説明

双極型電池

【課題】双極型電池の発熱を防止するとともに、双極型電池の放熱性を向上させる。
【解決手段】導電性を有する樹脂層を含む集電体の一方の面に正極活物質層、他方の面に負極活物質層が形成されてなる双極型電極を含む双極型電池であって、集電体は、さらに樹脂層よりも熱伝導性が高い熱伝導部を含み、積層方向から見て平面視で、樹脂層が熱伝導部の外周部を覆う、双極型電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型電池、これを用いた組電池および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用電池の開発が鋭意行われている。自動車用途の電池としては、双極型電池に注目が集まっている。双極型電池は、集電体を介して縦方向(電極の積層方向)に電流が流れるため、電子の伝導パスを短くでき、高出力になる。これにより、電池電圧の高い電池が構成できる。
【0003】
双極型電池は、正極活物質層および負極活物質層が各面に形成される集電体を構成部材として含む。この集電体の軽量化を目的として、特許文献1では、樹脂を含む集電体を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−190649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂を含む集電体は、集電体面方向の体積抵抗率が大きいため、内部短絡等が発生した場合でも、短絡部位に電流集中が起きにくく、短絡等による発熱を防止する点で有利である。
【0006】
しかし、樹脂は熱伝導性が低いために、充放電による熱の放熱性が悪い。したがって、集電体内で熱分布が生じ、集電体が局所的に熱膨張し電池の劣化が進む可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、双極型電池の発熱を防止するとともに、双極型電池の放熱性を向上させ、双極型電池の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、導電性を有する樹脂層を含む集電体の内部に熱伝導性の高い部材を配置した双極型電池によって、上記目的が達成されることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
導電性を有する樹脂層は面方向の体積抵抗率が高い。このため、双極型電池を構成する単電池で内部短絡が発生した場合、樹脂層が短絡電流を抑制することにより、短絡時の発熱を防止できる。また、樹脂層より熱伝導性が高い熱伝導部によって、一つの集電体の内部で正極側における発熱反応(酸化反応)による熱を吸熱反応(還元反応)である負極側へ効率よく移動させることができる。したがって、集電体の熱分布が抑制され、集電体の熱膨張を均一にでき電池の劣化を更に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面概略図である。
【図2】Aは、本発明の第1実施形態の集電体の平面模式図であり、Bは本発明の第1実施形態の集電体の断面模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す断面概略図である。
【図4】Aは、本発明の第2実施形態の集電体の平面模式図であり、Bは本発明の第2実施形態の集電体の断面模式図である。
【図5】本発明の双極型電池の集電体の他の実施形態の平面模式図である。
【図6】Aは、本発明の双極型電池の集電体の他の実施形態の平面模式図であり、Bは、本発明の双極型電池の集電体の他の実施形態の断面模式図である。
【図7】面方向の伝熱性を説明する概略図である。
【図8】本発明の双極型電池の外観を表した斜視図である。
【図9】本発明の組電池の外観図である。
【図10】本発明の組電池を搭載した車両の概念図である。
【図11】樹脂集電体での面方向での熱移動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の好ましい実施形態である双極型リチウムイオン二次電池について説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の双極型電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0013】
同様に双極型電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0014】
また、電池の電極材料ないし電極間を移動する金属イオンで見た場合にも、特に制限されず、公知のいずれの電極材料等にも適用されうる。例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池などが挙げられ、好ましくは、リチウムイオン二次電池である。これは、リチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。
【0015】
したがって、以下の説明では、代表的な実施形態として本発明の電池が双極型リチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
【0016】
図1は、第1実施形態である、積層型の双極型リチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【0017】
第1実施形態の双極型リチウムイオン二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素(電池要素;積層体)21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0018】
双極型電極20は、集電体18の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体18の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成されてなる。集電体18は、金属材料からなる分割熱伝導部14を複数含み、各分割熱伝導部は、金属材料からなる導電要素16によって連結される。分割熱伝導部は、同心四角形状となるように、海島構造で中心部から配置されている(図2A)。各分割熱伝導部14および各導電要素16を含めて熱伝導部22が構成される。そして、熱伝導部22を覆うようにして、導電性を有する樹脂層12が形成される。すなわち、集電体18は、樹脂層12、複数の分割熱伝導部14、および複数の導電要素16から構成される。
【0019】
各双極型電極は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータに電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
【0020】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層(=電池単位ないし単セル)19を構成する。したがって、双極型リチウムイオン二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部には絶縁部材31が配置されている。この絶縁部材31は、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁部材31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型リチウムイオン二次電池10が提供されうる。
【0021】
発電要素21の最外層には、正極側の最外層集電体11aおよび負極側の最外層集電体11bが配置される。本実施形態では、最外層集電体は、金属箔から構成される。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体11aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体11bの両面に負極活物質層15が形成されてもよい。
【0022】
さらに、図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10では、正極側最外層集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートシート29から導出している。
【0023】
なお、集電板に代えて、最外層集電体11aおよび11bを、そのまま正極タブおよび負極タブに電気的に接続してもよい。この際、最外層集電体(11a、11b)とタブとの間を正極端子リード、負極端子リードを介して電気的に接続してもよい。また、集電板に代えて、最外層集電体11aおよび11bを厚くして、そのままラミネートシート29の外に延長して負極タブおよび正極タブとしてもよい。
【0024】
単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型リチウムイオン二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。
【0025】
使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装材であるラミネートシート29に減圧封入し、正極集電板25及び負極集電板27をラミネートシート29の外部に取り出した構造とするのがよい。
【0026】
本実施形態では、集電体18が樹脂層12とともに、熱伝導部22を含む。正極側においては発熱反応(酸化反応)が起き、負極側では吸熱反応(還元反応)が起こる。このため、熱伝導性の低い樹脂層からなる集電体の場合、積層方向に熱分布が生じる。一方、熱伝導部が集電体内に配置されることによって、正極側で生じた熱が負極側へ効率よく移動し、熱分布が均一となる。
【0027】
また、本実施形態では、熱伝導部が完全に樹脂層により覆われる構造となる。図2のAは、第1実施形態の集電体18の平面模式図であり、Bは、第1実施形態の集電体18の断面模式図である。図2のように、積層方向から見て平面視で、樹脂層は、熱伝導部の外周部を覆う形態となっている。正極側においては発熱反応(酸化反応)が起き、負極側では吸熱反応(還元反応)が起こる。このため、正極側で生じた熱を負極側へ効率よく伝熱させることが重要である。例えば、樹脂層と金属箔が積層された構造であると、酸化反応側(発熱反応)で発生した熱を還元反応側(吸熱反応)に移動する際、金属箔エッジ部からの熱の放出が樹脂層と較べると大きい。したがって、金属箔の存在により、極間の熱勾配が低下し、熱交換効率が低下する場合がある。これに対し、樹脂層が熱伝導部の外周部まで熱伝導部を完全に取り込むことで、集電体エッジ部での放熱が抑制され、極間の熱移動が効率よく行われることとなる。また、熱伝導部は熱伝導性が高いため、正極側で生じた熱を負極側へ効率よく伝熱させることができ、負極側における吸熱反応(還元反応)に効率よく利用できる。
【0028】
なお、本実施形態では、熱伝導部を完全に樹脂層が覆う形となっているが、少なくとも樹脂層が、積層方向から見た平面視で、熱伝導部の外周部を覆う形態であればよい。樹脂層が熱伝導部の外周部を覆う形態であれば、極間の熱移動の向上は達せられる。なぜならば、熱伝導部の上面、下面(正極活物質層側面、および負極活物質層側面)は、積層体構造とした場合に、熱伝導部が外部に露出することはなく、この面は樹脂層で覆われなくともエッジ部からの放熱抑制は達せられるためである。
【0029】
また、熱伝導部の存在により、面方向の熱伝達も促進される。双極型電池では、電池中央部が相対的にジュール熱により高温になることが考えられる。樹脂層からなる集電体は、樹脂の放熱性が低く、面方向での熱移動が抑制されるため、集電体上の面方向の温度分布が大きくなる。つまり、電池中央部で発生した熱で温度が上昇した場合に、熱の移動が起きにくいため、熱発生部位では温度の低下が進行しにくい。逆に、熱発生部位から面方向に遠ざかるにつれ、集電体の温度は低くなる。したがって、樹脂層からなる集電体の場合、面方向での温度分布が著しく不均一になる場合がある(図11左図)。これに対し、熱伝導性が高い熱伝導部は、面方向の熱伝導性に優れるため、熱発生部位で生じた熱を面方向に移動させる役割を果たす。したがって、熱伝導部が樹脂層内に存在することによって、集電体の面方向の温度分布が均一化し(図11右図)、電池の放熱が促進される。樹脂集電体での温度上昇は、集電体の熱膨張を引き起こすが、温度が高い部位での熱膨張は他の部位に比べて大きくなるため、温度分布が不均一であると集電体の熱膨張が面方向で不均一に起こる。温度が高い部位で熱膨張が集中して起こることにより局所的に電池の劣化が進行する場合がある。よって、集電体の温度分布を均一化することは、電池の劣化を抑制するという点で非常に重要な事項である。
【0030】
さらに、本実施形態では、熱伝導部22が、分割熱伝導部14および導電要素16から構成される。熱伝導部22は、双極型電極の極間の熱移動(積層方向の熱移動)および電池面方向の熱移動を促進する。一方、導電要素は、各分割熱伝導部を連結する。熱伝導部により、面方向の熱移動を促進することができる。熱移動(放熱性)の観点からは、各熱伝導部が熱伝導性の高い部材によって物理的に連結している形態が、熱移動が効率的に行われるため好ましい。一方で、熱伝導部は、樹脂層と比較して、面方向の電子伝導性にも優れるため、内部短絡時の面方向に流れる電流が大きく、熱が発生する場合がある。したがって、熱伝導部は、分割して配置することが好ましい。本実施形態の熱伝導部の構成(熱伝導部が分割して存在すること、および分割された熱伝導部が連結して存在すること)は、放熱性および熱発生抑制の両者のバランスを考慮して設計されたものである。
【0031】
一方、短絡時には、樹脂層に含まれる樹脂は、面方向の体積抵抗率が高いので、面内電流を抑制することができる。このため、面方向に流れる電流は樹脂層で律速となる。例えば、金属集電体から構成される電池では、面方向に流れる電流が大きいため、隣り合う金属集電体同士で電極間短絡が起き、熱が発生する場合がある。樹脂層を集電体が含むことにより、面方向に流れる電流は樹脂層で律速となり、熱の発生が抑制される。
【0032】
双極型電池には、次の機能が求められる。(1)通常発電時においては面方向の熱分布を均一にすること(面方向の伝熱性が良いこと)、(2)各層の電圧モニタリングを妨げないこと(面積方向の抵抗が小さいこと=面内電流がある程度大きい場合は電極間の電圧が測定できる)、(3)内部短絡などの電流集中が発生した際は面内電流を抑制すること(面内電流のヒューズ機能)。本実施形態は上記機能をバランスよく満足させるものとなる。
【0033】
本実施形態では、熱伝導部が海島構造で配置される。この際の、熱伝導部の配置は特に限定されるものではないが、電極面内の温度分布に対応する熱伝導部の配置とすることが好ましい。具体的には、温度勾配が小さい箇所の熱流束を大きくし、温度勾配が大きいところの熱流束を小さくする。かような配置によって、スタックの温度分布を小さくすることができる。例えば、集電体の面内外周部に存在する熱伝導部の面積(面中央部から最も遠い位置に存在する分割熱伝導部(群)および導電要素(群)の総表面積)は、集電体の面内中央部に存在する熱伝導部の面積(面中央部に最も近い位置に存在する分割熱伝導部(群)および導電要素(群)の総表面積)より大きい形態が挙げられる。外周部の伝熱熱面積を相対的に広くすることによって、熱移動を促進することが可能となる。熱伝導部の面積は、各分割熱伝導部および各導電要素の表面積の合計とする。例えば、図2の形態では、面中央部に分割熱伝導部が4個、導電要素が4個存在し、面内外周部に分割熱伝導部が20個、導電要素が20個存在するため、表面積は面内外周部が面内中央部の5倍大きくなる。面内中央部と面内外周部に存在する熱伝導部も、中から外にいくにつれ、熱伝導部の(合計)表面積が大きくなるように配置することが好適である。
【0034】
また、同じ大きさの分割熱伝導部を同じ数配置する場合であっても、中央部から外周部に向けて、配置密度を密から粗に配置するよりも、中央部から外周部に向けて均等に配置するか、中央部から外周部に向けて、配置密度を粗から密に配置する形態が好適となる。すなわち、分割熱伝導部の配置も、温度勾配が小さい箇所の熱流束を大きくし、温度勾配が大きいところの熱流束を小さくするように配置することが好ましい。
【0035】
以上、第一実施形態の効果を纏める。面方向の体積抵抗率の高い樹脂層が存在することにより、面方向に電流が流れることが抑制され、熱の発生が抑制される。熱伝導性の高い熱伝導部の存在により、放熱性が向上し、電池劣化が抑制される。熱伝導部が面方向に分割されていることから、面方向の電子パスが抑制され、熱発生が抑制される。樹脂層が熱伝導部の外周部を覆うことにより、エッジ部からの熱の放出が抑制され、極間の熱移動が効率よく行われる。導電要素により、分割熱伝導部を連結することにより、面方向の熱の移動が促進される。集電体の面内外周部に存在する熱伝導部の面積を、集電体の面内中央部に存在する熱伝導部の面積より大きくすることにより、スタックの温度分布を小さくすることができる。
【0036】
図3は、第2実施形態である、積層型の双極型リチウムイオン二次電池20の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【0037】
第2実施形態は、面内外周部の分割熱伝導部14が波型として凹凸を構成していること以外は、第1実施形態と同様である。図4Aは、第2実施形態の集電体18の平面模式図であり、Bは、第2実施形態の集電体18の断面模式図である。面内外周部の分割熱伝導部が凹凸を形成することで、熱流束の小さい(温度分布が小さい)箇所での伝熱面積を増加させることができ、面方向の熱流束を大きくすることが可能となる。したがって、電池の放熱性が向上し、電池の劣化が抑制される。
【0038】
分割熱伝導部を波型として凹凸にする方法としては、特に限定されるものではないが、図2に記載の熱伝導部の形状を作製した後、再度プレス成形や冷間ロールプレス成型などを用いて外周部の分割熱伝導部を成型する方法が挙げられる。
【0039】
第2実施形態は、集電体の面内外周部に存在する分割熱伝導部の伝熱面積を増加させることにより、熱伝導部における放熱を促進させ、電池の劣化をより抑制することができるという効果を有する。
【0040】
上記では、具体的な実施形態を挙げて説明したが、集電体の面内外周部に存在する個々の分割熱伝導部の表面積が、集電体の面内中央部に存在する個々の分割熱伝導部の表面積より大きい形態であれば、放熱が促進され、電池の劣化を抑制することができる。ここで、面内外周部に存在する分割熱伝導部とは、面中央部から最も遠い位置に存在する分割熱伝導部を指し、面内中央部に存在する熱伝導部とは、面中央部に最も近い位置に存在する分割熱伝導部を指す。双極型電池では、電池中央部が相対的にジュール熱により高温になることが考えられ、周辺部の伝熱面積を相対的に広くすることで、熱移動を促進することができる。第2実施形態の例は、周辺部をフィン構造にして、伝熱面積を増加させた例である。
【0041】
集電体の面内外周部に存在する分割熱伝導部の面積が、集電体の面内中央部に存在する分割熱伝導部の面積より大きいその他の例としては、図5の形態が挙げられる。図5の集電体では、集電体の面内外周部に存在する分割熱伝導部の垂直(積層体)方向からの投影面積が、集電体の面内中央部に存在する分割熱伝導部の投影面積よりも大きくなっている。外周部の分割熱伝導部の面積を増加させる方法としては、比表面積を増加させる方法であってもよい。比表面積を増加させうる方法として、陽極酸化法による多孔質酸化被膜を外周部の分割熱伝導部に形成させる形態が挙げられる。
【0042】
面内外周部および面内中央部以外の分割熱伝導部の面積は、特に限定されず、生産性を考慮して中央部に存在する分割熱伝導部と同じとしてもよいし、放熱性を考慮して中央から外周部に向けて徐々に面積を大きくしてもよい。また、中央部に近い側の分割熱伝導部(中心から外縁までの距離の中間点で囲まれた内側の範囲)を中央部と同じ面積とし、外側の範囲の分割熱伝導部の面積を外周部の面積と同じとしてもよい。
【0043】
以下、双極型電池を構成する各部材について説明する。
【0044】
(樹脂層)
樹脂層は、導電性を有し、必須に樹脂を含む。樹脂層が導電性を有するには、具体的な形態として、1)樹脂を構成する高分子材料が導電性高分子である形態、2)樹脂層が樹脂および導電性フィラー(導電材)を含む形態が挙げられる。
【0045】
導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。電子伝導性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、がより好ましい。
【0046】
上記2)の形態に用いられる導電性フィラー(導電材)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。
【0047】
具体的には、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀材、金材、アルミニウム材、ステンレス材、カーボン材、さらに好ましくはカーボン材である。またこれらの導電性フィラー(導電材)は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記導電材)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0048】
また、導電性フィラー(導電材)の形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
【0049】
カーボン粒子としては、カーボンブラックやグラファイトなどが挙げられる。カーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン粒子は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン粒子は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン粒子を導電性粒子として用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体の空孔に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
【0050】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0051】
また、樹脂層が導電性フィラーを含む形態の場合、樹脂層を形成する樹脂は、上記導電性フィラーに加えて、当該導電性フィラーを結着させる導電性のない高分子材料を含んでいてもよい。樹脂層の構成材料として高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、電池の信頼性を高めることができる。高分子材料は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択される。
【0052】
高分子材料の例としては、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。さらに熱を加えることで融解し易く、金属層や正極層や負極層に融着することが容易である。
【0053】
樹脂層における、導電性フィラーの比率は、特に限定されないが、好ましくは、高分子材料および導電性フィラーの合計に対して、1〜30質量%の導電性フィラーが存在する。十分な量の導電性フィラーを存在させることにより、樹脂層における導電性を十分に確保できる。
【0054】
上記樹脂層には、導電性フィラーおよび樹脂の他、他の添加剤を含んでいてもよいが、好ましくは、導電性フィラーおよび樹脂からなる。
【0055】
樹脂層は、従来公知の手法により製造できる。例えば、スプレー法またはコーティング法を用いることにより製造可能である。具体的には、高分子材料を含むスラリーを調製し、これを塗布し硬化させる手法が挙げられる。スラリーの調製に用いられる高分子材料の具体的な形態については上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。前記スラリーに含まれる他の成分としては、導電性フィラーが挙げられる。導電性粒子の具体例については上述の通りであるために、ここでは説明を省略する。あるいは、高分子材料および導電性粒子、その他の添加剤を従来公知の混合方法にて混合し、得られた混合物をフィルム状に成形することで得られる。また、例えば、特開2006−190649号に記載の方法のように、インクジェット方式により樹脂層を作製してもよい。
【0056】
(熱伝導部)
熱伝導部は、樹脂層よりも熱伝導性が高い。熱伝導部の熱伝導性が高いため、面方向の熱移動が促進し、双極型電池の放熱性能が向上する。また、熱伝導部により、極間の熱移動も効率的に行われる。
【0057】
このような熱伝導部の具体的な形態としては、特に限定されるものではないが、好適には、熱伝導部に樹脂層よりも熱伝導率の高い材料を用いることが挙げられる。熱伝導率の高い材料を用いることで、熱伝導部の熱伝導性が向上し、放熱性が向上する。具体的には、熱伝導部が、1)金属材料を主成分として含む形態、2)樹脂層よりも熱伝導率の高い、樹脂および導電性フィラーを含む樹脂層からなる形態が挙げられる。中でも、熱伝導率が高く、より放熱が促進され、電池劣化が抑制できることから、熱伝導部が金属材料を主成分として含む形態であることが好ましく、金属材料からなる形態(金属箔)であることがより好ましい。ここで、主成分とは、集電体100質量%に対して、金属材料が85質量%以上であることを指し、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。なお、熱伝導部が樹脂層からなる形態の場合、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法や熱線法により、樹脂層および熱伝導部を構成する材料のサンプル片から測定した熱伝導率を比較することによってその高低を決定することができる。この際、樹脂層および熱伝導部の熱伝導率の測定は、測定装置、測定条件を同一で行う。
【0058】
金属材料としては、特に限定されないが、具体的な例としては、例えば、鉄、クロム、ニッケル、マンガン、チタン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、銅、銀、金、白金およびカーボンよりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料が挙げられる。より好ましくはアルミニウム、チタン、銅、ニッケル、銀、またはステンレス(SUS)よりなる群から選ばれてなる少なくとも1種類の集電体材料などが挙げられる。これらは単層構造(例えば、箔の形態)で用いてもよいし、異なる種類の層で構成された多層構造で用いてもよいし、これらで被覆されたクラッド材(例えば、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材)を用いてもよい。あるいは、これらの集電体材料の組み合わせのめっき材なども好ましく使える。また、上記集電体材料である金属(アルミニウムを除く)表面に、他の集電体材料であるアルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の上記集電体材料である金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。上述の材質は、耐食性、導電性、または加工性などに優れる。
【0059】
熱伝導部が、樹脂および導電性フィラーを含む樹脂層からなる形態は、上述した樹脂層と同様であり、樹脂層の欄において詳述したため、ここでは説明を割愛する。該形態の場合、熱伝導率が樹脂層に較べて、5倍以上高いことが好ましく、10倍以上高いことがより好ましい。
【0060】
第1および第2実施形態では、分割熱伝導部および樹脂層がいわゆる海島構造(分割熱伝導部が島構造で、樹脂層が海構造)で配置されている。しかしながら、樹脂層および熱伝導部の配置は、樹脂層が熱伝導部の外周を覆う形態である限り、上記形態に限定されるものではない。例えば、図6のように、熱伝導部22および樹脂層12を同心四角形状に配置してもよい。図6のAは、双極型電池の集電体の他の実施形態の平面模式図であり、Bは、断面模式図である。図6では、伝熱部22は、板状(箔状)であり、この外周部を覆うように、樹脂層12が形成されてなる。その他の樹脂層および伝熱部の配置形状としては、同心円状、同心楕円形状、同心三角形状、同心五角形状、同心六角形状、同心正方形状、同心長方形状などの同心形状が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0061】
また、第1および第2実施形態では、平面図(図2のAまたは図4のA)で分割熱伝導部を中心から同心四角形状となるように配置したが、配置形態は特に限定されるものではない。分割熱伝導部の配置形態の例としては、例えば、円形状、楕円形状、三角形状、五角形状、六角形状、または長方形状などが挙げられる。この際、分割熱伝導部を、均等に配置するか、外周部を密に中央部を粗に配置する形態が外周部の伝熱面積を広げられるので好適である。
【0062】
分割熱伝導部の立体形状は特に限定されるものではなく、線状、立方体状、直方体状(棒状、板状)、円柱状、三角柱状などが挙げられる。いずれの場合も、分割熱伝導部の高さ方向(最も長い辺)が面方向と概平行となるように集電体内に配置することが好ましい。
【0063】
さらに、図2、図4および図5の各平面模式図では、分割熱伝導部の面形状が四角形状である例を示しているが、これに限定されるものではない。分割熱伝導部の形状は、同じ電極内で同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。また、分割熱伝導部の面積方向の間隔は、一定であっても良いし、それぞれ異なっていてもよい。なお、上記いずれの配置状態においても、分割熱伝導部を導電要素で連結することが好ましい。
【0064】
熱伝導部が集電体中に占める割合は、特に限定されるものではないが、集電体体積に対して、10〜80体積%程度であることが好ましい。
【0065】
熱伝導部が分割熱伝導部および分割熱伝導部を連結する導電要素から構成される形態は好適である。上述したように、熱伝導部により、面方向の熱移動を促進することができる。熱移動(放熱性)の観点からは、各分割熱伝導部が熱伝導性の高い部材によって物理的に連結している形態が、熱移動が効率的に行われるため好ましい。一方で、熱伝導部は、樹脂層と比較して、面方向の電子伝導性にも優れるため、内部短絡時の面方向に流れる電流が大きく、熱が発生する場合がある。したがって、熱伝導部は、面方向の電子パスを抑制することができ、内部短絡時の熱発生を抑制できるという観点からは分割されていることが好ましい。発熱の防止と放熱性という両者のバランスを考慮すると、分割熱伝導部および分割熱伝導部を連結する導電要素から構成される形態は、最も好適となる。
【0066】
導電要素を構成する材料は、樹脂層よりも熱伝導性が高ければいずれの材料も用いることができる。成形性の観点からは、分割熱伝導部と同一の材料であることが好ましい。また、導電要素は、分割熱伝導部よりも面方向の熱伝導性が低いことが好ましい。熱伝導性は電子伝導性に比例するため、分割熱伝導部よりも面方向の熱伝導性が低い導電要素を用いることによって、集電体全体として、短絡時の発熱が防止される。面方向の熱伝導性は、面方向に垂直方向の断面積Sに比例し、面方向の長さLに反比例する(図7)。したがって、導電要素のS(面方向に垂直方向の断面積)/L(面方向の長さ)は、分割熱伝導部のS(面方向に垂直方向の断面積)/L(面方向の長さ)よりも小さいことが好ましい。特に限定されるものではないが、発熱の防止と放熱性という両者のバランスを考慮すると、S/Lは、S/Lに対して、1/100〜4/5であることが好ましく、1/20〜1/2であることがより好ましい。ただし、導電要素は各分割熱伝導部を連結し、熱の移動を効率的に行う必要があることから、SはSよりも大きいことが好ましい。導電要素の立体形状は特に限定されるものではなく、線状、立方体状、直方体状(棒状、板状)、円柱状、三角柱状などが挙げられる。いずれの場合も、導電要素の高さ方向(最も長い辺)が面方向と概平行となるように集電体内に配置することが好ましい。
【0067】
(集電体)
集電体の厚さは、特に限定されるものではないが、電池の小型化、極間の伝熱速度の向上の観点から、薄層であることが好ましい。また、電解液を遮断する機能が必要であり、熱伝導の観点から、薄層であることが好ましい。具体的には、種々の加工法で制御可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、0.1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。また、熱伝導部の最大厚さは、0.1〜50μm程度であることが好ましい。
【0068】
上記の熱伝導部および樹脂層を含む集電体は、所望の熱伝導部パターンをプレス加工後、樹脂板で挟み、ホットプレス法で加工することによって製造することができる。また、樹脂シート上に金属パターン(熱伝導部)を直接加工する場合においては、例えば、1.無電解めっき法により樹脂部に金属部をめっき、2.蒸着法により樹脂に金属蒸着、3.CVD法などの公知の技術で樹脂に金属薄膜を形成することが可能である。より簡易な方法として、金属薄膜と樹脂とをホットプレス等で張り合わせた後に、エッチング法等公知の加工法を使用して、所望の金属部形状(パターン)を形成した後に、さらに樹脂で金属部を被覆することによって作製することができる。
【0069】
(活物質層)
[正極(正極活物質層)及び負極(負極活物質層)]
活物質層13または15は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0070】
正極活物質層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0071】
負極活物質層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0072】
各活物質層13、15に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmである。
【0073】
正極活物質層13および負極活物質層15は、バインダを含む。
【0074】
活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
【0075】
活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0076】
活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0077】
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0078】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0079】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0080】
正極活物質層および負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。各活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
【0081】
(電解質層)
電解質層13を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
【0082】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0083】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0084】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0085】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0086】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0087】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0088】
(最外層集電体)
最外層集電体の材質としては、例えば、金属や導電性高分子が採用されうる。電気の取り出しやすさの観点からは、好適には金属材料が用いられる。具体的には、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、アルミニウム、銅が好ましい。
【0089】
(タブおよびリード)
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは最外層集電体や集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0090】
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0091】
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0092】
(電池外装材)
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素(電池要素)を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。本発明では、高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
【0093】
なお、上記の実施形態の双極型電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
【0094】
<双極型電池の外観構成>
図8は、双極型電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型のリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0095】
図8に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58及び負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図1、図3に示す双極型のリチウムイオン二次電池10または20の発電要素(電池要素)21に相当するものであり、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0096】
なお、上記リチウムイオン電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素(電池要素)がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0097】
また、図8に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図8に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0098】
上記リチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0099】
本実施形態は、内部短絡が生じた場合であっても、樹脂層を含む集電体の存在により、発熱が抑制されるという効果を有する。
【0100】
<組電池>
組電池は、上記双極型電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0101】
また、図9は、組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図9Aは組電池の平面図であり、図9Bは組電池の正面図であり、図9Cは組電池の側面図である。
【0102】
図9に示すように、本実施形態の組電池300は、双極型電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成し、この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図9Aは、組電池の平面図、図9Bは正面図、図9Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0103】
<車両>
本実施形態の車両は、上記双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。本発明では、長期信頼性及び出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。双極型電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0104】
図10は、組電池を搭載した車両の概念図である。
【0105】
図10に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【符号の説明】
【0106】
10、20、50 双極型リチウムイオン二次電池、
11a 最外層正極集電体、
11b 最外層負極集電体、
12 樹脂層、
13 正極活物質層、
14 分割熱伝導部、
15 負極活物質層、
16 導電要素、
17 電解質層、
18 集電体、
19 単電池層、
20 双極型電極、
21、57 発電要素、
22 熱伝導部、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29、52 外装材(ラミネートシート)、
31 絶縁部材、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する樹脂層を含む集電体の一方の面に正極活物質層、他方の面に負極活物質層が形成されてなる双極型電極を含む双極型電池であって、
前記集電体は、さらに前記樹脂層よりも熱伝導性が高い熱伝導部を含み、積層方向から見て平面視で、前記樹脂層が前記熱伝導部の外周部を覆う、双極型電池。
【請求項2】
前記熱伝導部は、金属材料からなる複数の分割熱伝導部と、各分割熱伝導部を連結する導電要素からなる、請求項1に記載の双極型電池。
【請求項3】
集電体の面内外周部に存在する熱伝導部の面積は、集電体の面内中央部に存在する熱伝導部の面積より大きい、請求項1または2に記載の双極型電池。
【請求項4】
集電体の面内外周部に存在する分割熱伝導部の面積が、集電体の面内中央部に存在する分割熱伝導部の面積より大きい、請求項2または3に記載の双極型電池。
【請求項5】
リチウムイオン二次電池である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された電池が複数個接続された組電池。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された電池、または請求項6に記載の組電池を、モータ駆動用電源として搭載する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−212094(P2010−212094A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57138(P2009−57138)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】