説明

原点位置検出回路

【課題】検出部から出力される原点パターンの関与を受けた出力電圧信号のDC成分の変動があっても、確実に原点信号の検出位置の再現性の向上が可能となる。
【解決手段】原点を示す原点パターン112が設けられたスケール110と、スケール110に対して相対変位可能である検出ヘッド120と、を備えるエンコーダ100で、検出ヘッド120の受光部126から出力される原点パターン112の関与を受けた出力電圧信号φZから原点の位置を示す原点信号PZを生成するためのコンパレータ132を有する原点位置検出回路であって、出力電圧信号φZを平滑化するDC電圧検出回路128と、出力電圧信号φZとDC電圧検出回路128から出力されるDC電圧信号Zdcとの差動増幅を行う差動増幅回路130と、を備え、差動増幅回路130の差動増幅信号Zoutがコンパレータ132に入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原点を示す原点パターンが設けられたスケールと、該スケールに対して相対変位可能である検出ヘッドと、を備えるエンコーダで、該検出ヘッドの検出部から出力される該原点パターンの関与を受けた出力電圧信号から前記原点の位置を示す原点信号を生成するためのコンパレータを有する原点位置検出回路に係り、特に前記出力電圧信号のDC成分の変動があっても原点信号の検出位置の再現性の向上が可能な原点位置検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電式エンコーダにおいては、特許文献1に示されるような原点位置の検出方式が提案されている。このような原点位置の検出方式において、例えば、光源としてのLEDと受光部(検出部)としてのフォトトランジスタとを用いた場合には、図10(A)に示すような原点位置検出回路が基本構成とされている。図10(A)では、受光部26であるフォトトランジスタのエミッタ端(出力端)に負荷となる抵抗R2をグランドとの間に接続する。そして、その出力端をコンパレータ32のマイナス入力端子に接続し、コンパレータ32のプラス入力端子に抵抗R10、R11で電源電圧VDDを分圧して得られる閾値電圧Zshを入力する。閾値電圧Zshは変化しないため、この原点位置検出回路では、受光部26から出力された(原点パターンの関与を受けた)出力電圧信号φZが、一定の値である閾値電圧Zshとコンパレータ32で比較されデジタル信号に変換されることで、原点位置を示す原点信号PZが生成される。なお、原点位置検出回路からの原点信号PZは、電源投入時において、検出ヘッドを搭載した制御機械(移動ステージ)の移動範囲内の絶対位置を認識するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−97726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LEDやフォトトランジスタの劣化、周囲温度の変動、電源電圧VDDの変動、および光電式エンコーダのスケールと検出ヘッドとの経時的な位置変化(スケールの制御機械若しくは検出ヘッドと制御機械の接着状況の変動)などの影響により、図10(B)に破線で示す如く、出力電圧信号φZのDC成分が変動(ΔφZ)する(出力電圧信号φZのDC成分とは、原点位置における出力電圧信号φZの変動(他の比較的早い周期の一過性の出力電圧信号φZの変動を含む)を除いた緩やかな電圧変動を含むほぼ直流的な電圧成分をいう)。このために、原点信号PZが変化してしまい、結果的に原点信号の検出位置ずれDVを起こしてしまうという不具合を発明者等は新たに見出した(なお、図10(B)中の符号TSWはスケールのインクリメンタルパターン(INCパターン)により生じた2相正弦波信号を示している)。
【0005】
なお、特開2007−240348号公報に記載のハイパスフィルタを用いることで前記DC成分の変動に追従させるようにすることも考えられる。その場合には、特開2007−240348号公報のハイパスフィルタで、原点信号を検出する際に得られる周波数成分を前記DC成分にかかる周波数成分と分離しなければならない。しかしながら、実際に原点の位置が全く不明であるような電源投入時などの場合には、光電式に限らずエンコーダの原点位置検出の際の検出動作は極めてゆっくりと行われる。このようなときには、原点信号を検出する際に得られる周波数成分はかなり低い周波数成分を含むこととなる。このため、上述のハイパスフィルタでは原点信号を検出する際に得られる周波数成分と前記DC成分にかかる周波数成分とを分離することは困難となる。つまり、特開2007−240348号公報の技術では、原点信号の検出位置ずれを確実に回避するのが困難であると考えられる。
【0006】
本発明は、前記問題点を解消するべくなされたもので、検出部から出力される原点パターンの関与を受けた出力電圧信号のDC成分の変動があっても確実に原点信号の検出位置の再現性の向上が可能な原点位置検出回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、原点を示す原点パターンが設けられたスケールと、該スケールに対して相対変位可能である検出ヘッドと、を備えるエンコーダで、該検出ヘッドの検出部から出力される該原点パターンの関与を受けた出力電圧信号から前記原点の位置を示す原点信号を生成するためのコンパレータを有する原点位置検出回路であって、前記出力電圧信号を平滑化するDC電圧検出回路と、該出力電圧信号と該DC電圧検出回路から出力されるDC電圧信号との差動増幅を行う差動増幅回路と、を備え、該差動増幅回路の差動増幅信号が前記コンパレータに入力されたことにより、前記課題を解決したものである。なお、出力電圧信号を特定の期間に充電する動作を含むことも、「出力電圧信号を平滑化する」と称する。
【0008】
本願の請求項2に係る発明は、前記エンコーダを光電式エンコーダとしたものであり、前記原点パターンに光を照射する光源と、前記検出部として該原点パターンからの光を受光する受光部と、を備えたものである。
【0009】
本願の請求項3に係る発明は、前記DC電圧検出回路に、前記出力電圧信号を通過させる抵抗と該抵抗の出力端とグランドとの間に接続されたコンデンサとから構成されるローパスフィルタを有したものである。
【0010】
本願の請求項4に係る発明は、更に、前記DC電圧検出回路に、前記ローパスフィルタの後段にボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプを有し、該OPアンプから前記DC電圧信号を出力したものである。
【0011】
本願の請求項5に係る発明は、前記DC電圧検出回路に、前段に前記出力電圧信号を通過させるアナログスイッチと該アナログスイッチの出力端とグランドとの間に接続されたコンデンサとを有し、該コンデンサの後段にボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプを有し、該アナログスイッチを、前記エンコーダをリセットするパワーオンリセット信号でオン/オフ制御し、前記OPアンプから前記DC電圧信号を出力したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検出部から出力される原点パターンの関与を受けた出力電圧信号のDC成分の変動があっても確実に原点信号の検出位置の再現性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る原点位置検出回路を備えるエンコーダの一例の概略を示す図
【図2】図1で示された検出ヘッドにおける原点ユニットとスケールの原点パターンとの関係を示す模式図
【図3】本発明の第1実施形態に係る原点位置検出回路の一例を示す概略ブロック図
【図4】図3の代表的な回路図を示す模式図
【図5】図3のφZ信号の概略を示す模式図
【図6】図3の各端子における信号の代表的な様子を示す模式図
【図7】本発明の第2実施形態に係る原点位置検出回路の代表的な回路図を示す模式図
【図8】図7における電源電圧とパワーオンリセット信号とφZ信号との関係を示す模式図
【図9】本発明の第3実施形態に係る原点位置検出回路を備えるエンコーダの検出ヘッドにおける原点ユニットとスケールの原点パターンとの関係を示す模式図
【図10】従来技術に基づく原点位置検出回路と各信号の関係を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0015】
最初に、本発明の第1実施形態に係る原点位置検出回路を備えるエンコーダの構成について、図1を用いて以下に説明する。
【0016】
エンコーダ100は、反射型の光電式リニアエンコーダであり、図1に示す如く、スケール110とスケール110に対して相対変位可能な検出ヘッド120とを備える。なお、スケール110と検出ヘッド120とは分離可能であり、セパレートタイプのエンコーダを構成している。
【0017】
前記スケール110には、図1に示す如く、X方向(相対変位可能な方向)に延びる原点パターン112とINCパターン114とが設けられている。原点パターン112は、原点位置を示す一箇所のみが透過可能とされたスリット(スリット幅W)を備える反射パターンで構成されている。INCパターン114は、X方向に一定間隔で配置された光学格子で構成されている。そして、INCパターン114は、その光学格子で光を反射するようにされている。
【0018】
前記検出ヘッド120は、図1に示す如く、スケール110の原点パターン112とINCパターン114とに非接触で対峙して配置されている。検出ヘッド120は、INCパターン114に向かって光源とレンズとX方向に並ぶ複数の受光アレイ部とを備えている(いずれも図示せず)。また、検出ヘッド120は、図2に示す如く、原点パターン112に向かって原点ユニット122を備えている。原点ユニット122は、光源124と受光部126(検出部)とを備えている。光源124は、例えばLEDであり、温度上昇とともに出力が低下する特性を有する。光源124は、原点パターン112に光を照射する。受光部126は、増幅回路を備え受光量に応じて出力が増大する例えばNPN型フォトトランジスタである。このため、受光部126は小型ではあるが、温度上昇とともに受光した光の増幅率が上昇する特性を有する。受光部126は、検出部として原点パターン112からの光を受光する。即ち、受光部126は原点パターン112の関与を受けた光を受光する。
【0019】
また、検出ヘッド120には、原点ユニット122の受光部126から出力される原点パターン112の関与を受けた出力電圧信号φZを処理して原点の位置を示す原点信号PZを生成し出力する原点位置検出回路と、受光アレイ部からの出力を処理して相対位置を求める位置検出回路とが、設けられている。ここでは、位置検出回路の説明は省略する。
原点位置検出回路は、図3、図4に示す如く、DC電圧検出回路128と差動増幅回路130とコンパレータ132とインバータINVとを備える。
【0020】
前記DC電圧検出回路128は、図4に示す如く、出力電圧信号φZを平滑化して、出力電圧信号φZのDC成分(原点位置における出力電圧信号φZの変動(他の比較的早い周期の一過性の出力電圧信号φZの変動を含む)を除いた緩やかな電圧変動を含むほぼ直流的な電圧成分)を取り出す。
【0021】
具体的には、DC電圧検出回路128は、図4に示す如く、前段にローパスフィルタとローパスフィルタの後段にOPアンプU1とを備える。
【0022】
ローパスフィルタは、出力電圧信号φZに直列接続され出力電圧信号φZを通過させる抵抗R5と抵抗R5の出力端とグランド(GND)との間に接続された(出力電圧信号φZに並列接続された)コンデンサC1とから構成されている。ローパスフィルタは、原点位置での出力電圧信号φZの変化をカットするように、その遮断周波数fcが設けられている(式(1))。本実施形態では、遮断周波数fcを規定する抵抗R5とコンデンサC1とは、式(2)で示す如く、図5に示すフォトトランジスタ出力信号時間幅Tzwよりも大きく設定されている。フォトトランジスタ出力信号時間幅Tzwは、原点パターン112のスリット幅W(図2)と原点検出時の検出ヘッド120の移動速度Vとから式(3)により求めることができる。
【数1】

【0023】
コンデンサC1の後段のOPアンプU1は、その反転入力端子が直接的にOPアンプU1の出力端子に接続されたボルテージ・フォロアの形に結線されている。OPアンプU1の非反転入力端子には抵抗R5の出力端が接続されていている。そして、OPアンプU1の出力端子からDC電圧信号Zdcが出力される。OPアンプU1は、理想的には入力インピーダンスが無限大、出力インピーダンスがゼロとされている。このため、OPアンプU1は、OPアンプU1の前後の回路におけるインピーダンスのつながりを分離することができる。
【0024】
前記差動増幅回路130は、図4に示す如く、抵抗R3、R4、R6、R7とOPアンプU2とを備える。出力電圧信号φZは、抵抗R3を介してOPアンプU2の反転入力端子に入力している。その反転入力端子は、抵抗R4を介してOPアンプU2の出力端子に接続されている。一方、OPアンプU2の非反転増幅端子には、DC電圧信号Zdcを抵抗R6、R7で分圧した電圧が入力するようにされている。ここで、抵抗R3、R4、R6、R7の間には式(4)の関係が成り立ち、抵抗比R3/R4(=R6/R7)で差動増幅回路130の増幅率が決定される。即ち、差動増幅回路130は、出力電圧信号φZとDC電圧検出回路128から出力されるDC電圧信号Zdcとの差動増幅を行う。差動増幅回路130からは、DC成分が0Vである(0Vを基準とした)差動増幅信号Zoutが出力される。
R3=R6、R4=R7 (4)
【0025】
前記コンパレータ132のマイナス端子には、図4に示す如く、差動増幅回路130の出力端が接続されている。即ち、差動増幅回路130の差動増幅信号Zoutが、コンパレータ132に入力される。一方、コンパレータ132のプラス端子には、電源電圧VDDを抵抗R8、R9で分圧した閾値電圧Zshが入力される。そして、コンパレータ132で、差動増幅信号Zoutと閾値電圧Zshとが比較され、原点の位置を示す原点信号PZを生成するための信号ZPが出力される。即ち、コンパレータ132は、原点パターン112の関与を受けた出力電圧信号φZから原点の位置を示す原点信号PZを生成するために用いられている。
【0026】
コンパレータ132の出力端子は、図4に示す如く、インバータINVの入力端子に接続されている。即ち、信号ZPはインバータINVで反転されて、原点信号PZとされる。
【0027】
なお、符号R1は光源124であるLEDとグランドとの間に接続された制限抵抗であり、符号R2は受光部126であるフォトトランジスタのエミッタ端とグランドとの間に接続された負荷抵抗である。
【0028】
次に、原点位置検出回路の動作について、図4、図6を用いて説明する。
【0029】
光源124からの光がスケール110の原点パターン112に照射されると、反射パターンの部分のみで光が反射され、受光部126であるフォトトランジスタで受光量に応じた電流がそのエミッタ端から抵抗R2に流れる。抵抗R2にかかる電圧は、図6(A)に示す出力電圧信号φZとなる。
【0030】
出力電圧信号φZは分岐され、一方はDC電圧検出回路128に入力する。DC電圧検出回路128の前段のローパスフィルタにより、出力電圧信号φZは平滑化され、そのDC成分のみが後段のOPアンプU1の非反転入力端子に入力する。このとき、OPアンプU1はボルテージ・フォロアの形で結線されている。このため、OPアンプU1の非反転入力端子に印加されたDC成分がそのままOPアンプU1の出力端子から、図6(A)に示すDC電圧信号Zdc(=DC成分)として出力される。DC電圧検出回路128で得られるDC成分(DC電圧信号Zdc)は、スリット幅Wによる出力電圧信号φZの変化よりも遅い出力電圧信号φZの変動(ΔφZ)に追従して、変動する(ΔZdc)。即ち、出力電圧信号φZの変動幅とDC電圧信号Zdcの変動幅とはほぼ同一となる(ΔφZ≒ΔZdc)。
【0031】
もう一方の分岐された出力電圧信号φZは、差動増幅回路130の一方の入力端に入力する。そしてもう一方の入力端にDC電圧信号Zdcが入力する。ここで、上述の如く、出力電圧信号φZが変動してもほぼ同一の変動幅でDC電圧信号Zdcも変動(ΔφZ≒ΔZdc)する。このため、差動増幅回路130からは、出力電圧信号φZが変動してもDC成分が0Vである(0Vを基準とした)差動増幅信号Zout(図6(A))が出力される。
【0032】
コンパレータ132には差動増幅信号Zoutと閾値電圧Zshとが入力され、図6(B)に示すような信号ZPが得られる。信号ZPは、インバータINVに入力されることで、反転されて図6(C)に示す原点信号PZとなる。
【0033】
このように、本実施形態では、従来にはない、出力電圧信号φZを平滑化するDC電圧検出回路128と、出力電圧信号φZとDC電圧信号Zdcとの差動増幅を行う差動増幅回路130と、を備えている。このため、LEDやフォトトランジスタの劣化、周囲温度の変動、電源電圧VDDの変動、およびのスケール110と検出ヘッド120との経時的な位置変化などの影響で生じる出力電圧信号φZのDC成分の変動(ΔφZ)があっても、DC電圧検出回路128を介して差動増幅回路130から出力される差動増幅信号Zoutは0Vを基準として0Vから立ち上がる信号とすることができる。即ち、本実施形態では、差動増幅信号Zoutから求められる(周期的ではなく孤立した)原点信号PZの検出位置の再現性の向上が実現できる。
【0034】
このとき、エンコーダ100が光電式エンコーダであり、原点パターン112に光を照射する光源124と、検出部として原点パターン112からの光を受光する受光部126と、を備えている。しかも、光源124がLEDで、受光部126がNPN型フォトトランジスタなので、互いの温度依存性が大きくてもその影響を排除しながら、原点位置検出回路を小型で且つ低コスト化することができる。
【0035】
また、DC電圧検出回路128は、出力電圧信号φZを通過させる抵抗R5と抵抗R5の出力端とグランドとの間に接続されたコンデンサC1とから構成されるローパスフィルタを有する。このため、出力電圧信号φZのDC成分(DC電圧信号Zdc)を簡単で小さい回路規模で抽出することができる。更に、コンデンサC1の後段にボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプU1を有し、OPアンプU1からDC電圧信号Zdcが出力される。即ち、OPアンプU1は、OPアンプU1の前後の回路におけるインピーダンスのつながりを分離することができる。このため、例えば、ローパスフィルタを規定する抵抗R5とコンデンサC1とを、差動増幅回路130の抵抗R6、R7に制限されることなく、簡単に且つ最適に規定することができる。
【0036】
即ち、本実施形態によれば、受光部126から出力される原点パターン112の関与を受けた出力電圧信号φZのDC成分の変動があっても確実に原点信号PZの検出位置の再現性の向上が可能となる。
【0037】
本発明について第1実施形態を上げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことはいうまでもない。
【0038】
例えば、第1実施形態においては、DC電圧検出回路128がローパスフィルタとOPアンプU1を用いたボルテージ・フォロアとの組み合わせを備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7、図8で示す第2実施形態の如くであってもよい。本実施形態においては、DC電圧検出回路228が、前段に出力電圧信号φZを通過させるアナログスイッチASWとアナログスイッチASWの出力端とグランドとの間に接続されたコンデンサC2とを有する。そして、DC電圧検出回路228が、コンデンサC2の後段にボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプU3を有する。ここで、アナログスイッチASWはエンコーダをリセットするパワーオンリセット信号PORでオン/オフ制御され、OPアンプU3からはDC電圧信号Zdcが出力されている。
【0039】
本実施形態では、パワーオンリセット信号PORが、エンコーダの外部の制御機械に設けられたパワーオンリセット回路より出力される(もっとも、エンコーダの内部にパワーオンリセット回路が設けられていてもよい。)。図8に示す如く、パワーオンリセット信号PORは、エンコーダの電源電圧VDDがON後に、出力電圧信号φZが一定の値となるまでの間オン制御される。このオン制御される時間Tonは、通常のパワーオンリセット信号PORであれば出力電圧信号φZのDC成分をコンデンサC2に十分に充電できる長さ(10msec以上)を有する。具体的には、アナログスイッチASWのオン抵抗をRswとしたとき、DC電圧信号ZdcとコンデンサC2に充電される充電電圧Zc2との差がOPアンプU3の出力ノイズレベルVn以下となることで、コンデンサC2を充電するための時間としての時間Tonが式(5)で求められる。
【数2】

【0040】
なお、ボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプU3は、第1実施形態で示したOPアンプU1と同じ機能を果たす。即ち、OPアンプU3は、コンデンサC2に充電された充電電圧Zc2(≒DC電圧信号Zdc)に影響を与えずに、充電電圧Vc2をDC電圧信号Zdcとして出力することができる。
【0041】
即ち、本実施形態では、パワーオンリセット回路が一般には必ず設けられていることから、そこから出力されるパワーオンリセット信号を流用できる。このため、DC電圧検出回路228自体を簡素で且つ小規模に構成することができる。そして、本実施形態では、DC電圧信号Zdcをパワーオンリセット信号PORの発生するごとに更新することができる。即ち、エンコーダの電源投入時、もしくはパワーオンリセット信号PORが定期的に出力されるようになされていればエンコーダの電源投入後にも、DC電圧信号Zdcを定期的に更新することができる。即ち、このDC電圧信号Zdcの更新に応じて出力電圧信号φZの変動に追従した原点位置を求めることができ、確実に原点信号PZの検出位置の再現性の向上が可能となる。
【0042】
また、第1実施形態においては、ボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプU1を介してDC電圧信号が出力されていたが、本発明はこれに限定されず、OPアンプU1がなくてもよい。その場合には、部品点数を低減でき、原点位置検出回路の小規模化と低コスト化とを促進することができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、原点パターンで透過可能とされた1箇所のスリットが原点位置とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、原点位置が複数設けられていてもよいし、原点位置のみが光を反射するようにされていてもよいし、スリット部分ではなくエッジ部分が原点位置とされていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、受光部としてNPN型フォトトランジスタを用いていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、受光部としてPNP型フォトトランジスタでもよいし、フォトダイオードなどを用いてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、反射型の光電式リニアエンコーダ(セパレートタイプ)に本発明の原点位置検出回路が適用されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、反射型の光電式リニアエンコーダであって一体型でもよい。あるいは透過型の光電式リニアエンコーダに本発明の原点位置検出回路が適用されて、図9に示す第3実施形態の如く、原点ユニット322が、スケール310を挟むように配置されていてもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、光学格子が等間隔に並ぶINCパターンが設けられたインクリメンタルスケールに本発明が適用されていたが、本発明はこれに限定されずに、疑似ランダム符号などを用いたアブソリュートスケールなどに適用してもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、直線形状のスケールを備える光電式リニアエンコーダを用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、エンコーダは静電容量式エンコーダや電磁誘導式エンコーダであってもよい。同時に、スケールが直線に限定されることなく円板状であるロータリーエンコーダに本発明が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の原点位置検出回路は、光電式エンコーダだけでなく、原点位置検出回路の要求される様々なエンコーダに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
26、126、226、326…受光部
32、132、232…コンパレータ
100…エンコーダ
110、210、310…スケール
112、312…原点パターン
114、314…INCパターン
120…検出ヘッド
122、322…原点ユニット
124、224、324…光源
128、228…DC電圧検出回路
130、230…差動増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原点を示す原点パターンが設けられたスケールと、該スケールに対して相対変位可能である検出ヘッドと、を備えるエンコーダで、該検出ヘッドの検出部から出力される該原点パターンの関与を受けた出力電圧信号から前記原点の位置を示す原点信号を生成するためのコンパレータを有する原点位置検出回路であって、
前記出力電圧信号を平滑化するDC電圧検出回路と、該出力電圧信号と該DC電圧検出回路から出力されるDC電圧信号との差動増幅を行う差動増幅回路と、を備え、
該差動増幅回路の差動増幅信号が前記コンパレータに入力されることを特徴とする原点位置検出回路。
【請求項2】
前記エンコーダが光電式エンコーダであり、前記原点パターンに光を照射する光源と、前記検出部として該原点パターンからの光を受光する受光部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の原点位置検出回路。
【請求項3】
前記DC電圧検出回路は、前記出力電圧信号を通過させる抵抗と該抵抗の出力端とグランドとの間に接続されたコンデンサとから構成されるローパスフィルタを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の原点位置検出回路。
【請求項4】
更に、前記DC電圧検出回路は、前記ローパスフィルタの後段にボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプを有し、該OPアンプから前記DC電圧信号が出力されることを特徴とする請求項3に記載の原点位置検出回路。
【請求項5】
前記DC電圧検出回路は、前段に前記出力電圧信号を通過させるアナログスイッチと該アナログスイッチの出力端とグランドとの間に接続されたコンデンサとを有し、該コンデンサの後段にボルテージ・フォロアの形に結線されたOPアンプを有し、
該アナログスイッチは前記エンコーダをリセットするパワーオンリセット信号でオン/オフ制御され、前記OPアンプから前記DC電圧信号が出力されることを特徴とする請求項1又は2に記載の原点位置検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−83228(P2012−83228A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229953(P2010−229953)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】