説明

印刷装置、印刷方法、印刷データ生成プログラム、ディザマスクの生成方法

【課題】印刷画像に濃度ムラが生じて印刷画質が低下することを抑制する。
【解決手段】印刷装置は、各画素の階調値と、ディザマスクの各閾値とを比較することによって生成されたドットデータに応じて印刷媒体上にドットを形成して、画像を印刷する。印刷装置は、ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行い、複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行う。ディザマスクは、少なくとも一部の印刷階調領域において、画素グループ間のドットの相対位置が目標とされる目標位置関係で形成された場合に、共通領域において形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定された第1の閾値配置に対して、複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらした第2の閾値配置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドからインクを印刷媒体に吐出して印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル方式のインクジェット式プリンターでは、複数のノズルを備えた印刷ヘッドを印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、当該ノズルからインクを吐出して、印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う。かかるインクジェット式プリンターでは、印刷ヘッドのノズルから吐出されたインクの印刷媒体への着弾位置が目標位置からずれる位置ずれを起こすことがある。こうした位置ずれの要因としては、印刷ヘッドの動作精度の問題、紙送り精度の問題などが挙げられる。例えば、印刷ヘッドの往動と復動のインク吐出タイミングが厳密に一定していないと、印刷ヘッドの往動で形成されるドット群と、復動で形成されるドット群との相対的な位置関係が目標位置からずれることとなる。このずれ量はヘッド走査速度や印刷ヘッドと印刷媒体との距離の変化によっても変動する。このため、印刷媒体への単位面積当たりの吐出インク量が多い部分で紙が伸長して波打つコックリングが発生すると、印刷ヘッドと印刷媒体との距離が局所的に変動するため、往復走査間の位置ずれ量も変動することになる。
【0003】
このような位置ずれ変動が生じると、印刷画像の局所的な濃度ムラを招き、印刷画質が低下することがあった。このような濃度ムラの現象は、印刷速度が高速化されるほど顕著となる。かかる問題は、シリアル方式のインクジェット式プリンターに限らず、ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、当該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行って、印刷画像を出力する印刷装置に共通するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−49959号公報
【特許文献2】特開平11−208031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題の少なくとも一部を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、印刷画像に濃度ムラが生じて印刷画質が低下することを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置であって、
印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意されたディザマスクの各閾値とを比較することによって生成された、ドット形成の有無を表すドットデータに応じて前記印刷媒体上に前記ドットを形成して、前記画像を印刷する印刷部を備え、
前記印刷部は、前記ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行い、
前記ディザマスクは、少なくとも一部の印刷階調領域において、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記共通領域において形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定された前記閾値の各々の配置である第1の閾値配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらした第2の閾値配置を有する
印刷装置。
【0008】
かかる構成の印刷装置によれば、ドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定された第1の閾値配置に対して、複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらした第2の閾値配置を有するディザマスクによって生成されたドットデータに応じて印刷を行う。このため、画素グループ間のドットの相対位置が目標とされる目標位置関係からずれて形成された場合に、つまり位置ずれが生じた場合に、位置ずれの方向や量に応じたドットの疎密の変動を抑制することができる。その結果、共通領域の印刷画像に濃度ムラが生じて印刷画質が低下することを抑制することができる。しかも、ディザマスクの基礎となる第1の閾値配置は、空間周波数領域において、所定の空間周波数以下の低周波領域より高周波側にピークを持つノイズ特性を有しており、印刷される画像は、少なくとも共通領域において、いわゆるブルーノイズ特性に近い特性を示すことになり、所定程度の粒状性を確保することができる。
【0009】
[適用例2]前記第1の閾値配置は、前記複数の画素グループの各々において、該画素グループに属するドットの分布が、前記空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定された適用例1記載の印刷装置。
【0010】
かかる構成の印刷装置によれば、位置ずれが生じた場合でも、共通領域全体として、粒状性の劣化を抑制することができる。また、第1の閾値配置に対して閾値をずらした第2の閾値は、位置ずれと同様の影響を印刷画質に与え、第1の閾値配置よりも粒状性が劣化することになるが、かかる劣化を抑制することができる。
【0011】
[適用例3]適用例1または適用例2記載の印刷装置であって、前記所定の方向は、1つ、または、2つの方向であり、前記印刷装置は、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係からずれる方向に特異性を備え、前記第2の閾値配置における前記閾値のずらし量は、前記特異にずれやすい特定の方向とは異なる方向についてのずらし量が、前記特定の方向についてのずらし量よりも大きい印刷装置。
【0012】
かかる構成の印刷装置によれば、閾値のずらし量と、実際に生じる位置ずれの量との合計量の変動の範囲、つまり、実質的な閾値のずれの範囲が、位置ずれが生じない場合に対して近くなるので、ドット分散特性が安定する。また、閾値のずらし量も小さくすることができる。したがって、共通領域で印刷される画像を所定程度の高品質に保つことができる。
【0013】
[適用例4]更に、前記ディザマスクを使用して、前記ドットデータを生成するドットデータ生成部を備えた適用例1ないし適用例3のいずれか記載の印刷装置。
【0014】
印刷装置は、適用例4のようにドットデータ生成部を備えていてもよい。こうすれば、狭義の印刷装置単独で印刷を行うことも可能である。
【0015】
[適用例5]適用例4記載の印刷装置であって、更に、前記印刷媒体の種類を受け付ける受付部を備え、前記ドットデータ生成部は、前記第2の閾値配置を有するディザマスクである第2のディザマスクに代えて、前記第1の閾値配置を有するディザマスクである第1のディザマスクを使用して生成された前記ドットデータに応じて、前記画像を印刷可能に構成され、前記受け付けた印刷媒体の種類に応じて、前記第1のディザマスクと前記第2のディザマスクとのうちから、前記使用するディザマスクを決定する印刷装置。
【0016】
かかる構成の印刷装置によれば、粒状性に優れた第1のディザマスクと、濃度ムラの抑制効果に優れた第2のディザマスクとを印刷媒体の種類に応じて使い分けることができる。したがって、状況に応じて、好適な印刷を行うことができる。
【0017】
[適用例6]更に、前記第1のディザマスクおよび前記第2のディザマスクのうちのいずれか一方のディザマスクに対して、該一方のディザマスクの前記一部のグループに対応する閾値をずらして、他方のディザマスクを生成するディザマスク生成部を備えた適用例5記載の印刷装置。
【0018】
かかる構成の印刷装置によれば、2つのディザマスクを記憶しておく必要がないので、印刷装置の記憶容量を削減することができる。あるいは、有限の記憶容量を有効活用することができる。
【0019】
本発明の印刷装置は、ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、当該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行って、印刷画像を出力する印刷装置に広く適用することができる。例えば、下記の適用例7〜10の印刷装置としても実現することができる。
【0020】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の印刷装置であって、前記印刷部は、印刷ヘッドを主走査方向に対して往復動させるとともに、往動の主走査と復動の主走査の双方で前記印刷ヘッドからインクを吐出させることによって、前記ドットを形成して、前記画像を印刷し、前記複数の画素グループは、前記往動の主走査によって前記ドットが形成される画素のグループと、前記復動の主走査によって前記ドットが形成される画素のグループとである印刷装置。
【0021】
[適用例8]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の印刷装置であって、前記印刷部は、印刷ヘッドを主走査方向に対して走査させつつ、前記印刷ヘッドからインクを吐出させることによって、前記ドットを形成するとともに、複数回の主走査によって、所定領域の前記画像を印刷し、前記複数の画素グループは、前記複数回の主走査のうちの互いに異なる主走査によってドットが形成される画素のグループの各々である印刷装置。
【0022】
[適用例9]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の印刷装置であって、印刷範囲に亘って配列され、前記印刷媒体上に前記ドットを形成する複数の印刷ヘッドを備え、前記複数の印刷ヘッドのうちの隣り合う印刷ヘッド同士は、前記配列の方向において一部が重複するように配列され、前記印刷部は、前記印刷媒体を前記複数の印刷ヘッドに対して相対的に移動させつつ、前記複数の印刷ヘッドからインクを吐出させることによって、前記ドットを形成して、前記画像を印刷し、
前記複数の画素グループは、前記複数の印刷ヘッドのうちの互いに異なる印刷ヘッドによってドットが形成される画素のグループの各々であり、前記共通領域は、前記隣り合う印刷ヘッド同士が重複する領域である印刷装置。
【0023】
[適用例10]適用例1ないし適用例6のいずれか記載の印刷装置であって、印刷範囲に亘ってノズルが配列され、インクを吐出するノズル列を前記配列の方向と交わる交差方向に複数備え、前記印刷部は、前記印刷媒体を前記複数のノズル列に対して前記交差方向に相対的に移動させつつ、前記複数のノズル列からインクを吐出させることによって、前記ドットを形成して、前記画像を印刷し、前記複数の画素グループは、前記複数のノズル列のうちの互いに異なるノズル列によってドットが形成される画素のグループの各々である印刷装置。
【0024】
本発明の印刷装置は、下記の適用例11の印刷装置としても捉えることができる。勿論、適用例11に、上述した適用例2〜10の構成を付加することもできる。
【0025】
[適用例11]印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置であって、印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意されたディザマスクの各閾値とを比較することによって生成された、ドット形成の有無を表すドットデータに応じて前記印刷媒体上に前記ドットを形成して、前記画像を印刷する印刷部を備え、前記印刷部は、前記ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行い、前記ディザマスクは、少なくとも一部の印刷階調領域において、前記複数の画素グループ間の前記ドットの相対位置が、目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記ドットの各々が前記印刷媒体上を覆う面積の比率である被覆率が、前記目標位置関係からずれて形成された場合よりも大きくなるように設定された前記閾値の各々の配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらした前記閾値の配置を有する印刷装置。
【0026】
本発明は、下記の適用例12のディザマスクの製造方法、下記の適用例13の印刷装置の製造方法としても実現することができる。なお、適用例2〜11の態様を付加することも可能である。また、本発明は、ディザマスクの製造を行うためのプログラム、当該プログラムをコンピューターに読み取り可能に記録された記憶媒体等としても実現することができる。
【0027】
[適用例12]印刷媒体上へのドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行って、印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置において、前記印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意された各閾値とを比較することによって、ドット形成の有無を表すドットデータを生成するために用いる、前記各閾値によって構成されるディザマスクの製造方法であって、少なくとも一部の印刷階調領域において、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記共通領域において形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように、前記閾値の各々の配置を決定する第1の閾値配置工程と、前記第1の工程によって決定された前記閾値の各々の配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらして、前記ディザマスクを生成する第2の閾値配置工程とを備えたディザマスクの製造方法。
【0028】
[適用例13]印刷装置の製造方法であって、印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置を用意する工程であって、前記印刷装置は、印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意されたディザマスクの各閾値とを比較することによって生成された、ドット形成の有無を表すドットデータに応じて前記印刷媒体上に前記ドットを形成して、前記画像を印刷する印刷部と、前記ディザマスクを記憶する記憶部とを備え、前記印刷部は、前記ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行う前記印刷装置を用意する工程と、少なくとも一部の印刷階調領域において、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記共通領域において形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように、前記ディザマスクの前記閾値の各々の配置を決定する第1の閾値配置工程と、前記第1の閾値配置工程によって決定された前記閾値の各々の配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらして、前記ディザマスクを生成する第2の閾値配置工程と、前記生成したディザマスクをコンピューターが読み取り可能に前記記憶部に記録する工程とを備えた印刷装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の印刷装置の実施例としてのプリンター20の概略構成図である。
【図2】プリンター20における印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】プリンター20におけるドットの生成方法を示す説明図である。
【図4】往動ドットと復動ドットとの組み合わせのバリエーションを示す説明図である。
【図5】往動時および復動時に形成されるドットとその組合わせを示す説明図である。
【図6】往動時と復動時のドット形成位置にずれが生じた場合を例示する説明図である。
【図7】分散型ディザマスクを用いた場合のドットの配置例とペアドットとを示す説明図である。
【図8】ドット発生割合kとペアドット発生率Kとの関係を示すグラフである。
【図9】プリンター20のハーフトーン処理に用いるディザマスク61,62の生成方法の流れを示す工程図である。
【図10】ディザマスク61,62の生成方法におけるディザマスク評価処理の流れを示す工程図である。
【図11】ディザマスク61,62の格納要素の一部に閾値が格納された状態等を示す説明図である。
【図12】ブルーノイズ特性及びグリーンノイズ特性の説明図である。
【図13】評価値Eの算定基礎とする感度特性VTFの一例を示す説明図である。
【図14】ディザマスク61の閾値配置を示す説明図である。
【図15】ディザマスク62の閾値配置の第1の例を示す説明図である。
【図16】ディザマスク62の閾値配置の第2の例を示す説明図である。
【図17】ディザマスク62の閾値配置の第3の例を示す説明図である。
【図18】ディザマスク62の閾値配置の第4の例を示す説明図である。
【図19】プリンター20の効果の例を示す説明図である。
【図20】変形例としてのディザマスク62の閾値配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
A.実施例:
本発明の実施例について説明する。
A−1.装置構成:
図1は、本発明の印刷装置の実施例としてのプリンター20の概略構成図である。プリンター20は、双方向印刷を行うシリアル式インクジェットプリンターである。図示するように、プリンター20は、紙送りモーター74によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモーター70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された印刷ヘッド90を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモーター74,キャリッジモーター70,印刷ヘッド90および操作パネル99との信号のやり取りを司る制御ユニット30とから構成されている。
【0031】
キャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構は、プラテン75の軸と平行に架設され、キャリッジ80を摺動可能に保持する摺動軸73と、キャリッジモーター70との間に無端の駆動ベルト71を張設するプーリ72等から構成されている。
【0032】
キャリッジ80には、カラーインクとして、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエロインク(Y)、ブラックインク(K)、ライトシアンインク(Lc)、ライトマゼンタインク(Lm)をそれぞれ収容したカラーインク用のインクカートリッジ82〜87が搭載される。キャリッジ80の下部の印刷ヘッド90には、上述の各色のカラーインクに対応するノズル列が形成されている。キャリッジ80にこれらのインクカートリッジ82〜87を上方から装着すると、各カートリッジから印刷ヘッド90へのインクの供給が可能となる。
【0033】
制御ユニット30は、CPU40や、ROM51、RAM52、EEPROM60がバスで相互に接続されて構成されている。制御ユニット30は、ROM51やEEPROM60に記憶されたプログラムをRAM52に展開し、実行することにより、プリンター20の動作全般を制御するほか、印刷部41、ドットデータ生成部42、受付部43としても機能する。これらの機能部の詳細については後述する。
【0034】
EEPROM60には、ディザマスク61,62が記憶されている。ディザマスク61,62は、組織的ディザ法による、ドット分散型のハーフトーン処理に用いるものである。ディザマスク61,62は、複数の閾値が、同数の格納要素にそれぞれ格納されて構成される。このディザマスク61,62は、特性が異なるディザマスクである。ディザマスク61の閾値の配置は、いわゆるブルーノイズ特性を有しており、ドットの高い分散性を実現可能である。ディザマスク62の閾値の配置は、ディザマスク61の閾値の配置に対して、一部の閾値を所定の方向に所定量だけずらしたものである。詳細は後述するが、ディザマスク62は、ドットの形成位置が目標位置からずれた場合であっても、濃度ムラの発生が抑制される特性を有している。
【0035】
制御ユニット30には、メモリカードスロット98が接続されており、メモリカードスロット98に挿入したメモリカードMCから画像データORGを読み込んで入力することができる。つまり、本実施例では、印刷は、プリンター20単独で行われる。本実施例においては、メモリカードMCから入力する画像データORGは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。
【0036】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンター20は、キャリッジモーター70を駆動することによって、印刷ヘッド90を印刷媒体Pに対して主走査方向に往復動させ、また、紙送りモーター74を駆動することによって、印刷媒体Pを副走査方向に移動させる。制御ユニット30は、キャリッジ80が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷媒体P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンター20は、印刷媒体P上にメモリカードMCから入力したカラー画像を印刷することが可能となっている。
【0037】
A−2.印刷処理:
プリンター20における印刷処理について説明する。図2は、プリンター20における印刷処理の流れを示すフローチャートである。ここでの印刷処理は、ユーザーが操作パネル99等を用いて、メモリカードMCに記憶された所定の画像の印刷指示操作を行うことで開始される。印刷処理を開始すると、CPU40は、まず、メモリカードスロット98を介してメモリカードMCから印刷対象であるRGB形式の画像データORGを読み込んで入力する(ステップS110)。
【0038】
画像データORGを入力すると、CPU40は、EEPROM60に記憶されたルックアップテーブル(図示せず)を参照して、画像データORGについて、RGB形式をCMYKLcLm形式に色変換する(ステップS120)。
【0039】
色変換処理を行うと、CPU40は、ドットデータ生成部42の処理として、画像データを各色のドットのON/OFFデータ(以下、ドットデータともいう)に変換するハーフトーン処理を行う(ステップS130)。この処理は、本実施例においては、ディザ法を用いて行う。すなわち、入力データと、ディザマスクを構成する複数の閾値のうちの、入力データに対応する位置の格納要素に格納された閾値とを比較し、入力データが閾値よりも大きければ、ドットONと判断し、入力データが閾値以下であればドットOFFと判断するものである。
【0040】
このハーフトーン処理では、使用するディザマスクが、ディザマスク61とディザマスク62のうちから選択される。このディザマスクの選択は、使用される印刷媒体の種類に応じて行われる。具体的には、ユーザーは、画像データORGの印刷指示操作を行う際に、操作パネル99を用いて、使用する印刷媒体の種類を入力する。制御ユニット30は、受付部43の処理として、この印刷媒体の種類を受け付けて、当該印刷媒体の種類と予め対応付けられたディザマスクをディザマスク61,62のうちから選択する。
【0041】
本実施例では、コックリングによる印刷画像の濃度ムラが問題になりにくい印刷媒体に対しては、ディザマスク61が選択される。一方、コックリングによる印刷画像の濃度ムラが問題になりやすい印刷媒体に対しては、ディザマスク62が選択される。コックリングによる印刷画像の濃度ムラが問題になりにくい印刷媒体とは、例えば、厚手の印刷媒体やインク吸収層を有する印刷媒体である。コックリングによる印刷画像の濃度ムラが問題になりやすい印刷媒体とは、例えば、薄手の印刷媒体やインク吸収層を有していない普通紙である。
【0042】
ハーフトーン処理においては、選択されたディザマスク61またはディザマスク62は、主走査方向および副走査方向に並ぶ各々の入力データに対して、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用される。なお、ハーフトーン処理は、ドットのON/OFFの2値化処理に限らず、大ドットおよび小ドットのON/OFFなど、多値化処理であってもよい。また、ステップS130に供する画像データは、解像度変換処理やスムージング処理などの画像処理が施されたものであってもよい。あるいは、ステップS130に供する画像データは、画像データORGの色階調値から求められたドットの形成率を表す階調値であってもよい。つまり、ステップS130に供する画像データは、受け付けた画像データORGに基づく各画素の階調値であればよい。
【0043】
ハーフトーン処理を行うと、CPU40は、プリンター20のノズル配置や紙送り量などに合わせて、1回の主走査単位で印画するドットパターンデータに並び替えるインターレース処理を行う(ステップS140)。インターレース処理を行うと、CPU40は、印刷部41の処理として、印刷ヘッド90、キャリッジモーター70、モーター74等を駆動させて、印刷を実行する(ステップS150)。
【0044】
かかる印刷処理におけるドット形成の仕組みについて、図3を用いて以下に説明する。本実施例における印刷ヘッド90は、図3に示すように、インクの色ごとに、10個のノズルNzを備えている。これらのノズルNzは、ノズル1個分の間隔を有して副走査方向に1列に並んでいる。図3の右側には、印刷媒体に対するノズルNzの相対位置を示している。実際には、出走査パスごとに印刷媒体を副走査方向に移動させるが、図3では、ノズルNzを移動させて図示している。本実施例では、図3に示すように主走査ごとに5画素分だけノズルNzを相対移動させている。図3の左側には、各主走査(パス)によってドットが形成される画素位置をパスの番号で示している。図3では、各々の主走査を区別するために、バス番号を付して、パス1、パス2などと表示している。主走査方向に沿ったドットの並びをラスターともいう。図3では、各々のラスターを区別するために、各ラスターにラスター番号を付している。
【0045】
印刷画像の生成は、本実施例においては、主走査ごとにノズルNzを有する印刷ヘッド90に対して印刷媒体を移動しつつ、主走査を複数回繰り返すことで、副走査方向のドットの並びを完成させる、いわゆるインターレースによる印刷によって行う。また、印刷画像の生成は、1つのラスターを複数回の主走査で完成させる、いわゆるオーバーラップ印刷によって行う。
【0046】
具体的には、本実施例では、図3の着目領域に示すように、パス1によって形成されるドットとパス3によって形成されるドットとが交互に並んだラスターと、パス2によって形成されるドットとパス4によって形成されるドットとが交互に並んだラスターとが、副走査方向に交互に配置されている。
【0047】
パス1およびパス3は、印刷ヘッド90の主走査として往復動する動作のうちの往動である。パス2およびパス4は、印刷ヘッド90の復動である。往動で形成されるドットを往動ドットともいう。また、復動で形成されるドットを復動ドットともいう。図3に示した着目領域のドットの並びを、この往動ドットと復動ドットとに注目して見れば、図4(A)に示すドット配置となる。このように、
1つのラスターを構成する画素の全てが、往動ドット群または復動ドット群のいずれか一方で形成され、かつ、往動ドット群と復動ドット群とが副走査方向に沿ってラスター単位で入れ替わって形成される。本実施例では、かかる往動ドット群及び復動ドット群による構成の印刷画像を出力するインターレース処理を、ラスター交互モードともいう。
【0048】
印刷画像における往動ドット群及び復動ドット群の構成は、このようなラスター交互モードに限られるものではなく、上記ステップS140のインターレース処理の諸元の設定次第で、種々の態様で実現することができる。例えば、図4(B)に示すように、同一の画素位置番号に属する画素の全てが、往動ドット群または復動ドット群のいずれか一方で形成され、かつ、往動ドット群と復動ドット群とが主走査方向に沿って画素位置単位で入れ替わって形成される態様とすることもできる。かかる構成の印刷画像を出力するインターレース処理を、カラム交互モードともいう。あるいは、図4(C)に示すように、往動ドット群の画素または復動ドット群の画素が、主走査方向及び副走査方向に沿って、交互に形成される態様とすることもできる。かかる構成の印刷画像を出力するインターレース処理を、タスキモードともいう。
【0049】
以上の説明からも明らかなように、プリンター20は、印刷条件が異なる複数の画素グループ、具体的には、往動ドット群からなる画素グループ(以下、往動画素グループともいう)と、復動ドット群からなる画素グループ(以下、復動画素グループともいう)とに分けて印刷を行う。また、これらの画素グループは、共通領域で形成され、各画素グループのドットが組み合わされて、1つの印刷画像が印刷される。
【0050】
A−3.ディザマスク61,62の特性:
ディザマスク61,62の特性について説明する。まず、ディザマスク61,62の特性についての理解を容易にするために、往動ドット群と復動ドット群との間で、ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係からずれた場合の印刷画像への影響について説明する。なお、かかる目標位置関係のずれを位置ずれともいう。プリンター20がタスキモードで印刷を行う場合、印刷ヘッド90の往動時に形成されるドットは、図5(A)にハッチングを施して示したように千鳥配列の画素位置に形成され、印刷ヘッド90の復動時に形成されるドットは、図5(B)にハッチングを施して示したように、往動時のドット位置とは副走査方向に1画素分ずれた千鳥配列の画素位置に形成される。図5(A)、(B)において、実際に形成されたドットを、それぞれ「●」印およびハッチングを施した「○」印で示した。印刷された画像は、図5(C)に示したように、往動画素グループと復動画素グループのそれぞれのドットを合わせたものとなる。
【0051】
往動時と復動時とでは、ドットの形成の印刷条件、つまり、ドットの形成のタイミングが異なるので、実際に形成されるドットは、図5(C)とは異なる場合がある。具体的には、印刷ヘッドの動作精度の問題、紙送り精度の問題、コックリングなどによって、往動ドット群と復動ドット群との間で、ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係からずれることがある。例えば、復動時のドット形成位置に対して、往動時のドット形成位置が、主走査方向に約1画素分ずれているとすると、図5(C)で示した例では、図6(A)に示したドット配列となる。同様に、約2画素分ずれれば、図6(B)に示したドット配列となる。なお、かかる往動ドット群と復動ドット群との間での位置ずれをBi−Dずれともいう。
【0052】
図5(C)からも分かるように、位置ずれがなければ、往動画素グループとして形成されるドットと、復動画素グループとして形成されるドットの重なりは非常に少ない。これはブルーノイズ特性を有するディザマスクでは、できるだけドットを離して配置しようとするためである。これに対して、実際の印刷において、ドット形成位置に位置ずれが生じると、図6(A),図6(B)に示したように、往動画素グループとして形成されるドットと、復動画素グループとして形成されるドットの重なり量が増え、ドットが印刷媒体を覆う割合である被覆率が低下する。被覆率の変動は、印刷濃度の変動を意味するので、被覆率が局所的に変動すると、印刷画像に濃度ムラとなって現れるおそれがある。また、ドットの形成位置にずれがなければ、隣接することのなかったドットが、ドットの形成位置がずれたことで、隣り合う位置に形成されることも起こりえる。通常のインクジェットプリンターでは、多少の位置ずれが生じても最大100%の被覆率が実現できるよう、ドットサイズは画素の対角線サイズ以上の大きさに設定されるため、ドット同士が隣接するとドット周辺が重なりあい、被覆率が低下する。つまり、ドット同士が隣接せずに形成された場合と、隣接して形成された場合とでは、隣接して形成された場合の方が被覆率は小さくなる。
【0053】
以上の点を踏まえ、ディザマスク61,62の特性について説明する。ディザマスク61は、上述したようにブルーノイズ特性を有し、ドットの分散性の高いものとして設定されているので、画像の濃度が低い領域では、ドットの配置はまばらになる。ドットの分散性の観点から、互いに上下または左右に隣接する2つの画素にドットが配置されることはほとんど生じない。この様子を図7(A)に示した。図7(A)では、8×8の領域を例示しており、画像の階調値が一様に26/255である場合を例示した。この場合、8×8の領域に、その約1割の画素、つまり6個程度の画素にドットが形成されることになる。
【0054】
これに対して、ディザマスク62では、有意の確率で、隣接する画素にドットが配置されることが生じるように閾値が設定されている。隣接する画素に共に形成されたドット(以下、ペアドットともいう)が形成された一例を、図7(B)に示した。ディザマスク62では、こうした隣接する画素に共にドットが形成されるという状態が、一般的なブルーノイズ特性のディザマスクではペアドットが発生しないような、画像の階調値が比較的低い領域を含む階調領域(例えば階調値が25〜127/255の領域)でも、有意の割合で生じるように、閾値が設定されている。
【0055】
この有意の確率について説明する。ペアドットが形成される割合を模式的に図8に示す。図8において、横軸は、画素にドットが形成される割合kを示している。また、図8の縦軸は、ペアドットが形成される確率K(以下、ペアドット発生率Kともいう)を示している。図8において、一点鎖線BN1は、ディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行なった場合を示しており、実線JD1は、ディザマスク62を用いてハーフトーン処理を行なった場合を示している。また、破線WN1は、ランダムディザ法、または、ランダムな閾値を持ち十分に大きなサイズのホワイトノイズ特性のディザマスク(以降では、ホワイトノイズマスク)を用いたディザ法でハーフトーン処理を行なった場合を示している。ブルーノイズ特性は低周波成分を含まないのに対し、ホワイトノイズ特性は低周波成分から高周波成分までをまんべんなく含む。
【0056】
図示するように、典型的なブルーノイズ特性を有するディザマスク61を用いた場合には、画像の階調値が低い領域(階調値0〜51、ドットの発生割合k=0〜0.2)では、ペアドットが形成されることはほとんど生じない。これは、ディザマスク61では、低濃度領域では、ドットの分散性を優先しており、ペアドット発生率Kは、0に近付けられている。これに対して、ランダムディザ法やホワイトノイズマスクを用いた場合には、隣接する2画素間のドット形成結果に相関が無くランダムなので、ドットの形成の割合kに対して、ペアドット発生率Kは、k2にほぼ一致している。
【0057】
これらの特性に対して、ディザマスク62では、ペアドット発生率Kは、実線JD1として示したように、ディザマスク61(一点鎖線BN1)と、ホワイトノイズマスク(破線WN1)との間に位置している。すなわち、ディザマスク62は、形成されるドットの分布については、ブルーノイズマスクに近い分散性を示しながら、ペアドット発生率Kについては、ホワイトノイズマスク側に振れた特性を示すものとなっている。
【0058】
かかる特性を有するディザマスク61,62は、被覆率の点から見れば、以下のような特性の違いがある。ディザマスク61は、ドットの分散性の高いものとして設定されているため、位置ずれが生じていない場合に、ドットの分散性が最適となるように閾値が設定されている。したがって、位置ずれが生じない場合と、任意の方向に任意の量だけ位置ずれが生じた場合とを考えると、被覆率は、位置ずれが生じない場合に最大となる。しかしながら、実際に位置ずれが一切生じない状況は考えにくく、ディザマスク61は、少しでも位置ずれが生じると、ドットの分散性が劣化し、ドットの重なりが生じやすくなる。
【0059】
一方、ディザマスク62は、後述する生成方法に起因して、被覆率は、位置ずれが生じない場合に最大とはならない。つまり、位置ずれが生じない場合に、ディザマスク62の被覆率は、ディザマスク61の被覆率よりも小さくなる。換言すれば、所定の程度、位置ずれが生じた場合に、ドットの分散性が最適となるように閾値が設定されている。したがって、ディザマスク62によるドット形成パターンは、位置ずれが生じた場合の被覆率の変動幅が、ディザマスク61によるドット形成パターンと比べて小さくなる。
【0060】
また、ペアドットに着目して見れば、ディザマスク61は、位置ずれが生じずにドットが形成された場合には、その被覆率は、ほとんどの場合に位置ずれが生じたケースと比べても大きくなる。ディザマスク61は、ペアドットが発生しにくいように設定されているためである。一方、ディザマスク62は、ペアドットの発生確率をディザマスク61よりも大きくなるように設定されている。ペアドットは、着弾したインクの広がりを考慮すれば、ドットの重なりを生じるものである。このため、ディザマスク62は、ディザマスク61と比べてペアドットの発生率が高い分だけ、ディザマスク61よりも被覆率が小さくなるように設定されていると捉えることもできる。このように、ディザマスク62は、被覆率が予め所定程度小さく制御されていることによって、位置ずれが生じて被覆率が変動した場合に、被覆率の変動幅を小さくすることができる。かかる被覆率の変動幅は、ペアドット発生率Kがk2に近づくほど小さくなる。かかるディザマスク62の特性は、以下に説明するディザマスク62の生成方法によって実現される。
【0061】
A−4.ディザマスク61,62の生成方法:
上述したディザマスク61,62の生成方法について説明する。ディザマスク61,62は、そのサイズ(閾値の数)に対応する格納要素を有している。本実施例では、ディザマスク61とディザマスク62のサイズは同一である。格納要素とは、ディザマスク61,62を構成する閾値を格納する要素である。これらの格納要素の全てに1つずつ閾値を格納することで、ディザマスク61,62は生成される。ディザマスク61は、ディザマスク62の生成過程の途中段階で生成されるディザマスクである。以下に説明する生成方法は、メインフレーム等のCPUによって、ディザマスク61,62を生成する処理である。なお、以下に説明する工程の一部または全部をユーザーが手計算等によって行っても差し支えない。
【0062】
ディザマスク61,62のサイズは、例えば、256画素×256画素、512画素×512画素などとすることができるが、以下の説明においては、ディザマスク61,62のサイズは、説明を簡単にするために、縦方向サイズ、横方向サイズともに5画素、つまり合計25画素(=5×5)の画像データに適用するサイズとして説明する。
【0063】
ディザマスク61,62の生成方法の手順を示す工程図を図9に示す。ディザマスク61,62の生成においては、図示するように、まず、ディザマスク61,62のサイズに応じた閾値を用意する(ステップS210)。本実施例においては、ディザマスク61,62が25個の格納要素を有するので、これと同数の0〜24の閾値を用意するものとした。
【0064】
閾値を用意すると、次に、着目閾値選択処理を行う(ステップS220)。着目閾値選択処理とは、用意した0〜24の閾値のうちの、未だ格納要素に格納されていない閾値のうちから1つの閾値を着目閾値として選択する処理である。本実施例においては、用意した閾値のうちの小さい閾値から順に、着目閾値を選択することとした。図11に示すように、ディザマスク61,62を構成する格納要素に、後述する工程によって値0〜3の閾値が既に格納要素に格納されている場合には、次にステップS220において選択される着目閾値は値4である。
【0065】
着目閾値を選択すると、次に、ディザマスク評価処理を行う(ステップS230)。ディザマスク評価処理とは、用意した閾値が未だ格納されていない格納要素(以下、空白格納要素ともいう)の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、閾値が既に格納された格納要素(以下、決定格納要素ともいう)の配置が表すドットの形成パターンについての、ドットの分散の程度を示す評価値Eを、空白格納要素の各々について算出する処理である。
【0066】
本実施例では、評価値Eは、その値が小さいほどドットの分散性が良好となり、印刷画像の粒状性の観点から優れているといえる。なお、ハーフトーン処理においては、ディザマスク61,62の閾値が入力階調値よりも小さくなる画素でドットがONとなるので、全ての画素の階調値が同一のベタ画像を入力する場合において、当該階調値を徐々に大きくしていけば、ディザマスク61,62における閾値の配置に応じたドットの形成パターンが現れることとなる。本実施例では、このようなドット発生特性に基づくドット形状をドット形成パターンと呼んでいる。
【0067】
ディザマスク評価処理の詳細について、図10を用いて説明する。ディザマスク評価処理では、図10に示すように、まず、グループ化処理を行う(ステップS231)。グループ化処理とは、ディザマスク61,62を構成する複数の格納要素を、当該複数の格納要素に格納された閾値がハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成を往動と復動のうちのいずれで行うかに着目して、複数のグループに区分する処理である。つまり、上述した往動ドットと復動ドットの配置の態様に基づいて、格納要素のグループを設定する処理である。例えば、カラム交互モードを採用する場合、図4(B)に示した往動画素グループと復動画素グループとが表すパターンと同一のパターンのグループに区分される。
【0068】
こうして、グループ化処理を行うと、決定格納要素のドットをONにする(ステップS232)。図11では、値0〜3の閾値が格納された決定格納要素のドットがONにされた様子をシングルハッチングで示している。決定格納要素のドットをONにすると、次に、候補格納要素選択処理を行う(ステップS233)。候補格納要素選択処理とは、着目閾値を格納すべき格納要素の候補である候補格納要素を選択する処理である。空白格納要素の各々には、着目閾値を格納することが可能であるから、ここでは、空白格納要素のうちの1つを、候補格納要素として選択する。候補格納要素選択処理を行うと、次に、候補格納要素のドットをONにする(ステップS234)。図11では、空白格納要素の1つを候補格納要素として選択し、当該候補格納要素のドットをONにした様子を、クロスハッチングで示している。
【0069】
候補格納要素のドットをONにすると、次に、グループ選択処理を行う(ステップS235)。グループ選択処理とは、上記ステップS231で設定したp個(pは2以上の整数、ここではp=2)のグループG1〜Gpと、ディザマスク61,62を構成する全ての格納要素を含むグループであるグループGp+1とのうちから、1つのグループGq(qは1以上p+1以下の整数)を選択する処理である。
【0070】
グループGqを選択すると、次に、グループGqに属する格納要素に対応するドット形成パターンに基づいて、ドットの分散の程度を示す評価値Eq、つまり、ドットがどの程度満遍なく分散された状態で形成されるかを示す評価値を算出する(ステップS236)。ドットを満遍なく分散された状態で形成するためには、図12に示すブルーノイズ特性を有するディザマスクを生成すればよいことが知られている。ブルーノイズ特性は、ドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性である。人間の視覚特性は、観察距離30cmの場合10cycle/mm以上の高周波数の感度はほぼゼロとなるため、それ以上の領域にピークを持つようにできれば、良好な粒状性のディザマスクを生成できる。本実施例においては、このような特性のディザマスクを生成するために、ドットの分散性の程度を示す評価値として、粒状性指数を用いることとした。
【0071】
粒状性指数は、公知の技術であるため(例えば、特開2007−15359号公報)、詳しい説明は省略するが、画像をフーリエ変換してパワースペクトルFSを求め、得られたパワースペクトルFSを、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性VTF(Visual Transfer Function)に相当する重みを付けて、各空間周波数で積分して求められる指標である。図13に、VTFの一例を示す。こうしたVTFを与える実験式には、種々の式が提案されているが、次式(1)に代表的な実験式を示す。変数Lは観察距離を表しており、変数uは空間周波数を表している。粒状性指数は、かかるVTFに基づいて、次式(2)に示す計算式によって算出することができる。係数Kは、得られた値を人間の感覚と合わせるための係数である。なお、算出方法からも明らかなように、粒状性指数は、人間がドットを目立つと感じるか否かを示す指標であるとも言える。かかる粒状性指数は、その値が小さいほど印刷画質においてドットが視認されにくく、その点において優れているといえる。
【0072】
【数1】

【数2】

【0073】
評価値Eqを算出すると、全てのグループG1〜Gp+1(ここではG1〜G3)について評価値Eqを算出するまで、上記ステップS235,S236の工程を繰り返す(ステップS237)。こうして、全てのグループG1〜G3について評価値Eq(E1〜E3)を算出すると(ステップS237:YES)、算出した評価値E1〜E3に基づいて、次式(3)により、評価値Eを算出する(ステップS238)。式(3)においてa〜cは重み付け係数である。これらの重み付け係数は、良好な印刷画質が得られるように、一定値として、実験的に定められる。つまり、評価値Eとは、ディザマスク61,62の決定格納要素の全体が表すドット形成パターンと、往動に対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンと、復動に対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンとについて、ドットの分散の程度を所定の重み付けで総合評価した評価値である。
E=a×E1+b×E2+c×E3・・・(3)
【0074】
評価値Eを算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値Eを算出するまで、上記ステップS233〜S238の工程を繰り返す(ステップS239)。こうして、全ての候補格納要素について評価値Eを算出すると(ステップS239:YES)、ディザマスク評価処理は終了となる。
【0075】
ここで説明を図9のディザマスク生成処理に戻す。ディザマスク評価処理を行うと、次に、格納要素決定処理を行う(ステップS240)。ここでの格納要素決定処理とは、ディザマスク評価処理で算出した評価値Eに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する処理である。具体的には、候補格納要素(空白格納要素)ごとに算出した評価値Eのうちで、その値が最も小さい評価値Eに対応する候補格納要素を、着目閾値を格納すべき候補格納要素として決定し、当該格納要素に着目閾値を格納する。
【0076】
格納要素決定処理を行うと、ステップS210で用意した閾値を、ディザマスク61,62を構成する全ての格納要素に格納するまで、上記ステップS220〜S240の工程を繰り返す(ステップS250)。こうして、全ての格納要素に閾値を格納すると(ステップS250:YES)、まず、ディザマスク61が完成となる(ステップS260)。
【0077】
上述した評価値Eを用いて生成するディザマスク61は、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性VTFに相当する重み付けによって、ドットが視認されにくいドット形成パターンを生じるように生成される。したがって、結果的に、ディザマスク61によって生じるドット形成パターンは、そのドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有することとなる。換言すれば、ディザマスク61によって生じるドット形成パターンは、ブルーノイズ特性を有することとなる。したがって、ディザマスク61を用いたハーフトーン処理によって印刷される印刷画像は、ドットが良好に分散化され、ドットが目立ちにくい滑らかな印刷品質を得ることができる。
【0078】
また、上述した評価値Eを用いれば、往動ドット、復動ドット、往動ドットと復動ドットとを組み合わせた印刷画像全体のいずれに対しても、ドットが分散して配置されるドット形成パターンを有するディザマスク61を生成することができる。かかるディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行えば、往動ドットと復動ドットとの間で位置ずれが生じても、往動ドット及び復動ドットの分散性は確保されたままであるから、画像全体のドットの分散性が確保され、印刷画質の粒状性の悪化を抑制することができる。
【0079】
こうしてディザマスク61が完成すると、閾値ずらし処理を行う(ステップS270)。閾値ずらし処理とは、ディザマスク61の閾値配置に対して、上記ステップS231で設定したグループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらす処理である。かかる閾値ずらし処理を行うことによって、ディザマスク62が完成する(ステップS280)。こうして、ディザマスク生成処理は終了となる。なお、上記ステップS210〜S250は、請求項の第1の閾値配置工程に該当する。上記ステップS270は、請求項の第2の閾値配置工程に該当する。また、ディザマスク61の閾値配置は、請求項の第1の閾値配置に該当する。ディザマスク62の閾値配置は、請求項の第2の閾値配置に該当する。
【0080】
閾値ずらし処理の詳細について、以下に説明する。ディザマスク61の閾値配置を図14に示す。ディザマスク61は、上述した手法によって、ドットの分散性が最適化されたディザマスクであり、分散性最適ディザマスクともいう。図14は、7×7画素のサイズのディザマスクの閾値配置を示している。各画素の閾値を区別するために、図中では、各閾値に対して、「0,1」などと番号を付している。例えば、「0,1」の閾値は、主走査方向(図中の右方向)に0番目、副走査方向(図中の下方向)に1番目の閾値であることを示している。ディザマスク61を構成する各閾値は、往動によってドットが形成される画素に適用する閾値(以下、往動閾値ともいう)と、往動によってドットが形成される画素に適用する閾値(以下、復動閾値ともいう)とに区別される。図14では、復動閾値は、ハッチングを施して表示している。図示するディザマスク61の閾値配置は、カラム交互モードの場合である。
【0081】
かかるディザマスク61の閾値配置に対して、閾値ずらし処理によって、生成されたディザマスク62の閾値配置の具体例を図15に示す。図示するように、ディザマスク62の閾値配置は、ディザマスク61の往動閾値と復動閾値とのうちの復動閾値のみを副走査方向(図中の上方向)に3画素分ずらした閾値配置を有している。このため、ディザマスク62をずらしディザマスクともいう。なお、ディザマスク62は、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用されるから、復動閾値を上方向に3画素分ずらすと、例えば、「1,0」、「1,1」、「1,2」の閾値は、「1,7」の下に配置されることとなる。
【0082】
ディザマスク62の閾値配置の他の例を図16に示す。この例では、図示するように、ディザマスク62の閾値配置は、ディザマスク61の復動閾値のみを主走査方向(図中の左方向)に4画素分ずらし、さらに、副走査方向(図中の上方向)に3画素分ずらした閾値配置を有している。
【0083】
このような閾値ずらし処理は、上述したカラム交互モードと同様の手法で、ラスター交互モードやタスキモードにも適用することができる。ラスター交互モードを採用する場合の、ディザマスク62の閾値配置の例を図17に示す。図示する例では、ディザマスク61の復動閾値を主走査方向(図中の左方向)に3画素分ずらしている。また、タスキモードを採用する場合の、ディザマスク62の閾値配置の例を図18に示す。図示する例では、ディザマスク61の復動閾値を主走査方向(図中の左方向)に4画素分ずらしている。
【0084】
以上説明したように、閾値ずらし処理における、閾値をずらす方向は、主走査方向であってもよいし、副走査方向であってもよい。もとより、主走査方向と副走査方向との方向であってもよい。また、ずらす閾値は、復動閾値に限らず、往動閾値であってもよい。このように閾値ずらし処理を行うことによって、ディザマスク62の特性は、ディザマスク61に比べて、ドットの分散性が悪化する方向に変化する。このことは、ペアドット発生率Kがディザマスク61よりも大きくなることを意味している。すなわち、図8に示したディザマスク62の特性が得られることとなる。
【0085】
また、各方向の閾値のずらし量は、適宜設定すればよいが、以下のように設定することが望ましい。ブルーノイズマスクの特性を調べると、1つのディザマスク内のおける2つの画素の相対位置が近い場合には、当該2つの画素におけるドットのON/OFFには、強い相関関係がある。つまり、2つの画素のうちの1つの画素のドットがONになると、他の1つの画素のドットがONとなる確率は、極めて低くなる。一方、2つの画素が十分に離れている場合には、当該2つの画素におけるドットのON/OFFには、ほとんど相関関係がなくなる。この2画素間の相対位置が大きくなると、2つの画素のドットの両方がONとなる確率、つまり、ペアドット発生率Kは、図8に示したホワイトノイズの場合と同様に、k2(kはドットの発生割合)に収束していく。
【0086】
かかる2画素間の相対位置と、ペアドット発生率Kとの関係は、位置ずれによって濃度変動が問題となる印刷階調、つまり、低階調から中階調領域にかけて(例えば25〜127/255)は、2画素間の相対位置が5画素程度以上離れると、k2にほぼ収束することが確認できた。このことは、閾値のずらし量を5画素以上とすれば、ペアドット発生率Kは、k2にほぼ収束することを意味している。一方で、閾値のずらし量は、ディザマスク62のドット分散性を良好に確保するためには、小さいほど望ましい。閾値のずらし量が大きくなるほど、ディザマスク61として最適化されたドットの粒状性が劣化するからである。
【0087】
このため、閾値のずらし量は、ペアドット発生率Kがk2にほぼ収束する値(上述の例では5画素)に対して、想定される位置ずれ量を加えた値を上限値として設定することが望ましい。例えば、実際に生じる位置ずれ量が±2画素と想定される場合、閾値のずらし量は、7画素を上限値とすることが望ましい。かかる場合、例えば、閾値のずらし量は、5画素としてもよい。こうすれば、±2画素の位置ずれが生じた場合の実質的な閾値のずれ量は、3画素から7画素の範囲に収まり、ドットの粒状性の劣化を抑制しつつ、ペアドット発生率Kをk2に良好に近づけることができる。ただし、想定される位置ずれ量がさらに大きい場合には、閾値のずらし量は、さらに大きくする必要がある。例えば、実際の位置ずれ量が−5画素である場合、閾値のずらし量を5画素としても、実質的な閾値のずれ量は0画素となってしまうからである。
【0088】
また、閾値のずらし量は、プリンター20の位置ずれの特異性を考慮して設定することが望ましい。具体的には、プリンター20の位置ずれが特定の方向に発生しやすい場合には、当該特定の方向と異なる方向についてのずらし量が、当該特定の方向についてのずらし量よりも大きくなるようにずらし量を設定することが望ましい。本実施例においては、プリンター20は、シリアル式プリンターであるから、往動ドットと復動ドットとの位置ずれが主走査方向に生じやすい。したがって、副走査方向のずらし量を主走査方向よりも大きくすることが望ましい。こうすれば、閾値のずらし量と、実際に生じる位置ずれの量との合計量の変動の範囲、つまり、実質的な閾値のずれの範囲が、位置ずれが生じない場合に対して近くなるので、ドット分散特性が安定する。また、閾値のずらし量も小さくすることができる。
【0089】
例えば、主走査方向に±2画素の位置ずれが想定される場合を考える。第1のケースとして、閾値のずらし量を主走査方向に6画素、副走査方向に0画素とすると、閾値のずらし量と、実際に生じる位置ずれの量との合計量の変動範囲は、主走査方向に4〜8画素、副走査方向に0画素の範囲となる。一方、第2のケースとして、閾値のずらし量を主走査方向に0画素、副走査方向に4画素とすると、閾値のずらし量と、実際に生じる位置ずれの量との合計量の変動範囲は、主走査方向に−2〜2画素、副走査方向に4画素の範囲となる。ケース1とケース2とを比べると、ケース2の方が合計のずらし量が少なく、粒状性の劣化が抑制されている。しかも、ケース1とケース2とでは、実質的な閾値のずれ量をいずれも4画素以上確保できている。以上のことから、主走査方向に位置ずれが生じやすい場合には、主走査方向のずらし量よりも副走査方向のずらし量を大きくすることが望ましい。
【0090】
A−5.効果:
かかる構成のプリンター20は、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定されたディザマスク61の閾値配置に対して、往動画素グループと復動画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらしたディザマスク62によって生成されたドットデータに応じて印刷を行う。このため、画素グループ間のドットの位置ずれが生じた場合に、位置ずれの方向や量に応じたドットの被覆率の変動を抑制することができる。その結果、共通領域の印刷画像に濃度ムラが生じて印刷画質が低下することを抑制することができる。しかも、ディザマスク62の基礎となるディザマスク61の閾値配置は、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有しており、印刷される画像は、少なくとも共通領域において、いわゆるブルーノイズ特性に近い特性を示すことになり、所定程度の粒状性を確保することができる。
【0091】
かかるプリンター20の具体的な効果の例を図19に示す。図19は、シミュレーション結果である。具体的には、良好なブルーノイズ特性を示すディザマスクを用いたドット形成パターンに対して、主走査方向と副走査方向とに種々の量のBi−Dずれが生じたケースを設定し、各々のケースについて被覆率を求め、プロットしている。図9の横軸は、主走査方向と副走査方向との位置ずれ量の合計値(以下、総ずれ量ともいう)である。シミュレーションの前提条件は、以下の通りである。
(1)階調値:80/255
(2)インターレース処理:タスキモード
(3)ドットサイズ:ドットの直径は画素間サイズの2倍
(4)位置ずれ量:下記の通り
【0092】
位置ずれ量については、主走査方向のずれ量として、0画素と、0.5〜5.5画素の間を1画素間隔でそれぞれ採用し、7通りのすれ量を設定した。また、副走査方向のずれ量として、0〜4画素の間を0.5画素間隔でそれぞれ採用し、9通りのずれ量を設定した。図9では、これらのずれ量のすべての組み合わせ(63通り)のBi−Dずれのケースのうち、総ずれ量が7画素未満のケース(51通り)の被覆率をプロットしている。
【0093】
図9に示すように、総ずれ量が0画素のケースと、2画素のケースとを比較すると、被覆率は、10%以上の差が生じることとなる。一方、総ずれ量が2画素よりも大きくなると、被覆率の変動量は、総ずれ量の増加に伴い、小さくなっていくことが分かる。総ずれ量が2画素のケースと3画素のケースとを比較すると、被覆率の変動は2%程度である。そして、総ずれ量が5画素を超えると、被覆率の変動は非常に安定し、総ずれ量が増加しても、被覆率はほとんど変動しない状態となっている。このことは、上述したディザマスク62を生成する際の閾値のずらし量を5画素以上とすれば、ペアドット発生率Kがk2にほぼ収束することと対応している。
【0094】
ここで、ディザマスク62を生成する際の閾値のずらし量を5画素とした場合、仮に、実際に生じる位置ずれ量が±2画素であれば、印刷画像に現れる実質的な位置ずれ量の範囲は、3画素から7画素の範囲となる。この範囲において、被覆率の変動幅は、2%未満である。一方、ディザマスク62を生成する際の閾値のずらし量を0画素とした場合、つまり、ブルーノイズ特性を有する従来のディザマスク61を用いる場合、実際に生じる位置ずれ量が±2画素であれば、印刷画像に現れる実質的な位置ずれ量の範囲は、−2画素から2画素の範囲となる。この範囲において、被覆率の変動幅は、14%以上にも及ぶ。
【0095】
以上の説明からも明らかなように、ディザマスク62は、被覆率の変動を大幅に抑制することが可能である。被覆率が局所的に変動することは、印刷画像の濃度ムラの発生を意味する。したがって、ディザマスク62を用いて印刷画像の被覆率の変動を抑制すると、濃度ムラの発生を大幅に抑制することが可能となる。
【0096】
ディザマスク61の閾値配置に対して閾値をずらしたディザマスク62の閾値配置は、ディザマスク61を使用した場合に生じる位置ずれと同様の影響を印刷画質に与え、ディザマスク61よりも粒状性が劣化することになる。しかし、ディザマスク62の基礎となるディザマスク61の閾値配置は、往動画素グループと復動画素グループの各々において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定されているので、ディザマスク62を用いて印刷した印刷画像は、かかる劣化を抑制することができる。つまり、ディザマスク62は、粒状性の悪化を抑制しつつ、濃度ムラの発生を大幅に抑制することができる。
【0097】
上述したディザマスク62は、上述したように、良好なブルーノイズ特性を有するディザマスク61の閾値のうちの、一部の画素グループに対応する閾値をずらして生成する。したがって、ディザマスク62は、所定の性質を有することとなる。すなわち、ディザマスク62の閾値配置のうち、一部の画素グループに対応する閾値を、種々の方向に種々の量だけずらしたディザマスクを複数生成すると、これらのディザマスクのうちの、ある方向へある量だけずらしたディザマスクは、ディザマスク62よりも良好なブルーノイズ特性を有し、その印刷画像は、粒状性が改善するという性質を有することとなる。別の言い方をすれば、ディザマスク62は、ホワイトノイズマスクに近いペアドット発生率Kを維持しながら、極力、ホワイトノイズマスクよりもブルーノイズマスクに近い空間周波数特性を持つようにしたディザマスクとも言える。
【0098】
B.変形例:
上述の実施形態の変形例について説明する。
B−1.変形例1:
上述の実施形態においては、上記ステップS231においては、印刷画像の画素群を、往動ドットからなる画素グループと、復動ドットからなる画素グループとに区分して、ディザマスク61の閾値配置に対して、いずれか一方の画素グループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらしてディザマスク62を生成する構成について示した。ただし、区分する画素グループは、上述の例に限定されるものではなく、印刷条件が異なる画素グループであればよい。
【0099】
例えば、印刷ヘッド90を複数回の主走査によって、所定領域の画像を印刷する場合に、印刷画像の画素群を、複数回の主走査のうちの互いに異なる主走査によってドットが形成される画素のグループに区分してもよい。例えば、図3に示した着目領域は、パス1〜4によって画像が完成する領域が繰り返されて構成される。したがって、印刷画像の画素群を、各パスに対応する4つの画素グループ1〜4に区分してもよい。この場合、閾値ずらし処理では、1つの画素グループ、例えば、画素グループ1を基準として、他の画素グループ2〜4の少なくとも1つに対応する閾値をずらせばよい。例えば、画素グループ2に対応する閾値を主走査方向に4画素、画素グループ3に対応する閾値を副走査方向に4画素、画素グループ4に対応する閾値を主走査方向に2画素、副走査方向に2画素ずらしてもよい。閾値をずらす方向や刷らし量は、パス間の位置ずれの発生特性を考慮して、適宜設定すればよい。
【0100】
B−2.変形例2:
上述の実施形態においては、全ての印刷階調の範囲において、評価値Eを算出して、ディザマスク61の閾値配置を決定したが、一部の印刷階調の範囲において、評価値Eに基づいて閾値配置を決定してもよい。例えば、ドットの分散性が大きな問題とならない高階調印刷領域では、別の手法でディザマスク61の閾値配置を設定してもよい。
【0101】
B−3.変形例3:
上述の実施形態においては、ディザマスク61およびディザマスク62をEEPROM60に予め記憶しておく構成としたが、かかる構成に限られるものではない。例えば、EEPROM60には、ディザマスク61およびディザマスク62のいずれか一方を予め記憶しておいてもよい。この場合、CPU40は、ディザマスク生成部としても機能して、ディザマスク61およびディザマスク62のいずれか一方から、他方を生成する構成としてもよい。もとより、ハーフトーン処理において、印刷媒体の種類に応じて、ディザマスクを選択することは必須ではなく、プリンター20が、ディザマスク62のみを記憶しておき、印刷媒体の種類に関係なく、ディザマスク62を固定的に用いてもよいし、ディザマスク61とは別のディザマスクとディザマスク62とを切り替えて用いてもよい。
【0102】
B−4.変形例4:
ハーフトーン処理において、ディザマスクを主走査方向に複数回繰り返し適用する際に、ディザマスクの適用位置を副走査方向に所定量ずらして適用することがある。かかる場合の閾値ずらし処理について説明する。閾値ずらし処理を施したディザマスク62の閾値配置例を図20に示す。この例では、図示するように、ディザマスク62を主走査方向に複数回繰り返し適用する際に、ディザマスクの適用位置を副走査方向に1画素ずつずらして適用するケースを示している。
【0103】
この例では、ディザマスク61に対して、復動閾値が主走査方向(図中の左方向)に4画素分ずらしている。また、かかるずらしに加えて、復動閾値のうちの「1,x」と「3,x」(xは0〜7の整数)の閾値を副走査方向(図中の上方向)に1画素分ずらしている。これは、ディザマスク61が、副走査方向に所定量ずらして適用することを前提に最適化されているからである。具体的には、ディザマスク61では、例えば、復動閾値に着目すると、ディザマスク61では、「7,0」の隣の復動閾値が「1,1」となるように最適化されている。図示する図20に示す閾値配置は、このような復動閾値の相対関係を維持させるために、復動閾値のうちの「1,x」と「3,x」の閾値を副走査方向に1画素分ずらしている。こうすれば、ディザマスク61の前提条件が維持されるので、粒状性の劣化を抑制することができ、望ましい。
【0104】
B−5.変形例5:
上述の実施例においては、ドットの分散の程度を示す評価値Eqとして、粒状性指数を用いたが、評価値Eqは、ドット配置の分散の程度を評価できるものであればよい。例えば、評価値Eqは、RMS粒状度を用いてもよい。RMS粒状度は公知の技術であるため(例えば、特開2007−174272号公報)、詳しい説明は省略するが、ドット密度値に対して、ローパスフィルターを用いてローパスフィルター処理を行うとともに、ローパスフィルター処理がなされた密度値の標準偏差を算出するものである。あるいは、画素位置からの距離に反比例する重み値のフィルターなど、適当なローパスフィルター処理後のドット密度を評価値Eqとしてもよい。
【0105】
B−6.変形例6:
上述の実施形態においては、本発明の印刷装置を、シリアル式プリンターとして実現した例について示したが、本発明は、ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、当該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行って、印刷画像を出力する印刷装置に広く適用することができる。異なる印刷条件とは、ドットを形成するタイミング、位置、印刷ヘッドやノズルの違いとすることができる。
【0106】
例えば、本発明の印刷装置は、インクジェット式のラインプリンターとしても実現することができる。具体的には、例えば、印刷範囲に亘って配列され、印刷媒体上にドットを形成する複数の印刷ヘッドを備えるラインプリンターであってもよい。かかるラインプリンターは、複数の印刷ヘッドのうちの隣り合う印刷ヘッド同士は、印刷ヘッドの配列の方向において一部が重複するように配列されたものとすることができる。この重複領域では、2つの印刷ヘッドによって形成されたドットが組み合わされて、印刷画像が完成する。かかるラインプリンターに対しては、上記ステップS231においては、複数の印刷ヘッドのうちの互いに異なる印刷ヘッドによってドットが形成される画素のグループの各々に区分してもよい。
【0107】
あるいは、印刷範囲に亘ってノズルが配列され、インクを吐出するノズル列を、ノズル列の配列の方向と交わる交差方向、つまり、紙送り方向に複数備えるラインプリンターであってもよい。かかるラインプリンターは、ノズル列を複数備えることによって、印刷解像度を向上させることができる。つまり、2つのノズル列によって形成されたドットが組み合わされて、印刷画像が完成する。複数のノズル列間で、ノズルの配列方向のノズル位置が同じであれば、紙送り方向の印刷解像度を向上させることができる。また、複数のノズル列間で、ノズルの配列方向のノズル位置が異なれば、ノズルの配列方向の印刷解像度を向上させることができる。かかるラインプリンターに対しては、上記ステップS231においては、複数のノズル列のうちの互いに異なるノズル列によってドットが形成される画素のグループの各々に区分してもよい。かかる場合、複数のノズル列は、1つの印刷ヘッドが備えていてもよいし、異なる印刷ヘッドが個別的に備えていてもよい。
【0108】
また、1つのノズル列を構成するノズルが、ノズル列の配列方向に千鳥形状に配列されている場合には、この千鳥形状を形成する2つのノズル群、つまり、紙送り方向において位置が異なる2つのノズル群によってドットが形成される画素のグループの各々に区分してもよい。
【0109】
これらのラインプリンターでは、紙送り方向に位置ずれが生じやすい。したがって、ラインプリンターに用いるディザマスク62の生成では、閾値ずらし処理において、紙送り方向と異なる方向、つまり、紙送り方向と交差する方向のずらし量を相対的に大きくするとよい。
【0110】
B−7.変形例7:
上述した実施形態においては、プリンター20が単独で印刷を行う構成としたが、プリンターとコンピューター(端末としてのコンピューター、プリントサーバーとしてのコンピューターなど)とが接続された印刷システム(広義の印刷装置)において印刷処理を行う場合には、図2に示した印刷処理の一部を、コンピューターが行ってもよい。例えば、RIP(Raster Image Processor)によってハーフトーン処理されたドットデータを、プリンター20において印刷してもよい。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における構成要素のうち、独立クレームに記載された要素に対応する要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、印刷装置としてのほか、ディザマスクの生成方法、印刷装置の製造方法等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0112】
20…プリンター
30…制御ユニット
40…CPU
41…印刷部
42…ドットデータ生成部
43…受付部
51…ROM
52…RAM
60…EEPROM
61,62…ディザマスク
70…キャリッジモーター
71…駆動ベルト
72…プーリ
73…摺動軸
74…紙送りモーター
75…プラテン
80…キャリッジ
82〜87…インクカートリッジ
90…印刷ヘッド
98…メモリカードスロット
99…操作パネル
P…印刷媒体
MC…メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置であって、
印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意されたディザマスクの各閾値とを比較することによって生成された、ドット形成の有無を表すドットデータに応じて前記印刷媒体上に前記ドットを形成して、前記画像を印刷する印刷部を備え、
前記印刷部は、前記ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行い、
前記ディザマスクは、少なくとも一部の印刷階調領域において、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記共通領域において形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定された前記閾値の各々の配置である第1の閾値配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらした第2の閾値配置を有する
印刷装置。
【請求項2】
前記第1の閾値配置は、前記複数の画素グループの各々において、該画素グループに属するドットの分布が、前記空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように設定された請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の印刷装置であって、
前記所定の方向は、1つ、または、2つの方向であり、
前記印刷装置は、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係からずれる方向に特異性を備え、
前記第2の閾値配置における前記閾値のずらし量は、前記特異にずれやすい特定の方向とは異なる方向についてのずらし量が、前記特定の方向についてのずらし量よりも大きい
印刷装置。
【請求項4】
更に、前記ディザマスクを使用して、前記ドットデータを生成するドットデータ生成部を備えた請求項1ないし請求項3のいずれか記載の印刷装置。
【請求項5】
請求項4記載の印刷装置であって、
更に、前記印刷媒体の種類を受け付ける受付部を備え、
前記ドットデータ生成部は、
前記第2の閾値配置を有するディザマスクである第2のディザマスクに代えて、前記第1の閾値配置を有するディザマスクである第1のディザマスクを使用して生成された前記ドットデータに応じて、前記画像を印刷可能に構成され、
前記受け付けた印刷媒体の種類に応じて、前記第1のディザマスクと前記第2のディザマスクとのうちから、前記使用するディザマスクを決定する
印刷装置。
【請求項6】
更に、前記第1のディザマスクおよび前記第2のディザマスクのうちのいずれか一方のディザマスクに対して、該一方のディザマスクの前記一部のグループに対応する閾値をずらして、他方のディザマスクを生成するディザマスク生成部を備えた請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の印刷装置であって、
前記印刷部は、印刷ヘッドを主走査方向に対して往復動させるとともに、往動の主走査と復動の主走査の双方で前記印刷ヘッドからインクを吐出させることによって、前記ドットを形成して、前記画像を印刷し、
前記複数の画素グループは、前記往動の主走査によって前記ドットが形成される画素のグループと、前記復動の主走査によって前記ドットが形成される画素のグループとである
印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の印刷装置であって、
前記印刷部は、印刷ヘッドを主走査方向に対して走査させつつ、前記印刷ヘッドからインクを吐出させることによって、前記ドットを形成するとともに、複数回の主走査によって、所定領域の前記画像を印刷し、
前記複数の画素グループは、前記複数回の主走査のうちの互いに異なる主走査によってドットが形成される画素のグループの各々である
印刷装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の印刷装置であって、
印刷範囲に亘って配列され、前記印刷媒体上に前記ドットを形成する複数の印刷ヘッドを備え、
前記複数の印刷ヘッドのうちの隣り合う印刷ヘッド同士は、前記配列の方向において一部が重複するように配列され、
前記印刷部は、前記印刷媒体を前記複数の印刷ヘッドに対して相対的に移動させつつ、前記複数の印刷ヘッドからインクを吐出させることによって、前記ドットを形成して、前記画像を印刷し、
前記複数の画素グループは、前記複数の印刷ヘッドのうちの互いに異なる印刷ヘッドによってドットが形成される画素のグループの各々であり、
前記共通領域は、前記隣り合う印刷ヘッド同士が重複する領域である
印刷装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれか記載の印刷装置であって、
印刷範囲に亘ってノズルが配列され、インクを吐出するノズル列を前記配列の方向と交わる交差方向に複数備え、
前記印刷部は、前記印刷媒体を前記複数のノズル列に対して前記交差方向に相対的に移動させつつ、前記複数のノズル列からインクを吐出させることによって、前記ドットを形成して、前記画像を印刷し、
前記複数の画素グループは、前記複数のノズル列のうちの互いに異なるノズル列によってドットが形成される画素のグループの各々である
印刷装置。
【請求項11】
印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置であって、
印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意されたディザマスクの各閾値とを比較することによって生成された、ドット形成の有無を表すドットデータに応じて前記印刷媒体上に前記ドットを形成して、前記画像を印刷する印刷部を備え、
前記印刷部は、前記ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行い、
前記ディザマスクは、少なくとも一部の印刷階調領域において、前記複数の画素グループ間の前記ドットの相対位置が、目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記ドットの各々が前記印刷媒体上を覆う面積の比率である被覆率が、前記目標位置関係からずれて形成された場合よりも大きくなるように設定された前記閾値の各々の配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらした前記閾値の配置を有する
印刷装置。
【請求項12】
印刷媒体上へのドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行って、印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置において、前記印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意された各閾値とを比較することによって、ドット形成の有無を表すドットデータを生成するために用いる、前記各閾値によって構成されるディザマスクの製造方法であって、
少なくとも一部の印刷階調領域において、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記共通領域において形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように、前記閾値の各々の配置を決定する第1の閾値配置工程と、
前記第1の工程によって決定された前記閾値の各々の配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらして、前記ディザマスクを生成する第2の閾値配置工程と
を備えたディザマスクの製造方法。
【請求項13】
印刷装置の製造方法であって、
印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置を用意する工程であって、
前記印刷装置は、
印刷する画像の画像データに基づく各画素の階調値と、予め用意されたディザマスクの各閾値とを比較することによって生成された、ドット形成の有無を表すドットデータに応じて前記印刷媒体上に前記ドットを形成して、前記画像を印刷する印刷部と、
前記ディザマスクを記憶する記憶部と
を備え、
前記印刷部は、前記ドットの形成を、印刷条件が異なる複数の画素グループに分けて行うとともに、該複数の画素グループによるドットの形成の少なくとも一部を共通領域で行う
前記印刷装置を用意する工程と、
少なくとも一部の印刷階調領域において、前記画素グループ間の前記ドットの相対位置が目標とされる目標位置関係で形成された場合に、前記共通領域において形成されるドットの分布が、空間周波数領域において、高周波側にピークを持つノイズ特性を有するように、前記ディザマスクの前記閾値の各々の配置を決定する第1の閾値配置工程と、
前記第1の閾値配置工程によって決定された前記閾値の各々の配置に対して、前記複数の画素グループのうちの一部のグループに対応する閾値を所定の方向に所定画素分だけずらして、前記ディザマスクを生成する第2の閾値配置工程と、
前記生成したディザマスクをコンピューターが読み取り可能に前記記憶部に記録する工程と
を備えた印刷装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−204940(P2012−204940A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65689(P2011−65689)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】