説明

反射ミラー駆動機構

【課題】従来の反射ミラー駆動機構は、コイル磁石から発生される磁力の向き及び大きさを制御して反射ミラーの角度を決定してレーザ光線を走査させるので、より確実に反射ミラーを回転揺動させるためにヒンジの反発力よりも大きな駆動力が必要となり、消費電力が大きくなっている。
【解決手段】本発明による反射ミラー駆動機構では、反射ミラー30は、フレクチャヒンジ体20を介して枠体10に取付けられている。フレクチャヒンジ体20には、トルカ40と角度検出器50とが設けられており、駆動制御部60は、角度検出器50からの角度信号50aに基づいてとるか40への入力電流609aを制御して、反射ミラー30を共振周波数fで回転揺動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射ミラー駆動機構に関し、特に、フレクチャヒンジ体を介して枠体に取付けられた反射ミラーを共振周波数fで回転揺動させるようにすることで、反射ミラーを回転揺動させるために必要とされる駆動力を小さくでき、消費電力を低減できるようにするための新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の反射ミラー駆動機構としては、例えば下記の特許文献1等に記載されたものがある。すなわち、従来の反射ミラー駆動機構では、永久磁石の前面に取付けられた反射ミラーは、ヒンジによって連結された複数の枠から構成されたジンバルによって支持されている。そして、ジンバルの外方には複数のコイル磁石が配置されており、コイル磁石から発生される磁力の向き及び大きさを制御することにより、反射ミラーの角度が決定される。そして、反射ミラーが回転揺動するようにコイル磁石の励磁を制御することにより、反射ミラーに照射されたレーザ光線が走査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−146447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の反射ミラー駆動機構では、ヒンジの反発力よりも大きな駆動力を用いて強制的に反射ミラーを回転揺動させているので、消費電力が大きくなっている。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、反射ミラーを回転揺動させるために必要とされる駆動力を小さくでき、消費電力を低減できる反射ミラー駆動機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る反射ミラー駆動機構は、枠体に取付けられたフレクチャヒンジ体と、前記フレクチャヒンジ体を介して前記枠体に取付けられ、前記フレクチャヒンジ体がねじり変形されることで回転揺動される反射ミラーと、前記フレクチャヒンジ体に設けられた永久磁石部と、前記枠体に設けられるとともに、前記永久磁石部とともにトルカを構成する励磁コイル部と、前記フレクチャヒンジ体に設けられた鉄心部と、前記枠体に設けられるとともに、前記鉄心部とともに角度検出器を構成する角度検出用コイル部と、前記励磁コイル部及び前記角度検出用コイル部に接続され、前記角度検出用コイル部からの角度信号に基づいて前記励磁コイル部への入力電流を制御することにより前記反射ミラーの回転揺動を制御する駆動制御部とを備え、前記駆動制御部は、前記フレクチャヒンジ体のバネ定数をKとし、前記フレクチャヒンジ体、前記永久磁石部、前記鉄心部、及び前記反射ミラーの全体としての慣性モーメントをIとした場合に、
【数1】

で表される共振周波数fで前記反射ミラーを回転揺動させることを特徴とする反射ミラー駆動機構。
【0007】
また、前記駆動制御部は、前記反射ミラーの回転角度を示し反射ミラーの回転揺動の周波数で値が変動する信号を入力として、前記共振周波数fでレベルが変動するパルス信号を出力する位相同期回路を含み、前記パルス信号を用いて前記励磁コイル部への入力電流を生成することにより、前記共振周波数fで前記反射ミラーを回転揺動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の反射ミラー駆動機構によれば、フレクチャヒンジ体を介して枠体に取付けられた反射ミラーを共振周波数fで回転揺動させるので、反射ミラーの回転揺動にフレクチャヒンジ体の反発力を利用できる。これにより、反射ミラーを回転揺動させるために必要とされる駆動力を小さくでき、消費電力を低減できる。
また、駆動制御部は、位相同期回路が出力するパルス信号を用いて励磁コイル部への入力電流を生成することにより、共振周波数fで反射ミラーを回転揺動させるので、より確実に共振周波数fで反射ミラーを回転揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による反射ミラー駆動機構を一部断面で示す平面図である。
【図2】図1の反射ミラー駆動機構を一部断面で示す側面図である。
【図3】図2の反射ミラー駆動機構を示す斜視図である。
【図4】図1の駆動制御部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による反射ミラー駆動機構を一部断面で示す平面図であり、図2は、図1の反射ミラー駆動機構を一部断面で示す側面図であり、図3は、図2の反射ミラー駆動機構を示す斜視図である。なお、図1及び図2では、断面で示す部分にハッチングを施している。図1において、反射ミラー駆動機構には、枠体10、フレクチャヒンジ体20、反射ミラー30、トルカ40、角度検出器50、及び駆動制御部60が設けられている。
【0011】
枠体10には、四角形の枠である枠本体11と、略コ字状の枠である第1及び第2側部枠体12,13とが設けられている。枠本体11の両側の側部には貫通孔11aが設けられている。第1及び第2側部枠体12,13は、枠本体11の両側に固定されており、貫通孔11aに対向する側板12a,13aを有している。
【0012】
フレクチャヒンジ体20には、断面十字状の第1及び第2ヒンジ21,22が設けられている。第1ヒンジ21の一端21aは第1側部枠体12の側板12aに固定されており、第1ヒンジ21の他端21bは貫通孔11aを通って枠本体11の内側に進入されている。同様に、第2ヒンジ22の一端22aは第2側部枠体13の側板13aに固定されており、第2ヒンジ22の他端22bは貫通孔11aを通って枠本体11の内側に進入されている。これら第1及び第2ヒンジ21,22は、同一直線上に延在されている。また、第1及び第2ヒンジ21,22は、可撓性を有する材料によって構成されており、ねじり変形可能とされている。
【0013】
反射ミラー30は、有底円筒形状の支持枠31と、この支持枠31に支持された円板状のミラー本体32とから構成されている。これら支持枠31及びミラー本体32は、枠本体11の内側に配置されている。第1及び第2ヒンジ21,22の他端21b,22bは、反射ミラー30の側部にそれぞれ固定されている。すなわち、反射ミラー30は、第1及び第2ヒンジ21,22を介して枠体10に取付けられており、第1及び第2ヒンジ21,22がねじり変形されることで、第1及び第2ヒンジ21,22の延在方向(回転軸23)を軸として回転揺動される。すなわち、フレクチャヒンジ体20は、反射ミラー30を支持するためのジンバルである。反射ミラー30は、図示しないレーザ照射器からのレーザ光線を反射するためのものである。反射ミラー30で反射されたレーザ光線は、反射ミラー30の回転揺動により走査される。
【0014】
トルカ40には、永久磁石部41と励磁コイル部42とが設けられている。永久磁石部41には、磁石保持体41aと4個の永久磁石41bとが含まれている。磁石保持体41aは、第1ヒンジ21の他端21bに固定された部材であり、長手状の永久磁石41bを保持するためのものである。永久磁石41bは、図1に示すように、回転軸23を中心に枠体10の奥行方向10aに沿って前後に離間された二組に分けられている。前後に離間された各組の永久磁石41bは、回転軸23を中心とした外方に互いに同じ磁極が現れる向きで配置されている。また、各組の永久磁石41bは、図2に示すように、枠体10の高さ方向10bに沿って上下に配置されている。上下に離間された永久磁石41bは、外方に互いに異なる磁極が現れる向きで配置されている。
【0015】
図1及び図3に示すように、励磁コイル部42には、一対の励磁用鉄心42aと一対の励磁コイル42bとが含まれている。励磁用鉄心42aは、前後に離間された各組の永久磁石41bの外方にそれぞれ配置されており、両端が枠本体11に固定されたコ字状に形成されている。励磁コイル42bは、各励磁用鉄心42aに巻回されている。励磁コイル42bに電流が流されると磁界が生じ、永久磁石41bに回転モーメントが付加される。すなわち、トルカ40は、第1及び第2ヒンジ21,22と反射ミラー30とに回転モーメントを与えるものであり、反射ミラー30を回転揺動させるための駆動力を発生するものである。
【0016】
角度検出器50は、周知のレゾルバと同等の構成を有しており、反射ミラー30の回転角度を検出するためのものである。具体的には、角度検出器50には、鉄心部51と角度検出用コイル部52とが設けられている。鉄心部51には、鉄心保持体51aと4個の鉄心51bとが含まれている。鉄心保持体51aは、第2ヒンジ22の他端22bに固定された部材であり、長方形の鉄心51bを保持するためのものである。鉄心51bは、永久磁石41bと同様に、前後二組に分けられるとともに(図1参照)、上下2段に配置されている(図3参照)。図1及び図3に示すように、角度検出用コイル部52には、一対の角度検出用鉄心52aと一対の角度検出用コイル52bとが含まれている。励磁用鉄心42aは、鉄心51bの端面に対向する端部を有するようにL字状に形成されている。角度検出用コイル52bは、角度検出用コイル52bの端部に巻回されており、鉄心51bの変位、すなわち反射ミラー30の回転角度に応じた信号を出力する。
【0017】
駆動制御部60は、トルカ40の励磁コイル42bと角度検出器50の角度検出用コイル52bとに接続されている。この駆動制御部60は、角度検出用コイル52bからの信号に基づいて励磁コイル42bへの入力電流を制御することにより、反射ミラー30の回転揺動を制御する。具体的には、駆動制御部60は、フレクチャヒンジ体20のバネ定数をK[Nm/rad]とし、フレクチャヒンジ体20、永久磁石部41、鉄心部51、及び反射ミラー30の全体としての慣性モーメントをI[kg・m]とした場合に、以下の式で表すことができる共振周波数f[Hz]で反射ミラー30を回転揺動させる。これにより、反射ミラー30を回転揺動させるために必要とされる駆動力を小さくでき、消費電力を低減できる。
【0018】
【数2】

【0019】
次に、駆動制御部60の具体的構成について説明する。
図4は、図1の駆動制御部60を示すブロック図である。図において、駆動制御部60には、発振回路600、第1オペアンプ601、デモジュレータ602、絶対値化回路603、振幅指令部604、減算器605、第2オペアンプ606、位相同期回路607(PLL607)、第1乗算器608、及びトルカアンプ609が含まれている。
【0020】
発振回路600は、高周波信号であるリファレンス信号600aを出力するものである。第1オペアンプ601は、発振回路600からリファレンス信号600aを増幅するとともに、増幅したリファレンス信号601aを角度検出器50とデモジュレータ602とに入力する。角度検出器50は、リファレンス信号601aを搬送波とするAC角度信号50aを出力する。デモジュレータ602は、リファレンス信号601aを用いてAC角度信号50aの同期整流を行い、DC角度信号602aを生成する。このDC角度信号602aは、反射ミラー30の回転角度を示す電圧信号であり、反射ミラー30の回転揺動の周波数で値が変動する。デモジュレータ602は、DC角度信号602aを絶対値化回路603と位相同期回路607とに入力する。
【0021】
絶対値化回路603は、DC角度信号602aの絶対値化を行い、その時点の反射ミラー30の回転角度の絶対値(反射ミラー30の回転量)を求める。振幅指令部604は、反射ミラー30の回転揺動の振幅の大きさを指定する振幅指令値604aを出力する。減算器605は、絶対値化回路603の出力603aと振幅指令値604aとの差を求め、反射ミラー30の駆動量を示す入力電流振幅指令値605aを生成する。第2オペアンプ606は、減算器605からの入力電流振幅指令値605aを増幅する。
【0022】
位相同期回路607には、第2乗算器610、積算器611、及び電圧制御発振器612(VCO612)が含まれている。第2乗算器610は、デモジュレータ602からのDC角度信号602aと電圧制御発振器612からのパルス信号612aとの乗算を行う。積算器611は第2乗算器610の出力610aを積算し、電圧制御発振器612は積算器611の出力611aの大きさに応じた周波数のパルス信号612aを出力する。パルス信号612aは、前記周波数でレベルが1と−1とで変化する信号である。すなわち、位相同期回路607は、パルス信号612aの周波数を一定値すなわち共振周波数fに安定させるように動作する。
【0023】
第1乗算器608は、第2オペアンプ606の出力606aと電圧制御発振器612からのパルス信号612aとを乗算する。すなわち、第1乗算器608の出力608aは、反射ミラー30の駆動量を示す振幅と共振周波数fとを有する信号となる。トルカアンプ609は、第1乗算器608の出力608aを増幅して入力電流609aを生成し、この入力電流609aをトルカ40に入力する。これにより、反射ミラー30が、振幅指令値604aによって指定される振幅でかつ共振周波数fで回転揺動される。
【符号の説明】
【0024】
10 枠体
20 フレクチャヒンジ体
30 反射ミラー
40 トルカ
41 永久磁石部
42 励磁コイル部
50 角度検出器
50a 角度信号
51 鉄心部
52 角度検出用コイル部
60 駆動制御部
607 位相同期回路
609a 入力電流
612a パルス信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体(10)に取付けられたフレクチャヒンジ体(20)と、
前記フレクチャヒンジ体(20)を介して前記枠体(10)に取付けられ、前記フレクチャヒンジ体(20)がねじり変形されることで回転揺動される反射ミラー(30)と、
前記フレクチャヒンジ体(20)に設けられた永久磁石部(41)と、
前記枠体(10)に設けられるとともに、前記永久磁石部(41)とともにトルカ(40)を構成する励磁コイル部(42)と、
前記フレクチャヒンジ体(20)に設けられた鉄心部(51)と、
前記枠体(10)に設けられるとともに、前記鉄心部(51)とともに角度検出器(50)を構成する角度検出用コイル部(52)と、
前記励磁コイル部(42)及び前記角度検出用コイル部(52)に接続され、前記角度検出用コイル部(52)からの角度信号(50a)に基づいて前記励磁コイル部(42)への入力電流(609a)を制御することにより前記反射ミラー(30)の回転揺動を制御する駆動制御部(60)と
を備え、
前記駆動制御部(60)は、前記フレクチャヒンジ体(20)のバネ定数をKとし、前記フレクチャヒンジ体(20)、前記永久磁石部(41)、前記鉄心部(51)、及び前記反射ミラー(30)の全体としての慣性モーメントをIとした場合に、
【数1】

で表される共振周波数fで前記反射ミラー(30)を回転揺動させることを特徴とする反射ミラー駆動機構。
【請求項2】
前記駆動制御部(60)は、
前記反射ミラー(30)の回転角度を示し反射ミラー(30)の回転揺動の周波数で値が変動する信号(602a)を入力として、前記共振周波数fでレベルが変動するパルス信号(612a)を出力する位相同期回路(607)を含み、
前記パルス信号(612a)を用いて前記励磁コイル部(42)への入力電流(609a)を生成することにより、前記共振周波数fで前記反射ミラー(30)を回転揺動させることを特徴とする請求項1記載の反射ミラー駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−243746(P2010−243746A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91754(P2009−91754)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】