説明

双方向電力変換装置

【課題】 双方向の電圧変換を行うDC/DC変換部およびDC/AC変換部を備えて、双方向の出力電圧の精度を確保するとともに、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができる双方向電力変換装置を提供する。
【解決手段】 双方向電力変換装置A1は、直流電圧Vdc1をオープンループ制御によって直流電圧Vdc2にDC/DC変換する第1の動作と、直流電圧Vdc2をオープンループ制御によって直流電圧Vdc1にDC/DC変換する第2の動作とを切り換えて、双方向の電圧変換を行うDC/DC変換部1と、直流電圧Vdc2をフィードバック制御によって交流電圧Vac1にDC/AC変換する第3の動作と、交流電圧Vac1をフィードバック制御によって直流電圧Vdc2にAC/DC変換する第4の動作とを切り換えて、双方向の電圧変換を行うDC/AC変換部2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電圧を交流電圧に変換する電力変換装置があり、一般に、直流電圧を昇圧または降圧するDC/DC変換部と、DC/DC変換部が出力する直流電圧を交流電圧に変換するDC/AC変換部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、図9に示す電力変換装置Bは、DC/DC変換部101と、DC/AC変換部102とを備えている。
【0004】
DC/DC変換部101は、スイッチング回路1011と、高周波トランスTr101と、整流回路1012と、検出部1013と、制御回路1014とで構成される。
【0005】
スイッチング回路1011は、直流電源E100の直流電圧Vdc101を入力とし、図示しないスイッチング素子をオン・オフ駆動することによって、直流電源E100から供給される電流を周期的に極性反転させて、高周波トランスTr101の一次巻線へ供給する。そして、高周波トランスTr101の二次巻線には誘起電圧が発生し、整流回路1012によって整流されて、整流回路1012の出力端間には直流電圧Vdc102が発生する。この直流電圧Vdc102は、直流電圧Vdc101を昇圧または降圧した電圧になる。
【0006】
そして、検出部1013は、直流電圧Vdc102を検出しており、制御回路1014は、直流電圧Vdc102の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路1011をスイッチング制御する。すなわち、制御回路1014は、直流電圧Vdc102を目標電圧にフィードバック制御している。
【0007】
次に、DC/AC変換部102は、スイッチング回路1021と、フィルタ回路1022と、検出部1023と、制御回路1024とで構成される。
【0008】
スイッチング回路1021は、直流電圧Vdc102を入力とし、図示しないスイッチング素子をオン・オフ駆動することによって、直流電圧Vdc102を交流電圧に変換する。そして、スイッチング回路1021が出力する交流電圧はフィルタ回路1022を通り、不要な周波数帯域が減衰した交流電圧Vac101をフィルタ回路1022から出力する。
【0009】
そして、検出部1023は、交流電圧Vac101を検出しており、制御回路1024は、交流電圧Vac101の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路1021をスイッチング制御する。すなわち、制御回路1024は、交流電圧Vac101を目標電圧にフィードバック制御している。
【0010】
このように電力変換装置Bは、DC/DC変換部101およびDC/AC変換部102の各出力を検出する検出部1013,1023と、各検出結果に基づいてフィードバック制御を行う制御回路1014,1024とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−44979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のようにDC/DC変換部とDC/AC変換部とを備えた電力変換装置において、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化が求められている。さらには、直流電圧Vdc101を交流電圧Vac101に変換するDC/AC変換機能だけでなく、交流電圧Vac101を直流電圧Vdc101に変換するAC/DC変換機能も併せて備える双方向DC/ACコンバータとしての機能も求められている。
【0013】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、双方向の電圧変換を行うDC/DC変換部およびDC/AC変換部を備えて、双方向の出力電圧の精度を確保するとともに、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができる双方向電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の双方向電力変換装置は、第1の直流電路と第2の直流電路との間に設けられて、前記第1の直流電路の直流電圧をオープンループ制御によってDC/DC変換した直流電圧を前記第2の直流電路に出力する第1の動作と、前記第2の直流電路の直流電圧をオープンループ制御によってDC/DC変換した直流電圧を前記第1の直流電路に出力する第2の動作とを切り換えて、双方向の電圧変換を行うDC/DC変換部と、第2の直流電路と交流電路との間に設けられて、前記第2の直流電路の直流電圧をフィードバック制御によってDC/AC変換した交流電圧を前記交流電路に出力する第3の動作と、前記交流電路の交流電圧をフィードバック制御によってAC/DC変換した直流電圧を前記第2の直流電路に出力する第4の動作とを切り換えて、双方向の電圧変換を行うDC/AC変換部とを備え、前記DC/DC変換部が前記第1の動作を行い、且つ前記DC/AC変換部が前記第3の動作を行う第1のモードと、前記DC/DC変換部が前記第2の動作を行い、且つ前記DC/AC変換部が前記第4の動作を行う第2のモードとを切替可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
この発明において、前記DC/AC変換部は、前記交流電路の交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記第2の直流電路の直流電圧を検出する第2の出力検出部と、前記第3の動作時に前記交流電路に出力する交流電圧を、前記第1の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御し、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御する制御回路とを具備することが好ましい。
【0016】
この発明において、前記DC/AC変換部は、前記交流電路の交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記第1の直流電路の直流電圧を検出する第2の出力検出部と、前記第3の動作時に前記交流電路に出力する交流電圧を、前記第1の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御し、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御する制御回路とを具備することが好ましい。
【0017】
この発明において、前記DC/AC変換部は、前記交流電路の交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記第1の直流電路の直流電圧と前記第2の直流電路の直流電圧との両方を検出する第2の出力検出部と、前記第3の動作時に前記交流電路に出力する交流電圧を、前記第1の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御し、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御する制御回路とを具備することが好ましい。
【0018】
この発明において、前記制御回路は、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の直流電路の直流電圧が第1の目標値に一致する方向にフィードバック制御した後、前記第1の直流電路の直流電圧が第2の目標値に一致する方向にフィードバック制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明では、双方向の電圧変換を行うDC/DC変換部およびDC/AC変換部を備えて、双方向の出力電圧の精度を確保するとともに、電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1の双方向電力変換装置を示すブロック構成図である。
【図2】同上のDC/DC変換部を示す回路構成図である。
【図3】同上のDC/AC変換部を示す回路構成図である。
【図4】ダイオードにおける電圧および電流を示す波形図である。
【図5】実施形態1のダイオードにおける電圧および電流を示す波形図である。
【図6】同上の共振電流を示す波形図である。
【図7】実施形態2の双方向電力変換装置を示すブロック構成図である。
【図8】実施形態3の双方向電力変換装置を示すブロック構成図である。
【図9】従来の電力変換装置を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の双方向電力変換装置A1のブロック構成を示しており、双方向電力変換装置A1は、DC/DC変換部1と、DC/AC変換部2とを備えている。DC/DC変換部1とDC/AC変換部2とは、直流電路W2(第2の直流電路)を介して内部接続される。そして、DC/DC変換部1は、外部からの直流電路W1(第1の直流電路)と直流電路W2(第2の直流電路)との間に接続される。DC/AC変換部2は、直流電路W2と外部からの交流電路W3との間に接続される。なお、直流電路W1の直流電圧を直流電圧Vdc1、直流電路W2の直流電圧を直流電圧Vdc2、交流電路W3の交流電圧を交流電圧Vac1とする。
【0023】
DC/DC変換部1は、整流スイッチング回路11と、高周波トランスTr1と、整流スイッチング回路12とで構成され、図2にDC/DC変換部1の回路構成を示す。
【0024】
整流スイッチング回路11は、直列接続したスイッチング素子Q11,Q12と直列接続したスイッチング素子Q13,Q14との並列回路を備える。そして、スイッチング素子Q11〜Q14の各々は、コンデンサC11〜C14が並列接続され、さらにダイオードD11〜D14が逆並列接続されている。スイッチング素子Q11,Q12およびスイッチング素子Q13,Q14の各接続中点間には、高周波トランスTr1の一次巻線N1が接続されている。また、スイッチング素子Q11,Q12の直列回路には、コンデンサC15が並列接続されている。
【0025】
そして、駆動回路K11が、スイッチング素子Q11,Q14とスイッチング素子Q12,Q13とを交互にオン・オフ駆動することによって、整流スイッチング回路11は、高周波トランスTr1側を出力とするスイッチング回路として動作する。また、駆動回路K11が、スイッチング素子Q11〜Q14をオフ状態に維持することによって、整流スイッチング回路11は、高周波トランスTr1側を入力とする整流回路として動作する。
【0026】
次に、高周波トランスTr1の二次巻線N2には、インダクタLsとコンデンサCsとが直列接続されており、インダクタLsとコンデンサCsと高周波トランスTr1の二次巻線N2とで直列共振回路K2が構成される。
【0027】
次に、整流スイッチング回路12は、直列接続したスイッチング素子Q21,Q22と直列接続したスイッチング素子Q23,Q24との並列回路を備える。そして、スイッチング素子Q21〜Q24の各々は、コンデンサC21〜C24が並列接続され、さらにダイオードD21〜D24が逆並列接続されている。スイッチング素子Q21,Q22およびスイッチング素子Q23,Q24の各接続中点間には、直列共振回路K2が接続されている。また、スイッチング素子Q21,Q22の直列回路には、コンデンサC25が並列接続されている。
【0028】
そして、駆動回路K21が、スイッチング素子Q21,Q24とスイッチング素子Q22,Q23とを交互にオン・オフ駆動することによって、整流スイッチング回路12は、高周波トランスTr1側を出力とするスイッチング回路として動作する。また、駆動回路K21が、スイッチング素子Q21〜Q24をオフ状態に維持することによって、整流スイッチング回路12は、高周波トランスTr1側を入力とする整流回路として動作する。
【0029】
上記のように構成されたDC/DC変換部1は、整流スイッチング回路11がスイッチング回路として動作し、整流スイッチング回路12が整流回路として動作することで、DC/AC変換部2側を出力とするDC/DCコンバータとして機能する。この場合、直流電路W1に接続された直流電源E1がDC/DC変換部1の入力となり、直流電圧Vdc1を昇圧または降圧(DC/DC変換)した直流電圧Vdc2がDC/DC変換部1の出力となる(第1の動作)。
【0030】
また、DC/DC変換部1は、整流スイッチング回路11が整流回路として動作し、整流スイッチング回路12がスイッチング回路として動作することで、DC/AC変換部2側を入力とするDC/DCコンバータとして機能する。この場合、DC/AC変換部2から入力される直流電圧Vdc2がDC/DC変換部1の入力となり、直流電圧Vdc2を昇圧または降圧(DC/DC変換)した直流電圧Vdc1がDC/DC変換部1の出力となる(第2の動作)。
【0031】
すなわち、DC/DC変換部1は、双方向のDC/DC変換機能を有しており、駆動回路K11,K21の各動作を連動して切り替えることによって、入出力方向を切り替えることができる。
【0032】
ここで、駆動回路K11,K21は、DC/DC変換部1に入出力される直流電圧Vdc1,Vdc2の各値に関わらす、予め決められたスイッチング周波数(オン期間、オフ期間)で、スイッチング素子Q11〜Q14,Q21〜Q24をオン・オフ駆動する。すなわち、DC/DC変換部1は、オープンループ制御によって、直流電圧Vdc1を昇圧または降圧した直流電圧Vdc2、または直流電圧Vdc2を昇圧または降圧した直流電圧Vdc1を生成している。したがって、DC/DC変換部1の入出力状態を検出する検出部や、直流電圧Vdc1,Vdc2をフィードバック制御する制御回路が不要となり、消費電力の低減による電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができる。
【0033】
次に、DC/AC変換部2は、スイッチング回路21と、フィルタ回路22と、検出部23(第1の出力検出部)と、制御回路24と、検出部25(第2の出力検出部)とで構成され、図3にDC/AC変換部2の回路構成を示す。
【0034】
スイッチング回路21は、直列接続したスイッチング素子Q31,Q32と直列接続したスイッチング素子Q33,Q34との並列回路を備える。そして、スイッチング素子Q31〜Q34の各々は、コンデンサC31〜C34が並列接続され、さらにダイオードD31〜D34が逆並列接続されている。スイッチング素子Q31,Q32およびスイッチング素子Q33,Q34の各接続中点間には、フィルタ回路22が接続されている。また、スイッチング素子Q31,Q32の直列回路には、コンデンサC35が並列接続されている。
【0035】
フィルタ回路22は、インダクタL41,L42と、コンデンサC41とを備える。インダクタL41は、スイッチング素子Q33,Q34の接続中点に一端が接続され、インダクタL42は、スイッチング素子Q31,Q32の接続中点に一端が接続され、コンデンサC41は、インダクタL41およびインダクタL42の各他端間に接続される。
【0036】
そして、駆動回路K31が、スイッチング素子Q31,Q34とスイッチング素子Q32,Q33とを交互にオン・オフ駆動することによって、スイッチング回路21は、フィルタ回路22側を出力とするDC/ACインバータとして動作する。この場合、DC/DC変換部1が出力する直流電圧Vdc2がDC/AC変換部2の入力となり、直流電圧Vdc2を交流電圧Vac1にDC/AC変換して出力する(第3の動作)。
【0037】
また、駆動回路K31が、スイッチング素子Q31,Q33をオフ状態に維持し、スイッチング素子Q32,Q34を間欠的にオンさせることによって、スイッチング回路21は、フィルタ回路22側を入力とするAC/DCコンバータとして動作する。この場合、交流電路W3に接続された交流電源E2がDC/AC変換部2の入力となり、交流電圧Vac1を直流電圧Vdc2にAC/DC変換して出力する(第4の動作)。
【0038】
すなわち、DC/AC変換部2は、双方向のDC/AC変換機能を有しており、制御回路24が駆動回路K31の動作を切り替えることによって、入出力方向を切り替えることができる。
【0039】
したがって、DC/DC変換部1が、直流電圧Vdc1を直流電圧Vdc2に変換するDC/DCコンバータとして機能し、DC/AC変換部2が直流電圧Vdc2を交流電圧Vac1に変換するDC/ACインバータとして機能する場合、双方向電力変換装置A1は、DC/ACインバータとして機能する(第1のモード)。また、DC/AC変換部2が交流電圧Vac1を直流電圧Vdc2に変換するAC/DCコンバータとして機能し、DC/DC変換部1が、直流電圧Vdc2を直流電圧Vdc1に変換するDC/DCコンバータとして機能する場合、双方向電力変換装置A1は、AC/DCコンバータとして機能する(第2のモード)。双方向電力変換装置A1において、上記第1のモードおよび第2のモードは、切替可能に構成されている。
【0040】
そして、検出部23は、交流電圧Vac1を検出しており、制御回路24は、双方向電力変換装置A1がDC/ACインバータとして機能しているときに、交流電圧Vac1の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路21をスイッチング制御する。すなわち、制御回路24は、交流電圧Vac1を目標電圧にフィードバック制御している。
【0041】
また、検出部25は、直流電圧Vdc2を検出しており、制御回路24は、双方向電力変換装置A1がAC/DCコンバータとして機能しているときに、直流電圧Vdc2の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路21をスイッチング制御する。すなわち、制御回路24は、直流電圧Vdc2を目標電圧にフィードバック制御している。
【0042】
このように双方向電力変換装置A1は、双方向のDC/AC変換機能を有しながら、DC/DC変換部1がオープンループ制御を行い、DC/AC変換部2がフィードバック制御を行っている。
【0043】
したがって、双方向電力変換装置A1がDC/ACインバータとして機能しているときに、DC/DC変換部1が出力する直流電圧Vdc2が変動した場合でも、DC/AC変換部2が出力する交流電圧Vac1を目標電圧に一致させることができる。また、双方向電力変換装置A1がAC/DCコンバータとして機能しているときは、DC/AC変換部2が出力する直流電圧Vdc2がフィードバック制御されるので、オープン制御されているDC/DC変換部1が出力する直流電圧Vdc1も略一定に制御することができる。
【0044】
すなわち、双方向の電圧変換を行うDC/DC変換部1およびDC/AC変換部2を備える双方向電力変換装置A1において、双方向の出力電圧の精度を確保することができる。さらに、DC/DC変換部1のフィードバック制御手段が不要となり、消費電力の低減による電力効率の向上、および部品点数の削減、小型化を図ることができる。
【0045】
また、直列共振回路K2を備えることによって、双方向電力変換装置A1がDC/ACインバータとして機能しているときの整流スイッチング回路11、双方向電力変換装置A1がAC/DCコンバータとして機能しているときの整流スイッチング回路12は、LLC共振型コンバータでとして動作する。したがって、スイッチング素子Q11〜Q14、スイッチング素子Q21〜Q24の各スイッチング損失を低減させることができ、さらなる高効率化を図ることができる。
【0046】
次に、整流スイッチング回路12がスイッチング回路として動作している場合において、スイッチング素子Q21〜Q24のスイッチング周期と直列共振回路K2による共振電流との関係について、説明する。
【0047】
図4は、双方向電力変換装置A1がAC/DCコンバータとして機能しているときのダイオードD11〜D14(以降、ダイオードD11〜D14を区別しない場合、ダイオードDAと称す)におけるカソード−アノード間の電圧Vkの電圧波形Y1、および順方向電流Ifの電流波形Y2を示す。なお、直列共振回路K2の共振電流は、スイッチング素子Q21〜Q24(以降、スイッチング素子Q21〜Q24を区別しない場合、スイッチング素子QAと称す)を流れるが、この共振電流の波形は、順方向電流Ifの電流波形Y2と略同様になる。
【0048】
スイッチング素子QAは、ターンオンした後、直列共振回路K2の共振電流が流れる(図4の電流波形Y2参照)。そして、共振電流が流れている途中でスイッチング素子QAがターンオフした場合、ダイオードDAに流れる電流も急激に減少し、ダイオードDAには逆回復電流Irが流れる(図4参照)。ダイオードDAにおいて、逆回復電流Irは電力損失の要因となる。
【0049】
そこで、本実施形態では、スイッチング素子QAの各スイッチング周期と共振電流との関係を、図5のように設定する。図5は、ダイオードDAにおけるカソード−アノード間電圧Vkの電圧波形Y3、および順方向電流Ifの電流波形Y4を示しており、スイッチング素子QAがターンオンすると、スイッチング素子QAに流れる共振電流が増加した後に低下する。そして、スイッチング素子QAがターンオンしてから、共振電流が「0」近傍の所定電流を下回るまでの期間を共振期間Toとした場合、共振期間Toは、スイッチング素子QAのオン期間Ts以下に設定される。すなわち、直列共振回路K2のインダクタLsとコンデンサCsとの各定数を調整することによって、共振電流の共振期間Toとスイッチング素子QAのオン期間Tsとの関係を、[To≦Ts]に予め設定する。
【0050】
したがって、スイッチング素子QAがターンオフした時点で、ダイオードDAに流れる電流は略0になり、ダイオードDAに発生する逆回復電流Irは抑制されるので、ダイオードDAにおける電力損失が低減し、電力効率のさらなる向上を図ることができる。
【0051】
また、図6は共振電流の電流波形Y5,Y6を示しており、電流波形Y5は、共振電流の共振周波数を高くして、短い共振期間To1に設定した場合の電流波形であり、電流波形Y6は、共振電流の共振周波数を低くして、長い共振期間To2に設定した場合の電流波形である。そして、短い共振期間To1に対応する電流波形Y5のピーク値は、長い共振期間To2に対応する電流波形Y6のピーク値より高くなり、共振期間Toを短くするほど、スイッチング素子QAのオン抵抗による電力損失が増大してしまう。
【0052】
そこで、共振期間Toとスイッチング素子QAのオン期間Tsとの関係を、[0.7・Ts≦To≦Ts]に設定する。この場合、スイッチング素子QAのオン抵抗による電力損失を抑制でき、電力効率のさらなる向上を図ることができる。
【0053】
なお、整流スイッチング回路11がスイッチング回路として動作している場合も、スイッチング素子Q11〜Q14のスイッチング周期と直列共振回路K2による共振電流との関係を上記同様に設定すれば、同様の効果を得ることができる。
【0054】
(実施形態2)
図7は、本実施形態の双方向電力変換装置A2のブロック構成を示しており、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0055】
本実施形態のDC/AC変換部2は、直流電圧Vdc1を検出する検出部26(第2の出力検出部)を設けている。そして、制御回路24は、双方向電力変換装置A2がAC/DCコンバータとして機能しているときに(第2のモード)、直流電圧Vdc1の検出値が目標電圧に一致するように、スイッチング回路21をスイッチング制御する。すなわち、制御回路24は、直流電圧Vdc1を目標電圧にフィードバック制御している
このような構成を備える双方向電力変換装置A2は、AC/DCコンバータとして機能しているときに、DC/AC変換部2が、最終的な出力である直流電圧Vdc1をフィードバック制御するので、直流電圧Vdc1が安定し、直流電圧Vdc1の出力精度が向上する。
【0056】
(実施形態3)
図8は、本実施形態の双方向電力変換装置A3のブロック構成を示しており、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0057】
本実施形態のDC/AC変換部2は、直流電圧Vdc2を検出する検出部25(第2の出力検出部)と、直流電圧Vdc1を検出する検出部26(第2の出力検出部)との両方を設けている。
【0058】
そして、制御回路24は、双方向電力変換装置A3がAC/DCコンバータとして機能している場合(第2のモード)、スイッチング回路21に対して2つのフィードバック制御を行う。
【0059】
制御回路24による第1のフィードバック制御は、双方向電力変換装置A3がAC/DCコンバータとして機能しているときに、直流電圧Vdc2の検出値が第1の目標電圧に一致するように、スイッチング回路21をスイッチング制御する。すなわち、制御回路24は、直流電圧Vdc2が第1の目標電圧に一致するように、直流電圧Vdc2をフィードバック制御している。
【0060】
制御回路24による第2のフィードバック制御は、双方向電力変換装置A3がAC/DCコンバータとして機能しているときに、直流電圧Vdc1の検出値が第2の目標電圧に一致するように、スイッチング回路21をスイッチング制御する。すなわち、制御回路24は、直流電圧Vdc1が第2の目標電圧に一致するように、直流電圧Vdc2をフィードバック制御している。
【0061】
ここで、直流電圧Vdc1は、DC/AC変換部2が出力した直流電圧Vdc2をDC/DC変換部1がDC/DC変換することによって生成されるため、制御回路24による第2のフィードバック制御は、第1のフィードバック制御に比べて応答が遅くなる。
【0062】
而して、制御回路24は、第1のフィードバック制御によって、直流電圧Vdc2を第1の目標電圧(またはその近傍)に一致させ、その後、第2のフィードバック制御によって、直流電圧Vdc1を第2の目標電圧に一致させる。
【0063】
このような構成を備える双方向電力変換装置A3は、AC/DCコンバータとして機能しているときに、DC/AC変換部2の制御回路24内におけるフィードバック制御処理の遷移動作を安定させることができる。すなわち、直流電圧Vdc1のさらなる安定化や、直流電圧Vdc1の出力精度向上につながる。
【符号の説明】
【0064】
A1 双方向電力変換装置
1 DC/DC変換部
11 整流スイッチング回路
12 整流スイッチング回路
Tr1 高周波トランス
2 DC/AC変換部
21 スイッチング回路
22 フィルタ回路
23 検出部(第1の出力検出部)
24 制御回路
25 検出部(第2の出力検出部)
W1,W2 直流電路
W3 交流電路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の直流電路と第2の直流電路との間に設けられて、前記第1の直流電路の直流電圧をオープンループ制御によってDC/DC変換した直流電圧を前記第2の直流電路に出力する第1の動作と、前記第2の直流電路の直流電圧をオープンループ制御によってDC/DC変換した直流電圧を前記第1の直流電路に出力する第2の動作とを切り換えて、双方向の電圧変換を行うDC/DC変換部と、
第2の直流電路と交流電路との間に設けられて、前記第2の直流電路の直流電圧をフィードバック制御によってDC/AC変換した交流電圧を前記交流電路に出力する第3の動作と、前記交流電路の交流電圧をフィードバック制御によってAC/DC変換した直流電圧を前記第2の直流電路に出力する第4の動作とを切り換えて、双方向の電圧変換を行うDC/AC変換部とを備え、
前記DC/DC変換部が前記第1の動作を行い、且つ前記DC/AC変換部が前記第3の動作を行う第1のモードと、前記DC/DC変換部が前記第2の動作を行い、且つ前記DC/AC変換部が前記第4の動作を行う第2のモードとを切替可能に構成される
ことを特徴とする双方向電力変換装置。
【請求項2】
前記DC/AC変換部は、前記交流電路の交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記第2の直流電路の直流電圧を検出する第2の出力検出部と、前記第3の動作時に前記交流電路に出力する交流電圧を、前記第1の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御し、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御する制御回路とを具備することを特徴とする請求項1記載の双方向電力変換装置。
【請求項3】
前記DC/AC変換部は、前記交流電路の交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記第1の直流電路の直流電圧を検出する第2の出力検出部と、前記第3の動作時に前記交流電路に出力する交流電圧を、前記第1の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御し、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御する制御回路とを具備することを特徴とする請求項1記載の双方向電力変換装置。
【請求項4】
前記DC/AC変換部は、前記交流電路の交流電圧を検出する第1の出力検出部と、前記第1の直流電路の直流電圧と前記第2の直流電路の直流電圧との両方を検出する第2の出力検出部と、前記第3の動作時に前記交流電路に出力する交流電圧を、前記第1の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御し、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の出力検出部の検出値が所定の目標値に一致する方向にフィードバック制御する制御回路とを具備することを特徴とする請求項1記載の双方向電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第4の動作時に前記第2の直流電路に出力する直流電圧を、前記第2の直流電路の直流電圧が第1の目標値に一致する方向にフィードバック制御した後、前記第1の直流電路の直流電圧が第2の目標値に一致する方向にフィードバック制御することを特徴とする請求項4記載の双方向電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−27270(P2013−27270A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162871(P2011−162871)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】