説明

印刷装置の排紙監視機構及び排紙監視方法

【課題】インクジェットプリンタ等の印刷装置において、ユーザーの印刷ジョブデータを印刷途中で中断することを防止し、排紙トレイの最大許容量を最大限活用する。
【解決手段】印刷装置の排紙監視機構は、排出された用紙を蓄積する排紙台と、排紙台に蓄積された用紙の積載量を検出する積載量検出部331と、画像形成の対象となっている用紙の種類を取得する用紙種別取得部336と、積載量検出部331が検出した積載量に基づいて排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出する残容量算出部332と、用紙種別取得部により取得された用紙の種類と残容量算出部332が算出した残容量とに基づいて、排紙可能枚数を算出する枚数算出部334と、枚数算出部が算出した残容量を通知する通知部333と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタなどの印刷装置の排紙監視機構及び排紙監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大量の印刷や複写を行うプリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置が多く使用されている。画像形成装置には、画像形成がなされた用紙を排紙トレイ上にスタックする排紙装置が標準的に装備されている。このような排紙装置には、大量の収納容量をもった用紙積載装置が望まれている。しかし、排紙装置への積載容量には限度があり、大量の印刷により排紙装置の積載可能枚数を超えて排紙すると、紙詰まりや集積されたシートの落下等の排紙ジャムが発生していた。
【0003】
この排紙ジャムが生じる原因であるオーバーフロー(満杯状態)を起こさないために、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示された技術がある。特許文献1に開示された技術では、排紙トレイ上の用紙の集積高さを検出センサで検出する方法や、印刷枚数をカウントすることで印刷可能残量を検出する方法により、排紙トレイ上の用紙が最大許容量に達したか否かを判別して上流側の装置を停止する。また、特許文献2に開示された技術では、排紙容量の残量を検出し、ユーザーに対して警告、エラー表示等の報知することで排紙装置に排出された印刷済の用紙の持ち出しを催促する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−239323号公報
【特許文献2】特開平5−301430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の印刷可能残量の検出方法では、印刷用紙の種類別の厚さが考慮されていないため、排紙トレイ上に排紙された用紙が最大許容量に達するまでの正確な印刷可能残量を特定することはできない。また、特許文献2のユーザーに対する報知の場合についても、排紙トレイに排紙された用紙が一定のレベルになった状態で報知がなされるのみであり、排紙することが可能な排紙の残容量を表示することができないので、ユーザーは排紙トレイの最大許容量を最大限活用することができず、印刷及び排紙の作業に多くの時間を消費することになる。
【0006】
また、上述した特許文献に開示された技術では、いわゆるジョブデータと呼ばれる大量の印刷をひとまとまりの処理として実行する場合、ジョブ処理の途中で排紙台がオーバーフローとなったときには、ジョブ処理全体が停止されてしまう。したがって、1つのジョブデータでありながら、そのジョブ処理の停止前後で排紙トレイに排紙される印刷用紙が分かれてしまい、ユーザーにとって著しく作業効率が低下する可能性があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、排紙台の排紙の最大積載量を最大限活用すべく、排紙種類や排紙台の残容量等を認識して正確な印刷可能残数を算出し、また、この算出した正確な排紙可能枚数をユーザーに対して通知することで、ユーザーの作業効率を上げることのできる印刷装置の排紙監視機構及び排紙監視方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、排紙種類や排紙台の残容量等を認識して正確な印刷可能残数を算出し、ユーザーに対して通知することで、ユーザーのひとつの印刷ジョブデータを印刷途中で中断することを防止し、排紙台の排紙の最大積載量を最大限活用することができる印刷装置の排紙監視機構及び排紙監視方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1のアスペクトは、印刷済みの用紙が排出され、排出された用紙を積層して蓄積する排紙台と、前記排紙台に蓄積された排紙の積載量を検出する積載量検出部と、印刷の対象となっている用紙の種類を取得する用紙種別取得部と、前記積載量検出部により検出された積載量に基づいて、前記排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出する残容量算出部と、前記用紙種別取得部により取得された用紙の種類と、前記残容量算出部により算出された残容量とに基づいて、排紙可能枚数を算出する枚数算出部と、前記枚数算出部により算出された排紙可能枚数を通知する通知部と、を備えた印刷装置の排紙監視機構であることを要旨とする。
【0010】
前記第1のアスペクトによれば、排紙台における用紙の積載量から算出した積層可能な残容量と、用紙種別取得部により取得した用紙の種類とに基づいて、排紙可能枚数を算出することから、ユーザーが使用する用紙の厚みを反映させた正確な排紙可能枚数をユーザーに通知することができる。このため、ユーザーは前記通知部より通知された前記排紙可能枚数と自己の希望する印刷枚数と比較し、印刷指示を出すことができ、排紙ジャムの発生を低減することができ、印刷の作業効率を向上することができる。
【0011】
また、排紙監視機構は、複数枚に係る印刷をひとまとまりのジョブデータとして処理する印刷データ処理部と、前記ジョブデータに含まれる印刷枚数と前記排紙可能枚数とを比較する比較部と、をさらに備え、前記通知部は、前記比較部による比較結果を通知してもよい。
【0012】
前記構成によれば、排紙台における用紙の積載量から算出した積層可能な残容量と、用紙種別取得部により取得した用紙の種類とに基づいて、排紙可能枚数を算出することから、ユーザーが使用する用紙の厚みを反映させた正確な排紙可能枚数をユーザーに通知することができる。この際、排紙可能枚数とユーザーがジョブデータとしてひとまとまりにした印刷枚数とを比較し、その比較結果をユーザーに通知する。このため、印刷動作を実行した場合に排紙台の積載量がオーバーフローしてしまうような場合には、ユーザーはひとまとまりの印刷ジョブを実行する前に排紙台より排紙を取り出す等の作業が行え、複数枚あるひとまとまりの印刷ジョブの印刷用紙が途中で停止することを防止することができ、ユーザーの作業効率が向上される。
【0013】
また、排紙監視機構は、前記用紙種別取得部により取得された用紙の種類を履歴情報として記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された履歴情報に基づいて、印刷に使用された用紙の種類を解析する推定部と、をさらに備え、前記枚数算出部は、前記推定部により推定された用紙の種類に基づいて、前記排紙可能枚数を補正してもよい。
【0014】
前記構成によれば、前記推定部が、ユーザーが過去に印刷した用紙種類を履歴情報とし、これを利用して積層可能な残容量として算出された排紙可能枚数を補正するため、現在の用紙設定のみならず過去の用紙の使用傾向を反映させて適正な最大排紙可能枚数を算出することができる。
【0015】
また、前記用紙種別取得部は、ユーザーによる操作によって指定された用紙種別に関する情報を取得することによって、前記印刷の対象となっている用紙の種類を取得してもよい。
【0016】
前記構成によれば、操作パネルや印刷アプリケーション(ドライバ)上におけるユーザー操作に基づいて、用紙の種類を取得できるため、ユーザーの意思を反映させた排紙可能枚数を算出することができる。
【0017】
また、前記用紙種別取得部は、画像を形成するために用紙を搬送する搬送経路に用紙を供給する給紙機構において設定された給紙圧に関する情報を取得することによって、前記印刷の対象となっている用紙の種類を取得してもよい。
【0018】
前記構成によれば、給紙機構における給紙圧に基づいて用紙の種別を判断することから、より正確な排紙可能枚数を算出することができる。
【0019】
また、前記積載量検出部は、排紙の存在を検知する受光センサを備え、前記受光センサによる排紙を検知する時間の長さにより、前記排紙台における排紙の積載量を検出してもよい。なお、この用紙の存在を検知する受光センサとしては、用紙からの反射光を検知することにより用紙を検出する反射型や、用紙による遮光を検知することにより用紙を検出する透過型などが挙げられる。
【0020】
前記構成によれば、受光センサが設置された所定の高さ位置において、用紙による反射光や遮光を検知して、積載された用紙の有無を判断することにより積載量を測定することができるとともに、積載量が所定高さ位置に満たない間においても、用紙配送経路から排紙台に排出される過程において、排紙される用紙の通過によって、受光センサによる用紙を検出する時間を計ることで、用紙の落下速度を測定することができる。すなわち、用紙の落下速度は落下中の空気抵抗等により変化することから、排紙台に積載された用紙の高さに応じた落下距離にしたがって、受光センサによる用紙の存在の検知時間が変化することとなる。このため、この検知時間の長さを検出することにより、受光センサの設置高さ位置に到達しない積載量であっても、現状の排紙台における積載量を推測することでき、前記排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出することができる。
【0021】
また、前記排紙台は、画像を形成するために用紙を搬送する搬送経路から分岐接続されて印刷済みの用紙を排出する排紙経路の終端に設けられ、前記積載量検出部は、前記排紙台の排紙の最大積載量の所定の割合の高さに設けられ、照射光を照射して前記排紙経路から排出された用紙からの反射光を受けることにより排紙の存在を検知する受光センサを備え、前記受光センサによる排紙の存在を検知する時間の長さにより、前記排紙台における排紙の積載量を検出してもよい。
【0022】
前記構成によれば、受光センサが設置された所定の高さ位置において、用紙による反射光や遮光を検知して、積載された用紙の有無を判断することにより積載量を測定することができるとともに、積載量が所定高さ位置に満たない間においても、用紙配送経路から排紙台に排出される過程において、排紙される用紙の通過によって、受光センサによる用紙を検出する時間を計ることで、用紙の落下速度を測定することができる。すなわち、用紙の落下速度は落下中の空気抵抗等により変化することから、排紙台に積載された用紙の高さに応じた落下距離にしたがって、受光センサによる用紙の存在の検知時間が変化することとなる。このため、この検知時間の長さを検出することにより、受光センサの設置高さ位置に到達しない積載量であっても、現状の排紙台における積載量を推測することでき、前記排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出することができる。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明の第2のアスペクトは、印刷済みの用紙が排出される排紙台に積層して蓄積された排紙の積載量を検出する積載量検出ステップと、印刷の対象となっている用紙の種類を取得する用紙種別取得ステップと、前記積載量検出ステップにより検出された積載量に基づいて、前記排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出する残容量算出ステップと、前記用紙種別取得ステップにより取得された用紙の種類と、前記残容量算出ステップにより算出された残容量とに基づいて、排紙可能枚数を算出する枚数算出ステップと、前記枚数算出ステップにより算出された排紙可能枚数を通知する通知ステップと、を備えた排紙監視方法であることを要旨とする。
【0024】
前記第2のアスペクトによれば、前記積載量検出ステップで検出した用紙の積載量から算出した積層可能な残容量と、用紙種別取得ステップにより取得した用紙の種類とに基づいて、排紙可能枚数を算出することから、ユーザーが使用する用紙の厚みを反映させた正確な排紙可能枚数をユーザーに通知することができる。このため、ユーザーは通知ステップより通知された排紙可能枚数と自己の希望する印刷枚数と比較し、印刷指示を出すことができ、排紙ジャムの発生を低減することができ、印刷の作業効率を向上することができる。
【0025】
また、前記排紙監視方法は、複数枚に係る印刷をひとまとまりのジョブデータとして処理する印刷データ処理ステップと、前記ジョブデータに含まれる印刷枚数と前記排紙可能枚数とを比較する比較ステップと、をさらに備え、前記通知ステップでは、前記比較ステップによる比較結果を通知してもよい。
【0026】
前記構成によれば、前記積載量検出ステップで検出した用紙の積載量から算出した積層可能な残容量と、用紙種別取得ステップにより取得した用紙の種類とに基づいて、排紙可能枚数を算出することから、ユーザーが使用する用紙の厚みを反映させた正確な排紙可能枚数をユーザーに通知することができる。この際、排紙可能枚数とユーザーがジョブデータとしてひとまとまりにした印刷枚数とを比較するため、印刷動作を実行した場合に排紙台の積載量がオーバーフローしてしまうような場合には、通知部よりユーザーに対して報知することができる。
【0027】
また、前記排紙監視方法は、前記用紙種別取得ステップにより取得された用紙の種類を履歴情報として記憶部に記憶する記憶ステップと、前記記憶部に記憶された履歴情報に基づいて、印刷に使用された用紙の種類を解析する推定ステップと、をさらに備え、前記枚数算出ステップでは、前記推定ステップにより推定された用紙の種類に基づいて、前記排紙可能枚数を補正してもよい。
【0028】
前記構成によれば、ユーザーが過去に印刷した用紙種類を履歴情報とし、これを利用して、前記枚数算出ステップで積層可能な残容量として算出された排紙可能枚数を補正するため、現在の用紙設定のみならず過去の用紙の使用傾向を反映させて適正な最大排紙可能枚数を算出することができる。
【0029】
また、前記用紙種別取得ステップでは、ユーザーによる操作によって指定された用紙種別に関する情報を取得することによって、前記印刷の対象となっている用紙の種類を取得してもよい。
【0030】
前記構成によれば、操作パネルや印刷アプリケーション(ドライバ)上におけるユーザー操作に基づいて、用紙の種類を取得できるため、ユーザーの意思を反映させた排紙可能枚数を算出することができる。
【0031】
また、前記用紙種別取得ステップは、画像を形成するために用紙を搬送する搬送経路に用紙を供給する給紙機構において設定された給紙圧に関する情報を取得することによって、前記印刷の対象となっている用紙の種類を取得してもよい。
【0032】
前記構成によれば、この場合には、給紙機構における給紙圧に基づいて用紙の種別を判断することから、より正確な排紙可能枚数を算出することができる。
【0033】
また、積載量検出ステップでは、前記排紙台に設けられた排紙の存在を検知する受光センサによる排紙を検知する時間の長さにより、前記排紙台における排紙の積載量を検出してもよい。
【0034】
前記構成によれば、受光センサが設置された所定の高さ位置において、積載された用紙の有無を判断することにより積載量を測定することができるとともに、積載量が所定高さ位置に満たない間においても、現状の排紙台における積載量を推測することでき、排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出することができる。
【0035】
また、前記積載量検出ステップでは、画像を形成するために用紙を搬送する搬送経路から分岐接続されて印刷済みの用紙を排出する排紙経路の終端に設けられた前記排紙台の排紙の最大積載量の所定の割合の高さに設けられた受光センサであって、照射光を照射して前記排紙経路から排出された用紙からの反射光を受けることにより排紙の存在を検知する受光センサ、による排紙の存在を検知する時間の長さにより、前記排紙台における排紙の積載量を検出してもよい。
【0036】
前記構成によれば、受光センサが設置された所定の高さ位置において、用紙による反射光や遮光を検知して、積載された用紙の有無を判断することにより積載量を測定することができるとともに、積載量が所定高さ位置に満たない間においても、用紙配送経路から排紙台に排出される過程において、排紙される用紙の通過によって、受光センサによる用紙を検出する時間を計ることで、用紙の落下速度を測定することができる。すなわち、用紙の落下速度は落下中の空気抵抗等により変化することから、排紙台に積載された用紙の高さに応じた落下距離にしたがって、受光センサによる用紙の存在の検知時間が変化することとなる。このため、この検知時間の長さを検出することにより、受光センサの設置高さ位置に到達しない積載量であっても、現状の排紙台における積載量を推測することでき、前記排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、インクジェットプリンタ等の印刷装置において、排紙台の最大許容量を最大限活用すべく、排紙種類や排紙台の残容量等を認識して正確な印刷可能残数を算出し、ユーザーに対して通知することで、ユーザーの作業効率を上げることができる。
【0038】
また、インクジェットプリンタ等の印刷装置において、排紙種類や排紙台の残容量等を認識して正確な印刷可能残数を算出し、ユーザーに対して通知する。その際、排紙可能枚数とユーザーがジョブデータとしてひとまとまりにした印刷枚数とを比較し、その比較結果をユーザーに通知するため、ユーザーのひとつの印刷ジョブデータを印刷途中で中断することを防止し、排紙台の最大許容量を最大限活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷用紙搬送経路の概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る給紙系搬送路と通常経路と反転経路とを模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る演算処理部における排紙監視に係る機能モジュールを示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る排紙監視機構の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る排紙センサ(受光センサ)のパルス信号及び用紙の排紙タイミングを示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態に係る排紙台の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る排紙センサ(受光センサ)のパルス信号及び用紙の排紙タイミングを示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係るプリンタドライバの操作画面を示す構成図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る印刷装置の表示部で表示される画面の一例である。
【図10】本発明の一実施形態に係る印刷装置の表示部で表示される画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(印刷装置の全体構成)
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置100の印刷用紙搬送経路の概要を示す図である。本実施形態では、印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のラインカラープリンタを例に説明する。
【0041】
図1に示すように印刷装置100は、環状の搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する装置である。搬送経路は、用紙を供給する給紙系搬送路FRと、給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されている。
【0042】
給紙系搬送路FRにおいて、印刷用紙の供給を行う給紙機構としては、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙台120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とが備えられている。印刷済の印刷用紙を排出する排紙機構として排紙口140を備えている。
【0043】
サイド給紙台120、給紙トレイ130a〜dのいずれかの給紙機構から給紙された印刷用紙は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路FRに沿って搬送され、印刷用紙の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。レジスト部Rのさらに搬送方向側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。
【0044】
印刷済の印刷用紙は、さらに、ローラ等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。印刷用紙の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0045】
一方、印刷用紙の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。このため、印刷装置100は、裏面印刷用に搬送路を切り替えるための切替機構170が設けられており、切替機構170によって排出経路へ送出されなかった印刷用紙は、反転経路SRに引き込まれる。
【0046】
反転経路SRでは、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させることにより用紙の表裏を反転させる、いわゆるスイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙されて、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷用紙は、排紙経路DRを通じて排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。
【0047】
本実施形態では、両面印刷時におけるスイッチバックを、排紙台150内に設けられた空間を利用して行うようにしている。排紙台150内に設けられた空間は、スイッチバック時に印刷用紙が外部から取り出せないように覆われた構成となっている。これにより、利用者が誤って反転動作中の印刷用紙を引き抜いてしまうことを防ぐことができる。排紙台150は、本来印刷装置100に備えられているものであり、排紙台150内の空間を利用してスイッチバックを行うことにより、印刷装置100内に、別途スイッチバック用の空間を設ける必要がなくなる。したがって、筐体のサイズが増大してしまうことを防ぐことができる。さらに、排紙経路と反転経路とを共用しないため、スイッチバック処理と他の用紙の排紙処理とを並行して行うことができる。
【0048】
印刷装置100では、給紙された印刷用紙の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rには、両面印刷時に片面印刷済の印刷用紙も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙の搬送経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流地点が形成される。そして、レジスト部Rは、給紙系搬送路FRと通常経路CRとの合流点近傍において、用紙の送り出しを行う。
【0049】
本実施形態では、上記合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙系搬送路FRとし、それ以外の経路を搬送経路とする。この搬送経路は環状をなし、上述したように通常経路CRと反転経路SRとが含まれる。図2は、給紙系搬送路FRと通常経路CRと反転経路SRとを模式的に示した図である。図2では、駆動部を構成するローラの個数は適宜省略している。
【0050】
給紙系搬送路FRには、サイド給紙台120からの給紙を行うためのサイド給紙駆動部220、給紙トレイ130a、130b、130c、130dからの給紙を行うためのトレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b、トレイ3駆動部230c、トレイ4駆動部230dが備えられている。これらによって、レジスト部Rに用紙を送り出す給紙手段が構成されている。
【0051】
上述した給紙系搬送路FRにおけるいずれの駆動部(サイド給紙駆動部220、トレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b、トレイ3駆動部230c、トレイ4駆動部230d)も複数のローラ等で構成された駆動機構を備え、給紙台又は給紙トレイに積載された印刷用紙を1枚ずつ取り込んで、レジスト部R方向に搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、給紙を行う給紙機構に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0052】
給紙系搬送路FRには、搬送センサ400が複数個配置され、給紙系搬送路FRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。すなわち、各搬送センサ400は、印刷用紙の有無又は印刷用紙の先端を検出するセンサである。例えば、搬送経路上に複数の搬送センサ400を適当な間隔で並べ、給紙側に設けられた搬送センサ400が印刷用紙を検出してから所定時間内に搬送方向側の搬送センサ400が印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャムが発生したと判断することができる。
【0053】
これら搬送センサ400のうち、用紙の送り出しを行うレジスト部R手前のレジストセンサは、搬送中の用紙サイズを計測し、例えば、用紙の通過速度及び通過時間に基づいて、通過中の用紙のサイズを測定したり、サイド給紙駆動部220、トレイ1駆動部230a等を駆動させてから所定時間内に搬送センサ400が印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャム(給紙エラー)が発生したと判断する。
【0054】
通常経路CRは、循環搬送路の一部を構成し、用紙を供給する給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て、排紙経路DRへ至る経路であり、通常経路CR上において用紙上面に画像が形成される。通常経路CRには、レジスト部Rに印刷用紙を導くレジスト駆動部240、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160を無端移動させるために駆動するベルト駆動部250、搬送方向側に順に配置される第1上面搬送駆動部260及び第2上面搬送駆動部265、第2上面搬送駆動部282、排紙口140に印刷済の用紙を導く上面排出駆動部270、裏面印刷用に印刷用紙を反転経路SRに引き込む駆動手段が備えられている。いずれの駆動部も1又は複数のローラ等で構成された駆動機構を備え、搬送経路に沿って印刷用紙を1枚ずつ搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、印刷用紙の搬送状況に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0055】
通常経路CRにも搬送センサ400が複数個配置され、通常経路CRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。レジスト部Rにおいても適切に印刷用紙が搬送されていることを確認できるようになっている。通常経路CRでは、駆動部に対応するように搬送センサ400が設けられており、通常経路CRのどの駆動部で搬送ジャムが発生したかを特定することができるようになっている。
【0056】
反転経路SRは、通常経路CRに分岐接続され、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復(スイッチバック)させて通常経路CRに戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路及び搬送機構である。反転経路SRには、用紙を反転させて合流地点に導く反転駆動部281が備えられている。反転経路SRでは、通常経路CRと異なる速度で搬送が可能であり、通常経路CRから用紙を引き継ぐ際に、加速・減速させたり、スイッチバックの際の停止時間を延長したり短縮したりすることができる。
【0057】
本実施形態においては、ある印刷用紙を給紙した後、その印刷用紙に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷用紙を給紙するのではなく、スケジューリングにより、先行する印刷用紙が排紙される前に、後続の印刷用紙を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の用紙を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた用紙が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷処理と裏面の印刷処理とを並行して行うことができ、片面印刷時に対して1/2以上の生産性を確保することができる。
【0058】
前記搬送ベルト160は、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中時計回り方向に回転移動する。搬送ベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つのインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
【0059】
図1に示すように、印刷装置100は、演算処理部330を有する。演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能をもったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。演算処理部330は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。演算処理部330には、操作パネル340が接続されており、操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0060】
(排紙監視機構)
本実施形態における排紙監視機構は、演算処理部330によって、排紙センサの検出をすることにより行われる。図3は、演算処理部330における排紙監視に係る機能モジュールを示すブロック図である。説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能をもったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0061】
図3に示すように、排紙監視機構に係るモジュールとしては、用紙種別認識モジュール群と、排紙台残量算出モジュール群と、排紙可能枚数通知モジュール群と、ジョブデータ取得モジュール群との4つに大別される。以下、モジュール群ごとに説明する。
【0062】
前記用紙種別認識モジュール群は、用紙種別取得部336と、記憶部355と、推定部337とを備える。前記排紙台残量算出モジュール群は、積載量検出部331と残容量算出部332とを備える。
【0063】
用紙種別取得部336は、ヘッドユニット110において画像形成の対象となっている用紙の種類を取得するモジュールである。用紙種別取得部336は、ユーザーが行うプリンタドライバ353や操作パネル340の処理や印刷装置100内にある給紙圧設定レバー352の設定を読み出すことによって、現時点での印刷処理に係る用紙の種別を取得し、取得した用紙種別データを記憶部355、及び枚数算出部334へ送信する。記憶部355は、用紙種別取得部336が取得した用紙種類データを履歴情報として記憶保持するモジュールであり、用紙種別データを推定部337へ送出する。用紙種類データには、用紙の厚さ、サイズ(面積)や重量、形状等の情報が含まれていても良い。また、特に用紙種類毎の重量は印刷装置を使用する地域・環境によって設定・変更可能としても良い。これは印刷装置の使用地域・環境によって用紙の重量に影響を与える湿度が大きく異なる場合があるからである。
【0064】
プリンタドライバ353は、例えば本印刷装置をネットワークプリンタのように利用する場合に、図8(a)及び図8(b)に示すような、各クライアントPCで実行されるアプリケーション又はミドルウェアである。プリンタドライバ353は、通信I/F354を通じて、印刷装置100に対して印刷データ及び実行命令を送信することができる。本実施形態において、プリンタドライバ353では、用紙の種類を設定するコンボボックス353aが備えられており、ユーザーは、このコンボボックス353aをプルダウンして項目を選択することにより、用紙の種類を選択することができる。この用紙の種類の選択に応じて用紙厚が取得される。
【0065】
推定部337は、記憶部355が記憶したユーザーに関する用紙種別の履歴情報を基に、今回印刷の用紙種別を推定するモジュールである。具体的には、過去に印刷された用紙についての用紙種別を集計し、用紙厚の平均を求め、その平均値を次回の用紙厚として推定する。推定部337は、推定したデータを枚数算出部334へ送出する。
【0066】
本実施形態では、用紙種別取得部336と、記憶部355と、推定部337とによって、現時点での印刷用紙の種別、及び履歴情報から推定された印刷用紙の種別を枚数算出部334に送出する。
【0067】
積載量検出部331は、排紙台150に蓄積された用紙の積載量を検出するモジュールである。積載量検出部331は、排紙台150に備えられた排紙センサ351によって排紙からの受光時間を測定するパルス幅測定部331aを有している。また、図6に示すように、FD排紙センサ(FD排紙モータエンコーダ)356が排紙センサ351の位置よりも手前である排紙経路DRの用紙の排出口140付近に設けられ、排紙有無センサ358が排紙台150の排紙の積載される一番下の面に設けられている。排紙有無センサ358は、排紙からの反射光を受けることにより、排紙台150に排紙が積載されているか否かを検出するセンサである。FD排紙センサ356は、用紙からの反射光を受けることにより用紙の存在を検知する受光センサである。本実施形態ではFD排紙センサ356及び排紙有無センサ358を備えているが、これらのセンサは必ずしも設ける必要はない。
【0068】
排紙センサ351は、図6に示すように排紙台150に設けられており、照射光を照射し(説明のため照射光の照射範囲を図6に示した)、排出された用紙(排紙)からの反射光を受けることにより用紙の存在を検知する受光センサである。ここで、図6において、矢印500は排出口140付近で搬送経路を搬送される用紙の動きを示し、矢印510は排出された用紙の動きを示し、符号550は排紙センサ351の照射光の照射範囲を示している。排紙センサ351は、排紙台150の排紙の最大積載量の80%の高さに設置されており、用紙が排紙センサ351の高さまで積層されると、積載量が80%になったと検出することができる。積載量検出部331は、パルス幅測定部331aによって、80%に到達しない積載量を検出する。本実施形態では排紙センサ351を排紙台150の排紙の最大積載量の80%の高さに設置しているが、本発明はこれに限定されず、排紙センサ351を設置する高さは任意に決定することができる。
【0069】
FD排紙センサ356による検出、及び排紙台150における排紙センサ351による検出を図5及び図7(a)〜(c)に示す。図5及び図7(a)〜(c)では、上部にFD排紙センサ356による検出パルス(用紙の排紙タイミング)を示し、下部に受光センサである排紙センサ351による検出パルスを示す。上部に示すFD排紙センサ356による検出パルスは、縦軸が信号強度(出力信号の電圧)であり、横軸が時間である。下部に示す排紙センサ351による検出パルスは、縦軸が信号強度(出力信号の電圧)であり、横軸が時間である。上部に示す用紙の排紙タイミング及び下部に示す排紙センサ351による検出パルスの横軸(時間軸)は時間的に対応している。
【0070】
すなわち、下部の縦軸は印刷用紙が排紙センサ351の前を通過した際の排紙センサ351による排紙から反射される光(反射光)の受光の有無を表す。下部の横軸は排紙センサ351のパルスの幅を示しており、そのパルス幅は排紙からの反射光を排紙センサ351が受けている時間を表している。このように排紙センサ351からは、排紙からの反射光を受光している時間がパルス信号として出力され、そのパルス幅により、排紙台150上に積載されている排紙の容量(高さ)を推測・検知することができる。図5に示すように、排紙の積載量が排紙台の最大積載量の80%以上となると、排紙センサ351による受光が完全となるため、排紙センサ351からの信号のON/OFFをみることによって80%以上の排紙の積載量に達したか否かを検知することができる。
【0071】
排紙台の最大積載量の80%未満の排紙の積載量においても、用紙が排紙台150内に排出される過程において、排紙された用紙の通過によって排紙センサ351が反射光を受光する時間(パルス幅)を計ることで、排紙の積載量を推測することができる。すなわち、排紙台150内において、排紙の落下速度は落下中の空気抵抗等により変化し、この空気抵抗等は排紙台150に積載された排紙の高さによって変化することから、図5及び図7(a)〜(c)に示すように、排出される用紙のサイズや重量、形状等が同じであれば、排紙台150に積載された排紙の高さに応じた排紙の落下距離にしたがって受光時間が変化する。尚、図5の排紙の積載量80%未満の範囲における最後の受光時間がその1つ前の受光時間よりも短いのは、排紙される用紙のサイズや重量等が両者で異なるからである。すなわち、排紙の積載量の推測は、用紙の種類によって決まる排紙される用紙のサイズや重量、形状等も勘案してなされるものである。
【0072】
詳述すると、図7(a)の状態(排紙台に用紙がない状態)では、排紙センサ351が用紙を感知しておらず、用紙が排紙されていないことを示している。図7(b)の状態では、排紙センサ351が2箇所で排紙を感知しているが、横軸右端は排紙センサ351が反射光を感知していないので、排紙は排紙台150の積載量80%にまで達していないことを示している。図7(c)の状態では、パルスが立ち上がっている部分は、排紙が通過している状態であるが、パルスが連続している部分については、排紙センサ351が常に反射光を感知している状態であるので、排紙が排紙台150の積載量80%にまで達していることを示している。
【0073】
このように、パルス幅測定部331aで、この受光時間を検出することにより、その排紙センサ351の検出範囲における排紙の通過時間を測定するができ、現状の排紙台150における積載量を推測することでき、排紙台150が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出することができる。
【0074】
残容量算出部332は、積載量検出部331が検出した積載量に基づいて、排紙台150が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出するモジュールである。具体的には、排紙センサ351からの信号が、途絶えることなくONとなった場合には、積載量を80%以上とし、信号がパルスとなっている場合には、そのパルス幅から積載量を算出する。
【0075】
本実施形態では、積載量検出部331と、残容量算出部332とによって、排紙台150の積載残容量を算出し、枚数算出部334に送出する。
【0076】
前記排紙可能枚数通知モジュール群は、枚数算出部334と、通知部333と、比較部335とを備え、前記ジョブデータ取得モジュール群は、ジョブデータ受信部338と、ジョブデータ処理部339とを備えている。
【0077】
枚数算出部334は、用紙種別取得部336又は推定部337から取得された印刷用紙種別データと、残容量算出部332から取得された排紙台150の残容量のデータとに基づいて、排紙可能枚数を算出するモジュールである。具体的には、枚数算出部334は、残容量を積載可能な排紙の高さとし、これを種別に応じた用紙の厚さで割り、積載可能な残り枚数を排紙可能枚数として算出する。枚数算出部334は、算出した排紙可能枚数を、比較部335及び通知部333へ送出する。
【0078】
枚数算出部334は、補正部334aを有している。補正部334aは、前記排紙可能枚数を算出する際に、用紙種別取得部336から直接取得した用紙種別情報を用いるか、推定部337で推定した用紙種別情報を用いるかが選択された場合に、用紙種別取得部336から直接入力された用紙種別を、選択された印刷用紙種別に差し替え、差し替えた用紙種別の厚さデータに基づいて、排紙可能枚数を補正するモジュールである。この用紙種別情報の選択は、両者を比較して、用紙厚が基準値以上に異なる場合に、ユーザーにメッセージを表示して選択操作を要求し、ユーザーの操作に基づいて行う。また、この用紙種別情報の選択の方式としては、用紙厚が基準値以上に異なる場合に、いずれかを優先的に自動選択するように設定してもよい。
【0079】
ジョブデータ受信部338は、通信インターフェース(I/F)354を介して、他の装置から送信される印刷ジョブデータを受信するモジュールである。例えば、通信インターフェースとしては、インターネットやLANなどの通信ネットワークに接続するためのデータ送受信回路である。ジョブデータ受信部338は、通信インターフェース354を通じて受信したジョブデータを、ジョブデータ処理部339へ送出する。
【0080】
ジョブデータ処理部339は、複数枚に係る印刷をひとまとまりのジョブデータとして処理するモジュールであり、ジョブデータ受信部338から入力されたジョブデータを解析して、ジョブデータに含まれる印刷枚数を抽出し、比較部335へ入力する。
【0081】
比較部335は、ジョブデータ処理部339から入力されたジョブデータに含まれる印刷枚数と、枚数算出部334が算出した排紙可能枚数とを比較するモジュールである。比較部335は、この比較により、ジョブデータに含まれる印刷枚数が、排紙可能枚数を上回るか否かを判断し、この判断結果を通知部333に入力する。
【0082】
通知部333は、枚数算出部334が算出した排紙可能枚数、及び比較部335による比較結果に基づいた判断を、メッセージなどによりユーザーに通知するモジュールである。このメッセージは、枚数算出部334により算出した排紙可能枚数の他、残容量が80%を超えているか否か、ジョブデータが印刷可能であるかどうかなどに応じて内容が切り換えられる。表示部342は、このメッセージをユーザーに視覚可能に通知する。この通知部333による通知の例(通知画面600)を図9に示す。通知部333による通知は、メッセージの表示のみならず、警告音や音声によって行ってもよい。
【0083】
(排紙監視方法)
以上の構成を有する排紙監視機構を動作させることによって、本発明の実施形態に係る排紙監視方法を実施することができる。図4は、本実施形態に係る排紙監視機構の動作を示すフローチャートである。
【0084】
先ず、用紙種別認識モジュール群では、タッチパネル341やプリンタドライバ353による処理実行や給紙圧設定レバー352の設定に基づいて、用紙種別取得部336が用紙種別を取得する(S101)。この取得された用紙種別は、記憶部355に追加して記憶される(S102)。この際、推定部337は、前回以前に記憶部355に記憶された履歴情報を取得し(S103)、過去の使用履歴に基づいた用紙種別を推定し、今回取得した用紙種別と比較する(S104)。
【0085】
この比較の結果、今回取得した用紙種別と推定した用紙種別とが等しいと判断した場合には(S105においてYES)、推定部337は、原用紙厚のデータを枚数算出部334に送信する。一方、今回取得した用紙種別と推定した用紙種別とが大きく異なると判断した場合は(S105においてNO)、推定部337は、用紙厚を補正し(S106)、補正後の用紙厚データを枚数算出部334へ送出する。この用紙厚の補正に際しては、ユーザーに対していずれの用紙厚であるかを確認するメッセージの表示及び選択操作の要求をし、ユーザーの意思に基づいた用紙厚の選択を行うようにしてもよい。
【0086】
上記用紙種別認識モジュール群による処理と並行して、排紙台残量算出モジュール群では、排紙センサ351によって測定されたパルス幅測定によって現在の排紙の積載量が検出される(S201)。パルス幅が所定の閾値以上の場合(S202においてYES)は、排紙台150の排紙の積載高さが全体の80%以上となったと判断され(S203)、残容量が「20%以下」と算出され(S205)、枚数算出部334へデータが送信される。
【0087】
一方、ステップS202において、パルス幅が閾値より小さい場合(S202においてNO)は、排紙台150の排紙の積載高さが全体の80%未満であると判断され(S203)、パルス幅から排紙の積載量を推定し(S204)、残容量を算出する(S205)。この算出された残容量は、枚数算出部334へ送出される。このパルス幅からの推定において、印刷用紙が落下する速度は着地点との距離と関係しており、落下速度は着地点が近いほど空気抵抗によって遅くなっている。一方、着地点との距離が遠いほど、空気抵抗がなく落下速度は速くなる。したがって、該パルス幅を測定することによって排紙台にある印刷用紙の積載量を推定することができる。
【0088】
次いで、印刷可能表示モジュール群では、前記用紙種別認識モジュール群による処理(S101〜S105)によって得られた用紙厚データと、前記排紙台残量算出モジュール群による処理(S201〜S205)によって得られた残容量データとから、枚数算出部334が排紙可能枚数を算出する(S107)。この段階において、算出された排紙可能枚数は、印刷ジョブデータ受信前においてメッセージを出力し、表示部342やプリンタドライバ353を通じてユーザーに通知するようにしてもよい。
【0089】
そして、通信I/F354を通じて受信されたジョブデータを解析してジョブに係る印刷枚数を抽出し(S108)、このジョブデータの印刷枚数と、枚数算出部334が算出した排紙可能枚数とを比較する(S109)。ステップS109において、ジョブデータの印刷枚数が排紙可能枚数以下の場合(S110においてYES)、通常印刷として処理し、その旨のメッセージを表示部342に出力する(S111及びS113)。一方、ジョブデータの印刷枚数が排紙可能枚数よりも多い場合(S110においてNO)は、印刷中断の可能性があるとして、その旨のメッセージを表示部342に出力する(S112及びS113)。
【0090】
本実施形態によれば、積載量検出ステップ(S201〜S205)で検出した排紙の積載量から算出した積層可能な残容量と、用紙種別取得ステップ(S101〜S105)により取得した用紙の種類とに基づいて、排紙可能枚数を算出することから、ユーザーが使用する用紙の厚みを反映させた正確な排紙可能枚数をユーザーに通知することができる。このため、ユーザーは通知ステップより通知された排紙可能枚数と自己の希望する印刷枚数と比較し、印刷指示を出すことができ、排紙ジャムの発生を低減することができ、印刷の作業効率を向上することができる。この際、排紙可能枚数とユーザーがジョブデータとしてひとまとまりにした印刷枚数とを比較できるため、印刷動作を実行した場合に、排紙が排紙台150の最大積載量をオーバーしてオーバーフローしてしまうような場合には、通知部333よりユーザーに対して報知することができる。この通知部333による通知の例(通知画面650)を図10に示す。
【0091】
また、記憶部355に記録保持された履歴情報に基づいて、使用された用紙の種類を解析し、推定部337により推定された用紙の種類に基づいて、排紙可能枚数を補正するため、現在の用紙設定のみならず過去の用紙の使用傾向を反映させて適正な最大排紙可能枚数を算出することができる。
【0092】
また、積載量検出に際し、排紙センサ351による反射光の受光する時間の長さにより、排紙台150における積載量を推測・検出するため、排紙センサ351が設置された所定の高さ位置において、積載された排紙の有無を判断することにより積載量を測定することができるとともに、積載量が所定高さ位置に満たない間においても、現状の排紙台150における排紙の積載量を推測することでき、排紙台150が排紙で満杯になるまでの積層可能な残容量を算出することができる。
【0093】
これらの結果、本実施形態に係る印刷装置の排紙監視機構及び方法によれば、インクジェットプリンタ等の印刷装置において、排紙台150の最大許容量(排紙の最大積載量)を最大限活用すべく、排紙種類や排紙台150の残容量等を認識して正確な印刷可能残数を算出し、ユーザーに対して通知することで、ユーザーの作業効率を上げることができる。
【0094】
また、本実施形態では排紙センサ351を1つ設けた例となっているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、複数の排紙センサ351を排紙台150に設置しても良い。例えば、第1排紙センサを排紙台150の排紙の最大積載量の80%の高さに設置し、第2排紙センサを排紙台150の排紙の最大積載量の40%の高さに設置することが考えられる。このような構成にすることで、排紙が排紙台150の最大積載量の40%の高さに達したことを、推測ではなく確実に検出することができるため、より正確な現在の排紙の積載量を得ることができる。つまり、より正確な排紙可能枚数を推測することができる。
【符号の説明】
【0095】
CR…通常経路
DR…排紙経路
FR…給紙系搬送路
R…レジスト部
SR…反転経路
140…排紙口
150…排紙台
150a…下面開口部
151…ケーシング部
151a…上面
152…受台
153…取出口
154…搬送ローラ
281…反転駆動部
330…演算処理部
331…積載量検出部
331a…パルス幅測定部
332…残容量算出部
333…通知部
334…枚数算出部
334a…補正部
355…記憶部
336…用紙種別取得部
337…推定部
338…ジョブデータ受信部
339…ジョブデータ処理部
340…操作パネル
335…比較部
341…タッチパネル
342…表示部
351…排紙センサ
352…給紙圧設定レバー
353…プリンタドライバ
353a…コンボボックス
354…通信インターフェース
356…FD排紙センサ(FD排紙モータエンコーダ)
358…排紙有無センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷済みの用紙が排出され、排出された用紙を積層して蓄積する排紙台と、
前記排紙台に蓄積された排紙の積載量を検出する積載量検出部と、
印刷の対象となっている用紙の種類を取得する用紙種別取得部と、
前記積載量検出部により検出された積載量に基づいて、前記排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出する残容量算出部と、
前記用紙種別取得部により取得された用紙の種類と、前記残容量算出部により算出された残容量とに基づいて、排紙可能枚数を算出する枚数算出部と、
前記枚数算出部により算出された排紙可能枚数を通知する通知部と、を備えた
印刷装置の排紙監視機構。
【請求項2】
複数枚に係る印刷をひとまとまりのジョブデータとして処理する印刷データ処理部と、
前記ジョブデータに含まれる印刷枚数と前記排紙可能枚数とを比較する比較部と、をさらに備え、
前記通知部は、前記比較部による比較結果を通知する
請求項1に記載の印刷装置の排紙監視機構。
【請求項3】
前記用紙種別取得部により取得された用紙の種類を履歴情報として記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された履歴情報に基づいて、印刷に使用された用紙の種類を解析する推定部と、をさらに備え、
前記枚数算出部は、前記推定部により推定された用紙の種類に基づいて、前記排紙可能枚数を補正する
請求項1又は2に記載の印刷装置の排紙監視機構。
【請求項4】
前記用紙種別取得部は、ユーザーによる操作によって指定された用紙種別に関する情報を取得することによって、前記印刷の対象となっている用紙の種類を取得する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置の排紙監視機構。
【請求項5】
前記用紙種別取得部は、画像を形成するために用紙を搬送する搬送経路に用紙を供給する給紙機構において設定された給紙圧に関する情報を取得することによって、前記印刷の対象となっている用紙の種類を取得する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印刷装置の排紙監視機構。
【請求項6】
前記積載量検出部は、排紙の存在を検知する受光センサを備え、前記受光センサによる排紙を検知する時間の長さにより、前記排紙台における排紙の積載量を検出する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印刷装置の排紙監視機構。
【請求項7】
前記排紙台は、画像を形成するために用紙を搬送する搬送経路から分岐接続されて印刷済みの用紙を排出する排紙経路の終端に設けられ、
前記積載量検出部は、
前記排紙台の排紙の最大積載量の所定の割合の高さに設けられ、照射光を照射して前記排紙経路から排出された用紙からの反射光を受けることにより排紙の存在を検知する受光センサを備え、
前記受光センサによる排紙の存在を検知する時間の長さにより、前記排紙台における排紙の積載量を検出する
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷装置の排紙監視機構。
【請求項8】
印刷済みの用紙が排出される排紙台に積層して蓄積された排紙の積載量を検出する積載量検出ステップと、
印刷の対象となっている用紙の種類を取得する用紙種別取得ステップと、
前記積載量検出ステップにより検出された積載量に基づいて、前記排紙台が満杯になるまでに積層可能な残容量を算出する残容量算出ステップと、
前記用紙種別取得ステップにより取得された用紙の種類と、前記残容量算出ステップにより算出された残容量とに基づいて、排紙可能枚数を算出する枚数算出ステップと、
前記枚数算出ステップにより算出された排紙可能枚数を通知する通知ステップと、を備えた
排紙監視方法。
【請求項9】
前記積載量検出ステップでは、画像を形成するために用紙を搬送する搬送経路から分岐接続されて印刷済みの用紙を排出する排紙経路の終端に設けられた前記排紙台の排紙の最大積載量の所定の割合の高さに設けられた受光センサであって、照射光を照射して前記排紙経路から排出された用紙からの反射光を受けることにより排紙の存在を検知する受光センサ、による排紙の存在を検知する時間の長さにより、前記排紙台における排紙の積載量を検出する
請求項8に記載の排紙監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−89962(P2010−89962A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179772(P2009−179772)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】