説明

原子発振器用の光学モジュールおよび原子発振器

【課題】周波数安定度の高い原子発振器を得ることが可能な原子発振器用の光学モジュールを提供する。
【解決手段】光学モジュール2は、量子干渉効果を利用する原子発振器用の光学モジュール2であって、所定の波長を有する基本波F、当該基本波の側帯波W1,W2、を含む光L1を出射する光源10と、光源10からの光が入射し、当該入射した光のうち側帯波W1,W2を透過させる波長選択部20と、アルカリ金属ガスを封入し、波長選択部20を透過した光L2が照射されるガスセル30と、ガスセル30に照射された光のうちガスセル30を透過した光の強度を検出する光検出部40と、を含み、波長選択部20は、所定の波長範囲の光を透過させる光フィルター部20aと、光フィルター部20aが透過させる光の波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部20bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子発振器用の光学モジュールおよび原子発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、量子干渉効果のひとつであるCPT(Coherent Population Trapping)を利用した原子発振器が提案され、装置の小型化や低消費電力化が期待されている。CPTを利用した原子発振器は、アルカリ金属原子に互いに波長(周波数)の異なる2つの共鳴光を同時に照射すると、2つの共鳴光の吸収が停止する現象(EIT現象:Electromagnetically Induced Transparency)を利用した発振器である。例えば、特許文献1には、CPTを利用した原子発振器として、コヒーレントな光を発する光源と、アルカリ金属原子が封入されたガスセルと、ガスセルを透過した光の強度を検出する受光素子と、を有する光学モジュールを含んで構成された原子発振器が記載されている。
【0003】
CPTを利用した原子発振器では、例えば、光源として半導体レーザーが用いられる。光源として半導体レーザーを用いた原子発振器では、例えば、半導体レーザーの駆動電流を変調することによって半導体レーザーから出射される光に側帯波を発生させて、EIT現象を発現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−89116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、駆動電流が変調された半導体レーザーから出射される光には、側帯波だけでなく、EIT現象に寄与しない中心波長を有する基本波(搬送波)も含まれる。この基本波がアルカリ金属原子に照射されると、アルカリ金属原子が吸収する光の波長(周波数)が変化して(ACシュタルク効果)、原子発振器の周波数の安定度を低下させる場合がある。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、周波数安定度の高い原子発振器を得ることが可能な原子発振器用の光学モジュールを提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記原子発振器用の光学モジュールを有する原子発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールは、
量子干渉効果を利用する原子発振器用の光学モジュールであって、
所定の波長を有する基本波、当該基本波の側帯波、を含む光を出射する光源と、
前記光源からの光が入射し、当該入射した光のうち前記側帯波を透過させる波長選択部と、
アルカリ金属ガスを封入し、前記波長選択部を透過した光が照射されるガスセルと、
前記ガスセルに照射された光のうち前記ガスセルを透過した光の強度を検出する光検出部と、
を含み、
前記波長選択部は、
所定の波長範囲の光を透過させる光フィルター部と、
前記光フィルター部が透過させる光の波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部と、
を有する。
【0008】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、波長選択部が、光源からの光に含まれる基本波の強度を減少または基本波を消滅させることができる。これにより、EIT現象に寄与しない基本波がアルカリ金属原子に照射されることを抑制または防止できる。したがって、ACシュタルク効果による周波数変動を抑制することができ、周波数安定度の高い発振器を提供できる。さらに、波長選択部が、光フィルター部が透過させる光の波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部を有しているため、製造誤差や環境変化等による光フィルター部の波長選択特性(光フィルター部が透過させる光の波長範囲)のずれを補正することができる。
【0009】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールにおいて、
前記光フィルター部は、エタロンであり、
前記光フィルター特性制御部は、電気光学効果によって、前記光フィルター部が透過させる光の波長範囲を変化させることができる。
【0010】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、光フィルター部を簡易な構成にすることができる。さらに、光フィルター部の波長選択特性を、高精度かつ容易に制御できる。
【0011】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールにおいて、
前記光フィルター部は、
前記波長選択部に入射した光を反射させ、互いに対向する第1ミラーおよび第2ミラーと、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間に配置された基板と、
を有し、
前記基板の材質は、化合物半導体であることができる。
【0012】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、第1ミラーと第2ミラーとの間の距離を小さくでき、装置の小型化を図ることができる。
【0013】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールにおいて、
前記光フィルター特性制御部は、前記基板に電圧を印加する第1電極および第2電極を有することができる。
【0014】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、光フィルター特性制御部を簡易な構成にすることができる。
【0015】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールにおいて、
さらに、化合物半導体の基体を含み、
前記光源は、半導体レーザーであり、
前記光フィルター部および前記光源は、前記基体上に位置し、
前記第1電極は、前記基体の前記光フィルター部が位置する側と反対側に位置し、
前記第2電極は、前記光フィルター部の前記基体が位置する側と反対側に位置することができる。
【0016】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、波長選択部および光源が同じ基体に形成されているため、装置の小型化を図ることができる。
【0017】
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下、「A」という)の「上方」に他の特定のもの(以下、「B」という)を形成する」などと用いる場合に、A上に直接Bを形成するような場合と、A上に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。同様に、「下方」という文言は、A下に直接Bを形成するような場合と、A下に他のものを介してBを形成するような場合とが含まれるものとする。
【0018】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールにおいて、
前記光フィルター部の前記基板は、前記基体側から積層された第1層、第2層、および第3層を有し、
前記第1層の屈折率および前記第3層の屈折率は、前記第2層の屈折率より小さく、
前記第2層は、前記光源から出射した光を伝播させることができる。
【0019】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、基板を光導波路とすることができる。したがって、波長選択部から射出される光のビーム径を制御することができ、波長選択部を透過した光をガスセルに効率よく照射することができる。
【0020】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールにおいて、
前記光源は、端面発光型レーザーであることができる。
【0021】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、端面発光型レーザーを構成する層の膜厚の制御によって、光源(端面発光型レーザー)と波長選択部との間のアライメントができる。したがって、光源と波長選択部との間のアライメント精度を向上させることができる。さらに、例えば、波長選択部に光源からの光を入射させるための光学素子が不要となる。
【0022】
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールにおいて、
前記光源は、面発光型レーザーであることができる。
【0023】
このような原子発振器用の光学モジュールによれば、面発光型レーザーは、端面発光型レーザーと比べて、ゲインを生じさせるための電流が少ないため、低消費電力化を図ることができる。
【0024】
本発明に係る原子発振器は、
本発明に係る原子発振器用の光学モジュールを含む。
【0025】
このような原子発振器は、本発明に係る原子発振器用の光学モジュールを含むため、ACシュタルク効果による周波数変動を抑制することができ、周波数安定度を高めることができる。
【0026】
本発明に係る原子発振器は、
量子干渉効果を利用する原子発振器用であって、
所定の波長を有する基本波、当該基本波の側帯波、を含む光を出射する光源と、
前記光源からの光が入射し、当該入射した光のうち前記側帯波を透過する波長選択部と、
アルカリ金属ガスを封入し、前記波長選択部を透過した光が照射されるガスセルと、
前記ガスセルに照射された光のうち前記ガスセルを透過した光の強度を検出する光検出部と、
を含み、
前記波長選択部は、
所定の波長範囲の光を選択して射出する光フィルター部と、
前記光フィルター部が選択する波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部と、
を有する。
【0027】
このような原子発振器によれば、波長選択部が、光源からの光に含まれる基本波の強度を減少または基本波を消滅させることができる。これにより、EIT現象に寄与しない基本波がアルカリ金属原子に照射されることを抑制または防止できる。したがって、ACシュタルク効果による周波数変動を抑制することができ、周波数安定度の高い発振器を提供できる。さらに、波長選択部が、光フィルター部が透過させる光の波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部を有しているため、製造誤差や環境変化等による光フィルター部の波長選択特性(光フィルター部が透過させる光の波長範囲)のずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る原子発振器の機能ブロック図。
【図2】図2(A)はアルカリ金属原子のΛ型3準位モデルと第1側帯波及び第2側帯波の関係を示す図、図2(B)は、光源で発生する第1光の周波数スペクトラムを示す図。
【図3】波長選択部から射出された第2光の周波数スペクトラムを示す図。
【図4】本実施形態に係る原子発振器の構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態に係る光学モジュールの要部を模式的に示す断面図。
【図6】端面発光型レーザーを用いた本実施形態に係る光学モジュールの要部を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
まず、本実施形態に係る光学モジュールおよび原子発振器について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る原子発振器は、本実施形態に係る光学モジュールを含む。図1は、本実施形態に係る原子発振器1の機能ブロック図である。原子発振器1は、量子干渉効果を利用した発振器である。
【0031】
原子発振器1は、光学モジュール2と、制御部50と、を含む。
【0032】
光学モジュール2は、光源10と、波長選択部20と、ガスセル30と、光検出部40と、を含む。
【0033】
光源10は、所定の中心波長(中心周波数)を有する基本波Fと、互いに異なる波長を有する第1側帯波W1および第2側帯波W2と、を含む第1光L1を発生させる。
【0034】
波長選択部20は、第1光L1から第1側帯波W1および第2側帯波W2を選択し、第2光L2として射出する。波長選択部20は、所定の波長範囲の光を選択して射出する光フィルター部20aと、光フィルター部20aの選択する波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部20bと、を有する。
【0035】
ガスセル30は、アルカリ金属ガスを封入しており、ガスセル30には、第2光L2が照射される。
【0036】
光検出部40は、ガスセル30を透過した第2光L2の強度を検出する。
【0037】
制御部50は、光検出部40の検出結果に基づいて、第1側帯波W1および第2側帯波W2の波長(周波数)差が、ガスセル30に封入されたアルカリ金属原子の2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数に等しくなるように制御する。制御部50は、光検出部40の検出結果に基づいて、変調周波数fを有する検出信号を発生させる。そして、光源10は、この検出信号に基づいて所定の周波数fを有する基本波Fを変調して、周波数f=f+fを有する第1側帯波W1、および周波数f=f−fを有する第2側帯波W2を発生させる。
【0038】
図2(A)は、アルカリ金属原子のΛ型3準位モデルと第1側帯波W1及び第2側帯波W2の関係を示す図である。図2(B)は、光源10で発生する第1光L1の周波数スペクトラムを示す図である。
【0039】
図2(B)に示すように、光源10において発生する第1光L1は、中心周波数f(=v/λ:vは光の速度、λはレーザー光の中心波長)を有する基本波Fと、中心周波数fに対して上側サイドバンドに周波数fを有する第1側帯波W1と、中心周波数fに対して下側サイドバンドに周波数fを有する第2側帯波W2と、を含む。第1側帯波W1の周波数fは、f=f+fであり、第2側帯波W2の周波数fは、f=f−fである。
【0040】
図2(A)及び図2(B)に示すように、第1側帯波W1の周波数fと第2側帯波W2の周波数fとの周波数差が、アルカリ金属原子の基底準位GL1と基底準位GL2のエネルギー差ΔE12に相当する周波数と一致している。したがって、アルカリ金属原子は、周波数fを有する第1側帯波W1と周波数fを有する第2側帯波W2によってEIT現象を起こす。
【0041】
ここで、EIT現象について説明する。アルカリ金属原子と光との相互作用は、Λ型3準位系モデルで説明できることが知られている。図2(A)に示すように、アルカリ金属原子は2つの基底準位を有し、基底準位GL1と励起準位とのエネルギー差に相当する波長(周波数f)を有する第1側帯波W1、あるいは基底準位GL2と励起準位とのエネルギー差に相当する波長(周波数f)を有する第2側帯波W2を、それぞれ単独でアルカリ金属原子に照射すると、光吸収が起きる。ところが、図2(B)に示すように、このアルカリ金属原子に、周波数差f−fが基底準位GL1と基底準位GL2のエネルギー差ΔE12に相当する周波数と正確に一致する第1側帯波W1と第2側帯波W2を同時に照射すると、2つの基底準位の重ね合わせ状態、即ち量子干渉状態になり、励起準位への励起が停止して第1側帯波W1と第2側帯波W2がアルカリ金属原子を透過する透明化現象(EIT現象)が起きる。このEIT現象を利用し、第1側帯波W1と第2側帯波W2との周波数差f−fが基底準位GL1と基底準位GL2のエネルギー差ΔE12に相当する周波数からずれた時の光吸収挙動の急峻な変化を検出し制御することで、高精度な発振器をつくることができる。
【0042】
しかし、図2(B)に示した第1光L1がガスセル30に直接照射されると、第1側帯波W1と第2側帯波W2と同時に、基本波Fがガスセル30すなわちアルカリ金属原子に照射されることになる。EIT現象に寄与しない基本波Fがアルカリ金属原子に照射されると、ACシュタルク効果により、アルカリ金属原子が吸収する光の波長(周波数)が変化する。これにより、アルカリ金属原子を透過する第1側帯波W1と第2側帯波W2の量が変化してしまう。EIT現象を利用した発振器においては、アルカリ金属原子を透過する第1側帯波W1と第2側帯波W2の量を検知することで変調周波数fmを安定化させ、この変調周波数fmを発信器の出力として利用することにより、発信器の周波数安定度を高めている。したがって、基本波Fによって生じるACシュタルク効果は、第1側帯波W1と第2側帯波W2の検知精度を低下させ、変調周波数fmの安定度を低下させる。すなわち、発信器の周波数安定度を低下させてしまう。
【0043】
図3は、波長選択手段部20から射出された第2光L2の周波数スペクトラムを示す図である。
【0044】
第2光L2は、第1光L1と比べて、基本波Fが消滅または基本波Fの強度が減少した光である。図3の例では、第2光L2は、中心周波数fに対して上側サイドバンドに周波数fを有する第1側帯波W1、および中心周波数fに対して下側サイドバンドに周波数fを有する第2側帯波W2のみを有している。このように、光学モジュール2では、波長選択部20によって、基本波Fの強度を減少または基本波Fを消滅させることができる。
【0045】
以下、本実施形態の原子発振器のより具体的な構成について説明する。
【0046】
図4は、原子発振器1の構成を示すブロック図である。
【0047】
原子発振器1は、図4に示すように、光学モジュール2と、電流駆動回路150と、変調回路160と、を含む。
【0048】
光学モジュール2は、半導体レーザー110と、波長選択装置120と、ガスセル130と、光検出器140と、を含む。
【0049】
半導体レーザー110は、所定の中心波長を有する基本波Fと、互いに異なる波長を有する第1側帯波W1および第2側帯波W2と、を含む第1光L1を発生させる。半導体レーザー110が出射するレーザー光(第1光L1)は、電流駆動回路150が出力する駆動電流によって中心周波数f(中心波長λ)が制御され、変調回路160の出力信号(変調信号)によって変調がかけられる。すなわち、電流駆動回路150による駆動電流に、変調信号の周波数成分を有する交流電流を重畳することにより、半導体レーザー110が出射する第1光L1に変調をかけることができる。これにより、第1光L1には、第1側帯波W1、および第2側帯波W2が生成される。半導体レーザー110において発生する光は、可干渉性を有するため、量子干渉効果を得るために好適である。
【0050】
図2(B)に示すように、第1光L1は、中心周波数f(=v/λ:vは光の速度、λは第1光L1の中心波長)を有する基本波Fと、中心周波数fに対して上側サイドバンドに周波数fを有する第1側帯波W1と、中心周波数fに対して下側サイドバンドに周波数fを有する第2側帯波W2と、を含む。第1側帯波W1の周波数fは、f=f+fであり、第2側帯波W2の周波数fは、f=f−fである。
【0051】
波長選択装置120は、第1光L1から第1側帯波W1および第2側帯波W2を選択し、第2光L2として射出する。波長選択装置120は、所定の波長範囲の光を選択して射出する光フィルター素子120aと、光フィルター素子120aが選択する波長範囲を変化させる光フィルター特性制御装置120bと、を有する。
【0052】
光フィルター素子120aは、第1光から第1側帯波W1および第2側帯波W2を選択して射出することができる。そのため、光フィルター素子120aに入射した第1光L1の基本波Fの強度を減少または基本波Fを消滅させて、第2光L2として射出することができる。すなわち、第2光L2では、第1光L1と比べて、基本波Fの強度が減少または基本波Fが消滅している。図3の例では、第2光L2は、第1側帯波W1、および第2側帯波W2のみを有している。光フィルター素子120aは、後述するように、エタロンであってもよいし、ファイバーブラッググレーティング(FBG)であってもよい。
【0053】
光フィルター特性制御装置120bは、光フィルター素子120aが選択する波長範囲(波長選択特性)を変化させることができる。光フィルター特性制御装置120bは、例えば、電気光学効果によって、光フィルター素子120a(例えば、エタロン)の波長選択特性を変化させることができる。ここで、電気光学効果とは、物質の光に対する屈折率が、外部より静電場を加えることによって変化する現象をいう。光フィルター特性制御装置120bは、例えば、光フィルター素子120aに電場を印加することにより光フィルター素子120aの屈折率を変化させ、光フィルター素子120aの波長選択特性を変化させる。波長選択装置120は、光フィルター特性制御装置120bによって、製造誤差や環境変化(熱、光など)等による光フィルター素子120aの波長選択特性のずれを補正することができるため、第1光L1から第1側帯波W1および第2側帯波W2を、精度よく選択することができる。
【0054】
光フィルター特性制御装置120bは、光検出器140の出力信号に基づいて、光フィルター素子120aに加える電場の強度を調整し、光フィルター素子120aの波長選択特性を制御してもよい。光学モジュール2では、例えば、光フィルター素子120a、ガスセル130、光検出器140、光フィルター特性制御装置120bを通るフィードバックループにより光フィルター素子120aに印加される電場の強度が調整され、光フィルター素子120aの波長選択特性が制御される。
【0055】
また、光フィルター特性制御装置120bは、予め取得された光フィルター素子120aの波長選択特性のずれのデータに基づいて、光フィルター素子120aに印加される電場の強度を調整し、光フィルター素子120aの波長選択特性のずれを補正してもよい。
【0056】
ガスセル130は、容器中に気体状のアルカリ金属原子(ナトリウム(Na)原子、ルビジウム(Rb)原子、セシウム(Cs)原子等)が封入されたものである。ガスセル130には、波長選択装置120から射出された第2光L2が照射される。
【0057】
このガスセル130に対して、アルカリ金属原子の2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数(波長)を有する2つの光波(第1側帯波および第2側帯波)が照射されると、アルカリ金属原子がEIT現象を起こす。例えば、アルカリ金属原子がセシウム原子であれば、D1線における基底準位GL1と基底準位GL2のエネルギー差に相当する周波数が9.19263・・・GHzなので、周波数差が9.19263・・・GHzの2つの光波が照射されるとEIT現象を起こす。
【0058】
光検出器140は、ガスセル130を透過した第2光L2を検出し、検出した光の量に応じた信号強度の信号を出力する。光検出器140の出力信号は、電流駆動回路150および変調回路160に入力される。また、光検出器140の出力信号は、さらに、光フィルター特性制御装置120bに入力されてもよい。光検出器140は、例えば、フォトダイオードである。
【0059】
電流駆動回路150は、光検出器140の出力信号に応じた大きさの駆動電流を発生させて半導体レーザー110に供給し、第1光L1の中心周波数f(中心波長λ)を制御する。半導体レーザー110、波長選択装置120、ガスセル130、光検出器140、電流駆動回路150を通るフィードバックループにより第1光の中心周波数f(中心波長λ)が微調整されて安定する。
【0060】
変調回路160は、光検出器140の出力信号に応じた変調周波数fを有する変調信号を発生させる。この変調信号は、光検出器140の出力信号が最大になるように変調周波数fが微調整されながら半導体レーザー110に供給される。半導体レーザー110が出射するレーザー光は、変調信号により変調がかけられ、第1側帯波W1と第2側帯波W2を発生させる。
【0061】
なお、半導体レーザー110、波長選択装置120、ガスセル130、光検出器140は、それぞれ図1の光源10、波長選択部20、ガスセル30、光検出部40に対応する。また、光フィルター素子120aは、図1の光フィルター部20aに対応し、光フィルター特性制御装置120bは、図1の光フィルター特性制御部20bに対応する。また、電流駆動回路150、変調回路160は、図1の制御部50に対応する。
【0062】
このような構成の原子発振器1において、半導体レーザー110が発生させる第1光L1の第1側帯波W1と第2側帯波W2の周波数差がガスセル130に含まれるアルカリ金属原子の2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数と正確に一致しなければ、アルカリ金属原子がEIT現象を起こさないため、第1側帯波W1と照射光W2の周波数に応じて光検出器140の検出量は極めて敏感に変化する(検出量が増加する)。そのため、半導体レーザー110、波長選択装置120、ガスセル130、光検出器140、および変調回路160を通るフィードバックループにより、第1側帯波W1と第2側帯波W2との周波数差がアルカリ金属原子の2つの基底準位のエネルギー差に相当する周波数と極めて正確に一致するようにフィードバック制御がかかる。その結果、変調周波数は極めて安定した周波数になるので、変調信号を原子発振器1の出力信号(クロック出力)とすることができる。
【0063】
図5は、光学モジュール2の要部(半導体レーザー110および波長選択装置120)を模式的に示す断面図である。
【0064】
光学モジュール2は、図5に示すように、さらに、基体170を含む。半導体レーザー110および波長選択装置120は、基体170に形成されている。このように半導体レーザー110および波長選択装置120がモノリシックに形成されることにより、装置の小型化を図ることができる。
【0065】
基体170の材質は、化合物半導体である。具体的には、基体170の材質は、例えば、GaAs、InP、GaN等のIII−V族半導体や、ZnO、ZnSe等のII−VI族半導体である。ここでは、基体170の材質が第1導電型(例えばn型)GaAsである場合について説明する。
【0066】
半導体レーザー110は、第1半導体層112と、活性層114と、第2半導体層116と、を含む面発光型レーザーである。
【0067】
第1半導体層112は、基体170上に形成されている。第1半導体層112は、例えば、n型(第1導電型)Al0.9Ga0.1As層とn型Al0.15Ga0.85As層とを交互に積層した分布ブラッグ反射型(DBR)半導体ミラーである。
【0068】
活性層114は、第1半導体層112上に形成されている。活性層114は、例えば、GaAsウェル層とAl0.3Ga0.7Asバリア層とから構成される量子井戸構造を3つ重ねた多重量子井戸(MQW)構造を有する。
【0069】
第2半導体層116は、例えば、p型(第2導電型)Al0.15Ga0.85As層とp型Al0.9Ga0.1As層とを交互に積層したDBR半導体ミラーである。
【0070】
p型の第2半導体層116、不純物がドーピングされていない活性層114、およびn型の第1半導体層112により、pinダイオードが形成される。
【0071】
半導体レーザー110の電極118は、基体170の下面に形成されている。電極118は、基体170を介して、第1半導体層112と電気的に接続されている。電極118は、半導体レーザー110を駆動するための一方の電極である。なお、電極118は、後述する光フィルター特性制御装置120bの第1電極128と共通の電極である。
【0072】
半導体レーザー110の電極119は、第2半導体層116の上面に形成されている。電極119は、第2半導体層116と電気的に接続されている。電極119は、半導体レーザー110を駆動するための他方の電極である。
【0073】
電極118,119で、pinダイオードに順方向の電圧を印加すると、活性層114において、電子と正孔との再結合が起こり、該再結合による発光が生じる。そこで生じた光が第2半導体層116と第1半導体層112との間を往復する際に誘導放出が起こり、光の強度が増幅される。光利得が光損失を上まわると、レーザー発振が起こり、第2半導体層116の上面からレーザー光(第1光L1)が出射される。半導体レーザー110から出射された光L1は、プリズム180で反射されて、波長選択装置120(光フィルター素子120a)に入射する。プリズム180は、第1光L1の進行方向を変えて、第1光L1を波長選択装置120(光フィルター素子120a)に入射させるための光学素子である。なお、本実施形態においては、第1光L1の進行方向を変えるためにプリズム180を用いているが、第1光L1を反射させて進行方向を変えることができれば、他の光学素子を用いてもよい。例えば、反射ミラーなどを用いることができる。
【0074】
光学モジュール2において、光フィルター素子120aは、図示の例では、エタロンである。光フィルター素子120aは、第1ミラー121と、第2ミラー122と、第1ミラー121と第2ミラー122との間に配置された基板123と、を含む。ミラー121および122は、ミラーに入射した光の一部を透過させ、一部を反射させるような半透過ミラーである。
【0075】
光フィルター素子120aは、ミラー121,122間の干渉作用により、入射した光L1のうち、所定の波長範囲の光(第1側帯波W1および第2側帯波W2)を透過させる。光フィルター素子120aに光が入射すると、ミラー121,122間の干渉作用により、基板123の長さ(第1ミラー121と第2ミラー122との間の距離)Dおよび基板123の屈折率に応じた波長の光が選択的に光フィルター素子120aを透過する。光フィルター素子120aでは、第1側帯波W1および第2側帯波W2に対する透過率が大きく、基本波Fに対する透過率が小さい。これにより、光フィルター素子120aに入射した光L1の基本波Fの強度を減少または基本波Fを消滅させて射出することができる。したがって、光フィルター素子120aは、例えば、第1側帯波W1および第2側帯波W2のみを含む第2光L2を射出することができる。
【0076】
第1ミラー121と第2ミラー122は、基板123を介して、互いに対向している。第1ミラー121および第2ミラー122は、例えば、Ta膜とSiO膜とを交互に積層した多層膜からなる。ミラー121,122は、例えば、Ta膜とSiO膜を3ペア成膜した層構造を有している。第1ミラー121および第2ミラー122の反射率は、例えば、90%である。
【0077】
基板123は、基体170上に形成されている。基板123は、基体170側から順に形成された、第1層124、第2層125、および第3層126を有している。第1層124の屈折率および第3層126の屈折率は、第2層125の屈折率より小さい。したがって、第1層124および第3層126は、クラッド層として機能し、第2層125は、第1光L1を伝播させるコア層として機能する。すなわち、基板123は、第1光L1を伝搬させる光導波路である。光学モジュール2では、基板123が光導波路であるため、光フィルター素子120aから射出される光L2のビーム径を制御することができ、ガスセル130に光L2を効率よく照射することができる。第1層124および第3層126の材質は、例えば、AlGaAsであり、第2層125の材質は、例えば、GaAsである。
【0078】
なお、基板123は、光導波路を形成しなくてもよい。基板123は、複数の層124,125,126を有さずに、単層であってもよい。
【0079】
基板123の材質は、特に限定されず、GaAs、InP、GaN等のIII−V族半導体や、ZnO、ZnSe等のII−VI族半導体であってもよい。基板123の材質として、例えば、GaAsを用いた場合、フリースペクトラルレンジを9.2GHz、半値全幅を0.3GHz程度とすると、基板123の長さDは28.46mm程度である。エタロンの基板の材質として一般的なSiOを用いた場合、基板の長さは、70.66mm程度である。このように、基板123の材質として、屈折率の大きい化合物半導体を用いることで、基板123の長さDを短くすることができる。
【0080】
光フィルター特性制御装置120bは、光フィルター素子120aに電場を供給するための第1電極128および第2電極129を有している。光フィルター特性制御装置120bは、電極128,129間に電圧を印加することにより、基板123に電場を供給することができる。これにより、電気光学効果が生じて基板123の屈折率が変化し、光フィルター素子120aの波長選択特性を変化させることができる。第1電極128は、基体170の、光フィルター素子120aが位置する側と反対側に位置している。第1電極128は、基体170の下方に形成されている。第1電極128は、上述した半導体レーザー110の第1電極128と共通の電極である。第2電極129は、光フィルター素子120aの、基体123が位置する側と反対側に位置している。第2電極129は、絶縁層190を介して、光フィルター素子120aの上方に形成されている。電極128,129間に、絶縁層190が形成されることにより、電極128,129間に電流が流れて電圧降下が生じることを防ぐことができる。
【0081】
なお、ここでは、光フィルター素子120aがエタロンである場合について説明したが、光フィルター素子120aは、光ファイバーのコアに周期的な屈折率変化を与えたファイバーブラッググレーティングであってもよい。ファイバーブラッググレーティングは、光ファイバーを用いているため、変形が容易であり、設計の自由度を向上できる。
【0082】
また、ここでは、光フィルター素子120aの波長選択特性を、電気光学効果を用いて補正したが、例えば、熱光学効果(物質の光に対する屈折率が、外部より熱を加えることによって変化する現象をいう)を用いて補正してもよい。この場合、光学モジュール2は、光フィルター素子120aに熱を供給するための部材を有していてもよい。
【0083】
光学モジュール2および原子発振器1は、例えば、以下の特徴を有する。
【0084】
光学モジュール2によれば、波長選択装置120が、第1光L1の基本波Fの強度を減少または基本波Fを消滅させることができる。これにより、EIT現象に寄与しない基本波Fがアルカリ金属原子に照射されることを抑制または防止できる。したがって、ACシュタルク効果による周波数変動を抑制することができ、周波数安定度の高い発振器を提供できる。
【0085】
光学モジュール2によれば、波長選択装置120が、光フィルター特性制御装置120bを有しているため、製造誤差や環境変化(熱、光など)等による光フィルター素子120aの波長選択特性(光フィルター素子が選択する波長範囲)のずれを補正することができる。したがって、波長選択装置120は、第1光L1から第1側帯波W1および第2側帯波W2を、精度よく選択して射出することができる。
【0086】
例えば、光フィルター素子120aがエタロンである場合、光フィルター素子120aの波長選択特性(光フィルター素子が選択する波長範囲)は、図5に示す基板123の長さDおよび基板123の屈折率に依存する。しかしながら、光フィルター素子120aの製造工程において、基板123の長さDを正確に制御することは困難であり、基板123の長さDに製造誤差が生じる場合がある。このような場合であっても、光学モジュール2によれば、光フィルター特性制御装置120bを有するため、この製造誤差に起因する波長選択特性のずれを補正することができる。
【0087】
光学モジュール2では、光フィルター素子120aが、エタロンである。したがって、光フィルター素子を簡易な構成にすることができる。また、光フィルター素子(エタロン)120aの基板123の材質が化合物半導体である。したがって、基板123の材質が、SiOである場合と比べて、基板123の長さDを短くすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0088】
光学モジュール2では、光フィルター特性制御装置120bが、電気光学効果によって、光フィルター素子120aの波長選択特性を変化させることができる。これにより、光フィルター素子の波長選択特性を、高精度かつ容易に制御できる。さらに、光フィルター特性制御装置120bが、基板123に電圧を印加するための第1電極128および第2電極129を含んで構成されている。したがって、光フィルター特性制御装置120bを簡易な構成にすることができる。
【0089】
光学モジュール2では、波長選択装置120および半導体レーザー(光源)110が基体170に形成されている。このように波長選択装置120と半導体レーザー110を基体170にモノリシックに形成することにより、装置の小型化を図ることができる。
【0090】
光学モジュール2では、上述のように、光フィルター素子(エタロン)120aの基板123が光導波路である。したがって、光フィルター素子120aから射出される光L2のビーム径を制御することができ、ガスセル130に効率よく光L2を照射することができる。
【0091】
光学モジュール2では、半導体レーザー110が面発光型レーザーである。面発光型レーザーは、端面発光型レーザーと比べて、ゲインを生じさせるための電流が少ないため、低消費電力化を図ることができる。
【0092】
原子発振器1では、光学モジュール2を有している。したがって、上述のように、周波数安定度の高めることができる。
【0093】
なお、上述した実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。
【0094】
例えば、上述した図5に示す半導体レーザー110は、面発光型レーザーであったが、半導体レーザーは、端面発光型レーザーであってもよい。図6は、端面発光型レーザーを用いた光学モジュール2Dの要部を模式的に示す断面図である。以下、図6に示す光学モジュール2Dにおいて、上述した図5に示す光学モジュール2の構成と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
第1半導体層112は、基体170上に形成されている。第1半導体層112としては、例えば、第1導電型(例えばn型)AlGaAs層などを用いることができる。
【0096】
活性層114は、第1半導体層112上に形成されている。活性層114は、例えば、GaAsウェル層とAlGaAsバリア層とから構成される量子井戸構造を3つ重ねた多重量子井戸(MQW)構造を有する。
【0097】
第2半導体層116は、活性層114上に形成されている。第2半導体層116としては、例えば、第2導電型(例えばp型)のAlGaAs層などを用いることができる。
【0098】
例えば、p型の第2半導体層116、不純物がドーピングされていない活性層114、およびn型の第1半導体層112により、pinダイオードが構成される。第2半導体層116および第1半導体層112の各々は、活性層114よりも禁制帯幅が大きく、屈折率が小さい層である。活性層114は、光を増幅する機能を有する。第1半導体層112および第2半導体層116は、活性層114を挟んで、注入キャリア(電子および正孔)並びに光を閉じ込める機能を有する。
【0099】
半導体レーザー110では、電極118,119間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、活性層114において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。この生じた光を起点として、連鎖的に誘導放出が起こり、光強度が増幅される。光利得が光損失を上まわると、レーザー発振が起こり、レーザー光が生じ、活性層114の側面からレーザー光(第1光L1)が出射される。
【0100】
光学モジュール2Dによれば、半導体レーザー110として端面発光型レーザーを用いることで、半導体レーザー110の各層112,114,116の積層方向に対して垂直にレーザー光を出射することができる。したがって、各層112,114,116の膜厚の制御によって、半導体レーザー110と波長選択装置120との間のアライメントができる。したがって、半導体レーザー110と波長選択装置120との間のアライメント精度を向上させることができる。さらに、例えば、波長選択装置120にレーザー光を入射させるためのプリズム等の光学素子が不要となる。
【0101】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0102】
1 原子発振器、2 光学モジュール、10 光源、20 波長選択部、
20a 光フィルター部、20b 光フィルター特性制御部、
30 ガスセル、40 光検出部、50 制御部、110 半導体レーザー、
112 第1半導体層、114 活性層、116 第2半導体層、
118,119 電極、120 波長選択装置、120a 光フィルター素子、
120b 光フィルター特性制御装置、121 第1ミラー、122 第2ミラー、
123 基板、124 第1層、125 第2層、126 第3層、
128 第1電極、129 第2電極、130 ガスセル、
140 光検出器、150 電流駆動回路、160 変調回路、170 基体、
180 プリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子干渉効果を利用する原子発振器用の光学モジュールであって、
所定の波長を有する基本波、当該基本波の側帯波、を含む光を出射する光源と、
前記光源からの光が入射し、当該入射した光のうち前記側帯波を透過させる波長選択部と、
アルカリ金属ガスを封入し、前記波長選択部を透過した光が照射されるガスセルと、
前記ガスセルに照射された光のうち前記ガスセルを透過した光の強度を検出する光検出部と、
を含み、
前記波長選択部は、
所定の波長範囲の光を透過させる光フィルター部と、
前記光フィルター部が透過させる光の波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部と、
を有する、ことを特徴とする原子発振器用の光学モジュール。
【請求項2】
前記光フィルター部は、エタロンであり、
前記光フィルター特性制御部は、電気光学効果によって、前記光フィルター部が透過させる光の波長範囲を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載の原子発振器用の光学モジュール。
【請求項3】
前記光フィルター部は、
前記波長選択部に入射した光を反射させ、互いに対向する第1ミラーおよび第2ミラーと、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間に配置された基板と、
を有し、
前記基板の材質は、化合物半導体である、ことを特徴とする請求項2に記載の原子発振器用の光学モジュール。
【請求項4】
前記光フィルター特性制御部は、前記基板に電圧を印加する第1電極および第2電極を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の原子発振器用の光学モジュール。
【請求項5】
さらに、化合物半導体の基体を含み、
前記光源は、半導体レーザーであり、
前記光フィルター部および前記光源は、前記基体上に位置し、
前記第1電極は、前記基体の前記光フィルター部が位置する側と反対側に位置し、
前記第2電極は、前記光フィルター部の前記基体が位置する側と反対側に位置する、ことを特徴とする請求項4に記載の原子発振器用の光学モジュール。
【請求項6】
前記光フィルター部の前記基板は、前記基体側から積層された第1層、第2層、および第3層を有し、
前記第1層の屈折率および前記第3層の屈折率は、前記第2層の屈折率より小さく、
前記第2層は、前記光源から出射した光を伝播させる、ことを特徴とする請求項5に記載の原子発振器用の光学モジュール。
【請求項7】
前記光源は、端面発光型レーザーである、ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の原子発振器用の光学モジュール。
【請求項8】
前記光源は、面発光型レーザーである、ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の原子発振器用の光学モジュール。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の原子発振器用の光学モジュールを含む、ことを特徴とする原子発振器。
【請求項10】
量子干渉効果を利用する原子発振器であって、
所定の波長を有する基本波、当該基本波の側帯波、を含む光を出射する光源と、
前記光源からの光が入射し、当該入射した光のうち前記側帯波を透過させる波長選択部と、
アルカリ金属ガスを封入し、前記波長選択部を透過した光が照射されるガスセルと、
前記ガスセルに照射された光のうち前記ガスセルを透過した光の強度を検出する光検出部と、
を含み、
前記波長選択部は、
所定の波長範囲の光を透過させる光フィルター部と、
前記光フィルター部が透過させる光の波長範囲を変化させる光フィルター特性制御部と、
を有する、ことを特徴とする原子発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191119(P2012−191119A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55432(P2011−55432)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】