説明

印刷物の判別装置

【課題】医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される印刷物の有無、その数が非接触検査で判別できる印刷物の判別装置を提供する。
【解決手段】印刷物の材料は、磁性体を有する。又は、印刷物は、磁性インクで印刷される。検出部は、鉄心にコイルを巻いた構成のセンサーコイル10,11に、電圧を印加又は電流を供給することにより微少な交番磁界を発生させる。印刷物を内蔵した被検出物8が、センサーコイル10,11の付近を通過するとき、印刷物の磁気粒子が発生する磁界が交番磁界を乱して、センサーコイル10,11の状態を変化させる。センサーコイル10,11はこの変化に応じて出力信号を出力する。この出力信号が印刷物の枚数を示す特定信号と一致するとき、信号出力部は、認定信号を出力し、一致しないとき、警報信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の有無、その枚数を非接触検査で判別できる印刷物の判別装置に関する。更に、詳しくは、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される添付文書、能書、取扱説明書等の印刷物の有無、その枚数を非接触検査で判別できる印刷物の判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具等は、その用法、使用方法、及び取り扱い上の注意等の事項を記載した添付文書、能書、取扱説明書等の印刷物が、それらの商品に梱包される。これらの用法、使用方法、及び取り扱い上の注意等の事項を商品に添付することは、薬事法等の関係法律で、厳しく指定されている。従って、この印刷物は製品と一緒に梱包され、その欠品が生じることはあってはならない。
【0003】
ここで、本発明の明細書において、使用される単語の定義をする。医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具等を製品という。これらの製品の用法、使用方法、及び取り扱い上の注意等の事項を記載した添付文書、能書、取扱説明書等を印刷物という。これらの製品と印刷物を、内蔵する箱等の容器は、外装パッケージという。製品と印刷物が外装パッケージに内蔵されたものを商品という。
【0004】
医薬品メーカーの実務の観点から言うと、製造する商品の一つ一つの中身を間違いないように検査している。例えば、印刷物は予め所定の数を用意し、これと同じ数の製品と一緒に、外装パッケージの中に同封している。この動作は、基本的に自動で行われている。最後に印刷物が同封されるとき、用意された印刷物と外装パッケージの数が一致しなければならない。印刷物と外装パッケージの数が一つでもずれると、パッケージ化した全ての商品を一つずつ空けて検査し、重なった印刷物、欠品の商品を探し出している。
【0005】
この問題点を不服するために、次の方法が採用されている。商品に内蔵される印刷物の有無を、非接触で判別している。例えば、特許文献1に示したように、添付文書に強磁性体の磁気マークを印刷している。そして、外装体の外部から、この磁気マークからの漏れ磁束の有無を、磁界検出素子で検出している。磁界検出素子としては、ホール素子、磁気抵抗素子、ピックアップコイル、強磁性体磁気抵抗素子などが例示されている(特許文献1の第5欄第3、4行目を参考。)。
【0006】
特許文献1の記載によると、磁気マークは、バリウムフェライト又はストロンチウムフェライトを30〜90wt%含有し、保磁力が1000〜4000エルステッドで残留磁束密度が500〜3000ガウスである。特許文献2の場合は、磁性インクとしては、保持力が20000A/m以上32000A/m以下のものを利用している。この磁性インクは、電算機の入力用のものである。更に、特許文献3には、被検出物を帯電させて、静電容量変化を与えて欠品を検出する方法が開示されている。
【0007】
本発明の出願人等は、特許文献4、5の発明を行なって開示している。特許文献4,5の装置は、被検出物中の金属異物を検知するものである。具体的には、センサーコイルを用いて、微小な磁性体の検知に成功している。
【特許文献1】特許第2945411号
【特許文献2】特許公開2004−90611号公報
【特許文献3】特開昭54−2764号公報
【特許文献4】国際公開WO2003/027659号公報
【特許文献5】特許公開2005−188985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のこれらの方法では、印刷物の存在の有無を確認できたとしても、印刷物が1枚か2枚以上かの確認ができていない。特許文献4,5の異物検出装置においては、金属異物、つまり、磁性体を含めない被検査物がセンサーコイルを通過するとき、信号が出ない。しかし、印刷物のような常に磁性体を内蔵した被検査物が、センサーコイルを通過するとき、警報信号を発することになる。よって、磁性体を内蔵した印刷物用に、装置の改良が望まれる。
【0009】
更に、従来の金属探知機では、添付文書が入っていないか、1枚以上が入っているかの判別ができる。しかし、添付文書が1枚が入っているか、2枚以上が入っているかの違いは判別ができない。
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される印刷物の有無が非接触検査で判別できる印刷物の判別装置を提供する。
【0010】
本発明の他の目的は、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される印刷物の枚数が非接触検査で判別できる印刷物の欠品判別装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の印刷物の判別装置は、被検出物を搬送するための搬送路からなる搬送手段、並びに、前記搬送路の途中に設けられ、前記被検出物の中の磁性体の有無を検知するための検知部、及び、前記検知部から出力される検知信号を信号処理して前記磁性体の有無を判断し、前記判断の結果を示す出力信号を出力する信号処理部からなる検知手段からなり、
前記検知部は、コアに導線を巻いた構成のセンサーコイルを有し、前記センサーコイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少な交番磁界を発生させて、前記被検出物が、前記搬送手段によって搬送されて、前記センサーコイルの付近を通過するとき、前記磁性体が発生する磁界が前記交番磁界を乱して、前記センサーコイルの状態を変化させ、前記検知部は、前記変化に応じて前記検知信号を出力する金属物検出装置に関するものである。
【0012】
本発明の印刷物の判別装置は、
前記被検出物は、磁気粒子を含有するシート状の印刷物を内蔵し、
前記被検出物が、前記搬送手段によって搬送されて、前記センサーコイルの付近を通過するとき、前記磁気粒子が発生する磁界が前記交番磁界を乱して、前記センサーコイルの状態を変化させ、前記検知部は、前記変化に応じて前記検知信号を出力し、
前記検知信号は、予め測定され設定された前記検知信号と比較し、前記印刷物が所定枚数である特徴を示す第1特定信号と一致するとき、前記信号処理手段は、前記印刷物の枚数が認められた枚数であることを示す前記出力信号を出力し、
前記検知信号は、前記第1特定信号と一致しないとき、前記信号処理手段は、前記印刷物の枚数が認められない枚数であることを示す警報信号を出力する
ことを特徴とする。
【0013】
本発明の金属物検出装置は、被検出物を磁化するための磁石を有する磁化手段からなると良い。被検出物は、前記搬送路によって、前記磁化手段を通過するとき、磁石によって、磁気粒子が磁化され、又は、磁気粒子の磁力が強化されて、その後、センサーコイルへ搬送されると良い。
【0014】
また、本発明の金属物検出装置は、センサーコイルを通過する被検出物の位置を特定し、タイミング信号を出力するためのセンサー手段を有し、センサー手段から出力される前記タイミング信号は、前記信号処理手段に入力されると良い。
更に、第1特定信号は、前記印刷物が1枚であることを示す所定の波形であると良い。
印刷物は、紙、不織布であると良い。
印刷物は、磁気粒子を有する材料からなると良い。
前記印刷物は、磁気粒子を有するインクで印刷されたものであると良い。
【0015】
本発明の出願人は、「金属異物検知方法とその装置」に関する特許出願し、日本国特許第3857271号を取得している。この特許の内容が全て又はその一部が、本願発明にも含まれる。この特許の金属異物検知方法は、包装内の被検出物に製造する過程で混入した金属異物を検知するために、前記被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、前記搬送路の途中に設けられ、コアに導線を巻いた構成のコイルを有した検出部により磁界を発生させて、前記被検出物に混入した金属異物を検出するための金属異物検出工程とからなる金属異物検知方法において、一つの前記コイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させて、前記微少磁界に応答した前記金属異物からの検出磁界を前記コイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力する検出信号出力工程と、前記検出信号を解析して前記金属異物を特定するために信号を解析する信号解析工程とからなり、前記微少磁界は、前記コイルに印加される前記電圧又は供給される前記電流が微少で、かつ前記コイルを構成する前記コアの磁化(B−H)特性の内、前記磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものであり、前記電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数であり、前記金属異物が前記コイル付近を通過するとき、前記周波数が変化するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明は、医薬品、化粧品、食料品等に添付又は、それらの被梱包物と一緒に同封される印刷物の有無が非接触検査で判別できるようになった。
【0017】
本発明の判別装置は、非金属物である被検出物内の磁性体を感度よく検知できる。更に、アルミニウム等の導電性材料で包装された包装袋・容器を有する被検出物内の磁性体が検知できる。
本発明の判別装置は、アルミニウム等の導電性材料で包装された包装袋・容器を有する被検出物内の磁性体を有する印刷物の枚数を正確に検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態の判別装置1の概要を図示している。判別装置1は、被検出物8中の磁性体を検知、又は探知して通知するためのものである。判別装置1は、ベルトコンベヤ2、センサー格納部4、制御部5等から構成される。ベルトコンベヤ2は、脚つきのフレーム6に搭載されている。ベルトコンベヤ2は、被検出物8を搬送するためのものである。
【0019】
ベルトコンベヤ2は、フレーム6に設置された駆動用モータ3によってエンドレスのベルト9を回転駆動し、このベルト9の上に被検出物8を載せて搬送する。センサー格納部4は、被検出物8が搬送される搬送路中に配置されている。センサー格納部4は、ベルト9の長さ方向の中央あたりに配置されている。センサー格納部4内には、被検出物8中の磁性体を検知するためのセンサーが内蔵されている。このセンサーは、本実施の形態においては、第1センサー10、第2センサー11である。
【0020】
センサー格納部4から出力された検知信号は、制御部5に送られる。第1センサー10と第2センサー11は同一構造のものである(詳細な説明は後述する)。制御部5は、センサー格納部4から受信した検知信号を解析して、被検出物8中に磁性体があるか否かの判定を行なう。制御部5は、この判定の結果を通知(警告音、表示等)する。制御部5は、センサー格納部4から受信した検知信号を解析して、被検出物8中に所定の枚数の印刷物があるか否かの判定を行なう。
【0021】
光センサー7は、第1センサー10の近傍に設置される。本実施の形態においては、光センサー7は、第1センサー10の手前側に設置されている。被検出物8の搬送方向で見ると、光センサー7、第1センサー10、及び第2センサー11の順番で設置されている。被検出物8は、ベルトコンベヤ2で搬送されて、光センサー7、第1センサー10、及び第2センサー11の順番でそれぞれを通過する。
【0022】
光センサー7は、被検出物8が搬送されて、光センサー7を被検出物8が通過するタイミングを検知し、タイミング信号を出力する。光センサー7から出力されるタイミング信号は、制御部5へ送信される。駆動用モータ3を駆動させて、ベルトコンベヤ2のベルト9を回転駆動させる。被検出物8は、ベルトコンベヤ2の一端で、ベルト9の上に載せられ、ベルト9と一緒に流れて、ベルトコンベヤ2の他端へ搬送される。
【0023】
制御部5は、光センサー7から受信したタイミング信号を受信する。このタイミング信号を利用して、制御部5は、被検出物8が第1センサー10を通過するタイミングを計算する。そして、制御部5は、このタイミング信号を利用して、被検出物8が第1センサーコイル11をも通過するタイミングも計算する。
【0024】
制御部5は、被検出物8が第1センサー10と第2センサー11を通過する際の各センサーコイル10、11の検知信号を解析し、被検出物8に磁性体が含まれているか否かを判定する。磁性体が含まれている場合は、制御部5は、その旨の出力信号を出力する。制御部5は、被検出物8に所定枚数の印刷物が含まれているか否かを判定する。所定枚数の印刷物が磁性体が含まれている場合は、制御部5は、特に出力信号信号を出力しない。又は、制御部5は、動作が正常である旨の出力信号を出力すると良い。
【0025】
所定枚数の印刷物が磁性体が含まれていない場合は、又は、磁性体の検知ができていない場合は、制御部5は、警報を示す出力信号を出力する。この出力信号は、制御部5から、判別装置1に設けられているシグナルタワー12等へ送信される。このシグナルタワー12は、欠品を検出したとき、点滅したり、ブザーを鳴らしたりして、警報信号を発するものである。シグナルタワー12は、通常時、特定の色、例えば緑色で、で光っていて、警報信号を発するときに別色、例えば赤色、を発することもできる。シグナルタワー12は、正常な動作を示す出力信号を受信したとき、特定の色、例えば緑色で、で光っていることが好ましい。又は、シグナルタワー12は、通常時、光らないこともできる。
【0026】
シグナルタワー12は、警報信号を示す出力信号を受信したとき、別色、例えば赤色、を発することができる。または、この出力信号は、制御部5から、判別装置1に接続されている他の装置へ送られ、適切な措置がとられる。他の装置の例としては、例えば、製造ライン管理のコンピュータ、工場管理の制御コンピュータ、管理者のコンピュータ等が例示できる。適切な措置は、例えば、被検査物の再検査、製品の再パッケージ化、欠品の回収などが例示できる。
【0027】
図1に示すように、制御部5がセンサー格納部4の上に設置されている。制御部5は、必ずしもセンサー格納部4の近傍に設置される必要はなく、センサー格納部4からの検知信号を受け取り、処理できる環境であれば任意の場所で設置できる。また、駆動されているベルト9の速度を把握するためには、制御部5は、駆動用モータ3の回転速度等の信号を受信できる必要がある。
【0028】
また、光センサー7は、被検出物8が第1センサー10に入るときのタイミングを検出できるものであれば、公知の任意の形状、検出方式のものを用いることができる。
【0029】
図2は、商品である被検出物8の概念を示す概念図であり、印刷物51が外装パッケージ50の中に入っている様子を示す概念図である。図2に示すように、製品52が外装パッケージ50の中に入っている。外装パッケージ50と製品52は、例示として、四角形の箱形になっているが、任意の形状ものでも良い。印刷物51は、図示したように、外装パッケージ50の中に同封される。印刷物51は、図2に示すように外装パッケージ50の1面に沿って、外装パッケージ50と製品52の間に入るように同封されている。
【0030】
印刷物51は、図3(a)に例示したように、長方形の印刷物である。印刷物51の素材は、紙、不織布等であることができる。印刷物51の素材は、磁性体又は磁気粒子を混入した素材である。更に、磁性体又は磁気粒子を有しない素材の印刷物51は、磁気インクで印刷されたものである。この磁気インクは、通常の印刷用のインクに磁性体又は磁気粒子を混入したものである。具体的には、磁気インクは、磁性微粒子を使用した残留磁気の残るインクである。
【0031】
印刷物51は、そのサイズが外装パッケージ50に同封できれる大きさであれば、そのまま外装パッケージに入れる。また、印刷物51を適当枚数に折って、外装パッケージ50に入れる。例えば、図3(b)には、印刷物51を折りたたむ様子を示した例を図示している。図3(b)は、印刷物51を、その真ん中の点線で、矢印の方向で、1つ折している様子を示している。図3(c)は、印刷物51を、2本の点線で2つ折している様子を示している。このように、印刷物51を1つ以上折りたたみ、外装パッケージ50に入れる。
【0032】
印刷物51は、図2に示すように外装パッケージ50の1内面に沿って、外装パッケージ50と製品52の間に挟むようにして同封されている。この様子を図4(a)に示している。また、図4(b)に示した印刷物51は、外装パッケージ50の2面に沿って、外装パッケージ50と製品52の間に挟むように同封されている。更に、図4(c)に示した印刷物51は、外装パッケージ50の3面に沿って、外装パッケージ50と製品52の間に入るように同封されている。言い換えると、図4(c)に示した印刷物51は、製品52を包むように配置されている。
【0033】
〔センサーコイル〕
図1に図示したよう様に、第1センサー10、第2センサー11は、センサーコイルである。更に詳細には、第1センサー10は、センサーコイル10a、10bからなる。第2センサー11は、センサーコイル11a、11bからなる。第1センサー10は、ベルト9を挟んで上下に配置されたセンサーコイル10aとセンサーコイル10bから構成される。同様に、第2センサー11は、ベルト9を挟んで上下に配置されたセンサーコイル11aとセンサーコイル11bから構成されている。これらのセンサーコイル10a,10b,11a及び11bは、実質的に同一構造であるので、センサーコイル10aのみを例示して説明する。
【0034】
図5には、第1センサー10aの構造を図示している。図5(a)はセンサーコイル10aの正面図、図5(b)は図5(a)のセンサーコイル10aの平面図、及び図5(c)は図5(a)のA−A線の切断断面図である。各センサーコイル10a、10b、11a、及び11bは、図5(a)に示すように細長い棒状の形をした基本的に同一のものである。センサーコイル10aは、細長い棒状の形状をし、断面構造がE字形である導電性材料の鉄心12の溝部に沿って、コイル13を巻き付けた構成である。鉄心12は、珪素鋼板やアモルファスなどの板を積層して構成される。あるいは、フェライトコア、永久磁石などを使っても良い。
【0035】
図1に示すように、第1センサー10の手前に設置されている光センサー7は、被検出物8が第1センサー10を通過するタイミングを特定するのに必要である。第2センサー11に被検出物が入力されるタイミングは、第1センサー10を通過した時間、第1センサー10と第2センサー11との距離、そして、ベルト9の搬送速度をもって計算できる。ベルト9の搬送速度は、駆動用モータ3の回転速度から計算できる。ベルト9の搬送速度は、ベルト9の付近に設置したセンサー(図示せず。)で、測定して計算できる。
【0036】
これらの計算は、周知の技術でかつ本発明の要旨ではないのでその説明は略する。センサーコイル10a、11aは、ベルト9上を流れている被検出物8の上の部分を検出するためのものであり、被検出物8が通過するためにベルト9の上に一定の隙間を置いて設置されている。センサーコイル10b、11bは、被検出物8の下部を検出するためのものであり、ベルト9の下に設置されている。被検査物8の形状及び幅に応じて、第1センサー10、第2センサー11の高さ、被検査物8が通過するベルト9との隙間を調整できる。
【0037】
〔ブースター〕
ブースター13は、被検出物8の中の磁性体を磁化するための永久磁石である。ブースター13は、センサー格納部4の手前に設置される。被検出物8の搬送方向で見ると、ブースター13、光センサー7、第1センサー10、第2センサー11の順番で、ベルト9に沿ったほぼ同一直線上にそれぞれ設置されている。被検出物8は、ベルトコンベヤ2で搬送されて、ブースター8、光センサー7、第1センサー10、及び第2センサー11の順番でそれぞれを通過する。
【0038】
ブースター13は、1以上の永久磁石14から構成される。例えば、図示したように、2個の磁石を有し、1つの磁石は、ベルト9の上側、他の1つの磁石はベルト9の下側に設定されている。ベルト9の上側に設置された磁石14と、ベルト9の下側に設定された磁石14は、被検出物8へ同じ磁極向けて配置される。
【0039】
言い換えると、ベルト9の上側に設置された磁石14は、N極を被検出物8へ向けて配置され、ベルト9の下側に設置された磁石14は、同じくN極を被検出物8へ向けて配置される。この磁極の向きは、被検出物8の種類、大きさ等によって最適化されるものであり、上述の配置のみに限定されるものではない。ブースター13は、1個の磁石を有し、それが、ベルト9の上側、又はベルト9の下側に設定されても良い。
【0040】
センサーコイル10aに交流電流を流すと、センサーコイル10aに交番磁界が発生する。センサーコイル10aの近傍に微小な磁性体が接近する。この磁性体から発生する磁束が、センサーコイル10aの交番磁界を横切り、センサーコイル10aの交番磁界を変化させる。この変化は、センサーコイル10aを含む検知回路で検知する。特に、センサーコイル10aの極近傍でこの効果が大きく現れるので、センサーコイル10aで磁性体を確実に検出することが可能となる。
【0041】
磁性体、例えば鉄、ニッケル、コバルトの混入物、及びこれらの合金、マルテンサイト系ステンレス、についても同様で、検出感度が従来より著しく向上する。永久磁石14にネオジム磁石等を用いることで、永久磁石14の磁界が磁性体に影響を及ぼす範囲を大きく拡大でき、センサー検出距離を大幅に伸ばすことが可能となる。被検査物8の形状及び幅に応じて、ブースター13の高さ、被検査物8が通過するベルト9との隙間を調整できる。
【0042】
永久磁石14の静磁界の働きにより磁性体を磁化し磁極を生じさせて、又は磁力を増大させる。この磁性体は、センサーコイル10aの交番磁界へ影響を与え、これを検知回路で検知する。また、永久磁石14は、ネオジム磁石、ネオジム磁石からできている複数の磁石要素から構成されても良い。
【0043】
〔センサーコイルの配置〕
図6には、ベルト9上にセンサーコイル10、11を配置した様子を示す概念図である。第1センサー10と第2センサー11は、ベルト9に沿って所定距離(例えば、L)離れて設置されている。センサーコイル10とセンサーコイル11は、所定の角度θを成して配置されている。又、第1センサー10、第2センサー11の長手方向の中心線は、ベルト9の搬送方向と垂直な面に、それぞれ角度α、βを成し、ベルト9の面と平行に設けられている。センサーコイル10はベルト9の搬送方向、被検出物8の搬送される方向の直行する方向に対して角度αをなすように配置されている。
【0044】
センサーコイル11はベルト9の搬送方向、被検出物8の搬送される方向の直行する方向に対して角度βをなすように配置されている。角度α、βは、搬送される方向に直行する方向との時計回り角度としている。図6に示したとおりでは、角度αは正、角度βは負の値を取っている。以下、搬送される方向に直行する方向との角度を正の値として計算を行う。角度α、βの値が0のとき、第1センサー10、第2センサー11は、ベルト9の搬送方向に直角に配置される。
【0045】
距離Lは、第1センサー10と第2センサー11との間の距離であり、第1センサー10の中心点と、第2センサー11の中心点との間の距離を示す。又は、距離Lは、図中に点線で示したベルト9の幅の中心線上の距離でもある。通常は、本実施の形態に示すとおり、第1センサー10と第2センサー11は、ベルト9の中心線上に、その中心点が配置される。被検出物8は、ベルト9の上の載せられて搬送されるとき、被検出物8の中心線がベルト9の中心線上に位置するように乗せられる。
【0046】
しかし、被検出物8の中心線がベルト9の中心線から外れたとき、これを図中に距離xで示している。そして、本実施の形態のベルトコンベヤ9は、被検査物8が第1センサー10、第2センサー11の所定の部分を常に通るように、ガイド18が配置されている。例えば、被検出物8の中心線が、ベルト9の中心線から離れた距離xを通るように、ガイド18を設けている。更に、被検査物8がベルト9の中心線を常に通るように、ガイド18を設ける。
【0047】
センサーコイル10とセンサーコイル11との角度θ、α、βの内、2つの角度がわかれば 残りの角度は計算することができる(下記の式3を参考)。距離L、角度α、βが分かれば、被検出物8がベルト9の中心ラインから離れている距離xを計算できる。距離xは、次の式によって計算できる。
【0048】
z=Vb×(t2−t1) (式1)
x=(L−z)/(tanα−tanβ) (式2)
θ=α−β (式3)
α≠β (式4)
ここでは、Vbはベルトの搬送速度、t1、t2はそれぞれセンサーコイル10、11で被検出物8を検知した時間、Lはセンサーコイル10,11の間隔である。t1はセンサーコイル10で異物を検知した時間で、t2はセンサーコイル11で被検出物8を検知した時間である。ただし、t1とt2は、異物を検知した実時間で又は相対時間であってもよい。
【0049】
仮に、センサーコイル10とセンサーコイル11が平行に配置されると、式1、2から計算されるようにL=zとなり、xは0になる。よって、異物の位置を特定できなくなる。このように、異物の検知時間を持って、異物の位置を特定するときは、センサーコイル10とセンサーコイル11を平行にならないように配置することが好ましい。最初から、ガイド18等を利用して、被検出物8の位置が分かる場合は、センサーコイル10とセンサーコイル11を平行に配置しても良い。
【0050】
〔制御部5の構成について〕
図7には、制御部5の概要を図示している。制御部5は、発振回路21、ブリッジ回路22、アルミ信号消去回路23、増幅/位相変換回路24、増幅/位相反転回路25、波形処理部26、ディジタルコンピュータ処理部27、信号出力部28などから構成されている。発振回路21は、制御部5、第1センサー10、及び第2センサー11への交流電流を供給するための回路である。これは、トランスを介して交流電流の供給を行う。トランスを用いることによって、電源回路と、センサーコイル10,11、ブリッジ回路22を含む測定部分が独立の回路と見なせる利点がある。
【0051】
ブリッジ回路22は、第1センサー10、及び第2センサー11からの信号を受信する回路である。ブリッジ回路22からの信号に含まれる導電材料である包装体からの信号をアルミ信号消去回路23で消去する。このとき、増幅/位相反転回路25の信号を用いて次のように行われる。増幅/位相反転回路25は、発振回路21の電流から取り出して増幅し、位相反転させる。アルミ信号消去回路23は、ブリッジ回路22からの信号(検出電流)と増幅/位相反転回路25からの位相反転電流との和をとり、交流電源の信号(元の電流)を消去する。
【0052】
そして、アルミ信号消去回路23は、一定のしきい値以上の信号だけを取り出して、雑音信号と分離する。アルミ信号消去回路23から出力される信号を増幅/位相変換回路24で増幅して、位相変換調整処理を行って波形処理部26へ出力する。波形処理部26では、入力された信号の波形整形をし、ディジタル信号に変換して、受信感度の調整を行って、ディジタルコンピュータ処理部27へ出力する。アルミ信号消去回路23で設けているしきい値処理は、波形処理部26の中で行っても良い。このときは、ディジタル信号に変換された信号のしきい値処理となる。
【0053】
ディジタルコンピュータ処理部27は、メモリ回路、演算回路、振幅比較/信号抽出回路、ベルト速度タイミング回路等から構成されると良い。ディジタルコンピュータ処理部27は、駆動用モータ3からモータの回転速度の情報を受取り、ベルト9の流れる速度を計算する。また、ディジタルコンピュータ処理部27は、光センサー7から被検出物8のタイミング信号を受け取り、被検出物8が第1センサー10,第2センサー11を通過する情報を得る。
【0054】
よって、ディジタルコンピュータ処理部27は、波形処理部26からのディジタル信号を受信し、上記のベルト速度、被検出物8の通過信号等と合わせて、被検出物8中に含まれる磁性体(印刷物51)を検知する。ディジタルコンピュータ処理部27では、磁性体が検知されたと判断された場合は、信号出力部28に出力信号を出力する。
【0055】
〔制御部5の例〕
図8には、判別装置1の制御部5の例を示す概念図である。図8(a)、 (b)に図示したように、制御部5は、入出力インターフェースとしてタッチパネル130を有している。また、検出感度の設定するレベルメータ 131、検出の開始を示すスタートボタン132、検出の停止を示すストップボタン133を有している。スタートボタン132でベルトコンベヤの運転開始、ストップボタン133でベルトコンベヤの運転停止を行なう。図8 (b)に図示したように、制御部5は、入力インターフェースとしてキーボード 134を有する。
【0056】
〔ディジタルコンピュータ処理部27の概要〕
図9は、ディジタルコンピュータ処理部27の概要を示すブロック図である。ディジタルコンピュータ処理部27は、メモリ111、中央処理ユニット(CPU)112、入力インターフェース113、インターフェース114、出力インターフェース115、入力装置116、ディスプレイ117等を備えた、信号処理ユニットである。メモリ111、CPU112、入力インターフェース113、出力インターフェース115は、バス110で互いに接続されて、このバス110を経由したデータの送受信を行う。メモリ111は、ROM、RAM等の記憶装置である。
【0057】
CPU112は、ディジタルコンピュータ処理部27の動作を制御するもので、メモリ111に格納された計算プログラムによって、ディジタルコンピュータ処理部27の動作を制御する。入力装置116は、入力インターフェース113に接続される。入力装置116は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスである。この入力装置116を判別装置1の管理者等が操作して、判別装置1の初期化、設定を行うことができる。管理者等は、入力装置116から、計算プログラム用のデータの入力もできる。
【0058】
計算プログラムは、メモリ111に格納される。計算プログラムは、メモリ111のROMに格納される。又は、計算プログラムは、補助記憶装置(図示せず。)に格納されている。この場合は、計算プログラムは、補助記憶装置から呼び出されて、メモリ111に展開されて、動作する。ディジタルコンピュータ処理部27は、光センサー7を接続するためのインターフェース114を有する。光センサー7は、インターフェース114に接続される。ディジタルコンピュータ処理部27は、光センサー7から出力される信号を受信して、これを処理する。
【0059】
ディジタルコンピュータ処理部27は、表示装置を接続するための出力インターフェース115を有する。出力インターフェース115には、例えば、ディスプレイ117等の表示装置が接続される。ディジタルコンピュータ処理部27は、外部機器119、信号出力部28等を接続するためのインターフェース118を有する。信号出力部28は、ディジタルコンピュータ処理部27の出力信号を適当なデバイス、装置に送信する。例えば、信号タワー12に送信する。また、ディジタルコンピュータ処理部27は、インターフェース118によって、外部機器119としてのモータ3に接続され、モータ3の動作に関するデータを受信することができる。
【0060】
〔磁性体の検知〕
図10は、ディジタルコンピュータ処理部27が磁性体を検知するときのフローチャートである。ディジタルコンピュータ処理部27では、磁性体の判定が行なわれる。この判定は、ディジタルコンピュータ処理部27が光センサー7のセンシング信号を受け取ってから行われる。ディジタルコンピュータ処理部27は、まず、ベルト9の速度Vb、第1センサーの配置角度α、第2センサーの配置角度β、そして、第1センサー10と第2センサー11の距離Lを取得し、メモリに保存する(ステップ10ないし16)。
【0061】
これらの値は、判別装置1のパネル5から入力されて、メモリに保存されることができる(ステップ10ないし16)。判別装置1の管理者等は、速度Vb、第1センサーの配置角度α、第2センサーの配置角度β、そして、第1センサー10と第2センサー11の距離Lを、パネル5の入力インターフェースから入力する。ディジタルコンピュータ処理部27は、この入力された値を計算に用いる。ディジタルコンピュータ処理部27は、一定時間の間待機し経過したら(ステップ18)、光センサー7からのタイミング信号があるかを否かを確認する(ステップ20)。被検出物8が、光センサー7を通過する際に(図1参照)、光センサー7は、被検出物8が通過中のタイミング信号を制御部5へ出力する。このタイミング信号をディジタルコンピュータ処理部27が受信する。
【0062】
ディジタルコンピュータ処理部27は、タイミング信号を解析して、被検出物8が通過中の判定が出ると(ステップ20、はい)、駆動用モータ3の回転速度を受信する(ステップ21)。この回転速度を用いて、ベルト9の搬送速度を計算する。その後、波形処理部26からの第1センサー10の検知信号を受信し、メモリ領域に格納する(ステップ22)。そして、第1センサー10の検知信号を受信した時刻t1を取得して、メモリ領域に格納する(ステップ24)。そして、同様に、第2センサー11の検知信号を受信し、メモリ領域に格納する(28)。そして、第2センサー11の検知信号を受信した時刻t2を取得して、メモリ領域に格納する(ステップ30)。
【0063】
そして、これらの値から、磁性体の検知の間隔z、磁性体の位置xの計算を行う(ステップ32、34)。メモリ領域に格納されている、第1センサー10と第2センサー11の検知信号を比較計算する(ステップ36)、被検出物8中に磁性体が、予め設定した印刷物51であるか否かを判定する(ステップ40)。判定の結果、印刷物51が無いと判断された場合、又は、印刷物51が予め設定された枚数ではないと判断された場合(ステップ40,いいえ)、警報信号を含む出力信号を出力する(ステップ50)。判定の結果、印刷物51が予め設定された枚数であると判断された場合は(ステップ40,はい)は、正常である旨の出力信号を出力する(ステップ42)。このような手順で、一連の印刷物51の判定が行なわれる。
【0064】
〔全体の工程〕
印刷物51は、次の手順で商品に同封する。まず、素材に文書を印刷して、所定大きさの印刷物51を用意する。印刷物51を、折りたたみ、外装パッケージに入れる大きさの印刷物51を用意する。印刷物51を所定の枚数用意する。製品52及びその外装パッケージ50を印刷物51と同じ枚数用意する。印刷物51を外装パッケージ50に入れて、その後、製品52を外装パッケージ50に入れる。又は、製品52を外装パッケージ50に入れて、その後、印刷物51を外装パッケージ50の中に入れる。又は、印刷物51を製品52と重ねる。重なった印刷物51と製品52を外装パッケージ50に入れる。
【0065】
外装パッケージ50を閉じ、封印等の作業を行ない、商品が出来上がる。その後、商品の検査を行なう。このとき、外装パッケージ50内に印刷物51が入っているか否かの検査を行なう。外装パッケージ50内に印刷物51が入っている場合は、その数を確認する。また、外装パッケージ50の外装検査等を行なう。所定の枚数の印刷物51、製品52、外装パッケージ50が終わるまでにこのプロセスを継続する。印刷物51、製品52、外装パッケージ50は、同じ枚数であるので、同時に終わる。もし、印刷物51又は/及び製品52が外装パッケージ50の枚数に足りない場合は、外装パッケージ50に同一の印刷物51又は/及び製品52が入ったことを意味する。
【0066】
また、印刷物51又は/及び製品52が、外装パッケージ50の枚数より多い場合は、外装パッケージ50に印刷物51又は/及び製品52が入っていないことになる。この場合は、全商品から不良品の商品を探し出さなければならない。ここでは、本実施の形態の判別装置1は、商品に印刷物51が入っていない場合、又は2枚以上入っている場合は、即、警報信号を出力し、その場で対応することができる。従来のように、全ての商品の外装パッケージ50をあけ、再検査することはなくなり、製造効率を大幅に短縮できる。従って、コスト安にもつながる。
【0067】
本実施の形態の判別装置1は、判定基準の信号を測定して、保存する。この信号は、比較信号として、メモリ111又は補助記憶装置(図示せず。)に保存される。比較信号には、判別装置1を利用するときに、考えられる次の種類の第1〜4信号がある。まず、第1信号は、商品をベルトで流さないで、空のまま検知した信号である。第2〜4信号は、商品をベルトで流して検知した信号である。第2信号は、印刷物がない商品をベルトで流して検知した信号である。第3信号は、印刷物が1枚入った商品をベルトで流して検知した信号である。
【0068】
第4信号は、印刷物が2枚入った商品をベルトで流して検知した信号である。このように、第1〜4信号をあらかじめ測定し、判定基準をこれらの信号に設定する。比較信号は、この4種類の信号に限定されない。後述の実験の結果は、図12及び図13に示すとおり、これらの信号は、互いに、はっきりと異なっている。ディジタルコンピュータ処理部27は、測定信号を、これらの判定基準の信号と比較する。特に、測定信号が第1、2、4信号と合致する場合、ディジタルコンピュータ処理部27は、警報信号を示す出力信号を出力する。
【0069】
測定信号が第3信号のみと合致する場合、ディジタルコンピュータ処理部27は、正常を示す出力信号を出力する。また、測定信号が第1〜4信号のいずれにも合致しない場合、ディジタルコンピュータ処理部27は、警報信号を示す出力信号を出力する。ディジタルコンピュータ処理部27は、測定信号と第1〜4信号の合致を判定する場合は、測定信号の波形と第1〜4信号の波形を比較する。測定信号の波形は、第1〜4信号の波形のいずれかと完全に合致することが理想的である。
【0070】
しかし、測定時には、周囲の雑音、装置の振動等の影響があり、測定信号の波形は、第1〜4信号の波形のいずれかとどの程度に一致するかで判定を行う。測定信号の波形が第1〜4信号の波形のいずれか合致するとの判定は、波形の中の特定の特徴を持って判定する。例えば、第1〜4信号の何れかの波形と、測定信号の波形の形状が60%以上、好ましくは80%以上、が一致するとき、両波形が合致すると判定する。
【0071】
特定の特徴としては、信号に含まれる特定の1以上周波数の波長、信号の振幅の大きさ、信号のスペクトルの幅、信号のスペクトルの半値幅、信号の波形の幅等を例示できる。測定信号の波形は、信号の電圧又は電流の時間的変化を計ったものである。例えば、図12、13には、第1〜4信号の波形を示している。これは、通常のオシロスコープで表示される電圧の波形である。本実施の形態では、測定信号の波形の形状は、第1〜4信号の波形のどれに似ているかで、判定を行なっている(この判定の仕方の例について、実施例1の中で詳しく記述している。)。このように、制御部5の回路構成、判別閾値を変更することにより、印刷物の数をチェックすることができる。
【0072】
このように、制御部5の計算プログラムを変更して、印刷物の枚数をチェックすることができる。更に、印刷物が第1センサー及び又は第2センサーを通過するときの速度と角度が変ると、検出できる信号の大きさや波形が変化することがある。この場合は、予め設定している比較信号と合わなくなる場合がある。これを克服するために、品物を一定の位置で流すためのガイド18をコンベヤに設置する。このガイド18の設置によって、品物が常に一定の位置でセンサーを通過する。
【0073】
センサーコイル10,11は、それぞれ2個のセンサーコイル(10a、10b、11a、11b)から構成されている。これは、被検出物の上部と下部を感度良く検出するために、このような構成にしている。基本的に、センサーコイル10,11は、それぞれ1個のセンサーコイルから構成されている。本実施の形態では、センサーコイル10とセンサーコイル11を用いて、被検出物8を2回検出している。これは、センサーコイル10又はセンサーコイル11からなる1つのセンサーで、被検出物8を検出するより高信頼度の検知を行なうためである。
【0074】
その理由は、判別装置1の周囲の雑音などを排除するためである。言い換えると、センサーコイル10とセンサーコイル11の両方で、被検出物8を測定して、同じ信号であれば、被検出物8の測定が正しく行われたものと判断する。センサーコイル10とセンサーコイル11の両方で検知しているにもかかわらず、片方のみから検知信号出力された場合、これは、雑音の検出又は、装置の誤動作である可能性が大きい。ただし、センサーコイル10又はセンサーコイル11の何れかの1個のみで検知が可能である。原理的には、1個のセンサーコイルのみ、例えばセンサーコイル10aの1個のみ、で検知が可能である。
【0075】
ベルトコンベヤの搬送速度、判定基準の閾値(感度のレベルとも言う。)は、判定の大きく影響する。しかし、これは、製品、商品の種類、その大きさなどによって、判別装置1が設置される現場で最適に調整されるものである。また、判別装置1が設置される現場の周囲の、装置等から発生する電磁波、機械的振動等による雑音も、判定に影響する。その現場の温度変化等の環境変化も、判定に影響する。これら外部的影響は、判別装置1が設置される現場で、そのベルトコンベヤの搬送速度、判定基準の閾値を変更することで対応可能である。
【0076】
本実施の形態の判別装置1は、被検出物8は、アルミニウムで包装されたものでも、その中の磁性体を良好に検出できる。この判別装置1は、センサーコイル10,11から微小な磁界を発生させており、被検出物8中の磁性体から発生する磁束が、センサーコイル10,11の磁界を乱している。この磁界の変化は、センサーコイル10,11の出力電流又は電圧を変化させている。このため、従来検知できなかった、アルミニウム等の導電性材料で包装された、磁性体を検知できる。磁性体の大きさは、微小なものでも検知できる。
【0077】
本実施の形態の判別装置1は、図6示すように、1個の被検出物8をベルトコンベヤ2で運んで検知している。また、この判別装置1は、2個以上の被検出物8を1列に並べてベルトコンベヤ2で運んで検知できる。上述の通り、2個以上の被検出物8の検知して、上述の第2〜4信号の波形として、保存する。複数の被検出物8の中で1個でも、不良品があると、第2〜4信号の波形は変更されるので、不良品の検知できる。同様に、2個以上の被検出物8を重ねて検知できる。同様に、複数の被検出物8を重ねたものを1列にして検知できる。
【0078】
〔第2の実施の形態〕
図11は、本発明の第2の実施の形態を示す概念図である。第2の実施の形態は、上述の第1の実施の形態とは、同じであり、ここで、その異なる部分のみを説明する。ベルト9上に、ガイド18、ブースター13、第1センサー10がベルト9の移動方向に直線上に配置されている。ブースター13と第1センサー10は、平行になるように配置されている。第1センサー10は、ベルト9の搬送方向と垂直な面と平行するように設けられている。第1センサー10は、通常、ベルト9の中心線上に、その中心点が配置される。被検出物8は、ベルト9の上の載せられて搬送されるとき、被検出物8の中心線がベルト9の中心線上に位置するように乗せられる。更に、ガイド18は、第1センサー10の中心線から大きくずれた被検出物8をベルト9の中央に移動させる。
【実施例1】
【0079】
ここで、本発明の実施例1を実験例によって説明する。ここで、印刷物の判別装置で行なった実験結果を示す。図1に示した構成の判別装置で実験を行なった。実験は、ベルトの搬送速度を変えて行なった。具体的には、ベルトの搬送速度を15m/分と20m/分に設定して行った。まず、判別装置によって、被検出物8無しで、測定を行なった。次に、被検出物8をベルトによって搬送させて、判別装置で測定を行なった。このとき、被検出物8に印刷物51無しで測定行なった。その後、被検出物8に印刷物51が1枚、そして、2枚が入っている場合に、測定を行った。
【0080】
印刷物51は、297mm×210mm(A4サイズ)の用紙を、38×210mmに折畳んだ物であった。印刷物51には磁気インク(東洋インキ製造株式会社製。)で印刷した。この測定結果を、図12及び図13に示している。図12は、ベルトの搬送速度を15m/分に設定した場合の、測定結果の写真である。図13は、ベルトの搬送速度を20m/分に設定した場合の、測定結果の写真である。図12及び図13の写真の波形は、図7で示す波形処理部26の入力部分で測定した波形である。
【0081】
この写真の波形は、オシロスコープで測定したときのオシロスコープの画面の写真である。オシロスコープの画面のグラフの縦軸は電圧の大きさを表している。このグラフ横軸は、時間を表している。制御部5の検出感度の設定は、高感度を示すレベル5から、低感度を示すレベル1に段階的に設定されている。測定は、検出感度のレベル3、レベル4、レベル5で行なわれた(図12及び図13の第1行を参照。)。感度のレベルは、使用する環境によって決り、頻繁に感度を変えることはほとんど無いものである。
【0082】
感度のレベルは、判別装置を導入し、設置した場所、被検出物の種類等によって、設定される。予め、判別装置に被検出物を検出してみて、その感度の調整を行なう。この実験で、測定された波形(図12、図13を参考。)を、判別装置に判定基準として入力する。新規の測定時に、測定された波形を、これらの判定基準の波形と比較して、印刷物が商品に何枚入ったかを検知できる。図12及び図13は、各写真の下に、測定時の電圧の最大値と最小値を記述している。
【0083】
図12及び図13の写真からは、検出感度のレベルを上げると、測定時の電圧の最大値と最小値の差は、広がっていることが分かる。これは、当業者にとっては当たり前の測定結果であるが、ここで詳しく説明する。例えば、図12の第1信号、レベル3の場合、測定された電圧の最大値は0.50V、最小値は―1.00Vで、その差は、2.50Vになっている。図12の第1信号、レベル5の場合、測定された電圧の最大値は1.50V、最小値は―2.30Vで、その差は、3.80Vになっている。
【0084】
これは、印刷物の判別装置は、品物が無くても、検出感度を上げることで、周囲の雑音などに敏感になっていることがいえる。更に、図12の第2信号、レベル3の場合、測定された電圧の最大値は1.80V、最小値は―1.30Vで、その差は、3.10Vになっている。図12の第2信号、レベル5の場合、測定された電圧の最大値は4.20V、最小値は―2.70Vで、その差は、6.90Vになっている。図12の第3信号、レベル3の場合、測定された電圧の最大値は2.70V、最小値は―2.90Vで、その差は、5.60Vになっている。
【0085】
図12の第3信号、レベル5の場合、測定された電圧の最大値は5.10V、最小値は―7.60Vで、その差は、12.70Vになっている。印刷物の判別装置は、印刷物が無い商品で測定すると、検出感度を上げることで、測定時の電圧の差が広がっている。更に、印刷物の判別装置は、印刷物が1枚ある商品で測定すると、測定時の電圧の差は、印刷物が無い商品の測定と比べ、明確に大きくなっている。更に、同様に、印刷物の判別装置は、印刷物が2枚ある商品で測定すると、測定時の電圧の最大値と最小値の差は、印刷物が1枚の商品の測定と比べ、明確に大きくなっている。
【0086】
測定時の波形を見ても、図12のレベル3で測定したものを比べて見る。第1信号と第2信号では、その測定された波形は、だいたい平らで、それほど明確な差は見られない。しかし、第3信号と第4信号の場合は、その測定された波形は、山と谷が複数で有り、第1信号と第2信号とは、明確に異なる。これにより、被検出物に、印刷物が入っているかいないかが判定できる。更に、第3信号と第4信号の波形を比べてみると、測定された電圧の最大値も増加し、測定された電圧の最小値も減少している。
【0087】
つまり、第3信号と第4信号の波形を比べてみると、測定された電圧の最大値と最小値の差は、更に、広がっていることが分かる。これは、図12及び図13の第3信号と第4信号の測定結果全体についても同じである。第3信号と第4信号の測定時の電圧の値、又は波形の形を見て、被検出物に、印刷物が1枚入っているか2枚入っているかを判定できる。更に、被検出物に、印刷物が3枚以上が入っていると、測定された電圧の最大値と最小値の差が更に大きくなり、更に、その波形も第2信号の波形より複雑になることは予想される。
【0088】
これにより、被検出物に、印刷物が1枚入っているか、3枚以上入っているかが判定できる。印刷物の判別装置においては、被検出物を測定し、測定された電圧の値又は波形を、図12又は図13の写真に示したような基準値と比較する。この比較では、一番近い電圧の値、又は形状を持つ波形を見つけ、それに該当する信号で、判定を行なう。例えば、測定された電圧の値又は波形は、第3信号と一番近い値をもっているときは、被検出物の中に印刷物が1枚入っていると判定する。
【0089】
測定された電圧の値又は波形は、第4信号と一番近い値をもっているときは、被検出物の中に印刷物が2枚入っていると判定する。測定された電圧の値又は波形は、第4信号よりずっと大きい値をもっているときは、被検出物の中に印刷物が2枚以上入っていると判定する。測定された電圧の値又は波形は、第2信号と近い値をもっているとき、又は、第2信号より小さい値をもっているとき、被検出物の中に印刷物が入っていないと判定する。
【0090】
第3信号と近い値の判定には、第3信号の電圧の最大値又は最小値の値より20%以内の低い電圧の値、第3信号の電圧の最大値と最小値の差より20%(この値は1つの例示である。)以内の値等を利用する。上述に説明したその他の判定のときも、同様に計算する。このように、図12と図13の写真から見て、測定された電圧の値、その波形を利用して、被検出物に印刷物が何枚入っているかが判定できることについて説明した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、医薬品、化粧品、食料品の製造分野で利用すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態の印刷物の判別装置1の概要を示す概念図である。
【図2】図2は、印刷物8が内蔵された製品を例示した概念図である。
【図3】図3は、シート状の印刷物8を例示した概念図である。
【図4】図4は、印刷物8が製品に内蔵される様子を例示した概念図である。
【図5】図5(a)はセンサーコイル10aの正面図、図5(b)は図5(a)の平面図、及び図5(c)は図5(a)のA−A線の切断断面図である。
【図6】図5は、ベルト9上にセンサーコイルが配置される例を示した概念図である。
【図7】図7は、判別装置1の制御部5の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】図8は、判別装置1の制御部のパネルの例を示す概念図である。
【図9】ディジタルコンピュータ処理部27の概要を示すブロック図である。
【図10】図10は、制御部5のディジタルコンピュータ処理部27の動作例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態のセンサーコイルの配置を示す概念図である。
【図12】図12は、実験の測定結果1を示す写真である(ベルトの搬送速度を15に設定)。
【図13】図13は、実験の測定結果2を示す写真である(ベルトの搬送速度を20に設定)。
【符号の説明】
【0093】
1…判別装置
2…ベルトコンベヤ
3…駆動用モータ
4…センサー格納部
5…制御部
6…フレーム
7…光センサー
8…被検出物
9…ベルト
10…第1センサーコイル
11…第2センサーコイル
12…信号タワー
13…ブースター
14…永久磁石
15…コイル
16…鉄心
21…発振回路
22…ブリッジ回路
23…アルミ信号消去回路
24…増幅/位相変換回路
25…増幅/位相反転回路
26…波形処理部
27…ディジタルコンピュータ処理部
28…信号出力部
50…箱
51…印刷物
52…製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物を搬送するための搬送路からなる搬送手段、並びに、
前記搬送路の途中に設けられ、前記被検出物の中の磁性体の有無を検知するための検知部、及び、前記検知部から出力される検知信号を信号処理して前記磁性体の有無を判断し、前記判断の結果を示す出力信号を出力する信号処理部からなる検知手段
からなり、
前記検知部は、コアに導線を巻いた構成のセンサーコイルを有し、
前記センサーコイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少な交番磁界を発生させて、
前記被検出物が、前記搬送手段によって搬送されて、前記センサーコイルの付近を通過するとき、前記磁性体が発生する磁界が前記交番磁界を乱して、前記センサーコイルの状態を変化させ、前記検知部は、前記変化に応じて前記検知信号を出力する
金属物検出装置において、
前記被検出物は、磁気粒子を含有するシート状の印刷物を内蔵し、
前記被検出物が、前記搬送手段によって搬送されて、前記センサーコイルの付近を通過するとき、前記磁気粒子が発生する磁界が前記交番磁界を乱して、前記センサーコイルの状態を変化させ、前記検知部は、前記変化に応じて前記検知信号を出力し、
前記検知信号は、予め測定され設定された前記検知信号と比較し、前記印刷物が所定枚数である特徴を示す第1特定信号と一致するとき、前記信号処理手段は、前記印刷物の枚数が認められた枚数であることを示す前記出力信号を出力し、
前記検知信号は、前記第1特定信号と一致しないとき、前記信号処理手段は、前記印刷物の枚数が認められない枚数であることを示す警報信号を出力する
ことを特徴とする印刷物の判別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属物検出装置において、
前記被検出物を磁化するための磁石を有する磁化手段からなり、
前記被検出物は、前記搬送路によって、前記磁化手段を通過するとき、前記磁石によって、前記磁気粒子が磁化され、又は、前記磁気粒子の磁力が強化されて、その後、前記センサーコイルへ搬送される
ことを特徴とする印刷物の判別装置。
【請求項3】
請求項1に記載の金属物検出装置において、
前記センサーコイルを通過する前記被検出物の位置を特定し、タイミング信号を出力するためのセンサー手段を有し、
前記センサー手段から出力される前記タイミング信号は、前記信号処理手段に入力される
ことを特徴とする印刷物の判別装置。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の金属物検出装置において、
前記第1特定信号は、前記印刷物が1枚であることを示す所定の波形である
ことを特徴とする印刷物の判別装置。
【請求項5】
請求項1ないし3に記載の金属物検出装置において、
前記印刷物は、紙、不織布である
ことを特徴とする印刷物の判別装置。
【請求項6】
請求項1ないし3、又は5に記載の金属物検出装置において、
前記印刷物は、前記磁気粒子を有する材料からなる
ことを特徴とする印刷物の判別装置。
【請求項7】
請求項1ないし3、又は5に記載の金属物検出装置において、
前記印刷物は、前記磁気粒子を有するインクで印刷されたものである
ことを特徴とする印刷物の判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−71821(P2010−71821A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240068(P2008−240068)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(599058866)トック・エンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】