説明

印字装置

【課題】円筒の側面形状を側面に有する物体の側面に、歪みのない印字をすることができる印字装置を提供する。
【解決手段】被印字体である円筒の側面形状を側面に有する物体(円筒状のハニカム構造体)101が載置され、載置された当該物体(ハニカム構造体101)を上記「円筒の側面形状」についての中心軸(円筒状のハニカム構造体101の中心軸)を中心にして回転(自転)させる回転テーブル1と、載置された当該物体(ハニカム構造体101)の円筒の側面形状に形成された側面(外周面)102に、円筒の側面形状に形成された側面(ハニカム構造体101の側面102)との距離を一定に保った状態でインク12を噴射する印字ヘッド11を有するインクジェットプリンタ13と、回転テーブル1の回転位置に合わせて印字ヘッド11からインク12を噴射するように制御するための制御部21とを備えた印字装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字装置に関し、さらに詳しくは、被印字体である「円筒の側面形状」を側面に有する物体の、当該「円筒の側面形状」の側面に、歪みのない印字をすることができる印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体、又はフィルタとして、耐熱性、耐食性に優れるセラミック製のハニカム構造体が採用されている。このようなハニカム構造体においては、質量、寸法等の製造上必要な情報や、ロット番号、特性、製造条件等の製品として必要な情報を、側面(外周面)に印字することが行われている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2003/078064号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO2006/126278号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0057266号明細書
【特許文献4】国際公開第WO2007/072694号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハニカム構造体には種々の形状のものがあるが、円筒状のハニカム構造体の場合、その側面(外周面)は曲面であるため、印字する文字、図形等が大きなものであると、その文字、図形等の形状が変形するという問題があった。特に、インクジェットプリンタを用いて、直線上又は曲線上を移動する円筒状のハニカム構造体の側面に印字するときに、文字、図形等の形状が大きく変形するという問題があった。これらの問題は、「円筒状の物体」の側面に、大きな文字、図形等を印字するときの共通の問題である。
【0005】
図5、図6に示すように、円筒状の物体である円筒状のハニカム構造体201を、中心軸を鉛直方向に向けた状態で水平方向に移動させながら、インクジェットプリンタの印字ヘッド211からハニカム構造体の側面202にインク212を噴射させて文字、図形等を印字する場合、通常、印字ヘッド211から、円筒状のハニカム構造体201の中心軸方向の上下に広がるように、インク212を噴射させる。このとき、ハニカム構造体201の移動とともに、ハニカム構造体201と印字ヘッド211との間の距離が変化するため、インクの噴射が「円筒状のハニカム構造体の中心軸方向の上下(中心軸方向の上下)」に広がることにより、印字ヘッドからハニカム構造体までの距離が短い部分では文字、図形等が中心軸方向に短く印字され、印字ヘッドからハニカム構造体までの距離が長い部分では文字、図形等が中心軸方向に長く印字される。これにより、円筒状のハニカム構造体の側面に印字された文字、図形等の形状が歪んだ形状となるのである。図5は、従来の、ハニカム構造体の側面にインクジェットプリンタを用いて印字する状態を模式的に示す平面図である。図6は、従来の、ハニカム構造体の側面にインクジェットプリンタを用いて印字する状態を模式的に示す側面図である。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、円筒状の物体の側面に、歪みのない印字をすることができる印字装置を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって以下の印字装置が提供される。
【0008】
[1] 被印字体である円筒の側面形状を側面に有する物体が載置され、載置された前記物体を前記円筒の側面形状についての中心軸を中心にして回転させる回転テーブルと、載置された前記物体の前記円筒の側面形状に形成された側面に、前記円筒の側面形状に形成された側面との距離を一定に保った状態でインクを噴射する印字ヘッドを有するインクジェットプリンタと、回転テーブルの回転位置に合わせて印字ヘッドからインクを噴射するように制御するための制御部とを備えた印字装置。
【0009】
[2] 前記円筒の側面形状を側面に有する物体が、円筒状の物体である[1]に記載の印字装置。
【0010】
[3] 被印字体である円筒状の物体の側面に印字するときの印字範囲が、被印字体である円筒の側面形状を側面に有する物体の外周方向に、円筒状の物体の中心軸に直交する断面の直径の0.2倍以上である[1]又は[2]に記載の印字装置。
【0011】
[4] 前記回転テーブルが、昇降機能を有する[1]〜[3]のいずれかに記載の印字装置。
【0012】
[5] 前記印字ヘッドが、前後に位置調整できるものである[1]〜[4]のいずれかに記載の印字装置。
【0013】
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の印字装置を用いて、円筒の側面形状を側面に有する物体の、前記円筒の側面形状に形成された側面に印字を行う印字方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の印字装置は、載置された「円筒の側面形状」を側面に有する物体(被印字体)を、円筒の側面形状の側面についての中心軸を中心にして回転させる回転テーブルと、当該円筒形状の側面との距離を一定に保った状態で、当該円筒形状の側面にインクを噴射する印字ヘッドを有するインクジェットプリンタと、回転位置に合わせてインクを噴射するように制御するための制御部とを備えるものであるため、インクジェットプリンタの印字ヘッドと被印字体である物体の円筒の側面形状の側面との距離を常に一定に保った状態で、所望の文字、図形等を歪み無く印字することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の印字装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の印字装置の他の実施形態における、ハニカム構造体が載置された回転テーブルと印字ヘッドとを模式的に示した平面図である。
【図3】実施例1の印字装置を用いて、評価1の条件で、円筒状のハニカム構造体の側面に印字したときの二次元コードを示し、ハニカム構造体の側面を展開して平面状にしたときの状態を示す平面図である。
【図4】比較例1の印字装置を用いて、評価17の条件で、円筒状のハニカム構造体の側面に印字したときの二次元コードを示し、ハニカム構造体の側面を展開して平面状にしたときの状態を示す平面図である。
【図5】従来の、ハニカム構造体の側面にインクジェットプリンタを用いて印字する状態を模式的に示す平面図である。
【図6】従来の、ハニカム構造体の側面にインクジェットプリンタを用いて印字する状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0017】
(1)印字装置:
本発明の印字装置の一の実施形態は、図1に示すように、被印字体である「「円筒の側面形状」を側面に有する物体」(円筒状のハニカム構造体)101が載置され、載置された当該物体(ハニカム構造体101)を上記「円筒の側面形状」についての中心軸(円筒状のハニカム構造体101の中心軸)を中心にして回転(自転)させる回転テーブル1と、載置された当該物体(ハニカム構造体101)の「円筒の側面形状」に形成された側面(外周面)102に、「円筒の側面形状」に形成された側面(ハニカム構造体101の側面102)との距離を一定に保った状態でインク12を噴射する印字ヘッド11を有するインクジェットプリンタ13と、回転テーブル1の回転位置に合わせて印字ヘッド11からインク12を噴射するように制御するための制御部21とを備えたものである。
【0018】
尚、本実施形態では、被印字体である「「円筒の側面形状」を側面に有する物体」の一例として、円筒状のハニカム構造体を挙げているが、「「円筒の側面形状」を側面に有する物体」は、円筒状のハニカム構造体には限定されず、「円筒の側面形状」を側面に有するものであればどのような形状であってもよい。ここで、「「円筒の側面形状」を側面に有する物体」とは、円筒形状若しくは円柱形状の物体、又は、側面の一部が「円筒の側面の形状」若しくは「円筒の側面の形状の一部」になっている物体のことを意味する。ハニカム構造体とは、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを、区画形成する多孔質の隔壁を備える構造体である。また、上記円筒状のハニカム構造体101は、本実施形態の印字装置100によって文字、図形等が印字される印字対象物であり、本実施形態の印字装置100の構成要素ではない。また、本明細書において、「印字」というときは、文字を記すことだけではなく、インクを被印字体(印字対象)であるハニカム構造体の側面に吹き付ける(噴射する)ことにより、ハニカム構造体の側面にインクによって描かれるもの全てを含む。例えば、絵や図を描写したり、特定の範囲の全面にインクをコーティングしたりすることも含まれる。ここで、「コーティング」とは、特定の範囲全体をインクで塗りつぶし、当該範囲をインクで覆うことをいう。図1は、本発明の印字装置の一実施形態を示す模式図である。
【0019】
本実施形態の印字装置100によれば、回転テーブル1によって円筒状のハニカム構造体101を、中心軸を回転中心として回転(自転)させながら、印字ヘッド11からハニカム構造体101の側面までの距離を一定に保った状態にして、印字ヘッド11からインク12を噴射することができるため、印字ヘッド11から噴射されるインク12が、ハニカム構造体101の側面102の印字範囲において、インク12の広がり方に大小ができず、均一に印字をすることができる。これにより、所望の文字、図形等を歪み無く印字することができる。印字ヘッド11とハニカム構造体101の側面102との距離を一定に保った状態にするため、印字ヘッド11は、ハニカム構造体101の側面102に向けた状態で、固定することが好ましい。本実施形態の印字装置100によれば、円筒状のハニカム構造体101を、回転テーブル1によって、中心軸を回転中心として回転(自転)させるため、印字ヘッド11を、ハニカム構造体101の側面102に向けた状態で固定することにより、常に印字ヘッド11とハニカム構造体101の側面102との距離が一定になる。更に、印字ヘッド11を移動させないことにより、印字ヘッド11の移動による振動等の影響を受けることがないため、良好な印字状態を得ることができる。
【0020】
本実施形態の印字装置100においては、回転テーブル1は、ハニカム構造体101を載置させるための上面2を有するものであることが好ましく、円盤状であることが更に好ましい。そして、回転テーブル1は、上面2が、鉛直方向上側を向き、且つ水平になるようにして配置されることが好ましい。回転テーブル1の大きさは、ハニカム構造体101を、中心軸方向を鉛直方向に向けた状態で(一方の端面を下向きにして)載置できれば特に限定されない。具体的には、回転テーブル1が上面2を有する円盤状である場合、回転テーブル1の直径が、円筒状のハニカム構造体101の端面の直径の1.0〜5.0倍であることが好ましい。
【0021】
回転テーブル1の材質は特に限定されないが、ステンレス鋼、セラミック、樹脂が好ましい。また、ゴム等の滑り止めシートを回転テーブル上面に配置したり、回転テーブル上面の表面を荒く仕上げるなど、回転テーブルとハニカム構造体との間の摩擦力を上げ、回転時の位置ズレ防止がされていることが好ましい。
【0022】
回転テーブル1は、モーターにより回転することが好ましい。回転速度は、インクジェットプリンタ13の仕様等によって適宜決定することができるが、10〜200回転/分の範囲が好ましい。また、回転テーブル1は、昇降機能を有することが好ましい。昇降機能を有することにより、印字範囲がハニカム構造体101の側面102の中心軸方向に長い場合にも、回転テーブル1が上昇及び/又は下降することにより、所望の文字、図形等を印字することができる。
【0023】
本実施形態の印字装置100においては、インクジェットプリンタ13は、印字ヘッド11を有するものであり、公知のインクジェットプリンタを用いることができる。具体的には、Image社製9040シリーズ等1つのノズルから上下方向の印字走査を行う帯電制御式が好ましい。印字速度(印字時の印字対象物の移動速度)は、100mm/秒〜400mm/秒が好ましい。印字対象物の移動速度とは、ハニカム構造体101の印字面の進行速度を意味する。
【0024】
印字ヘッド11は、ハニカム構造体101を回転テーブル1に載置したときに、その噴射孔(ノズル)がハニカム構造体101の側面102を向いた状態になるようにして、固定することが好ましい。印字ヘッド11の噴射孔(ノズル)は、ハニカム構造体101の中心軸を向くようにすることが更に好ましい。そして、インク12を、ハニカム構造体の中心軸が存在する方向に向かって噴射するようにすることが好ましい。ハ二カム構造体101を回転テーブル1に載置したときの、印字ヘッド11からハニカム構造体101の側面102までの距離は、インクジェットプリンタ13の仕様によって適宜決定することができるが、10〜30mmであることが好ましい。また、印字ヘッド11は、印字範囲がハニカム構造体101の側面102の中心軸方向に長い場合には、印字範囲の中心軸方向における長さに合わせて、複数個備えられてもよい。例えば、2個又は3個が好ましい。尚、図1においては、インクジェットプリンタ13は、印字ヘッド11以外の構成要素が省略されている。また、印字ヘッドは、適宜位置調整を行うことが可能であり、前後に位置調整したり、高さ方向(回転テーブルの回転軸に平行な方向)に移動させて被印字体の印字位置(回転テーブルの回転軸方向における印字位置)を調整したりすることができる。「印字ヘッドを前後に位置調整する」とは、印字ヘッドを、回転テーブルの中心軸に向かって近づけたり、回転テーブルの中心軸から遠ざけたりして位置調整することを意味する。また、印字中は、印字ヘッドは固定した状態とすることが好ましい。
【0025】
本実施形態の印字装置100においては、制御部21は、回転テーブル1の回転位置に合わせて印字ヘッド11からインクを噴射するように制御するためのものである。制御部21は、回転テーブル1の回転位置を検出する回転位置検出手段を有し、検出した回転テーブル1の回転位置に合わせてインクジェットプリンタ13にインク12の噴射の指示を送るものであることが好ましい。制御部21は、回転テーブル1及びインクジェットプリンタ13と、電気配線でつながれている。
【0026】
回転位置検出手段としては、回転テーブル1に取り付けられたエンコーダーであることが好ましい。また、回転テーブル1に設けられた位置基準3と、位置基準3の位置を検出するセンサとを備え、位置基準3の位置をセンサにより検出することにより、回転テーブル1の回転位置を検出するものであることも、回転位置検出手段の好ましい態様である。位置基準3は、検出するセンサの検出に適した材質、反射率であることが好ましく、回転テーブル1の回転位置を特定できる大きさであることが好ましい。位置基準3の位置を検出するセンサとしては、具体的には反射型ファイバーセンサ、レーザセンサ、近接センサ等を挙げることができる。回転位置検出手段によって得られた回転テーブル1の回転位置の情報に基づき、制御部21によりインクジェットプリンタ13にインク12の噴射の指示を送ることが好ましい。
【0027】
本実施形態の印字装置100においては、被印字体である円筒状のハニカム構造体101の側面102に印字するときの印字範囲が、被印字体である円筒状のハニカム構造体101の外周方向に、ハニカム構造体101の中心軸に直交する断面の直径の0.2倍以上であるときに、特に、優れた、印字の歪み防止効果が発揮される。更に、0.25倍以上であるときに、一層効果的である。本実施形態の印字装置100は、ハニカム構造体101の外周方向における印字範囲は限定されず、外周一周に亘って歪み無く印字することが可能である。また、ハニカム構造体101の中心軸方向においても、印字範囲は限定されず、ハニカム構造体101の中心軸方向の全体に亘って印字することができる。
【0028】
本実施形態の印字装置100は、ハニカム構造体101の外周方向に沿って複数の印字ヘッド11を備えてもよい。例えば、図2に示すように、ハニカム構造体101の外周方向において異なる位置に、2つの印字ヘッド11を配置することが好ましい。このように、ハニカム構造体101の外周方向において異なる位置に、複数の印字ヘッド11を配置すると、複数の態様(種類)の印字をハニカム構造体101の側面102に行うことができる。例えば、図2に示すように、2つの印字ヘッド11を配置すると、一つの印字ヘッド11により文字情報を印字し、他の一つの印字ヘッド11により、その文字情報の上から透明なインクによりコーティングを行うことが可能である。また、逆に、先にコーティングを行い、その上から文字情報を印字してもよい。コーティングと文字の印字とでは、通常、コーティングのほうが広い範囲に亘ってインクを塗布するため、本発明の印字装置は、このように広い範囲にコーティングを行う場合に高い効果があるといえる。また、文字情報は、少し歪むだけで、視認し難くなるものであるため、本発明の印字装置は、文字情報の印字を行う場合にも高い効果があるといえる。また、二次元コードについても、少し歪むと、読み取り難くなるため、本発明の印字装置は、二次元コードの印字を行う場合にも高い効果があるといえる。図2は、本発明の印字装置の他の実施形態における、ハニカム構造体101が載置された回転テーブル1と印字ヘッド11とを模式的に示した平面図である。
【0029】
(2)印字方法:
本発明の印字方法の一の実施形態は、図1に示す本発明の印字装置の一実施形態を用いて、被印字体である「円筒の側面形状」を側面に有する物体である円筒状のハニカム構造体101の側面102に印字を行うものである。このように、本実施形態の印字方法は、本発明の印字装置の一実施形態を用いて、円筒状のハニカム構造体101(「円筒の側面形状」を側面に有する物体)の側面102に印字を行うため、インクジェットプリンタ13の印字ヘッド11と円筒状のハニカム構造体101の側面102との距離を常に一定に保った状態で、所望の文字、図形等を歪み無く印字することができる。
【0030】
本実施形態の印字方法においては、印字の厚さ(濃さ)を、同一箇所に複数回重ねて印字することにより調整することが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
直径200mmの円盤状の回転テーブルは、日本精工社製のメガトルクモーターを使用して作製した。インクジェットプリンタとしては、Image社製のインクジェットプリンタImage9040を使用した。制御部としては、パソコンを用いた。制御部を回転テーブル及びインクジェットプリンタに接続して印字装置とした。インクジェットプリンタの印字ヘッドは、円筒状の物体である円筒状のハニカム構造体を回転テーブルに載置したときに、ハニカム構造体の側面との距離が23.5mmになるように配置した。印字ヘッドは、インクがハニカム構造体の中心軸が存在する方向に向かって噴射されるように配置した。得られた印字装置を用いて、下記方法により、印字試験を行った。結果を表1に示す。印字試験においては、円筒状のハニカム構造体を、その中心軸が回転中心となるように回転テーブルの上に載置し、回転テーブルを20回転/分の回転速度で回転させながら印字を行った。
【0033】
(印字試験)
所定の直径の端面を有する円筒状のハニカム構造体の側面に、二次元コードを印字する。印字する二次元コードは、平面状の被印字体に印字したときに、印字の縦方向長さが10mmであり、印字幅が表1に記載の所定の「印字幅」であるような大きさとした。「印字の縦方向長さ」は、ハニカム構造体の中心軸方向の印字の長さであり、「印字幅」は、ハニカム構造体の外周方向の印字の長さである。そして、印字した二次元コードを、キーエンス社製の「二次元バーコードリーダーSR−510」を用いて10回読み取った。二次元バーコードリーダーSR−510に表示される読取率について10回の平均値をとり、平均読取率とした。印字する二次元コードは、「Data Matrix(ECC200)の16セル×16セル」とする。尚、ハニカム構造体の端面の所定の直径は、表1の「直径」の欄に示される値である。表1においては、条件の異なる評価毎に評価番号を付している。表1における「印字の縦方向長さ(中央部)」の欄は、「ハニカム構造体の外周方向における二次元コードの中央部分」の高さである。表1において「印字の縦方向長さ(中央部)」がいずれも10mmであるが、これは、印字した二次元コードが歪んだときでも、「ハニカム構造体の外周方向における二次元コードの中央部分」の高さは変化しないため、「印字の縦方向長さ(中央部)」は常に10mmとなる。また、印字した二次元コードの歪み状態を示すために、「印字の縦方向長さ(端部)」を測定する。「印字の縦方向長さ(端部)」は、「ハニカム構造体の外周方向における二次元コードの両端部」の高さの平均である。平均読取率が30%以上であれば合格とする。二次元コードでは、複数回読み取りを実施したうちで1度でも読み取りができれば、完全に復号できるため、本来は、1度でも読み取りができれば合格としてよいところであるが、読み取り時の環境等が不良である場合(読み取り難い環境である場合)等を考慮し(本印字試験は、読み取りの環境としては良好な環境である)、合格ラインを30%に設定している。
【0034】
【表1】

【0035】
(比較例1)
直線状に物体を移動させるベルトコンベアの横に、ベルトコンベアに載せた物体に「ベルトコンベアの進行方向に直交する方向」からインクを噴射するようにインクジェットプリンタを配置して印字装置とした。ハニカム構造体が進行する方向に対して直交する方向における、インクジェットプリンタの印字ヘッドとハニカム構造体との距離が、23.5mmになるように印字ヘッドを配置した。得られた印字装置を用いて、上記方法により、印字試験を行った。結果を表1に示す。印字試験においては、ベルトコンベアの速度(ハニカム構造体の進行速度)を100mm/秒とした。
【0036】
図3は、実施例1の印字装置を用いて、評価1の条件で、円筒状のハニカム構造体の側面に印字したときの二次元コード301を示し、ハニカム構造体の側面を展開して平面状にしたときの状態を示す平面図である。図3及び表1に示すように、実施例1の印字装置は、二次元コードを歪みなく印字することができることがわかる。実施例1の印字装置を用いて行った、全ての印字試験(評価)において、図3に示す二次元コード301のような歪のない印字を行うことができている。そして、実施例1の印字装置を用いて印字した二次元コードは歪が無いため、表1に示しように読取不良も発生していない。尚、表1において、印字の縦方向長さ(中央部)と、印字の縦方向長さ(端部)とが同じ値の場合、二次元コードは歪んでおらず、印字の縦方向長さ(中央部)より、印字の縦方向長さ(端部)が大きな値である場合、二次元コードは歪んでいる。
【0037】
図4は、比較例1の印字装置を用いて、評価17の条件で、円筒状のハニカム構造体の側面に印字したときの二次元コード302を示し、ハニカム構造体の側面を展開して平面状にしたときの状態を示す平面図である。図4及び表1に示すように、比較例1の印字装置で印字した二次元コードはいずれも歪んでいることがわかる。図4に示すように、印字の縦方向長さ(中央部)310より、印字の縦方向長さ(端部)311のほうが高くなっている。尚、比較例1の印字装置を用いても、印字幅312は、実施例1の印字装置を用いた場合と同じであり、幅方向の歪はなかった。比較例1の印字装置で円筒状のハニカム構造体に印字した場合、端面の直径が90mmのときは二次元コードの幅が18mm以上になると読み取り不良が発生し、端面の直径が80mmのときは二次元コードの幅が16mm以上になると読み取り不良が発生し、端面の直径が70mm及び60mmのときは二次元コードの幅が14mm以上になると読み取り不良が発生し、端面の直径が50mmのときは二次元コードの幅が12mm以上になると読み取り不良が発生することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の印字装置は、円筒状の物体の側面に印字するために好適に用いられる。
【符号の説明】
【0039】
1:回転テーブル、2:上面、3:位置基準、11:印字ヘッド、12:インク、13:インクジェットプリンタ、21:制御部、100:印字装置、101:ハニカム構造体(物体)、102:側面(外周面)、201:ハニカム構造体、202:側面(外周面)、211:印字ヘッド、212:インク、301:二次元コード、302:歪んだ二次元コード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字体である円筒の側面形状を側面に有する物体が載置され、載置された前記物体を前記円筒の側面形状についての中心軸を中心にして回転させる回転テーブルと、
載置された前記物体の前記円筒の側面形状に形成された側面に、前記円筒の側面形状に形成された側面との距離を一定に保った状態でインクを噴射する印字ヘッドを有するインクジェットプリンタと、
回転テーブルの回転位置に合わせて印字ヘッドからインクを噴射するように制御するための制御部とを備えた印字装置。
【請求項2】
前記円筒の側面形状を側面に有する物体が、円筒状の物体である請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
被印字体である円筒状の物体の側面に印字するときの印字範囲が、被印字体である円筒の側面形状を側面に有する物体の外周方向に、円筒状の物体の中心軸に直交する断面の直径の0.2倍以上である請求項1又は2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記回転テーブルが、昇降機能を有する請求項1〜3のいずれかに記載の印字装置。
【請求項5】
前記印字ヘッドが、前後に位置調整できるものである請求項1〜4のいずれかに記載の印字装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の印字装置を用いて、円筒の側面形状を側面に有する物体の、前記円筒の側面形状に形成された側面に印字を行う印字方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−221111(P2010−221111A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70352(P2009−70352)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】