説明

印刷装置

【課題】混合色インクを用いて印刷した画像において、粒状感を抑制できるとともに色合わせを行うことができる印刷装置を提供する。
【解決手段】シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色インクC,M,Y,Kのうちシアン、マゼンタ、イエローの全ての色インクC,M,Yが含まれる組み合わせを除いた少なくとも2つの異なる色相を有する色インクを組み合わせて混合して混合インクを生成する混合インク生成装置20と、生成される混合インクに含まれる各色インクの液量比率に応じた変換テーブルを1つまたは複数記憶し、記憶した変換テーブルを用いて画像データDgを印刷ヘッド15から噴射されるべき色インクの液量と混合インクの液量とを示した印刷データに変換する制御装置30と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に混合液を用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射対象物(例えば用紙)に、液体噴射手段としての印刷ヘッドから液体(例えばインク)を噴射して付着させ、付着した液体によって噴射対象物に画像(文字や図形などを含む)を形成することによって印刷する印刷装置が知られている。このような印刷装置においては、互いに異なる色相を有する複数の基本色液体(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインク)を噴射して用紙上にこれらの色のドットを形成する。そして、形成したドットによって空間的に色を混色して、形成する画像に応じた色相、明度、彩度を表現する。従って、このように噴射対象物に形成したドットそのものが視覚的に認識された場合、画像に粒状感が出てしまうことがある。
【0003】
そこで、粒状感を低減する方法として、空間的に混ぜ合わせて表現する色と異なる色相のドットを形成する替わりに、表現する色のドットを直接対象物上に形成することが有効である。このような混ぜ合わせに関する技術として、例えば、複数種類のインクを夫々希釈液で希釈して多種類の低濃度インクを生成することが可能に構成されたインクジェットプリンターが、例えば、特許文献1、特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−10859号公報
【特許文献2】特開2002−248783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に提案された主たる技術は、原液インクを希釈液で所望の割合に薄めた低濃度インクを用いることで、濃淡インクの種類数を増やし、幅広い諧調領域で、粒状感が抑制された滑らかで正確な濃度表現を行うことにある。このため、同系色の色相を有するインクを噴射することから、混ぜ合わせた混合インクを使用する場合の色合わせについては何ら考慮がなされていない。例えば、R(赤),G(緑),B青の諧調データからなる画像データからC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の色データに変換する色変換処理において、C,M,Y,Kの色インクを混合した混合インクを用いる場合について、色合わせに関する技術に関しては、何ら言及がなされていない。
【0006】
ところで、特許文献1,2に開示された方法を用いれば、C,M,Y,Kを基本色インクとし、この基本色インク同士を混合することによって得られる混合色インクによって、基本色インクとは異なる異系色の特色インクが得られるため、印刷装置に予め特色インクを備える必要がないという利点がある。従って、基本色インク同士を混合できるように構成された印刷装置において、基本色インクと、この基本色インク同士を混合した混合色インクとを用いたときに色合わせを考慮した最適な印刷を行うことが課題であった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものであり、混合色インクを用いて印刷した画像において、粒状感を抑制できるとともに色合わせを行うことができる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色相を有する基本色液体と、前記各基本色液体を混合して生成した混合色液体とを、画像データに基づいて液体噴射手段から対象物に噴射する印刷装置であって、前記各基本色液体のうちシアン、マゼンタ、イエローの全ての基本色液体が含まれる組み合わせを除いた少なくとも2つの異なる色相を有する前記基本色液体の組み合わせによって前記混合色液体を生成する混合液生成手段と、生成される前記混合色液体に含まれる前記各基本色液体の液量比率に応じた変換テーブルを1つまたは複数記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記変換テーブルを用いて、前記画像データを、前記液体噴射手段から噴射されるべき前記基本色液体の液量と前記混合色液体の液量とを示した印刷データに変換する変換手段と、を備えた。
【0009】
この構成によれば、混合される基本色液体によって基本色と異なる色合いを有する混合色液体が生成されるとともに、混合される基本色液体の液量比率によって得られる混合色液体の色合い応じた変換テーブルを用いて、画像データを印刷データに変換する。従って、混合する各基本色液体を別々に噴射した場合と比べて、噴射対象物上で得られる画像について粒状感が抑制されるとともに、色合わせが行われた画像を形成することができる。
【0010】
本発明の印刷装置において、前記混合色液体は、シアン、マゼンタ、イエローの各色相を有する前記基本色液体のうちの2つの前記基本色液体を混合した液体である。
この構成によれば、混合によって、例えば赤、緑、青のいずれかの色相またはそれらと同系色の色相を呈する混合色液体が得られるので、これらの色相を呈するドットを噴射対象物上に直接形成することができる。従って、噴射された液体によって得られる画像について粒状感が抑制されるとともに、色合わせが行われた画像を容易に形成することができる。
【0011】
本発明の印刷装置において、前記混合色液体は、前記2つの前記基本色液体に加えて、ブラックの色相を有する前記基本色液体を混合した液体である。
この構成によれば、混合によって、例えば赤、緑、青のいずれかの色相またはそれらと同系色の色相を呈するとともに明度が変化した混合色液体が得られるので、これらの色相を呈するとともに明度の異なるドットを噴射対象物上に直接形成することができる。この結果、噴射された液体によって得られる画像について、明度の異なる画像部分における粒状感が抑制されるとともに、色合わせが行われた画像を容易に形成することができる。
【0012】
本発明の印刷装置において、混合された前記各基本色液体の液量比率を取得する液量比率取得手段を備え、前記変換手段は、前記液量比率取得手段が取得した前記各基本色液体の液量比率に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記変換テーブルから1つの前記変換テーブルを選択して用いることによって前記画像データを前記印刷データに変換する。
【0013】
この構成によれば、実際に混合された各基本色液体の液量比率に応じて1つの変換テーブルを選択して用いることによって、噴射する混合色液体をその色合いに応じて適切に使用して色合わせが行われた画像を形成することができる。
【0014】
本発明の印刷装置において、前記記憶手段は、前記各基本色液体の液量比率について複数の比率範囲に区分し、前記区分した各々の比率範囲内の液量比率に対して1つの前記変換テーブルを記憶する。
【0015】
この構成によれば、混合インクにおける各色インクの液量比率を、例えば色相変化が画像データに及ぼす影響が少ない同系色を呈する比率範囲毎に区分し、区分した比率範囲における液量比率を有する色インクに対して1つの変換テーブルを記憶する。従って、変換に用いる変換テーブル数の増加を抑制しつつ、混合色液体を適切に使用して色合わせが行われた画像を形成することができる。
【0016】
本発明の印刷装置において、前記変換手段は、前記液量比率取得手段が取得した前記各基本色液体の液量比率が、前記区分された各々の比率範囲の境界から予め定められた比率範囲内に位置する場合は、用いる前記変換テーブルを、前記境界に隣接する前記複数の比率範囲内においてそれぞれ前記記憶手段が記憶する1つの前記変換テーブル間で交互に切り替えて、前記印刷データに変換する。
【0017】
色相の異なる液体を混合した場合に、液体の混ざり具合に応じて、混合液の色相が、混合されたそれぞれの液体の色相間を移動する揺らぎが生ずる場合がある。そこで、この構成によれば、変換テーブルを、この揺らぎに呼応して切り替えて用いることができるので、混合色液体を適切に使用して色合わせが行われた画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の印刷装置の概略構成を示す模式図。
【図2】混合インクの生成と供給についての説明図。
【図3】制御装置のシステムブロック図。
【図4】第1実施形態の変換テーブルの説明図。
【図5】印刷処理時の動作を説明するフロー図。
【図6】(a)は混合インクが存在可能な比率範囲を示す説明図、(b)は変換テーブルの種類を示す説明図。
【図7】第2実施形態で、(a)は変換テーブルの説明図、(b)は混合インクが存在可能な比率範囲を示す説明図、(c)は変換テーブルの種類を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を、噴射対象物としての用紙に対して、液体としてのインクを噴射して画像を形成すなわち印刷する印刷装置において具体化した一実施形態について、以下、図を用いて説明する。なお、噴射対象物は特に用紙(紙)に限られるものでなく、基板やガラス、あるいは木、金属、樹脂、布など他の素材で形成されたものであってもよい。
【0020】
図1は、本実施形態の印刷装置100の概略構成を示す模式図である。図示するように、印刷装置100は、印刷機構10と制御装置30とを備えている。そして、制御装置30は、入力された画像データDgに応じて印刷機構10を制御することによって、用紙Pに対してインクを噴射して所定の画像を形成するように構成されている。
【0021】
印刷機構10は、液体噴射手段としての印刷ヘッド(以降、単に「ヘッド」)15を備えたキャリッジ14と、駆動プーリー11と従動プーリー12とを有している。駆動プーリー11は、キャリッジモーターMTの回転軸に固定され、キャリッジモーターMTが駆動されると一体で回転するようになっている。駆動プーリー11と従動プーリー12との間には、駆動プーリー11の回転を伝達するベルト(無端状のベルト)13が張架されている。
【0022】
キャリッジ14は、その一部に設けられた固定部不図示によってベルト13の一部に固定されている。そして、キャリッジ14は図示しないガイド軸などによって案内され、キャリッジモーターMTと一体で回転する駆動プーリー11の回転に伴って移動するベルト13によって、所定方向(図面左右方向)に移動可能に構成されている。
【0023】
また、印刷機構10は、互いに異なる色相液である基本色液体としての色インクC(シアン)、色インクM(マゼンタ)、色インクY(イエロー)、色インクK(ブラック)の各色インクを収容したインクタンク16c,16m,16y,16kを有している。本実施形態では、色インクC,M,Y,Kは、それぞれの色相を有するとともに彩度が異なる濃淡インクを含むインクである。
【0024】
これらのインクタンク16c,16m,16y,16kは、各色インクC,M,Y,Kを混合した混合色液体としての混合インクを生成する混合液生成手段としての混合インク生成装置20に備えられている。各色インクC,M,Y,Kは、混合インク生成装置20内において所定の組み合わせと所定の液量比率で混ぜ合わされるようになっている。そして、各色インクC,M,Y,Kは、その混合インクを含めて、供給管17によってキャリッジ14にそれぞれ供給されるようになっている。なお、各インクタンク16は混合インク生成装置20において着脱可能状態または固定された状態で装着される。
【0025】
そして、各インクタンク16からキャリッジ14に供給された各色インクC,M,Y,K、および混合インクは、それぞれキャリッジ14内に設けられた図示しない流路を流れてヘッド15に導かれるようになっている。なお、以降の説明において、各色インクC,M,Y,Kとそれらを混合した混合インクとを区別しない場合、単に「インク」あるいは「各インク」と呼ぶことにする。
【0026】
ヘッド15には、インクを電歪素子や発熱素子などによって加圧するヘッド駆動部15a(図2参照)がそれぞれの流路の途中において形成されるとともに、加圧されたインクが噴射するノズル列が各インクのそれぞれに対応して形成されている。従って、このノズル列の形成面に対向して配置される用紙Pに対して、各ノズル列からインクを噴射して用紙P上に付着させるように構成されている。なお、用紙Pは必要に応じてキャリッジ14の移動方向と交差する方向に移動(搬送)できるようになっている。
【0027】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態として、混合インク生成装置20において生成される混合インクについて、図2を用いて説明する。図2は、混合インク生成装置20において、各インクタンク16から供給される各色インクC,M,Y,Kの混合の仕組みと、各色インクC,M,Y,Kおよび混合インクがヘッド15に供給される様子を示した説明図である。
【0028】
図示するように、混合インク生成装置20には、各色インクおよび生成された各混合インクを供給する配管と、混合インクを貯留する混合タンク21〜混合タンク26とが設けられている。そして、このように構成された混合インク生成装置20では、色インクCと色インクMとを混合した混合インク(C+M)、色インクCと色インクYとを混合した混合インク(C+Y)、色インクMと色インクYとを混合した混合インク(M+Y)が生成される。さらに、混合インク(C+M)に色インクKを混合した色インク(C+M+K)、混合インク(C+Y)に色インクKを混合した色インク(C+Y+K)、混合インク(M+Y)に色インクKを混合した色インク(M+Y+K)が生成される。このように、色インクCと色インクMと色インクYとを全て含む混合インクを除く混合インクが生成される。
【0029】
この結果、色インクCと色インクMと色インクYとの混合インクは、黒色または黒色と同系色を呈するのに対して、混合インク(C+M)は青色(B)、混合インク(C+Y)は緑色(G)、混合インク(M+Y)は赤色(R)の色相またはそれらと同系色の色相を呈する。また、これらの混合インクに対して、さらに色インクKを混合することによって、R,G,Bの色相またはそれらと同系色の色相を呈しつつ、明度の異なる混合インクが得られる。
【0030】
具体的に行われる混合処理について、その一例として、色インクCと色インクMとを混合した混合インク(C+M)と、この混合インク(C+M)にさらに色インクKを混合した混合インク(C+M+K)とについて説明する。
【0031】
色インクCは、インクタンク16cから、経路途中にバルブV1が設けられた配管によって、混合タンク21に供給される。また、色インクMは、インクタンク16mから、経路途中にバルブV2が設けられた配管によって、同じく混合タンク21に供給される。この結果、バルブV1とバルブV2の開閉を制御することによって、混合インク(C+M)が混合タンク21において生成される。さらに、混合インク(C+M)は、混合タンク21から、経路途中にバルブV7が設けられた配管によって混合タンク24に供給される。また、色インクKは、インクタンク16kから、経路途中にバルブV8が設けられた配管によって、同じく混合タンク24に供給される。この結果、バルブV7とバルブV8の開閉を制御することによって、混合インク(C+M+K)が混合タンク24において生成される。なお、混合タンク21あるいは混合タンク24には、生成された混合インクが十分に混ざり合うように、必要に応じて撹拌装置が備えられる。
【0032】
同様に、バルブV3とバルブV4の開閉を制御することによって、混合インク(C+Y)が混合タンク22において生成され、バルブV9とバルブV10の開閉を制御することによって、混合インク(C+Y+K)が混合タンク25において生成される。また、バルブV5とバルブV6の開閉を制御することによって、混合インク(M+Y)が混合タンク23において生成され、バルブV11とバルブV12の開閉を制御することによって、混合インク(M+Y+K)が混合タンク26において生成される。こうして合計6種類の混合インクが生成されるようになっている。
【0033】
バルブV1〜バルブV12は、制御装置30によってその開閉がそれぞれ制御される。このバルブの開閉制御によって、各混合タンク21〜混合タンク26における混合インクのインク貯留量と、各色インクC,M,Y,Kの混合割合(液量比率)が制御されることになる。換言すれば、バルブV1〜バルブV12の開閉制御によって、各混合タンク21〜混合タンク26における混合インクのインク貯留量と、混合インクが呈する色合い(ここでは色相および明度)とを制御することができる。例えば、2つの色インクを混合した混合インクが呈する色相を、純度の高いR,G,Bの色相に近くなるようにする場合は、それぞれの色インクを液量比率50:50で混合すればよい。また、明度についても、凡そ半分の明度を有する混合インクを得る場合は、生成された混合インクに対して色インクKを液量比率50:50で混合すればよいことになる。
【0034】
そして、図示するように、4種類の各色インクC,M,Y,Kと、生成された6種類の混合インクとの合計10種類のインクが、それぞれ供給管17によってキャリッジ14に供給される。供給された10種類のインクは、ヘッド15に備えられたヘッド駆動部15aによってそれぞれ加圧され、同じくヘッド15に設けられた10個のノズル列(A列〜J列)のそれぞれから噴射されるようになっている。ちなみに、ノズルA列からは色インクCが噴射され、ノズルE列からは混合インク(C+M)が噴射され、ノズルH列からは混合インク(C+M+K)が噴射される。従って、例えば凡そB(青)の色相を呈する画像を印刷する場合、ノズルE列から混合インク(C+M)が用紙Pに対して噴射されることになる。
【0035】
次に、このように色インクや混合インクの噴射を制御する制御装置30の構成について、図3を参照して詳しく説明する。制御装置30は、図示しない基板上に実装されたCPU(中央演算処理装置)31、RAM(ランダムアクセスメモリー)32およびROM(リードオンリーメモリー)33、ASIC(集積回路)34などの電子部品で構成された電気回路である。また、制御装置30は、ドライバー35,36及びI/F(インターフェイス)37が他の電気回路として形成されている。
【0036】
制御装置30は、CPU31がROM33に格納されたプログラムを実行したり、ASIC34内のハード的な回路が動作したりすることによって実現される機能部分として、画像処理部41、バルブ制御部42、印刷制御部43を備えている。また、CPU31は、RAM32またはROM33へデータを記憶処理することによって、RAM32またはROM33が記憶手段として機能するように構成されている。各部は以下の機能を行うようになっている。
【0037】
画像処理部41は、色変換処理部41a、ハーフトーン処理部41b、ラスタライズ処理部41cを備えている。そして、I/F37を介して入力され、RAM32に記憶された画像データDgを用いて、各色インクC,M,Y,Kと混合インクの各々についてヘッド15(ノズルA列〜J列)から噴射されるべき液量と噴射タイミングを示した印刷データDpに変換する。従って画像処理部41は変換手段として機能する。
【0038】
ここで、本実施形態では画像データDgは、R(赤)、G(緑)、B(青)各8ビットで表されたsRGB規格に準拠した「0〜255」の諧調データである。そして、画像処理部41では、色変換処理部41aにおいて、R,G,Bの画像データ(「RGBデータ」と呼ぶ)を変換テーブル(ルックアップテーブル)LUTを用いて色インクおよび混合インクのそれぞれの噴射量に対応するデータに色変換する。
【0039】
このとき色変換に用いる変換テーブルLUTは、混合される色インクの組み合わせや、その液量比率に応じて、予めI/F37を介してホストコンピューターなどからデータ入力され、RAM32またはROM33(ここではRAM32)に記憶される。もとより、生成する混合インクについて、混合される色インクの組み合わせやその液量比率が予め判明している場合は、変換テーブルLUTは、判明している色インクの組み合わせやその液量比率に応じて予めRAM32またはROM33に格納されていることとしてもよい。
【0040】
記憶されている変換テーブル(以降単に「テーブル」と呼ぶ)LUTの例を図4に示した。図4は、本実施形態での色変換処理において、変換テーブルとして用いるテーブルLUT1を示している。テーブルLUT1において、RGBデータは各色256階調(8ビット)で表された諧調であり、各色成分の諧調領域を16分割した合計17の3乗倍の個数の参照点が定められている。そして、テーブルLUT1では、これらの参照点に対応して各色インクC,M,Y,Kと、各混合インク(C+M),(C+Y),(M+Y),(C+M+K),(C+Y+K),(M+Y+K)とが、「0〜255」の階調値データ(総称して「CMYKデータ」と呼ぶ)で規定されており、RGBデータに基づいたCMYKデータが参照されて色変換が行われる。本実施形態では、テーブルLUT1は各混合インクに含まれる各色インクC,M,Y,Kの液量比率に応じて、複数のテーブルLUT1が用意されている。この複数のテーブルLUT1については後述する。
【0041】
なお、テーブルLUT1において、参照点以外のRGBデータについては、その近傍に位置する参照点のRGBデータから補間演算によりCMYKデータに変換される。また、RGBデータおよびCMYKデータは精度向上のために8ビットを超えてもよいし、メモリ節約のために8ビット未満でも良い。また参照点もさらに多く分割してもよいし、より少なく分割することとしてもよい。
【0042】
図3に戻り、変換されたCMYKデータは、ハーフトーン処理部41bおよびラスタライズ処理部41cにおいてハーフトーン処理およびラスタライズ処理が行われ、印刷データDpが生成される。ハーフトーン処理およびラスタライズ処理は、用紙Pにおいて形成するドットの大きさに応じて、変換されたCMYKデータを2値や4値などの多値データに変換する周知の処理であり、またラスタライズ処理も、キャリッジ14の移動に応じてヘッド15におけるノズル毎に多値データを配列する周知の処理であるので、ここでは説明を省略する。
【0043】
バルブ制御部42は、ドライバー36を介してバルブV1〜バルブV12の開閉を制御することによって、使用対象となる混合インクを生成する。例えば、バルブV1とバルブV2とを開閉制御することによって、色インクCと色インクMとを、それぞれ所定の液量分ずつ混合タンク21に供給する。この結果、混合タンク21において、噴射に必要となる混合インク(C+M)が生成されるようになっている。
【0044】
また、バルブ制御部42は、このようにバルブV1〜バルブV12を開閉制御して生成した混合インクについて、混合された各色インクの液量比率を取得する液量比率取得部42aを備えている。本実施形態ではバルブV1〜バルブV12の各バルブを流れる色インクの流量はそれぞれ一定であるものとみなす。従って液量比率取得部42aは、各混合タンク21〜混合タンク26に色インクを供給するために各バルブV1〜バルブV12を開放状態にした開放時間を計測することによって、それぞれの混合インクにおける各色インクの液量比率を取得する。こうして、液量比率取得部42aは液量比率取得手段として機能する。なお、流量計を用いて各色インクの実際の液量を測定してもよいし、実験などから求めた所定の係数を乗算して開放時間から求めた液量を補正するようにしてもよい。
【0045】
印刷制御部43は、制御手段として機能し、ドライバー35を介してキャリッジモーターMTを駆動して駆動プーリー11を回転させることによって、キャリッジ14を移動させる。また同時に、ASIC34を介して各ヘッド駆動部15aを動作させ、生成された印刷データDpに応じたタイミングと液量で、各ノズル列から各インクを噴射させる。
【0046】
次に、このように混合インクを利用するように機能構成された印刷装置100における動作、すなわち、画像データDgに基づく印刷処理について、図5を参照して説明する。
この処理では、まず、ステップS101にて、画像データDgの入力処理を行う。ここでは、画像データDgからRGBデータを取得する。次にステップS102にて色インクの混合処理を行う。ここでは基本色インクである各色インクC,M,Y,Kを、所定の組み合わせと液量比率で、前述した混合インク生成装置20において混合する。本実施形態では、色インクC,M,Yのうちの2つの色インクの組み合わせと、それらの2つの色インクの組み合わせに更に色インクKを組み合わせた混合インクを生成する。
【0047】
なお、本実施形態では、以降の説明を簡略化するため、混合される各色インクの液量比率はそれぞれ2種類であるものとする。すなわち、液量比率50:50に対してその前後の液量比率をそれぞれ1種類ずつ、合計2種類有するものとする。例えば、混合インク(C+M)は、色インクCと色インクMとが、液量比率(25:75)と液量比率(75:25)の2種類生成される。また、この混合インク(C+M)と色インクKとの混合インクは、液量比率(25:75)と液量比率(75:25)の2種類の混合インクが生成される。もとより、混合インク生成装置20においては、バルブV1〜バルブV12の制御によって、各色インクを任意の液量比率で混合できることは勿論であり、必要に応じて各色インクの液量比率が異なる多数種類の混合インクが生成される。例えば、混合インクが呈する色相差が画像データに及ぼす影響が少ない比率範囲毎に1つの液量比率を有するように、混合インクが生成される。
【0048】
次に、ステップS103にて、色インクの液量比率を取得処理する。バルブV1〜バルブV12について、それぞれの開放時間から、それぞれの混合インクについて色インクの液量比率を取得する。そして、ステップS104にて、混合インクを用いたテーブルLUTを選択処理する。ここではRAM32に記憶されている複数のテーブルLUT1のうち、各混合インクについて色インクの液量比率に応じて1つのテーブルLUT1(n)を選択する。
【0049】
ここで、RAM32に記憶されている複数のテーブルLUT1について、図6を用いて説明する。図6(a)は、本実施形態における混合インクについて、混合された各色インクの液量比率が存在可能な比率範囲を、円を用いて図示化した説明図である。また、図6(b)は、各混合インクにおける各色インクの液量比率が存在する比率範囲に対応して記憶される複数のテーブルLUT1(n)を示した説明図である。
【0050】
図6(a)に示すように、円の外周は、色インクC,M,Yについて、2つの色インクを混合した混合インク(C+M),(C+Y),(M+Y)を示している。円周上において、CM(50:50)の点は、色インクCと色インクMが液量比率50:50であることを示している。同様に、CY(50:50)の点は、色インクCと色インクYが液量比率50:50であることを示し、MY(50:50)の点は、色インクMと色インクYが液量比率50:50であることを示している。また、C(100)の点は基本色インクである色インクCであり、M(100)の点は基本色インクである色インクMであり、Y(100)の点は基本色インクである色インクYであることを示している。従って、本実施形態で生成される各混合インクは、前述するように、それぞれ2種類の液量比率を有しており、液量比率50:50を境に区分された領域αと領域βとにそれぞれ存在する。
【0051】
また、円周から中心に向かう液量比率の比率範囲は、混合インク(C+M),(C+Y),(M+Y)に対して、色インクKを混合した混合インクを示しており、最外周では色インクKの液量比率は0%であり、中心では色インクKの液量比率は100%である。従って、本実施形態で生成される各混合インク(C+M+K),(C+Y+K),(M+Y+K)は、前述するように2種類の液量比率を有しており、色インクKとの液量比率が50:50の線(円)を境に区分された領域αと領域βとにそれぞれ存在する。
【0052】
この結果、RAM32に記憶されるテーブルLUT1は図6(b)に示すようになる。すなわち、それぞれの混合インクの液量比率が、領域αに存在するのか領域βに存在するのかによって種類が異なるテーブルLUT1が用意される。ここでは、図示するように、混合インクの種類数が6種類であるので、2の6乗分となる合計64種類のテーブルLUT1(1)〜テーブルLUT1(64)が用意される。そして、用意されたテーブルLUT1(1)〜テーブルLUT1(64)は、ホストコンピューターなどから入力されRAM32に記憶される。従って、ステップS104では、この記憶されたテーブルLUT1(n)(n=1〜64)の中から、各混合インクにおける色インクの液量比率に応じた1つのテーブルLUT1(n)が選択されるのである。なお、本実施形態では、テーブルLUT1(n)(n=1〜64)は、混合インクの液量比率が存在する領域(ここでは領域αと領域β)を特定する識別データが付加されてRAM32に記憶され、この識別データに基づいて1つのテーブルLUT1が選択される。
【0053】
なお、上述するように、混合インクに含まれる色インクの液量比率の種類数をNとすると、Nの6乗分の数のテーブルLUT1がRAM32に記憶される。例えばN=5とすると5の6乗=15625個のテーブルLUT1が記憶されることになる。言い換えれば、混合インクに含まれる色インクの液量比率の種類数を少なくすれば、記憶容量を抑制することになる。
【0054】
次に、図5に戻り、ステップS105にて、選択されたテーブルLUT1を用いて色変換処理を行う。この処理によって、RGBデータはCMYKデータに変換される。そして、続くステップS106にてハーフトーン処理、さらにステップS107にてラスタライズ処理が行われて印刷データDpが生成され、続くステップS108にて印刷処理が行われて、画像データDgに基づく印刷処理が終了する。
【0055】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)混合インクが呈する色相を変換先の色要素に含むテーブルLUT1を用いて画像データDgを印刷データDpに変換するので、各色インクC,M,Y,Kを別々に噴射した場合と比べて、用紙上で得られる画像について粒状感が抑制される。また、色合わせが行われた画像を形成することができる。
【0056】
(2)混合によって、例えば赤、緑、青のいずれかの色相またはそれらと同系色の色相を呈する混合インクが得られるので、これらの色相を呈するドットを用紙上に直接形成することができる。従って、噴射されたインクによって得られる画像について粒状感が抑制されるとともに、色合わせが行われた画像を容易に形成することができる。
【0057】
(3)混合によって、例えば赤、緑、青のいずれかの色相またはそれらと同系色の色相を呈するとともに明度が変化した混合インクが得られるので、これらの色相を呈するとともに明度の異なるドットを用紙上に直接形成することができる。この結果、噴射されたインクによって得られる画像について、明度の異なる画像部分における粒状感が抑制されるとともに、色合わせが行われた画像を容易に形成することができる。
【0058】
(4)実際に混合された各色インクの液量比率に応じて1つのテーブルLUT1を選択して用いることによって、噴射する混合インクをその色合いに応じて適切に使用して色合わせが行われた画像を形成することができる。
【0059】
(5)混合インクにおける各色インクの液量比率を、例えば色相変化が画像データに及ぼす影響が少ない同系色を呈する比率範囲毎に区分し、区分した各々の比率範囲内の液量比率に対して1つのテーブルLUT1を記憶する。従って、変換に用いるテーブルLUT1の数の増加を抑制しつつ、混合インクを適切に使用して色合わせが行われた画像を形成することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に第2実施形態として、上記実施形態の混合インク生成装置20において、さらに色インクC,M,Yのそれぞれに対して色インクKを混合した混合インク(C+K)、混合インク(M+K)、混合インク(Y+K)が生成されるようにしてもよい。こうすれば、色インクC,M,Yに対して、それぞれ明度を低くした混合インクを生成することができる。
【0061】
本実施形態において、色変換処理で用いられるテーブルLUT2について、図7を用いて説明する。まず、図7(a)に示すように、テーブルLUT2は、テーブルLUT1と同様に、それぞれ256階調(8ビット)で表されたR,G,Bの各色成分の諧調領域を16分割した合計17の3乗倍の個数の参照点が定められている。そして、テーブルLUT2では、これらの参照点に対応して各色インクC,M,Y,Kと、混合インク(C+M),(C+Y),(M+Y),(C+M+K),(C+Y+K),(M+Y+K)、および混合インク(C+K),(M+K),(Y+K)が、それぞれ「0〜255」の階調値データ(ここでも総称して「CMYKデータ」と呼ぶ)で規定されている。従って、本実施形態では、混合インク(C+K),(M+K),(Y+K)を含んだCMYKデータが参照されて、RGBデータの色変換が行われる。本変形例でも、上記第1実施形態と同様に、テーブルLUT2は各混合インクに含まれる各色インクC,M,Y,Kの液量比率に応じて、複数のテーブルLUT2(n)が記憶されている。
【0062】
本実施形態では、生成される混合インク(C+K),(M+K),(Y+K)は、説明を簡単にするため、上記第1実施形態と同様に、液量比率50:50に対してその前後の液量比率をそれぞれ1種類ずつ、合計2種類有するものとする。例えば、混合インク(C+K)は、色インクCと色インクKとが、液量比率(25:75)と液量比率(75:25)の2種類生成される。そこで、本実施形態では、図7(b)に示したように、上記第1実施形態における図6(a)に示した比率範囲に対して、さらに各色インクC,M,Yと色インクKとの混合インクを示す直線を2つの領域に分割する。例えば、C(100)とK(100)とを結ぶ直線は、色インクCと色インクKとの混合インクの液量比率を示す直線であり、この直線を2つの比率範囲に分割するのである。そして、各混合インク(C+K),(M+K),(Y+K)について、色インクKとの液量比率が50:50の点、つまりCK(50:50)、MK(50:50)、YK(50:50)を境に、領域αと領域βとに区分する。
【0063】
この結果、記憶されるテーブルLUT2は図7(c)に示すようになる。すなわち、それぞれの混合インクが、領域αに存在するのか領域βに存在すのかによって種類が異なるテーブルLUT2(n)が用意される。この結果、図示するように、混合インクの種類数が6+3=9種類であるので、2の9乗分となる合計512種類のテーブルLUT2(1)〜テーブルLUT2(512)が、ホストコンピューターなどから入力され、各混合インクについて領域αと領域βとの区分を特定する識別データと共にRAM32に記憶される。そして、上記実施形態におけるステップS104(図5)では、この記憶されたテーブルLUT2(n)(n=1〜512)の中から、生成される混合インクに最も適したテーブルLUT2が識別データに基づいて選択されることになる。
【0064】
なお、この場合、図2において混合インク生成装置20には、各色インクC,M,Yに対して色インクKをそれぞれ加えるように途中に開閉バルブが設けられた配管と、混合タンク(いずれも不図示)が追加形成される。なお、追加形成された開閉バルブはバルブ制御部42(図3参照)によって開閉制御される。
【0065】
上記説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態における(1)〜(5)の効果に加えて、(6)色インクC,M,Yに対して、それぞれ明度を低くした混合インクが生成されるので、明度の異なる画像を形成する場合において、粒状感を抑制することができるという効果を奏する。
【0066】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、テーブルLUT1の種類(64種類)を増やすことなく、領域αと領域βとの境界から予め定められた比率範囲内に位置する液量比率で生成した混合インクを用いて画像を形成することとしてもよい。そしてこの場合、混合インクの液量比率が、それぞれ領域αと領域βに位置するときに選択されるテーブルLUT1(n)間で交互に切り替えて用いることによって、RGBデータをCMYKデータに色変換することが好ましい。
【0067】
色インクを混合した場合に、例えば溶質の撹拌性能の違いなどによって色インクの混ざり具合が一定でなく、実際にノズルから噴射される混合インクが呈する色相がそれぞれの色インクが有する色相間を移動する揺らぎが生ずる場合がある。従って、こうすれば、上記実施形態における(1)〜(5)の効果に加えて、(7)テーブルLUT1を、この揺らぎに呼応して切り替えて用いることによって、混合インクを適切に使用することができるという効果を奏する。例えば、混合インク(C+M)について液量比率(50:50)の混合インクが生成されて使用される場合は、図6(b)において、テーブルLUT1(1)とテーブルLUT1(2)とを交互に切り替えて用いるようにすればよい。
【0068】
なお、境界からの予め定められた比率範囲や、切り替えるべきテーブルLUT1およびその切り替えタイミングなどについては、印刷装置100において実際に生ずる揺らぎのデータを取得し、取得した揺らぎのデータに基づいて設定するようにすればよい。
【0069】
・上記実施形態において、色インクKを用いることなく色インクC,M,Yのうちのいずれか2つの組み合わせによって混合インクを生成することとしてもよい。こうすれば、混合によって純度の高い赤、緑、青のいずれかの色相を呈する混合インクが得られるので、赤、緑、青のいずれかの色相を呈するドットを対象物上に直接形成することができる。
【0070】
・上記実施形態において、色インクC,M,Yのうちの異なる2つの色インクのみ混合インクを生成することとしてもよい。例えば、色インクCと色インクMの組み合わせによる混合インクのみを生成することとしてもよい。さらにこの場合、液量比率を50:50とすることが好ましい。こうすれば、例えば、混合によって純度の高い青色の色相を呈する混合インクが得られる場合は、視認性が他の色相より低いために相対的大きいドットを形成する必要がある青色の画像などにおいて、青色のドットを直接形成することができる。この結果、形成する色インクCと色インクMの色ドットの大きさを小さくしたり、色ドットそのものを形成しなくて済むようにしたりすることができるので、粒状感を抑制するとともに、青色の視認性を改善することが期待できる。また、記憶するテーブルLUT1も1つで済む。
【0071】
・上記実施形態の混合インク生成装置20において、色インクを混合する混合方法は異なる方法としてもよい。例えば、混合インク(C+M+K)を混合する場合、色インクCと色インクMと色インクKとを、バルブの開閉によって、それぞれを同時に混合タンクに供給して混合する方法としてもよい。また、混合する液量比率の種類毎に混合タンクを用意して混合するようにしてもよい。
【0072】
・上記実施形態において、液量比率を取得せず、予め定められた液量比率に対応する変換テーブルを記憶することとしてもよい。例えば、予め定められた液量比率で色インクが混合されて混合インクが生成されるように構成された印刷装置では、この予め定められた色インクの液量比率に対応する変換テーブルを用いることで、粒状感が抑制されかつ色合わせが行われた画像を形成することができる。
【0073】
・上記実施形態では、本発明を液体としてのインクを噴射する印刷装置100に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする印刷装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる印刷ヘッド等を備える各種の印刷装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する印刷装置がある。あるいは、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…印刷機構、11…駆動プーリー、14…キャリッジ、15…液体噴射手段としての印刷ヘッド、15a…ヘッド駆動部、16,16c,16m,16y,16k…インクタンク、20…混合液生成手段としての混合インク生成装置、21〜26…混合タンク、30…制御装置、31…CPU、32…記憶手段としてのRAM、33…記憶手段としてのROM、34…ASIC、41…変換手段としての画像処理部、41a…色変換処理部、41b…ハーフトーン処理部、41c…ラスタライズ処理部、42…バルブ制御部、42a…液量比率取得手段としての液量比率取得部、43…印刷制御部、100…印刷装置、α,β…領域、C,M,Y,K…色インク、P…用紙、Dg…画像データ、Dp…印刷データ、V1〜V12…バルブ、LUT,LUT1,LUT2…変換テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色相を有する基本色液体と、前記各基本色液体を混合して生成した混合色液体とを、画像データに基づいて液体噴射手段から対象物に噴射する印刷装置であって、
前記各基本色液体のうちシアン、マゼンタ、イエローの全ての基本色液体が含まれる組み合わせを除いた少なくとも2つの異なる色相を有する前記基本色液体の組み合わせによって前記混合色液体を生成する混合液生成手段と、
生成される前記混合色液体に含まれる前記各基本色液体の液量比率に応じた変換テーブルを1つまたは複数記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記変換テーブルを用いて、前記画像データを、前記液体噴射手段から噴射されるべき前記基本色液体の液量と前記混合色液体の液量とを示した印刷データに変換する変換手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記混合色液体は、シアン、マゼンタ、イエローの各色相を有する前記基本色液体のうちの2つの前記基本色液体を混合した液体であることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2記載の印刷装置において、
前記混合色液体は、前記2つの前記基本色液体に加えて、ブラックの色相を有する前記基本色液体を混合した液体であることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置において、
混合された前記各基本色液体の液量比率を取得する液量比率取得手段を備え、
前記変換手段は、前記液量比率取得手段が取得した前記各基本色液体の液量比率に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記変換テーブルから1つの前記変換テーブルを選択して用いることによって前記画像データを前記印刷データに変換することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記記憶手段は、前記各基本色液体の液量比率について複数の比率範囲に区分し、前記区分した各々の比率範囲内の液量比率に対して1つの前記変換テーブルを記憶することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記変換手段は、前記液量比率取得手段が取得した前記各基本色液体の液量比率が、前記区分された各々の比率範囲の境界から予め定められた比率範囲内に位置する場合は、用いる前記変換テーブルを、前記境界に隣接する前記複数の比率範囲内においてそれぞれ前記記憶手段が記憶する1つの前記変換テーブル間で交互に切り替えて、前記印刷データに変換することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194718(P2011−194718A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64092(P2010−64092)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】