説明

厚さ連続測定器、厚さ連続測定装置及び厚さ連続測定方法

【課題】 厚さ1mm以下の長尺シートの厚さを連続的に測定する。
【解決手段】 装置基体10と、上下方向に揺動自在に前記基体10に取付けられた回転自在の上部球26と、上部球26の上方に取付けられ前記上部球26の上下揺動に連動して上下揺動するレーザー光反射体16と、前記レーザー光反射体16の上方において装置基体10に固定されたレーザー厚さ測定器14とからなる上部球支持装置6と、前記上部球支持装置6の上部球26と対向して上部球26の下方に回転自在に下部球32を配設してなる下部球支持装置8とからなる連続走行シートの厚さ連続測定器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート長尺体の厚さ連続測定器、厚さ連続測定装置及び厚さ連続測定方法に関する。特に、本測定器、測定装置及び測定方法は、厚さが1mm以下の炭素繊維シートの厚さの連続測定に適する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート長尺体の厚さの測定は、ダイヤルシックネスゲージ等の機械的な厚さ測定器を用いる用手法により、行っている(非特許文献1)。
【0003】
機械的な厚さ測定器を用いるシート厚さ測定は、信頼性、耐久性の面で優れている。しかし、連続的に測定できないため、測定に手間が掛かり、検査効率が悪くなる。
【0004】
機械的な厚さ測定器を用いない厚さの測定方法として、レーザー測定法がある(特許文献1)。このレーザー測定法による厚さの測定は比較的簡便な方法であるため、各方面で応用されている。
【0005】
しかし、このレーザー測定法は、炭素繊維シートのように黒色若しくは濃色のシートである場合、レーザー光の反射効率が悪くなり、厚さ測定が困難になる。また、表面の凹凸があるシートの場合、レーザー光が乱反射し、計測が困難になる。
【0006】
比較的厚い炭素繊維フェルトの厚さを測定する場合は、図6に示すようにフェルト42上面に沿って平板44を摺動させ、平板の上下動をレーザー厚さ測定装置46の放射するレーザー光48で測定する厚み測定装置が提案されている(特許文献2)。しかし、炭素繊維シートのような1mm程度の薄いシート厚さを連続的に測定する場合に前記平板を用いる測定装置を使用すると、図7に示すように平板54a、54bの動きがシート52の上面に存在する皺、うねりなどの影響を受け、レーザーの反射光56a、56bの反射方向が変動し、その結果測定精度が悪くなる。更に、シート上面を摺動する平板54a、54bがシート52に擦り傷をつける問題もある。
【0007】
比較的厚い炭素繊維フェルトの厚さを測定する場合、平板の上下動による厚さ測定ではなく、ローラーの上下動による厚さ測定も提案されている(特許文献3)。しかし、特許文献3は、下部ローラーによってフェルトを持ち上げてフェルト上面に存在する皺、うねりなどを均してから厚さを測定するものであり、柔軟なフェルトには、ある程度の測定精度は得られたものの、炭素繊維ペーパーなどの皺、うねりなどを均すことが容易ではないシートには、それ程の測定精度は得られなかった。
【0008】
その他、光を用いる非接触式の厚み測定装置に関する特許出願もある(特許文献4)。この場合、検体装置本体以外の付帯設備が大規模になるため、かなりの設置スペースを必要とする。更に、織物などのように表面に凹凸のあるシートや、孔のあるシート、黒色のシート等を測定する場合、光を用いる非接触式の測定方法の場合は、光が乱反射するため、測定誤差が生じ易い。加えて、測定精度を維持するためのメンテナンスコストが高くなり、コスト上も不利である。
【非特許文献1】JIS L 1086-1983 (6.試験方法 6.4厚さ)
【特許文献1】特開平5−209723号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−325088号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−148816号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2001−245989号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、厚さが1mm程度の薄いシートの厚さを連続的に測定する方法について、種々検討してきた。その結果、シートの上面に倣って上下方向に揺動する車輪と、前記揺動する車輪と連動して上下方向に揺動するレーザー反射体と、レーザー厚さ測定器とからなり、レーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離を前記レーザー厚さ測定器により連続的に測定することで、シートの厚さを連続的に測定する方法を見出し、先に出願した(特願2008−265319)。
【0010】
特願2008−265319の測定方法は、特開2004−325088の測定方法よりも、シートの上面に存在する皺、うねりなどの影響を受けにくいものであった。しかし、特願2008−265319の測定方法を以てしても、厚さが1mm以下の薄いシートであって、且つ、シートが進行方向に対して、若干蛇行する現象(目曲がり)で幅方向にうねりなどが発生するシートについて、幅方向のうねりなどの影響を除去し、精度良く厚みを連続的に測定するまでには至らなかった。
【0011】
そこで、厚さが1mm以下の薄いシートで、且つ、シートの幅方向に対して、若干のうねり等のある(目曲がり等のある)シート、例えば抄紙したシート、炭素繊維織物、プリプレグなどに対しても、安定した精度で厚さを連続的に測定する方法について、本発明者等は更に種々検討を重ねた。その結果、球をシート上面及び下面に配設し、シートを挟みこむように点接触でシートを保持し、シートを移動させながら厚みを連続的に測定することにより、上記問題が解決できることを知得した。この方法によれば、表面に凹凸がある薄いシートであって、且つ、目曲がり等によって、幅方向にうねり等があるシートの場合でも、精度良く、しかもシートを傷つけることなくシートの厚さを連続的に測定できる。
【0012】
本発明は上記知見に基づき完成するに至った。従って、本発明は、厚さが1mm以下の厚みのシートで且つ、幅方向に若干のうねりや皺等がある(目曲がり等のある)場合にも厚さを正確に測定可能なシート、好ましくは抄紙した炭素繊維シート(炭素繊維ペーパー)、炭素繊維織物、炭素繊維プリプレグ等、特に炭素繊維ペーパーの厚み測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載のものである。
【0014】
〔1〕 装置基体と、上下方向に揺動自在に前記基体に取付けられた回転自在の上部球と、上部球の上方に取付けられ前記上部球の上下揺動に連動して上下揺動するレーザー光反射体と、前記レーザー光反射体の上方において装置基体に固定されたレーザー厚さ測定器とからなる上部球支持装置と、前記上部球支持装置の上部球と対向して上部球の下方に回転自在に配設する下部球を有する下部球支持装置とからなる連続走行シートの厚さ連続測定器。
【0015】
〔2〕 連続走行シートの走行方向に沿って所定間隔離れて配設する1対の〔1〕に記載の厚さ連続測定器と、前記1対の厚さ連続測定器の有する各レーザー厚さ測定器の測定データを取り込み演算処理する演算部とを有する連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【0016】
〔3〕 上部球の直径が、同一である〔2〕に記載の連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【0017】
〔4〕 連続走行シートの下流側の厚さ連続測定器の上部球の直径よりも、上流側の厚さ連続測定器の上部球の直径が大きい〔2〕に記載の連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【0018】
〔5〕 連続走行シートの下流側の厚さ連続測定器の上部球の直径よりも、上流側の厚さ連続測定器の上部球の直径が小さい〔2〕に記載の連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【0019】
〔6〕 連続走行シートの厚さが0.1〜1mmである〔1〕に記載の連続走行シートの厚さ連続測定器。
【0020】
〔7〕 〔1〕に記載の厚さ連続測定器の上部球と下部球との間に連続走行するシートを挟み、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に前記上部球を揺動させると共に、前記揺動に連動して変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定する連続走行シートの厚さ連続測定方法。
【0021】
〔8〕 〔2〕に記載の厚さ連続測定装置における各厚さ連続測定器の上部球と下部球との間に連続走行するシートを挟み、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に前記上部球を揺動させると共に、前記揺動に連動して変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定し、1対の厚さ連続測定器から送出する測定データを演算部で演算処理して1対の測定データの平均値を算出し、その平均値を演算処理後の厚さデータとする連続走行シートの厚さ連続測定方法。
【0022】
〔9〕 〔2〕に記載の厚さ連続測定装置における各厚さ連続測定器の上部球と下部球との間に連続走行するシートを挟み、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に前記上部球を揺動させると共に、前記揺動に連動して変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定し、1対の厚さ連続測定器から送出する測定データの差異が所定割合以上の場合、演算部で異常値として削除する演算処理をして演算処理後の厚さデータとする連続走行シートの厚さ連続測定方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の厚さ連続測定器は、走行するシート長尺体の上面及び下面を上部球と下部球とで挟み込みながら、シート長尺体の表面をなぞらせているので、広い面積ではなく、点の厚さが正確に測定できる。
【0024】
また、本発明の厚さ連続測定装置は、シート長尺体の進行方向に対して所定の間隔離して2つの厚さ連続測定器を配置しているので、2つの厚さ連続測定器の測定値間の差異が大きい場合に、これを異常値として検出できる機構を付与することができる。この場合は、厚さ計算時に異常値を削除する補正ができる。その結果、従来の厚さ連続測定装置でこれまで検出していた、炭素繊維シートの剛直性から発生するシートの跳ね返りなどで生ずる誤差を、異常値として処理することができ、各点の厚さを更に正確に測定できる。
【0025】
更に、走行するシート長尺体の進行方向に対して2つの厚さ連続測定器を配置し、上流側上部球の球径を、下流側の上部球の球径よりも大きくする場合は、上流側の上部球が通過した時に発生する跳ね返りを、上部球の自重で抑制できる。なお、若干シートが跳ね返ったとしても、下流側上部球が正確に厚さを測定でき、測定誤差を補正できるため、測定速度を大幅に向上できる。
【0026】
また更に、走行するシート長尺体の進行方向に対して上流側上部球の球径を、下流側の上部球の球径よりも小さくする場合は、上流側上部球が通過する時に発生する跳ね返りを、最小限に抑制できる。また、若干シートが跳ね返ったとしても、下流側上部球の自重により、シートの跳ね返りを、効率よく抑制できるため、厚さの測定誤差を大幅に小さくできる。
【0027】
本発明の厚さの連続測定器は、レーザー光反射体で反射されるレーザー光を測定するので、シート長尺体の色が黒色若しくは濃色である場合でも、シート長尺体の表面にレーザー光を乱反射させる凹凸があっても、正確に厚さの測定ができる。
【0028】
更に、本発明の厚さ連続測定器は、上部球支持装置に配設した上部球及び下部球支持装置に配設した下部球で、シート長尺体の上面及び下面を挟み込み、各球が転がりながらシートを移動させるので、シート長尺体を破損する虞が少ない。
【0029】
また、レーザー光反射体上面を白色に形成する場合は、レーザー光の乱反射を防止でき、測定精度を向上できる。
【0030】
また更に、本発明は、実施形態を厚み測定装置及びその測定方法としているが、異物がシート長尺体上に付着している場合には、厚みの異常値として測定検出が可能であるので、異物検出装置としての利用も兼ねることができる。従来の装置及び方法と比べると、異常値の発生率が格段に小さいため、精度よく、異物を検出できる。
【0031】
また更に、本発明における厚さ連続測定装置は、上部球支持装置に配設した上部球及び下部球支持装置に配設した下部球で、シート長尺体の上面及び下面を挟み込み、各球が転がりながら移動する機構を有するため、測定装置固定部材を個々の測定器に対して個別に設置できる。また、取付け位置の自由度も大きいため、個々の入射角の異なる、繊維が束ねられたストランドやストランドが束ねられたパス等の厚さ連続測定装置及び異物発見装置としても応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の厚さ連続測定装置の使用例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の厚さ連続測定器の一例を示す部分拡大図で、(A)は上面図、(B)は側面図である。
【図3】本発明の厚さ連続測定器の他の例を示す部分拡大側面図である。
【図4】本発明の厚さ連続測定装置の演算部を含む構成を示す説明図である。
【図5】本発明の厚さ連続測定器における上部球支持装置及び下部球支持装置とシート長尺体との係合状態を示す、シート走行の上流側から観察した説明図である。
【図6】従来の厚さ測定装置の構成を示す説明図である。
【図7】比較例2の平板とシート長尺体との係合状態を示す説明図である。
【図8】比較例3の車輪とシート長尺体との係合状態を示す説明図である。
【図9】ストランドで形成された長尺シートに対して、本発明の厚さ連続測定装置を適用した場合の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の厚さ連続測定装置の一例について図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の厚さ連続測定装置の一例を示す概略斜視図である。
【0035】
図1中、2は厚さ0.1mm〜1mmの長尺シートで、矢印Xの方向に所定速度で搬送されている。前記シート2の上方には、シート2を跨いで、2つのゲート状の測定装置固定部材(上流側4j、下流側4k)が、所定の距離(本例に於いては30cm、好ましくは20〜40cm)離れて設けられている。測定装置固定部材(上流側4j、下流側4k)における両側の柱(上流側3ja、3jb、下流側3ka、3kb)の上端側には支持部材(上流側5j、下流側5k)が架け渡され、支持部材(上流側5j、下流側5k)の下端側には、所定数(本例に於いては、測定装置固定部材1つにつき各3箇)の上部球支持装置(上流側6j、下流側6k)が取付けられている。
【0036】
長尺シート2の下方には、6箇の上部球支持装置(上流側6j、下流側6k)の下方に、それぞれ、下部球支持装置(上流側8j、下流側8k)が配設されている。長尺シート2は、前記上部球支持装置と下部球支持装置とに挟まれている。
【0037】
図2は、厚さ連続測定器の部分拡大図の一例を示す。6箇の上部球支持装置及び6箇の下部球支持装置は何れも、後述する球の直径、質量等を除けば実質的に同一の構造をしているので、図2においては、6箇の上部球支持装置、下部球支持装置のうち任意の上部球支持装置、下部球支持装置について説明する。上部球支持装置及び下部球支持装置を符号を付けて表示する場合は、添字の符号j、kを省略して、上部球支持装置6及び下部球支持装置8と表示する。同様に、上部球支持装置6及び下部球支持装置8を構成する各部材、並びに、測定装置固定部材4の符号についても、添字の符号j、kを省略して表示する。
【0038】
図2(B)中、ゲート状の測定装置固定部材における支持部材5の下端側には、平板状の装置基体10が取付けられている。
【0039】
装置基体10の上端側には、水平方向に突出してレーザー厚さ測定器取付け部材12が取付けられ、先端側には、レーザー厚さ測定器14が取付けられている。このレーザー厚さ測定器14のレーザー投射面15から、レーザー光がほぼ垂直方向に投射され、後述するレーザー光反射体16を照射するように取付けられている。
【0040】
前記レーザー厚さ測定器取付け部材12よりも下方において、装置基体10には、Z字状の可動部材取付け腕18が、その一端側18aで固定され、その他端側18bは下方に向けて垂下されている。
【0041】
20は可動部材で、前記可動部材取付け腕18の他端側18bに上下方向に摺動自在に取付けられている。
【0042】
前記可動部材20の上部側は水平方向に突出された上部球支持部22が形成されており、この上部球支持部22の上面にはレーザー反射体16が、レーザー投射面15と平行、かつ互いに対向して形成されている。
【0043】
レーザー反射体16及び後述する上部球26は、白色に形成されていることが好ましい。後述する下部球32は白色でなくとも良いが、より好ましくは白色がよい。
【0044】
これらの白度はJIS Z 8729に規定するL*a*b*表色系でL*=60以上の白色系が好ましい。
【0045】
前記上部球支持部22の下面には、上部球支持椀24が取付けられている。この上部球支持椀24の下部は、上部球26の1/2以上を覆うように部分球状の凹部24aが、開口部を下方に向けて形成され、この凹部24aには、上部球26が、全周方向に沿って回転自在に取付けられている。なお、上部球支持椀24が上部球26を覆う凹部24aが、上部球26の1/2より小さい場合、上部球を安定的に固定できず、上部球が上部球支持椀から外れやすくなるため、上部球支持椀24が上部球26を覆う凹部24aが、上部球26の1/2以上を覆うように形成することが好ましい。図2は、その例を示している。
【0046】
なお、図2(A)において、前記上部球支持部22の幅α及び上部球支持椀24の直径βの関係は、α>β、α=β、α<βのいずれでも構わない。図2の例は、α<βのものを示す。
【0047】
シート長尺体2の下方には、下部球支持装置8が設けられれている。互いに対向する下部球支持装置8の下部球32と、上部球支持装置6の上部球26とは1対になり、上部球26が重力の作用を利用して下方向にシート長尺体2を挟むように設けられれている。この下部球支持装置8の上部には、下部球支持部28が形成されている。この下部球支持部28の上面には、下部球支持椀30が取付けられている。この下部球支持椀30の上部は、下部球32の1/2以上を覆うように凹部30aが、その開口部を下方に向けて形成され、この凹部30aには、球32が、全周方向に沿って回転自在に収納されている。
【0048】
即ち、シート長尺体2の下方の球支持椀30の凹部30aは、下部球32の1/2以上を覆うように形成することが好ましい。下部球支持椀30が球32を覆う凹部30aが、下部球32の1/2より小さい場合は、下部球が下部球支持椀から外れやすくなる。
【0049】
上部球26と上部球支持椀24の凹部24aとの隙間には、摩擦低減用にボールベアリング34を配設し、上部球が円滑に回転できるようにすることが好ましい。同様に、下部球支持装置8における下部球32と下部球支持椀30の凹部30aとの隙間にも、摩擦低減用にボールベアリング36を配設し、下部球が円滑に回転できるようにすることが好ましい。
【0050】
なお、下部球支持椀30は、上部球支持椀24の下方に固定する必要がある。固定方法としては、前述のゲート状の測定装置固定部材4に固定することが好ましい。具体的には、図3のように、シート長尺体2の下方において、測定装置固定部材4の両側柱間に支持部材38を架け渡し、この支持部材38に下部球支持部40を固定しても良い。
【0051】
また、図2のように、測定装置固定部材4とは別の土台部から、上部球26と対向して上部球26の下方に下部球32が来るように下部球支持部28及び下部球支持椀30を配設して固定しても良い。
【0052】
以上の構成からなる本発明の厚さの連続測定器は、図5に示すように、紙面上方から紙面下方に走行するシート長尺体2の上面及び下面をそれぞれ上部球[26a(シート走行方向の左側)、26b(シート走行方向の右側)]及び下部球[32a(シート走行方向の左側)、32b(シート走行方向の右側)]に接触させてシート長尺体2を挟み込みながら、シート長尺体2の表面をなぞらせ、上部球26a、26bの上下動を起こさせている。
【0053】
上部球26a及び26bの上方それぞれに配設したレーザー厚さ測定器のレーザー光38a及び38bを用いて、レーザー投射面15a及び15bと、前記上部球26a及び26bの上下動に連動して上下動するレーザー反射体16a及び16bとの距離を測定することにより、シート長尺体2の厚さが測定される。
【0054】
特開2004−325088の厚さの連続測定装置の場合は、図7に示すように、シートと接触している面積が大きいので、シート長尺体52と平板54a、54bとの間に隙間Aができやすく、異常値が発生しやすいものである。また更に、シート長尺体の凹凸に応じて平板の傾斜が変動するので、レーザー光58a、58bの反射方向が変動し、正確な厚さの測定ができがたい。
【0055】
これに対し、本発明では、図5に示すように、走行するシート長尺体2の上面及び下面をそれぞれ上部球(26a、26b)及び下部球(32a、32b)に接触させてシート長尺体2を挟み込みながら、シート長尺体2の表面をなぞらせ、上部球26a、26bの上下動を測定値に変換しているので、シートと接触している面積は特開2004−325088と比べて、非常に小さい。
【0056】
更に具体的には、シート長尺体2がシート走行方向に対して、若干蛇行する現象(目曲がり)で発生する幅方向のうねり等があるような場合は、上部球26bのように、上部球26bがなぞるシート長尺体62の上面が水平面の場合ばかりでなく、上部球26aのように、上部球26aがなぞるシート長尺体2の上面が斜面の場合もかなり多い。
【0057】
しかし、上部球26a、26bがなぞるシート長尺体2の上面が、水平面、斜面の如何に拘らず、検知体[上部球(26a、26b)及び下部球(32a、32b)]とシート長尺体2との間の隙間が発生しにくく、結果として、各点の厚さを正確に測定できる。即ち、本発明によれば、検知体とシート長尺体との接触は、二つの球による点接触であるため、シート長尺体の凹凸の影響、特にシート長尺体の幅方向の凹凸の影響を受けにくい。そのため、異常値と思われるバラツキが少なくなり、結果として標準偏差が小さくなる。
【0058】
特願2008−265319の測定方法は、特開2004−325088の測定方法よりも、シートの上面に存在する皺、うねりなどの影響を受けにくいものである。しかし、特願2008−265319の測定方法を以てしても、シートが進行方向に対して、若干蛇行する現象(目曲がり)で発生する幅方向のうねりなどの影響を除去し、精度良く厚みを連続的に測定するまでには至らない。
【0059】
これに対し、本発明の厚さ連続測定器によれば、厚さが1mm程度の薄いシートで、且つ、シートの幅方向に対して、若干のうねりや皺等のある(目曲がり等のある)シート長尺体などに対しても、安定した精度で厚さを連続的に測定することができる。即ち、上部球及び下部球をシート上面及び下面に配設し、シートを挟みこむように点接触で保持し、シートを移動させながら厚みを連続的に測定することができる。この方法によれば、表面に凹凸がある薄いシートで且つ、目曲がり等によって、幅方向にうねりや皺等がある場合でも精度良く、しかもシートを傷つけることなくシートの厚さを連続的に測定できる。
【0060】
本発明の連続走行シートの厚さ連続測定装置は、図4に示すように、連続走行シート2の走行方向Xに沿って所定間隔離れて配設する1対の上記厚さ連続測定器(上流側7j、下流側7k)と、この1対の厚さ連続測定器(上流側7j、下流側7k)におけるレーザー厚さ測定器から送出する測定データを演算処理する演算部9とを有する。ここで用いる厚さ連続測定器は、上記測定器である。
【0061】
本発明の連続走行シートの厚さ連続測定方法は、上記厚さ連続測定装置の上流側及び下流側で対をなす厚さ連続測定器(上流側7j、下流側7k)それぞれにおいて、上部球と下部球との間に連続走行するシート2を挟み、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に前記上部球を揺動させると共に、前記揺動に連動して変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に又は間歇的に測定し、1対の厚さ連続測定器(上流側7j、下流側7k)それぞれから送出する測定データを演算部9で演算処理して不図示の表示部に表示する方法である。
【0062】
演算内容としては、1対の厚さ連続測定器におけるそれぞれの測定データの平均値を算出し、その平均値を演算処理後の補正厚さデータとして出力するものがある。
【0063】
以下、この方法を更に詳述する。
【0064】
前述の図1に示す本発明の一例の厚さ連続測定装置では、測定装置固定部材1つにつき3つの上部球支持装置、下部球支持装置を取付けている。ここで、3つの上部球支持装置、下部球支持装置を取付けた1つの測定装置固定部材を1ユニットとすると、図1に示す厚さ連続測定装置は、前記ユニットをシート長尺体2の進行方向に対して2ユニット取り付けた厚さ連続測定装置となる。
【0065】
ユニット間の距離は、シートの材質により任意に調整できる。この2ユニットにおけるそれぞれの測定装置間で測定した厚みの差異を、うねり又は皺として演算装置等を取付けた演算部で補正し、補正後の厚みが出力される。演算部での補正は、上述のように、2ユニット間で対をなす厚さ連続測定器それぞれから送出する測定データを演算部で演算処理して1対の測定データの平均値を算出し、その平均値を演算処理後の補正厚さデータとすることによって行われる。
【0066】
炭素繊維シートの場合、弾性率が高いため、他の繊維に比べ、剛軟度が高く、剛直性がある。この炭素繊維シートに、うねりや皺がある場合、上部球が通過した時に、跳ね返りやすく、これが誤差の原因になる。
【0067】
対策として、上部球の質量を増加させ、跳ね返りを防止する方法を試みても、シートが沈み込んでしまい、やはり誤差の原因になる。
【0068】
これに対し、上述の、連続走行シートの走行方向に沿って所定間隔離れて配設する1対の厚さ連続測定器と、前記厚さ連続測定器のレーザー厚さ測定器の測定データを演算処理する演算部とを有する連続走行シートの厚さ連続測定装置を用い、1対の上部球を定点通過させ、この定点における測定値を補正することによって、うねり又は皺による誤差を小さく出来る。
【0069】
また、他の演算内容としては、1対の厚さ連続測定器間で検出する測定値の差異が所定割合(例えば10%)以上の場合は、異常値として削除することにより、厚さ計算時に異常値を削除する補正をできるようにしても良い。この場合、従来の厚さ連続測定装置でこれまで検出していた、炭素繊維シートの剛直性から発生するシートの跳ね返りなどで生ずる誤差を、本発明の厚さ連続測定装置が検出したとしても、この検出誤差は異常値として処理することができるので、シート厚さの測定誤差を更に少なくできる。
【0070】
なお、3ユニット以上を有する厚さ連続測定装置において、3つ以上の上部球を定点通過させ、この定点における3つ以上の測定値についての平均値を算出し、その平均値を演算処理後の補正厚さデータとすることによって、うねり又は皺による誤差を更に小さく出来る。また、ユニットの数を更に多くすることによって、うねり又は皺による誤差を限りなく小さく出来る。
【0071】
図1に示す厚さ連続測定装置において、ユニット間の上部球支持装置に配設した球の直径(球径)は、連続走行シートの進行方向に対して上流側と下流側とで同一であっても良いし、上流側の球径が下流側の球径よりも大きいものであっても良いし、上流側の球径が下流側の球径よりも小さいものであっても良いものである。
【0072】
上流側の球径が下流側の球径よりも大きいものである場合、上流側の上部球は球径が大きいのに伴って重いので、通過した時に発生するシートの跳ね返りを、上流側の上部球の自重で抑制する効果がある。このシート跳ね返り抑制効果は、測定速度を大幅に上げた場合にも有効である。なお、上流側の上部球が通過した時に若干シートが跳ね返ったとしても、下流側の上部球は球径が小さいのに伴って軽いので、上流側の上部球の上下動に対する追従性が優れている。そのため、上流側の球径が下流側の球径よりも大きいものである場合、シート厚さの測定誤差を少なくできる。
【0073】
その結果、本発明は、特開2004−325088、特願2008−265319による測定よりも、測定速度を大幅に上げること、具体的にはシートの搬送速度を大幅に上げることができるため、所定の長さのシートについて厚さの測定を行う場合、測定時間の短縮が可能となる。
【0074】
上述のように、上流側の上部球の球径は、下流側の上部球の球径よりも小さくしても良い。この場合、上流側の上部球が通過した時に若干シートが跳ね返ったとしても、下流側の上部球は球径が大きいのに伴って重いので、シートの跳ね返りを効率的に押さえることができる。そのため、上流側の球径が下流側の球径よりも大きいものである場合、シート厚さの測定誤差を少なくでき、シート厚さの測定精度を上げることができる。
【0075】
上部球について、球径は20〜50mm(質量は10〜40g)が好ましく、より好ましくは球径は25〜45mm(質量は20〜35g)の範囲である。
【0076】
球径が20mm未満(質量が10g未満)の場合は、軽すぎてシートの跳ね返りを吸収できず、厚みの測定誤差が大きくなる。一方、球径が50mmを超える(質量が40gを超える)場合は、重すぎて、シートを押さえつけてしまうため、シートに測定後のスジのような跡ができてしまう。また、上部球が大きくなりすぎてしまい、測定装置が大型になってしまう。
【0077】
下部球について、球径、質量は特に限定されるものではないが、その下部球と対をなす上部球と同じ球径、質量にすることが、正確な厚さ測定のためには好ましいものである。
【0078】
レーザー厚さ測定器14は市販の測定装置を利用できる。
【0079】
上記厚さの連続測定器6を用いて、シート長尺体2の厚さの連続測定を行う本発明の方法の一例を、図2を用いて以下説明する。
【0080】
本発明で測定されるシート長尺体の厚さは、特に制限がない。しかし、破損しやすい1mm以下の厚みのシート長尺体の厚さの測定に特に適している。特に、0.8〜0.1mmの厚さのシート長尺体の測定に適しており、特に、シートが進行方向に対して、若干蛇行する現象(目曲がり)で発生する幅方向のうねりがあるようなシート長尺体の厚さ測定に適している。
【0081】
先ず、シート長尺体2が上部球26と下部球32との間に挿入されていない状態の時のレーザー厚さ測定器14の値を読み取り、この値を基準値とする。次に、図2に示されるように、ベルトコンベヤ等の運搬手段(不図示)により搬送されるシート長尺体2は、上部球支持装置6の上部球26と、下部球支持装置8の下部球32との間に挿入される。上部球26は、シート長尺体2の移動に対応してシート長尺体2の上面の形状に倣って微少に上下しながら回転する。この際、可動部材取付け腕18と、上部球支持部22とは、摺動自在に取付けられているので、上部球は自由に上下できる。
【0082】
上部球26の上下運動はレーザー反射体16の上下動になる。レーザー厚さ測定器14はこの上下動を読取り、この値を測定値とする。前記基準値から測定値を減算し、この値をシート長尺体2の厚さとする。なお、厚さの連続測定器6に演算部を設けることもできる。この場合は、演算部に測定値を送出して、ここでシート厚さを演算し、不図示の表示部に表示する。この時、より好ましくは、上部球26の下方に配設される、下部球32の下部球支持部28及び/又は下部球支持椀30に、幅方向のうねり等による微振動を吸収できるように、スプリング等による緩衝機構を持たせ、この下部球支持部28及び/又は下部球支持椀30が上下動を検出装置で検出し、この検出値を、厚み算出時に相殺できるように演算部に送出して、表示部に表示させてやると、更に精度よく、連続的に厚み測定ができる。
【0083】
なお、本発明における厚さ連続測定装置は、前述したように、図9に示すような個々の入射角の異なる、繊維が束ねられたストランドで形成された長尺シート等の厚さ連続測定装置及び異物発見装置にも応用できる。
【0084】
図9中、82は繊維が束ねられたストランドで、矢印Xの方向に所定速度で長尺シートを形成して搬送されている。前記ストランド82の上方には、ストランド82を跨いで、2つのゲート状の測定装置固定部材(上流側84j、下流側84k)が設けられている。
【0085】
測定装置固定部材(上流側84j、下流側84k)における両側の柱(上流側83ja、83jb、下流側83ka、83kb)の上端側には支持部材(上流側85j、下流側85k)が架け渡され、支持部材(上流側85j、下流側85k)の下端側には、所定数(本例に於いては、測定装置固定部材1つにつき各3箇)の上部球支持装置(上流側86j、下流側86k)が取付けられている。
【0086】
長尺シート2の下方には、6箇の上部球支持装置(上流側6j、下流側6k)の下方に、それぞれ、下部球支持装置(上流側8j、下流側8k)が配設されている。長尺シート2は、前記上部球支持装置と下部球支持装置とに挟まれている。
【0087】
ストランド82の下方には、6箇の上部球支持装置(上流側86j、下流側86k)の下方に、それぞれ、下部球支持装置(上流側88j、下流側88k)がストランド82を挟んで設けられている。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0089】
実施例1
図1及び2に示す厚さ連続測定装置を製造し、炭素繊維シート[弾性率235GPa(24tf/mm2)、目付:150m2/gの繊維長6mmの炭素繊維を一般的な方法で抄紙をしたシート長尺体]の厚さを測定した。上部及び下部球支持装置の球は、白色の合成樹脂製で、上流側ユニットが球径40mm、下流側ユニットが球径30mm、質量は、上流側ユニットの球が30g、下流側ユニットの球が25gであった。
【0090】
レーザー投射面15とレーザー反射体16との距離は30mmであった。レーザー厚さ測定器14は、キーエンス社製CCDレーザー変位計(LK−G30)を用いた。また、図1に示すように、3つの上部球支持装置-下部球支持装置を取付けた1つの測定装置固定部材を1ユニットとし、このユニットをシート長尺体2の進行方向に対して上流側ユニット、下流側ユニットとして2ユニット取り付けて厚さ連続測定装置を構成した。ユニット間の距離は30cmとした。
【0091】
厚さ連続測定装置の厚さ出力部に、ユニット間の厚さの差異が10%以上の場合は、異常値として検出できる機構を付与し、厚さ計算時に補正できるようにした。
【0092】
なお、上部球支持装置6における球26と球支持椀24の凹部24aとの隙間には、摩擦低減用にボールベアリング34を配設し、球が潤滑に回転できるようにした。同様に、下部球支持装置8における球32と球支持椀30の凹部30aとの隙間にも、摩擦低減用にボールベアリング36を配設し、球が潤滑に回転できるようにした。
【0093】
以上の装置を用いて、厚さ約0.3mmの炭素繊維シートを0.05m/秒で搬送した。厚さの測定は、6秒間隔で測定回数30回行った。測定結果を表1に記載した。
【0094】
実施例2
厚さ連続測定装置に用いた白色の合成樹脂製の球について、上流側ユニットを球径30mm、質量25g、下流側ユニットを球径40mm、質量30gとし、炭素繊維シートの搬送速度を0.03m/秒とし、厚さの測定を6秒間隔で測定回数50回行った以外は、実施例1と同様に、実施例1で測定したシート長尺体の厚さを測定した。
【0095】
比較例1
機械的厚さ測定装置(ミツトヨダイヤルシックネスゲージNo.2050F)を用いて、JIS L 1086−1983に基づいた用手法で、0.3m間隔で、実施例1で測定したシート長尺体の厚さを50回測定した。結果を表1に示した。
【0096】
比較例2
特開2004−325088に示される装置を用いて実施例1で測定したシート長尺体の厚さを測定した。この測定装置は、図6に示すように、シート長尺体42の上面を舟形の反射体44を摺動させ、舟形の反射体44の上下動を反射体の上方に配設したレーザー光48を用いる厚さ測定装置46で測定することにより、シート長尺体の厚さを測定するものである。反射体の摺動面の寸法は40mm×120mmであった。厚さの測定は、6秒間隔で測定回数50回行った。測定結果を表1に記載した。
【0097】
比較例3
特願2008−265319号に示される厚さ連続測定装置に下部車輪支持装置を取付けた改良測定装置を製造した。この改良測定装置は、図8に示すように、紙面上方から紙面下方に走行するシート長尺体62の上面を車輪64a(シート走行方向の左側)、64b(シート走行方向の右側)及び64c(不図示。添字cが付された部材は、構造、機能とも添字a、bが付された部材と基本的に同じであり、以下、添字cが付された部材については説明を省略)、下面を車輪66a(シート走行方向の左側)及び66b(シート走行方向の右側)を摺動させ、車輪64a及び64bの上下動を車輪64a及び64bの上方それぞれに配設したレーザー光72a及び72bを用いてレーザー投射面70a(シート走行方向の左側)及び70b(シート走行方向の右側)とレーザー反射体68a(シート走行方向の左側)及び68b(シート走行方向の右側)とで測定することにより、シート長尺体62の厚さを測定するものである。
【0098】
車輪64a、64b、66a、66bは白色の合成樹脂製で、車輪の径40mm、車輪の厚み2mmで、質量は30gであった。レーザー投射面70aとレーザー反射体68aとの距離、及び、レーザー投射面70bとレーザー反射体68bとの距離は何れもシート長尺体62を挟み込む前の距離で30mmであった。レーザー厚さ測定器は、キーエンス社製CCDレーザー変位計(LK−G30)を用いた。厚さ約0.3mmの炭素繊維シートを0.03m/秒で搬送した。厚さの測定は、6秒間隔で測定回数50回行った。測定結果を表1に記載した。
【0099】
【表1】

【0100】
表1における実施例1のデータに示すように、走行するシート長尺体の進行方向に対して上流側のユニットにおける上部及び下部球支持装置の球径を40mm(質量30g)と、下流側上部及び下部球支持装置の球径30mm(質量25g)よりも大きくしており、上流側の上部球が通過する時に発生する跳ね返りを、上流側の上部球の自重で抑制する効果があり、若干シートが跳ね返ったとしても、下流側の上部球の追従性が優れ、誤差を標準偏差で0.018mmと少なくでき、更には測定時間3分と測定速度を大幅に向上できた。
【0101】
表1における実施例2のデータに示すように、走行するシート長尺体の進行方向に対して上流側のユニットにおける厚さ連続測定装装置6jの球径を30mm(質量25g)と、下流側6kの球径40mm(質量30g)よりも小さくすることで、上流側の上部球が通過する時に発生する跳ね返りを、最小限に抑制でき、若干シートが跳ね返ったとしても、下流側の上部球の自重により、シートの跳ね返りを、効率よく抑制でき、厚さの測定誤差を標準偏差で0.009mmと大幅に小さくできた。
【0102】
なお、この厚さ連続測定装置の厚さ出力部に、ユニット間の厚さの差異が10%以上の場合は、異常値として検出できる機構を付与し、厚さ計算時に補正できるようにした。このため、比較例でこれまで検出していた、炭素繊維シートの剛直性から発生するシートの跳ね返りなどで生ずる誤差を検出し、異常値として処理することができるようになった。
【0103】
また、比較例に示す従来技術では、シートと接触している面積が大きく(比較例1、2は面接触、比較例3は線接触)、検知体とシート長尺体との間に隙間ができやすく、異常値が発生しやすかった。これに対し、実施例1、2は、シートと接触している面積が、比較例と比べて非常に小さくなるため、検知体(上部及び下部球支持装置の球)とシート長尺体との間の隙間が発生しにくく、結果として、各点の厚さを正確に測定できた。具体的には、実施例1、2は、二つの球による点接触であるため、シート長尺体の凹凸の影響、特にシート長尺体の幅方向の凹凸の影響を受けにくい。そのため、異常値と思われるバラツキが少なくなり、結果として標準偏差が小さくなった。
【0104】
表1における比較例2のデータに示すように、シート上面を平板で摺動する特開2004−325088号の場合は、平板に有限の長さがあるので、図7に示すようにシート長尺体52と平板54a、54bとの間に隙間Aができ、その結果、正確にシート長尺体の表面をなぞることができず、正確な厚さを測定できなかった。更に、シート長尺体52の凹凸に応じて平板54a、54bの傾斜が変動するので、レーザー光58a、58bの反射方向が変動し、標準偏差0.072mmと、正確な厚さの測定ができなかった。
【0105】
この欠点を補うことを目的とする特願2008−265319号の改良測定装置の場合は、比較例3に示すように、走行するシート長尺体の上面を車輪にてなぞらせ、それを上下動に変換する装置であり、シート長尺体の長さ方向については、その長さ方向の凹凸に応じて、各点の厚さをかなり正確に測定できるものである。
【0106】
しかし、図8に示すように、シート長尺体62が進行方向に対して、若干蛇行する現象(目曲がり)で発生する幅方向のうねり等があるような場合は、車輪64bのように、車輪64bがなぞるシート長尺体62の上面が水平面の場合ばかりでなく、車輪64aのように、車輪64aがなぞるシート長尺体62の上面が斜面の場合もかなり多い。
【0107】
そのため、車輪64a及び66aとシート長尺体62の間の若干の隙間によって発生する幅方向に対する高低差Bを生じ、実施例1、2に比べると、異常値を検出しやすく、結果として、標準偏差0.028mmと、厚みのバラツキが大きくなりやすく、正確さの点で、実施例1、2に劣るものであった。
【符号の説明】
【0108】
2、42、52、62 長尺シート
3ja、3jb、83ja、83jb 上流側測定装置固定部材における両側の柱
3ka、3kb、83ka、83kb 下流側測定装置固定部材における両側の柱
4、84 測定装置固定部材
4j、84j 上流側
4k、84k 下流側
5、85 測定装置固定部材の上端側に架け渡された支持部材
5j、85j 上流側
5k、85k 下流側
6、86 上部球支持装置
6j、86j 上流側
6k、86k 下流側
7j 上流側連続厚さ測定器
7k 下流側連続厚さ測定器
8、88 下部球支持装置
8j、88j 上流側
8k、88k 下流側
9 演算部
10 装置基体
12 レーザー厚さ測定器取付け部材
14 レーザー厚さ測定器
15、15a、15b、56a、56b、70a、70b レーザー投射面
16、16a、16b、68a、68b レーザー反射体
18 可動部材取付け腕
18a 一端側
18b 他端側
20 可動部材
22、28 球支持部
24、30 球支持椀
24a、30a 球支持椀の凹部
26、26a、26b 上部球
32、32a、32b 下部球
34、36 ボールベアリング
38a、38b、48、58a、58b、72a、72b レーザー光
44、54a、54b 平板
46 レーザー厚さ測定装置
64a、64b、66a、66b 車輪
82 ストランド
A 長尺シートと平板との隙間
B 高低差
X 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置基体と、上下方向に揺動自在に前記基体に取付けられた回転自在の上部球と、上部球の上方に取付けられ前記上部球の上下揺動に連動して上下揺動するレーザー光反射体と、前記レーザー光反射体の上方において装置基体に固定されたレーザー厚さ測定器とからなる上部球支持装置と、前記上部球支持装置の上部球と対向して上部球の下方に回転自在に配設する下部球を有する下部球支持装置とからなる連続走行シートの厚さ連続測定器。
【請求項2】
連続走行シートの走行方向に沿って所定間隔離れて配設する1対の請求項1に記載の厚さ連続測定器と、前記1対の厚さ連続測定器の有する各レーザー厚さ測定器の測定データを取り込み演算処理する演算部とを有する連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【請求項3】
上部球の直径が、同一である請求項2に記載の連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【請求項4】
連続走行シートの下流側の厚さ連続測定器の上部球の直径よりも、上流側の厚さ連続測定器の上部球の直径が大きい請求項2に記載の連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【請求項5】
連続走行シートの下流側の厚さ連続測定器の上部球の直径よりも、上流側の厚さ連続測定器の上部球の直径が小さい請求項2に記載の連続走行シートの厚さ連続測定装置。
【請求項6】
連続走行シートの厚さが0.1〜1mmである請求項1に記載の連続走行シートの厚さ連続測定器。
【請求項7】
請求項1に記載の厚さ連続測定器の上部球と下部球との間に連続走行するシートを挟み、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に前記上部球を揺動させると共に、前記揺動に連動して変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定する連続走行シートの厚さ連続測定方法。
【請求項8】
請求項2に記載の厚さ連続測定装置における各厚さ連続測定器の上部球と下部球との間に連続走行するシートを挟み、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に前記上部球を揺動させると共に、前記揺動に連動して変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定し、1対の厚さ連続測定器から送出する測定データを演算部で演算処理して1対の測定データの平均値を算出し、その平均値を演算処理後の厚さデータとする連続走行シートの厚さ連続測定方法。
【請求項9】
請求項2に記載の厚さ連続測定装置における各厚さ連続測定器の上部球と下部球との間に連続走行するシートを挟み、走行する前記シートの上面に倣って上下方向に前記上部球を揺動させると共に、前記揺動に連動して変化するレーザー厚さ測定器とレーザー反射体との間の距離をレーザー厚さ測定器により連続的に測定し、1対の厚さ連続測定器から送出する測定データの差異が所定割合以上の場合、演算部で異常値として削除する演算処理をして演算処理後の厚さデータとする連続走行シートの厚さ連続測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−174835(P2011−174835A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39621(P2010−39621)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】