説明

印刷装置および印刷装置の制御方法

【課題】吐出ヘッドに対し液体の無駄な消費を抑えた適切なメンテナンスを行うことのできる印刷装置および印刷装置の制御方法を提供する。
【解決手段】複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部41と、複数の吐出ノズルについて吐出の有無を検査する吐出検査部42と、複数の吐出ノズルから液滴を吸引してクリーニングを行うクリーニング部であって、所定の間隔でクリーニングを行うタイムクリーニングモードと吐出検査の検査結果に基づいてクリーニングを行う吐出検査クリーニングモードとのうちいずれかでクリーニングを行うクリーニング部43と、印刷部の稼働状況に基づいてタイムクリーニングモードおよび吐出検査クリーニングモードのうち、いずれのモードを実施するかを判定する判定部46と、判定結果に応じてタイムクリーニングモードと、吐出検査クリーニングモードとの間でモードを切り替えるモード切替部47と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ヘッドのメンテナンス機能を有した印刷装置および印刷装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、吐出ヘッド内の液体を外部に排出させて吐出ヘッドの吐出性能を回復させる回復手段を備え、ユーザーの使用状況に応じて、回復手段を制御する印刷装置が提案されている(特許文献1参照)。当該印刷装置は、ユーザーの使用状況として、電源の入り切りの頻度、印刷枚数、よく行う印刷の種類(モノクロ印刷またはカラー印刷)を検出し、その検出結果に応じて、上記の回復手段が行う回復動作の実行頻度や、回復動作の対象となる液体の種類等を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−066849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吐出ヘッドから液体を外部に排出させることで吐出ヘッドの吐出性能の回復を図る回復動作は一定量の液体を必要とするため、印刷動作以外に多くの液体を消費することになる。吐出ヘッドのメンテナンス機能を備えた印刷装置において印刷動作以外における液体消費を最低限に抑えることが理想であるが、上記のような印刷装置では、回復動作を行う前に実際の吐出ヘッドの吐出状況を確認できないため、吐出ヘッドに不良がなく回復動作が必要無いにもかかわらず、吐出ヘッドから液体を排出する回復動作を行ってしまう場合がある。すなわち、印刷動作以外において必要以上に液体を消費してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、吐出ヘッドに対し、液体の無駄な消費を抑えた適切なメンテナンスを行うことのできる印刷装置および印刷装置の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、複数の吐出ノズルについて吐出の有無を検査する吐出検査部と、複数の吐出ノズルから液滴を吸引してクリーニングを行うクリーニング部であって、所定の間隔でクリーニングを行うタイムクリーニングモードと、吐出検査の検査結果に基づいてクリーニングを行う吐出検査クリーニングモードと、のうち、いずれかのモードで前記クリーニングを行うクリーニング部と、印刷部の稼働状況に基づいて、タイムクリーニングモードおよび吐出検査クリーニングモードのうち、いずれのモードを実施するかを判定する判定部と、判定部の判定結果に応じて、タイムクリーニングモードと、吐出検査クリーニングモードと、の間でモードを切り替えるモード切替部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の印刷装置の制御方法は、複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、複数の吐出ノズルについて吐出の有無を検査する吐出検査部と、複数の吐出ノズルから液滴を吸引してクリーニングを行うクリーニング部であって、所定の間隔でクリーニングを行うタイムクリーニングモードと、吐出検査の検査結果に基づいてクリーニングを行う吐出検査クリーニングモードと、のうち、いずれかのモードでクリーニングを行うクリーニング部と、を備えた印刷装置の制御方法であって、印刷装置が、印刷部の稼動状況に基づいて、タイムクリーニングモードおよび吐出検査クリーニングモードのうち、いずれのモードを実施するかを判定する判定ステップと、判定ステップにおける判定結果に応じて、タイムクリーニングモードと、吐出検査クリーニングモードと、の間でモードを切り替えるモード切替ステップと、を実行することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、吐出検査クリーニングモードによって、吐出ノズルの吐出状態を確認してからクリーニングを行うため、クリーニングが必要な場合にのみ吐出ノズルからの液滴吸引を行うため、クリーニングに消費する液体を最小限に抑えることができる。また、印刷部の稼働状況によって吐出検査クリーニングモードとタイムクリーニングモードとの間でモードを切り替えるため、印刷部の稼働状況にあった適切なメンテナンスを行うことができる。すなわち、印刷部の稼働状況によって不良吐出ノズルの発生頻度が異なることを考慮すると共に、印刷動作以外での液滴消費を抑えたメンテナンスを実施することができる。
【0009】
これらの場合、稼働状況は、印刷部の印刷量、および稼働時間の少なくとも一方を示すことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、稼働状況が印刷部の印刷量である場合、例えば、所定期間において印刷部の印刷量が少ない場合には、印刷部の使用頻度が低いことを考慮して液滴の吸引が必要なときのみクリーニングを行い(吐出検査クリーニングモード)、一方、所定期間において印刷部の印刷量が多い場合には、印刷部の使用頻度が高いことを考慮して、定期的にクリーニングを行う(タイムクリーニングモード)構成とすることができる。また、稼働状況が印刷部の稼働時間である場合、例えば、所定期間において稼働時間が長い場合には、吐出ヘッド内に吐出不良の原因となる気泡が発生および成長する可能性が高いことを考慮して、定期的にクリーニングを行い(タイムクリーニングモード)、所定期間において稼働時間が短い場合には、吐出ヘッド内に気泡が発生および成長する可能性が低いことを考慮して、必要なときのみクリーニングを行う(吐出検査クリーニングモード)構成とすることができる。
【0011】
また、判定部は、印刷部の環境温度を測定する環境温度測定部を備え、モード切替部は、環境温度測定部の測定結果に応じて、モードを切り替えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、例えば、環境温度が高い場合には、吐出ヘッド内に吐出不良の原因となる気泡が発生および成長する可能性が高いことを考慮して、定期的にクリーニングを行い(タイムクリーニングモード)、環境温度が低い場合には、吐出ヘッド内に気泡が発生および成長する可能性が低いことを考慮して、必要なときのみクリーニングを行う(吐出検査クリーニングモード)構成とすることができる。なお、環境温度とは、印刷装置内における印刷部付近の温度とすることが望ましい。
【0013】
これらの場合、モード切替部は、モードをタイムクリーニングモードに切り替えた場合、可動状況に応じて、クリーニングを行う所定の間隔を変更することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、クリーニングの実施前に吐出ノズルの吐出検査を行わないタイムクリーニングモードにおいて、印刷部の稼働状況に応じてクリーニングの実行間隔を変更することによって、不必要なクリーニングによる液滴消費過多をおさえることができる。
【0015】
これらの場合、吐出検査クリーニングモードにおいて、クリーニング部は、所定回数の吐出検査において、所定数を超える吐出ノズルに対して吐出「無」と判定された場合、印刷部に対してクリーニングを行うことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、実際に吐出不良がある場合にのみクリーニングを実施するため、メンテナンスに要する時間および液滴の消費量を抑えることができる。
【0017】
これらの場合、吐出検査クリーニングモードにおいて、印刷部は、クリーニングの実行後に、直前に実行した印刷を再度実行することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、印刷不良が発生した印刷について自動的に再印刷が行われるため、利便性が良い。
【0019】
これらの場合、吐出検査部は、印刷部に吐出ノズルから帯電液滴を吐出させる吐出駆動部と、吐出された帯電液滴を着弾させる吐出対象と、帯電液滴の着弾により吐出対象に発生する電流の変化を検出する検出部と、を備え、電流の変化によって吐出ノズルの吐出の有無を検査することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、吐出検査において消費する液滴の量が微量であるため、印刷以外のメンテナンスに要する液滴の消費量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態にかかる印刷装置の外観斜視図である。
【図2】吐出ヘッドの外観側面図である。
【図3】吐出ヘッドのインク導入部側からの平面図(a)、およびノズル面側からの平面図(b)である。
【図4】ノズル面における吐出ノズルの配置を示した模式図(a)、および各ノズル列が吐出するインクの種類を示した図(b)である。
【図5】ヘッドキャップの断面図である。
【図6】印刷装置の制御構成を示したブロック図である。
【図7】モード切替処理を示したフローチャートである。
【図8】タイムクリーニングモードにおける印刷処理を示したフローチャートである。
【図9】吐出検査クリーニングモードにおける印刷処理を示したフローチャートである。
【図10】検査対象となるノズル列の切り替えパターンを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照し、本発明の一実施形態にかかる印刷装置および印刷装置の制御方法について説明する。本実施形態の印刷装置は、印刷媒体であるロール紙に対して、例えば伝票の印刷など、定型フォーマットに固有の情報が盛り込まれた印刷データに基づく印刷(以下、単位印刷と称す)を繰り返し実行する。また、本印刷装置は、単位印刷が終了するごとに実行する吐出検査の結果に基づいて吐出ヘッドのクリーニング処理を行う吐出検査クリーニングモードと、定期的にクリーニング処理を行うタイムクリーニングモードと、の2つのモードを有している。以下、印刷装置にセットされたロール紙の幅方向を主走査方向とし、ロール紙の長手方向を副走査方向として、説明を進める。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の印刷装置1は、ロール紙2を収容するロール紙収容部3と、複数種類のインク(液滴)をロール紙2に吐出する吐出ヘッド4を搭載したキャリッジ5と、キャリッジ5を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構6と、ロール紙2の端を副走査方向に引き出すロール紙搬送機構7と、吐出ヘッド4に対してカラーインクを供給するインク供給機構8と、吐出ヘッド4のメンテナンスを行うメンテナンス機構9と、これらの各構成部を統括的に制御する制御部40(図6参照)と、を備え、全体が不図示のケースに覆われている。また、印刷装置1は、ロール紙2をロール紙収容部3から着脱するためのロール紙カバー(図示省略)や、インク供給機構8のインクカートリッジ10を着脱するためのカートリッジカバー11を備えている。
【0024】
キャリッジ移動機構6は、キャリッジ5を主走査方向に移動可能に支持するガイド軸12と、ガイド軸12に併設された環状ベルト13と、環状ベルト13を回転させるキャリッジモーター14と、を有している。キャリッジ移動機構6は、キャリッジモーター14の駆動によって環状ベルト13を回転させ、ガイド軸12にしたがってキャリッジ5を主走査方向に移動させる。
【0025】
ロール紙搬送機構7は、ロール紙2上でキャリッジ5と対面するプラテン15と、上方を通過するロール紙2の端を副走査方向に繰り出す搬送ローラー16と、を有している。プラテン15は、キャリッジ5に搭載された吐出ヘッド4にロール紙2を押し当て、搬送ローラー16は、印刷済みのロール紙2をキャリッジ側に押し当てた状態で繰り出して排出する。
【0026】
インク供給機構8は、インクカートリッジ装着部17に装着されたインクカートリッジ10と、インクカートリッジ10に収容された各カラーインクに対応したインクパックから吐出ヘッド4にカラーインクを供給するためのインク流路18およびインク供給チューブ19と、を有している。本実施形態では、シアン(C)、マゼンダ(M)、およびイエロー(Y)の3色のカラーインクに対応したインクパックおよびインク供給チューブ19を備えている。
【0027】
メンテナンス機構9は、ロール紙2上から主走査方向に外れた位置でキャリッジ5と対面し、吐出ヘッド4のノズル面20を封止するヘッドキャップ21(図5参照)、インク吸引機構、およびワイピング機構(いずれも不図示)を有している。ヘッドキャップ21には、インク吸引機構のチューブの一端が接続され、インク吸引機構のポンプモーターが駆動されることによってヘッドキャップ21内が減圧され、ノズル面20に形成された吐出ノズルNからカラーインクを吸引する。ワイピング機構は、ノズル面20の汚れをゴム製のワイパによって払拭する。メンテナンス機構9は、このようなインク吸引機構によるインク吸引処理およびワイピング機構によるワイピング処理を行うことによって吐出ヘッド4のクリーニング処理を実施する。なお、このクリーニング処理は、多数の吐出不良の吐出ノズルを発生させる原因となる吐出ヘッド4内の気泡を除去する目的で実施するものであり、インク吸引機構は、制御部40の制御信号に基づいた所定の吸引力でインクを吸引する。
【0028】
メンテナンス機構9は、後述の吐出検査クリーニングモードにおいて、吐出ヘッド4の吐出検査を行った後、当該吐出検査によって吐出不良と判定された場合において、クリーニング処理を行う。一方、後述のタイムクリーニングモードにおいて、10日ごとまたは15日ごとにクリーニング処理を実行する。なお、メンテナンス機構9は、タイムクリーニングモードにおいて、単位印刷を所定回数終了するごとに、吐出不良予防を目的とした軽い吸引力でインクの吸引を行う定期吸引処理も実施する。いずれも、後に詳述する。
【0029】
なお、キャリッジ5がロール紙2に対面する位置を印刷位置P1とし、キャリッジ5がメンテナンス機構9に対面する位置をメンテナンス位置P2とする。印刷装置1は、キャリッジ5を印刷位置P1に移動させて印刷を行い、キャリッジ5をメンテナンス位置P2に移動させて吐出ヘッド4のメンテナンスを行う。
【0030】
図2および図3に示すように、吐出ヘッド4は、いわゆる6連のインクジェットヘッドであり、6連の接続針22を有するインク導入部23と、インク導入部23に連なるヘッド基板24と、ヘッド基板24に連なりインクを吐出するヘッド本体25と、を備えている。インク導入部23は、6列のノズル列NLA,NLB,・・・,NLFに対応した6連の接続針22A,22B,・・・,22Fを有しており、インク供給機構8からインクが供給されるようになっている。なお、各接続針22とノズル列NLとの対応は、図3に示すとおりである。また、ヘッド本体25は、ピエゾ素子等で構成される6連のポンプ部26と、複数の吐出ノズルNが形成されたノズル面20を有するノズルプレート27と、を有している。印刷装置1は、制御部40から出力した駆動波形が各ポンプ部26に印加することで、各吐出ノズルNからカラーインクを吐出する。
【0031】
図4は、ノズルプレート27のノズル面20に形成された吐出ノズルNの配置を示した模式図である。なお、本図は、図3におけるノズルプレート27を上下に回転させた状態を示している。図示のように、ノズルプレート27のノズル面20に形成された多数の吐出ノズルNは、6列のノズル列NLA,NLB,・・・,NLFを有しており、各ノズル列NLは、副走査方向に等ピッチ(ノズルピッチ)で並べられた90個の吐出ノズルN1,・・・,N90で構成されている。各ノズル列NLは、ノズル列NLA,NLC,NLEの3列が基準位置1に配置され、ノズル列NLB,NLD,NLFの3列が基準位置1に対して半ノズルピッチ副走査方向に位置ズレした基準位置2に配置されて構成されている。すなわち、各ノズル列NLは、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設されている。
【0032】
図4(b)は、各ノズル列NLが吐出するカラーインクの種類を示している。図示のように、ノズル列NLA,NLFはシアン(C)、ノズル列NLB,NLEはマゼンダ(M)、ノズル列NLC,NLDはイエロー(Y)、を吐出する。すなわち、基準位置の異なる2列のノズル列NLによって、各種カラーインクが吐出される。
【0033】
吐出ヘッド4は、主走査方向に移動しながら、各ノズル列NLにおいてロール紙搬送方向下流側から数えて同番目の吐出ノズルNで構成される6つの吐出ノズルNからのインクの吐出により、副走査方向における最小印字幅(最小印刷幅)を印刷する。最小印字幅とは、印刷装置1が印刷可能な最小の線幅である。例えば、図4(a)に示すように、6つの吐出ノズルN1A,N1B,N1C,N1D,N1E,N1Fによって、印刷領域における最も下流位置の最小印字幅を印刷する。すなわち、吐出ヘッド4は、半ノズルピッチの間隔を有する複数の吐出ノズルによって最小印字幅を印刷する構成となっている。また、吐出ヘッド4は、主走査方向に移動しながら、基準位置が同位置である各ノズル列NLの同ノズル番号の吐出ノズルNが、同じ位置に異なるカラーインクを吐出してカラー印刷を実現している。
【0034】
図5は、メンテナンス機構9のヘッドキャップ21の断面図である。図示のように、ヘッドキャップ21は、ノズル面20に密着可能なゴム等の弾性材からなるリップ部28と、吐出ヘッド4のノズル面20を封止可能な大きさの開口を有する箱型のキャップ本体29と、キャップ本体29の凹部30に収納され廃インクを吸収する多層構造の吸収材31と、キャップ本体29の凹部30に立設され吸収材31と導通可能な金属軸32と、金属軸32の下端に接続されたリード線33とを有している。吸収材31は、リップ部28と離間するよう押さえて配置されている。
【0035】
メンテナンス機構9は、吐出検査クリーニングモードにおいて、定型の印刷データに基づく印刷(単位印刷)が終了するごとに、吐出ヘッド4の吐出ノズルNのインクの吐出の有無を検査する。この吐出検査では、先ず、吐出ヘッド4のノズル面20に対してヘッドキャップ21が位置決めされた状態で対面し、この状態で複数の吐出ノズルNから帯電したインクを制御部からの駆動波形によって選択的に吐出させる(吐出駆動部)。そして、吐出された帯電インクが吸収材31(吐出対象)に着弾して発生する電流の変化を金属軸32およびリード線33を介して取り出し(検出部)、制御部により吐出の有無を判断する。なお、吐出検査は、1度に複数の吐出ノズルNに対して行われ、検査対象となった吐出ノズルNのうち、吐出「無」と判定された吐出ノズルNが所定数を越えた場合、吐出検査の結果が「吐出不良」と判定され、吐出「無」と判定された吐出ノズルNが所定数以内であった場合、吐出検査の結果が「吐出良好」と判定される。
【0036】
次に、図6を参照し、印刷装置1の制御構成について説明する。図示のように、印刷装置1は、印刷部41、吐出検査部42、クリーニング部43、計時部44、印刷履歴記憶部45およびこれらを統括制御する制御部40を有している。
【0037】
印刷部41は、上記の吐出ヘッド4、キャリッジ5、キャリッジ移動機構6、ロール紙搬送機構7、およびインク供給機構8で構成されており、ロール紙に対して印刷処理を行う。吐出検査部42は、主に吐出ヘッド4およびヘッドキャップ21で構成されており、吐出ヘッド4の吐出の有無を検査する。クリーニング部43は、インク吸引機構およびワイピング機構で構成されており、吐出ヘッド4に対してクリーニング処理を行う。
【0038】
計時部44は、いわゆるRTC(Real Time Clock)であり、日時をカウントする。本実施形態では、クリーニングモードにおいて、クリーニング処理を実施するタイミングを計るために用いられる。印刷履歴記憶部45は、直近の所定期間における定型の印刷データに基づく印刷(単位印刷)の実行回数を不揮発に記憶する。
【0039】
制御部40は、印刷部41、吐出検査部42、およびクリーニング部43を統括的に制御する。また、制御部40は、印刷部41の印刷状況(稼働状況)を判定する判定部46と、判定部46の判定結果に応じて、印刷およびメンテナンス動作のモードを切り替えるモード切替部47と、を備えている。判定部46は、印刷履歴記憶部45に記憶された直近の所定期間における単位印刷の実行回数から、1日における実行回数nを算出する。本実施形態では、この1日における実行回数nを直近の所定期間における単位印刷の実行回数の平均値とする。そして、算出した実行回数nに基づいていずれのモードに切り替えるかを判定する(判定部)。モード切替部47は、判定部46の判定結果に応じて、定期的に吐出ヘッド4のクリーニング処理を実施するタイムクリーニングモードと、単位印刷ごとに行われる吐出検査の結果に基づいてクリーニング処理を実施する吐出検査クリーニングモードと、のいずれかにモードを切り替える。
【0040】
次に、図7のフローチャートを参照して、本発明のモード切替処理について説明する。印刷装置1は、電源がONされると(S01)、1日当たりの単位印刷の実行回数を算出する(S02)。そして、実行回数nが「n≦10」、「10<n≦50」、および「50<n」のいずれであるかを判定する(S03)。判定結果が「n≦10」であった場合(S03:n≦10)、モードを吐出検査クリーニングモードに切り替える(S04)。
【0041】
一方、判定結果が「10<n≦50」であった場合(S03:10<n≦50)、10日間隔でクリーニング処理を実施する第1タイムクリーニングモードに切り替える(S05)。そして、前回実施されたクリーニング処理から10日経過していた場合(S06:Yes)、クリーニング処理を実施する(S07)。一方、判定結果が「50<n」であった場合(50<n)、15日間隔でクリーニング処理を実施する第2タイムクリーニングモードに切り替える(S08)。そして、そして、前回実施されたクリーニング処理から15日経過していた場合(S09:Yes)、クリーニング処理を実施する(S07)。
【0042】
次に、図8のフローチャートを参照し、本発明のタイムクリーニングモードにおける印刷処理について説明する。なお、上記の第2タイムクリーニングモードおよび第2タイムクリーニングモードのいずれも同様の処理を実行する。印刷装置1は、先ず、最初の単位印刷を実行する(S11)。そして、単位印刷を所定回数行った場合(S12:Yes)、定期吸引処理を行う(S13)。そして、すべての印刷が終了した場合(S14:Yes)、処理を終了する。一方、すべての印刷が終了していない場合、S11〜S14の処理を繰り返す。このように、本実施形態では、クリーニングモードにおいて単位印刷を所定回数行うごとに定期吸引処理を実行するため、1日当たりの単位印刷の実行回数nが比較的多い場合(50<n)、定期吸引処理によるインクの吸引が盛んに実施されているため、クリーニング処理の間隔を長く設定している(第2タイムクリーニングモード)。
【0043】
次に、図9および図10を参照し、吐出検査クリーニングモードについて説明する。図9のフローチャートは、吐出検査クリーニングモードにおける印刷処理を示している。印刷装置1は、先ず、最初の単位印刷を実行し(S21)、吐出ヘッド4の吐出検査を実施する(S22)。検査結果が「吐出不良」であった場合(S23:「吐出不良」)、吐出ヘッド4に対してクリーング処理を行う(S24)。その後、直前に実行した単位印刷の再印刷を行う(S25)。一方、吐出検査の検査結果が「吐出良好」であった場合(S23:「吐出良好」)。全印刷データに基づく印刷がすべて終了していれば(S26:Yes)、処理を終了する。全印刷データに基づく印刷がすべて終了していなければ(S26:No)、次の単位印刷を実行する(S07)。そして、前回の吐出検査における検査対象ノズルを切り替え(S28)、切り替えた検査対象ノズルに対して吐出検査を行う(S22)。以降、S22〜S28までの処理を繰り返す。
【0044】
続いて、図10を参照し、吐出検査クリーニングモードにおける吐出検査において検査対象となる吐出ノズルNについて説明する。印刷装置1は、吐出検査の所要時間を短縮すべく、制御部40によって各吐出検査において検査吐出する吐出ノズルNをノズル列NLごとに切り替える。すなわち、各吐出検査の検査対象となるノズル列NLを切り替える。
【0045】
図10には、吐出検査ごとの吐出ノズルNの切り替えパターンを3つ例示している。同図(a)に示すパターン1は、1回目の吐出検査において、基準位置1に配置されたノズル列NLA,NLC,NLEの3列を検査対象として吐出検査を行う。そして、2回目の吐出検査において、基準位置2に配置されたノズル列NLB,NLD,NLFの3列を検査対象として吐出検査を行う。すなわち、パターン1は、各吐出検査において、基準位置ごとに各カラーインクを吐出する吐出ノズルNを検査対象としている。これにより、毎回の吐出検査において、少なくとも各最小印字幅を形成する吐出ノズルNのうち各カラーを吐出するいずれかの吐出ノズルNについて吐出検査することができる。よって、「吐出不良」と判定された場合にクリーニング処理を実施して直前の単位印刷を再実行することで、各吐出検査においてすべての吐出ノズルNを検査対象とせずとも印字抜けを防ぐことができる。
【0046】
図10(b)に示すパターン2は、1回目の吐出検査において、基準位置1に配置され且つシアンのインクを吐出するノズル列NLA、イエローのインクを吐出するノズル列NLC、および基準位置2に配置され且つマゼンダのインクを吐出するノズル列NLBを検査対象として吐出検査を行う。そして、2回目の吐出検査において、残りのノズル列NLD,NLE,NLFを検査対象として、吐出検査を行う。同図(c)に示すパターン3は、1回目の吐出検査において、基準位置1に配置され且つシアンのインクを吐出するノズル列NLAおよび基準位置2に配置され且つマゼンダのインクを吐出するノズル列NLB、イエローのインクを吐出するノズル列NLDを検査対象として吐出検査を行う。そして、2回目の吐出検査において、残りのノズル列NLC,NLE,NLFを検査対象として、吐出検査を行う。すなわち、パターン2および3は、1回の吐出検査において、シアンおよびマゼンダを吐出する吐出ノズル列NLのうち、異なる基準位置に配置されたノズル列NLを検査対象としている。これにより、主にシアンおよびマゼンダの吐出が影響する黒ドットが、片方の基準位置における各吐出位置においてドット抜けすることを防ぐことができる。
【0047】
これまで説明した印刷装置1および印刷装置の制御方法によれば、1日当たりの単位印刷の実行回数によって、クリーニング処理の実施を制御するため、吐出ヘッド4に対して使用状況に合った適切なメンテナンス処理を行うことができる。すなわち、1日当たりの単位印刷の実行回数が少ない場合には(n<10)、吐出ヘッド4の使用頻度が低いことを考慮して、吐出検査によって吐出ノズルNの吐出状況を確認してからクリーニング処理を実施するか否かを判断するため、クリーニング処理において消費する液体を最小限に抑えることができる。また、さらに1日当たりの単位印刷の実行回数によって(10≦n<50または50≦nの場合)、クリーニング処理の実施間隔を変更するため、クリーニング処理の実施前に吐出ノズルNの吐出状況を確認しないタイムクリーニングモードにおいても、不必要なクリーニングによる液滴消費過多をおさえることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、判定部46が、印刷部41の稼動状況として1日当たりの単位印刷の実行回数を算出および判定したが、印刷部41の稼動状況として、所定期間における印刷装置1の稼働時間(=稼働時間の累計)を計測しても良い。計測例としては、1日当たりの稼働時間を計測しても良いし、1週間当たりの稼働時間を計測してもよい。なお、これらの場合、所定期間における印刷装置1の稼働時間が比較的長い場合に、タイムクリーニングモードに切り替え、所定期間における印刷装置1の稼働時間が比較的短い場合に、吐出検査クリーニングモードに切り替える構成とすることが好ましい。また、印刷部41の使用状況として、印刷部41の環境温度を計測しても良い。この場合、判定部に環境温度計測部を備えることが好ましい。また、印刷部41の環境温度が比較的高い場合に、タイムクリーニングモードに切り替え、印刷部41の環境温度が比較的低い場合に、吐出検査クリーニングモードに切り替えることが好ましい。なお、判定部46が判定する印刷部41の使用状況は、印刷部41の環境湿度、気圧などとしてもよい。
【0049】
また、本実施形態の吐出検査クリーニングモードにおける吐出検査方法によれば、所定量の印刷ごとに最小印字幅を形成する複数の吐出ノズルN内で吐出検査の検査対象を切り替えるため、各吐出検査における所要時間を短縮することができると共に、印字抜けを防ぐことができる。よって、全体の印刷処理に要する所要時間を短縮することができる。また、吐出検査において「吐出不良」と判定された場合にのみ吐出ヘッド4のクリーニング処理を行うため、クリーニング処理の実施回数を減らすことができ、印刷以外に消費するインク量を減少させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、1回の吐出検査において「吐出不良」と判定されるとクリーニング処理を実施する構成としたが、複数回の吐出検査において所定回数「吐出不良」と判定された場合に、クリーニング処理を実施する構成としてもよい。これによれば、印刷不良が発生していないにもかかわらず、不要にクリーニング処理を実施して印刷処理を遅らせることを防ぐことができる。また、不要な再印刷も減らすことができる。
【0051】
上記した印刷装置1における吐出ヘッド4の数、吐出ノズルNの数、ノズル列NLの数、インクの種類の数は任意である。また、印刷媒体は上記した連続紙に限られるものでなく、単紙にも適用可能である。この場合、単位印刷の実行回数を印刷枚数としてもよい。
【0052】
また、本発明は、上記した印刷装置1における制御部40、印刷履歴記憶部45、および計時部44を備えたパソコンと、すくなくとも印刷装置1における印刷部41、吐出検査部42、クリーニング部43、を接続した印刷システムにも適用可能である。
【0053】
また、上記した、印刷装置1の各構成要素をプログラムとして提供することも可能である。また、そのプログラムを記憶媒体(図示省略)に格納して提供することも可能である。記録媒体としては、CD−ROM、フラッシュROM、メモリカード(コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、メモリースティック等)、コンパクトディスク、光磁気ディスク、デジタルバーサタイルディスクおよびフレキシブルディスク等を利用することができる。
【0054】
また、上述した実施例によらず、印刷装置1の装置構成や処理工程等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【符号の説明】
【0055】
1:印刷装置 4:吐出ヘッド 9:メンテナンス機構 40:制御部 41:印刷部 42:吐出検査部 43:クリーニング部 46:判定部 47:モード切替部 N:吐出ノズル n:実行回数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、
前記複数の吐出ノズルについて吐出の有無を検査する吐出検査部と、
前記複数の吐出ノズルから液滴を吸引してクリーニングを行うクリーニング部であって、所定の間隔で前記クリーニングを行うタイムクリーニングモードと、前記吐出検査の検査結果に基づいて前記クリーニングを行う吐出検査クリーニングモードと、のうち、いずれかのモードで前記クリーニングを行うクリーニング部と、
前記印刷部の稼働状況に基づいて、前記タイムクリーニングモードおよび前記吐出検査クリーニングモードのうち、いずれのモードを実施するかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記タイムクリーニングモードと、前記吐出検査クリーニングモードと、の間でモードを切り替えるモード切替部と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記稼働状況は、前記印刷部の印刷量、および稼働時間の少なくとも一方を示すことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記印刷部の環境温度を測定する環境温度測定部を備え、
前記モード切替部は、前記環境温度測定部の測定結果に応じて、モードを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記モード切替部は、モードを前記タイムクリーニングモードに切り替えた場合、前記稼働状況に応じて、前記クリーニングを行う前記所定の間隔を変更することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記吐出検査クリーニングモードにおいて、前記クリーニング部は、所定回数の前記吐出検査において、所定数を超える吐出ノズルに対して吐出「無」と判定された場合、前記印刷部に対してクリーニングを行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記吐出検査クリーニングモードにおいて、前記印刷部は、前記クリーニングの実行後に、直前に実行した印刷を再度実行することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記吐出検査部は、
前記印刷部に前記吐出ノズルから帯電液滴を吐出させる吐出駆動部と、
吐出された前記帯電液滴を着弾させる吐出対象と、
前記帯電液滴の着弾により前記吐出対象に発生する電流の変化を検出する検出部と、を備え、
前記電流の変化によって前記吐出ノズルの吐出の有無を検査することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
複数の吐出ノズルから液滴を吐出して印刷を行う印刷部と、前記複数の吐出ノズルについて吐出の有無を検査する吐出検査部と、前記複数の吐出ノズルから液滴を吸引してクリーニングを行うクリーニング部であって、所定の間隔で前記クリーニングを行うタイムクリーニングモードと、前記吐出検査の検査結果に基づいて前記クリーニングを行う吐出検査クリーニングモードと、のうち、いずれかのモードで前記クリーニングを行うクリーニング部と、を備えた印刷装置の制御方法であって、
前記印刷装置が、
前記印刷部の稼動状況に基づいて、前記タイムクリーニングモードおよび前記吐出検査クリーニングモードのうち、いずれのモードを実施するかを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおける判定結果に応じて、前記タイムクリーニングモードと、前記吐出検査クリーニングモードと、の間でモードを切り替えるモード切替ステップと、を実行することを特徴とする印刷装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−224013(P2012−224013A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94780(P2011−94780)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】