説明

双眼鏡

【課題】 本発明は観察対象物の音情報を集音することができる双眼鏡を提供する。
【解決手段】 本発明の双眼鏡(100)は、対象物(80)までの距離を測定する測距部(4)と、対象物からの発生音を集音する指向性を有する少なくとも一対の指向性マイク(5)と、双眼鏡から伸縮可能に設けられて、指向性マイクが取り付けられている一対のアーム(6)と、測距部からの距離に応じて、指向性マイクの向きを対象物に合うように回転させるマイク回転部(51)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象物の音情報を集音することができる双眼鏡に関し、特に、音情報を集音するために、マイクの角度を自動的に調整する機能を有する双眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、観察対象物の音情報を集音するデバイスとして、音情報を収録するためのマイクを備えたビデオカメラ等のような撮像装置がある。特許文献1に係る撮像装置は、画像とともに音情報を収録し、且つ画角の変化に対応した音情報を集音することができる。
【0003】
特許文献1に係る撮像装置は、二つのビデオカメラ部と、これらのビデオカメラ部を回動させて、ビデオカメラ部の光軸の向きを変化させる駆動手段を備える。その撮像装置は、各ビデオカメラ部の中心軸の向きに応じてマイクの指向性を変化させる音情報処理手段を備える。
【0004】
特許文献1に係る撮像装置は、マイクとして単一指向性マイクユニットと単一指向性マイクユニットの最大感度方向と垂直する最大感度方向を有する双指向性マイクユニットとを組み合わせたものを使用する。この撮像装置は、各ビデオカメラ部の光軸の交差角に応じて両方のマイクユニットからの音声信号の合成割合を変えて指向性を変化させる。つまり特許文献1の撮像装置は、マイクを撮像装置に内装して、二つの音声信号の合成割合を変えて、観察対象物の音情報を集音する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7―107353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、双眼鏡で観察する観察対象物は遠い所に位置する場合もあり近い所に位置する場合がある。双眼鏡から観察対象物までの距離が変化すると、指向性マイクの集音範囲に誤差が生ずる。特許文献1の撮像装置によれば、離れている観察対象物の距離に応じてマイクを調整することができなく、観察対象物の音情報をきれいに集音することができない。
【0007】
本発明は、映像を観察すると同時に、離れている観察対象物の距離に応じて観察対象物の音情報をきれいに集音することができる双眼鏡を提供することにその目的がある。特に、観察対象物の距離に従って、マイクを自動的に回転することができ、障害物があった場合にマイクを回転して障害物を回避して観察対象物の音情報を集音することができる双眼鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一観点によれば、対象物を観察する双眼鏡であって、対象物までの距離を測定する測距部と、対象物からの発生音を集音する指向性を有する少なくとも一対の指向性マイクと、双眼鏡から伸縮可能に設けられて、指向性マイクが取り付けられている一対のアームと、測距部からの距離に応じて、指向性マイクの向きを対象物に合うように回転させるマイク回転部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の双眼鏡によれば、双眼鏡から観察対象物までの距離に従って、マイクを自動的に回転させることで、観察対象物の音情報を集音することができる。例えば、音情報を集音する途中に障害物があり音情報を集音しづらい場合など、マイク回転部を回転させることで障害物を回避して観察対象物の音情報を集音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る第一双眼鏡100の構成を概略に示される部分断面図である。
【図2】(a)は、第一双眼鏡100のアーム6と指向性マイク5との構造を示す部分拡大図で、(b)は変更例に係るアーム6aの構造を示す部分拡大図である。
【図3】(a)は、第一双眼鏡100の中心軸を中心にアーム6を回転させるアーム回転手段14を説明するための概念図であり、(b)はアーム回転手段14の拡大断面図である。
【図4】第一双眼鏡100を使用して、観察対象物80を観察する動作を説明するための図面である。
【図5】第一双眼鏡100から観察対象物80までの距離dと、アーム6の移動距離Lと、指向性マイク5の回転角度θとの対応関係を一例として示される図面である。
【図6】(a)は、第二双眼鏡200の構造を示す概念図で、(b)は第二双眼鏡200の接眼レンズ部2で観察された視野の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の具体的な実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。本実施形態に係る双眼鏡は、特にバードウォッチング等に適用することができる。即ち、遠い場所にいる例えば野鳥等を観察しながら、野鳥等の音情報を集音することができる。
【0012】
<第一双眼鏡100の構成>
第一双眼鏡100は二つの鏡筒を平行に並べて遠方のものを両眼で拡大して観察する光学機器である。図1は第一双眼鏡100の構成を示した部分断面図であり、図1の右側が第一双眼鏡100の断面を示している。
【0013】
図1に示されるように、第一双眼鏡100は、対物レンズ31と接眼レンズ21とを保持し、レンズ以外からの光線の入射を防止する鏡筒1を備える。第一双眼鏡100の鏡筒1は二つの接眼レンズ部2と二つの対物レンズ部3とを備える。対物レンズ部3には凸レンズである対物レンズ31が設けられている。対物レンズ部3には、ズーム倍率を調節するためのズーム調節部32が設けられている。
【0014】
接眼レンズ部2には、対物レンズ31で集めた光によって焦点に作られた実像を拡大するための接眼レンズ21が設けられている。接眼レンズ部2には、左右眼での視度を調節するための左右視度調節部22が設けられている。この左右視度調節部22は、片方の接眼レンズ部2に設けられても良く、独立調節できるように両方の接眼レンズ部2に設けられても良い。また鏡筒1の内部に、凸レンズにより倒立像になった像を反転させて正立像にするために二つの直角プリズム11が設けられている。
【0015】
第一双眼鏡100は、第一双眼鏡100から観測対象80までの距離を測定するための測距部4が、鏡筒1の二つの対物レンズ部3の間に設けられている。
【0016】
測距部4はレーザ測距手段を使用することができる。このレーザ測距手段は、レーザ光を観察対象物80に照射し、観察対象物80から反射したレーザ光の反射時間により、観察対象物80から第一双眼鏡100までの距離を測定する。
【0017】
測距部4は超音波測距手段を使用することもできる。この超音波測距手段は、超音波を観察対象物80に照射し、観察対象物80から反射した超音波の反射時間により、観察対象物80から第一双眼鏡100までの距離を測定する超音波測距センサである。
【0018】
また、測距部4としてミリ波レーダを使用することもできる。このミリ波レーダは、ミリ波を観察対象物80に出射することで、観察対象物80から反射してきた電波を受信し、伝搬時間やドップラー効果によって生じる周波数差などに基づいて、観察対象物80から第一双眼鏡100までの距離を測定する。
【0019】
鏡筒1の両外端に、双眼鏡100の中心軸AAを中心にして放射方向(以下放射方向と略称する)に伸縮可能なアーム6が設置されている。各アーム6には、アーム6を放射方向に駆動移動させるためのアームモータ61が内装されている。このアームモータ61は、リニアモータ又は回転モータ等であれば特に限定はない。アーム6は、測距部4で測定された観察対象物80から第一双眼鏡100までの距離に応じて伸縮する。アーム6の伸縮については後で詳しく説明する。
【0020】
また、鏡筒1のアーム6と対応する位置において、アーム回転手段14が設けられている。アーム回転手段14は、スライドレール141とスライド部142とからなる。スライドレール141は鏡筒1に設置され、スライド部142はアーム6に設置されている。スライド部142は、第一双眼鏡100の中心軸AAを中心にして、スライドレール141を移動可能に設けられている。
【0021】
スライド部142はアーム6に設置されているので、スライド部142が第一双眼鏡100の中心軸AAを中心に回転する場合、アーム6も第一双眼鏡100の中心軸AAと交差する平面において、第一双眼鏡100の中心軸AAを中心に回転可能になっている。
【0022】
鏡筒1から外側に突出した各アーム6の端部には、其々にマイク回転部51を介して指向性マイク5が設けられている。指向性マイク5は単一指向性マイクであることが好ましい。単一指向性マイクは、正面方向から入る音情報に最も感度が良く、側面などの周辺からの音情報は殆ど拾わないマイクである。
【0023】
指向性マイク5は、観察対象物80の音情報を集音するためのものであり、マイク回転部51に設けられている。指向性マイク5には、測距部4により測定された観察対象物80から第一双眼鏡100までの距離に応じて、指向性マイク5の感度を変えるマイクアンプ19(図4参照)が接続されている。観察対象物80が第一双眼鏡100から遠く離れている場合、指向性マイク5はマイクアンプ19(図4参照)により増幅される。
【0024】
第一双眼鏡100は、視野内の観察対象物80に焦点を合わせるための焦点調節部7を備える。また、第一双眼鏡100は、電源をオン・オフするための電源スイッチ8を備える。使用者は第一双眼鏡100を使用する時、両手の指を利用して鏡筒をまわし軽くつかむ。また、第一双眼鏡100に使用上の利便性を図るために不図示のストラップが設けられてもよい。
【0025】
図2(a)は、第一双眼鏡100のアーム6と指向性マイク5との構造を示す部分拡大図で、図2(b)は図2(a)の変更例に係るアーム6aの構造を示す部分拡大図である。
【0026】
図2(a)に示されるように、アーム6はアーム回転手段14に接続されているアーム本体65を備える。放射方向におけるアーム本体65の長さはL1である。アーム6は、放射方向において伸縮可能な伸縮アーム62を備える。この伸縮アーム62は、その一部がアーム本体65に内装され、他の一部がアーム本体65から突出されている。アームモータ61はアーム本体65の内部に設置されて、伸縮アーム62に接続されている。アームモータ61の駆動により、伸縮アーム62は直線に移動することができる。
【0027】
突出されている伸縮アーム62の放射方向における長さはL2で、アーム本体65に内装されている伸縮アーム62の長さはL3である。アームモータ61の駆動により、伸縮アーム62は放射方向に最大限度で距離L3を伸ばすことができる。
【0028】
突出されている伸縮アーム62の先端にマイク回転部51が設けられている。従って、伸縮アーム62がアーム本体65の内部に収納されている場合、鏡筒1から伸縮アーム62の先端の指向性マイク5までの距離は距離L1+距離L2である。伸縮アーム62が最大限に移動すると、鏡筒1から指向性マイク5までの距離は、距離L1+距離L2+距離L3になる。
【0029】
アームモータ61は、測距部4(図1参照)により測定された観察対象物80から第一双眼鏡100までの距離に応じて、伸縮アーム62を距離L3の半分を移動させたり距離L3を移動させたりする。
【0030】
伸縮アーム62の先端にマイク回転部51が設けられている。マイク回転部51の内部には、マイク回転部51を回転するための不図示のモータが内装されている。
【0031】
マイク回転部51は指向性マイク5を一点鎖線で示される軸を中心にθ回転する。一点鎖線で示される軸を中心に指向性マイク5がθ回転して、指向性マイク5の向きは観察対象物80(図1参照)に合わせられる。すなわち、マイク回転部51は、測距部4(図1参照)により測定された観察対象物80から第一双眼鏡100までの距離に応じて、観察対象物80に合わせるように指向性マイク5の向きを変更することができる。
【0032】
図2(a)ではアームモータ61は1本の伸縮アーム62の移動を距離L3が伸び縮みするように制御するように設定したが、これに限定されるわけではない。伸縮アーム62の距離L3の範囲内で伸縮を任意に設定できるようにしてもよい。
【0033】
図2(b)は変形例であるアーム6aの構造を示す部分拡大図である。図2(b)に示されるようにアーム6aは、アーム回転手段14に接続されているアーム本体65を備える。アーム6aは、第一直径を有する円形の第一アーム63と、第一直径より小さい第二直径を有する円形の第二アーム64と備える。第二アーム64の先端に指向性マイク5が設けられている。
【0034】
アームモータ61がアーム本体65に内装されている。第一アーム63は、アーム本体65に収納されて、アームモータ61の駆動により伸ばすことができる。さらに第二アーム64はその一部が第一アーム63の内部に収納されて、アームモータ61の駆動により放射方向に伸ばすことができる。このような構造によれば、第一アーム63と一部の第二アーム64とをアーム本体65に収納することができる。
【0035】
従って、第一アーム63と第二アーム64とが一緒に放射方向に伸縮することができる。第一アーム63と一部の第二アーム64とが収納されている状態において、アーム6aの構造をより一層コンパクトにすることができる。さらに第一アーム63と一部の第二アーム64とを伸ばすことにより、アーム6aをより一層長く伸ばすことができる。
【0036】
図3(a)は、対物レンズ3側から第一双眼鏡100を見た概念図である。図3(b)はアーム回転手段14の拡大断面図である。図3は第一双眼鏡100の中心軸AAを中心にアーム6を回転させるアーム回転手段14を説明するための図である。
【0037】
図3(a)及び図3(b)に示されるように、鏡筒1に設けられているアーム回転手段14は、スライドレール141とスライド部142とを備える。一対のスライドレール141は略四角柱のブロック形状で鏡筒1に互いに180度反対位置に設けられている。スライド部142は鏡筒1の全周に渡って円環状に形成されている。一対のアーム6がスライド部142の一部に互いに180度反対位置に設けられている。スライド部142は不図示のモータにより駆動されて、スライドレール141に沿って第一双眼鏡100の中心軸AAを中心に回転することができる。
【0038】
スライド部142がスライドレール141に沿って回転することにより、スライド部142に設置されたアーム6が、図3(a)に示される矢印方向に回転する。その結果、アーム6の先端に固定された指向性マイク5が第一双眼鏡100の中心軸AAを中心に回転することになる。例えば図3(a)の点線に示されるように、指向性マイク5が異なる位置に移動する。
【0039】
図3(b)のアーム回転手段14の拡大断面図に示されるように、スライド部142の略中央の内径側において、−X方向に突出した突出部143が設けられている。また、スライドレール141の端部には、突出部143と対応する形状の凹部144が設けられている。突出部143を凹部144に嵌め込むことにより、スライド部142とスライドレール141とが組み立てられる。
【0040】
凹部144は、スライドレール141のY方向の両側からお互いに交差する方向に伸びる爪部145が形成されている。この爪部145はZ方向から見ると斜めに突出した三角形で形成される。突出部143の周囲に爪部145と対応して引っ掛け部146が形成されている。この引っ掛け部146も、Z方向から見ると斜めに凹んだ三角形を形成する。爪部145と引っ掛け部146とが噛み合うことにより、スライド部142とスライドレール141とが組み立てられる。
【0041】
スライドレール141は、爪部145の一方が設置部148に形成されている。設置部148はスライドレール141から取り外すことが可能である。スライド部142をスライドレール141に組み立てる場合、まず設置部148が取り外された状態で突出部143を凹部144に嵌め込む。その後、突出部143の凹んだ三角形に合わせるように、設置部148がスライド部142の欠け領域に嵌め込む。その後、ネジ147等により、設置部148がスライドレール141に固定される。これによりスライド部142がスライドレール141に組み立てられ、凹部144がスライド部142のレールになる。
【0042】
不図示のモータでスライド部142が駆動することにより、突出部143が凹部144内を移動する。なお、本実施例ではスライド部142に突出部143が設置され、スライドレール141に凹部144が設置されたが、逆にスライド部142に凹部144が設置されるようにし、スライドレール141に突出部143が設置されるようにすることもできる。
【0043】
本実施例において、スライドレール141をブラック形状に形成し、スライド部142を円環形状に形成した。しかし、スライドレール141を円環形状に形成し、スライド部142をブラック形状に形成することもできる。また、スライドレール141とスライド部142とを円環形状に形成することもできる。
【0044】
<第一双眼鏡100の動作>
以下、図4に基づいて、第一双眼鏡100の動作について説明する。図4は、第一双眼鏡100を使用して観察対象物80を観察する動作を説明するための図である。
【0045】
図4に示されるように、使用者が第一双眼鏡100を使用して観察対象物80を観察すると、測距部4は、第一双眼鏡100から観察対象物80までの距離を測定する。
【0046】
測距部4により測定された距離は、鏡筒1に設置された制御部18に転送される。制御部18にはデータベースが格納されている。このデータベースは、第一双眼鏡100から観察対象物80までの距離dと、アーム6の移動距離Lと、指向性マイク5の回転角度θとの対応関係を記憶している。本実施例において制御部18は、アーム6を距離L3と距離L3の半分との2段階に移動させる指令を出すことができる。また制御部18は、指向性マイク5の回転角度θを30度、45度、60度の3段階に回転させる指令を出すことができる。
【0047】
図5において、第一双眼鏡100から観察対象物80までの距離dと、アーム6の移動距離L3と、指向性マイク5の回転角度θとの対応関係が例示されている。図5に示されるように、第一双眼鏡100から観察対象物80までの距離dが例えばd2〜d3の範囲に属する場合、制御部18は、アーム6が距離L3の半分を移動するようにアームモータ61を制御する。それと同時に、制御部18は、指向性マイク5が30度の角度になるようにマイク回転部51を制御する。図5で、指向性マイク5の30度、45度、60度という角度は、指向性マイク5及び観察対象物80を結ぶ直線とアーム6とがなす角度を意味する。
【0048】
また、制御部18は、指向性マイク5からの音情報を使用者に聞かせるためのスピーカ17と指向性マイク5からの音情報を増幅するマイクアンプ19とに接続されている。
【0049】
制御部18は、測距部4から受信した信号に基づいて、図5に示されるデータベースの対応関係を読み出して、其々の対応関係に従ってアームモータ61とマイク回転部51とを制御する。また、第一双眼鏡100から観察対象物80までの距離dが例えば距離d3以上になった場合、指向性マイク5からの音情報はマイクアンプ19により増幅される。
【0050】
以上の説明で、制御部18はアーム6の移動を二段に制御し、指向性マイク5の回転を三段に制御したが、これに限定されるわけではない。アーム6の移動を二段以上に制御し、指向性マイク5の回転を三段以上に制御して、指向性マイク5のX方向に伸ばす距離と回転角度をより細かく制御することができる。
【0051】
スピーカ17は、指向性マイク5により集音された音情報を出力する。観察対象物80の音情報を集音する経路において、樹木TRなどのような障害物がある場合、スピーカ17から出た音情報の音量が低くなったり観察対象物80以外の不要な音情報があったりする。この場合、指向性マイク5が第一双眼鏡100の中心軸を中心に回転するように使用者によりアーム回転手段14を操作して、障害物の障害を避けることができる。
【0052】
即ち、スピーカ17から出た観察対象物80の音情報が良く聞こえない場合、使用者がアーム回転手段14の駆動ボタン等を押すことにより、アーム回転手段14は第一双眼鏡100の中心軸を中心に45度回転して、アーム6は45度位置で止まる。
【0053】
アーム6が45度位置に止まった後、スピーカ17から出た観察対象物80の音情報がやはり良く聞こえない場合、使用者がアーム回転手段14の駆動ボタン等をもう一度押す。これによりアーム回転手段14は第一双眼鏡100の中心軸を中心に更に45度回転して、アーム6は90度位置で止まる。
【0054】
90度位置においてもスピーカ17から出た観察対象物80の音情報がやはり良く聞こえない場合、使用者がアーム回転手段14の駆動ボタン等をもう一度押す。これによりアーム回転手段14は第一双眼鏡100の中心軸を中心に更に45度回転して、アーム6は135度位置で止まる。
【0055】
使用者がアーム回転手段14の駆動ボタン等をもう一度押すと、アーム6は180度位置で止まる。このように、スピーカ17から出た観察対象物80の音情報が良く聞こえる時まで、使用者がアーム回転手段14の駆動ボタンを操作することにより障害物を避けて観察対象物80の音情報を集音することができる。
【0056】
以上の説明では45度間隔でアーム回転手段14が回転したが、例えばアーム回転手段14が30度ずつ回転するようにより細かく分けて設定することもできる。
以上に説明した方法の他に下記の方法を採用して、アーム回転手段14の回転を制御することもできる。即ち、スピーカ17から出た観察対象物80の音情報が良く聞こえない場合、使用者がアーム回転手段14の駆動ボタン等を押す。駆動ボタンを押されるとアーム回転手段14が180度回転する。
【0057】
アーム回転手段14が180度回転する間において、制御部18は指向性マイク5から集音した観察対象物80の音情報を記憶する。制御部18は、45度の間隔に分けた四つの領域において、其々記憶された観察対象物80の音情報の音量を比べる。その後、制御部18は弱い音量が含まれている領域に入らないように、アーム回転手段14を回転させる。これにより、音情報の集音経路における障害物を避けて、観察対象物80の音情報をよりきれいに集音することができる。
【0058】
<第二双眼鏡200の構成>
以下、図6に基づいて、他の実施例に係る第二双眼鏡200について説明する。図6(a)は第二双眼鏡200の構造を示す概念図で、図6(b)は第二双眼鏡200の接眼レンズ部2で観察された視野の概念図である。以下、第一双眼鏡100と異なる部分だけを説明し、同じ部分はその説明を省略する。
【0059】
第一双眼鏡100は二つの対物レンズ部3の間で測距部4が設けられているが、第二双眼鏡200には第一双眼鏡100のような測距部4が設けられていない。また、以下に説明するように、第二双眼鏡200はオートフォカス光学系を使用したので、焦点調節部7は省略される。
【0060】
図6(a)に示されるように、第二双眼鏡200の鏡筒1の一方の光路内において、第一フォーカスエリア30aを検出する第一焦点検出系10aと、第二フォーカスエリア30bを検出する第二焦点検出系10bと、第三フォーカスエリア30cを検出する第三焦点検出系10cとが設けられている。
【0061】
第二双眼鏡200の鏡筒1の他の一つの光路内においてフォーカスエリア30aと、フォーカスエリア30bとフォーカスエリア30cを表示するためのガラス板30が設けられている。従って、図6(b)に示されるように、第二双眼鏡200の接眼レンズ部2の視野範囲内にフォーカスエリア30a、フォーカスエリア30b、及びフォーカスエリア30cが観察される。ガラス板30に設けられたフォーカスエリア30a〜フォーカスエリア30cは、そのいずれかが使用者に選択されるとエリアの外枠が光ることが好ましい。なお、ガラス板30は左右両方の光路内に設けられていても良い。さらに鏡筒1の光路内には焦点レンズ16が設けられている。
【0062】
第二双眼鏡200の制御部18は、第一焦点検出系10aと第二焦点検出系10bと第三焦点検出系10cとガラス板30とに電気的に接続されている。また、制御部18はアームモータ61とマイク回転部51とに電気的に接続されている。制御部18は、第一焦点検出系10a、第二焦点検出系10b及び第三焦点検出系10cのいずれか一つから測定された第二双眼鏡200から観察対象物80までの距離に基づいて、一対のアームモータ61とマイク回転部51とを制御する。
【0063】
以下、第二双眼鏡200の動作について説明する。例えば、使用者が第二双眼鏡200を使用して、野鳥BR1を観察する場合を一例として説明する。このとき、たとえば、野鳥BR1が第二双眼鏡200から一番近く、次に野鳥BR2が近く、樹木TRは第二双眼鏡200から一番遠い位置にあると仮定する。使用者が第二双眼鏡200で野鳥BR1を観察すると、対物レンズ31により野鳥BR1と樹木TRと野鳥BR2とが観察される。なお焦点レンズ16で焦点が調整される前は野鳥BR1、樹木TR及び野鳥BR2に対して焦点があっていない場合もある。
【0064】
図6(b)に示されるように、フォーカスエリア30aに野鳥BR1が観察され、フォーカスエリア30bに樹木TRが観察され、フォーカスエリア30cに野鳥BR2が観察される。第一焦点検出系10aは野鳥BR1の焦点距離、すなわち第二双眼鏡200から野鳥BR1までの距離を検出する。同様に、第二焦点検出系10bは第二双眼鏡200から樹木TRまでの距離を検出し、第三焦点検出系10cは第二双眼鏡200から野鳥BR2までの距離を検出する。
【0065】
使用者は接眼レンズ部2の視野範囲内で、例えば不図示の選択ボタン等を利用して観察しようとするフォーカスエリアを選択する。例えば野鳥BR1を観察したい場合にはフォーカスエリア30aを選択する。すると、フォーカスエリア30aが選択されたことを使用者に認識させるためエリア枠が光る。そして制御部18は使用者の選択結果に応じて、野鳥BR1と対応する第一焦点検出系10aが検出した焦点距離に合わせるように焦点レンズ16を動かす。
【0066】
また、選択された第一焦点検出系10aの焦点距離に基づいて、制御部18は、アーム6の移動距離Lと指向性マイク5の回転角度との対応関係が記憶されているデータベースから、アームモータ61を放射方向に伸縮させたり指向性マイク回転部51を回転させたりする。詳細は図4又は図5で説明した第一双眼鏡100と同様の動作である。
【0067】
第一双眼鏡100と同じように、野鳥BR1の音情報を集音する経路において障害物があって、野鳥BR1の音情報が良く聞こえない場合、指向性マイク5が第二双眼鏡200の中心軸AAを中心に回転するように使用者によりアーム回転手段14を操作して、障害物の障害を避けることができる。この動作も第一双眼鏡100と同じであるので、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0068】
1 … 鏡筒
2 … 接眼レンズ部
3 … 対物レンズ部
4 … 測距部
5 … 指向性マイク
7 … 焦点調節部
8 … 電源スイッチ
16 … 焦点レンズ
17 … スピーカ
18 … 制御部
19 … マイクアンプ
11 … 直角プリズム
21 … 接眼レンズ
22 … 左右視度調節部
31 … 対物レンズ
32 … ズーム調節部
51 … マイク回転部
6 … アーム
61 … アームモータ
80 … 観察対象物
TR … 樹木
BR1 … 野鳥、BR2 … 野鳥
100 … 第一双眼鏡
200 … 第二双眼鏡


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を観察する双眼鏡であって、
前記対象物までの距離を測定する測距部と、
前記対象物からの発生音を集音する指向性を有する少なくとも一対の指向性マイクと、
前記双眼鏡から伸縮可能に設けられて、前記指向性マイクが取り付けられている一対のアームと、
前記測距部からの距離に応じて、前記指向性マイクの向きを前記対象物に合うように回転させるマイク回転部と、
を備えたことを特徴とする双眼鏡。
【請求項2】
前記測距部からの距離に応じて、前記アームが伸縮することを特徴とする請求項1に記載の双眼鏡。
【請求項3】
前記双眼鏡は、前記双眼鏡の中心軸に対して交差する平面において、前記測距部からの距離に応じて前記アームを回転するアーム回転部を備え、
前記アームの回転に従って、前記指向性マイクが前記双眼鏡の中心軸に対して交差する平面において回転することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の双眼鏡。
【請求項4】
前記測距部からの距離に応じて、前記指向性マイクの感度を変えるアンプ部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の双眼鏡。
【請求項5】
前記測距部は、複数のフォーカスエリアを備えた多点測距タイプの焦点検出器と前記複数のフォーカスエリアのうちから1つのフォーカスエリアを選択する選択手段とを有し、
前記マイク回転部は、前記選択手段で選択されたフォーカスエリアの距離に応じて、前記指向性マイクの向きを回転させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の双眼鏡。
【請求項6】
前記測距部は、超音波を前記対象物に照射して距離を測定する超音波測距手段又はレーザ光を前記対象物に照射して距離を測定するレーザ測距手段からなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の双眼鏡。
【請求項7】
前記測距部は、ミリ波レーダであることを特徴とする請求項6に記載の双眼鏡。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−169741(P2010−169741A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9885(P2009−9885)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】