説明

印刷装置

【課題】本発明は省電力モードの設定が可能な印刷装置に関し、特に印刷処理量を集計、分析し非稼働時間帯を過去のデータから推測し、自動的に省電力制御を行う印刷装置を提供するものである。
【解決手段】ネットワークに接続された印刷装置であって、過去の装置の印刷処理量を記憶する第1の記憶手段と、基準印刷処理量を記憶する第2の記憶手段と、特定期間の装置の印刷処理量を前記第1の記憶手段から読み出し、前記第2の記憶手段に記憶された基準印刷処理量と比較する比較手段と、該比較結果が、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が大きい場合、装置を稼働可能状態に移行させ、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が小さい場合、装置を省電力状態に移行させる制御手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力モードの設定が可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、地球環境の保持が世界的に叫ばれ、地球温暖化防止会議を中心として温室効果ガスの排出規制が実現化に向かっている。このような状況において、プリンタ装置や複写機等の印刷装置においても、消費電力の削減が要求されている。
【0003】
このため、印刷装置において、例えば消費電力を削減するため非稼働時の定着器の温度を下げ、スリープモードに設定することが行われている。この場合、例えば印刷装置のオペレーションパネルを操作してスリープ時間や、スリープスケジュールの設定が行われている。
【0004】
また、特許文献1は稼働中のコンピュータの印刷ジョブの処理履歴に基づいて節電禁止期間を設定し、その節電禁止期間中は通電モードから節電モードへの切り替えを禁止する発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−231632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の装置では、予め設定されたスリープ時間や、スリープスケジュールに従って省電力処理が行われ、過去の装置の稼働情報が考慮された省電力処理ではない。また、特許文献1の装置では、稼働していない印刷ジョブの処理履歴を参考にすることはなく、効率のよい省電力処理を行うことができない。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、印刷装置の印刷処理量を集計、分析し、基準印刷処理量を過去のデータから推測し、自動的に省電力制御を行う印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は第1の発明によれば、過去の装置の印刷処理量を記憶する第1の記憶手段と、基準印刷処理量を記憶する第2の記憶手段と、特定期間の装置の印刷処理量を前記第1の記憶手段から読み出し、前記第2の記憶手段に記憶された基準印刷処理量と比較する比較手段と、該比較結果が、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が多い場合、装置を稼働可能状態に移行させ、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が少ない場合、装置を省電力状態に移行させる制御手段とを有する印刷装置を提供することによって達成できる。
また、上記課題は第2の発明によれば、前記特定期間は、特定の曜日の一定期間である印刷装置を提供することによって達成できる。
【0009】
また、上記課題は第3の発明によれば、前記基準印刷処理量はユーザが設定する印刷装置を提供することによって達成できる。
【0010】
また、上記課題は第4の発明によれば、前記基準印刷処理量と比較される過去の装置の印刷処理量として、直近の印刷処理量との比較処理も行われる印刷装置を提供することによって達成できる。
【0011】
また、上記課題は第5の発明によれば、特定期間の印刷処理量を記憶する第1の記憶処理と、基準印刷処理量を記憶する第2の記憶処理と、前記第1の記憶処理によって記憶された特定期間の印刷処理量と、前記第2の記憶処理によって記憶された前記基準印刷処理量と比較する比較処理と、該比較結果が、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が多い場合、装置を稼働可能状態に移行させ、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が少ない場合、装置を省電力状態に移行させる制御処理とを行う印刷制御方法を提供することによって達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過去の印刷実績に基づいて、自動的にデータを収集し、印刷装置を省電力に移行させることができ、省電力の時間帯をスケジュールする必要も無く、省電力制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】印刷装置が接続されたシステム構成図である。
【図2】印刷装置の内部構成を示す図である。
【図3】フラッシュメモリの構成を示す図である。
【図4】本実施形態の処理動作を説明するフローチャートである。
【図5】本実施形態の処理動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本実施形態の印刷装置がネットワークを介してホスト機器に接続されたシステム構成図である。本システムは3台のパーソナルコンピュータ(PC1〜PC3)と、3台のプリンタ装置1〜3、及びサーバコンピュータ4が、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)を介して接続された構成である。パーソナルコンピュータ(PC1〜PC3)は、キーボード等の入力部や、表示部、及びプリンタドライバ等で構成され、アプリケーションプログラムに従って作成した印刷データをプリンタ装置1〜3に出力する。
【0015】
一方、図1はプリンタ装置1〜3の内部構成を説明する図であり、プリンタ装置1〜3を代表して、以下プリンタ装置1を使用して説明する。
プリンタ装置1はオペレーションパネル5、ROM6、RAM7、時計回路8、フラッシュメモリ9、内部接続バス10、プリンタ制御LSI11、USBホストLSI12、エンジン部13、USB/LANインターフェース14、ハードディスク(HDD)15、及びCPU16で構成されている。
【0016】
CPU16はROM6に記憶されたプログラム及びデータに従ってプリンタ装置1の制御を行い、RAM7をワークエリアとして後述する処理を行う。
【0017】
パーソナルコンピュータ(PC1〜PC3)から供給された印刷データは、USB/LANインターフェース14を介してプリンタ装置1に入力し、CPU16の制御に従って一旦受信バッファ(RAM7)に格納された後、印刷データに含まれるコマンド解析が行われ、描画データをRAM7に展開し、例えば1ページ分の描画データが展開されると、エンジン部13に転送する。尚、プリンタ制御LSI11はエンジン部13を含む、プリンタ装置1の各部の制御を行う。
【0018】
図3は上記フラッシュメモリ9のデータ構成を示す図であり、プリンタ装置1の印刷処理状況を記憶する。このため、フラッシュメモリ9は1時間毎の印刷処理量(印刷枚数)を記憶するエリア9a、1日毎の印刷処理量(印刷枚数)を記憶するエリア9b、1週間の最大印刷処理量(印刷枚数)日を記憶する記憶エリア9c、1ヶ月の最大印刷処理量(印刷枚数)日を記憶する記憶エリア9d、及び基準印刷処理量(閾値)を記憶する記憶エリア9eで構成されている。
ここで、上記1時間毎の印刷処理量エリア9aには、1時間毎にプリンタ装置1の印刷処理量が記憶され、24時間分のプリンタ装置1の印刷処理量が記憶される。
【0019】
また、1日毎の印刷処理量エリア9bには、1日毎にプリンタ装置1の印刷処理量が記憶され、1年365日分のプリンタ装置1の印刷処理量が記憶される。また、1週間の最大印刷処理量日の記憶エリア9cには、1週間の中でプリンタ装置1が最も多数枚の印刷処理を行った曜日が記憶される。さらに、1ヶ月の最大印刷処理量日の記憶エリア9dには、1ヶ月の中でプリンタ装置1が最も多数枚の印刷処理を行った日が記憶される。尚、本例のフラッシュメモリ9は上記データを数十年分記憶することが可能である。
また、基準印刷処理量の記憶エリア9eには、予め設定された印刷処理量の基準値が記憶される。
【0020】
以下に、本実施形態の処理動作について説明する。
図4及び図5は、本例の処理動作を説明するフローチャートである。
【0021】
先ず、図4に示すフローチャートに従って、印刷装置1の電源を投入し、初期設定処理を行った後、印刷処理量の記憶エリアを有るか判断する(ステップ(以下、Sで示す)1)。この判断は、フラッシュメモリ9に前述の各エリアの設定が行われているか判断する処理であり、フラッシュメモリ9に未だ前述のエリア設定が行われていなければ(S1がNO)、フラッシュメモリ9に前述の管理エリアを作成する(S2)。
【0022】
一方、既に上記エリア設定が行われていれば(S1がYES)、現在時刻が取得できたか判断する(S3)。この判断は、CPU16が時計回路8から現在時刻の情報を取得するものであり、この時点で現在時刻の情報が取得できない場合(S3がNO)、例えばオペレーションパネル5に設定された内容に従ってスリープ動作を行う(S4)。この場合、後述する本例の省電力処理は行わない。
【0023】
一方、現在時刻の情報を取得できた場合(S3がYES)、同じ曜日の過去のデータが有るか判断する(S5)。すなわち、CPU16はフラッシュメモリ9の1時間毎の印刷処理量エリア9a、1日毎の印刷処理量エリア9bの情報を参照し、同じ曜日の過去のデータが存在するか判断する。ここで、同じ曜日の過去のデータが存在しなければ(S5がNO)、オペレーションパネル5に設定された内容に従ってスリープ動作を行う(S6)。この場合も、後述する本例の省電力処理は行わない。
【0024】
一方、同じ曜日の過去のデータが存在する場合(S5がYES)、プリンタ装置1が現在稼働中であるか判断する(S7)。プリンタ装置1が現在稼働中であれば(S7がYES)、処理を戻すが、プリンタ装置1が現在稼働中でなければ(S7がNO)、過去のデータからプリンタ装置1の印刷処理量が何パーセント(何%)であるか計算する(S8)。
【0025】
このプリンタ装置1の印刷処理量は、図5に示すフローチャートに従って計算される。先ず、CPU16はフラッシュメモリ9にアクセスして過去のデータを検索する(S8−1)。そして、過去のデータが存在すれば(S8−2がYES)、SUM=SUM+同一曜日データを計算する(S8−3)。この処理は、過去のデータが存在する全てに対して行われ、同じ曜日の印刷装置1の印刷処理量の集計を行う(S8−1〜8−4)。例えば、火曜日の午前9時〜10時の間の過去のデータを集計し、平均値(印刷処理量の平均値)を計算する(S8−2がNO、S8−5)。
【0026】
次に、基準印刷処理量が設定されているか判断する(S8−6)。ここで、基準印刷処理量とは、ユーザがオペレーションパネル5を操作して設定した値であり、ユーザが所望する印刷処理量(閾値)の基準値を設定したものである。ここで、上記基準印刷処理量が既に設定されていれば(S8−6がYES)、上記印刷処理量の平均値と基準印刷処理量からA%を求める(S8−7)。
【0027】
例えば、基準印刷処理量が30枚の場合(30枚の印刷処理を1時間に行う場合を基準印刷処理量とする場合)、過去のデータから印刷処理量の平均値が33枚であれば、
A%=110%(33/30×100)となる。
一方、基準印刷処理量を30枚に設定し、印刷処理量の平均値が20枚であれば、
A%=67%(20/30×100)となる。
【0028】
さらに、本例では直前1週間の印刷処理量の平均値と基準印刷処理量からB%も計算し(S8−8)、上記A%とB%の比較を行い(S8−9)、A%≧B%である場合A%を以後の処理に使用する(S8−9がYES、S8−10)。一方、A%<B%である場合B%を以後の処理に使用する(S8−9がNO、S8−11)。すなわち、本例では過去のデータと直前1週間のデータとを比較し、値の大きい方を以後の比較処理に採用する。
【0029】
次に、上記計算結果に基づいて、CPU16は図4に示す判断(S9)を実行する。すなわち、上記計算結果から比較値が100%以上であれば(S9がYES)、プリンタ装置1が稼働中であるか判断し(S10)、プリンタ装置1が稼働中でなければ(S10がYES)、直ちにプリンタ装置1のスリープ状態を解除する(S11)。すなわち、比較値が100%以上であれば、過去のデータから印刷装置1が使用される可能性が高く、直ちにスリープ状態を解除してプリンタ装置1を使用可能状態に設定する(S11)。
【0030】
一方、比較値が100%未満であれば(S9がNO)、直ちにプリンタ装置1をスリープモードに設定する(S12)。この場合、過去のデータからプリンタ装置1が使用される可能性は低く、スリープ状態に設定する。
【0031】
つまり本例では、従来のように単純に時間設定のみでプリンタ装置を省電力に移行させるのではなく、過去のデータ(印刷処理量(印刷枚数))をもとに、印刷処理が集中する時間帯は省電力を自動的に解除し、印刷処理が比較的少ない時間帯に、自動的に省電力に移行させる構成である。このように構成することにより、省電力の時間帯をスケジュールする必要も無く、プリンタ装置1が自動的にデータを収集し、分析して効率のよい省電力制御を行うことができる。
【0032】
尚、図5に示す処理及び判断(S8−12〜S8−16)は、ユーザによって基準印刷処理量が設定されていない場合の処理であり(S8−6がNO)、前述の処理及び判断(S8−7〜S8−11)と同様の処理を行う。この場合には、プリンタ装置1に予め設定されている初期基準値を使用し、過去のデータからC%を計算し(S8−12)、更に直前1週間の印刷処理量の平均値と初期基準値からD%も計算し(S8−13)、上記C%とD%の比較を行い(S8−14)、C%≧D%である場合C%を基準値として使用し(S8−14がYES、S8−15)、C%<D%である場合D%を基準値として使用する(S8−14がNO、S8−16)。すなわち、この場合も過去のデータと直前1週間のデータとを比較し、値の大きい方を採用して前述のスリープモードの設定、及び解除を行う。
【0033】
以上のように、本例によればプリンタ装置内で、印刷処理量(印刷枚数)を収集、分析し、精度の高い省電力制御を行うことができ、印刷処理のトータルコストの削減が可能となる。
【0034】
尚、上記実施形態の説明では、基準印刷処理量を30枚として説明したが、上記枚数に限るわけではない。また、プリンタ装置に限らず、複写機等の印刷装置に本実施形態を適用することもできる。
また、上記実施形態の説明では、フラッシュメモリ9に1時間毎の印刷処理量(印刷枚数)を記憶するエリア9aを設けたが、精度向上のため10分、又は20分毎の印刷処理量(印刷枚数)の記憶を行うエリアを設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1〜3・・印刷装置
4・・・サーバコンピュータ
5・・・オペレーションパネル
6・・・ROM
7・・・RAM
8・・・時計回路
9・・・フラッシュメモリ
9a・・1時間毎の印刷処理量エリア
9b・・1日毎の印刷処理量エリア
9c・・1週間の最大印刷処理量日の記憶エリア
9d・・1ヶ月の最大印刷処理量日の記憶エリア
9e・・基準印刷処理量
10・・内部接続バス
11・・プリンタ制御LSI
12・・USBホストLSI
13・・エンジン部
14・・USB/LANインターフェース
15・・ハードディスク(HDD)
16・・CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の装置の印刷処理量を記憶する第1の記憶手段と、
基準印刷処理量を記憶する第2の記憶手段と、
特定期間の装置の印刷処理量を前記第1の記憶手段から読み出し、前記第2の記憶手段に記憶された前記基準印刷処理量と比較する比較手段と、
該比較結果が、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が多い場合、装置を稼働可能状態に移行させ、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が少ない場合、装置を省電力状態に移行させる制御手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記特定期間は、特定の曜日の一定期間であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記予め設定された印刷処理量は、ユーザが設定することを特徴とする請求項1、又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記予め設定された印刷処理量と比較される過去の装置の印刷処理量として、直近の印刷処理量との比較処理も行われることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
特定期間の印刷処理量を記憶する第1の記憶処理と、
基準印刷処理量を記憶する第2の記憶処理と、
前記第1の記憶処理によって記憶された特定期間の印刷処理量と、前記第2の記憶処理によって記憶された前記基準印刷処理量と比較する比較処理と、
該比較結果が、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が多い場合、装置を稼働可能状態に移行させ、前記基準印刷処理量より前記特定期間の装置の印刷処理量が少ない場合、装置を省電力状態に移行させる制御処理と、
を行うことを特徴とする印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−194769(P2010−194769A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40108(P2009−40108)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】