説明

厨房排気用脱臭フィルタ及び厨房排気用脱臭装置並びにその製造方法

【課題】高性能で且つコンパクトであり、更に低コストでメインテナンスが簡便に行える厨房排気用脱臭フィルタ及び脱臭装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る厨房排気用脱臭フィルタは、コルゲートハニカム基材15a、15bの表面に、ゼオライト及び/又は活性炭からなる吸着剤16が無機バインダによって担持されている。このゼオライトは、SiOの含有量を[SiO](モル)、Alの含有量を[Al](モル)としたとき、[SiO]/[Al]比が20以上、比表面積が150m/g以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理臭を除去するのに好適な厨房排気用脱臭フィルタ及びこの厨房排気用脱臭フィルタを組み込んだ厨房排気用脱臭装置並びにその製造方法に関し、特に食物を加熱調理する過程で発生する臭気に最適な触媒と吸着剤とを配合し、脱臭に有効なコルゲートハニカムの表面に必要十分な量の触媒と吸着剤とを担持するフィルタ及び脱臭装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、住宅と商業地域が密接し、飲食店及び食品加工工場等から発生する臭気が生活環境に入り込み、これらの臭気に対する苦情が増加している。大規模の事業所から発生する臭気等の物質は、法的に規制されていることもあり、脱臭装置等の処理装置を設置して対策が施されている。一方、中小規模の飲食店等ではコスト及び設置スペースが限られ、コストが高く、メインテナンスに手間のかかる燃焼式及び活性炭固定層式等の脱臭装置の導入が困難である。
【0003】
特許文献1において、ホルマイト系コルゲートハニカムフィルタが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−143719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術においては、調理臭は、臭気成分の他に水分とオイルミストが含まれており、比表面積が小さく、親水性のホルマイト系粘土鉱物だけで形成されるフィルタでは脱臭性能が不十分である。このため、十分な脱臭性能を確保するには、フィルタボリュームが大きくなり、従って排気機構が大きくなるため、設置スペースに不自由があるという問題点もある。このフィルタ構造をそのまま縮小した構造を用いても排気容量が不十分であるため、実用には向かない。
【0006】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであって、高性能且つコンパクトで、更に低コストでメインテナンスが簡便であり、厨房用として好ましく、調理臭を除去するのに好適な厨房排気用脱臭フィルタ及びこの厨房排気用脱臭フィルタを組み込んだ厨房排気用脱臭装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る厨房排気用脱臭フィルタは、コルゲートハニカム基材の表面にゼオライト及び/又は活性炭が無機バインダによって担持されていることを特徴とする。
【0008】
前記ゼオライトは、SiOの含有量を[SiO](モル)、Alの含有量を[Al](モル)としたとき、[SiO]/[Al]比が20以上であることが好ましい。
【0009】
例えば、ゼオライトはZSM−5型とすることができる。
【0010】
ゼオライトの比表面積は150m/g以上であることが好ましい。
【0011】
また、コルゲートハニカム基材の表面に無機バインダによって担持される活性炭の比表面積は400m/g以上であることが好ましい。
【0012】
例えばゼオライト及び/又は活性炭の担持量はコルゲートハニカム基材1cc当たり0.05乃至0.5gである。
【0013】
コルゲートハニカム基材のセル(貫通孔)数は20乃至400セル/inchであることが好ましい。
【0014】
また、コルゲートハニカム基材のセル数は、80乃至150セル/inchであればより好ましい。
【0015】
本発明に係る厨房排気用脱臭フィルタは、コルゲートハニカム基材にマンガン酸化物触媒を担持させてもよい。
【0016】
この場合に、前記マンガン酸化物触媒は、銅酸化物又は鉄酸化物との複合酸化物とすることができる。
【0017】
上述の厨房排気用脱臭フィルタを組み込んだ本発明に係る厨房排気用脱臭装置は、コルゲートハニカム基材を通過する面風速が1乃至5m/sであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る厨房排気用脱臭装置は、厨房排気用脱臭フィルタの空間速度が1万乃至10万h−1であることが好ましい。
【0019】
例えば、厨房排気用脱臭フィルタのハニカム開口面を通風方向に向けて配置させ、更に1乃至5層の厨房排気用脱臭フィルタを各層間に間隔を設けて配列させることもできる。
【0020】
また、厨房排気用脱臭フィルタのハニカム開口面を通風方向に傾斜させて配置させ、更に1乃至5層の厨房排気用脱臭フィルタを各層間に間隔を設けて配列させることもできる。
【0021】
本発明に係る厨房排気用脱臭装置は、コルゲートハニカム基材の通風方向上流側に不織布(オイルミスト除去フィルタ)を配置することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の厨房排気用脱臭フィルタ及び厨房排気用脱臭装置は、コルゲートハニカム基材に無機バインダにより触媒及び吸着剤を担持させることによってフィルタを形成するため、従来技術の鉱物の混練物を押出成形して得るフィルタのように、強度が弱いという問題点を解消することができ、厨房排気用脱臭フィルタ及び厨房排気用脱臭装置の高強度化及び高性能化が可能になり、結果的に装置の小型化を実現した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る厨房排気用脱臭装置の構造を示す模式的斜視図である。厨房等からの原臭排気口1に、接続用フレキダクト6を介して、本実施形態の厨房排気用脱臭装置の入口チャンバ2が接続されている。この入口チャンバ2は、フィルタを格納するフィルタケース3に連結されている。フィルタケース3は、取手7を有するフィルタケース蓋4によって上部が開閉可能であり、フィルタケース蓋4はワンタッチ固定金具(パチン錠)8によってフィルタケース3に固定される。フィルタケース3の厨房等からの原臭排気口1と接続された面に対向する面は排気フード防虫金網9を張った排気フード5と連結されており、排気フード5の開口は斜め下に向けられている。
【0024】
図2は、フィルタケース3内部の構造を示す模式的斜視図である。フィルタケース3内部には、コルゲート脱臭フィルタ10を装填する複数個(図示例は2個)のコルゲート脱臭フィルタ用装填ガイド11と、その通風方向上流側にオイルミスト除去フィルタ18を装填するオイルミスト除去フィルタ用装填ガイド12が配置されている。
【0025】
図3(a)はコルゲートハニカム基材13を示す斜視図、図3(b)は一部平面図、図4はこのコルゲートハニカム基材13に吸着剤が担持された状態を示す一部拡大図である。このコルゲートハニカム基材13は平面状の複数個の基材部15a間に波形の基材部15bを配置し、基材部15a、15b間を接着して構成されている。このハニカム基材13は図3に示すように直方体形状をなすが、その厚さ方向の表裏両面において開口している。
【0026】
この基材部15a、15bの表面に、吸着剤としてのゼオライト及び/又は活性炭が添着されて、ハニカム脱臭フィルタの単位フィルタ17が構成されている。この添着においては、ゼオライト及び/又は活性炭を含む吸着剤を無機バインダ等のバインダにより基材部15a、15bの表面に担持させる。このとき、銅マンガン酸化物等の触媒も吸着剤と共に担持させることができる。
【0027】
このようにして、コルゲートハニカム基材13の基材部表面に吸着剤及び必要に応じて触媒が担持されたハニカム脱臭フィルタの単位フィルタ17は、図5に示すように、4個1組で、パッキン材14により組み立てられて、1個の脱臭フィルタ10となる。即ち、単位フィルタ17の側面同士を接触させて4個配置し、その周囲をパッキン材14により緊締することにより、1個の脱臭フィルタ10が構成されている。この脱臭フィルタ10は図2に示すフィルタケース3のガイド11に嵌め込まれる。図2においては、ガイド11が2個設けられているので、2個の脱臭フィルタ10が相互に平行に且つ相互間に適長間隔をおいて、フィルタケース3内に配置される。
【0028】
コルゲートハニカム基材13は、排気に触れる表面のみが脱臭機能に寄与する。従来技術の鉱物の混練物を押出成形して得るフィルタは、フィルタ全体が脱臭性能を備えていたのに対し、本発明の厨房排気用脱臭フィルタは、コルゲートハニカム基材13の表面にバインダによって吸着剤及び必要に応じて触媒を担持させるだけで十分な脱臭効果を得ることが可能である。これにより、本発明の厨房排気用脱臭フィルタは、脱臭材料として比較的高価な吸着剤及び触媒を有効に活用することができる。
【0029】
また、コルゲートハニカム基材13の材質及び形状には特に制限がないため、基材に薄い材質を選択することによって軽量化が可能で、更にセルを細かく形成することも可能になる。コルゲートハニカム基材13の材質としては、セラミック、アルミニウム、紙、段ボール及び無機繊維等の一般的な材質でよいが、不燃性又は難燃性を有するものが望ましい。例えば、波状と平面状のセラミック等のペーパを接着剤で貼り合わせ、通風方向にセルと呼ばれる貫通孔を多数持たせたものが挙げられる。
【0030】
コルゲートハニカム基材13の表面には、ゼオライト及び/又は活性炭がバインダによって担持されている。ゼオライトは、SiOの含有量を[SiO](モル)、Alの含有量を[Al](モル)としたとき、比疎水性の指標である[SiO]/[Al]比が20以上のものを使用することが好ましい。[SiO]/[Al]比が20未満の場合、厨房等から排出される排気に含まれる水分を吸湿し、脱臭機能が低下する。しかし、[SiO]/[Al]比が20以上である疎水性のゼオライトを使用することによって、吸湿による脱臭機能低下が起こらない。このような疎水性のゼオライトとして例えばZSM−5型を使用することができる。
【0031】
また、コルゲートハニカム基材13に担持させるゼオライト及び活性炭は、その比表面積が脱臭性能に影響を及ぼす。ゼオライト及び活性炭は、各比表面積を夫々150m/g以上及び400m/g以上とすることで、良好な脱臭性能を得ることができる。
【0032】
コルゲートハニカム基材13は、吸着剤担持量が0.05乃至0.5g/ccの範囲のものを使用することが好ましい。吸着剤担持量が0.05g/cc未満であれば、期待する脱臭性能が得られず、0.5g/ccより大きい場合、圧力損失(mmAq)が上昇するだけで、脱臭性能の向上は小さい。このように、コルゲートハニカム基材13は吸着剤担持量が0.05乃至0.5g/ccの範囲のものを使用することによって、圧力損失(mmAq)が少なく脱臭性能に優れたコルゲート脱臭フィルタ10を形成することができる。
【0033】
また、コルゲート脱臭フィルタ10は、厨房等、加熱機器を使用する環境に設置するものであるため、コルゲートハニカム基材13に触媒と吸着剤とを担持させるバインダは不燃性である無機バインダを使用することが好ましい。有機バインダは吸着剤の細孔を塞ぎ、性能が低下するが、無機バインダは性能低下が少ないという利点もある。
【0034】
ここで、コルゲートハニカム基材13は、セル数が20乃至400セル/inchの範囲のものを使用することが好ましい。セル数が20セル/inch未満では、十分な脱臭性能が望めず、400セル/inchより大きい場合、油分及び埃等によって目詰まりが発生する。また、コルゲートハニカム基材13のセル数は、80乃至150セル/inchであればよりコンパクトで圧力損失(mmAq)の低いコルゲート脱臭フィルタを実現することができる。
【0035】
また、コルゲートハニカム基材13の上述の添着材料にマンガン酸化物触媒を加えることによって、コルゲート脱臭フィルタ10に付着した油を分解し、フィルタ寿命を延長することができる。更に、マンガン酸化物の有する硫黄系の臭気成分に対する触媒分解作用により、脱臭性能を高めることができる。
【0036】
コルゲート脱臭フィルタ10の面風速は、1乃至5m/sの範囲で使用することが好ましい。面風速を1m/s未満にするためには大きな開口面積が必要であり、また、面風速が5m/sより大きい場合、送風機の追加を必要としない圧力損失6mmAq以下を達成することが難しく、実用的でない。
【0037】
また、コルゲート脱臭フィルタ10は空間速度(SV)1万乃至10万h−1の範囲で使用することが好ましい。空間速度を1万h−1未満にしても脱臭効果は上がらず、また、10万h−1より大きいと脱臭効果が不十分である。
【0038】
上述の如く構成された本実施形態の厨房排気用脱臭フィルタ及び厨房排気用脱臭装置においては、厨房等からの原臭排気は、フィルタケース3内に設置されたコルゲート脱臭フィルタ10を形成するコルゲートハニカム基材13に無機バインダにより担持された触媒及び吸着剤によって臭気を吸着されて脱臭され、排気フード5より大気に放出される。
【0039】
本実施形態のコルゲート脱臭フィルタ10においては、コルゲートハニカム基材13に無機バインダにより触媒及び吸着剤が担持されているため、コルゲートハニカム基材13自体は薄くても、強度を上げることができ、更にセルを細かく形成することができ、従来技術の鉱物の混練物を押出成形して得るフィルタのように、強度が弱いという問題点を解消することができ、厨房排気用脱臭フィルタ及び厨房排気用脱臭装置の高強度化及び小型化が可能になる。また、コルゲートハニカム基材13の材質及び形状には特に制限がないため、安価で且つ軽量な基材を選択することができる。このコルゲートハニカム基材に施す添着条件の最適化により、脱臭性能の優れた厨房排気用脱臭フィルタを形成することができる。
【0040】
本発明の厨房排気用脱臭装置は、複数のコルゲート脱臭フィルタ10を設置する構造にすることによって、気流の整流効果が得られ、更に脱臭効果が向上する。また、図8に示すように、複数のコルゲート脱臭フィルタ10のハニカム開口面を通風方向に向けて設置するほか、図9に示すようにコルゲート脱臭フィルタ10のハニカム開口面を通風方向に傾斜させて設置することにより、油煙等の粒子状成分を捕捉しやすくなり、更に臭気及び油分等の除去効果を向上することができる。
【0041】
更にまた、コルゲート脱臭フィルタ10の通風方向上流側に不織布(オイルミスト除去フィルタ18)を配置することもできる。このオイルミスト除去フィルタ18によって油分を除去することができるため、コルゲート脱臭フィルタ10の寿命を延長することができる。
【0042】
また、本厨房排気用脱臭装置の高性能化を図るべく、厨房排気用脱臭装置にオゾン及び熱源又は水源等を追加することもできる。
【0043】
次に、コルゲート脱臭フィルタ10の交換方法について説明する。本発明の厨房排気用脱臭装置のフィルタケース3は、取手7を有するフィルタケース蓋4によって上部が開閉可能であり、本発明のコルゲート脱臭フィルタ10は、コルゲートハニカム基材13の材質に制限がないため薄く、強度を有する材質を選択することにより軽量化されており、強度があるため、ユーザーが簡便にフィルタ交換作業を行うことができる。
【0044】
まず、フィルタケース蓋4のワンタッチ固定金具8を外し、フィルタケース蓋4を開ける。次に、コルゲート脱臭材10を引き抜く。そして、新しいコルゲート脱臭材10をコルゲート脱臭剤11に沿って装填する。その後、フィルタケース蓋4を締め、ワンタッチ固定金具8を留める。本発明のコルゲート脱臭フィルタ及び厨房排気用脱臭装置は、ユーザーが簡便にフィルタ交換作業を行うことができ、従来の厨房排気用脱臭装置において専門家がフィルタ交換する必要があり、メインテナンスが困難であった問題点を解決できる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の厨房排気用脱臭フィルタにおいて、その脱臭性能を比較例と比較試験した結果について説明する。添着処理の内容を以下のとおり行った。
【0046】
先ず、第1試験例について説明する。実施例1として、図3に示す120セル/inchのセラミックコルゲートハニカム基材を、銅マンガン複合酸化物触媒、ZSM−5型ゼオライト、無機バインダ及び水の混合液に含浸し、余分な混合液を風圧によって除外した後、120℃で乾燥した。下記表1はコルゲートハニカム基材13に上述の添着処理を行ったもの(実施例1)と添着処理を行わなかったもの(比較例1)のPA(Propion Aldehyde)脱臭性能(%)を示す。ここで、担持量(g/cc)とは、コルゲートハニカム基材容積1ccに対して添着された上記混合液の重量(g)である。
【0047】
コルゲートハニカム基材の容積(cc)算出方法は下記数式1による。幅(W)(cm)、長さ(L)(cm)及び厚さ(C)(cm)は図3中に示す各寸法の実測値である。
【0048】
【数1】

【0049】
また、セル数は、コルゲートハニカム基材13の1平方inch当たりにおいて、1段に存在する波の数(セルの数)をPとし、段数をhとしたとき、P×hで求められる。
【0050】
また、PA脱臭性能(%)は以下の方法により算出した。図3における幅(W)及び長さ(L)の面(開口面)が直径12mmの円型であり、厚さ(C)が30mmのコルゲートハニカム基材に、油臭の代表臭気成分であるプロピオンアルデヒド20ppmを25℃60%RH雰囲気下、風量2.7L/分、空間速度(SV)47000h−1で15分間通風し、各コルゲートハニカム基材入口部及び出口部においてプロピオンアルデヒド濃度を定量して下記数式2より脱臭効率(%)を算出した。そして、この脱臭効率(%)の15分平均値をPA脱臭性能(%)とした。
【0051】
【数2】

【0052】
【表1】

【0053】
上記表1に示すように、コルゲートハニカム基材の表面に、銅マンガン複合酸化物触媒、ZSM−5型ゼオライトを無機バインダによって担持させることによって、良好なPA脱臭性能を得ることができた。
【0054】
次に、第2試験例について説明する。下記表2は、異なる吸着剤を担持させた各コルゲートハニカム基材の夫々のPA脱臭性能(%)を示す。加えて、コルゲートハニカム基材のセル数(セル/inch)、吸着剤担持量(g/cc)、SiOの含有量を[SiO](モル)、Alの含有量を[Al](モル)としたときの比疎水性の指標である吸着剤の[SiO]/[Al]比及び吸着剤の比表面積(BET(Brunauer、Emmett、Teller)比表面積)(m/g)を示している。また、比較例6においては、吸着剤に調湿機能を有するセピオライトを使用した。ここで、PA脱臭性能(%)は実施例1及び比較例1において説明した方法により算出した。
【0055】
【表2】

【0056】
上記表2に示すように、コルゲートハニカム基材に担持させるゼオライトの[SiO]/[Al]比は20以上、ゼオライトの比表面積は150m/g以上で良好なPA脱臭性能を示すことが分かった。また、活性炭の比表面積は400m/g以上で良好なPA脱臭性能を示すことが分かった。
【0057】
次に、第3試験例について説明する。下記表3は、コルゲートハニカム基材の吸着剤担持量(g/cc)を変化させたときの圧縮強度(σ)(kg/cm)、圧力損失(A)(mmAq)及びPA脱臭性能(%)を示す。なお、表3の実施例8乃至11及び比較例8乃至9は、吸着剤としてゼオライトを使用したものであり、このゼオライトを無機バインダにより表3に示す担持量でコルゲートハニカム基材に担持させたものである。
【0058】
圧縮強度(σ)(kg/cm)は、幅20mm、長さ20mm、厚さ20mmのコルゲートハニカム基材を使用し、通風方向に加重を印加して、フィルタが破裂するときのコルゲートハニカム基材の断面積(A)(cm)に対する最大荷重(P)(kg)を測定し、下記数式3により算出した。
【0059】
【数3】

【0060】
また、圧力損失(A)(mmAq)は、直径40mm、厚さ30mmのコルゲートハニカム基材に、空気を面風速1m/sで通風し、コルゲートハニカム基材入口部及び出口部においてマノメータで差圧を測定した実測値である。
【0061】
【表3】

【0062】
上記表3に示すように、圧縮強度(σ)、圧力損失(A)及びPA脱臭性能(%)は、コルゲートハニカム基材の吸着剤担持量が増加するほど上昇した。このとき、吸着剤担持量が0.5g/cc未満では期待する脱臭性能が得られず、0.5g/ccより大きい場合、圧力損失が上昇するだけで脱臭性能の向上が小さいことが分かった。
【0063】
次に、第4試験例について説明する。下記表4は、セル数(セル/inch)を変化させたときのPA脱臭性能(%)を示す。実施例12乃至14及び比較例10乃至11は、表4に夫々示すセル数(セル/inch)のコルゲートハニカム基材にゼオライトを無機バインダによって担持したものである。ここで、PA脱臭性能(%)は実施例1及び比較例1において説明した方法により算出した。
【0064】
【表4】

【0065】
上記表4に示すように、コルゲートハニカム基材はセル数が多いほどPA脱臭性能が高いことが分かった。セル数が20セル/inch未満では、十分な脱臭性能が望めず、400セル/inchより大きい場合、油分及び埃等によって目詰まりが発生した。このとき、セル数が80乃至150セル/inchの範囲のコルゲートハニカム基材を作成すれば、よりコンパクトで圧力損失の低いコルゲート脱臭フィルタと厨房排気用脱臭装置を実現することができる。
【0066】
次に、第5試験例について説明する。下記表5は、コルゲートハニカム基材に、ゼオライトと共に無機バインダにより担持させる触媒の種類とその触媒の担持量とを変化させたときの、ニンニク等に含まれる臭気成分である硫化水素の脱臭性能(%)を示す。硫化水素の脱臭性能(%)を算出した方法は以下の通りである。
【0067】
直径12mmの円型で、厚さ30mmのコルゲートハニカム基材に、ニンニクの代表臭気成分である硫化水素5ppmを25℃60%RH雰囲気下、風量2.7L/分、空間速度(SV)47000h−1で15分間通風し、各コルゲートハニカム基材入口部及び出口部において硫化水素濃度を定量して上記数式2より脱臭効率(%)を算出した。この脱臭効率(%)の15分平均値をHS脱臭性能(%)とした。
【0068】
【表5】

【0069】
上記表5に示すように、コルゲートハニカム基材の表面にマンガン複合酸化物を担持させることによってHS脱臭性能が上昇することが分かった。これは、マンガン酸化物の有する硫黄系の臭気成分に対する触媒分解作用によるものである。また、コルゲートハニカム基材の添着材料にマンガン酸化物触媒を加えることによって、コルゲート脱臭フィルタに付着した油を分解し、フィルタ寿命を延長することができた。
【0070】
次に、第6試験例について説明する。コルゲートハニカム基材を通過する面風速は、1乃至5m/sの範囲であることが好ましい。面風速を1m/s未満にするためには開口面積を大きくする必要があるが、これは実用的でない。例えば、処理風量4000m/hrまでの比較的小風量を対象とした厨房排気用脱臭装置の開口面積は、設置スペースの観点から1mより小さいことが望ましいが、処理風量4000m/hr、開口面積1mの場合の面風速は約1.1m/sである。また、面風速が5m/sより大きい場合、送風機の追加を必要としない圧力損失6mmAq以下を達成することが難しく、実用的でない。ここで、処理風量は以下の計算式によって得られる。
【0071】
【数4】

【0072】
図6及び図7は、セル数(セル/inch)を変化させたときの、各添着処理を施した夫々のコルゲートハニカム基材のPA脱臭性能(%)及び圧力損失(mmAq)を示したものである。各添着処理を施したコルゲートハニカム基材としては、セル数(セル/inch)の異なる各コルゲートハニカム基材にゼオライトを0.15g/cc担持したものを使用した。PA脱臭効率(%)は、実施例1及び比較例1において説明した方法により算出した。また、圧力損失(mmAq)は、実施例4乃至6及び比較例4乃至6において説明した方法により測定した実測値である。なお、空間速度(SV)は下記数式5により算出した。
【0073】
【数5】

【0074】
図6及び7より、PA脱臭性能50%以上及び圧力損失6mmAq以下の条件を達成するための空間速度(SV)は1万乃至10万h−1の範囲にあることが判明した。空間速度を1万h−1未満にしても脱臭効果は上がらず、また、10万h−1より大きいと脱臭効果が不十分である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る厨房排気用脱臭装置の構造を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明の厨房排気用脱臭装置のフィルタケース3内部の構造を示す模式的斜視図である。
【図3】コルゲートハニカム基材13の模式的斜視図及び一部平面図である。
【図4】コルゲートハニカム基材13の一部拡大図である。
【図5】本発明のコルゲート脱臭フィルタ10の外観を示す模式的斜視図である。
【図6】各セル数(セル/inch)における空間速度(h−1)とPA脱臭性能(%)の関係を示すグラフである。
【図7】各セル数(セル/inch)における空間速度(h−1)と圧力損失(mmAq)の関係を示すグラフである。
【図8】本発明のコルゲート脱臭フィルタ10の配置例である。
【図9】本発明のコルゲート脱臭フィルタ10の配置例である。
【符号の説明】
【0076】
1; 厨房等からの原臭排気口
2; 入口チャンバ
3; フィルタケース
4; フィルタケース蓋
5; 排気フード
6; 接続用フレキダクト
7; 取手
8; ワンタッチ固定金具(パチン錠)
9; 排気フード防虫金網
10; コルゲート脱臭フィルタ
11; コルゲート脱臭フィルタ用装填ガイド
12; オイルミスト除去フィルタ用装填ガイド
13; コルゲートハニカム基材
14; パッキン材
15a、15b; コルゲート基材部
16; 吸着剤
17; ハニカム脱臭単位フィルタ
18; オイルミスト除去フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルゲートハニカム基材の表面にゼオライト及び/又は活性炭が無機バインダによって担持されていることを特徴とする厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項2】
前記ゼオライトは、SiOの含有量を[SiO](モル)、Alの含有量を[Al](モル)としたとき、[SiO]/[Al]比が20以上であることを特徴とする請求項1に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項3】
前記ゼオライトがZSM−5型であることを特徴とする請求項1又は2に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項4】
前記ゼオライトの比表面積が150m/g以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項5】
前記活性炭の比表面積は400m/g以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項6】
前記コルゲートハニカム基材の前記ゼオライト及び/又は前記活性炭の担持量が前記コルゲートハニカム基材1cc当たり0.05乃至0.5gであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項7】
前記コルゲートハニカム基材のセル(貫通孔)数が20乃至400セル/inchであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項8】
前記コルゲートハニカム基材のセル数が80乃至150セル/inchであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項9】
前記コルゲートハニカム基材がマンガン酸化物触媒を担持していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項10】
前記マンガン酸化物触媒が銅酸化物又は鉄酸化物との複合酸化物であることを特徴とする請求項9に記載の厨房排気用脱臭フィルタ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭フィルタを組み込んだ厨房排気用脱臭装置において、前記コルゲートハニカム基材を通過する面風速が1乃至5m/sであることを特徴とする厨房排気用脱臭装置。
【請求項12】
前記厨房排気用脱臭フィルタの空間速度が1万乃至10万h−1であることを特徴とする請求項11に記載の厨房排気用脱臭装置。
【請求項13】
前記厨房排気用脱臭フィルタがそのハニカム開口面を通風方向に向けて配置され、更に1乃至5層の前記厨房排気用脱臭フィルタが各層間に間隔を設けて配列されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の厨房排気用脱臭装置。
【請求項14】
前記厨房排気用脱臭フィルタがそのハニカム開口面が通風方向に傾斜させて配置され、更に1乃至5層の前記厨房排気用脱臭フィルタが各層間に間隔を設けて配列されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の厨房排気用脱臭装置。
【請求項15】
前記コルゲートハニカム基材の通風方向上流側に不織布が配置されていることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の厨房排気用脱臭装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−125466(P2007−125466A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318602(P2005−318602)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(503386517)神鋼アクテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】