説明

印刷装置

【課題】複数のユーザが画像形成装置の前に待機したとしても,実行する印刷ジョブを円滑に決定することができる印刷システムを提供する。
【解決手段】本印刷システムにおけるプリンタ10の上面側にあるICタグリーダ370が無線通信によってプリンタ10周囲に存在するICタグ51,52にアクセスする。これにより,待機ユーザのユーザIDが取得され,ICタグリーダ370の周囲に位置するユーザが特定される。そして,ユーザIDごとに待機時間を計測する。すなわち,本印刷システムでは,ユーザごとに待機時間を管理する。そして,プリンタ10では,待機時間が最も長いユーザの印刷ジョブを,他のユーザの印刷ジョブに優先して実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ICタグを利用した印刷装置に関する。さらに詳細には,ICタグから得られる情報を基に,印刷を実行するジョブを自動的に決定する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,画像形成装置は,複数の印刷ジョブをプリンタキューに蓄積し,蓄積された印刷ジョブを順次実行する。また,画像形成装置には,必要に応じて印刷ジョブの実行優先順位を上げたり,下げたりして,印刷ジョブの実行順序を入れ替える機能を有しているものがある。
【0003】
また,印刷ジョブの実行優先順位を変更する画像形成装置としては,例えば特許文献1にICタグを利用した無線通信によって,画像形成装置の近くにいるユーザを認識し,当該ユーザの印刷ジョブの実行優先順位を自動的に変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−27170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の印刷装置には,次のような問題があった。すなわち,特許文献1の技術では,画像形成装置の前にユーザが1人であることを前提にしている。言い換えると,画像形成装置の前に複数のユーザが存在する状況を想定していない。そのため,複数のユーザが画像形成装置の前に待機した場合に,ユーザ各々の実行優先順位が衝突してしまい,適切な処理を行うことができない。
【0006】
本発明は,前記した従来の印刷装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,複数のユーザが画像形成装置の前に待機したとしても,実行する印刷ジョブを円滑に決定することができる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた印刷装置は,記憶素子に格納されたユーザIDを無線通信によって取得する識別部と,識別部の取得結果を基に,ユーザIDに対応するユーザごと(または印刷ジョブごと)に当該印刷装置の周囲に待機しているユーザの待機時間を計測する計測部と,前記計測部が計測した待機時間を基に,待機時間の最も長いユーザ(または印刷ジョブ)を選択する選択部と,印刷機能を有し,前記選択部により選択されたユーザの印刷ジョブ(または選択された印刷ジョブ)を,他のユーザの印刷ジョブ(または他の印刷ジョブ)よりも優先的に印刷を実行する印刷部とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の印刷装置では,識別部が当該識別部の周囲に存在する記憶素子にアクセスし,記憶素子に格納されたユーザIDを取得する。記憶素子へのアクセスは,ICタグに代表される一般的な無線通信技術を利用する。ユーザIDを取得することで,識別部の周囲に位置するユーザが特定される。そして,計測部によって,ユーザIDに対応する所定の条件ごとの待機時間を計測する。所定の条件としては,ユーザあるいは印刷ジョブが該当す
る。すなわち,本印刷装置では,ユーザまたは印刷ジョブごとに待機時間を管理する。
【0009】
そして,印刷部では,待機時間を基に印刷する印刷ジョブを選択する。例えば,ユーザごとに待機時間を計測する場合には,待機時間が長いユーザの印刷ジョブを,待機時間が短いユーザの印刷ジョブよりも優先的に印刷を実行する。また,印刷ジョブごとに待機時間を計測する場合には,待機時間が長い印刷ジョブを,待機時間が短い印刷ジョブよりも優先的に印刷を実行する。これにより,複数のユーザが待機していたとしても,その中から最優先のジョブが決定することができ,円滑に印刷処理が実行される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,複数のユーザが画像形成装置の前に待機したとしても,実行する印刷ジョブを円滑に決定することができる印刷装置が実現している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係るプリントシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態にかかるプリンタの外観を示す斜視図である。
【図3】実施の形態にかかる画像形成部の概略構成を示す図である。
【図4】実施の形態にかかる印刷部の概略構成を示す図である。
【図5】プリンタ周辺にユーザが存在する状況を示す図である。
【図6】表示部の表示例を示す図である。
【図7】実施の形態にかかるプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図8】第1の形態にかかる待ち時間テーブルの管理処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】待機ユーザの待機時間の時間帯の例を示す図である。
【図10】第1の形態にかかる待ち時間テーブルの例を示す図である。
【図11】第1の形態にかかる印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】第2の形態にかかる待ち時間テーブルの管理処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第2の形態にかかる待ち時間テーブルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下,本発明にかかる印刷装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,ICタグの読取り装置と印刷装置とを備えたプリントシステムに本発明を適用したものである。
【0013】
[プリントシステムの構成]
本形態のプリントシステム100は,図1に示すように,印刷装置としてのプリンタ10と,情報端末装置としてのPC20a,20b,20cとを備えている。プリントシステム100では,各PC20a,20b,20cとプリンタ10とがネットワーク40を介して接続されている。なお,プリントシステム100を構成するプリンタは1台に限るものではなく,複数台接続してもよい。また,プリントシステム100を構成するPCも3台に限定するものではなく,何台接続してもよい。
【0014】
本形態のプリントシステム100では,ユーザがPC20a,20b,20cを操作し,PC20a,20b,20cに組み込まれたアプリケーションを利用して文書,図,表,あるいは写真等の画像データを編集することが可能である。そして,ユーザの指示に従って,印刷データをプリンタ10に送信し,プリンタ10よって画像を出力することが可能である。
【0015】
また,プリンタ10は,コピー機能を有する複合機であり,図2に示すように,原稿の
読み取りを行う画像読取部200と,読み取られた原稿の画像データに基づいて被記録媒体に画像を形成する画像形成部300(印刷部の一例)と,プリンタ10の操作を行うための操作部400(報知部の一例)とを備えている。
【0016】
画像読取部200は,コピー機能を実現するためのものであり,原稿を搬送して原稿の読取りを行うADF(Automatic Document Feeder:自動供給装置)210と,読取り前
の原稿を積載する供給トレイ220と,読取り後の原稿を載置する排出トレイ230とを備えている。原稿の読取りは,排出トレイ230の下方に設けられたガラス板上に原稿を載置し,ガラス板の板面に沿ってX方向にCCDセンサを移動させ,1ラインずつ原稿を読み取る。あるいは,ADF210により原稿を搬送し,左端部に固定したCCDセンサによって1ラインずつ原稿を読み取る。
【0017】
画像形成部300は,被記録媒体としての用紙を積載保持し,プリンタ10の前面側より着脱可能に装着される給紙カセット310と,画像形成後の用紙を積載保持する排紙トレイ320とを備えている。給紙カセット310および排紙トレイ320はそれぞれ複数あり,必要に応じて使い分けられる。
【0018】
また,画像形成部300は,図3に示すように,公知の電子写真方式によってトナー像を形成する印刷部330(印刷部の一例)と,給紙カセット310内の用紙を印刷部330に送り出す給紙ローラ341と,用紙を排紙トレイ320に排出する排紙ローラ361と,ICタグの電子情報を読み取るICタグリーダ370(識別部の一例)とが設けられている。
【0019】
印刷部330は,レーザ光発生装置7,ドラム状の感光体2,ローラ状の転写装置5,定着装置8等を備えている。さらに,感光体2の周りには,図4に示すように,帯電装置3,現像装置4,クリーニング装置6等が設けられている。レーザ光発生装置7からのレーザ光は,感光体2の回転方向において,帯電装置3の下流であって現像装置4の上流の位置に照射される。また,定着装置8は,用紙の搬送方向において,転写装置5よりも下流に位置する。
【0020】
レーザ光発生装置7は,画像データに基づいてレーザ光源を点灯し,そのレーザ光で感光体2の表面を走査する。画像データは,画像読取部200によって読み取られた画像やネットワーク40を介してPC20a,20b,20cから送られてきた画像を基に作成される。
【0021】
感光体2は,帯電装置3によってその表面を一様に帯電されつつ回転する。感光体2の表面は,レーザ光発生装置7に走査されたレーザ光の照射部分の電位が変化する。これにより,非照射部分との間に生じた電位差によって感光体2の表面に静電潜像が形成される。その後,感光体2上では,現像装置4から供給されるトナーによって現像が行われ,トナー像が形成される。その後,トナー像は,感光体2と対向する転写装置5によって電気的に吸引され,感光体2と転写装置5との間を通過する用紙に転写される。転写後に感光体2上に残ったトナーは,クリーニング装置6によって機械的あるいは電気的に回収される。また,定着装置8は,トナー像が転写された用紙を加熱・加圧し,トナー像の用紙への定着を行う。
【0022】
ICタグリーダ370は,図3に示したように,画像形成部300の上面側であって,画像形成部300の筐体内に位置している。ICタグリーダ370は,所定の間隔で作動し,プリンタ10の周囲に所定の電磁波を発信する。ICタグは,その電磁波を受信すると,自身の情報を包含した電磁波を送り返す。ICタグリーダ370は,ICタグからの電磁波を受信してICタグの情報を取得する。
【0023】
すなわち,図5に示すように,ICタグを所持するユーザがプリンタ10(ICタグリーダ370)の周囲に存在する場合には,各ICタグ51,52から発せられる電磁波をICタグリーダ370が受信し,ICタグ51,52の電子情報(本形態では,ユーザを識別するためのユーザID)を読み取る。従って,ICタグを所持するユーザ(以下,「待機ユーザ」とする)が所定の範囲内(つまり,ICタグリーダ370とICタグとが電磁波を送受信できる範囲内)に存在すれば,そのICタグの電子情報を読み取って当該ユーザが待機していることを認識することができる。
【0024】
本形態のプリンタ10は,ICタグリーダ370によって所定の間隔で待機ユーザのユーザIDを取得し,ユーザIDに対応する待機ユーザごとにプリンタ10の周囲に待機している時間(以下,「待機時間」とする)を算出する。各ユーザの待機時間は,待ち時間テーブルに記録される。待機時間の算出方法の詳細については後述する。
【0025】
また,操作部400は,パネル状の入出力装置であり,ユーザがプリンタ10の操作を行うための複数のスイッチやボタン等が設けられている。例えば,コピーボタン410は,ユーザが原稿のコピーを開始する際に,プリンタ10に開始指示を伝えるためのボタンである。また,表示部420は,エラーや指示等のメッセージを表示する液晶ディスプレイである。
【0026】
また,操作部400の表示部420は,待ち時間テーブルに記録されている各ユーザの待機時間を表示する機能を有している。表示部420は,例えば図6に示すように,ユーザ名,ジョブ名およびそのユーザの待機時間を表示する。さらに,待機時間が長いユーザ順に表示する。また,現時点で待機していないユーザを網掛け表示する。これにより,ユーザは自身の優劣状況を知ることができる。さらにユーザは,自身の優劣状況を知ることで,自身の印刷ジョブがなかなか実行されない不信感を払拭できる。
【0027】
続いて,プリンタ10の機能構成について説明する。プリンタ10は,図7に示すように,制御部500(計測部の一例)と,モータ制御部510と,A/D変換器520と,画面駆動部530と,入力検知部540と,印刷部330と,ICタグリーダ370とが電気的に接続されている。
【0028】
制御部500は,プリンタ10全体を制御するものであり,各種プログラムを実行する。また,ICタグリーダ370からの情報を基に待機時間の計測を行う。モータ制御部510は,画像読取部200や画像形成部300の各種ローラ等の駆動モータの制御を行うものである。A/D変換器520は,画像読取部200で読み取った原稿の画像を,画像データとしてデジタルデータ化するものである。
【0029】
画面駆動部530は,表示部420に文字や画像等を表示するための制御を行うものである。入力検知部540は,操作部400に設けられたコピーボタン410の入力を検知するものである。なお,入力検知部540には,操作部400に設けられたその他のスイッチやボタン等も接続されている。
【0030】
[プリンタの動作]
[待ち時間テーブルの管理処理(第1の形態)]
続いて,プリンタ10の制御部500が行うプリンタ10の動作手順について説明する。始めに,図8のフローチャートを基に,待ち時間テーブルの管理処理について説明する。本処理は,T秒(例えば1秒)ごとに実行される。
【0031】
まず,ICタグリーダ370を作動させ,待機ユーザの情報を取得する(S101)。
すなわち,ICタグから得られる情報に含まれるユーザIDによって,待機ユーザを認識する。
【0032】
次に,待機ユーザが存在するか否かについて判断する(S102)。待機ユーザが存在する場合(S102:YES)には,各々の待機ユーザの待機時間を加算する(S103)。具体的には,前回の処理でも存在したユーザについて,そのユーザに対応する待機時間をT秒加算する。すなわち,同一のユーザIDが連続して取得された場合に,そのユーザIDに対応する待機ユーザの待機時間を更新する。なお,待ち時間テーブルに登録されていないユーザが存在する場合には,当該ユーザを待ち時間テーブルに登録する。待機ユーザが存在しない場合(S102:NO)には,S103の処理をバイパスしてS104の処理に移行する。
【0033】
次に,印刷ジョブが無いユーザが存在するか否かについて判断する(S104)。印刷ジョブが無いユーザが存在する場合(S104:YES)には,当該ユーザの待機時間を初期化する(S105)。すなわち,印刷ジョブが無いにもかかわらず待機時間を累積すると,プリンタ10を利用する頻度が高いユーザの待機時間が長くなり,そのユーザが常に実行優先順位が高くなる。そのため,本来の印刷ジョブの緊急性とは異なる実行優先順位となることが考えられる。そこで,印刷ジョブがプリンタキューに無いユーザの待機時間をリセットする。印刷ジョブが無いユーザが存在しない場合(S104:NO)には,S105の処理をバイパスする。これにより,本管理処理が終了する。
【0034】
なお,本形態では,印刷ジョブがプリンタキューにある間はそのユーザの待機時間は初期化されない。そのため,同じユーザで異なる時間帯に複数の待機時間が存在していても,それらを合算した時間が待機時間となる。つまり,ユーザがプリンタ10の前を行ったり来たりして待機時間が分断されても,それら分断された待機時間の合計が当該ユーザの待機時間となる。これにより,ユーザが用紙の補充等によってプリンタ10の前を一時的に離れたとしても,そのユーザに与える不利益は少ない。
【0035】
具体的に,ユーザA,ユーザB,ユーザCの3人が存在し,各ユーザが図9に示すような時間帯にプリンタ10の前に待機していたとする。この場合,図10に示すように,ユーザAおよびユーザCは自身が連続して待機していた時間がそのまま待機時間となり,ユーザAの待機時間が300秒,ユーザCの待機時間が150秒となる。一方,ユーザBは,50秒の待機時間が2つ存在し,その合計である100秒が待機時間となる。各ユーザA,B,Cの待機時間は,待ち時間テーブルに記録される。
【0036】
[印刷処理]
続いて,プリンタ10の印刷処理について,図11のフローチャートを基に説明する。本印刷処理は,定期的に(例えば,1秒ごとに)起動され,印刷ジョブを終了するまで実行される。
【0037】
まず,印刷ジョブの有無を確認する(S201)。印刷ジョブが無い場合(S201:NO)には,印刷処理を行わずに本処理を終了する。一方,印刷ジョブが有る場合(S201:YES)には,上述したS101,S102の処理と同様に,ICタグリーダ370を作動させ,待機ユーザの情報を取得することで,待機ユーザが存在するか否かを確認する(S202)。
【0038】
待機ユーザが存在しない場合(S202:NO)には,プリンタキューの先頭ジョブ(プリントキューのうち,印刷ジョブの投入順で最も過去に投入された印刷ジョブ)を印刷対象として選択する(S211)。すなわち,実行順序に変更はなく,通常の順序で印刷対象を選択する。S211の処理後は,S206の処理に移行して当該ジョブの印刷を実
行する。
【0039】
一方,待機ユーザが存在する場合(S202:YES)には,待ち時間テーブルを参照し,現時点で実際に待機中のユーザの待機時間を取得する(S203)。例えば,先の例(図9,図10)では,ユーザAがプリンタ10から離れているため,ユーザBおよびユーザCの待機時間を取得し,ユーザAの待機時間は取得しない。
【0040】
次に,取得した待機時間のうち,最も長い待機時間となる待機ユーザを選択する(S204)。例えば,先の例(図9,図10)では,ユーザBの方が先にプリンタ10の前に来ているが,合計の待機時間がユーザCの方が長いため,ユーザCが選択される。
【0041】
次に,選択されたユーザの先頭ジョブ(プリントキューのうち,印刷ジョブの投入順で最も過去に投入された印刷ジョブ)を印刷対象に決定する(S205)。例えば,先の例(図9,図10)では,ユーザCの先頭ジョブが印刷対象となる。
【0042】
その後,選択された印刷ジョブを実行する(S206)。これにより,プリンタ10の前に待機中であり,かつ待機時間が最も長いユーザの印刷ジョブが優先的に実行される。つまり,複数の待機ユーザが存在しても,彼らの実行順位が衝突することなく,印刷処理を実行できる。S206の処理後,本印刷処理を終了する。
【0043】
本印刷処理は,印刷ジョブを1つ終了して,所定時間が経過した後に再度実行される。そのため,1つの印刷ジョブの終了後,プリンタキューにまだその他の印刷ジョブが存在すれば,本印刷処理を再度行い,1つの印刷ジョブが実行される。すなわち,ユーザCがプリンタの前を離れたり,ユーザAがプリンタの前に帰ってくる等の状況変化が生じることがある。つまり,待機ユーザの状況は刻々と変動する。そこで,所定の条件(本形態では,単位印刷ジョブの終了)を満たす度に実行優先順序を見直す。これにより,公平性や利便性が高まる。
【0044】
[待ち時間テーブルの管理処理(第2の形態)]
第1の形態は,ユーザ単位で待機時間を計測しており,長期間待機する1人のユーザが存在すると,そのユーザの複数の印刷ジョブが連続的に印刷されることになる。すなわち,当該ユーザが後から印刷ジョブを加えたとしても当該印刷ジョブが他のユーザの印刷ジョブよりも優先的に実行される。そのため,他のユーザが不信感を抱いてしまう。
【0045】
そこで,第2の形態では,印刷ジョブ単位で待機時間を計測する。以下,本形態の待ち時間テーブルの管理処理について,図12のフローチャートを基に説明する。本処理も第1の形態と同様に,T秒(例えば1秒)ごとに実行される。
【0046】
まず,ICタグリーダ370を作動させ,待機ユーザの情報を取得する(S301)。すなわち,ICタグから得られる情報に含まれるユーザIDによって,待機ユーザを認識する。
【0047】
次に,待機ユーザが存在するか否かについて判断する(S302)。待機ユーザが存在する場合(S302:YES)には,その待機ユーザに対応する印刷ジョブについて,印刷ジョブごとに待機時間を加算する(S303)。具体的には,前回の処理でも存在したユーザについて,そのユーザの印刷ジョブの待機時間をT秒加算する。これにより,待ち時間テーブルは,例えば,図13に示すように,印刷ジョブごとに待機時間が設定される。なお,図13の順位は,ユーザA,ユーザB,ユーザCの全員がプリンタ10の前に待機していた状態での実行優先順位を示している。待機ユーザが存在しない場合(S302:NO)には,S303の処理をバイパスしてS304の処理に移行する。
【0048】
次に,印刷が終了した印刷ジョブが存在するか否かについて判断する(S304)。印刷が終了した印刷ジョブが存在する場合(S304:YES)には,当該印刷ジョブを待ち時間テーブルから削除する(S305)。印刷が終了した印刷ジョブが存在しない場合(S304:NO)には,S305の処理をバイパスする。これにより,本管理処理が終了する。
【0049】
なお,プリンタ10の印刷処理については,図11に示した印刷処理と同様の手順である。ただし,待ち時間テーブルに記憶される待機時間が,第1の形態の印刷処理ではユーザ単位であったが,本形態では印刷ジョブ単位である。
【0050】
すなわち,待ち時間テーブルを参照し,現時点で実際に待機中のユーザに対応する印刷ジョブの待機時間を取得する(S201〜S203)。そして,取得した待機時間のうち,最も長い待機時間となる印刷ジョブを選択する(S204,S205)。
【0051】
例えば,先の例(図13)では,ユーザAのジョブ1の待機時間が最も長いため,ジョブ1が選択される。仮に,ユーザAがプリンタ10の前に不在で,ユーザBとユーザCとがプリンタ10の前で待機しているならば,ユーザAのジョブ1に換わってユーザBのジョブ2が選択される。
【0052】
その後,選択された印刷ジョブを実行する(S206)。これにより,プリンタ10の前に待機中であり,かつ待機時間が最も長い印刷ジョブが優先的に実行される。つまり,複数の待機ユーザが存在しても,彼らの実行順位が衝突することなく,印刷処理を実行できる。
【0053】
以上詳細に説明したように,本形態の印刷システム100は,ICタグリーダ370がプリンタ10(すなわちICタグリーダ370)の周囲に存在するICタグにアクセスし,ICタグに格納されたユーザIDを取得する。これにより,プリンタ10の周囲に位置するユーザが特定される。そして,ユーザごと(あるいは印刷ジョブごと)に待機時間を計測する。すなわち,本印刷システム100では,ユーザごと(あるいは印刷ジョブごと)に待機時間を管理する。そして,プリンタ10では,待機時間が最も長いユーザの印刷ジョブ(あるいは待機時間が最も長い印刷ジョブ)を,他のユーザの印刷ジョブ(あるいは他の印刷ジョブ)に優先して実行する。これにより,複数のユーザが待機していたとしても,その中から最優先の印刷ジョブを決定することができ,円滑に印刷処理が実行される。
【0054】
また,本印刷システム100は,異なる時間帯で同一のユーザ(あるいは印刷ジョブ)の待機時間が複数ある場合に,それらの待機時間を合算した時間を待機時間としている。すなわち,ユーザがプリンタ10(すなわちICタグリーダ370)を離れる度に待機時間をリセットしてしまうと,それまでの待機時間が無駄になる。言い換えると,ユーザとしてはプリンタ10の周囲から離れなくなる。そのため,待機時間を合算した時間を待機時間とすることで,公平性や利便性が高まる。
【0055】
また,本印刷システム100は,印刷を実行する印刷ジョブを決定する時点で実際に待機しているユーザの印刷ジョブの中から印刷を実行する印刷ジョブを決定している。すなわち,実際にプリンタ10の周囲に待機しているユーザの印刷ジョブの中で,次に印刷する印刷ジョブを決定する。実際に待機しているユーザの方が待機していないユーザと比較して緊急性が高い傾向にある。そこで,待機しているユーザの中で印刷ジョブを決定することで利便性が高まる。
【0056】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置としては,プリンタ,複写機,スキャナ,FAX等,画像を形成するものであれば適用可能である。また,印刷部の画像形成方式は,電子写真方式に限らず,インクジェット方式であってもよい。また,カラー画像の形成が可能であっても,モノクロ画像専用であってもよい。
【0057】
また,本実施の形態ではICタグリーダ370がプリンタ10に内蔵されているが,これに限るものではない。例えば,プリンタ10の筐体に外付けされていたり,プリンタ10から離れた位置(例えば,天井)に取り付けられていてもよい。また,本実施の形態では,待機時間の計測および待ち時間テーブルの管理をプリンタ10が行っているが,これに限るものではない。例えば,プリンタ10およびICタグリーダ370に接続するプリンタ10以外の情報処理装置によって行ってもよい。
【0058】
また,本実施の形態の待ち時間テーブルの管理処理では,待機時間は時間Tが加算されるのみであったが,これに限るものではない。例えば,不在のユーザについて,その不在時間分を減算するとしてもよい。また,ユーザあるいは印刷ジョブごとに重み付け係数が設定され,待機時間にその重み付け係数が積算されるとしてもよい。
【0059】
また,本実施の形態の印刷処理では,印刷を実行する印刷ジョブを決定する時点で実際に待機しているユーザの印刷ジョブの中から印刷を実行する印刷ジョブを決定しているがこれに限るものではない。すなわち,単純に待機時間が最も長いユーザを優先して印刷するとしてもよい。その場合,例えば図10に示したようなジョブがプリンタキューに存在すると,ユーザA,ユーザC,ユーザBの順に優先順位が構成される。
【0060】
また,本実施の形態の印刷処理では,ジョブ単位で印刷の優先順位を決定しているが,これに限るものではない。例えば,ページ単位で印刷処理を実行し,ページ単位で優先順位を決定してもよい。
【0061】
また,実施の形態は,周知のジョブの混在を防止する機能を備えているとよりよい。ジョブの混在を防止する機能としては,仕切り用紙の排紙,シフト排紙,縦横切替排紙などが適用可能である。また,排紙トレイを複数備える画像形成装置であれば,ジョブごとに排紙トレイを分けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 プリンタ
51,52 ICタグ
300 画像形成部
330 印刷部
370 ICタグリーダ
400 操作部
420 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶素子に格納されたユーザIDを無線通信によって取得する識別部と,
前記識別部の取得結果を基に,ユーザIDに対応するユーザごとに当該印刷装置の周囲に待機しているユーザの待機時間を計測する計測部と,
前記計測部が計測した待機時間を基に,待機時間の最も長いユーザを選択する選択部と,
印刷機能を有し,前記選択部により選択されたユーザの印刷ジョブを,他のユーザの印刷ジョブよりも優先的に印刷を実行する印刷部とを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
記憶素子に格納されたユーザIDを無線通信によって取得する識別部と,
前記識別部の取得結果を基に,ユーザIDに対応する印刷ジョブごとに当該印刷装置の周囲に待機しているユーザの待機時間を計測する計測部と,
前記計測部が計測した各待機時間を基に,待機時間の最も長い印刷ジョブを選択する選択部と,
印刷機能を有し,前記選択部により選択された印刷ジョブを,他の印刷ジョブよりも優先的に印刷を実行する印刷部とを備えることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−105401(P2010−105401A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277275(P2009−277275)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【分割の表示】特願2007−185115(P2007−185115)の分割
【原出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】