説明

原稿読取装置

【課題】 搬送ローラの回転方向の切替機構による消費電力を低減させることができる原稿読取装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 原稿長測定部81が原稿長を測定する。また、切替ローラ19又は23が、回転方向を正転状態及び逆転状態のいずれかに切替可能であり、原稿を搬送する。回転方向制御部84が、この回転方向を制御する。また、切替ローラ19,23は、逆転状態では正転状態に比べて消費電力が大きい。更に、回転方向制御部84が、原稿長に基づいて、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、回転方向を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿読取装置に係り、更に詳しくは、原稿を搬送するための搬送ローラの回転方向を切替可能な原稿読取装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
2以上の原稿を自動搬送し、これらの原稿を順次に読み取ることができる原稿読取装置が広く普及している。また、自動搬送によって原稿の両面読取を行うことができる原稿読取装置も広く普及している。両面読取が可能な原稿読取装置には、例えば、自動搬送中に原稿の表裏を反転させて1つのイメージセンサを用いて原稿の両面読取を行う2パス1スキャナ方式が知られている。
【0003】
2パス1スキャナ方式の両面読取には、原稿の搬送中に搬送方向を切り替えるスイッチバックを行うことにより、イメージセンサに対し原稿を同一方向に2回通過させるスイッチバック方式と、Uターン路を用いて搬送路を交差させ、1つのイメージセンサに対し原稿を逆方向に2回通過させるUターン方式が考えられる。
【0004】
例えば、Uターン方式の両面読取では、回転方向を切替可能な搬送ローラをイメージセンサの周辺に配置し、この回転方向を切り替えることにより、1つのイメージセンサに対し原稿を逆方向に2回通過させている。
【0005】
また、特許文献1には、スイッチバック方式の両面読取を行う原稿読取装置が記載されている。この原稿読取装置では、ソレノイドを用いて一部のギアの位置を変化させることにより、モータの回転駆動力を伝達するギアの枚数を増減させ、搬送ローラの回転方向を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−286632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の構成では、ソレノイドを用いて搬送ローラの回転方向を切り替える
ことにより、駆動モータの回転方向を切り替えることなく、搬送ローラの回転方向を切り替えている。このため、搬送ローラがいずれか一方に回転する期間中、ソレノイドを駆動し続ける必要があり、消費電力が増大してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、搬送ローラの回転方向の切替機構による消費電力を低減させることができる原稿読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明による原稿読取装置は、原稿長を測定する原稿長測定手段と、原稿を搬送し、回転方向を正転状態及び逆転状態のいずれかに切替可能な切替ローラと、上記回転方向を制御する回転方向制御手段とを備え、上記切替ローラが、上記逆転状態では上記正転状態に比べて消費電力が大きく、上記回転方向制御手段が、上記原稿長に基づいて、上記原稿長が短ければ上記逆転状態となる時間が短くなるように、上記回転方向を制御するように構成される。
【0010】
この様な構成によれば、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、切替ローラの回転方向を制御するので、消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。このため、切替ローラの回転方向の切替による電力消費を低減させることができる。
【0011】
第2の本発明による原稿読取装置は、上記構成に加え、回転力を生成する駆動モータと、複数のギアからなり、上記回転方向が互いに異なるように、上記切替ローラに上記駆動モータの回転力を伝達する第1及び第2の回転力伝達手段と、上記回転方向制御手段の制御信号に基づいて、第1の回転力伝達手段による回転力を上記切替ローラに伝達させる伝達状態及び当該回転力を遮断する遮断状態を切り替える電磁クラッチと、上記伝達状態では第2の回転力伝達手段による回転力を遮断する選択クラッチとを備え、上記電磁クラッチが、上記伝達状態では上記遮断状態に比べて消費電力が大きく、第1の回転力伝達手段が、上記逆転状態として上記切替ローラを回転させるように構成される。
【0012】
この様な構成によれば、伝達状態では、第1の回転力伝達手段による回転力が電磁クラッチによって切替ローラに伝達され、切替ローラが逆転状態となる。一方、遮断状態では、第1の回転力伝達手段による回転力が電磁クラッチによって遮断されるとともに、第2の回転力伝達手段による回転力が切替ローラに伝達され、切替ローラを正転状態となる。この場合に、原稿長が短ければ逆転状態となる期間が短くなるように、切替ローラの回転方向を制御するので、電磁クラッチの消費電力が大きい伝達状態となる期間をより短くすることができる。
【0013】
第3の本発明による原稿読取装置は、上記構成に加え、回転力を生成する駆動モータと、複数のギアからなり、上記切替ローラに上記駆動モータの回転力を伝達する回転力伝達手段と、上記回転方向制御手段の制御信号に基づいて、上記回転方向が互いに異なる第1及び第2の連結状態を切り替えるソレノイドとを備え、上記ソレノイドが、上記回転力を伝達させるギアの枚数を異ならせることにより、第1及び第2の連結状態を切り替え、第1の連結状態では、第2の連結状態に比べて上記ソレノイドの消費電力が大きく、上記回転力伝達手段が、上記逆転状態として上記切替ローラを回転させるように構成される。
【0014】
この様な構成によれば、ソレノイドを用いて回転力を伝達させるギアの枚数を異ならせることにより、駆動モータから伝達される回転力の方向を逆転させている。このため、簡単な構成によって切替ローラの回転方向を切り替えることができるので、原稿読取装置を小型化し、製品コストを低減させることができる。また、原稿長が短ければ逆転状態となる期間が短くなるように、切替ローラの回転方向を制御するので、ソレノイドの消費電力が大きい第2の連結状態となる期間をより短くすることができる。
【0015】
第4の本発明による原稿読取装置は、上記構成に加え、読取路上を搬送される原稿を読み取る原稿読取手段と、第1面の読取後の原稿をUターンさせ、再度上記読取路に逆方向から進入させるためのUターン路と、第2面の読取後の原稿を排出するための排出路とを備え、上記切替ローラが、上記読取路に配置されるように構成される。
【0016】
第5の本発明による原稿読取装置は、上記構成に加え、読取路上を搬送される原稿を読み取る原稿読取手段と、第1面の読取後の原稿をUターンさせ、再度上記読取路に逆方向から進入させるためのUターン路と、上記切替ローラが配置され、第2面の読取後の原稿を排出するための排出路とを備え、上記切替ローラが、上記Uターン路と上記排出路との交差部に配置されるように構成される。
【0017】
第6の本発明による原稿読取装置は、上記構成に加え、開状態及び閉状態を切替可能であり、上記閉状態では、上記排出路から排出された原稿の再繰込を抑制する再繰込抑制シャッタと、上記逆転状態の場合に上記閉状態となるように開閉状態を制御するシャッタ制御手段とを備え、上記再繰込抑制シャッタが、上記閉状態では上記開状態に比べて消費電力が大きく、上記シャッタ制御手段が、上記原稿長に基づいて、上記原稿長が短ければ上記閉状態となる時間が短くなるように、開閉状態を切り替えるように構成される。
【0018】
この様な構成によれば、再繰込抑制シャッタが排出された原稿の再繰込を抑制するので、原稿が切替ローラから離れる前に切替ローラの回転方向が切り替わった場合にも、原稿が搬送路へ再度繰り込まれることを抑制することができる。また、逆転状態の場合に閉状態となるように開閉状態が切り替えられるので、切替ローラの回転方向の切替と同様に、原稿長に基づいて、閉状態となる時間を異ならせることができる。従って、消費電力の大きい閉状態となる期間をより短くすることができる。
【0019】
第7の本発明による原稿読取装置は、上記構成に加え、搬送中の原稿を検出する原稿検出手段を備え、上記原稿長測定手段が、原稿の先端が上記原稿検出手段の検出位置に到達してから当該原稿の後端が上記検出位置を通過するまでの時間に基づいて、上記原稿長を測定するように構成される。
【0020】
この様な構成によれば、原稿の先端が原稿検出手段の検出位置に到達してから当該原稿の後端が検出位置を通過するまでの時間に基づいて、原稿長が測定される。このため、原稿長の異なる原稿が混載された場合にも、各原稿の原稿長をそれぞれ測定することができる。従って、より精度良く原稿長を測定することができ、切替ローラが消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。
【0021】
第8の本発明による原稿読取装置は、上記構成に加え、原稿長を測定する原稿長測定手段と、原稿の先端位置及び後端位置を特定する先後端特定手段と、原稿を搬送し、回転方向を正転状態及び逆転状態のいずれかに切替可能な切替ローラと、上記回転方向を制御し、上記先端位置に基づいて、上記回転方向を上記正転状態から上記逆転状態に切り替える回転方向制御手段とを備え、上記切替ローラが、上記逆転状態では上記正転状態に比べて消費電力が大きく、上記回転方向制御手段が、上記後端位置に基づいて、上記原稿長が短ければ上記逆転状態となる時間が短くなるように、上記逆転状態から上記正転状態に戻すまでの時間を異ならせるように構成される。
【0022】
この様な構成によれば、原稿の先端位置に基づいて、回転方向を正転状態から逆転状態に切り替えるので、原稿の先端が切替ローラに到達する前に回転方向を切り替えることができる。また、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、回転方向を逆転状態から正転状態に戻すまでの時間を異ならせるので、消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。このため、切替ローラの回転方向の切替による消費電力を低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による原稿読取装置は、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、切替ローラの回転方向を制御するので、消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。このため、切替ローラの回転方向の切替による電力消費を低減させることができる。
【0024】
また、原稿の先端位置に基づいて、回転方向を正転状態から逆転状態に切り替えるので、原稿の先端が切替ローラに到達する前に回転方向を切り替えることができる。また、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、回転方向を逆転状態から正転状態に戻すまでの時間を異ならせるので、消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。このため、切替ローラの回転方向の切替による消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態による原稿読取装置の一構成例を示した外観図であり、原稿読取装置の一例として複合機100が示されている。
【図2】図1の複合機100の要部の一構成例を示した断面図である。
【図3】片面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。
【図4】短原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。
【図5】短原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。
【図6】短原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。
【図7】長原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。
【図8】長原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。
【図9】長原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。
【図10】図1の複合機100の要部の一例を示した説明図である。
【図11】図10の選択クラッチ62を示した説明図である。
【図12】図1の複合機100の要部の一例を示した説明図である。
【図13】図1の複合機100の要部の一例を示した説明図である。
【図14】図1の複合機100の要部について一構成例を示した機能ブロック図である。
【図15】両面読取時の切替ローラ19の動作の一例を示したフローチャートである。
【図16】両面読取時の切替ローラ19の動作の一例を示したフローチャートである。
【図17】長原稿の両面読取時の切替ローラ23の動作の一例を示したフローチャートである。
【図18】切替ローラ23の回転方向の切替と再繰込抑制シャッタ24の開閉状態の切替との関係を示したタイムチャートである。
【図19】本発明の実施の形態2による複合機200の要部について一構成例を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態による原稿読取装置の一構成例を示した外観図であり、原稿読取装置の一例として複合機100が示されている。複合機(MFP:Multifunction Peripheral)100は、画像読取時に原稿の自動搬送を行うADF(Auto Document Feeder)装置10と、画像読取、印刷、ファクシミリ送受信などを行うMFP本体部30とによって構成される。
【0027】
MFP本体部30の操作パネル31には、ユーザが操作入力を行うためのスタートキー、テンキーなどの操作入力部31aと、ユーザに対し、動作状態を表示出力するためのディスプレイ31bが設けられている。例えば、ユーザは、操作入力部31aへの操作入力を行うことにより、原稿の片面読取及び両面読取のいずれかを指定することができる。
【0028】
また、MFP本体部30の上面には、図示しないコンタクトガラスが形成され、このコンタクトガラス上にADF装置10が開閉可能に配置されている。つまり、この複合機100は、コンタクトガラス上に載置された原稿を読み取るフラットベッド方式、ADF装置10により自動搬送中の原稿を読み取るADF方式のいずれの方式でも原稿を読み取ることができる。
【0029】
ADF装置10は、原稿トレイ11及び排出トレイ12を備え、その内部には搬送路が形成されている。原稿トレイ11内の原稿は、1枚ずつ分離して繰り込まれ、搬送路に沿って搬送され、排出トレイ12へ排出される。この搬送路は、MFP本体部30のコンタクトガラス上を通過するように形成されており、原稿は、コンタクトガラス上を通過する際にMFP本体部30によって読み取られる。
【0030】
図2は、図1の複合機100の要部の一構成例を示した断面図であり、主としてADF装置10の内部構造が模式的に示されている。図中のA1〜A11は原稿の搬送路である。B2は原稿の読取位置であり、B1及びB3〜B8は、2以上の搬送路の分岐点、合流点又は交差部である。
【0031】
<原稿読取部32>
原稿読取部32は、読取位置B2を通過する原稿の画像を読み取るイメージセンサであり、投光器32a及びラインセンサ32bからなるスキャナユニットを構成している。投光器32aからの照射光はコンタクトガラス上の原稿によって反射され、多数の受光素子が直線状に配置されたラインセンサ32bによって検出される。この配列方向と交差する方向に、原稿又はラインセンサ32bを相対的に移動させれば、2次元画像を読み取ることができる。ADF方式で画像読取を行う場合、スキャナユニットを静止させ、搬送中の原稿について画像読取が行われる。
【0032】
この複合機100では、2パス1スキャナ方式を採用し、1個の原稿読取部32を用いて原稿の両面読取を行っている。2パス1スキャナ方式とは、原稿の表裏を反転させ、同じ原稿読取部32で原稿を2回読み取らせる両面読取の方法である。一般的な2パス1スキャナ方式の原稿読取装置では、原稿をスイッチバックさせることにより原稿の表裏を反転させ、別の搬送路を通って原稿読取部32の手前に合流させ、原稿読取部32を同じ方向に2回通過させる。これに対し、複合機100では、原稿をUターンさせることによって原稿の表裏を反転させ、原稿読取部32を2回通過させる。このとき、原稿が原稿読取部32を通過する方向は、1回目及び2回目で逆方向となる。
【0033】
<搬送路A1〜A11>
ADF装置10内には、搬送路A1〜A11が形成され、片面読取、短原稿の両面読取及び長原稿の両面読取の場合に原稿の搬送経路がそれぞれ異なる。片面読取を行う場合、原稿は搬送路A1,A2,A3,A4,A9,A10の順に搬送される。この搬送経路を片面パスと呼ぶことにする。また、短原稿の両面読取を行う場合、A1,A2,A3,A4,A9,A11,A7,A2,A8,A4,A9,A10の順に搬送される。この搬送経路を短原稿用両面パスと呼ぶことにする。長原稿の両面読取を行う場合、A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7,A2,A8,A4,A9,A10の順に搬送される。この搬送経路を長原稿用両面パスと呼ぶことにする。
【0034】
搬送路A1及び搬送路A2は横向きU字状の搬送路を構成しており、搬送路A1を図中の右から左へ搬送された原稿が、読取位置B2を左から右へ通過する。搬送路A1は、原稿トレイ11から繰り込まれた原稿を分岐点B1まで搬送する導入路であり、いずれの搬送経路にも共通して用いられる。
【0035】
搬送路A2は、原稿を双方向に搬送可能な読取路であり、原稿読取部32により、搬送路A2上の読取位置B2を通過する原稿の読取が行われる。搬送路A2では、搬送路A1から進入した原稿を分岐点B3まで搬送し、搬送路A3側へ進入させる。また、搬送路A7から進入した原稿を分岐点B1まで搬送し、搬送路A8側へ進入させる。ここでは、分岐点B1から読取位置B2を通過して分岐点B3へ至る搬送方向を順方向とし、分岐点B3から分岐点B1へ至る搬送方向を逆方向とする。
【0036】
原稿トレイ11内に収容された原稿の上面を第1面、下面を第2面とすれば、順方向に読取位置B2を通過する原稿の第1面の読取が行われ、逆方向に読取位置B2を通過する原稿の第2面の読取が行われる。
【0037】
搬送路A3,A4,A5,A6,A7は、この順に、搬送路A2を順方向に通過した長原稿をUターンさせて表裏を反転させる長原稿用Uターン路を構成しており、この長原稿用Uターン路を通過した原稿は、分岐点B3から搬送路A2へ逆方向に進入する。搬送路A3は、順方向に搬送路A2を通過した原稿を分岐点B3からほぼ直線的に合流点B4へ搬送する搬送路である。搬送路A4は、搬送路A3又は搬送路A8を通過した原稿を分岐点B5へ直線的に搬送し、搬送路A9又は搬送路A5の上側へ進入させる搬送路である。搬送路A5は、搬送路A4を通過した原稿を交差部B8へ搬送し、搬送路A6へ進入させる横向きU字状の搬送路であり、時計回りに原稿を搬送することによって表裏を反転させる。搬送路A6は、搬送路A5を通過した原稿を合流点B7へ直線的に搬送する搬送路である。搬送路A7は、搬送路A6を通過した原稿を分岐点B3へほぼ直線的に搬送し、搬送路A2へ逆方向に進入させる搬送路である。
【0038】
搬送路A3,A4,A9,A11,A7は、この順に、搬送路A2を順方向に通過した短原稿をUターンさせて表裏を反転させる短原稿用Uターン路を構成しており、この短原稿用Uターン路を通過した原稿は、長原稿用Uターン路を通過した原稿と同様、分岐点B3から搬送路A2へ逆方向に進入する。搬送路A9は、搬送路A4を通過した原稿を分岐点B6へ搬送し、搬送路A10又は搬送路A11へ進入させる搬送路である。搬送路A11は、搬送路A9を通過した原稿を合流点B7へ搬送する搬送路である。搬送路A9及びA11は、それぞれ横向きU字状の上半分及び下半分に相当する搬送路であり、時計回りに原稿を搬送することによって表裏を反転させる。
【0039】
搬送路A8,A4,A9,A10は、この順に、搬送路A2を逆方向に通過した長原稿又は短原稿を排出口25へ搬送する排出路を構成している。搬送路A8は、逆方向に搬送路A2を通過した原稿を分岐点B1からほぼ直線的に合流点B4へ搬送する搬送路である。搬送路A10は、搬送路A9を通過した原稿を交差部B8へほぼ直線的に搬送し、排出口25から排出する搬送路である。すなわち、交差部B8では、排出路及び長原稿用Uターン路が交差している。
【0040】
<原稿トレイ11>
原稿トレイ11は、原稿を積み重ねて載置する原稿台13と、これらの原稿を位置決めするための原稿ストッパ14とを備えている。原稿台13上の原稿は、送り方向の先端(図中では左端)が原稿ストッパ14によって位置決めされており、最上部の原稿の先端付近が繰込ローラ15に接触した状態となっている。
【0041】
複合機100では、繰込ローラ15及び複数の搬送ローラにより原稿の繰込又は搬送が行われる。ここでは、繰込ローラ15,分離ローラ16a,リタードローラ16b及びレジストローラ17が、第1の駆動モータにより駆動され、複数の搬送ローラ18、切替ローラ19及び切替ローラ23が第2の駆動モータにより駆動されるものとする。
【0042】
<繰込ローラ15>
繰込ローラ15は、原稿トレイ11内の原稿を搬送路へ繰り込む原稿繰込手段である。繰込ローラ15及び分離ローラ16aは原稿の送り方向に回転駆動され、リタードローラ16bは戻り方向に回転駆動される。このため、原稿トレイ11内の原稿は、上から順に繰込ローラ15によって搬送路A1へ繰り込まれ、原稿が重送状態で繰り込まれた場合、互いに逆回転している分離ローラ16a及びリタードローラ16bによって最上部の原稿のみが分離され、送り方向に搬送される。
【0043】
<レジストローラ17>
レジストローラ17は、繰込ローラ15及び分離ローラ16aと非同期に回転させることが可能な搬送ローラであり、分離ローラ16a及び分岐点B1に挟まれた搬送路A1上に配置されている。このレジストローラ17は、繰込ローラ15及び分離ローラ16aの駆動中に停止させることができる。レジストローラ17を停止させることにより、搬送中の原稿先端の搬送速度を急激に低下させ、原稿を弛ませて斜行を矯正することができる。ここでは、電磁クラッチを用いて第1の駆動モータから伝達される駆動力を遮断することにより、レジストローラ17を停止させるものとする。
【0044】
<搬送ローラ18>
搬送ローラ18は、回転駆動される駆動ローラと、搬送路を挟んで駆動ローラに対向して配置された従動ローラからなる。搬送路A1〜A11には、最短の原稿長より短い間隔で多数の搬送ローラ18が配置され、これらの搬送ローラ18によって原稿が搬送路上を搬送される。ここでは、各搬送ローラ18が互いに同期して回転するものとする。
【0045】
第2の駆動モータは、搬送ローラ18、切替ローラ19及び切替ローラ23をそれぞれ駆動する。このとき、切替ローラ19及び切替ローラ23は、搬送ローラ18とは非同期に駆動される。
【0046】
<切替ローラ19>
切替ローラ19は、回転方向を切替可能な搬送ローラであり、ここでは、読取位置B2と分岐点B1とに挟まれた搬送路A2上に配置されている。この切替ローラ19は、正転状態では原稿を順方向に搬送し、逆転状態では原稿を逆方向に搬送する。切替ローラ19は、例えば、ソレノイド及び電磁クラッチを用いることにより、その回転方向が反転される。
【0047】
<切替ローラ23>
切替ローラ23は、回転方向を切替可能な搬送ローラであり、搬送路A5と搬送路A10との交差部B8に配置されている。この切替ローラ23は、正転状態では、搬送路A10上の原稿を排出口25から排出トレイ12へ排出する。逆転状態では、搬送路A5上の原稿を搬送路A6へ進入させる。切替ローラ23の回転方向は、例えば、切替ローラ23に回転力を伝達する電磁クラッチのオンオフを切り替えることによって反転される。
【0048】
<再繰込抑制シャッタ24>
再繰込抑制シャッタ24は、切替ローラ23の近傍に配置され、排出口25から排出された原稿の再繰込を抑制する再繰込抑制手段である。例えば、原稿の排出時に原稿が切替ローラ23に接触した状態となっている場合に、切替ローラ23の逆転によって原稿が搬送路A7側へ再度繰り込まれることを抑制している。
【0049】
<分岐爪21,22>
分岐爪21及び22は、2以上の搬送路のうち、いずれかを原稿の搬送先として選択する搬送経路の切替手段であり、例えば、爪状の回転部材と図示しないソレノイドとにより構成される。この場合、ソレノイドが回転部材を回動させることによって、搬送先が選択される。
【0050】
分岐爪21は、搬送路A4上の原稿を搬送路A5及びA9のいずれかへ案内する搬送経路の切替手段であり、分岐点B5に配置されている。具体的には、長原稿用Uターン路へ原稿を案内する場合には、原稿を搬送路A5側へ進入させる。一方、短原稿用Uターン路又は排出路へ原稿を案内する場合には、原稿を搬送路A9側へ進入させる。
【0051】
分岐爪22は、搬送路A9上の原稿を搬送路A10及びA11のいずれかへ案内する搬送経路の切替手段であり、分岐点B6に配置されている。具体的には、短原稿用Uターン路へ原稿を案内する場合には、原稿を搬送路A11側へ進入させる。一方、排出路へ原稿を案内する場合には、原稿を搬送路A10側へ進入させる。
【0052】
原稿トレイ11内に収容された原稿の上面を第1面、下面を第2面とすれば、長原稿用両面パス及び短原稿用両面パスでは、第1面及び第2面の順で原稿が2回読み取られ、片面パスでは、原稿の第1面のみが読み取られる。すなわち、長原稿用両面パスが選択されている場合、原稿は、搬送路A1を経由して、搬送路A2上を順方向に搬送され、原稿読取部32により、搬送路A2上の読取位置B2においてその第1面が読み取られる。その後、原稿は、搬送路A3,A4,A5,A6,A7からなる長原稿用Uターン路を経由して、搬送路A2上を逆方向に搬送され、その第2面が読み取られる。第2面の読取後、原稿は、搬送路A8,A4,A9,A10からなる排出路を経て排出口25から排出される。長原稿用両面パスでは、短原稿用両面パスに比べてUターン路の経路長が短く、より原稿長の長い原稿の両面読取を行うことができる。
【0053】
短原稿用両面パスでは、原稿が、長原稿用Uターン路の代わりに、搬送路A3,A4,A9,A11,A7からなる短原稿用Uターン路を搬送される点を除いて長原稿用両面パスと同じ搬送路を搬送される。短原稿用両面パスは、長原稿用両面パスに比べてUターン路の経路長が短く、Uターン路上の搬送時間を短くすることができる。このため、原稿長の短い原稿であれば、長原稿用両面パスに比べて原稿の搬送効率を向上させることができる。
【0054】
片面パスでは、第1面の読取までの搬送経路は、長原稿用両面パス及び短原稿用両面パスと共通であるが、その後、原稿はUターンすることなく、搬送路A3,A4,A9,A10を順に経由して排出口25へ排出される。
【0055】
<原稿検出センサDS1〜DS6>
ADF装置10には、複数の原稿検出センサDS1〜DS6が設けられている。原稿検出センサDS1及びDS2は、原稿トレイ11に設けられ、原稿台13に載置された原稿を検出している。一方、原稿検出センサDS3〜DS5は、それぞれ異なる検出位置で搬送中の原稿の到着又は通過を検出している。なお、これらの原稿検出センサDS1〜DS5には光センサを用いることができる。
【0056】
原稿検出センサDS1は、原稿トレイ11上に原稿が載置されているか否かを検出する原稿載置検出手段である。例えば、反射型の光センサを原稿ストッパ14付近の原稿台13に埋設し、原稿の先端付近を検出すれば、原稿の有無を判別することができる。
【0057】
原稿検出センサDS2は、原稿の送り方向の長さを検出する原稿長検出手段である。例えば、原稿検出センサDS1より後方の原稿台13に光センサを埋設しておくことにより、原稿長が所定の長さ以上であるか否かを判別することができる。この場合、サイズの異なる2以上の原稿が積み重ねて載置されていれば、最大の原稿長が検出される。また、送り方向の位置を互いに異ならせて2以上の原稿検出センサDS2を配置すれば、原稿長が所定範囲内の長さであることを検出することもできる。
【0058】
原稿検出センサDS3〜DS6は、搬送路上の予め定められた検出位置を監視し、搬送中の原稿の位置を検出する搬送状態検出手段であり、上記検出位置に対する原稿の到達又は通過を検出している。つまり、原稿の先端を検出している場合には、原稿が検出位置に到達したことを判別することができ、原稿の後端を検出している場合には、原稿が検出位置を通過したことを判別することができる。また、例えば、原稿検出センサDS3〜DS6による原稿検出後の搬送距離を測定することにより、搬送中の原稿の位置を特定することができる。
【0059】
原稿検出センサDS3は、分離ローラ16a及びレジストローラ17に挟まれた搬送路A1上に配置され、繰込ローラ15によって原稿トレイ11から搬送路A1に繰り込まれた原稿を検出している。原稿検出センサDS3は、例えば、停止中のレジストローラ17を駆動させるタイミングを求めるために用いられる。
【0060】
原稿検出センサDS4は、搬送路A2上に配置されており、ここでは、分岐点B1及び切替ローラ19に挟まれた位置に配置されている。原稿検出センサDS4は、原稿読取部32による第1面の読取開始及び読取終了のタイミングを求めるためのセンサであり、順方向の搬送時には読取位置B2への到達又は通過直前の原稿の先後端を検出している。また、逆方向の搬送時には、読取位置B2に到達又は通過直後の原稿の先後端を検出している。
【0061】
原稿検出センサDS5は、搬送路A7上に配置され、搬送中の原稿を検出する。ここでは、原稿検出センサDS5が、読取位置B2に到達する直前の原稿を検出するものとする。この原稿検出センサDS5は、原稿読取部32による第2面の読取開始及び読取終了のタイミングを求めるためのセンサである。
【0062】
原稿検出センサDS6は、搬送路A10上の切替ローラ23よりも上流に配置されており、排出口25から排出される原稿の後端を検出している。
【0063】
この複合機100では、Uターン方式により、原稿をスイッチバックさせることなく原稿の両面読取を行うため、原稿の高速搬送を実現することができる。特に、切替ローラ19が原稿を双方向に搬送可能であることから、搬送ローラなどの部品点数を増加させて複合機100を大型化させることなく、読取路上の原稿の高速搬送を実現することができる。
【0064】
図3〜図9は、図2のADF装置10を用いて、原稿の読取を行う場合の様子を示した説明図である。ADF装置10では、片面読取、短原稿用両面読取及び長原稿用両面読取の3つの読取方法のいずれか一つがユーザによって選択される。なお、片面読取及び両面読取のいずれかをユーザが選択し、両面読取が選択された場合には、原稿検出センサDS2が検出した原稿サイズに基づいて、2つの読取方法のいずれかが選択されるようにしてもよい。
【0065】
<片面読取>
図3の(a)及び(b)は、片面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。片面読取では、原稿は、搬送路A1を経由し、搬送路A2を順方向に搬送されて読取位置B2を通過した後、搬送路A3,A4,A9,A10を順に経由して排出される。つまり、原稿は、読取位置B2を1回のみ通過し、排出トレイ12へ排出される。この場合、分岐点B5では、原稿が分岐爪21により搬送路A9側へ案内され、分岐点B6では、分岐爪22により搬送路A10側へ案内される。また、片面読取では、切替ローラ19及び切替ローラ23は正転にのみ駆動され、回転方向の切替は行われない。また、図中の(b)に示した通り、後続の原稿の繰込は、先行する原稿が排出される前に開始される。
【0066】
<短原稿の両面読取>
図4〜図6の(a)〜(g)は、短原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。図4(a)に示すとおり、原稿は、搬送路A1を経由し、搬送路A2を順方向に搬送されて読取位置B2に到達する。
【0067】
次に、図4(b)に示すとおり、原稿は、搬送路A3,A4,A9,A11,A7からなる短原稿用Uターン路を搬送される。この場合、分岐点B5では、原稿が分岐爪21により搬送路A9側へ案内され、分岐点B6では、分岐爪22により搬送路A11側へ案内される。また、図4(b)に示すとおり、原稿の先端が搬送路A7上の基準位置E1に到達したときに、切替ローラ19の回転方向が正転状態から逆転状態に切り替わる。原稿先端の基準位置E1への到達は、例えば、原稿検出センサDS4による原稿先端の検出後の搬送距離を測定することによって判別される。その後、原稿が搬送路A2へ逆方向に進入する。
【0068】
図4(c)〜図5(f)に示すとおり、搬送路A2を通過した原稿は搬送路A8,A4,A9,A10からなる排出路を搬送される。この場合、図5(d)に示すとおり、原稿の後端が基準位置E2を通過したときに、繰込ローラ15による次の原稿の繰込が開始される。なお、基準位置E2が、読取位置B2と一致する構成であってもよい。
【0069】
また、分岐点B5では、原稿は分岐爪21により、搬送路A4から搬送路A9側に案内される。更に、図5(e)に示すとおり、原稿の後端が切替ローラ19を通過すると、切替ローラ19の回転方向が逆転状態から正転状態に再度切り替わる。分岐点B6では、原稿は分岐爪22により、搬送路A9から搬送路A10側に案内され、排出トレイ12へ排出される(図5(f))。また、図6(g)に示すとおり、次の原稿が、正転駆動される切替ローラ19により、搬送路A2上を順方向に搬送され、その第1面が読み取られる。
【0070】
<長原稿の両面読取>
図7〜図9の(a)〜(h)は、長原稿の両面読取についての説明図であり、搬送路A1〜A11上における原稿の搬送状態が時系列順に示されている。原稿は、短原稿の両面読取の場合と同様に、搬送路A2を順方向に搬送されて読取位置B2に到達する(図7(a))。
【0071】
次に、図7(b)〜図8(d)に示すとおり、原稿は搬送路A3,A4,A5,A6,A7からなる長原稿用Uターン路を搬送される。この場合、分岐点B5では、原稿が分岐爪21により搬送路A5側へ案内される。また、図7(b)に示すとおり、原稿の先端が搬送路A5上の基準位置E3に到達したときに、切替ローラ23の回転方向を正転状態から逆転状態に切り替える。
【0072】
また、図7(c)に示すとおり、原稿の先端が搬送路A7上の基準位置E1に到達したときに、切替ローラ19の回転方向が正転状態から逆転状態に切り替わる。原稿先端の基準位置E1への到達は、例えば、原稿検出センサDS5の検出位置からの原稿先端の搬送距離を測定することによって判別される。その後、原稿が搬送路A2へ逆方向に進入する。
【0073】
更に、図8(d)〜(f)に示すとおり、搬送路A2を通過した原稿は搬送路A8,A4,A9,A10からなる排出路を搬送される。この場合、分岐点B5では、原稿が分岐爪21により、搬送路A9側へ案内され、分岐点B6では、原稿が分岐爪22により、搬送路A10側へ案内される。
【0074】
また、図8(e)に示すとおり、原稿の後端が切替ローラ23を通過すると、切替ローラ23の回転方向が逆転状態から正転状態に切り替わる。更に、図8(f)に示すとおり、原稿の後端が基準位置E2を通過したときに、繰込ローラ15による次の原稿の繰込が開始される。
【0075】
また、図9(g)に示すとおり、原稿の後端が切替ローラ19を通過すると、切替ローラ19の回転方向が逆転状態から正転状態に切り替わる。その後、図9(h)に示すとおり、正転駆動される切替ローラ19により、次の原稿が搬送路A2上を順方向に搬送され、その第1面が読み取られる。
【0076】
図10は、図1の複合機100の要部の一例を示した説明図であり、回転力伝達部50を示している。回転力伝達部50は、切替ローラ23に駆動モータ51の回転力を伝達する回転力伝達手段であり、駆動モータ51、固定ギア52〜59,61、電磁クラッチ60及び選択クラッチ62により構成される。
【0077】
駆動モータ51は、回転力を生成する駆動手段であり、軸51aを回転させる。この駆動モータ51は、例えば、ステッピングモータからなる。固定ギア52〜59,61は、回転軸を中心に回転する円板状のギアである。電磁クラッチ60は、固定ギア61に対し、固定ギア59から伝達される回転力を伝達又は遮断させる連結器である。例えば、電磁クラッチ60への電源供給が行われている状態では、内部のコイルが生成する電磁力によって電磁クラッチ60の駆動側と従動側とが互いに接触し、固定ギア59からの回転力が固定ギア61へ伝達される。一方、電磁クラッチ60への電源供給が行われていない状態では、内部の弾性部材の付勢力により、駆動側と従動側とが非接触状態となり、固定ギア59からの回転力が遮断される。以下、電磁クラッチ60への電源供給が行われている状態を伝達状態、電磁クラッチ60への電源供給が行われていない状態を遮断状態とする。
【0078】
選択クラッチ62は、固定ギア58又は61からの回転力を切替ローラ23に選択的に伝達する連結器である。ここでは、選択クラッチ62が、一定以下の回転力のみを伝達するトルクリミッタからなるものとする。
【0079】
図10の上側の破線に示すように、駆動モータ51の軸51a、固定ギア52,53,54,55,56,57,58及び選択クラッチ62は、それぞれこの順に連結されている。このため、駆動モータ51の回転力がこの順に伝達され、切替ローラ23が正転駆動される。すなわち、複数の固定ギア52〜58及び選択クラッチ62は、切替ローラ23を正転駆動させるための正転側回転力伝達部を構成している。
【0080】
更に、図10の下側の破線に示すように、固定ギア54,59、電磁クラッチ60、固定ギア61及び選択クラッチ62がそれぞれこの順に連結されている。すなわち、駆動モータ51から固定ギア54へ伝達された回転力は、固定ギア59、電磁クラッチ60、固定ギア61を経由して選択クラッチ62に伝達される。この場合、正転側回転力伝達部とは経由するギアの枚数が異なるため、切替ローラ23が逆転駆動される。すなわち、複数の固定ギア52〜54,59,61、電磁クラッチ60及び選択クラッチ62は、切替ローラ23を逆転駆動させるための逆転側回転力伝達部を構成している。正転側回転力伝達部及び逆転側回転力伝達部は、それぞれ複数のギアからなり、切替ローラ23の回転方向が互いに異なるように、切替ローラ23に駆動モータ51の回転力を伝達する第1及び第2の回転力伝達手段である。
【0081】
従って、電磁クラッチ60への電源供給が行われている伝達状態では、正転側回転力伝達部の固定ギア58と逆転側回転力伝達部の固定ギア61との両方から、互いに回転方向の異なる回転力が選択クラッチ62へ伝達される。この場合、選択クラッチ62に上限を超える回転力が加えられるため、固定ギア58からの回転力が遮断される。このため、切替ローラ23は、固定ギア61から伝達される回転力によって逆転駆動される。
【0082】
一方、電磁クラッチ60への電源供給が行われていない遮断状態では、逆転側回転力伝達部の固定ギア59により伝達される回転力が、電磁クラッチ60によって遮断される。このため、選択クラッチ62には、正転側回転力伝達部の固定ギア58のみから回転力が伝達される。この場合、選択クラッチ62に加えられる回転力が上限より小さくなることから、固定ギア58の回転力が選択クラッチ62を介して切替ローラ23へ伝達され、切替ローラ23が正転駆動される。
【0083】
すなわち、切替ローラ23が逆転駆動される伝達状態では、電磁クラッチ60への電源供給が行われるため、切替ローラ23が正転駆動される遮断状態と比べて消費電力が大きくなる。
【0084】
図11は、図10の選択クラッチ62を示した説明図である。選択クラッチ62は、一定以下の回転力のみを内軸623に伝達する連結器であり、例えば、トルクリミッタからなる。選択クラッチ62は、外部筐体621、コイルバネ622及び内軸623により構成される。外部筐体621は、円筒形状からなる部材であり、正転側回転力伝達部の固定ギア58と連結されている。この外部筐体621には、固定ギア58の回転力が伝達される。
【0085】
内軸623は、切替ローラ23と同一の回転軸を有し、切替ローラ23と連動して回転する。内軸623は、逆転側回転力伝達部の固定ギア61と連結され、固定ギア61の回転力が伝達される。また、外部筐体621に対してコイルバネ622を介して接続されている。コイルバネ622は、内軸623の外周面に螺旋状に巻き付けられた弾性部材であり、一定の収縮力により、内軸623を締め付けている。また、コイルバネ622の両端は、外部筐体621にそれぞれ固定されており、コイルバネ622は、外部筐体621と連動して回転する。
【0086】
固定ギア61からの回転力が伝達される伝達状態では、固定ギア58の回転力が外部筐体621に伝達されるとともに、固定ギア58とは回転方向の異なる回転力が、固定ギア61から内軸623に伝達される。従って、外部筐体621と内軸623との間に、内軸623に対するコイルバネ622の締め付け力を超える力が加えられる。このため、コイルバネ622が空転し、固定ギア58の回転力が内軸623に伝達されない。従って、切替ローラ23は、固定ギア61の回転力により、逆転駆動される。
【0087】
これに対し、固定ギア61からの回転力が伝達されない遮断状態では、固定ギア58の回転力のみが伝達されるため、外部筐体621と内軸623との間に加わる回転力が、コイルバネ622の締め付け力より小さくなる。このため、コイルバネの締め付け力により、内軸623が外部筐体621とともに回転し、切替ローラ23へ固定ギア58の回転力が伝達される。従って、切替ローラ23は、固定ギア58の回転力により、正転駆動される。
【0088】
図12は、図1の複合機100の要部の一例を示した説明図であり、切替ローラ19に駆動モータ51の回転力を伝達する回転力伝達部70を示している。図12(a)は正転状態における回転力伝達部70の連結状態を示し、図12(b)は逆転状態における回転力伝達部70の連結状態を示す。
【0089】
回転力伝達部70は、2以上のギアからなり、切替ローラ19に駆動モータ51の回転力を伝達する回転力伝達手段である。図12(a)に示すように、回転力伝達部70は、電磁クラッチ71、ソレノイドSND1、固定ギア72、移動ギア73〜75、プレート76及び切替ローラ19の軸19aからなる。電磁クラッチ71は、駆動モータから伝達される回転力を伝達又は遮断させる連結器である。ソレノイドSND1は、電源の供給状態に応じて、直線方向に可動鉄心SND1aを移動させる駆動手段である。例えば、電源が供給されている状態では、可動鉄心SND1aを吸引し、電源供給が停止されている状態では、図示しないバネなどの付勢手段により、可動鉄心SND1aを突出させる。固定ギア72は、回転軸72Aを中心に回転するギアである。移動ギア73〜75は、プレート76上にそれぞれ配置されている。プレート76は、上端がソレノイドSND1の可動鉄心SND1aに接続された板状部材であり、固定ギア72の回転軸72Aを中心に回転可能に構成されている。また、プレート76が回転すれば、プレート76上の移動ギア73〜75が移動する。
【0090】
図12(a)の連結状態では、ソレノイドSND1への電源供給が行われておらず、バネなどの付勢力により、ソレノイドSND1の可動鉄心SND1aが突出した状態となっている。また、図12(a)の破線に示すように、電磁クラッチ71、固定ギア72、移動ギア73,74、軸19aがこの順に連結されている。更に、移動ギア75が、移動ギア74に連結されている。また、駆動モータ51が電磁クラッチ71に連結されている。このため、駆動モータ51の回転力が、電磁クラッチ71、固定ギア72,移動ギア73,74、軸19aの順に伝達され、切替ローラ19が正転駆動される。
【0091】
ソレノイドSND1は、電源供給が行われれば、ソレノイドSND1の可動鉄心SND1aを吸引する動作を行う。この場合、この可動鉄心SND1aに接続されたプレート76が回転軸72Aを中心に時計回りに回転し、プレート76上に配置された移動ギア73〜75が左方向へ移動する。更に、移動ギア75が移動ギア74と軸19aとの間に連結され、図12(b)の連結状態となる。このとき、電磁クラッチ71、固定ギア72及び軸19aの配置は図12(a)と同一である。
【0092】
この連結状態では、図12(b)の破線が示すように、電磁クラッチ71、固定ギア72、移動ギア73,74,75,軸19aがこの順に連結され、駆動モータ51の回転力がこの順に伝達される。すなわち、図12(a)の状態と比べ、駆動モータ51と軸19aとの間に連結されるギアの枚数が1枚増加するため、軸19aの回転方向が反転し、切替ローラ19が逆転駆動される。このように、回転力伝達部70は、回転方向が互いに異なる2つの連結状態を切替可能であり、ソレノイドSND1の付勢力によって、回転力を伝達させるギアの枚数を異ならせ、2つの連結状態を切り替えている。この場合に、切替ローラ19が逆転状態となる連結状態では、ソレノイドSND1への電源供給が行われているため、切替ローラ19が正転状態となる連結状態に比べて消費電力が大きくなる。また、ソレノイドSND1への電源供給が停止されると、吸引されていた可動鉄心SND1aを再度突出させる。この場合、プレート76が反時計回りに回転することにより、図12(a)の状態に戻る。
【0093】
ここでは、連結状態の切替によるギアの破損を防止するため、電磁クラッチ71への電源供給を停止することによって駆動モータ51から伝達される回転力を遮断した後に、ソレノイドSND1への電源供給の開始動作又は停止動作を行うものとする。
【0094】
図13は、図1の複合機100の要部の一例を示した説明図であり、再繰込抑制シャッタ24が示されている。図13(a)には、再繰込の抑制が行われない開状態を示し、図13(b)には、再繰込の抑制が行われる閉状態を示す。
【0095】
再繰込抑制シャッタ24は、切替ローラ23の近傍に配置され、排出口25から排出された原稿の再繰込を抑制する再繰込抑制手段である。この再繰込抑制シャッタ24は、開状態及び閉状態を切替可能であり、閉状態では、排出路から排出された原稿の再繰込を抑制し、開状態では、再繰込の抑制を行わない。図13(a)に示すように、再繰込抑制シャッタ24は、先端部24a、アーム部24b及び回転軸24cからなる。先端部24aには、切替ローラ23に接触した状態の原稿を排出口25側へ押し出すための押出面が形成されている。アーム部24bは、一端に先端部24aが形成され、他端が回転軸24cに接続するU字状部材である。また、先端部24a及びアーム部24bは、回転軸24cを中心に回転可能に形成されている。
【0096】
正転状態では、切替ローラ23が、搬送路A10上を搬送される原稿を排出口25から排出トレイ12へ排出する。この際、原稿が切替ローラ23に接触した状態となり、排出口25から排出されないことがある。原稿が切替ローラ23に接触している時に、切替ローラ23の回転方向が逆転状態に切り替わると、原稿が搬送路内に再度繰り込まれ、他の原稿と接触して紙詰まりを起こす可能性がある。
【0097】
この再度の繰込を抑制するため、再繰込抑制シャッタ24は、図13(a)に示す開状態から図13(b)に示す閉状態へと回動し、先端部24aに形成された押出面によって原稿を排出口25側へ押し出す動作を行う。このとき、切替ローラ23と再繰込抑制シャッタ24とは、奥行き方向の位置が異なっているため、再繰込抑制シャッタ24の回動時に互いに接触することはない。また、再繰込抑制シャッタ24は、図示しないソレノイドにより回動される。すなわち、ソレノイドに電源供給が行われている状態では、ソレノイドの作用により、再繰込抑制シャッタ24が回動して閉状態となる。一方、ソレノイドへの電源供給が行われていない状態では、図示しない弾性部材の付勢力により、再繰込抑制シャッタ24が開状態へ戻る。すなわち、閉状態では開状態に比べて消費電力が大きくなる。
【0098】
図14は、図1の複合機100の要部について一構成例を示した機能ブロック図である。複合機100は、原稿検出センサDS2,DS4〜DS6、原稿長測定部81、通過時間算出部82、先端位置特定部83、原稿読取部32、回転方向制御部84、シャッタ制御部85、ソレノイドSND1、切替ローラ19、電磁クラッチ60、切替ローラ23、ソレノイドSND2及び再繰込抑制シャッタ24により構成される。
【0099】
原稿検出センサDS2は、原稿台13上に載置され、原稿の送り方向の長さを検出する原稿長検出手段である。サイズの異なる2以上の原稿が積み重ねて載置されていれば、最大の原稿長を検出する。
【0100】
原稿検出センサDS4〜DS6は、搬送中の原稿を検出する原稿検出手段であり、原稿の先端及び後端を検出すれば、先端検出信号及び後端検出信号をそれぞれ出力する。原稿検出センサDS4は、搬送路A2上の検出位置を監視し、搬送路A2を順方向又は逆方向に搬送される原稿をそれぞれ検出する。ここでは、原稿検出センサDS4が搬送路A2上の読取位置B2の近傍に配置され、順方向の搬送時には、読取位置B2に進入する直前の原稿を検出するものとする。
【0101】
原稿検出センサDS5は、搬送路A7上の検出位置を監視し、短原稿用Uターン路又は長原稿用Uターン路を搬送中の原稿を検出する。ここでは、原稿検出センサDS5が搬送路A7上の読取位置B2の近傍に配置され、読取位置B2に到達する直前の原稿を検出するものとする。
【0102】
原稿検出センサDS6は、搬送路A10上の切替ローラ23よりも上流に配置されており、排出口25から排出される原稿の後端を検出する。
【0103】
原稿長測定部81は、原稿長を測定する測定手段である。ここでは、原稿検出センサDS2の検出結果に基づいて、原稿長を測定するものとする。また、測定された原稿長を閾値と比較することにより、搬送中の原稿が長原稿及び短原稿のいずれであるかを判別する。
【0104】
通過時間算出部82は、原稿長測定部81により測定された原稿長に基づいて、原稿の通過時間を算出する演算手段である。例えば、切替ローラ19又は23を逆転状態とする期間を算出する。具体的には、切替ローラ19又は23を逆転状態に切り替えた後、原稿後端がこれらの切替ローラ19,23を通過するまでの期間を算出する。また、再繰込抑制シャッタ24を開状態から閉状態に切り替えた後、原稿後端が再繰込抑制シャッタ24を通過するまでの期間を算出する。ここでは、駆動モータ51がステッピングモータからなり、切替ローラ19,23を逆転状態とする期間、あるいは、再繰込抑制シャッタ24を閉状態とする期間をこのステッピングモータに供給されるステップ数として算出するものとする。
【0105】
先端位置特定部83は、原稿検出センサDS4〜DS6による検出結果に基づいて、搬送経路上における原稿位置を特定する位置特定手段である。具体的には、原稿検出センサDS4〜DS6の先端検出信号の入力後に、検出位置からの搬送距離を測定することにより、原稿先端の位置を算出している。ここでは、駆動モータ51に供給されるステップ数を計数することにより、原稿の搬送距離を測定するものとする。また、原稿検出センサDS2により検出された原稿長を加算することにより、原稿検出センサDS4の先端検出信号に基づいて原稿後端の位置を特定することができ、その逆を特定することもできる。なお、タイマーを用いて原稿の搬送時間を計測することにより、搬送距離を測定する構成であってもよい。
【0106】
回転方向制御部84は、切替ローラ19又は23の回転方向を制御する制御手段であり、回転方向を切り替えるための制御信号を生成する。具体的には、ソレノイドSND1への電源供給を開始又は停止させることにより、切替ローラ19の回転方向を切り替える動作を行う。また、電磁クラッチ60への電源供給を開始又は停止させることにより、切替ローラ23の回転方向を切り替える動作を行う。
【0107】
切替ローラ19及び23は、逆転状態では、正転状態に比べて消費電力が大きい。このため、回転方向制御部84は、切替ローラ19又は23が逆転状態となる期間を短くするように、切替ローラ19,23の回転方向をそれぞれ制御する。具体的には、切替ローラ19,23の回転方向を逆転状態に切り替えた後、通過時間算出部82により算出された通過時間が経過すれば、切替ローラ19,23の回転方向を逆転状態から正転状態に戻している。特に、原稿長が短くなれば、通過時間も短くなる。このため、原稿長が短くなれば、逆転状態となる期間を短くするように、切替ローラ19,23の回転方向をそれぞれ制御する。
【0108】
ソレノイドSND1は、回転方向制御部84の制御信号に基づいて、切替ローラ19の回転方向を切り替える動作を行う。より詳しくは、回転方向制御部84の制御信号に基づいて、ソレノイドSND1への電源供給が開始又は停止されることにより、図12の回転力伝達部70の連結状態を切り替える。この場合、ソレノイドSND1に電源供給が行われていない状態では、切替ローラ19を正転駆動させる。また、ソレノイドSND1に電源供給が行われている状態では、切替ローラ19を逆転駆動させる。
【0109】
電磁クラッチ60は、回転方向制御部84の制御信号に基づいて、切替ローラ23の回転方向を切り替える動作を行う。具体的には、回転方向制御部84の制御信号に基づいて、電磁クラッチ60への電源供給が行われる伝達状態と、電磁クラッチ60への電源供給が行われない遮断状態とが切り替えられる。この場合に、伝達状態では、切替ローラ23が逆転状態となり、遮断状態では、切替ローラ23が正転状態となる。
【0110】
シャッタ制御部85は、再繰込抑制シャッタ24の開閉状態を制御する制御手段であり、再繰込抑制シャッタ24の開閉状態を切り替えるための制御信号を生成する。具体的には、ソレノイドSND2への電源供給を開始又は停止させることにより、再繰込抑制シャッタ24の開閉状態を切り替える動作を行う。
【0111】
より詳しくは、切替ローラ23が逆転状態の場合に、再繰込抑制シャッタ24が閉状態となるように、開閉状態を切り替える。具体的には、切替ローラ23が逆転状態へ切り替わる前に再繰込抑制シャッタ24を閉状態に切り替えるとともに、切替ローラ23が正転状態へ切り替わった後に再繰込抑制シャッタ24を開状態に切り替える。
【0112】
また、再繰込抑制シャッタ24は、閉状態では、開状態に比べて消費電力が大きい。このため、シャッタ制御部85は、閉状態となる期間がなるべく短くなるように開閉状態を制御する。また、上述したように、回転方向制御部84は、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、切替ローラ23の回転方向を制御する。このため、シャッタ制御部85は、回転方向制御部84と同様に、原稿長に基づいて、原稿長が短ければ閉状態となる時間が短くなるように開閉状態を制御する。この様な構成を採用することにより、切替ローラ23が逆転状態である間、再繰込抑制シャッタ24を閉状態としつつ、閉状態となる期間を短縮することができる。
【0113】
ソレノイドSND2は、シャッタ制御部85の制御信号に基づいて、再繰込抑制シャッタ24の開閉状態を切り替える動作を行う。すなわち、シャッタ制御部85の制御信号に基づいて、ソレノイドSND2への電源供給状態が切り替えられる。この場合、ソレノイドSND2への電源供給が開始されれば、ソレノイドSND2により、再繰込抑制シャッタ24が開状態に切り替えられる。一方、ソレノイドSND2の電源供給が停止されれば、図示しない弾性部材により、再繰込抑制シャッタ24が閉状態に切り替えられる。
【0114】
原稿読取部32は、搬送路A2上を搬送される原稿を読み取るスキャナユニットである。この原稿読取部32は、順方向に搬送中の原稿の第1面の読取を行い、逆方向に搬送中の原稿の第2面の読取を行う。
【0115】
この様な構成を採用することにより、回転方向制御部84が、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、切替ローラ19又は23の回転方向を制御するので、消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。このため、切替ローラ19又は23の回転方向の切替による電力消費を低減させることができる。
【0116】
図15及び図16のステップS101〜S112は、両面読取時の切替ローラ19の動作の一例を示したフローチャートである。このフローチャートの処理は原稿の両面読取がユーザに指示されたときに開始される。まず、原稿長測定部81が、原稿検出センサDS2の検出結果に基づいて、原稿長を測定する(ステップS101)。次に、正転状態の切替ローラ19が、原稿を読取位置B2へ順方向に進入させる(ステップS102)。更に、図4(b)及び図7(c)に示すように、原稿先端が搬送路A7上の基準位置E1に到達したか否かが先端位置特定部83により判別される(ステップS103)。原稿先端が基準位置E1に到達したと判別されると、電磁クラッチ71が駆動モータ51からの回転力を遮断し、切替ローラ19を停止させる(ステップS104)。次に、回転方向制御部84がソレノイドSND1への電源供給を開始し、切替ローラ19の回転方向を逆転状態に切り替える(ステップS105)。その後、電磁クラッチ71が駆動モータ51からの回転力を切替ローラ19へ伝達させ、切替ローラ19を逆転駆動させる(ステップS106)。
【0117】
また、逆転状態の切替ローラ19が、原稿を逆方向へ搬送する(ステップS107)。このとき、回転方向制御部84が、切替ローラ19に対する原稿後端の通過を判別する(ステップS108)。原稿後端が切替ローラ19を通過したと判別されると、電磁クラッチ71が駆動モータ51からの回転力を遮断し、切替ローラ19を停止させる(ステップS109)。更に、回転方向制御部84がソレノイドSND1への電源供給を停止し、切替ローラ19の回転方向を正転状態に切り替える(ステップS110)。また、電磁クラッチ71が駆動モータ51からの回転力を切替ローラ19へ伝達させる(ステップS111)。また、次の原稿の有無が判別され、次の原稿がなければ処理を終了する(ステップS112)。一方、次の原稿がある場合には、ステップS101〜S111の処理が繰り返される。
【0118】
図17のステップS201〜S210は、長原稿の両面読取時の切替ローラ23の動作の一例を示したフローチャートである。このフローチャートの処理は、図15及び図16と同様、原稿の両面読取がユーザに指示されたときに開始される。まず、原稿長測定部81が、原稿検出センサDS2の検出結果に基づいて、原稿長を測定する(ステップS201)。
【0119】
次に、図7(b)に示すように、原稿先端が搬送路A5上の基準位置E3に到達したか否かが先端位置特定部83により判別される(ステップS202)。原稿先端が基準位置E3に到達すると、シャッタ制御部85が、ソレノイドSND2への電源供給を開始させ、再繰込抑制シャッタ24を閉状態に切り替える(ステップS203)。また、回転方向制御部84が、電磁クラッチ60への電源供給を開始させ、切替ローラ23を逆転状態に切り替える(ステップS204)。更に、逆転状態の切替ローラ23が、長原稿用Uターン路である搬送路A5上の原稿を搬送する(ステップS205)。このとき、回転方向制御部84が、切替ローラ23に対する原稿後端の通過を判別する(ステップS206)。
【0120】
原稿後端が切替ローラ23を通過すると、回転方向制御部84が電磁クラッチ60への電源供給を停止させて遮断状態とすることにより、切替ローラ23を正転状態に切り替える(ステップS207)。更に、シャッタ制御部85が、ソレノイドSND2への電源供給を停止させることにより、再繰込抑制シャッタを開状態に切り替える(ステップS208)。その後、正転状態の切替ローラ23が、搬送路A10上の原稿を排出口25へ搬送する(ステップS209)。また、次の原稿の有無が判別され、次の原稿がなければ処理を終了する(ステップS210)。一方、次の原稿がある場合には、ステップS201〜S209の処理が繰り返される。
【0121】
図18は、切替ローラ23の回転方向の切替と再繰込抑制シャッタ24の開閉状態の切替との関係を示したタイムチャートである。縦軸は切替ローラ23の回転方向と再繰込抑制シャッタ24の開閉状態とをそれぞれ示しており、横軸は時間を示している。
【0122】
複合機100では、切替ローラ23が逆転状態である間、再繰込抑制シャッタ24が閉状態となるように開閉状態が切り替えられる。すなわち、時刻tに再繰込抑制シャッタ24が開状態から閉状態に切り替わった後、時刻tに切替ローラ23の回転方向が正転状態から逆転状態に切り替えられる。また、逆転状態の切替ローラ23によって長原稿Uターン路上の原稿が搬送された後、時刻tに切替ローラ23の回転方向が逆転状態に切り替えられ、その後、時刻tに再繰込抑制シャッタ24が閉状態から開状態に切り替えられる。時刻tから時刻tまでの切替ローラ23が逆転状態となる期間と、時刻tから時刻tまでの再繰込抑制シャッタ24が閉状態となる期間とは、それぞれ原稿長に基づいて変更される。
【0123】
この様な構成を採用することにより、切替ローラ23の正転状態から逆転状態への切替時に、再繰込抑制シャッタ24が閉状態となっているため、切替ローラ23に接触した状態となっている原稿が、逆転状態の切替ローラ23により再度搬送路へ繰り込まれることを抑制することができる。また、再繰込抑制シャッタ24の閉状態から開状態への切替時に、切替ローラ23が正転状態となる。このため、再繰込抑制シャッタ24に原稿が接触した状態となったとしても、当該原稿が正転状態の切替ローラ23により再度搬送路へ繰り込まれることを抑制することができる。
【0124】
本実施の形態によれば、電磁クラッチ60の伝達状態では、逆転側回転力伝達部の固定ギア59による回転力が電磁クラッチ60によって切替ローラ23に伝達され、切替ローラ23が逆転状態となる。一方、遮断状態では、逆転側回転力伝達部の固定ギア59による回転力が電磁クラッチ60によって遮断されるとともに、正転側回転力伝達部の固定ギア58による回転力が切替ローラ23に伝達され、切替ローラ23が正転状態となる。この場合に、原稿長が短ければ逆転状態となる期間が短くなるように、切替ローラ23の回転方向を制御するので、電磁クラッチ60の消費電力が大きい伝達状態となる期間をより短くすることができる。
【0125】
また、ソレノイドSND1を用いて回転力を伝達させるギアの枚数を異ならせることにより、駆動モータ51から伝達される回転力の方向を逆転させている。このため、簡単な構成によって切替ローラ19の回転方向を切り替えることができるので、複合機100を小型化し、製品コストを低減させることができる。また、原稿長が短ければ逆転状態となる期間が短くなるように、切替ローラ19の回転方向を制御するので、2つの連結状態のうち、ソレノイドSND1の消費電力が大きい方の連結状態となる期間をより短くすることができる。
【0126】
更に、再繰込抑制シャッタ24が排出された原稿の再繰込を抑制するので、原稿が切替ローラ23から離れる前に切替ローラ23の回転方向が切り替わった場合にも、原稿が搬送路へ再度繰り込まれることを抑制することができる。また、逆転状態の場合に閉状態となるように開閉状態が切り替えられるので、切替ローラ23の回転方向の切替と同様に、原稿長に基づいて、閉状態となる時間を異ならせることができる。従って、開状態に比べて消費電力の大きい閉状態となる期間をより短くすることができる。
【0127】
なお、本実施の形態では、原稿長測定部81が、原稿検出センサDS2の検出結果に基づいて、原稿長を測定する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、原稿の先端が原稿検出センサDS4の検出位置に到達してから当該原稿の後端が検出位置を通過するまでの時間を測定し、この時間に基づいて原稿長を測定する構成であっても良い。
【0128】
この様な構成を採用することにより、原稿の先端が原稿検出センサDS4の検出位置に到達してから当該原稿の後端が検出位置を通過するまでの時間に基づいて、原稿長が測定される。このため、原稿長の異なる原稿が混載された場合にも、各原稿の原稿長をそれぞれ測定することができる。従って、より精度良く原稿長を測定することができ、切替ローラ19又は23が消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。
【0129】
実施の形態2.
実施の形態1では、回転方向制御部84が、原稿長に基づいて、切替ローラ19及び24の切替方向を制御する場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、原稿の先端位置及び後端位置に基づいて、切替ローラ19及び24の切替方向を制御する場合の例について説明する。
【0130】
図19は、本発明の実施の形態2による複合機200の要部について一構成例を示した機能ブロック図である。図14の場合と比較すれば、先端位置特定部83及び回転方向制御部84に代えて、先後端位置特定部91及び回転方向制御部92を備えている点が異なる。図14と同じ構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0131】
先後端位置特定部91は、原稿検出センサDS4〜DS6による検出結果に基づいて、搬送経路上における原稿の先端位置及び後端位置を特定する位置特定手段である。具体的には、原稿検出センサDS4〜DS6の先端検出信号又は後端検出信号の入力後に、検出位置からの搬送距離を測定することにより、原稿の先端位置又は後端位置を算出している。ここでは、駆動モータ51に供給されるステップ数を計数することにより、原稿の搬送距離を測定するものとする。
【0132】
回転方向制御部92は、切替ローラ19又は23の回転方向を制御する制御手段であり、回転方向を切り替えるための制御信号を生成する。具体的には、回転方向制御部84と同様に、ソレノイドSND1への電源供給を開始又は停止させることにより、切替ローラ19の回転方向を切り替える動作を行う。また、電磁クラッチ60への電源供給を開始又は停止させることにより、切替ローラ23の回転方向を切り替える動作を行う。
【0133】
また、切替ローラ19及び23が逆転状態となる期間を短くするように、切替ローラ19,23の回転方向をそれぞれ制御する。具体的には、原稿の先端位置に基づいて、切替ローラ19,23の回転方向を正転方向から逆転状態に切り替えた後、原稿の後端位置に基づいて、切替ローラ19,23の回転方向を逆転状態から正転状態に切り替える。
【0134】
例えば、原稿検出センサDS4による原稿先端の検出後に所定量の搬送が行われれば、原稿先端が基準位置E1(図7(c))に到達したと判別し、切替ローラ19の回転方向を正転状態から逆転状態に切り替える。更に、原稿検出センサDS5による原稿後端の検出後に所定量の搬送が行われれば、原稿後端が切替ローラ19を通過したと判別し、切替ローラ19の回転方向を逆転状態から正転状態に戻すものとする
【0135】
同様に、原稿検出センサDS4による原稿先端の検出後に所定量の搬送が行われれば、原稿先端が基準位置E3に到達したと判別し、切替ローラ23の回転方向を正転状態から逆転状態に切り替える。また、原稿検出センサDS4による原稿後端の検出後に所定量の搬送が行われれば、原稿後端が切替ローラ23を通過したと判別し、切替ローラ23の回転方向を逆転状態から正転状態に戻すものとする。
【0136】
本実施の形態によれば、原稿先端の検出タイミングに基づいて、切替ローラ19又は23の回転方向を逆転状態に切り替えるとともに、原稿の後端の検出タイミングに基づいて、切替ローラ19,23の回転方向を正転状態に切り替える。このため、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、切替ローラ19,23の回転方向を逆転状態から正転状態に戻すまでの時間を異ならせることができる。
【0137】
更に、回転方向制御部92が、原稿の先端位置に基づいて、回転方向を正転状態から逆転状態に切り替えるので、原稿の先端が切替ローラ19,23に到達する前に回転方向を切り替えることができる。また、原稿長が短ければ逆転状態となる時間が短くなるように、回転方向を逆転状態から正転状態に戻すまでの時間を異ならせるので、消費電力の大きい逆転状態となる期間をより短くすることができる。このため、切替ローラ19,23の回転方向の切替による消費電力を低減させることができる。
【符号の説明】
【0138】
12 排出トレイ
18 搬送ローラ
19,23 切替ローラ
21,22 分岐爪
24 再繰込抑制シャッタ
25 排出口
32 原稿読取部
50,70 回転力伝達部
51 駆動モータ
51a 軸
52〜59,61,72 固定ギア
60,71 電磁クラッチ
62 選択クラッチ
73〜75 移動ギア
76 プレート
81 原稿長測定部
82 通過時間算出部
83 先端位置特定部
84,92 回転方向制御部
85 シャッタ制御部
91 先後端位置特定部
100,200 複合機
621 外部筐体
622 コイルバネ
623 内軸
A1〜A11 搬送路
DS1〜DS6 原稿検出センサ
SND1,SND2 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿長を測定する原稿長測定手段と、
原稿を搬送し、回転方向を正転状態及び逆転状態のいずれかに切替可能な切替ローラと、
上記回転方向を制御する回転方向制御手段とを備え、
上記切替ローラが、上記逆転状態では上記正転状態に比べて消費電力が大きく、
上記回転方向制御手段が、上記原稿長に基づいて、上記原稿長が短ければ上記逆転状態となる時間が短くなるように、上記回転方向を制御することを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
回転力を生成する駆動モータと、
複数のギアからなり、上記回転方向が互いに異なるように、上記切替ローラに上記駆動モータの回転力を伝達する第1及び第2の回転力伝達手段と、
上記回転方向制御手段の制御信号に基づいて、第1の回転力伝達手段による回転力を上記切替ローラに伝達させる伝達状態及び当該回転力を遮断する遮断状態を切り替える電磁クラッチと、
上記伝達状態では第2の回転力伝達手段による回転力を遮断する選択クラッチとを備え、
上記電磁クラッチが、上記伝達状態では上記遮断状態に比べて消費電力が大きく、
第1の回転力伝達手段が、上記逆転状態として上記切替ローラを回転させることを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
回転力を生成する駆動モータと、
複数のギアからなり、上記切替ローラに上記駆動モータの回転力を伝達する回転力伝達手段と、
上記回転方向制御手段の制御信号に基づいて、上記回転方向が互いに異なる第1及び第2の連結状態を切り替えるソレノイドとを備え、
上記ソレノイドが、上記回転力を伝達させるギアの枚数を異ならせることにより、第1及び第2の連結状態を切り替え、
第1の連結状態では、第2の連結状態に比べて上記ソレノイドの消費電力が大きく、上記回転力伝達手段が、上記逆転状態として上記切替ローラを回転させることを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
読取路上を搬送される原稿を読み取る原稿読取手段と、
第1面の読取後の原稿をUターンさせ、再度上記読取路に逆方向から進入させるためのUターン路と、
第2面の読取後の原稿を排出するための排出路とを備え、
上記切替ローラが、上記読取路に配置されることを特徴とする請求項1又は3に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
読取路上を搬送される原稿を読み取る原稿読取手段と、
第1面の読取後の原稿をUターンさせ、再度上記読取路に逆方向から進入させるためのUターン路と、
上記切替ローラが配置され、第2面の読取後の原稿を排出するための排出路とを備え、
上記切替ローラが、上記Uターン路と上記排出路との交差部に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿読取装置。
【請求項6】
開状態及び閉状態を切替可能であり、上記閉状態では、上記排出路から排出された原稿の再繰込を抑制する再繰込抑制シャッタと、
上記逆転状態の場合に上記閉状態となるように開閉状態を制御するシャッタ制御手段とを備え、
上記再繰込抑制シャッタが、上記閉状態では上記開状態に比べて消費電力が大きく、
上記シャッタ制御手段が、上記原稿長に基づいて、上記原稿長が短ければ上記閉状態となる時間が短くなるように、開閉状態を切り替えることを特徴とする請求項5に記載の原稿読取装置。
【請求項7】
搬送中の原稿を検出する原稿検出手段を備え、
上記原稿長測定手段が、原稿の先端が上記原稿検出手段の検出位置に到達してから当該原稿の後端が上記検出位置を通過するまでの時間に基づいて、上記原稿長を測定することを特徴とする請求項1に記載の原稿読取装置。
【請求項8】
原稿長を測定する原稿長測定手段と、
原稿の先端位置及び後端位置を特定する先後端特定手段と、
原稿を搬送し、回転方向を正転状態及び逆転状態のいずれかに切替可能な切替ローラと、
上記回転方向を制御し、上記先端位置に基づいて、上記回転方向を上記正転状態から上記逆転状態に切り替える回転方向制御手段とを備え、
上記切替ローラが、上記逆転状態では上記正転状態に比べて消費電力が大きく、
上記回転方向制御手段が、上記後端位置に基づいて、上記原稿長が短ければ上記逆転状態となる時間が短くなるように、上記逆転状態から上記正転状態に戻すまでの時間を異ならせることを特徴とする原稿読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−74545(P2013−74545A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213487(P2011−213487)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】