水、酢酸水溶液、水−アルコール混合液、或いはアルコール溶液に希釈させた溶液を調製する。前記溶液を公知の塗工方法であるグラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター等を用いて基板表面に塗工し、次いで乾燥させることでシランカップリング剤を固定化できる。又、反応性基を有するシランカップリング剤を用いた場合は、次いで他のモノマー成分を同様に塗工して結合させることができる。
【0054】
上記シランカップリング剤を基板上に固定化するためには、予め基板上にSやT、ZrO若しくはこれらの複合膜が設けられていることが好ましい。これら無機酸化膜は既知の蒸着法やスパッタ法を用いて設けたものを用いることができる。
【0055】
又、上記無機酸化膜を設ける方法として、一般式M(OR)nで表される金属アルコシキド(MがSi、Ti、Al、Zr等の金属、RはCH、C等のアルキル基)を水、アルコールの共存下で加水分解反応及び縮重反応させて得られたゲル溶液を表面にコーティング後、加熱することで無機酸化物膜を設ける、いわゆるゾル−ゲル法を用いることができる。
【0056】
さらに、上記ゾル−ゲル法で用いる金属アルコキシド溶液中に予め上記シランカップリング剤を添加しておくこともできる。この場合、表面性改質に特に効果が得られる。
【0057】
このようにして得られるインキ剥離性のフィルム基板は、処理面へインキを滴下した際の接触角が、10°以上90°以下となるのが好ましく、より好ましくは20°以上70°以下である。この接触角が小さいと後工程でのインキ剥離性は低下してパターンの欠陥(再現性不良等)が発生しやすくなり、接触角が大きいとインキ液膜を形成する際にハジキが生じて、均一なインキ液膜を形成することが困難になる。
【0058】
インキ液膜の材料としては、画像パターン形成材料に溶媒を溶解又は分散させたものを用いることができる。例えば、カラーフィルタ層やブラックマトリクス等を本発明の製造方法により形成する場合、着色した顔料成分と樹脂成分を溶媒中に溶解、分散させることによりインキとする。
【0059】
ブラックマトリクスに用いられる黒色顔料としては、カーボンブラックやチタンブラッ
クが単独又は混合して用いられる。
【0060】
又、本発明により用いられるインキ液膜の材料は、カラーフィルタにおいて赤色、緑色、青色から成るカラーパターン(着色層)を形成する材料でも良く、その場合、顔料には、例えば、C.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、279、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214、C.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73、C.I. Pigment Green 7、10、36、37、C.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、80、C.I. Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらは要望の色相を得るために2種類以上混合して用いても構わない。
【0061】
又、上記有機顔料と組み合わせて、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、無機顔料を組み合わせて用いることもできる。無機顔料としては、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら、カドミウム等、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。さらに、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
【0062】
本発明のインキ液膜に用いることのできる透明樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、及びこれらを変性したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
本発明のインキ液膜に用いることのできる重合性モノマー及びオリゴマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)
アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で、又は2種類以上混合して用いることができる。
【0064】
本発明のインキ液膜を紫外線照射により硬化する場合に用いる光重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系化合物、1,2−オクタンジオン、1−〔4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、O−(アセチル)−N−〔1−フェニル−2−オキソ−2−(4’−メトキシ−ナフチル)エチリデン〕ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で、又は2種類以上混合して用いることができる。
【0065】
本発明のインキ液膜に用いることのできる溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で、又は2種類以上混合して用いることができる。
【0066】
上記に示したインキ剥離性のフィルム基板上へインキ液膜を形成する方法としては、インキの粘度や溶媒の乾燥性によって公知の塗工方法を用いることができる。すなわち、例
えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。中でも、ダイコート、は、広い範囲の粘度のインキについて均一なインキ液膜を形成することができる。
【0067】
(インキ液膜から予備乾燥インキ膜を得る工程)
次に、前記方法によりインキ剥離性のフィルム基板1上へ形成されたインキ液膜2を予備乾燥する。
【0068】
予備乾燥には自然乾燥、冷風・温風乾燥、マイクロ波、減圧乾燥等を用いることができ、又、紫外線、電子線等の放射線を用いることもできる。
【0069】
この予備乾燥は、前記インキ液膜の粘度又はチキソトロピー性、脆性を上げることを目的とするもので、インキ液膜の完全乾燥はさせないで、いわゆる半乾燥状態を作り出すものである。乾燥が不十分な場合は、後工程で凸版を押し当て剥離する際に、インキ液膜が断裂し不良が発生する。乾燥が行き過ぎた場合は、前記インキ液膜表面のタック性が無くなり、前記凸版にインキが転写されない。そのため、使用するインキの組成によって乾燥状態を調節する。
【0070】
所謂ドライフィルムと言われるppmオーダーの溶剤残留量では、乾燥が行き過ぎであり、インキが転写されない不具合や、凸版の押し付けによりインキ膜が部分的に剥離してゴミの原因になったりする不具合があるため、予備乾燥インキ膜の条件として不適である。
【0071】
(予備乾燥インキ膜から不要な画像パターンを凸版に転移させる工程)
次に、図1(b)(c)に示すように、必要な画像パターンを凹部とした凸版4に予備乾燥インキ膜2を押し当て、該凸版4からインキ剥離性のフィルム基板1を剥離し、予備乾燥インキ膜2から不必要な画像パターンを該凸版4の凸部に転移させる。
【0072】
凸版としては、無アルカリガラス等の低膨張ガラス表面に感光性樹脂を用いてマスクパターンを形成した後、既存のドライエッチング処理やウェットエッチング処理、若しくはサンドブラスト処理を用いて、2μmから30μmの版深を設けたものを用いることができる。
【0073】
又、凸版には、ナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン−ジエン共重合体等から成るものを用いることもできる。また、エチレン−プロピレン系、ブチル系、ウレタン系ゴム等のゴム製の版を用いることもできる。このような樹脂製の凸版は、既に凸版印刷やフレキソ印刷用に用いられており、予め作製した型に所定の樹脂を流し込んで版とする、或いは彫刻によっても作製することができるが、感光性樹脂を用いる方法がより高精度のものを作製できる。
【0074】
(画像パターン上に受像層を塗工する工程)
次に、図2(d)に示すように、インキ剥離性のフィルム基板1上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターン2上に、ダイコーター3’を用いて受像層6を塗工する
受像層6には公知の材料を用いることができるが、透明であること、インクの変色や褪色がないこと、諸耐性があることなどの性能が要求され、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル樹脂やアクリル共重合体樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂から1つ以上を適宜選択して用いる。
【0075】
又、受像層の密着性を高めるために、この樹脂に微粒子(フィラー)を含有させること
も有効である。フィラーとしては、無機微粒子では微粉末珪酸、有機微粒子ではアクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等から適宜選択して用いる。又、フィラーの添加量は、受像層100重量部に対し1〜10部が好ましい。
【0076】
又、受像層を紫外線照射により硬化する場合には、前記に記載の光重合開始剤を用いることができる。
【0077】
上記のような材料を用いて受像層を形成する際には、公知の塗工方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法、インクジェット法等が挙げられる。中でも、ダイコート、インクジェット法は、均一なインク液膜を形成することができるため好適な形成方法である。
【0078】
この際、インキ剥離性のフィルム基板上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターンは、受像層塗工に先立ち、加熱、或いは紫外線照射する等して完全に硬化していても良い。
【0079】
上記のようにして形成された受像層の乾燥状態の膜厚は0.05μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.05μm以上5μm以下である。0.05μm未満であると膜厚が薄く平坦化の効果が充分に得られなくなり、10μmを超えると膜厚が厚くなり、塗工膜厚精度が低下するため好ましくない。
【0080】
(受像層を予備乾燥する工程)
次に、前記方法によりインキ剥離性のフィルム基板上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターン2上ヘ形成された受像層膜6を予備乾燥する。
【0081】
受像層膜の予備乾燥には、(インキ液膜から予備乾燥インキ膜を得る工程)に記載の方法を用いることができる。
【0082】
(画像パターンを被印刷基板表面上へ転写する工程)
次に、図2(e)、(f)に示すように、目的の被印刷基板7上に予備乾燥受像層膜6を押し当て、該被印刷基板7からインキ剥離性のフィルム基板1を剥離し、受像層膜6を乾燥インキ膜による画像パターン2諸共該被印刷基板7に転移させる。
【0083】
被印刷基板には、ガラスやプラスチック板等を使用できるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース等のフィルムやシートも使用できる。耐熱性のものとしてはポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド等が好適である。又、無機フィラーを樹脂に添加して耐熱性を向上させた材料から成る基板でもよい。フィルム及びシートは、延伸フィルムでもよく、未延伸フィルムでもよく、又、可撓性基板には必要に応じてガスバリア層や平滑化層が印刷面又は他の面に積層されていてもよい。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明の一実施例を示すが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてこれに限定されるものではない。
【0085】
インキ剥離性のフィルム基板には、基板厚約100μmのシリコーン系離型ポリエステ
ルフィルム:K1504(東洋紡績(株)製)を300mm□に切り出したものを用いた。
【0086】
凸版には、200mm幅(パターン有効幅は150mm)のドライエッチングを用いて作製した版深25μmのガラス版を用いた。パターンは凸部20μm幅、凹部80μm幅の連続したストライプパターンと、4つの角に位置する200μm□内へ設けられたアライメントマークを設けた。
【0087】
被印刷基板には、フィルム厚120μm、300mm□の光透過性PET基板を用いた。
【0088】
遮光性黒色インキを、次の要領で調製した。
アクリルポリマーを10重量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、樹脂溶液Aを得た。
・樹脂溶液A 400重量部
・カーボンブラック 95重量部
・分散剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル) 4重量部
上記の組成の混合物を、3本ロールにて混練し、遮光性黒色ワニスを得た。
【0089】
得られた遮光性黒色ワニスに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、その粘度が5cpsになるように添加し遮光性黒色インキを得た。
【0090】
受像層溶液としては、下記組成にて調製した溶液を用いた。
[受像層溶液の組成]
・シリカ 2重量部
・アクリルポリマー 18重量部
・トルエン 80重量部
【0091】
まず、上記インキ剥離性のフィルム基板上に、200mm幅のヘッドを用いたダイコーターにより、塗工長さ200mm、乾燥状態の膜厚が0.8μmになるように上記遮光性黒色インキをコーティングした。
【0092】
次に、該インキ剥離性のフィルム基板上の該遮光性黒色インキ液膜を、40℃ホットプレート上で30秒乾燥し、予備乾燥インキ膜を得た。
【0093】
次に、該インキ剥離性のフィルム基板上の予備乾燥インキ膜を上記凸版に押し当て、その後剥離し、該インキ剥離性のフィルム基板上の予備乾燥インキ液膜の内、非画像パターン部のみ、すなわち、該凸版上の凸部に存在するインキ液膜のみを該凸版へ転移させた。
【0094】
次に、該インキ剥離性のフィルム基板上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターン上に、200mm幅のヘッドを用いたダイコーターにより、塗工長さ200mm、乾燥状態の受像層単独での膜厚が3.0μmになるように上記受像層溶液をコーティングした。
【0095】
次に、該インキ剥離性のフィルム基板上の受像層膜を、40℃ホットプレート上で30秒乾燥し、予備乾燥インキ膜を得た。
【0096】
次に、該インキ剥離性のフィルム基板上の予備乾燥受像層膜を上記被印刷基板に押し当て、その後剥離し、該インキ剥離性のフィルム基板上の予備乾燥受像層膜を、予備乾燥インキ膜による画像パターン諸共該被印刷基板へ転移させた。
【0097】
以上の工程を以って、受像層付きブラックマトリクスを作製した。画像パターンを観察したところ、潰れは観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の印刷方法は、プラスチックフィルム等の可撓性基板へ高精細パターンの薄膜印刷を安定して行うことができるので、カラーパターン、ブラックマトリクス、ホワイトマトリクス、スペーサー等のカラーフィルタ部材、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート絶縁膜、有機半導体材料等のトランジスタ部材、有機発光層等の有機EL素子の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0099】
1・・・インキ剥離性のフィルム基板
11・・・支持基板
12・・・インキ剥離層
2・・・インキ液膜
3・・・ダイコーター1
3’・・・ダイコーター2
4・・・凸版
5・・・ローラー1
5’・・・ローラー2
6・・・受像層
7・・・被印刷基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ剥離性のフィルム基材上に、インキ液膜を塗工する工程と、
該インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を得る工程と、
必要な画像パターンを凹部とした凸版を該予備乾燥インキ膜に押し当て、該予備乾燥インキ膜から不必要な画像パターンを該凸版の凸部に転移させる工程と、
該インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥インキ膜による画像パターン上に受像層を塗工する工程と、
該受像層を予備乾燥し、予備乾燥受像層膜を得る工程と、
該インキ剥離性のフィルム基材上に残された予備乾燥受像層膜を、該予備乾燥インキ膜による画像パターン諸共、目的の被印刷基板表面上へ転写する工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記インキ剥離性のフィルム基材は、フィルム基材上にシリコーン樹脂を積層して成ることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記受像層が、ダイコーターを用いて塗布されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記受像層の乾燥状態の厚さが、インキ液膜による画像パターンの乾燥状態の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記受像層の乾燥状態の厚さが、0.05μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記インキ液膜が、カラーフィルタのブラックマトリクスの形成に用いる黒色着色組成物であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の印刷方法。
【請求項7】
前記インキ液膜が、ダイコーターを用いて形成されることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−67046(P2013−67046A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205856(P2011−205856)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】