印刷装置及び印刷濃度調整方法
【課題】基本色液体と希釈色液体との印刷濃度を共に適正に調整して、色再現範囲の確保と粒状感の抑制とを両立できる印刷装置及び印刷濃度調整方法を提供する。
【解決手段】シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色相を有する色インクC,M,Y,Kと、各色インクを希釈液で希釈した希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%とを、印刷ヘッドから用紙に噴射する。駆動信号生成回路への供給電圧として補正電圧V1maxを適用することにより、色インクC,M,Y,Kの印刷濃度を、各色の基準濃度d0近くにシフトさせる。補正電圧V1maxの適用により希釈インクの印刷濃度が一緒にシフトする(同図の黒四角印)。補正電圧V1maxのときの希釈インクの印刷濃度を色毎に基準濃度d0に近づけるように希釈割合を補正する(同図の白三角印)。
【解決手段】シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色相を有する色インクC,M,Y,Kと、各色インクを希釈液で希釈した希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%とを、印刷ヘッドから用紙に噴射する。駆動信号生成回路への供給電圧として補正電圧V1maxを適用することにより、色インクC,M,Y,Kの印刷濃度を、各色の基準濃度d0近くにシフトさせる。補正電圧V1maxの適用により希釈インクの印刷濃度が一緒にシフトする(同図の黒四角印)。補正電圧V1maxのときの希釈インクの印刷濃度を色毎に基準濃度d0に近づけるように希釈割合を補正する(同図の白三角印)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本色液体と基本色液体を希釈した希釈色液体とを用いて印刷を行う印刷装置に係り、特に各色の印刷濃度の最適化を図る印刷装置及び印刷濃度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射対象物(例えば用紙)に、印刷ヘッドから液体(例えばインク)を噴射して付着させ、噴射対象物に画像(文字や図形などを含む)を印刷する印刷装置が知られている。このような印刷装置においては、互いに異なる色相を有する複数の基本色液体(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインク)を噴射して、用紙上に形成した基本色のドットの混色により、画像に応じた色相、明度、彩度を表現する。この場合、噴射対象物に形成したドットそのものが視覚的に認識されることによって、画像に粒状感が出てしまうことがある。
【0003】
例えば特許文献1〜3には、C,M,Y,Kの基本色インク(基本色液体)と、基本色インクを希釈液で希釈した希釈インクを噴射して印刷を行う印刷装置が開示されている。希釈されていない基本色インクのドットとその希釈インクのドットとを混在させることで、基本色インクのドットのみで画像を形成する場合に比べ、各色のドットの濃度が低減されるので、粒状感を抑制できる。つまり、C,M,Y,Kの基本色インクのドット面積又はドット数を減らし、その減らした分の色を希釈インクのドットで補うことで、粒状感を抑制できる。
【0004】
また、インク噴射型のプリンターは同一の機種であっても機体ごとにインク滴の噴射量が異なることがある。例えば、同一のサイズのインク滴を噴射させようとしても各機体間では若干ながら異なるサイズのインク滴が噴射される。その結果、用紙上に表現される色が異なってしまい、必要な色再現範囲が確保されにくくなる。よって、同一の機種であっても機体毎にインク滴の噴射量を調整する必要がある。また、1つの機体においてもインク滴を噴射するノズル列を複数有している場合は、ノズル列毎にインク滴の噴射量を調整する必要もある。
【0005】
例えば特許文献4には、この種の機体間におけるインク滴の噴射量のずれを補正できる印刷装置が開示されている。詳しくは、基準となるプリンターが印刷したパッチの測色結果と、補正されるプリンターが印刷したパッチの測色結果との差を示す補正ID(誤差情報)を取得し、この補正IDの値に応じて印刷データを修正する。詳しくは、各色毎のパッチを印刷し、その印刷した各色毎のパッチを測色器によって測色する。そして、測色により得たインク色毎(ノズル列毎)の各濃度が目標濃度(基準濃度)に近づくように指令値を補正し、その指令値を駆動信号生成回路に出力することで、この駆動信号生成回路が圧電素子(ピエゾ素子)に出力する駆動信号中の駆動パルスの振幅を変化させ、圧電素子の駆動によりノズルから噴射されるインク滴のサイズを調整する。これにより、各色が適正なドットサイズで印刷されるので、必要な色再現範囲が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−248783号公報
【特許文献2】特開平11−10859号公報
【特許文献3】特開2006−15559号公報
【特許文献4】特開2009−214479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3のような希釈インクを用いた印刷装置において、特許文献4のようなインク滴の噴射量を調整することにより印刷濃度の適正化を図る技術を適用した場合、インク噴射量を色(ノズル列)毎に個別に調整できる構成にはなっていない。このため、インク噴射量を調整する場合、印刷ヘッドの全ノズル列に共通の駆動信号中の駆動パルスの振幅を、例えば基本色インクの適切な噴射量に合わせて調整するのが好ましい。この場合、希釈インクの噴射量が適切であっても一緒にシフトしてしまうので、粒状感に悪影響を及ぼしたり、逆に希釈インクのドットが想定より小サイズになってその色がぼけた感じになったりするなどの問題がある。なお、駆動パルスの振幅は駆動信号生成回路への供給電圧にも依存するので、指令値に替えて供給電圧を補正することで、インク滴の噴射量を調整することも可能である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものであり、その目的の1つは、基本色液体と希釈色液体との印刷濃度を共に適正に調整して、色再現範囲の確保と粒状感の抑制とを両立できる印刷装置及び印刷濃度調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つが希釈液で希釈された少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段から噴射対象物に噴射して印刷を行う印刷装置であって、画像データに基づき前記基本色液体と前記希釈色液体とを噴射する噴射手段と、前記噴射手段に出力すべき駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記駆動信号生成手段から出力される前記駆動信号の大きさを規定する規定手段と、前記規定手段が第1の規定条件で規定した大きさの駆動信号に基づき前記噴射手段が印刷した各色の印刷濃度を色毎に取得する濃度取得手段と、前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定手段と、前記補正による前記希釈色液体の印刷濃度の変化分を見込んで、前記希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して前記希釈色液体の補正希釈割合を決定する希釈割合決定手段と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、少なくとも一つの基本色液体の印刷濃度を目標濃度に近づけるように規定手段による規定条件が第1の規定条件から第2の規定条件へ補正されるため、噴射手段による色再現範囲が確保される。また、第2の規定条件へ補正されることを見込んで、希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける希釈割合の補正が行われることで補正希釈割合が決定されるため、印刷結果の粒状感を抑制できる。
【0011】
本発明の印刷装置では、前記規定手段は、前記駆動信号の大きさを規定する供給電圧を前記駆動信号生成手段に与える電圧供給手段であり、前記第1の規定条件として規定電圧を与え、前記決定手段は、前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を前記規定電圧に施して補正電圧を決定する電圧決定手段であることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、駆動信号を出力する駆動信号生成手段に電圧供給手段から与えられる供給電圧を補正する構成なので、基本色液体と希釈色液体の各印刷濃度を比較的簡単に適正化できる。
【0013】
本発明の印刷装置では、前記濃度取得手段は、前記規定電圧と異なる第2の供給電圧を供給して行った印刷結果に基づく印刷濃度も取得し、前記規定電圧のときの印刷濃度と、前記第2の供給電圧のときの印刷濃度とに基づき供給電圧と印刷濃度との関係を示す第1の情報を演算する演算手段を更に備え、前記電圧決定手段は、前記第1の情報に基づいて前記規定電圧のときの印刷濃度を前記目標濃度に近づけるための電圧補正量を求め、当該電圧補正量を前記規定電圧に付加して前記補正電圧を決定することが好ましい。この発明によれば、第1の情報に基づいて規定電圧のときの印刷濃度を目標濃度にするための電圧補正量を求め、当該電圧補正量を規定電圧に付加して補正電圧を決定することができる。よって、印刷濃度の取得結果を用いて補正電圧の決定が可能になる。
【0014】
本発明の印刷装置では、前記濃度取得手段は、前記基本色液体と前記希釈色液体とのうち色毎に希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体で前記噴射手段が印刷した当該各色液体の印刷濃度を測定し、前記演算手段は、前記希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体の印刷濃度に基づき希釈割合と印刷濃度との関係を示す第2の情報を演算する構成であり、前記希釈割合決定手段は、前記第2の情報に基づいて前記希釈色液体の印刷濃度を前記目標濃度に近づける希釈補正量を求め、当該希釈補正量を前記希釈割合に付加して補正希釈割合を決定することが好ましい。この発明によれば、希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体の印刷濃度の測定結果に基づき希釈割合と印刷濃度との関係を示す第2の情報を演算でき、この第2の情報を用いて、希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける希釈補正量を求めることができる。よって、印刷濃度の取得結果を用いて補正希釈割合の決定が可能になる。
【0015】
本発明の印刷装置では、前記電圧決定手段は決定した前記補正電圧を前記電圧供給手段に設定し、前記希釈割合決定手段が決定した希釈割合で希釈色液体を生成する希釈色液体生成手段を更に備えていることが好ましい。この発明によれば、補正電圧を電圧供給手段から供給されるように設定でき、その補正電圧を供給したときでも、目標濃度に近い印刷濃度が得られるような補正希釈割合の希釈色液体を生成できるので、印刷結果における粒状感を抑制できる。
【0016】
本発明は、カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つを希釈液で希釈して生成した少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段が噴射対象物に噴射して行われる印刷における印刷濃度を調整する印刷濃度調整方法であって、前記噴射手段による印刷ドットサイズを決める駆動信号の大きさを第1の規定条件で規定して前記噴射手段による各色の印刷を行った印刷濃度を色毎に測定する濃度測定ステップと、前記濃度測定ステップで測定した前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定ステップと、前記決定ステップで決定した前記第2の規定条件の下で前記希釈色液体を印刷したときの印刷濃度を推定し、当該推定した印刷濃度を前記希釈色液体の目標濃度に近づける補正を行って前記希釈色液体の希釈割合を決定する希釈割合決定ステップと、を備えたことを要旨とする。この発明によれば、上記印刷装置に係る発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の印刷装置の概略構成を示す模式図。
【図2】希釈インク生成装置の構成を示す模式図。
【図3】印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】印刷濃度調整処理を示すフローチャート。
【図5】測色用のパッチを印刷したテストチャートを示す模式図。
【図6】濃度変化量と電圧変化量との関係を示すグラフ。
【図7】濃度変化量と希釈割合変化量との関係を示すグラフ。
【図8】濃度と供給電圧との関係を示すグラフ。
【図9】濃度と希釈割合との関係を示すグラフ。
【図10】最大補正電圧V1maxを適用した場合における各色の濃度を示すグラフ。
【図11】平均補正電圧V1aveを適用した場合における各色の濃度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、噴射対象物の一例である用紙に液体の一例であるインクを噴射して、画像や文書などを用紙に印刷する印刷装置において具体化した一実施形態を、図面を用いて説明する。なお、噴射対象物は特に用紙(紙)に限られるものでなく、基板やガラス、あるいは木、金属、樹脂、布など他の素材で形成されたものであってもよい。
【0019】
図1は、本実施形態における印刷装置100の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、印刷装置100は、印刷機構10と制御装置30とを備えている。そして、制御装置30は、入力された画像データDg又は印刷データPDに基づき印刷機構10を制御し、用紙Pにインクを噴射させて所定の画像を印刷させるように構成されている。
【0020】
印刷機構10は、噴射手段の一例である印刷ヘッド15を備えたキャリッジ14と、駆動プーリー11と従動プーリー12とに巻き掛けられた無端状のベルト13と、駆動プーリー11に回転軸が固定されたキャリッジモーターM1とを備えている。
【0021】
キャリッジ14は図示しないガイド軸に沿って主走査方向(図面左右方向)に移動可能に案内されるとともにベルト13の一部に固定されている。そして、キャリッジモーターM1が正逆転駆動されると、これに連動する駆動プーリー11の回転に伴うベルト13の移動を介して、キャリッジ14は主走査方向に沿って往復移動するようになっている。
【0022】
また、印刷機構10は、印刷ヘッド15に対向する位置(図1では下側位置)を用紙Pの搬送経路とする搬送機構16と、搬送機構16を駆動させる搬送モーターM2とを備えている。本例の搬送機構16は搬送モーターM2の駆動により搬送ローラー16aが回転することによって用紙Pはキャリッジ14の移動方向(主走査方向)と交差する搬送方向(副走査方向)に搬送されるようになっている。
【0023】
また、印刷機構10は、互いに異なる色相液である基本色液体の一例としての基本色インクC(シアン)、基本色インクM(マゼンタ)、基本色インクY(イエロー)、基本色インクK(ブラック)の各色のインクを収容したインクタンク18c,18m,18y,18kと、希釈液CLを収容した希釈液タンク18wとを有している。ここで、希釈液とは、インクを希釈するために用いる液体であり、本例では無色透明の液体が用いられる。希釈液としては、例えばクリーニング液を使用する。もちろん、希釈液は無色透明な液体であればよく、水、アルコール、油などでもよい。また、希釈液としては、基本色インクが染料インクであれば染料の溶媒として使用されている液体と相溶性のある液体が好ましく、基本色インクが顔料インクであれば顔料の分散媒として使用されている液体と相溶性のある液体が好ましい。なお、以下、基本色インクC,M,Y,Kを、単に色インクC,M,Y,Kと呼ぶことにする。
【0024】
これらのインクタンク18c,18m,18y,18k及び希釈液タンク18wは、各色インクC,M,Y,Kを希釈液CLで希釈した希釈色液体の一例である希釈インクを生成する希釈色液体生成手段の一例としての希釈インク生成装置20に備えられている。各色インクC,M,Y,Kは、希釈インク生成装置20内において希釈液CLと所定の液量比率で混合されるようになっている。そして、各色インクC,M,Y,K及び希釈インクは供給管17を通じてキャリッジ14にそれぞれ供給される。なお、各タンク18は希釈インク生成装置20において着脱可能状態または固定された状態で装着される。
【0025】
そして、各タンク18からキャリッジ14に供給された各色インクC,M,Y,K及び希釈インクは、それぞれキャリッジ14内の図示しない流路を通じて印刷ヘッド15に導かれる。なお、以降の説明において、各色インクC,M,Y,Kとそれらを希釈した希釈インクとを区別しない場合、単に「インク」と呼ぶことにする。
【0026】
印刷ヘッド15には、インクを噴射するノズルnが複数個(例えば180個)配列されてなるノズル列N(図2参照)が、インク色と同数列(9列)配列されている。このノズル列の形成面に対向して配置される用紙Pに対して、各ノズル列のノズルnからインクを噴射して用紙P上に付着させるように構成されている。なお、本実施形態では、色インクと希釈インクの色毎に1列のノズル列Nが対応し、印刷ヘッド15は後述するA列〜I列の合計9列のノズル列Nを有している(図2参照)。
【0027】
制御装置30は、印刷ヘッド15、キャリッジモーターM1、搬送モーターM2及び希釈インク生成装置20を制御する。制御装置30は、入力した画像データDg又は印刷データPDに基づき色インクと希釈インクとを印刷ヘッド15のノズルnから噴射させて、用紙Pに画像データDg又は印刷データPDに基づく画像を印刷する印刷制御を行う。この制御装置30は、各種制御を行うコンピューター31(マイクロコンピューター)を備える。コンピューター31は、CPU(中央処理装置)32、ASIC(集積回路)33、ROM(リードオンリーメモリー)34及びRAM(ランダムアクセスメモリー)35などを備えている。
【0028】
制御装置30内のコンピューター31は、CPU32がROM34に格納されたプログラムを実行することにより、印刷装置100における各種制御を行う。また、ROM34には、各種制御に用いられる設定データなども記憶されている。ASIC33は、画像データDgから、印刷ヘッド15にインク滴の噴射制御を行わせるため供給する印刷用制御データを生成する画像処理等を含む所定の処理を行う。また、RAM35は、CPU32がROM34から読み出したプログラムを一時格納したり、プログラムの動作の過程で取得される演算結果等のデータを一時的に記憶したりするために用いられる。
【0029】
次に、希釈インク生成装置20の構成を説明する。図2は、希釈インク生成装置20において、各タンク18から供給される各色インクC,M,Y,Kの希釈の仕組みと、各色インクC,M,Y,Kおよび希釈インクが印刷ヘッド15に供給される様子を示した説明図である。
【0030】
図2に示すように、希釈インク生成装置20は、色インクCと希釈液CLとを混合した希釈インク(C+CL)、色インクMと希釈液CLとを混合した希釈インク(M+CL)、色インクYと希釈液CLとを混合した希釈インク(Y+CL)がそれぞれ生成される。さらに、色インクKと希釈液CLとを混合した希釈インク(B+CL)が生成される。本実施形態では、希釈インク(C+CL)、希釈インク(M+CL)、及び希釈インク(Y+CL)は、色インクC,M,Y,Kと希釈液CLとの混合比率がそれぞれ50:50であり、希釈割合が50%である希釈インクC50%,M50%,Y50%がそれぞれ生成される。さらに希釈インク生成装置20では、色インクKと希釈液CLは混合比率50:50と25:75でそれぞれ混合され、希釈割合が50%の希釈インクK50%と希釈割合が25%の希釈インクK25%がそれぞれ生成される。このように各色インクが希釈されることによって、色インクと同じ色相を呈する希釈インクがそれぞれ生成される。なお、希釈インク生成装置20には、各色インクおよび生成された各希釈インクを供給する配管と、希釈インクを貯留する混合タンク21〜25とが設けられている。
【0031】
具体的に行われる混合処理(希釈処理)について、その一例として、色インクCと希釈液CLとを混合した希釈インクC50%について説明する。
色インクCは、インクタンク18cから、経路途中にバルブVL1が設けられた配管によって、混合タンク21に供給される。また、希釈液CLは、希釈液タンク18wから、経路途中にバルブVL2が設けられた配管によって、同じく混合タンク21に供給される。この結果、バルブVL1とバルブVL6の開閉を制御することによって、希釈インクC50%が混合タンク21において生成される。
【0032】
同様に、バルブVL2とバルブVL7の開閉を制御することによって、希釈インクM50%が混合タンク22において生成され、バルブVL3とバルブVL8の開閉を制御することによって、希釈インクY50%が混合タンク23において生成される。また、バルブVL4とバルブVL9の開閉を制御することによって、希釈インクK50%が混合タンク24において生成され、バルブVL5とバルブVL10の開閉を制御することによって、希釈インクK25%が混合タンク25において生成される。こうして合計5種類の希釈インクが生成されるようになっている。なお、各混合タンク21〜25には、生成された希釈インクが十分に混ざり合うように不図示の撹拌装置が備えられている。
【0033】
各バルブVL1〜VL10は、制御装置30によってその開閉が制御される。このバルブの開閉制御によって、各混合タンク21〜25における希釈インクのインク貯留量と、各色インクC,M,Y,Kと希釈液CLとの混合割合(希釈割合)が制御されることになる。換言すれば、バルブVL1〜VL10の開閉制御によって、各混合タンク21〜25における希釈インクのインク貯留量と、希釈インクが呈する色合い(ここでは主に明度)とを制御することができる。
【0034】
ここで、希釈インクは希釈前の色インクと同じ色相のライト色(薄色)に近い色相を呈することになる。つまり、希釈インクC50%は、用紙Pに印刷されたときには、希釈されたシアンCと用紙Pの白色との混色によってライトシアンに近い色相を呈する。同様に、希釈インクM50%はライトマゼンタに近い色相を呈し、希釈インクY50%はライトイエローに近い色相を呈する。さらに、希釈インクK50%はライトブラックに近い色相を呈し、希釈インクK25%はさらに薄くダークグレーに近い色相を呈する。
【0035】
そして、図2に示すように、4種類の各色インクC,M,Y,Kと、生成された5種類の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%との合計9種類のインクは、それぞれ供給管17及びキャリッジ14内の各流路を通って印刷ヘッド15に供給される。図2に示す印刷ヘッド15には、ノズル列N毎に各ノズルnに対応する位置に、インクを加圧できる電歪素子(ピエゾ素子)や発熱素子などの駆動素子19(図2参照)が設けられている。そして、印刷ヘッド15には、複数個の駆動素子19を駆動する全ノズル列Nに共通のヘッド駆動回路15aが内蔵されている。
【0036】
印刷ヘッド15に供給された9種類のインクは、それぞれ対応するノズル列Nの各ノズルnに個々に連通するインク室へそれぞれ導入され、ヘッド駆動回路15aはインク室に対応する駆動素子19に駆動パルス(駆動電圧)を印加する。この駆動パルスの印加によって駆動素子19が駆動してインク室内のインクに加圧力が付与されることにより、ノズルnからインク滴が噴射される。噴射されるインク滴の量は、駆動素子19に印加される駆動パルスの大きさ(振幅及びパルス周期等)より規定される。このとき、9列(A列〜I列)のノズル列Nの各ノズルnからは、ノズル列Nに応じた色のインクがそれぞれ噴射される。ちなみに、ノズルA列からは色インクCが噴射され、ノズルE列からは希釈インクC50%が噴射され、ノズルH列からは希釈インクK50%が噴射される。
【0037】
次に、印刷装置100の電気的構成を説明する。図3は、印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、図3では、コンピューター31内には、CPU32がROM34に記憶されたプログラムを実行することにより構築されるソフトウェアよりなる機能部分と、ASIC33内の各種回路によって構築されるハードウェアよりなる機能部分を、各機能毎の機能ブロックで示している。
【0038】
図3に示すように、印刷装置100には、通信インターフェイス(通信I/F41)を介して測色器80(カラー測色器)が取り付けられている。制御装置30は、測色器80を用いて測色を行うときに、印刷データPDとして測色用のテストパターンデータDtを入力し、このテストパターンデータDtに基づき印刷機構10を駆動制御することで、印刷ヘッド15により用紙Pに各色のパッチを含むテストチャートを印刷させる。測色器80は、用紙Pに印刷されたテストチャート中の9色のパッチ群(濃度パターン)を測色する。
【0039】
また、印刷装置100にはホスト装置200が接続されている。ホスト装置200の入力操作部(例えばキーボードやマウス)の操作により、印刷データPDを印刷装置100に送信することにより、印刷装置100に所望の画像の印刷を行わせることができる。また、このホスト装置200は、測色器80にも接続されており、測色器80に測色の指令を出力する。測色器80が測色した後述する測色結果は印刷装置100も取得できるようになっている。測色器80は、印刷装置100において用紙Pに対応する箇所を主走査方向に移動可能に取り付けられ、主走査方向へ測色しながら移動することにより、用紙Pに印刷されたテストチャートTC(図5参照)における各色のパッチの濃度を測色する。
【0040】
制御装置30は、コンピューター31と、モーター駆動用の駆動回路42と、バルブ駆動用の駆動回路43とを備える。コンピューター31は、駆動回路42を介してキャリッジモーターM1を駆動することによりキャリッジ14を主走査方向に走行させるとともに、この走行途中において印刷ヘッド15内のヘッド駆動回路15aを駆動制御することにより印刷ヘッド15からノズル列Nに応じた色相の色インク及び希釈インクをそれぞれ噴射させる。また、コンピューター31は駆動回路42を介して搬送モーターM2を駆動制御することにより用紙Pを搬送方向に搬送させる。そして、印刷ヘッド15を主走査方向に移動させて行われる印字動作と、用紙Pを搬送方向へ次行の印字位置まで搬送(紙送り)する搬送動作とが略交互に行われることで、用紙Pに印刷が施される。
【0041】
また、コンピューター31は駆動回路43を介して第1バルブVL1〜第10バルブVL10を開閉制御することにより、希釈インク生成装置20において色インクと希釈インクとの混合割合を制御し、所定の希釈割合の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%をそれぞれ生成する。但し、この希釈割合は初期設定値であり、後述する補正処理により必要に応じて適宜調整される。
【0042】
また、コンピューター31には、主制御部51、印刷制御部52、画像処理部53及びヘッド制御ユニット54を備える。主制御部51は、印刷装置100を統括的に制御する。この主制御部51は、印刷装置100に設けられたカードスロットに挿入されたメモリーカード(いずれも図示せず)から画像データを入力したり、ホスト装置200から転送されてきた印刷データを受信したりする。主制御部51は、入力した画像データDgに基づき印刷制御に必要なコマンドを生成して印刷制御部52に出力したり、受信した印刷データPD中の印刷言語記述コマンドを解釈して取得したコマンドを印刷制御部52に出力したりする。印刷制御部52は、コマンドに従って駆動回路42を介してキャリッジモーターM1及び搬送モーターM2をそれぞれ駆動制御する。
【0043】
画像処理部53は、画像データDgに所定の画像処理を施して印字データDpを生成する。すなわち、画像データDgを、各色インクC,M,Y,Kと希釈インクの各々について印刷ヘッド15(ノズルA列〜I列)から噴射すべき液量を示した印字データDpに変換する。ここで、画像データDgは、例えばJpeg画像データ又はRGB画像データである。Jpeg画像データは不図示の解凍部によりYUV画像データに解凍された後、RGB画像データに変換される。本実施形態では、RGB画像データは、R(赤)、G(緑)、B(青)各8ビットで表されたsRGB規格に準拠した256諧調データである。
【0044】
画像処理部53は、色変換処理部53a、ハーフトーン処理部53b、ラスタライズ処理部53cを備えている。色変換処理部53aは、RGB画像データを、変換テーブル(ルックアップテーブル)を参照して色インクおよび希釈インクのそれぞれの噴射量に対応するデータであるCMYK画像データに色変換する。この変換テーブルでは、R,G,Bの256階調(8ビット)の3色の値の組み合わせに対し、各色インクC,M,Y,Kと各希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%との256階調で表された値の組み合わせが規定されている。
【0045】
ハーフトーン処理部53bは、256諧調のCMYK画像データを、ドットサイズ(つまりインク滴サイズ)の種類(数)に応じて、2値や4値などの低諧調のデータに変換する周知の処理である。ラスタライズ処理部53cは、印刷ヘッド15の噴射順序に合わせて画素の並び順を並び替える処理であり、例えば縦横変換処理やインターレース処理(マイクロウィーブ処理を含む)などが含まれる。
【0046】
ヘッド制御ユニット54は、画像処理部53が生成した印字データDpをヘッド駆動回路15aが扱える形式のヘッド制御データDhに変換し、ヘッド駆動回路15aへ印刷ヘッド15の1走査(1パス)分ずつ順次転送する。
【0047】
駆動信号生成回路55は、電圧供給部56から供給される供給電圧を基にドットサイズ(インク滴サイズ)に応じた信号波形の駆動パルス(駆動波形信号)を、1ドットの噴射期間(1噴射周期)内に配列する駆動信号COMを生成する。駆動信号COMは、例えばドットサイズが1種類であれば1噴射周期毎に1種類の駆動パルスPS1を含み、ドットサイズが3種類であれば1噴射周期毎に3種類の駆動パルスPS1〜PS3を含む。
【0048】
ヘッド駆動回路15aは、ヘッド制御データDhと駆動信号COMとを入力する論理回路と、論理回路の後段の駆動回路(いずれも図示省略)とをノズル列毎に備える。論理回路は、ヘッド制御データDhに基づいて駆動信号COM中の駆動パルスの後段の駆動回路への出力・非出力を選択する。ヘッド制御データDhは、ドットサイズが1種類の場合は1ドット当たり「0」(非噴射)か「1」(噴射)をとる2値データであり、ドットサイズが3種類の場合は1ドット当たり「00」(非噴射)、「01」(小ドット)、「10」(中ドット)、「11」(大ドット)のうちいずれか1つをとる4値データである。ドットサイズが1種類の場合、ヘッド制御データDhの値が「0」のときに駆動パルスPS1は出力されず、その値が「1」のときに駆動パルスPS1は出力される。また、ドットサイズが3種類の場合、ヘッド制御データDhの値が「00」のときは駆動パルスPS1〜PS3はいずれも出力されず、その値が「01」のときは駆動パルスPS1が、その値が「10」のときは駆動パルスPS2が、その値が「11」のときは駆動パルスPS3がそれぞれ出力される。
【0049】
ヘッド駆動回路15aは、その内部の駆動回路へ駆動パルスPS1が出力されなければ、駆動素子19に駆動電圧を印加しない。この場合、ノズルnからインク滴は噴射されない。一方、ヘッド駆動回路15aは、駆動回路へ駆動パルスPS1が出力されれば、駆動素子19に駆動電圧を印加する。この場合、ノズルnからインク滴が噴射される。このとき、駆動回路へ出力される駆動パルスPS1,PS2,PS3に応じてそれぞれ大・中・小のドットサイズのインク滴が噴射される。
【0050】
ここで、駆動信号生成回路55が生成する駆動信号COMの大きさ、つまり駆動パルスPS1又はPS1,PS2,PS3の大きさは、電圧供給部56から入力する供給電圧Vの大きさに依存する。また、駆動信号COMは各ノズル列(A列〜I列)毎の論理回路及び駆動回路に共通の信号であるため、例えば印刷装置100の個体差に応じた調整のため供給電圧Vを変化させると、全ノズル列(A列〜I列)の噴射ドットサイズに影響する構成になっている。なお、供給電圧は初期は標準電圧になっている。
【0051】
駆動信号生成回路55は、駆動素子19に印加するための駆動信号COMを生成する。この駆動信号COMは、各ノズル列Nのノズルnからインク滴を吐出させるに際し、全てのノズル列Nで共通に使用される。駆動信号COMは、ノズルnから噴射されるインク滴の量(ドットサイズの種類)に応じた1つ又は複数の駆動パルスを含む。
【0052】
駆動信号生成回路55は、主制御部51からの後述する指令値に応じた駆動パルスを生成する。具体的には、駆動信号生成回路55に含まれる不図示のDAコンバーターが、指令値に応じた電圧信号を生成する。そして、この電圧信号を駆動信号生成回路55に含まれる不図示のトランジスターが電力増幅することによって、指令値で指示された所望のパルス波形を有する駆動パルスを含む駆動信号COMが生成される。
【0053】
バルブ制御部57は、駆動回路42を介してバルブVL1〜VL10の開閉を制御することによって、使用対象となる希釈インクを生成する。また、バルブ制御部57は、バルブVL1〜VL10を開閉制御して生成した希釈インクについて、混合された色インクと希釈液CLの希釈割合を取得する希釈割合取得部57aを有している。具体的に希釈割合取得部57aは、各バルブVL1〜VL10について、各混合タンク21〜25に色インクを供給するバルブの開放時間と、希釈液CLを供給するバルブの開放時間とをそれぞれ計測することによって、生成された希釈インクにおける色インクの占める比率(%)を取得する。そして、バルブ制御部57は、希釈割合取得部57aが取得したこの比率(%)が、生成すべき希釈インクの目標希釈率に一致するように各バルブVL1〜VL10の開放時間を制御する。
【0054】
本実施形態では、印刷装置100は画像データDgとして測色器80に測色させるための測色用画像データであるテストパターンデータDtをホスト装置200から受信し、テストパターンデータDtに基づいてテストチャートTCの印刷(パッチ印刷)を行う。このときのパッチ印刷は、電圧供給部56から供給電圧Vとして初期電圧(標準電圧)V0を出力し、かつ希釈インクの希釈割合を初期希釈割合C50%,M50%,Y50%,K50%,K25%にして行われる。測色器80の各色のパッチを測色した各測色値を含む測色データは、通信I/F41を介してコンピューター31内の演算手段の一例としての演算部58に入力される。演算部58は、測色データ中の各色の測色値に基づき、色毎に印刷濃度と供給電圧との関係を示す関係式における係数と、色毎に印刷濃度と希釈割合と関係を示す関係式における係数とを演算する。なお、本実施形態では、測色器80から印刷濃度を取得するための通信I/F41と、印刷濃度を演算のために取得する演算部58とにより、濃度取得手段の一例が構成される。
【0055】
電圧決定手段の一例としての電圧決定部59は、印刷濃度と供給電圧との関係式における係数を用いて、印刷濃度d1を基準濃度d0に近づけるような補正電圧V1を決定し、初期電圧V0に替えて、電圧供給部56に補正電圧V1を設定する。なお、本実施形態では、規定手段の一例である電圧供給部56が供給する初期電圧V0(規定電圧)が第1の規定条件に相当し、補正電圧V1が第2の規定条件に相当する。
【0056】
また、希釈割合決定手段の一例としての希釈割合決定部60は、印刷濃度と希釈割合との関係式における係数を用いて、印刷濃度d11を基準濃度d0に近づけるような補正希釈割合S1を希釈インクの色毎に決定し、初期希釈割合S0に替えて、バルブ制御部57に補正希釈割合S1を設定する。
【0057】
電圧決定部59が決定した補正電圧V1及び希釈割合決定部60が決定した補正希釈割合S1が、印刷画像における粒状性の点で好ましくない値である場合、ハーフトーン補正部61は画像処理部53内のハーフトーン処理部53bに補正用設定値と共に補正を指示する。そして、ハーフトーン処理部53bは、その補正用設定値に基づいて単位面積当たりのドット数(ドット密度)を標準値よりも低減する条件でハーフトーン処理を行う。
【0058】
図4は、供給電圧及び希釈割合の補正処理(印刷濃度調整処理)を示すフローチャートである。以下、この補正処理について説明する。この補正処理において、印刷装置100において電圧供給部56の供給電圧Vの補正と、希釈インクの希釈割合の補正を行う。
【0059】
まずステップS10では、初期電圧V0を印加する。すなわち、供給電圧Vを初期電圧(標準電圧V0)に設定する。
ステップS20では、基本インク(C,M,Y,K)及び希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各色のパッチ印刷を行う。このとき、初期電圧V0でパッチ印刷を行った後、その後の演算で使用する係数α,βを算出するために、初期電圧V0に対して所定電圧Δvだけ上下に変動させた供給電圧(V0−Δv)と供給電圧(V0+Δv)におけるパッチ印刷も行う。このとき、テストチャートTC用のテストパターンデータDtがホスト装置200から印刷装置100に送られることにより、テストチャートTCが用紙に印刷される。
【0060】
図5は、補正処理のための測色に用いるテストチャートを示す。テストチャートは、第1〜第3パッチ群71〜73からなる。図において、各パッチの上に示された記号は、インク色を表す。また、図の左側には、右側に並ぶパッチを印刷する際の供給電圧Vが示されている。図5に示すとおり、第1パッチ群71を形成する際には、各ノズル列で共通に使用される供給電圧Vは、(V0−Δv)が設定される。また、第2パッチ群72を形成する際には、各ノズル列で共通に使用される供給電圧Vは、(V0+Δv)が設定される。また、第3パッチ群73を形成する際には、各ノズル列で共通に使用される供給電圧Vは、標準電圧V0が設定される。
【0061】
次のステップS30では、測色された色インクC,M,Y,Kの各パッチの濃度d1から補正電圧V1を決定する。まずテストチャートTCの各パッチの濃度dが測色器80によって測定される。この場合、各パッチについて測色値としてL*値、a*値、b*値が得られる。そして、これらの測色値に基づいて、各パッチの濃度が求められることで、供給電圧Vに対する各インク色の濃度を求めることが可能となる。ここで、濃度dとしては、一例として色空間距離を採用する。この場合、濃度は、L*a*b*色空間における測色値の距離であって、測色値をLm*、am*、bm*とした場合、濃度d=[(Lm*)2+(am*)2+(bm*)2]1/2で表される。
【0062】
このとき、供給電圧Vが初期電圧V0のときのパッチの濃度d1の測定と共に、供給電圧が(V0−Δv)のときのパッチの濃度d2、及び、供給電圧Vが(V0+Δv)のときのパッチの濃度d3がそれぞれ測定される。そして、供給電圧(V0−Δv),(V0+Δv)と濃度d2,d3との関係を用いて、供給電圧Vの電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdの関係を示す一次関数式 ΔV=α×Δd+βにおける係数α,βを求める。
【0063】
図6は、電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdとの関係を示す一次関数を示すグラフである。本実施形態では、電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdとの関係は一次関数で近似される。図には横軸に電圧変化量ΔV、縦軸に濃度変化量Δdが示されている。そして、濃度変化量Δdと電圧変化量Δとの関係を示す一次関数ΔV=α・Δd+βが示されている。演算部58は、この一次関数を規定する係数α,βを算出する。この係数α,βは、基本色液体の一例である色インクC,M,Y,Kについて算出される。本例では、4色の色インクC,M,Y,Kを使用しているため、計4組の係数αとβの組が求められる。なお、第2及び第3パッチ群72,73は係数α,βを算出するために使用するものであり、係数α,βを揮発性メモリーに一旦保存しておけば、その後の補正処理時にはテストチャートTCは第1パッチ群71のみのパッチ印刷とすることもできる。
【0064】
図8に示すように、本実施形態では、供給電圧Vと濃度dの関係は一次関数に近似される。供給電圧Vが初期電圧V0のときの濃度d1が基準濃度d0からずれている場合は、基準濃度d0を確保できる補正電圧V1に補正する。但し、本実施形態では、色インクは4色あるため、各色毎に補正電圧V1を算出する。
【0065】
図10は、色インクC,M,Y,Kの各パッチの濃度d1を、基準濃度d0に近づけられる方向へ供給電圧Vを補正する電圧補正処理、及び供給電圧Vが補正されても希釈インクの濃度が基準濃度を確保できるように希釈インクの希釈割合を補正する希釈割合補正処理を説明するためのグラフである。図10は、補正電圧V1として最大補正電圧V1maxを採用する例を示す。
【0066】
図10に示すように、電圧補正前の初期電圧V0のとき(補正なしのとき)は、9つのインク色の各濃度d1は、同グラフにおける黒菱形のプロット点に示すような値をとる。このうち色インクC,M,Y,Kの濃度d1のうち最低濃度d1minのインク色(図10の例ではマゼンタM)でも基準濃度d0が確保されるように補正電圧V1を決定する。すなわち、色インクC,M,Y,Kの各濃度d1を基準濃度d0にするための色インクC,M,Y,K毎の補正電圧V1(C),V1(M),V1(Y),V1(K)を計算し、このうちの最大の補正電圧V1max(図10の例ではV1(M))を補正電圧V1として決定する(V1=V1max)。この補正電圧V1の決定は電圧決定部59が行い、電圧決定部59は決定した補正電圧V1を電圧供給部56に以後出力すべき供給電圧Vとして設定する。
【0067】
補正電圧V1に補正すると、駆動信号COMを構成する駆動パルスPSの振幅が電圧補正量ΔV1に応じて変化し、その結果としてインク滴サイズ(つまりドットサイズ)が変化するため、全色のドット濃度が変化する。例えば図10の例では、濃度dを高くする方向へ初期電圧V0を電圧補正量ΔV1(=V0−V1min)だけ補正して補正電圧V1を決定する。この場合、全インク色(全ノズル列)で共通に初期電圧V0から補正電圧V1に変更されるので、色インクC,M,Y,K以外の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%についても濃度dが高くなってしまう(図10における黒四角のプロット点を参照)。
【0068】
図10において、このように補正電圧V1を設定した場合に、希釈インクの濃度d11が基準濃度d0から離れてしまう。このため、補正電圧V1を設定した場合における希釈インクの濃度d11を計算により推定し、その推定した濃度d11を基準濃度d0に近づけるように希釈割合Sを補正するようにしている。
【0069】
そのために図4におけるステップS40では、希釈インクの各色(ノズル列)毎に補正電圧V1時の濃度d11を計算する。本実施形態では、希釈インクについても、図6に示すように、電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdとの関係は一次関数で近似される。そして、希釈インクについて、濃度変化量Δdと電圧変化量Δとの関係を示す一次関数式ΔV=α×Δd+βを規定する係数α,βを演算部58が算出する。この係数α,βは、各希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%について算出される。ここでは、5色の希釈インクを使用しているため、計5組の係数αとβの組が求められる。なお、各希釈インクの5組の係数α,βは、前記ステップS30において、色インクC,M,Y,Kに関する4組の係数α,βを算出する際に一緒に算出してもよい。
【0070】
これらの各希釈インクの係数α,βを用いて規定される一次関数式ΔV=α・Δd+βを用いて、電圧補正量ΔV1分の補正を行ったときの濃度変化量Δd(=(ΔV1−β)/α)を希釈インク毎に個別に算出する。そして、初期電圧V0のときの希釈インクのインク色の濃度dに濃度変化量Δdを加えて、補正電圧V1を設定した場合における各希釈インクの濃度d11を算出する(d11=d+Δd)。例えば、補正電圧V1を設定した場合における希釈インクC50%で印刷されたインク色の濃度d11(C50)は、初期電圧V0のときの濃度d(C50)に電圧補正量ΔV1分の濃度変化量Δd(C50)を付加して、d11(C50)=d(C50)+Δd(C50)として算出される。こうして図10において、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の補正電圧時の濃度d11(図10における黒四角)が算出される。
【0071】
さらに図4に示す次のステップS50では、希釈インクの各色毎に補正希釈割合S1を決定する。図5に示すテストチャートTCでは、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各色のパッチの濃度dを測定する。このとき希釈割合100%である基本色の色インクC,M,Y,Kと各基本色の希釈インクとの組合せ(C100%,C50%)、(M100%,M50%)、(Y100%,Y50%)、及び異なる希釈割合の希釈インクの組合せ(K50%,K25%)毎に、希釈割合の異なる2つのパッチの濃度d12,d13は求められている。そして、希釈割合(S0−Δs),(S0+Δs)と濃度d12,d13との関係を用いて、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdの関係を示す一次関数式 ΔS=γ×Δd+δにおける係数γ,δを求める。
【0072】
図7は、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdとの関係を示す一次関数を示すグラフである。本実施形態では、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdとの関係は一次関数で近似される。図には横軸に希釈割合変化量ΔS、縦軸に濃度変化量Δdが示されている。そして、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdとの関係を示す一次関数ΔS=γ×Δd+δが示されている。演算部58は、この一次関数を規定する係数γ,δを算出する。この係数γ,δは、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%(但し、K50%,K25%については係数γ,δは共通)について算出される。ここでは、5色の希釈インクを使用しているため、計5組の係数γとδの組が求められる。もちろん、各希釈インクついて、希釈割合を上下にΔs(例えば1%〜10%の範囲内の値)だけ変化させた希釈インクを生成し、希釈割合がΔsずつ異なる希釈インクで3種類ずつのパッチを印刷し、3種類のパッチの濃度dを用いて、各希釈インク毎により精度の高い係数γ,δを算出する構成も採用できる。なお、各希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の初期希釈割合S0は、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%がそれぞれ「50%」(S0=50%)、希釈インクK25%が「25%」(S0=25%)である。
【0073】
図9に示すように、本実施形態では、希釈割合Sと濃度dの関係は一次関数に近似される。供給電圧Vが補正電圧V1のときの初期希釈割合S0のときの濃度d11が基準濃度d0からずれている場合は、基準濃度d0を確保できる補正希釈割合S1に希釈割合Sを補正する。すなわち、希釈割合決定部60は、補正電圧V1かつ初期希釈割合S0のときの濃度d11を、希釈インク毎の基準濃度d0に一致させられるまでの濃度差Δd11(=d0−d11)に対応する希釈補正量ΔS1を、初期希釈割合S0に付加することにより、補正希釈割合S1を決定する。但し、本実施形態では、希釈インクは5色あるため、各色毎に補正希釈割合S1を算出する。
【0074】
図10は、補正電圧V1を供給したとの想定の下において、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%のパッチの濃度d11を、基準濃度d0に近づけられる方向へ希釈割合Sを補正する希釈割合補正処理をも説明する。
【0075】
図10に示すように、電圧決定部59によって最大補正電圧V1maxを補正電圧V1として決定した場合、駆動信号COMを構成する駆動パルスPS1〜PS3の振幅が電圧補正量ΔV1に応じて変化する。この結果としてインク滴サイズ(つまりドットサイズ)が変化するため、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%についても濃度dが高くなってしまう(図10における黒四角のプロット点を参照)。
【0076】
希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各濃度d11(図10における黒四角のプロット点)を基準濃度d0に近づける方向へ補正できる補正希釈割合S1を、希釈インク毎に個別に決定する。このように希釈インク毎に補正希釈割合S1を決定することにより、補正電圧V1を印加した場合における希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各濃度は、例えば図10に白三角で示したプロット点のように補正される。この補正希釈割合S1の決定は希釈割合決定部60が行う。そして、希釈割合決定部60は、決定した希釈インク毎の補正希釈割合S1をバルブ制御部57に設定する。この結果、バルブ制御部57は以後の制御において、希釈インクに占める色インクの割合が補正希釈割合S1となるように、色インク供給用のバルブと希釈液供給用のバルブの開閉制御を行う。
【0077】
こうして電圧決定部59が決定した補正電圧V1を電圧供給部56が出力することにより、色インクC,M,Y,Kの各インク色の濃度がなるべく基準濃度d0近くに確保される。また、このとき希釈割合決定部60が決定した補正希釈割合S1の希釈インクを生成できるように、バルブ制御部57がバルブを開閉制御する。このため、希釈インク生成装置20から印刷ヘッド15へはそれぞれの補正希釈割合S1の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%がそれぞれ供給される。このため、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%で印刷したドットの濃度が、なるべく希釈インク毎の基準濃度d0近くに確保される。なお、ハーフトーン補正部61は、ドットの数を調整することにより粒状感を抑制する機能を有している。電圧決定部59が決定した補正電圧V1及び希釈割合決定部60が決定した補正希釈割合S1が、粒状性の点で好ましくない値である場合、ハーフトーン補正部61は画像処理部53内のハーフトーン処理部53bに補正用設定値を指示する。そして、ハーフトーン処理部53bは、その補正用設定値に基づいて単位面積当たりのドット数(ドット密度)を標準値よりも低減することにより粒状感を抑制する。
【0078】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)初期電圧V0で印刷した各色のパッチの濃度dに基づいて少なくとも色インクの印刷濃度dを基準濃度d0に近づけられるように補正電圧V1を決定することにより、色インクC,M,Y,Kの濃度をなるべく基準濃度d0近くの値が確保できるようにした。このため、色インクC,M,Y,Kの印刷濃度が適正化されて必要な色再現範囲を確保することができる。一方、補正電圧V1を設定することにより、希釈インクの印刷濃度dが変動する虞があるが、希釈インクについては補正電圧V1を供給したときに見込まれる濃度d11を各色の基準濃度d0に近づけるような補正希釈割合S1を決定する。よって、希釈割合を補正しない場合に比べ、色インクC,M,Y,Kの濃度をなるべく目標濃度である基準濃度d0近くに確保できるので、印刷画像における粒状感が抑制できる。従って、必要な色再現範囲を確保しつつ粒状感が抑制された印刷画像を提供できる。また、印刷装置100の個体差による印刷品質のばらつき、同一の印刷装置100における繰り返し印刷時のページ間での印刷品質のばらつきなども抑制できる。
【0079】
(2)各色のパッチを測色器80により測色した測色値に基づいて色毎に印刷濃度を取得できるので、測色した濃度の精度が高く、精度よく供給電圧Vを補正できる。従って、色再現範囲を確保できるとともに希釈色液体の希釈割合の補正により粒状感も抑制できる。
【0080】
(3)第1の情報の一例である係数α,βに基づいて初期電圧V0(規定電圧)のときの印刷濃度を基準濃度d0(目標濃度)に近づけるための電圧補正量ΔV1を求め、この電圧補正量ΔV1を初期電圧V0に付加して補正電圧V1を決定できる。よって、印刷濃度の測定結果を用いて補正電圧V1の決定が可能になる。
【0081】
(4)第2の情報の一例である係数γ,δに基づいて初期希釈割合S0(規定希釈割合)のときの印刷濃度を基準濃度d0(目標濃度)にするための希釈補正量ΔS1を求め、この希釈補正量ΔS1を初期希釈割合S0に付加して補正希釈割合S1を決定できる。よって、印刷濃度の測定結果を用いて補正希釈割合S1の決定が可能になる。
【0082】
(5)希釈インク生成装置20における希釈割合Sを補正するので、粒状感を抑制した画像を印刷できるような希釈割合の希釈インクを生成することができる。
(6)ハーフトーン補正部61がハーフトーン処理部53bに補正用設定値を設定して、単位面積当たりのドット数(ドット密度)を調整するので、この調整によっても粒状感を抑制できる。
【0083】
なお、実施形態に限定されず、以下の態様で実施してもよい。
・補正電圧V1は、最大補正電圧V1maxに限定されず、図11に示すような平均補正電圧V1aveを採用することもできる。すなわち、図11に示すように、色インクC,M,Y,Kの各濃度d1の平均である平均濃度d1aveを算出し、平均濃度d1aveが基準濃度d0になるような電圧補正量ΔV1を求め、初期電圧V0に電圧補正量ΔV1を付加して、平均補正電圧V1aveを決定する。
【0084】
・前記実施形態では、基本色液体(C,M,Y,K)の各濃度d1の最小値又は平均値を基準濃度d0に近づける補正方法を採用したが、基本色液体(C,M,Y,K)のうち特定の1色の濃度を基準濃度d0に近づける補正方法も採用できる。このように補正対象とすべき基本色液体は少なくとも1色であればよい。また、濃度d1の最大値を基準濃度d0に補正する方法でもよい。要するに、基本色液体の印刷濃度を基準濃度(目標濃度)に近づけることができればよい。なお、平均値を用いる場合、希釈色液体も含めた平均値も採用できる。
【0085】
・規定手段は、駆動信号生成回路55へ駆動信号の大きさ(振幅等)を規定する供給電圧Vを与える電圧供給部56に限定されない。例えば、駆動信号COMを構成する駆動パルスPSを生成するためにそのパルス波形を規定する指令値を駆動信号生成回路55に与える主制御部51を、規定手段とする構成でもよい。すなわち、駆動信号生成回路55内のADコンバーターへ出力すべき指令値を初期指令値(標準指令値)にして各色のパッチ印刷を行って、各色の印刷濃度を基準濃度d0に近づける補正を行って補正指令値を決定する。この構成によっても、補正指令値を出力することにより駆動信号生成回路55で生成される駆動信号COM中の駆動パルスの振幅を変化させて適切なインク滴の噴射量に調整できる。なお、指令値は、パルス波形(例えば台形波)の立ち上がり角(上昇傾き)、高さ、保持時間、立ち下がり角(下降傾き)などのパルス波形の構築に必要な条件値などを含み、指令値により、生成される駆動パルス波形が規定される。
【0086】
・各希釈インクの濃度変化量Δdと希釈割合変化量ΔSとの関係を示す第2の情報(例えば係数γ,δ)は、予め実験等で測定した値を印刷装置100内のメモリーに記憶しておいてもよい。この構成であれば、第2の情報の取得に必要な処理を比較的簡素に済ませられるうえ、比較的精度の高い第2の情報を用いて補正電圧V1時の濃度d11を比較的高い精度で算出できることから、比較的高い精度の補正希釈割合S1を取得できる。また、各色インクの濃度変化量Δdと電圧変化量ΔVとの関係を示す第1の情報(例えば係数α,β)についても、予め実験等で測定した値を印刷装置100内のメモリーに記憶しておいてもよい。
【0087】
・測色器なしの印刷装置の場合、出荷前や出荷後のメンテナンス時にメーカー側で測色器による測色を行って、得られた印刷濃度に応じて決まる補正電圧V1及び補正希釈割合S1を印刷装置に設定する方法を採用してもよい。この方法であれば、測色器を備えない印刷装置においても、適切な補正電圧V1及び補正希釈割合S1を設定でき、必要な色再現範囲を確保しつつ粒状感が抑制された印刷画質を提供できる。また、印刷装置の個体差による印刷品質のばらつき、同一印刷装置における繰り返し印刷時のページ間での印刷品質のばらつきを抑制できる。
【0088】
・希釈色液体の希釈液は、透明液体に限定されない。例えばCMYKの各基本色インクと同系色のライト色のインクを希釈液に使用してもよい。例えばシアンインクをライトシアンインクで希釈し、マゼンタインクをライトマゼンタインクで希釈し、さらにイエローインクをライトイエローインクで希釈して、希釈インクを生成する構成でもよい。この場合も、基本色インクがなるべく目標濃度に近い印刷濃度が得られるように補正電圧を決定した場合に、それに応じて希釈インクの希釈割合を決定することにより、色再現範囲を確保しつつ印刷画像の粒状性を向上させることができる。
【0089】
・基準濃度d0をユーザーがキー操作で設定変更できる構成も採用できる。また、基本色液体の印刷濃度を基準濃度d0に近づける補正方式を複数の方式(最小値、平均値など)の中からユーザーが選択できる構成も採用できる。
【0090】
・前記実施形態では、濃度取得手段を、測色器80からの測色データを取得するための通信I/F41及び演算部58により構成したが、測色器付きの印刷装置においては、測色器(測色手段)を含めて濃度取得手段とすることもできる。
【0091】
・カラーを発現するための基本色となる基本色液体は、C,M,Y,Kの4色に限定されず、C,M,Yの3色にしてもよい。さらに、これらの基本色液体に、例えばグリーン、オレンジ、グレーなどの基本色インクのうち少なくとも1色を追加してもよい。この場合、オレンジ、グリーン、グレーの各インクの希釈インクを生成し、当該希釈インクを噴射するノズル列を設けてもよい。なお、基本色インクの全色についてそれぞれの希釈インクを生成する必要はなく、複数の基本色インクのうち少なくとも1色についてその希釈インクが生成される構成でもよい。
【0092】
・C,M,Yの基本色インクについても、複数種の希釈割合(例えば50%と25%)の希釈インクを用意してもよい。また、希釈割合はこれらの値に限定されず、他の希釈割合(例えば10%や75%等)も適宜設定できる。
【0093】
・印刷濃度の測定は測色器による方法に限定されない。例えば噴射された各色のインク滴のサイズ(体積又は重量)を計測してそのサイズから各色の印刷濃度を取得したり、各色のドット面積を測定してドット面積から各色の印刷濃度を取得したりしてもよい。
【0094】
・テストチャートTCにおいて、小ドットのみを連続して吐出して形成したパッチ、中ドットのみを連続して吐出して形成したパッチ、大ドットのみを連続して吐出して形成したパッチを印刷し、ドットサイズ毎に係数決定処理を行って、ドットサイズ毎に補正電圧を求める。そして、このドットサイズ毎の補正電圧V1(l),V1(m),V1(s)の平均値を、補正電圧V1として採用する構成としてもよい。
【0095】
・上記実施形態の希釈インク生成装置20を備えず、予め希釈インクが収容されたタンク(インクカートリッジを含む)を印刷装置のホルダーに装着する構成でもよい。この場合、少なくとも補正希釈割合設定対象の希釈インクについて希釈割合の調整機能があればよい。この構成であれば、タンクからの希釈インクに基本インク又は希釈液を少量混ぜるだけで補正希釈割合に調整できるので、希釈インク中の色むらを抑えやすい。
【0096】
・上記実施形態では、本発明を液体としてのインクを噴射する印刷装置100に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする印刷装置を採用してもよい。なお、印刷装置の噴射手段が噴射する液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体がインクである場合、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。インク以外の液体を噴射する印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する印刷装置がある。この場合、カラーを発現するための基本色となる基本色液体は、R(赤),G(緑),B(青)の液体でもよい。さらに、印刷装置は、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【0097】
以下、上記実施形態及び各変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記濃度取得手段は、前記噴射手段が噴射するドットサイズを決める駆動信号を生成する駆動信号生成手段に、前記駆動信号の大きさを決める供給電圧を規定電圧として前記電圧供給手段から供給して各色のパッチを印刷し、当該各色のパッチを測色手段により測色した測色結果に基づいて色毎に前記印刷濃度を取得する構成であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。この発明によれば、各色のパッチを測色手段により測色した測色結果に基づいて色毎に印刷濃度を取得できるので、測色した濃度の精度が高く、精度よく電圧を補正できる。従って、色再現範囲を確保できるとともに希釈色液体の希釈割合の補正により粒状感も抑制できる。
【符号の説明】
【0098】
10…印刷機構、14…キャリッジ、15…噴射手段の一例としての印刷ヘッド、15a…ヘッド駆動回路、18,18c,18m,18y,18k,18w…タンク、20…希釈色液体生成手段の一例としての希釈インク生成装置、21〜25…混合タンク、30…制御装置、31…コンピューター、32…CPU、33…ASIC、34…ROM、35…RAM、41…濃度取得手段の一例を構成する通信I/F、42,43…駆動回路、51…主制御部、52…印刷制御部、53…画像処理部、54…ヘッド制御ユニット、55…駆動信号生成手段の一例としての駆動信号生成回路、56…電圧供給手段の一例としての電圧供給部、57…バルブ制御部、57a…希釈割合取得部、58…濃度取得手段及び演算手段の一例としての演算部、59…電圧決定手段の一例としての電圧決定部、60…希釈割合決定部、61…ハーフトーン補正部、80…測色手段の一例としての測色器、100…印刷装置、200…ホスト装置、P…噴射対象物の一例としての用紙、n…ノズル、N…ノズル列、M1…キャリッジモーター、M2…搬送モーター、C,M,Y,K…色インク、C50%,M50%,Y50%,K50%,K25%…希釈インク、CL…希釈液、VL1〜VL10…バルブ、Dg…画像データ、Dp…印刷データ、COM…駆動信号、P1〜P3…駆動パルス、α,β…第1の情報の一例である係数、γ,δ…第2の情報の一例である係数、V…供給電圧、V0…第1の規定条件及び規定電圧の一例である初期電圧(標準電圧)、V0−Δv,V0+Δv…第2の供給電圧、ΔV1…電圧補正量、V1,V1max,V1ave…第2の規定条件の一例である補正電圧、d,d1,d11…濃度(印刷濃度)、d0…目標濃度の一例である基準濃度、S…希釈割合、ΔS1…希釈補正量、S1…補正希釈割合。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本色液体と基本色液体を希釈した希釈色液体とを用いて印刷を行う印刷装置に係り、特に各色の印刷濃度の最適化を図る印刷装置及び印刷濃度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射対象物(例えば用紙)に、印刷ヘッドから液体(例えばインク)を噴射して付着させ、噴射対象物に画像(文字や図形などを含む)を印刷する印刷装置が知られている。このような印刷装置においては、互いに異なる色相を有する複数の基本色液体(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインク)を噴射して、用紙上に形成した基本色のドットの混色により、画像に応じた色相、明度、彩度を表現する。この場合、噴射対象物に形成したドットそのものが視覚的に認識されることによって、画像に粒状感が出てしまうことがある。
【0003】
例えば特許文献1〜3には、C,M,Y,Kの基本色インク(基本色液体)と、基本色インクを希釈液で希釈した希釈インクを噴射して印刷を行う印刷装置が開示されている。希釈されていない基本色インクのドットとその希釈インクのドットとを混在させることで、基本色インクのドットのみで画像を形成する場合に比べ、各色のドットの濃度が低減されるので、粒状感を抑制できる。つまり、C,M,Y,Kの基本色インクのドット面積又はドット数を減らし、その減らした分の色を希釈インクのドットで補うことで、粒状感を抑制できる。
【0004】
また、インク噴射型のプリンターは同一の機種であっても機体ごとにインク滴の噴射量が異なることがある。例えば、同一のサイズのインク滴を噴射させようとしても各機体間では若干ながら異なるサイズのインク滴が噴射される。その結果、用紙上に表現される色が異なってしまい、必要な色再現範囲が確保されにくくなる。よって、同一の機種であっても機体毎にインク滴の噴射量を調整する必要がある。また、1つの機体においてもインク滴を噴射するノズル列を複数有している場合は、ノズル列毎にインク滴の噴射量を調整する必要もある。
【0005】
例えば特許文献4には、この種の機体間におけるインク滴の噴射量のずれを補正できる印刷装置が開示されている。詳しくは、基準となるプリンターが印刷したパッチの測色結果と、補正されるプリンターが印刷したパッチの測色結果との差を示す補正ID(誤差情報)を取得し、この補正IDの値に応じて印刷データを修正する。詳しくは、各色毎のパッチを印刷し、その印刷した各色毎のパッチを測色器によって測色する。そして、測色により得たインク色毎(ノズル列毎)の各濃度が目標濃度(基準濃度)に近づくように指令値を補正し、その指令値を駆動信号生成回路に出力することで、この駆動信号生成回路が圧電素子(ピエゾ素子)に出力する駆動信号中の駆動パルスの振幅を変化させ、圧電素子の駆動によりノズルから噴射されるインク滴のサイズを調整する。これにより、各色が適正なドットサイズで印刷されるので、必要な色再現範囲が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−248783号公報
【特許文献2】特開平11−10859号公報
【特許文献3】特開2006−15559号公報
【特許文献4】特開2009−214479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3のような希釈インクを用いた印刷装置において、特許文献4のようなインク滴の噴射量を調整することにより印刷濃度の適正化を図る技術を適用した場合、インク噴射量を色(ノズル列)毎に個別に調整できる構成にはなっていない。このため、インク噴射量を調整する場合、印刷ヘッドの全ノズル列に共通の駆動信号中の駆動パルスの振幅を、例えば基本色インクの適切な噴射量に合わせて調整するのが好ましい。この場合、希釈インクの噴射量が適切であっても一緒にシフトしてしまうので、粒状感に悪影響を及ぼしたり、逆に希釈インクのドットが想定より小サイズになってその色がぼけた感じになったりするなどの問題がある。なお、駆動パルスの振幅は駆動信号生成回路への供給電圧にも依存するので、指令値に替えて供給電圧を補正することで、インク滴の噴射量を調整することも可能である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものであり、その目的の1つは、基本色液体と希釈色液体との印刷濃度を共に適正に調整して、色再現範囲の確保と粒状感の抑制とを両立できる印刷装置及び印刷濃度調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つが希釈液で希釈された少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段から噴射対象物に噴射して印刷を行う印刷装置であって、画像データに基づき前記基本色液体と前記希釈色液体とを噴射する噴射手段と、前記噴射手段に出力すべき駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、前記駆動信号生成手段から出力される前記駆動信号の大きさを規定する規定手段と、前記規定手段が第1の規定条件で規定した大きさの駆動信号に基づき前記噴射手段が印刷した各色の印刷濃度を色毎に取得する濃度取得手段と、前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定手段と、前記補正による前記希釈色液体の印刷濃度の変化分を見込んで、前記希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して前記希釈色液体の補正希釈割合を決定する希釈割合決定手段と、を備えたことを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、少なくとも一つの基本色液体の印刷濃度を目標濃度に近づけるように規定手段による規定条件が第1の規定条件から第2の規定条件へ補正されるため、噴射手段による色再現範囲が確保される。また、第2の規定条件へ補正されることを見込んで、希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける希釈割合の補正が行われることで補正希釈割合が決定されるため、印刷結果の粒状感を抑制できる。
【0011】
本発明の印刷装置では、前記規定手段は、前記駆動信号の大きさを規定する供給電圧を前記駆動信号生成手段に与える電圧供給手段であり、前記第1の規定条件として規定電圧を与え、前記決定手段は、前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を前記規定電圧に施して補正電圧を決定する電圧決定手段であることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、駆動信号を出力する駆動信号生成手段に電圧供給手段から与えられる供給電圧を補正する構成なので、基本色液体と希釈色液体の各印刷濃度を比較的簡単に適正化できる。
【0013】
本発明の印刷装置では、前記濃度取得手段は、前記規定電圧と異なる第2の供給電圧を供給して行った印刷結果に基づく印刷濃度も取得し、前記規定電圧のときの印刷濃度と、前記第2の供給電圧のときの印刷濃度とに基づき供給電圧と印刷濃度との関係を示す第1の情報を演算する演算手段を更に備え、前記電圧決定手段は、前記第1の情報に基づいて前記規定電圧のときの印刷濃度を前記目標濃度に近づけるための電圧補正量を求め、当該電圧補正量を前記規定電圧に付加して前記補正電圧を決定することが好ましい。この発明によれば、第1の情報に基づいて規定電圧のときの印刷濃度を目標濃度にするための電圧補正量を求め、当該電圧補正量を規定電圧に付加して補正電圧を決定することができる。よって、印刷濃度の取得結果を用いて補正電圧の決定が可能になる。
【0014】
本発明の印刷装置では、前記濃度取得手段は、前記基本色液体と前記希釈色液体とのうち色毎に希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体で前記噴射手段が印刷した当該各色液体の印刷濃度を測定し、前記演算手段は、前記希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体の印刷濃度に基づき希釈割合と印刷濃度との関係を示す第2の情報を演算する構成であり、前記希釈割合決定手段は、前記第2の情報に基づいて前記希釈色液体の印刷濃度を前記目標濃度に近づける希釈補正量を求め、当該希釈補正量を前記希釈割合に付加して補正希釈割合を決定することが好ましい。この発明によれば、希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体の印刷濃度の測定結果に基づき希釈割合と印刷濃度との関係を示す第2の情報を演算でき、この第2の情報を用いて、希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける希釈補正量を求めることができる。よって、印刷濃度の取得結果を用いて補正希釈割合の決定が可能になる。
【0015】
本発明の印刷装置では、前記電圧決定手段は決定した前記補正電圧を前記電圧供給手段に設定し、前記希釈割合決定手段が決定した希釈割合で希釈色液体を生成する希釈色液体生成手段を更に備えていることが好ましい。この発明によれば、補正電圧を電圧供給手段から供給されるように設定でき、その補正電圧を供給したときでも、目標濃度に近い印刷濃度が得られるような補正希釈割合の希釈色液体を生成できるので、印刷結果における粒状感を抑制できる。
【0016】
本発明は、カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つを希釈液で希釈して生成した少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段が噴射対象物に噴射して行われる印刷における印刷濃度を調整する印刷濃度調整方法であって、前記噴射手段による印刷ドットサイズを決める駆動信号の大きさを第1の規定条件で規定して前記噴射手段による各色の印刷を行った印刷濃度を色毎に測定する濃度測定ステップと、前記濃度測定ステップで測定した前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定ステップと、前記決定ステップで決定した前記第2の規定条件の下で前記希釈色液体を印刷したときの印刷濃度を推定し、当該推定した印刷濃度を前記希釈色液体の目標濃度に近づける補正を行って前記希釈色液体の希釈割合を決定する希釈割合決定ステップと、を備えたことを要旨とする。この発明によれば、上記印刷装置に係る発明と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の印刷装置の概略構成を示す模式図。
【図2】希釈インク生成装置の構成を示す模式図。
【図3】印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】印刷濃度調整処理を示すフローチャート。
【図5】測色用のパッチを印刷したテストチャートを示す模式図。
【図6】濃度変化量と電圧変化量との関係を示すグラフ。
【図7】濃度変化量と希釈割合変化量との関係を示すグラフ。
【図8】濃度と供給電圧との関係を示すグラフ。
【図9】濃度と希釈割合との関係を示すグラフ。
【図10】最大補正電圧V1maxを適用した場合における各色の濃度を示すグラフ。
【図11】平均補正電圧V1aveを適用した場合における各色の濃度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、噴射対象物の一例である用紙に液体の一例であるインクを噴射して、画像や文書などを用紙に印刷する印刷装置において具体化した一実施形態を、図面を用いて説明する。なお、噴射対象物は特に用紙(紙)に限られるものでなく、基板やガラス、あるいは木、金属、樹脂、布など他の素材で形成されたものであってもよい。
【0019】
図1は、本実施形態における印刷装置100の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、印刷装置100は、印刷機構10と制御装置30とを備えている。そして、制御装置30は、入力された画像データDg又は印刷データPDに基づき印刷機構10を制御し、用紙Pにインクを噴射させて所定の画像を印刷させるように構成されている。
【0020】
印刷機構10は、噴射手段の一例である印刷ヘッド15を備えたキャリッジ14と、駆動プーリー11と従動プーリー12とに巻き掛けられた無端状のベルト13と、駆動プーリー11に回転軸が固定されたキャリッジモーターM1とを備えている。
【0021】
キャリッジ14は図示しないガイド軸に沿って主走査方向(図面左右方向)に移動可能に案内されるとともにベルト13の一部に固定されている。そして、キャリッジモーターM1が正逆転駆動されると、これに連動する駆動プーリー11の回転に伴うベルト13の移動を介して、キャリッジ14は主走査方向に沿って往復移動するようになっている。
【0022】
また、印刷機構10は、印刷ヘッド15に対向する位置(図1では下側位置)を用紙Pの搬送経路とする搬送機構16と、搬送機構16を駆動させる搬送モーターM2とを備えている。本例の搬送機構16は搬送モーターM2の駆動により搬送ローラー16aが回転することによって用紙Pはキャリッジ14の移動方向(主走査方向)と交差する搬送方向(副走査方向)に搬送されるようになっている。
【0023】
また、印刷機構10は、互いに異なる色相液である基本色液体の一例としての基本色インクC(シアン)、基本色インクM(マゼンタ)、基本色インクY(イエロー)、基本色インクK(ブラック)の各色のインクを収容したインクタンク18c,18m,18y,18kと、希釈液CLを収容した希釈液タンク18wとを有している。ここで、希釈液とは、インクを希釈するために用いる液体であり、本例では無色透明の液体が用いられる。希釈液としては、例えばクリーニング液を使用する。もちろん、希釈液は無色透明な液体であればよく、水、アルコール、油などでもよい。また、希釈液としては、基本色インクが染料インクであれば染料の溶媒として使用されている液体と相溶性のある液体が好ましく、基本色インクが顔料インクであれば顔料の分散媒として使用されている液体と相溶性のある液体が好ましい。なお、以下、基本色インクC,M,Y,Kを、単に色インクC,M,Y,Kと呼ぶことにする。
【0024】
これらのインクタンク18c,18m,18y,18k及び希釈液タンク18wは、各色インクC,M,Y,Kを希釈液CLで希釈した希釈色液体の一例である希釈インクを生成する希釈色液体生成手段の一例としての希釈インク生成装置20に備えられている。各色インクC,M,Y,Kは、希釈インク生成装置20内において希釈液CLと所定の液量比率で混合されるようになっている。そして、各色インクC,M,Y,K及び希釈インクは供給管17を通じてキャリッジ14にそれぞれ供給される。なお、各タンク18は希釈インク生成装置20において着脱可能状態または固定された状態で装着される。
【0025】
そして、各タンク18からキャリッジ14に供給された各色インクC,M,Y,K及び希釈インクは、それぞれキャリッジ14内の図示しない流路を通じて印刷ヘッド15に導かれる。なお、以降の説明において、各色インクC,M,Y,Kとそれらを希釈した希釈インクとを区別しない場合、単に「インク」と呼ぶことにする。
【0026】
印刷ヘッド15には、インクを噴射するノズルnが複数個(例えば180個)配列されてなるノズル列N(図2参照)が、インク色と同数列(9列)配列されている。このノズル列の形成面に対向して配置される用紙Pに対して、各ノズル列のノズルnからインクを噴射して用紙P上に付着させるように構成されている。なお、本実施形態では、色インクと希釈インクの色毎に1列のノズル列Nが対応し、印刷ヘッド15は後述するA列〜I列の合計9列のノズル列Nを有している(図2参照)。
【0027】
制御装置30は、印刷ヘッド15、キャリッジモーターM1、搬送モーターM2及び希釈インク生成装置20を制御する。制御装置30は、入力した画像データDg又は印刷データPDに基づき色インクと希釈インクとを印刷ヘッド15のノズルnから噴射させて、用紙Pに画像データDg又は印刷データPDに基づく画像を印刷する印刷制御を行う。この制御装置30は、各種制御を行うコンピューター31(マイクロコンピューター)を備える。コンピューター31は、CPU(中央処理装置)32、ASIC(集積回路)33、ROM(リードオンリーメモリー)34及びRAM(ランダムアクセスメモリー)35などを備えている。
【0028】
制御装置30内のコンピューター31は、CPU32がROM34に格納されたプログラムを実行することにより、印刷装置100における各種制御を行う。また、ROM34には、各種制御に用いられる設定データなども記憶されている。ASIC33は、画像データDgから、印刷ヘッド15にインク滴の噴射制御を行わせるため供給する印刷用制御データを生成する画像処理等を含む所定の処理を行う。また、RAM35は、CPU32がROM34から読み出したプログラムを一時格納したり、プログラムの動作の過程で取得される演算結果等のデータを一時的に記憶したりするために用いられる。
【0029】
次に、希釈インク生成装置20の構成を説明する。図2は、希釈インク生成装置20において、各タンク18から供給される各色インクC,M,Y,Kの希釈の仕組みと、各色インクC,M,Y,Kおよび希釈インクが印刷ヘッド15に供給される様子を示した説明図である。
【0030】
図2に示すように、希釈インク生成装置20は、色インクCと希釈液CLとを混合した希釈インク(C+CL)、色インクMと希釈液CLとを混合した希釈インク(M+CL)、色インクYと希釈液CLとを混合した希釈インク(Y+CL)がそれぞれ生成される。さらに、色インクKと希釈液CLとを混合した希釈インク(B+CL)が生成される。本実施形態では、希釈インク(C+CL)、希釈インク(M+CL)、及び希釈インク(Y+CL)は、色インクC,M,Y,Kと希釈液CLとの混合比率がそれぞれ50:50であり、希釈割合が50%である希釈インクC50%,M50%,Y50%がそれぞれ生成される。さらに希釈インク生成装置20では、色インクKと希釈液CLは混合比率50:50と25:75でそれぞれ混合され、希釈割合が50%の希釈インクK50%と希釈割合が25%の希釈インクK25%がそれぞれ生成される。このように各色インクが希釈されることによって、色インクと同じ色相を呈する希釈インクがそれぞれ生成される。なお、希釈インク生成装置20には、各色インクおよび生成された各希釈インクを供給する配管と、希釈インクを貯留する混合タンク21〜25とが設けられている。
【0031】
具体的に行われる混合処理(希釈処理)について、その一例として、色インクCと希釈液CLとを混合した希釈インクC50%について説明する。
色インクCは、インクタンク18cから、経路途中にバルブVL1が設けられた配管によって、混合タンク21に供給される。また、希釈液CLは、希釈液タンク18wから、経路途中にバルブVL2が設けられた配管によって、同じく混合タンク21に供給される。この結果、バルブVL1とバルブVL6の開閉を制御することによって、希釈インクC50%が混合タンク21において生成される。
【0032】
同様に、バルブVL2とバルブVL7の開閉を制御することによって、希釈インクM50%が混合タンク22において生成され、バルブVL3とバルブVL8の開閉を制御することによって、希釈インクY50%が混合タンク23において生成される。また、バルブVL4とバルブVL9の開閉を制御することによって、希釈インクK50%が混合タンク24において生成され、バルブVL5とバルブVL10の開閉を制御することによって、希釈インクK25%が混合タンク25において生成される。こうして合計5種類の希釈インクが生成されるようになっている。なお、各混合タンク21〜25には、生成された希釈インクが十分に混ざり合うように不図示の撹拌装置が備えられている。
【0033】
各バルブVL1〜VL10は、制御装置30によってその開閉が制御される。このバルブの開閉制御によって、各混合タンク21〜25における希釈インクのインク貯留量と、各色インクC,M,Y,Kと希釈液CLとの混合割合(希釈割合)が制御されることになる。換言すれば、バルブVL1〜VL10の開閉制御によって、各混合タンク21〜25における希釈インクのインク貯留量と、希釈インクが呈する色合い(ここでは主に明度)とを制御することができる。
【0034】
ここで、希釈インクは希釈前の色インクと同じ色相のライト色(薄色)に近い色相を呈することになる。つまり、希釈インクC50%は、用紙Pに印刷されたときには、希釈されたシアンCと用紙Pの白色との混色によってライトシアンに近い色相を呈する。同様に、希釈インクM50%はライトマゼンタに近い色相を呈し、希釈インクY50%はライトイエローに近い色相を呈する。さらに、希釈インクK50%はライトブラックに近い色相を呈し、希釈インクK25%はさらに薄くダークグレーに近い色相を呈する。
【0035】
そして、図2に示すように、4種類の各色インクC,M,Y,Kと、生成された5種類の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%との合計9種類のインクは、それぞれ供給管17及びキャリッジ14内の各流路を通って印刷ヘッド15に供給される。図2に示す印刷ヘッド15には、ノズル列N毎に各ノズルnに対応する位置に、インクを加圧できる電歪素子(ピエゾ素子)や発熱素子などの駆動素子19(図2参照)が設けられている。そして、印刷ヘッド15には、複数個の駆動素子19を駆動する全ノズル列Nに共通のヘッド駆動回路15aが内蔵されている。
【0036】
印刷ヘッド15に供給された9種類のインクは、それぞれ対応するノズル列Nの各ノズルnに個々に連通するインク室へそれぞれ導入され、ヘッド駆動回路15aはインク室に対応する駆動素子19に駆動パルス(駆動電圧)を印加する。この駆動パルスの印加によって駆動素子19が駆動してインク室内のインクに加圧力が付与されることにより、ノズルnからインク滴が噴射される。噴射されるインク滴の量は、駆動素子19に印加される駆動パルスの大きさ(振幅及びパルス周期等)より規定される。このとき、9列(A列〜I列)のノズル列Nの各ノズルnからは、ノズル列Nに応じた色のインクがそれぞれ噴射される。ちなみに、ノズルA列からは色インクCが噴射され、ノズルE列からは希釈インクC50%が噴射され、ノズルH列からは希釈インクK50%が噴射される。
【0037】
次に、印刷装置100の電気的構成を説明する。図3は、印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。なお、図3では、コンピューター31内には、CPU32がROM34に記憶されたプログラムを実行することにより構築されるソフトウェアよりなる機能部分と、ASIC33内の各種回路によって構築されるハードウェアよりなる機能部分を、各機能毎の機能ブロックで示している。
【0038】
図3に示すように、印刷装置100には、通信インターフェイス(通信I/F41)を介して測色器80(カラー測色器)が取り付けられている。制御装置30は、測色器80を用いて測色を行うときに、印刷データPDとして測色用のテストパターンデータDtを入力し、このテストパターンデータDtに基づき印刷機構10を駆動制御することで、印刷ヘッド15により用紙Pに各色のパッチを含むテストチャートを印刷させる。測色器80は、用紙Pに印刷されたテストチャート中の9色のパッチ群(濃度パターン)を測色する。
【0039】
また、印刷装置100にはホスト装置200が接続されている。ホスト装置200の入力操作部(例えばキーボードやマウス)の操作により、印刷データPDを印刷装置100に送信することにより、印刷装置100に所望の画像の印刷を行わせることができる。また、このホスト装置200は、測色器80にも接続されており、測色器80に測色の指令を出力する。測色器80が測色した後述する測色結果は印刷装置100も取得できるようになっている。測色器80は、印刷装置100において用紙Pに対応する箇所を主走査方向に移動可能に取り付けられ、主走査方向へ測色しながら移動することにより、用紙Pに印刷されたテストチャートTC(図5参照)における各色のパッチの濃度を測色する。
【0040】
制御装置30は、コンピューター31と、モーター駆動用の駆動回路42と、バルブ駆動用の駆動回路43とを備える。コンピューター31は、駆動回路42を介してキャリッジモーターM1を駆動することによりキャリッジ14を主走査方向に走行させるとともに、この走行途中において印刷ヘッド15内のヘッド駆動回路15aを駆動制御することにより印刷ヘッド15からノズル列Nに応じた色相の色インク及び希釈インクをそれぞれ噴射させる。また、コンピューター31は駆動回路42を介して搬送モーターM2を駆動制御することにより用紙Pを搬送方向に搬送させる。そして、印刷ヘッド15を主走査方向に移動させて行われる印字動作と、用紙Pを搬送方向へ次行の印字位置まで搬送(紙送り)する搬送動作とが略交互に行われることで、用紙Pに印刷が施される。
【0041】
また、コンピューター31は駆動回路43を介して第1バルブVL1〜第10バルブVL10を開閉制御することにより、希釈インク生成装置20において色インクと希釈インクとの混合割合を制御し、所定の希釈割合の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%をそれぞれ生成する。但し、この希釈割合は初期設定値であり、後述する補正処理により必要に応じて適宜調整される。
【0042】
また、コンピューター31には、主制御部51、印刷制御部52、画像処理部53及びヘッド制御ユニット54を備える。主制御部51は、印刷装置100を統括的に制御する。この主制御部51は、印刷装置100に設けられたカードスロットに挿入されたメモリーカード(いずれも図示せず)から画像データを入力したり、ホスト装置200から転送されてきた印刷データを受信したりする。主制御部51は、入力した画像データDgに基づき印刷制御に必要なコマンドを生成して印刷制御部52に出力したり、受信した印刷データPD中の印刷言語記述コマンドを解釈して取得したコマンドを印刷制御部52に出力したりする。印刷制御部52は、コマンドに従って駆動回路42を介してキャリッジモーターM1及び搬送モーターM2をそれぞれ駆動制御する。
【0043】
画像処理部53は、画像データDgに所定の画像処理を施して印字データDpを生成する。すなわち、画像データDgを、各色インクC,M,Y,Kと希釈インクの各々について印刷ヘッド15(ノズルA列〜I列)から噴射すべき液量を示した印字データDpに変換する。ここで、画像データDgは、例えばJpeg画像データ又はRGB画像データである。Jpeg画像データは不図示の解凍部によりYUV画像データに解凍された後、RGB画像データに変換される。本実施形態では、RGB画像データは、R(赤)、G(緑)、B(青)各8ビットで表されたsRGB規格に準拠した256諧調データである。
【0044】
画像処理部53は、色変換処理部53a、ハーフトーン処理部53b、ラスタライズ処理部53cを備えている。色変換処理部53aは、RGB画像データを、変換テーブル(ルックアップテーブル)を参照して色インクおよび希釈インクのそれぞれの噴射量に対応するデータであるCMYK画像データに色変換する。この変換テーブルでは、R,G,Bの256階調(8ビット)の3色の値の組み合わせに対し、各色インクC,M,Y,Kと各希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%との256階調で表された値の組み合わせが規定されている。
【0045】
ハーフトーン処理部53bは、256諧調のCMYK画像データを、ドットサイズ(つまりインク滴サイズ)の種類(数)に応じて、2値や4値などの低諧調のデータに変換する周知の処理である。ラスタライズ処理部53cは、印刷ヘッド15の噴射順序に合わせて画素の並び順を並び替える処理であり、例えば縦横変換処理やインターレース処理(マイクロウィーブ処理を含む)などが含まれる。
【0046】
ヘッド制御ユニット54は、画像処理部53が生成した印字データDpをヘッド駆動回路15aが扱える形式のヘッド制御データDhに変換し、ヘッド駆動回路15aへ印刷ヘッド15の1走査(1パス)分ずつ順次転送する。
【0047】
駆動信号生成回路55は、電圧供給部56から供給される供給電圧を基にドットサイズ(インク滴サイズ)に応じた信号波形の駆動パルス(駆動波形信号)を、1ドットの噴射期間(1噴射周期)内に配列する駆動信号COMを生成する。駆動信号COMは、例えばドットサイズが1種類であれば1噴射周期毎に1種類の駆動パルスPS1を含み、ドットサイズが3種類であれば1噴射周期毎に3種類の駆動パルスPS1〜PS3を含む。
【0048】
ヘッド駆動回路15aは、ヘッド制御データDhと駆動信号COMとを入力する論理回路と、論理回路の後段の駆動回路(いずれも図示省略)とをノズル列毎に備える。論理回路は、ヘッド制御データDhに基づいて駆動信号COM中の駆動パルスの後段の駆動回路への出力・非出力を選択する。ヘッド制御データDhは、ドットサイズが1種類の場合は1ドット当たり「0」(非噴射)か「1」(噴射)をとる2値データであり、ドットサイズが3種類の場合は1ドット当たり「00」(非噴射)、「01」(小ドット)、「10」(中ドット)、「11」(大ドット)のうちいずれか1つをとる4値データである。ドットサイズが1種類の場合、ヘッド制御データDhの値が「0」のときに駆動パルスPS1は出力されず、その値が「1」のときに駆動パルスPS1は出力される。また、ドットサイズが3種類の場合、ヘッド制御データDhの値が「00」のときは駆動パルスPS1〜PS3はいずれも出力されず、その値が「01」のときは駆動パルスPS1が、その値が「10」のときは駆動パルスPS2が、その値が「11」のときは駆動パルスPS3がそれぞれ出力される。
【0049】
ヘッド駆動回路15aは、その内部の駆動回路へ駆動パルスPS1が出力されなければ、駆動素子19に駆動電圧を印加しない。この場合、ノズルnからインク滴は噴射されない。一方、ヘッド駆動回路15aは、駆動回路へ駆動パルスPS1が出力されれば、駆動素子19に駆動電圧を印加する。この場合、ノズルnからインク滴が噴射される。このとき、駆動回路へ出力される駆動パルスPS1,PS2,PS3に応じてそれぞれ大・中・小のドットサイズのインク滴が噴射される。
【0050】
ここで、駆動信号生成回路55が生成する駆動信号COMの大きさ、つまり駆動パルスPS1又はPS1,PS2,PS3の大きさは、電圧供給部56から入力する供給電圧Vの大きさに依存する。また、駆動信号COMは各ノズル列(A列〜I列)毎の論理回路及び駆動回路に共通の信号であるため、例えば印刷装置100の個体差に応じた調整のため供給電圧Vを変化させると、全ノズル列(A列〜I列)の噴射ドットサイズに影響する構成になっている。なお、供給電圧は初期は標準電圧になっている。
【0051】
駆動信号生成回路55は、駆動素子19に印加するための駆動信号COMを生成する。この駆動信号COMは、各ノズル列Nのノズルnからインク滴を吐出させるに際し、全てのノズル列Nで共通に使用される。駆動信号COMは、ノズルnから噴射されるインク滴の量(ドットサイズの種類)に応じた1つ又は複数の駆動パルスを含む。
【0052】
駆動信号生成回路55は、主制御部51からの後述する指令値に応じた駆動パルスを生成する。具体的には、駆動信号生成回路55に含まれる不図示のDAコンバーターが、指令値に応じた電圧信号を生成する。そして、この電圧信号を駆動信号生成回路55に含まれる不図示のトランジスターが電力増幅することによって、指令値で指示された所望のパルス波形を有する駆動パルスを含む駆動信号COMが生成される。
【0053】
バルブ制御部57は、駆動回路42を介してバルブVL1〜VL10の開閉を制御することによって、使用対象となる希釈インクを生成する。また、バルブ制御部57は、バルブVL1〜VL10を開閉制御して生成した希釈インクについて、混合された色インクと希釈液CLの希釈割合を取得する希釈割合取得部57aを有している。具体的に希釈割合取得部57aは、各バルブVL1〜VL10について、各混合タンク21〜25に色インクを供給するバルブの開放時間と、希釈液CLを供給するバルブの開放時間とをそれぞれ計測することによって、生成された希釈インクにおける色インクの占める比率(%)を取得する。そして、バルブ制御部57は、希釈割合取得部57aが取得したこの比率(%)が、生成すべき希釈インクの目標希釈率に一致するように各バルブVL1〜VL10の開放時間を制御する。
【0054】
本実施形態では、印刷装置100は画像データDgとして測色器80に測色させるための測色用画像データであるテストパターンデータDtをホスト装置200から受信し、テストパターンデータDtに基づいてテストチャートTCの印刷(パッチ印刷)を行う。このときのパッチ印刷は、電圧供給部56から供給電圧Vとして初期電圧(標準電圧)V0を出力し、かつ希釈インクの希釈割合を初期希釈割合C50%,M50%,Y50%,K50%,K25%にして行われる。測色器80の各色のパッチを測色した各測色値を含む測色データは、通信I/F41を介してコンピューター31内の演算手段の一例としての演算部58に入力される。演算部58は、測色データ中の各色の測色値に基づき、色毎に印刷濃度と供給電圧との関係を示す関係式における係数と、色毎に印刷濃度と希釈割合と関係を示す関係式における係数とを演算する。なお、本実施形態では、測色器80から印刷濃度を取得するための通信I/F41と、印刷濃度を演算のために取得する演算部58とにより、濃度取得手段の一例が構成される。
【0055】
電圧決定手段の一例としての電圧決定部59は、印刷濃度と供給電圧との関係式における係数を用いて、印刷濃度d1を基準濃度d0に近づけるような補正電圧V1を決定し、初期電圧V0に替えて、電圧供給部56に補正電圧V1を設定する。なお、本実施形態では、規定手段の一例である電圧供給部56が供給する初期電圧V0(規定電圧)が第1の規定条件に相当し、補正電圧V1が第2の規定条件に相当する。
【0056】
また、希釈割合決定手段の一例としての希釈割合決定部60は、印刷濃度と希釈割合との関係式における係数を用いて、印刷濃度d11を基準濃度d0に近づけるような補正希釈割合S1を希釈インクの色毎に決定し、初期希釈割合S0に替えて、バルブ制御部57に補正希釈割合S1を設定する。
【0057】
電圧決定部59が決定した補正電圧V1及び希釈割合決定部60が決定した補正希釈割合S1が、印刷画像における粒状性の点で好ましくない値である場合、ハーフトーン補正部61は画像処理部53内のハーフトーン処理部53bに補正用設定値と共に補正を指示する。そして、ハーフトーン処理部53bは、その補正用設定値に基づいて単位面積当たりのドット数(ドット密度)を標準値よりも低減する条件でハーフトーン処理を行う。
【0058】
図4は、供給電圧及び希釈割合の補正処理(印刷濃度調整処理)を示すフローチャートである。以下、この補正処理について説明する。この補正処理において、印刷装置100において電圧供給部56の供給電圧Vの補正と、希釈インクの希釈割合の補正を行う。
【0059】
まずステップS10では、初期電圧V0を印加する。すなわち、供給電圧Vを初期電圧(標準電圧V0)に設定する。
ステップS20では、基本インク(C,M,Y,K)及び希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各色のパッチ印刷を行う。このとき、初期電圧V0でパッチ印刷を行った後、その後の演算で使用する係数α,βを算出するために、初期電圧V0に対して所定電圧Δvだけ上下に変動させた供給電圧(V0−Δv)と供給電圧(V0+Δv)におけるパッチ印刷も行う。このとき、テストチャートTC用のテストパターンデータDtがホスト装置200から印刷装置100に送られることにより、テストチャートTCが用紙に印刷される。
【0060】
図5は、補正処理のための測色に用いるテストチャートを示す。テストチャートは、第1〜第3パッチ群71〜73からなる。図において、各パッチの上に示された記号は、インク色を表す。また、図の左側には、右側に並ぶパッチを印刷する際の供給電圧Vが示されている。図5に示すとおり、第1パッチ群71を形成する際には、各ノズル列で共通に使用される供給電圧Vは、(V0−Δv)が設定される。また、第2パッチ群72を形成する際には、各ノズル列で共通に使用される供給電圧Vは、(V0+Δv)が設定される。また、第3パッチ群73を形成する際には、各ノズル列で共通に使用される供給電圧Vは、標準電圧V0が設定される。
【0061】
次のステップS30では、測色された色インクC,M,Y,Kの各パッチの濃度d1から補正電圧V1を決定する。まずテストチャートTCの各パッチの濃度dが測色器80によって測定される。この場合、各パッチについて測色値としてL*値、a*値、b*値が得られる。そして、これらの測色値に基づいて、各パッチの濃度が求められることで、供給電圧Vに対する各インク色の濃度を求めることが可能となる。ここで、濃度dとしては、一例として色空間距離を採用する。この場合、濃度は、L*a*b*色空間における測色値の距離であって、測色値をLm*、am*、bm*とした場合、濃度d=[(Lm*)2+(am*)2+(bm*)2]1/2で表される。
【0062】
このとき、供給電圧Vが初期電圧V0のときのパッチの濃度d1の測定と共に、供給電圧が(V0−Δv)のときのパッチの濃度d2、及び、供給電圧Vが(V0+Δv)のときのパッチの濃度d3がそれぞれ測定される。そして、供給電圧(V0−Δv),(V0+Δv)と濃度d2,d3との関係を用いて、供給電圧Vの電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdの関係を示す一次関数式 ΔV=α×Δd+βにおける係数α,βを求める。
【0063】
図6は、電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdとの関係を示す一次関数を示すグラフである。本実施形態では、電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdとの関係は一次関数で近似される。図には横軸に電圧変化量ΔV、縦軸に濃度変化量Δdが示されている。そして、濃度変化量Δdと電圧変化量Δとの関係を示す一次関数ΔV=α・Δd+βが示されている。演算部58は、この一次関数を規定する係数α,βを算出する。この係数α,βは、基本色液体の一例である色インクC,M,Y,Kについて算出される。本例では、4色の色インクC,M,Y,Kを使用しているため、計4組の係数αとβの組が求められる。なお、第2及び第3パッチ群72,73は係数α,βを算出するために使用するものであり、係数α,βを揮発性メモリーに一旦保存しておけば、その後の補正処理時にはテストチャートTCは第1パッチ群71のみのパッチ印刷とすることもできる。
【0064】
図8に示すように、本実施形態では、供給電圧Vと濃度dの関係は一次関数に近似される。供給電圧Vが初期電圧V0のときの濃度d1が基準濃度d0からずれている場合は、基準濃度d0を確保できる補正電圧V1に補正する。但し、本実施形態では、色インクは4色あるため、各色毎に補正電圧V1を算出する。
【0065】
図10は、色インクC,M,Y,Kの各パッチの濃度d1を、基準濃度d0に近づけられる方向へ供給電圧Vを補正する電圧補正処理、及び供給電圧Vが補正されても希釈インクの濃度が基準濃度を確保できるように希釈インクの希釈割合を補正する希釈割合補正処理を説明するためのグラフである。図10は、補正電圧V1として最大補正電圧V1maxを採用する例を示す。
【0066】
図10に示すように、電圧補正前の初期電圧V0のとき(補正なしのとき)は、9つのインク色の各濃度d1は、同グラフにおける黒菱形のプロット点に示すような値をとる。このうち色インクC,M,Y,Kの濃度d1のうち最低濃度d1minのインク色(図10の例ではマゼンタM)でも基準濃度d0が確保されるように補正電圧V1を決定する。すなわち、色インクC,M,Y,Kの各濃度d1を基準濃度d0にするための色インクC,M,Y,K毎の補正電圧V1(C),V1(M),V1(Y),V1(K)を計算し、このうちの最大の補正電圧V1max(図10の例ではV1(M))を補正電圧V1として決定する(V1=V1max)。この補正電圧V1の決定は電圧決定部59が行い、電圧決定部59は決定した補正電圧V1を電圧供給部56に以後出力すべき供給電圧Vとして設定する。
【0067】
補正電圧V1に補正すると、駆動信号COMを構成する駆動パルスPSの振幅が電圧補正量ΔV1に応じて変化し、その結果としてインク滴サイズ(つまりドットサイズ)が変化するため、全色のドット濃度が変化する。例えば図10の例では、濃度dを高くする方向へ初期電圧V0を電圧補正量ΔV1(=V0−V1min)だけ補正して補正電圧V1を決定する。この場合、全インク色(全ノズル列)で共通に初期電圧V0から補正電圧V1に変更されるので、色インクC,M,Y,K以外の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%についても濃度dが高くなってしまう(図10における黒四角のプロット点を参照)。
【0068】
図10において、このように補正電圧V1を設定した場合に、希釈インクの濃度d11が基準濃度d0から離れてしまう。このため、補正電圧V1を設定した場合における希釈インクの濃度d11を計算により推定し、その推定した濃度d11を基準濃度d0に近づけるように希釈割合Sを補正するようにしている。
【0069】
そのために図4におけるステップS40では、希釈インクの各色(ノズル列)毎に補正電圧V1時の濃度d11を計算する。本実施形態では、希釈インクについても、図6に示すように、電圧変化量ΔVと濃度変化量Δdとの関係は一次関数で近似される。そして、希釈インクについて、濃度変化量Δdと電圧変化量Δとの関係を示す一次関数式ΔV=α×Δd+βを規定する係数α,βを演算部58が算出する。この係数α,βは、各希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%について算出される。ここでは、5色の希釈インクを使用しているため、計5組の係数αとβの組が求められる。なお、各希釈インクの5組の係数α,βは、前記ステップS30において、色インクC,M,Y,Kに関する4組の係数α,βを算出する際に一緒に算出してもよい。
【0070】
これらの各希釈インクの係数α,βを用いて規定される一次関数式ΔV=α・Δd+βを用いて、電圧補正量ΔV1分の補正を行ったときの濃度変化量Δd(=(ΔV1−β)/α)を希釈インク毎に個別に算出する。そして、初期電圧V0のときの希釈インクのインク色の濃度dに濃度変化量Δdを加えて、補正電圧V1を設定した場合における各希釈インクの濃度d11を算出する(d11=d+Δd)。例えば、補正電圧V1を設定した場合における希釈インクC50%で印刷されたインク色の濃度d11(C50)は、初期電圧V0のときの濃度d(C50)に電圧補正量ΔV1分の濃度変化量Δd(C50)を付加して、d11(C50)=d(C50)+Δd(C50)として算出される。こうして図10において、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の補正電圧時の濃度d11(図10における黒四角)が算出される。
【0071】
さらに図4に示す次のステップS50では、希釈インクの各色毎に補正希釈割合S1を決定する。図5に示すテストチャートTCでは、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各色のパッチの濃度dを測定する。このとき希釈割合100%である基本色の色インクC,M,Y,Kと各基本色の希釈インクとの組合せ(C100%,C50%)、(M100%,M50%)、(Y100%,Y50%)、及び異なる希釈割合の希釈インクの組合せ(K50%,K25%)毎に、希釈割合の異なる2つのパッチの濃度d12,d13は求められている。そして、希釈割合(S0−Δs),(S0+Δs)と濃度d12,d13との関係を用いて、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdの関係を示す一次関数式 ΔS=γ×Δd+δにおける係数γ,δを求める。
【0072】
図7は、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdとの関係を示す一次関数を示すグラフである。本実施形態では、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdとの関係は一次関数で近似される。図には横軸に希釈割合変化量ΔS、縦軸に濃度変化量Δdが示されている。そして、希釈割合変化量ΔSと濃度変化量Δdとの関係を示す一次関数ΔS=γ×Δd+δが示されている。演算部58は、この一次関数を規定する係数γ,δを算出する。この係数γ,δは、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%(但し、K50%,K25%については係数γ,δは共通)について算出される。ここでは、5色の希釈インクを使用しているため、計5組の係数γとδの組が求められる。もちろん、各希釈インクついて、希釈割合を上下にΔs(例えば1%〜10%の範囲内の値)だけ変化させた希釈インクを生成し、希釈割合がΔsずつ異なる希釈インクで3種類ずつのパッチを印刷し、3種類のパッチの濃度dを用いて、各希釈インク毎により精度の高い係数γ,δを算出する構成も採用できる。なお、各希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の初期希釈割合S0は、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%がそれぞれ「50%」(S0=50%)、希釈インクK25%が「25%」(S0=25%)である。
【0073】
図9に示すように、本実施形態では、希釈割合Sと濃度dの関係は一次関数に近似される。供給電圧Vが補正電圧V1のときの初期希釈割合S0のときの濃度d11が基準濃度d0からずれている場合は、基準濃度d0を確保できる補正希釈割合S1に希釈割合Sを補正する。すなわち、希釈割合決定部60は、補正電圧V1かつ初期希釈割合S0のときの濃度d11を、希釈インク毎の基準濃度d0に一致させられるまでの濃度差Δd11(=d0−d11)に対応する希釈補正量ΔS1を、初期希釈割合S0に付加することにより、補正希釈割合S1を決定する。但し、本実施形態では、希釈インクは5色あるため、各色毎に補正希釈割合S1を算出する。
【0074】
図10は、補正電圧V1を供給したとの想定の下において、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%のパッチの濃度d11を、基準濃度d0に近づけられる方向へ希釈割合Sを補正する希釈割合補正処理をも説明する。
【0075】
図10に示すように、電圧決定部59によって最大補正電圧V1maxを補正電圧V1として決定した場合、駆動信号COMを構成する駆動パルスPS1〜PS3の振幅が電圧補正量ΔV1に応じて変化する。この結果としてインク滴サイズ(つまりドットサイズ)が変化するため、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%についても濃度dが高くなってしまう(図10における黒四角のプロット点を参照)。
【0076】
希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各濃度d11(図10における黒四角のプロット点)を基準濃度d0に近づける方向へ補正できる補正希釈割合S1を、希釈インク毎に個別に決定する。このように希釈インク毎に補正希釈割合S1を決定することにより、補正電圧V1を印加した場合における希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%の各濃度は、例えば図10に白三角で示したプロット点のように補正される。この補正希釈割合S1の決定は希釈割合決定部60が行う。そして、希釈割合決定部60は、決定した希釈インク毎の補正希釈割合S1をバルブ制御部57に設定する。この結果、バルブ制御部57は以後の制御において、希釈インクに占める色インクの割合が補正希釈割合S1となるように、色インク供給用のバルブと希釈液供給用のバルブの開閉制御を行う。
【0077】
こうして電圧決定部59が決定した補正電圧V1を電圧供給部56が出力することにより、色インクC,M,Y,Kの各インク色の濃度がなるべく基準濃度d0近くに確保される。また、このとき希釈割合決定部60が決定した補正希釈割合S1の希釈インクを生成できるように、バルブ制御部57がバルブを開閉制御する。このため、希釈インク生成装置20から印刷ヘッド15へはそれぞれの補正希釈割合S1の希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%がそれぞれ供給される。このため、希釈インクC50%,M50%,Y50%,K50%,K25%で印刷したドットの濃度が、なるべく希釈インク毎の基準濃度d0近くに確保される。なお、ハーフトーン補正部61は、ドットの数を調整することにより粒状感を抑制する機能を有している。電圧決定部59が決定した補正電圧V1及び希釈割合決定部60が決定した補正希釈割合S1が、粒状性の点で好ましくない値である場合、ハーフトーン補正部61は画像処理部53内のハーフトーン処理部53bに補正用設定値を指示する。そして、ハーフトーン処理部53bは、その補正用設定値に基づいて単位面積当たりのドット数(ドット密度)を標準値よりも低減することにより粒状感を抑制する。
【0078】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)初期電圧V0で印刷した各色のパッチの濃度dに基づいて少なくとも色インクの印刷濃度dを基準濃度d0に近づけられるように補正電圧V1を決定することにより、色インクC,M,Y,Kの濃度をなるべく基準濃度d0近くの値が確保できるようにした。このため、色インクC,M,Y,Kの印刷濃度が適正化されて必要な色再現範囲を確保することができる。一方、補正電圧V1を設定することにより、希釈インクの印刷濃度dが変動する虞があるが、希釈インクについては補正電圧V1を供給したときに見込まれる濃度d11を各色の基準濃度d0に近づけるような補正希釈割合S1を決定する。よって、希釈割合を補正しない場合に比べ、色インクC,M,Y,Kの濃度をなるべく目標濃度である基準濃度d0近くに確保できるので、印刷画像における粒状感が抑制できる。従って、必要な色再現範囲を確保しつつ粒状感が抑制された印刷画像を提供できる。また、印刷装置100の個体差による印刷品質のばらつき、同一の印刷装置100における繰り返し印刷時のページ間での印刷品質のばらつきなども抑制できる。
【0079】
(2)各色のパッチを測色器80により測色した測色値に基づいて色毎に印刷濃度を取得できるので、測色した濃度の精度が高く、精度よく供給電圧Vを補正できる。従って、色再現範囲を確保できるとともに希釈色液体の希釈割合の補正により粒状感も抑制できる。
【0080】
(3)第1の情報の一例である係数α,βに基づいて初期電圧V0(規定電圧)のときの印刷濃度を基準濃度d0(目標濃度)に近づけるための電圧補正量ΔV1を求め、この電圧補正量ΔV1を初期電圧V0に付加して補正電圧V1を決定できる。よって、印刷濃度の測定結果を用いて補正電圧V1の決定が可能になる。
【0081】
(4)第2の情報の一例である係数γ,δに基づいて初期希釈割合S0(規定希釈割合)のときの印刷濃度を基準濃度d0(目標濃度)にするための希釈補正量ΔS1を求め、この希釈補正量ΔS1を初期希釈割合S0に付加して補正希釈割合S1を決定できる。よって、印刷濃度の測定結果を用いて補正希釈割合S1の決定が可能になる。
【0082】
(5)希釈インク生成装置20における希釈割合Sを補正するので、粒状感を抑制した画像を印刷できるような希釈割合の希釈インクを生成することができる。
(6)ハーフトーン補正部61がハーフトーン処理部53bに補正用設定値を設定して、単位面積当たりのドット数(ドット密度)を調整するので、この調整によっても粒状感を抑制できる。
【0083】
なお、実施形態に限定されず、以下の態様で実施してもよい。
・補正電圧V1は、最大補正電圧V1maxに限定されず、図11に示すような平均補正電圧V1aveを採用することもできる。すなわち、図11に示すように、色インクC,M,Y,Kの各濃度d1の平均である平均濃度d1aveを算出し、平均濃度d1aveが基準濃度d0になるような電圧補正量ΔV1を求め、初期電圧V0に電圧補正量ΔV1を付加して、平均補正電圧V1aveを決定する。
【0084】
・前記実施形態では、基本色液体(C,M,Y,K)の各濃度d1の最小値又は平均値を基準濃度d0に近づける補正方法を採用したが、基本色液体(C,M,Y,K)のうち特定の1色の濃度を基準濃度d0に近づける補正方法も採用できる。このように補正対象とすべき基本色液体は少なくとも1色であればよい。また、濃度d1の最大値を基準濃度d0に補正する方法でもよい。要するに、基本色液体の印刷濃度を基準濃度(目標濃度)に近づけることができればよい。なお、平均値を用いる場合、希釈色液体も含めた平均値も採用できる。
【0085】
・規定手段は、駆動信号生成回路55へ駆動信号の大きさ(振幅等)を規定する供給電圧Vを与える電圧供給部56に限定されない。例えば、駆動信号COMを構成する駆動パルスPSを生成するためにそのパルス波形を規定する指令値を駆動信号生成回路55に与える主制御部51を、規定手段とする構成でもよい。すなわち、駆動信号生成回路55内のADコンバーターへ出力すべき指令値を初期指令値(標準指令値)にして各色のパッチ印刷を行って、各色の印刷濃度を基準濃度d0に近づける補正を行って補正指令値を決定する。この構成によっても、補正指令値を出力することにより駆動信号生成回路55で生成される駆動信号COM中の駆動パルスの振幅を変化させて適切なインク滴の噴射量に調整できる。なお、指令値は、パルス波形(例えば台形波)の立ち上がり角(上昇傾き)、高さ、保持時間、立ち下がり角(下降傾き)などのパルス波形の構築に必要な条件値などを含み、指令値により、生成される駆動パルス波形が規定される。
【0086】
・各希釈インクの濃度変化量Δdと希釈割合変化量ΔSとの関係を示す第2の情報(例えば係数γ,δ)は、予め実験等で測定した値を印刷装置100内のメモリーに記憶しておいてもよい。この構成であれば、第2の情報の取得に必要な処理を比較的簡素に済ませられるうえ、比較的精度の高い第2の情報を用いて補正電圧V1時の濃度d11を比較的高い精度で算出できることから、比較的高い精度の補正希釈割合S1を取得できる。また、各色インクの濃度変化量Δdと電圧変化量ΔVとの関係を示す第1の情報(例えば係数α,β)についても、予め実験等で測定した値を印刷装置100内のメモリーに記憶しておいてもよい。
【0087】
・測色器なしの印刷装置の場合、出荷前や出荷後のメンテナンス時にメーカー側で測色器による測色を行って、得られた印刷濃度に応じて決まる補正電圧V1及び補正希釈割合S1を印刷装置に設定する方法を採用してもよい。この方法であれば、測色器を備えない印刷装置においても、適切な補正電圧V1及び補正希釈割合S1を設定でき、必要な色再現範囲を確保しつつ粒状感が抑制された印刷画質を提供できる。また、印刷装置の個体差による印刷品質のばらつき、同一印刷装置における繰り返し印刷時のページ間での印刷品質のばらつきを抑制できる。
【0088】
・希釈色液体の希釈液は、透明液体に限定されない。例えばCMYKの各基本色インクと同系色のライト色のインクを希釈液に使用してもよい。例えばシアンインクをライトシアンインクで希釈し、マゼンタインクをライトマゼンタインクで希釈し、さらにイエローインクをライトイエローインクで希釈して、希釈インクを生成する構成でもよい。この場合も、基本色インクがなるべく目標濃度に近い印刷濃度が得られるように補正電圧を決定した場合に、それに応じて希釈インクの希釈割合を決定することにより、色再現範囲を確保しつつ印刷画像の粒状性を向上させることができる。
【0089】
・基準濃度d0をユーザーがキー操作で設定変更できる構成も採用できる。また、基本色液体の印刷濃度を基準濃度d0に近づける補正方式を複数の方式(最小値、平均値など)の中からユーザーが選択できる構成も採用できる。
【0090】
・前記実施形態では、濃度取得手段を、測色器80からの測色データを取得するための通信I/F41及び演算部58により構成したが、測色器付きの印刷装置においては、測色器(測色手段)を含めて濃度取得手段とすることもできる。
【0091】
・カラーを発現するための基本色となる基本色液体は、C,M,Y,Kの4色に限定されず、C,M,Yの3色にしてもよい。さらに、これらの基本色液体に、例えばグリーン、オレンジ、グレーなどの基本色インクのうち少なくとも1色を追加してもよい。この場合、オレンジ、グリーン、グレーの各インクの希釈インクを生成し、当該希釈インクを噴射するノズル列を設けてもよい。なお、基本色インクの全色についてそれぞれの希釈インクを生成する必要はなく、複数の基本色インクのうち少なくとも1色についてその希釈インクが生成される構成でもよい。
【0092】
・C,M,Yの基本色インクについても、複数種の希釈割合(例えば50%と25%)の希釈インクを用意してもよい。また、希釈割合はこれらの値に限定されず、他の希釈割合(例えば10%や75%等)も適宜設定できる。
【0093】
・印刷濃度の測定は測色器による方法に限定されない。例えば噴射された各色のインク滴のサイズ(体積又は重量)を計測してそのサイズから各色の印刷濃度を取得したり、各色のドット面積を測定してドット面積から各色の印刷濃度を取得したりしてもよい。
【0094】
・テストチャートTCにおいて、小ドットのみを連続して吐出して形成したパッチ、中ドットのみを連続して吐出して形成したパッチ、大ドットのみを連続して吐出して形成したパッチを印刷し、ドットサイズ毎に係数決定処理を行って、ドットサイズ毎に補正電圧を求める。そして、このドットサイズ毎の補正電圧V1(l),V1(m),V1(s)の平均値を、補正電圧V1として採用する構成としてもよい。
【0095】
・上記実施形態の希釈インク生成装置20を備えず、予め希釈インクが収容されたタンク(インクカートリッジを含む)を印刷装置のホルダーに装着する構成でもよい。この場合、少なくとも補正希釈割合設定対象の希釈インクについて希釈割合の調整機能があればよい。この構成であれば、タンクからの希釈インクに基本インク又は希釈液を少量混ぜるだけで補正希釈割合に調整できるので、希釈インク中の色むらを抑えやすい。
【0096】
・上記実施形態では、本発明を液体としてのインクを噴射する印刷装置100に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする印刷装置を採用してもよい。なお、印刷装置の噴射手段が噴射する液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体がインクである場合、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。インク以外の液体を噴射する印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する印刷装置がある。この場合、カラーを発現するための基本色となる基本色液体は、R(赤),G(緑),B(青)の液体でもよい。さらに、印刷装置は、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【0097】
以下、上記実施形態及び各変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記濃度取得手段は、前記噴射手段が噴射するドットサイズを決める駆動信号を生成する駆動信号生成手段に、前記駆動信号の大きさを決める供給電圧を規定電圧として前記電圧供給手段から供給して各色のパッチを印刷し、当該各色のパッチを測色手段により測色した測色結果に基づいて色毎に前記印刷濃度を取得する構成であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。この発明によれば、各色のパッチを測色手段により測色した測色結果に基づいて色毎に印刷濃度を取得できるので、測色した濃度の精度が高く、精度よく電圧を補正できる。従って、色再現範囲を確保できるとともに希釈色液体の希釈割合の補正により粒状感も抑制できる。
【符号の説明】
【0098】
10…印刷機構、14…キャリッジ、15…噴射手段の一例としての印刷ヘッド、15a…ヘッド駆動回路、18,18c,18m,18y,18k,18w…タンク、20…希釈色液体生成手段の一例としての希釈インク生成装置、21〜25…混合タンク、30…制御装置、31…コンピューター、32…CPU、33…ASIC、34…ROM、35…RAM、41…濃度取得手段の一例を構成する通信I/F、42,43…駆動回路、51…主制御部、52…印刷制御部、53…画像処理部、54…ヘッド制御ユニット、55…駆動信号生成手段の一例としての駆動信号生成回路、56…電圧供給手段の一例としての電圧供給部、57…バルブ制御部、57a…希釈割合取得部、58…濃度取得手段及び演算手段の一例としての演算部、59…電圧決定手段の一例としての電圧決定部、60…希釈割合決定部、61…ハーフトーン補正部、80…測色手段の一例としての測色器、100…印刷装置、200…ホスト装置、P…噴射対象物の一例としての用紙、n…ノズル、N…ノズル列、M1…キャリッジモーター、M2…搬送モーター、C,M,Y,K…色インク、C50%,M50%,Y50%,K50%,K25%…希釈インク、CL…希釈液、VL1〜VL10…バルブ、Dg…画像データ、Dp…印刷データ、COM…駆動信号、P1〜P3…駆動パルス、α,β…第1の情報の一例である係数、γ,δ…第2の情報の一例である係数、V…供給電圧、V0…第1の規定条件及び規定電圧の一例である初期電圧(標準電圧)、V0−Δv,V0+Δv…第2の供給電圧、ΔV1…電圧補正量、V1,V1max,V1ave…第2の規定条件の一例である補正電圧、d,d1,d11…濃度(印刷濃度)、d0…目標濃度の一例である基準濃度、S…希釈割合、ΔS1…希釈補正量、S1…補正希釈割合。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つが希釈液で希釈された少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段から噴射対象物に噴射して印刷を行う印刷装置であって、
画像データに基づき前記基本色液体と前記希釈色液体とを噴射する噴射手段と、
前記噴射手段に出力すべき駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段から出力される前記駆動信号の大きさを規定する規定手段と、
前記規定手段が第1の規定条件で規定した大きさの駆動信号に基づき前記噴射手段が印刷した各色の印刷濃度を色毎に取得する濃度取得手段と、
前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定手段と、
前記補正による前記希釈色液体の印刷濃度の変化分を見込んで、前記希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して前記希釈色液体の補正希釈割合を決定する希釈割合決定手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記規定手段は、前記駆動信号の大きさを規定する供給電圧を前記駆動信号生成手段に与える電圧供給手段であり、前記第1の規定条件として規定電圧を与え、
前記決定手段は、前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を前記規定電圧に施して補正電圧を決定する電圧決定手段であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記濃度取得手段は、前記規定電圧と異なる第2の供給電圧を供給して行った印刷結果に基づく印刷濃度も取得し、
前記規定電圧のときの印刷濃度と、前記第2の供給電圧のときの印刷濃度とに基づき供給電圧と印刷濃度との関係を示す第1の情報を演算する演算手段を更に備え、
前記電圧決定手段は、前記第1の情報に基づいて前記規定電圧のときの印刷濃度を前記目標濃度に近づけるための電圧補正量を求め、当該電圧補正量を前記規定電圧に付加して前記補正電圧を決定する請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記濃度取得手段は、前記基本色液体と前記希釈色液体とのうち色毎に希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体で前記噴射手段が印刷した当該各色液体の印刷濃度を取得し、
前記演算手段は、前記希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体の印刷濃度に基づき希釈割合と印刷濃度との関係を示す第2の情報を演算する構成であり、
前記希釈割合決定手段は、前記第2の情報に基づいて前記希釈色液体の印刷濃度を前記目標濃度に近づけるための希釈補正量を求め、当該希釈補正量を前記希釈割合に付加して補正希釈割合を決定する請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記電圧決定手段は決定した前記補正電圧を前記電圧供給手段に設定し、
前記希釈割合決定手段が決定した希釈割合で希釈色液体を生成する希釈色液体生成手段を更に備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つを希釈液で希釈して生成した少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段が噴射対象物に噴射して行われる印刷における印刷濃度を調整する印刷濃度調整方法であって、
前記噴射手段による印刷ドットサイズを決める駆動信号の大きさを第1の規定条件で規定して前記噴射手段による各色の印刷を行った印刷濃度を色毎に測定する濃度測定ステップと、
前記濃度測定ステップで測定した前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定した前記第2の規定条件の下で前記希釈色液体を印刷したときの印刷濃度を推定し、当該推定した印刷濃度を前記希釈色液体の目標濃度に近づける補正を行って前記希釈色液体の希釈割合を決定する希釈割合決定ステップと、
を備えたことを特徴とする印刷濃度調整方法。
【請求項1】
カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つが希釈液で希釈された少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段から噴射対象物に噴射して印刷を行う印刷装置であって、
画像データに基づき前記基本色液体と前記希釈色液体とを噴射する噴射手段と、
前記噴射手段に出力すべき駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、
前記駆動信号生成手段から出力される前記駆動信号の大きさを規定する規定手段と、
前記規定手段が第1の規定条件で規定した大きさの駆動信号に基づき前記噴射手段が印刷した各色の印刷濃度を色毎に取得する濃度取得手段と、
前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定手段と、
前記補正による前記希釈色液体の印刷濃度の変化分を見込んで、前記希釈色液体の印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して前記希釈色液体の補正希釈割合を決定する希釈割合決定手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記規定手段は、前記駆動信号の大きさを規定する供給電圧を前記駆動信号生成手段に与える電圧供給手段であり、前記第1の規定条件として規定電圧を与え、
前記決定手段は、前記濃度取得手段により取得された前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を前記規定電圧に施して補正電圧を決定する電圧決定手段であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記濃度取得手段は、前記規定電圧と異なる第2の供給電圧を供給して行った印刷結果に基づく印刷濃度も取得し、
前記規定電圧のときの印刷濃度と、前記第2の供給電圧のときの印刷濃度とに基づき供給電圧と印刷濃度との関係を示す第1の情報を演算する演算手段を更に備え、
前記電圧決定手段は、前記第1の情報に基づいて前記規定電圧のときの印刷濃度を前記目標濃度に近づけるための電圧補正量を求め、当該電圧補正量を前記規定電圧に付加して前記補正電圧を決定する請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記濃度取得手段は、前記基本色液体と前記希釈色液体とのうち色毎に希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体で前記噴射手段が印刷した当該各色液体の印刷濃度を取得し、
前記演算手段は、前記希釈割合の異なる少なくとも二つの色液体の印刷濃度に基づき希釈割合と印刷濃度との関係を示す第2の情報を演算する構成であり、
前記希釈割合決定手段は、前記第2の情報に基づいて前記希釈色液体の印刷濃度を前記目標濃度に近づけるための希釈補正量を求め、当該希釈補正量を前記希釈割合に付加して補正希釈割合を決定する請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記電圧決定手段は決定した前記補正電圧を前記電圧供給手段に設定し、
前記希釈割合決定手段が決定した希釈割合で希釈色液体を生成する希釈色液体生成手段を更に備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
カラーを発現するための基本色となる基本色液体と、前記各基本色液体のうち少なくとも1つを希釈液で希釈して生成した少なくとも1色の希釈色液体とを、噴射手段が噴射対象物に噴射して行われる印刷における印刷濃度を調整する印刷濃度調整方法であって、
前記噴射手段による印刷ドットサイズを決める駆動信号の大きさを第1の規定条件で規定して前記噴射手段による各色の印刷を行った印刷濃度を色毎に測定する濃度測定ステップと、
前記濃度測定ステップで測定した前記基本色液体の少なくとも一つの印刷濃度を目標濃度に近づける補正を施して第2の規定条件を決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定した前記第2の規定条件の下で前記希釈色液体を印刷したときの印刷濃度を推定し、当該推定した印刷濃度を前記希釈色液体の目標濃度に近づける補正を行って前記希釈色液体の希釈割合を決定する希釈割合決定ステップと、
を備えたことを特徴とする印刷濃度調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−213033(P2011−213033A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84892(P2010−84892)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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