説明

厚膜用ネガ型レジスト組成物、及びその積層体

【課題】高解像性、高アスペクト比のパターンを形成でき、かつ高感度で高い保存安定性を有する厚膜用ネガ型レジスト組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂(C)を含有してなる厚膜用ネガ型レジスト組成物を用いて、厚膜の積層体、パターン等を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高解像性、高アスペクト比でめっき耐久性に優れたパターンを形成でき、かつ高感度で液保存安定性に優れた厚膜用ネガ型レジスト組成物に関するものである。さらに詳しくは、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)部品、マイクロマシン部品、μ−TAS(マイクロトータルアナリシスシステム)部品、マイクロリアクター部品、電子部品、マイクロプローブ、微細金型等の製造の際に行われるバンプ形成、メタルポスト形成、配線形成等精密加工に適した厚膜用ネガ型レジスト組成物及びその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な機械要素、電子回路、光学素子等を集積したデバイスはMEMS又はマイクロマシンと呼ばれ、数多くの応用例が検討され、実用化もされている(非特許文献1参照)。これらのデバイスは半導体製造技術をベースにした小型の部品でありながら、複雑で高度な働きをするデバイスとして、各種センサー、プリンタヘッド、ディスクヘッド、通信用光スイッチ、バイオチップ等マイクロシステムの鍵を握る重要な部品となっている。これらの用途においては、通常の半導体製造とは異なり、高アスペクト比(アスペクト比とは構造体の高さ/幅を意味する)のパターニングが可能なレジストが必要とされている。
【0003】
一方、高アスペクト比を有する構造体の製造方法としては「LIGAプロセス」と呼ばれる厚膜用ネガ型レジスト組成物のX線リソグラフィ(非特許文献2参照)によるパターン形成法が多く採用されている。このLIGAプロセスは高価なX線装置を用いた長時間のX線照射を要するという欠点を有しており、省資源、省エネルギー、作業性向上、生産性向上等に限界がある。その為、安価で生産性の高いUV(紫外線)リソグラフィシステムの応用が注目されている。
【0004】
しかしながら、UVリソグラフィシステムにおけるジナフトキノン−ノボラック反応をベースとする従来のポジ型レジストは、50μm以上の厚膜が要求されるアプリケーションには適していない。厚膜化するに当たり限界があるのは、一般的にレジスト露光に用いられる近紫外領域波長(350〜450nm)でのジナフトキノン型(DNQ)光反応物が比較的高い光吸収を有することによる。また、DNQ型フォトレジストは、現像液中での露光領域と非露光領域との特有な溶解性の違いにより、側壁形状がストレートではなくむしろスロープ形状となる。これは、光吸収により通常フィルムのトップからボトムにかけて照射強度は減少していくが、樹脂層における光吸収があまりにも高い場合には、レジストのボトムはトップと比較して極端な露光不足となり、その為、スロープ形状又は歪んだ形状になりがちになるものと考えられる。
【0005】
更に、例えば、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、光酸発生剤及び芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートのプロピレンカーボネート溶液からなるネガ型の化学増幅型厚膜用レジスト組成物は、350〜450nmの波長域での光吸収が非常に低いことが知られている。このレジスト組成物は、種々の基板上にスピンコート又はカーテンコート等で塗布後、ベーキングにより溶剤を揮発させることで得られた100μm又はそれ以上の膜厚の固体フォトレジスト層に、コンタクト露光、プロキシミティ露光又はプロジェクション露光などの各種露光方法を用いてフォトマスクを通して近紫外光を照射することでフォトリソグラフィ加工される。続いて露光後の基板を現像液中に浸漬して非露光領域を溶解させることにより、基板上へ高解像なフォトマスクのネガイメージを形成させることができ、ポリエステルフィルム等の基材上へコートしたドライフィルムレジストのようなアプリケーションについても開示されている(特許文献1)。しかしながら、このレジスト組成物の現像には有機溶剤が用いられており、環境に対する影響などからアルカリ現像可能な高アスペクト比のパターン形成用レジスト組成物の開発が望まれている。さらに、前記厚膜用レジスト組成物は、耐薬品性に優れるため永久膜用途としては優れた性能を示す半面、剥離が困難であり鍍金の型としての使用には適さない。
【0006】
また、特許文献2及び同3には化学増幅型の厚膜用レジストとしてアルカリ水溶液で現像可能なレジスト組成物が開示されている。それらの厚膜用レジスト組成物は、高アスペクト比が達成でき、かつ耐熱、耐メッキ性等、非常に優れた特性を有しているが、硬化前のレジスト中にアルカリ可溶基とそれに反応しうる架橋基が混在しているため保存安定性が低下する傾向がある。
【0007】
また、特許文献4には後記する式(1)で示される酸発生剤類を用いたフェノール樹脂をバインダーとして用いたアルカリ現像可能なネガ型レジストについて記載されているが、厚膜用途に関する記載は無い。
【0008】
【非特許文献1】マイクロマシン、(株)産業技術サービスセンター発行(2002年)
【非特許文献2】高分子、第43巻、第564頁(1994年)
【特許文献1】米国特許第4882245号明細書
【特許文献2】日本特許第3698499号公報
【特許文献3】米国公開第20050147918号公報
【特許文献4】日本特許第3838234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂や、アルカリ可溶性エポキシ化合物を用いた従来のレジスト組成物では、含有する光酸発生剤の感度が低く、多量の開始剤を含有する必要があったり、短時間でマスクパターンを樹脂パターンに忠実に再現できないという問題点があった。とくに厚膜においては上記問題が顕著であった。またSbF6-を含有する光酸発生剤は比較的高感度ではあるが、毒性の問題から使用用途が限定されているといった問題もあった。また、アルカリ可溶性エポキシ化合物を用いた従来のレジスト組成物では硬化前のレジスト中にアルカリ可溶基とそれに反応しうる架橋基が混在しているため保存安定性が低下するといった問題もあった。本発明は上記従来の事情に鑑みてなされてものであって、その課題は、高解像性、高アスペクト比のパターンを形成でき、かつ高感度で高い保存安定性を有する厚膜用ネガ型レジスト組成物を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者等は、鋭意、検討を重ねた結果、特定の光酸発生剤とフェノール樹脂とエポキシ樹脂を含有するレジスト組成物が、厚膜域においても高解像性、高アスペクト比のパターンを形成でき、かつ高感度で液保存安定性、めっき耐性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)で表される光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂(C)を含有してなる厚膜用ネガ型レジスト組成物、
【0012】
【化1】

【0013】
(式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基又はフェニル基を、Yはフッ素原子又は塩素原子を、Zはフッ素原子、シアノ基、ニトロ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1個乃至5個の置換基を有するフェニル基を、mはYの数であり0〜3の整数を、nはZの数であり1〜4の整数をそれぞれ表し、m+n=4である。)
(2)光酸発生剤(A)が下記式(2)で表される光酸発生剤(A−1)である前項(1)に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物、
【0014】
【化2】

【0015】
(3)エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量が100〜300g/当量である前項(1)又は(2)に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物、
(4)エポキシ樹脂(C)がグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である前項(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物、
(5)エポキシ樹脂(C)の25℃における粘度が5000mPa・s以下である前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物、
(6)さらに、溶剤(D)を含有し、レジスト組成物中の固形分濃度が5〜95質量%である前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物、
(7)前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物の硬化物、
(8)前項(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物を基材で挟み込んだ厚膜用ネガ型レジスト組成物の積層体、
に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物は、高感度で、アルカリ性水溶液での現像が可能で、高アスペクト比のパターンが形成可能である。さらに、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物は保存安定性に優れるため、製造工程上有利で、しかもSbF6-を含有する光酸発生剤を用いることによる毒性上の問題も無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物は、前記式(1)で表される光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂(C)を必須成分として含有する。
本発明において、「厚膜」とは20μm以上の膜を意味し、又「厚膜用の用途」とは厚さが20μm以上の露光前のレジスト組成物層を基板等に形成し、次いで硬化物を形成する工程を含む用途を意味するものとする。
【0018】
本発明で使用する下記(1)で表される光酸発生剤(A)はアンチモンを含まない高感度な光酸発生剤として知られている。
【0019】
【化3】

【0020】
(式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基又はフェニル基を、Yはフッ素原子又は塩素原子を、Zはフッ素原子、シアノ基、ニトロ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1個乃至5個の置換基を有するフェニル基を、mはYの数であり0〜3の整数を、nはZの数であり1〜4の整数をそれぞれ表し、m+n=4である。)
【0021】
式(1)中のR1、R2及びR3における炭素数1〜8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基を挙げることができる。これらは直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれにも限定されないが、C1〜C4のアルキル基が好ましく、C1〜C4の直鎖アルキル基が特に好ましく、メチル基及びエチル基がとりわけ好ましい。
【0022】
式(1)におけるZの具体例としては、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,3,4,6−テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリフルオロ−3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3 ,5−ジニトロフェニル基、2,4,6−トリフルオロ−3,5−ジニトロフェニル基、2,4−ジシアノフェニル基、4−シアノ−3,5−ジニトロフェニル基、4−シアノ−2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等があげられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、式(1)におけるZとしてはペンタフルオルフェニル基が好ましい。
【0023】
式(1)において[BYmZn]-で表されるボレートアニオンの具体例としては、ペンタフルオロフェニルトリフルオロボレート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルトリフルオロボレート、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジフルオロボレート、ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ジフルオロボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)フルオロボレート、トリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]フルオロボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート等が挙げられる。
【0024】
これらのうち、好ましいものは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3 ,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートであり、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
このような光酸発生剤(A)のうち、式(2)で表される光酸発生剤(A−1)が特に好ましい具体例として挙げられる。
【0025】
【化4】

【0026】
前記式(1)で表される光酸発生剤(A)は、例えば、特許第3838234号記載の方法で合成することができ、その一部は市場から入手することも可能である。
【0027】
前記式(1)で表される光酸発生剤(A)は単独又は2種以上を併用しても差し支えない。光酸発生剤(A)の含有量が少なすぎる場合は、充分な硬化速度を得ることが難しくなる。又、光酸発生剤(A)を必要以上に多く使用した場合は、厚膜において光の透過率が悪くなり解像度が低下する。これらの観点から、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物における光酸発生剤(A)の含有量は、光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂(C)の合計質量中、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
【0028】
尚、本発明における光酸発生剤とは光により分解して酸を発生する化合物の総称を言い、「光酸発生剤」のほか「PAG」、「光重合開始剤」、「光カチオン重合開始剤」、「光重合触媒」等の名称で使用されることもある。
【0029】
本発明におけるADR(アルカリ溶解速度)とは、樹脂のアルカリ性水溶液に対する溶解性を表す指標である。本発明においてADRは以下の方法により測定される。
25〜70質量%の範囲内の任意濃度に調整されたフェノール樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液を、2〜50μmの範囲内の異なる3水準の膜厚となるよう4インチシリコンウエハ上にスピンコートにより塗布して乾燥させ、得られた3枚のウエハ上の樹脂膜の膜厚を測定した後に樹脂膜に基板に達する傷を付ける。次に、22〜24℃に維持された2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液1.5リットルに、スターラーを用いて攪拌を施しながらを、前記の傷を付けた樹脂膜を有するウエハを浸し、樹脂膜の傷が消えるまでの秒数を計測する。測定結果を元に、X軸に秒数(s)を、Y軸にシリコンウエハ上のフェノール樹脂の膜厚(Å)をプロットし、これら3点のプロットから最小二乗法によって近似した直線の傾きをADRとする。
【0030】
本発明においては、前記ADRが1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)が用いられる。ADRは、2000Å/s以上であることがさらに好ましい。ADRが、1000Å/s未満である場合はレジストの現像速度が著しく低下し、現像残渣が発生したりする点で解像性低下の原因となり、本発明の目的に適さない。
【0031】
本発明で用いられるフェノール樹脂(B)としては、ADRが1000Å/s以上であるフェノール性水酸基を有する樹脂ならどのようなものでも用いることができるが、レジストとしての解像性が良いことから、フェノール性水酸基を持つ芳香族化合物とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られるノボラック樹脂、ビニルフェノールの単独重合体(水素添加物を含む。)及びビニルフェノールと共重合可能な成分との共重合体から選択されるビニルフェノール系重合体(水素添加物を含む。)等の構造を持つADRが1000Å以上であるフェノール樹脂が好ましく用いられる。
【0032】
前記フェノール性水酸基を持つ芳香族化合物の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−キシレノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ホドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、ビスフェノールA、テルペン骨格含有ジフェノール、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。同じく、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フラフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
【0033】
前記ビニルフェノールと共重合可能な成分の具体例としては、アクリル酸又はその誘導体、スチレン又はその誘導体、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0034】
前記フェノール樹脂からADRが1000Å/s以上である1種又は2種以上が適宜選択されて使用されるが、ADRが1000Å/s以上のフェノール樹脂(B)の具体例としては、例えば、レヂトップPSM−6200(商品名、群栄化学工業株式会社製、フェノールノボラック樹脂、軟化点80℃)、PS−4326(商品名、群栄化学工業株式会社製、フェノールノボラック樹脂、分子量6000)、H−1(商品名、明和化成株式会社製、フェノールノボラック樹脂、分子量450、軟化点84℃)、PS−2808(商品名、群栄化学工業株式会社製、メタクレゾールノボラック樹脂、分子量3300)EP4000B(商品名、旭有機材工業株式会社製、メタクレゾール:パラクレゾール=6:4のクレゾールノボラック樹脂、分子量2750)、EPR5000B(商品名、旭有機材工業株式会社製、メタクレゾール:パラクレゾール=5:5のクレゾールノボラック樹脂、分子量2000)、MXP556BF(商品名、旭有機材工業株式会社製、メタクレゾール:パラクレゾール:フェノール=3:2:5のフェノール−クレゾールノボラック樹脂、分子量2000)マルカリンカーMS−2P(商品名、丸善石油化学株式会社製、p−ビニルフェノールの単独重合体、分子量5000、軟化点190℃)、マルカリンカーCST70(商品名、丸善石油化学株式会社製、p−ビニルフェノールとスチレンの共重合体、分子量3500、軟化点145℃)、マルカリンカーPHM−C(商品名、丸善石油化学株式会社製、p−ビニルフェノールの単独重合体の水素添加物、分子量5500、水素添加率11.8%、軟化点190℃)等が挙げられる。
【0035】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物を使用するに当たり、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物に対する紫外光の透過率が悪いと、厚膜を形成する場合、特に100μm以上の厚膜に紫外光を露光する場合に、深部まで到達する紫外光が不十分なことで表層部と深部の硬化度合に差が生じ、垂直な側壁を得ることが困難となる虞がある。また、この問題を解決するためにはより多くの照射エネルギーが必要となるため、省エネルギー効率、生産性向上の観点からもやや不利になる。これらの理由から、ADRが1000Å/s以上である前記フェノール樹脂(B)のうちでも、比較的紫外光の透過率に優れる水素添加されたポリビニルフェノールであることが特に好ましく、水素添加されたポリビニルフェノールの具体例としては、マルカリンカーPHM−C(前記)が挙げられる。
【0036】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物中に含まれるADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)の含有量が多すぎると、架橋が不十分で充分な解像度が得られず、また少なすぎると硬化膜の剥離性が悪化する虞がある。このような観点から、フェノール樹脂(B)の含有量は、光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂(C)の合計質量中、30〜90質量%が好ましく、特に50〜80質量%が好ましい。
【0037】
本発明で使用するエポキシ樹脂(C)としては、一分子中にエポキシ基が二つ以上あるエポキシ樹脂であれば、いずれのエポキシ樹脂も用いることが出来るが、エポキシ樹脂のエポキシ当量は十分な硬化速度が得られるように100〜500g/当量であることが好ましく、100〜300g/当量であることがさらに好ましい。尚、ここで言うエポキシ当量とはJIS K−7236に準拠した方法で測定した値を意味する。また、エポキシ樹脂の種類としてはグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型等を用いることが出来るが、液保存安定性が良いことからグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型が好ましく、グリシジルエーテル型が最も好ましい。また、現像性の点からエポキシ樹脂は常温で液状であることが好ましく、25℃における粘度が5000mPa・s以下であることがより好ましく、1000mPa・s以下であることがさらに好ましい。常温で固形状のエポキシ樹脂や、液状のエポキシ樹脂についても粘度が5000mPa・sよりも大きいエポキシ樹脂を用いるとレジストにした場合の溶解性が悪くなることで残渣が発生する虞があり、好ましくない。これらはエポキシ樹脂(C)は、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物に単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0038】
上記のようなエポキシ樹脂(C)の具体例として、グリシジルエーテル型としてのソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが、グリシジルエステル型としてのフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル及びヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルが挙げられる。
【0039】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物中、エポキシ樹脂(C)の含有割合が50質量%よりも多いと、硬化膜の剥離性が悪化し、逆に10質量%より少ないと十分な硬化速度が得られない虞がある。このような観点から、エポキシ樹脂(C)の含有量は、光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂(C)の合計質量中、10〜70質量%が好ましく、特に20〜50質量%が好ましい。
【0040】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物の粘度を下げ、塗膜性を向上させるために溶剤(D)を用いることができる。溶剤としては、一般に使われる有機溶剤で本発明のネガ型レジスト組成物の主要成分を溶解可能であるものはすべて用いることができる。このような有機溶剤の具体例としてはアセトン、エチルメチルケトン及びシクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレン及びテトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びγ−ブチロラクトンなどのエステル類、メタノール、エタノール、セレソルブ及びメチルセレソルブなどのアルコール類、オクタン及びデカンなどの脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサなどの石油系溶剤等の有機溶剤類等を挙げることができる。
【0041】
これら溶剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。溶剤成分は、基材へ塗布する際の膜厚や塗布性を調整する目的等で加えるものであり、主要成分の溶解性、成分の揮発性、組成物の液粘度を適正に保持する為には、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物中の固形分濃度が好ましくは5質量%〜95質量%、特に好ましくは10質量%〜90質量%となる量が添加される。尚、ここでいう「固形分濃度」における「固形分」とは、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物に用いられる溶剤(D)を除いた必須及び任意成分の全てを表す。
【0042】
基板に対する厚膜用ネガ型レジスト組成物の密着性を向上させる目的で、組成物に混和性のある密着性付与剤を添加してもよい。密着性付与剤としてはシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を用いることができ、好ましいものとしてはシランカップリング剤が挙げられる。
【0043】
シランカップリング剤の具体例としては3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
これら密着性付与剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。密着性付与剤を過剰に用いた場合、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物の硬化物の架橋密度を低下させたり、或いは未反応のまま硬化物中に残存することで硬化物の物性値を低下させる恐れがある。密着性付与剤は、基材によっては少量でも効果を発揮する点から、悪影響を及ぼさない範囲内での使用が好ましく、その使用割合は、厚膜用ネガ型レジスト組成物に対して15質量%以下が好ましく、特に好ましくは5質量%以下である。
【0045】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物には、その他の添加剤として、熱可塑性樹脂、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を用いることが出来る。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられ、増粘剤としては、例えオルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられ、消泡剤としては、例えばシリコーン系、フッ素系及び高分子系等の消泡剤が挙げられる。これらの添加剤等を使用する場合、その含有量は本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物中でそれぞれ0.1〜30質量%程度が一応の目安であるが、使用目的に応じ適宜増減し得る。
【0046】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物は、前述の必須成分に必要に応じて任意成分を添加して混合することで調整されるが、通常は、必要により加温下に前記各成分を混合、攪拌するだけでよく、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散機を用いて分散、混合させてもよい。また、混合した後で、メッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過処理を施してもよい。
【0047】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物は、シリコン、ガラス、金属板等の基板上に厚膜として塗布する為のレジスト組成物として好適であるが、その利用範囲はこれに限定されず、例えば銅、クロム、鉄、ガラス基板等各種基板のエッチング時の保護膜や電解メッキ時のレジストモールド、半導体製造用レジストとしても使用することができる。
【0048】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物を厚膜のレジストフィルムに加工して、例えば、バンプのようなマイクロ構造体を調製する場合には、次のような工程を経て作成される。
(1)塗膜の形成:上述したように調製された厚膜用ネガ型レジスト組成物の溶液を所定の基板上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって所望の塗膜を形成する。被処理基板上への塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などの方法を採用することができる。本発明のレジスト組成物の塗膜のプレベーク条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚などによって異なるが、通常は40〜150℃で、好ましくは60〜120℃で、2〜60分間程度である。
(2)放射線照射:得られた塗膜に所定のパターンのマスクを介して、放射線、例えば波長が300〜500nmの紫外線又は可視光線を照射することにより、バンプを形成する配線パターン部分のみを露光させる。これらの放射線の線源として、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。ここで放射線とは、紫外線、視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100〜2000mJ/cm2である。
(3)加熱:露光後、公知の方法を用いて加熱する。例えば、ホットプレートやオーブンを用いて65〜95℃で1〜30分間程度加熱処理が行われる。
(4)現像:放射線照射、加熱後の現像方法としては、アルカリ性水溶液を現像液として用いて、不要な部分を溶解、除去し、放射線照射部分のみ残存させる。現像液としては、例えばTMAH、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどのアルカリ性水溶液を使用することができる。また前記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を添加した水溶液を現像液として使用することもできる。現像条件は、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物中の各成分の種類、配合割合、組成物の乾燥膜厚によって異なるが、通常、現像液濃度0.5〜10質量%、温度15〜30℃、現像時間1〜30分間の条件であり、また現像の方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法などのいずれでも良い。現像後は、流水洗浄を30〜180秒間行い、エアーガンや、オーブンなどを用いて乾燥させる。
【0049】
尚、現像後にメッキ処理を施すことも出来る。メッキ処理方法としてはとくに制限されず、それ自体公知の各種メッキ方法を採用することができる。メッキに当たっては、特にニッケルメッキ、ハンダメッキ、銅メッキ液が好適に用いられる。
【0050】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物によって得られる膜厚は、通常20〜1000μm、好ましくは20〜200μm、より好ましくは40〜100μmである。
【0051】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物は基材に挟み込んだ厚膜用ネガ型レジスト組成物積層体として用いることもできる。基材はウエハ状のものやフィルム等様々なものが利用可能であるが、扱いやすさの点からフィルムが好ましい。積層体は公知技術の組み合わせで作成できる。具体例として以下のような方法で積層体を作成することができるがこの方法に限定されるものではない。ベースフィルム上にロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いて本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物を塗布した後、60〜100℃に設定した乾燥炉で乾燥し、所定量の溶剤を除去し、カバーフィルム等を積層することにより厚膜用ネガ型レジスト組成物の積層体とすることができる。この際、ベースフィルム上の厚膜用ネガ型レジスト組成物層の厚さは、5〜100μmに調整される。ベースフィルム及びカバーフィルムとしては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルムが使用される。この厚膜用ネガ型レジスト組成物の積層体を使用するには、例えばカバーフィルムをはがして基板に転写し、前記同様に露光、現像、加熱処理をすればよい。
【0052】
本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物は、高感度な酸発生剤を用いフェノール樹脂の溶解性とエポキシ樹脂の物性を適度に選択することにより、厚膜において高解像性、高アスペクト比のパターンを形成でき、かつ高感度で液保存安定性、めっき耐性に優れているという特徴がある。
【0053】
本発明のレジスト組成物は、たとえば、MEMS部品、マイクロマシン部品、μ−TAS(マイクロトータルアナリシスシステム)部品、マイクロリアクター部品、電子部品、マイクロプローブ、微細金型等の製造の際に行われるバンプ形成、メタルポスト形成、配線形成等の精密加工に好適である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、本発明をなんら限定するものではない。尚、実施例、比較例、参考例において、特に断りのない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ意味する。
【0055】
実施例1〜5及び比較例1
(厚膜用ネガ型レジスト組成物の調製)
表1に記載の配合量(単位は部)に従って、光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基が二個以上あるエポキシ樹脂(C)及びその他の成分を撹拌機付のフラスコで60℃、1時間撹拌混合し、それぞれ本発明及び比較用の厚膜用ネガ型レジスト組成物を得た。
【0056】
(厚膜用ネガ型レジスト組成物のパターニング)
実施例1〜5及び比較例1の各厚膜用ネガ型レジスト組成物をシリコンウエハ上にスピンコーターで塗布後、乾燥し、表1に示す膜厚(表1における「塗工後膜厚」は塗布、乾燥した後の膜厚を意味する。)を有する厚膜用ネガ型レジスト組成物の膜の設けられたシリコンウエハを得た。この膜をホットプレートにより65℃で5分間および95℃で15分間プリベークした。その後、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、i線)を行い、ホットプレートにより95℃で6分間の露光後ベーク(以下「PEB」と記載する)を行い、2.38質量%TMAH水溶液を用いて浸漬法により23℃で5分間現像処理を行い、基板(シリコンウエハ)上に本発明及び比較用の厚膜用ネガ型レジスト組成物の硬化膜(樹脂パターン)を得た。
【0057】
(厚膜用ネガ型レジスト組成物の感度評価)
前記パターン露光において、マスク転写精度が最良となる露光量を最適露光量とし、それぞれの厚膜用ネガ型レジスト組成物の感度の評価を行った。最適露光量の値が小さいほど感度が高いことを表す。結果を下記表1に示す。
【0058】
(厚膜用ネガ型レジスト組成物の解像性評価)
解像性:前記パターン露光において、1、5、10及び20μmのラインアンドスペースのフォトマスクを使用し、残渣がなく解像されたレジストパターン中、基板へ密着している最も細かいパターン幅を測定した。最小解像線幅を下記表1に示す。又、膜厚と最小解像線幅から算出されるアスペクト比(膜厚/最小解像線幅)を同表に示した。
【0059】
(厚膜用ネガ型レジスト組成物の保存安定性の評価)
前記と同様にして得られた本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物を40℃の恒温層で1ヶ月保存し、保存前後の粘度を測定して下記基準で評価した保存安定性の結果を下記表1に示す。尚、粘度計としては、E型粘度計(TV−20 東機産業株式会社製)を使用し、25℃で測定した。
【0060】
評価基準
○:粘度の増加率が10%未満
△:粘度の増加率が10%以上30%未満
×:粘度の増加率が30%以上
【0061】
【表1】

【0062】
尚、表1におけるA−1〜Fはそれぞれ下記を示す。
A−1:前記式(2)で示される光酸発生剤(商品名 TAG−382、東洋インキ製造株式会社製)
B−1:フェノール樹脂(商品名 マルカリンカーPHM−C、丸善石油化学株式会社製、ADR=3600Å/s)
B−2:フェノール樹脂(商品名 PS−2808、群栄化学工業株式会社製、ADR=3007Å/s)
B−3:フェノール樹脂(商品名 PS−4326、群栄化学工業株式会社製、ADR=5155Å/s)
C−1:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(商品名 EX214L、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ当量120g/当量、粘度15mPa.s(25℃))
C−2:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(商品名 EX216L、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ当量135g/当量、粘度15mPa.s(25℃))
C−3:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(商品名 EX321L、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ当量130g/当量、粘度300mPa.s(25℃))
D:溶剤(シクロペンタノン)
E:レベリング剤(商品名 F470、DIC株式会社製)
F:特許文献2記載の光酸発生剤(商品名 UVI−6990、ダウケミカル社製)
G:特許文献2記載のエポキシ基含有ポリカルボン酸樹脂(商品名 BMR resin、日本化薬株式会社製)
【0063】
表1に示すとおり、本発明の厚膜用ネガ型レジスト組成物(実施例1〜5)は高い感度、解像性を有し、比較例1に比較し、高いアスペクト比、保存安定性を示すことが判った。
【0064】
実施例6
(厚膜用ネガ型レジスト組成物積層体)
上記実施例1にて得られた厚膜用ネガ型レジスト組成物を膜厚15μmのポリプロピレン(PP)フィルム(ベースフィルム、東レ社製)上に均一に塗布し、温風対流乾燥機により65℃で5分間および80℃で20分間乾燥した後、露出面上に膜厚38μmのPPフィルム(カバーフィルム)をラミネートして、18μmの膜厚の感光性樹脂組成物の積層体を形成した。
【0065】
(厚膜用ネガ型レジスト組成物積層体のパターニング)
前記で得られた厚膜用ネガ型レジスト組成物の積層体のカバーフィルムを剥離し、ロール温度70℃、エアー圧力0.2MPa、速度0.5m/minでシリコンウエハ上にラミネートし、これを3回繰り返し50μmの厚膜用ネガ型レジスト組成物層を得た。この厚膜用ネガ型レジスト組成物層に、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、i線)を行った。その後、ホットプレートにより95℃で4分間PEBを行い、PGMEAを用いて浸漬法により23℃で4分間現像処理を行い、基板上に硬化した樹脂パターンを得た。最適露光量250mJ/cm2、最小解像線幅10μmと良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明にかかる厚膜用ネガ型レジスト組成物は、高解像性、高アスペクト比のパターンを形成でき、かつ高感度で高い保存安定性を有し、MEMS部品、マイクロマシン部品、μ−TAS(マイクロトータルアナリシスシステム)部品、マイクロリアクター部品、電子部品、マイクロプローブ、微細金型等の製造の際に行われるバンプ形成、メタルポスト形成、配線形成等の精密加工に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される光酸発生剤(A)、ADR(アルカリ溶解速度)が1000Å/s以上であるフェノール樹脂(B)及び一分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂(C)を含有してなる厚膜用ネガ型レジスト組成物。
【化1】

(式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基又はフェニル基を、Yはフッ素原子又は塩素原子を、Zはフッ素原子、シアノ基、ニトロ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1個乃至5個の置換基を有するフェニル基を、mはYの数であり0〜3の整数を、nはZの数であり1〜4の整数をそれぞれ表し、m+n=4である。)
【請求項2】
光酸発生剤(A)が下記式(2)で表される光酸発生剤(A−1)である請求項1に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物。
【化2】

【請求項3】
エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量が100〜300g/当量である請求項1又は請求項2に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂(C)がグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂(C)の25℃における粘度が5000mPa・s以下である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物。
【請求項6】
さらに、溶剤(D)を含有し、レジスト組成物中の固形分濃度が5〜95質量%である請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の厚膜用ネガ型レジスト組成物を基材で挟み込んだ厚膜用ネガ型レジスト組成物の積層体。

【公開番号】特開2010−26278(P2010−26278A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188135(P2008−188135)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】