説明

反射光学素子を有するマイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用する光学配置構成

マイクロリソグラフィ用の投影露光ツール(100)で使用するための配置構成は、反射光学素子(10;110)と放射検出器(30;32;130)を備える。反射光学素子(10;110)は、光学素子(10;110)の機械的強度を保証するキャリア要素(12)と、キャリア要素(12)上に配設された、使用放射(20a)を反射するための反射コーティング(18)とを備える。キャリア要素(12)は、使用放射(20a)と相互作用して二次放射(24)を放出する材料からなり、二次放射(24)の波長は、使用放射(20a)の波長とは異なり、放射検出器(30;32;130)は、二次放射(24)を検出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月29日出願のドイツ特許出願第10 2010 006 326.6号(特許文献1)および2010年1月29日出願の米国仮特許出願第61/282367号(特許文献2)の優先権を主張するものである。上記のドイツ特許出願および上記の米国仮特許出願の開示全体は本出願の内容である。
【0002】
本発明は、反射光学素子を備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用する光学配置構成と、このタイプの配置構成を備える光学系モジュールと、このタイプの配置構成を備える投影露光ツールと、投影露光ツールの反射光学素子での強度を測定する方法と、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールの光学素子での温度を測定する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
フォトリソグラフィ法を使用して微細構造構成要素を作製するために、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールが使用される。ここで、構造担持マスク(いわゆるレチクル)が照明システムによって照明され、投影光学系によって感光層上に結像される。照明システムは、適切な波長を有する放射を利用可能にする光源と、様々な構成要素を備える照明光学系とを備え、それらの様々な構成要素は、構造担持マスクの位置で所定の角度分布を有する均一な照明を利用可能にする働きをする。このようにして照明された構造担持マスクは、投影光学系によって感光層上に結像される。
【0004】
ここで、このタイプの投影光学系によって結像することができる最小構造幅は、とりわけ、使用される結像放射の波長によって決定される。結像放射の波長が小さければ小さいほど、投影光学系によって結像することができる構造も小さくなる。今日、193nmの波長を有する結像放射または極紫外範囲(EUV)での波長を有する結像放射が使用されている。193nmの波長を有する結像光を使用するとき、屈折光学素子と反射光学素子の両方が投影露光ツール内で使用される。対照的に、EUV波長範囲内での結像光を使用するときには、反射光学素子(ミラー)のみが使用される。マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールを用いて、操作全体を通じて感光層上で照射条件が変わらないようにする必要がある。このようにすることでのみ、均一な品質の微細構造構成要素を作製することができる。したがって、構造担持マスク上での照射条件も、できる限りばらつきのないものにしなければならない。
【0005】
しかし、動作中、様々な影響が、構造担持マスクおよび感光層上での照射条件を変えることがある。そのような影響は、例えば反射光学素子の加熱であることがあり、その際、反射光学素子はそれらの位置または形状をわずかに変える。さらに、連続動作中に放射源が変化することがあり、すなわち光源の位置がわずかにずれることがある。さらに、例えば、汚染物質によって、個々のミラーまたはすべてのミラーの反射率が変わることもある。これらの影響はすべて、構造担持マスクおよび感光層上での照射条件の変化をもたらす。そのため、動作中に照射条件を常に監視する必要がある。ここで、監視用に提供される測定デバイスは、監視のために投影露光ツールの動作を停止させる必要なく監視を行うことができるように設計すべきである。
【0006】
米国特許出願第2008/0151221A1号(特許文献3)では、この目的で反射光学素子が提案されており、この反射光学素子によって、これらの点に当たる放射を測定デバイスに案内するために反射コーティングが部分的に中断される。しかし、この欠点は、このとき反射光学素子が反射性のない領域を有することである。さらに、反射されない、したがって構造担持マスクおよび感光層上での照射条件に寄与しない放射の部分しか監視されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許出願第10 2010 006 326.6号
【特許文献2】米国仮特許出願第61/282367号
【特許文献3】米国特許出願第2008/0151221A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した問題を解決する、特に構造担持マスクおよび感光層上での照射条件の経時変化を最小限にすることができる、反射光学素子を備える配置構成、およびマイクロリソグラフィ用の投影露光ツールの反射光学素子における強度または温度を測定するための方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、光学素子の反射コーティングの穴を必要とせずに、入射放射の監視を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上述した目的は、反射光学素子と放射検出器とを備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用するための配置構成によって実現することができる。ここで、反射光学素子は、光学素子の機械的強度を保証するキャリア要素と、キャリア要素上に配設された、使用放射を反射するための反射コーティングとを有する。キャリア要素は、使用放射(上記反射光学素子に照射される放射)と相互作用するときに二次放射を放出する材料からなり、二次放射の波長は、使用放射の波長とは異なる。放射検出器は、二次放射を検出するように構成される。
【0010】
すなわち、本発明によれば、ミラー基板と呼ぶこともできる反射光学素子のキャリア要素は、使用放射を照射したときに二次放射を放出する材料からなる。このタイプの材料は、例えば蛍光材料でよい。燐光またはシンチレーション放射を放出する材料も想定可能である。二次放射を放出する効果は、ルミネセンスとも呼ばれる。さらに、本発明によれば、二次放射を検出するための放射検出器は、キャリア要素から出た二次放射を検出するように提供されて配置される。したがって、例えば、反射コーティングの領域の一部を取り除く必要なく、反射光学素子の反射コーティングに当たる使用放射の強度を監視することができる。使用放射の強度を監視することによって、それに従って、構造担持マスクおよび感光層上での照射条件に影響を及ぼすことがあり得る反射コーティングの照射条件の経時変化を補正することができる。
【0011】
本発明によれば、キャリア要素は、光学素子の機械的強度を保証するように設計される。すなわち、キャリア要素は、光学素子の強度を保証することができる。これとは別に、さらなる層を配置することもでき、それらの層も任意でこのタイプの機械的強度を有するが、キャリア要素があるので、光学素子の機械的強度を実質的には高めるものではない。
【0012】
既に上述したように、キャリア要素はミラー基板とも呼ぶことができる。本明細書におけるミラー基板は狭義のものであり、すなわち、ミラー基板は、光学素子の機械的強度を保証する材料のみからなり、必要な場合にしばしばこのタイプの基板の範疇に含まれるような任意のさらなる層を備えないものである。
【0013】
反射コーティングは、キャリア要素上に配設される。これは、必ずしも、反射コーティングがキャリア要素に直接塗布されていることは意味しない。実際、追加の層をキャリア要素と反射コーティングの間に配設することもできる。しかし、当然、反射コーティングは、キャリア要素に直接塗布することもできる。反射コーティングは、使用放射、例えば投影露光ツールの露光放射を全反射しない。実際、使用放射の第1の部分は、反射コーティングで反射され、第2の部分は、反射コーティングを通過し、キャリア要素に進入し、そこで二次放射を生成する。
【0014】
本発明によれば、キャリア要素は、使用放射と相互作用するときに二次放射を放出する材料からなる。一実施形態によれば、キャリア要素の体積の大部分がその材料からなり、特に体積でキャリア要素の60%超、特に90%超がその材料からなる。さらなる一実施形態によれば、キャリア要素は、二次放射を放出する材料から完全に作製される。すなわち、この場合、キャリア要素は、二次放射を放出する材料から完全に形成され、すなわちその全体積にわたってそのような材料からなる。
【0015】
上述したように、二次放射の波長は、使用放射の波長とは異なり、特に、二次放射の平均波長は、使用波長の平均波長から少なくとも10%シフトされる。一実施形態によれば、シフトは少なくとも100%であり、特に、二次放射の平均波長は、使用放射の平均波長の10倍よりも大きい。
【0016】
放射検出器は、基板、特に基板の裏面に直接適用することができ、あるいはまた基板から離隔させて配置することもできる。いずれにせよ、放射検出器は、キャリア要素から出た二次放射を検出することができるように配置される。放射検出器の実施形態は、測定ダイオード、MOSダイオード、ショットキーダイオード、PINフォトダイオード、フォトトランジスタ、マルチチャネルプレート、およびCCDカメラを含む。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、反射コーティングは、キャリア要素の前面に配設され、放射検出器は、キャリア要素の裏面に面して配設される。
【0018】
本発明によるさらなる一実施形態では、二次放射を放出する材料は、5℃〜35℃の温度範囲にわたって−200ppb/℃〜+200ppb/℃の範囲内の熱膨張係数を有する低膨張材料を含む。一変形形態によれば、材料は、完全に低膨張材料からなる。特に、二次放射を放出する材料は、ケイ酸塩ガラスおよび/またはガラスセラミックを含む。本発明による一実施形態では、二次放射を放出する材料は、5℃〜35度の温度範囲内で最大+/−50×10-9-1(すなわち−50〜+50ppb/℃)、特に最大+/−30×10-9-1、または最大+/−10×10-9-1の平均長手方向熱膨張係数を有する。本発明による一実施形態によれば、以下でより詳細に説明するように、二次放射を放出する材料は、ULE(登録商標)ガラスまたはZerodur(登録商標)ガラスセラミックからなる。本出願に含まれる低膨張材料の他の実施形態もここで適用することができる。
【0019】
本発明によるさらなる一実施形態では、二次放射を放出する材料は蛍光材料であり、好ましくは、蛍光放射が可視波長範囲内で生じる材料である。好ましくは、二次放射を放出する材料は、蛍光放射の波長範囲内で透明である。
【0020】
本発明によるさらなる一実施形態では、キャリア要素の材料は、SiO2マトリックスを含み、SiO2マトリックスは、使用放射と相互作用するときに特に蛍光放射の形での二次放射の放出をもたらす固有欠陥を含む。固有欠陥は、SiO2構造からの逸脱を意味する。これらの欠陥のいくつか、例えば酸素欠損、または自由原子価を有する酸素原子は、特徴的な蛍光を示すことがある。
【0021】
本発明によるさらなる一実施形態では、本発明による配置構成は、さらに、評価デバイスを備え、評価デバイスは、放射検出器によって検出された放射の強度から、反射光学素子に照射された放射の強度を求めるように構成される。本発明では、前述したように、反射光学素子に照射される放射を使用放射と呼んでいる。放射検出器によって検出される放射は、二次放射、またはキャリア要素から出た放射と呼ぶ。強度を求める目的で、評価デバイスは、好ましくはシミュレーションデータを使用し、これらのデータは、使用放射のどれほどの部分が反射コーティングを透過するかを特定する。
【0022】
本発明によるさらなる一実施形態では、放射検出器は、可視波長範囲内の光を検出するように構成される。好ましくは、放射検出器は、特に約350nm〜400nmの波長範囲内での青色光を検出するように構成される。
【0023】
本発明によるさらなる一実施形態では、反射コーティングは、極紫外波長範囲(EUV波長範囲)内の放射、特に100nm未満の波長を有する放射、好ましくは5nm〜15nmの波長範囲内の放射を反射するように構成される。ここで、反射コーティングは、好ましくは複数の独立した層、例えば異なる材料からなる二重層を50層有する。
【0024】
本発明によるさらなる一実施形態では、放射検出器は、例えばCCDカメラの形態での空間分解放射検出器である。この空間分解放射検出器を用いて、光学素子に照射された使用放射の強度分布を求めることができる。
【0025】
本発明によるさらなる一実施形態では、放射検出器は、キャリア要素の裏面に取り付けられる。これは間接的にでも直接的にでもよく、すなわち放射検出器は、キャリア要素の裏面に直接位置するように配設することも、またはさらなる層によってキャリア要素から分離することもできる。
【0026】
さらに、本発明によれば、反射光学素子と放射検出器とを備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用するための配置構成が提供される。ここで、反射光学素子は、キャリア要素を備える。キャリア要素は、光学素子の機械的強度を保証し、5℃〜35℃の温度範囲にわたって−200ppb/℃〜+200ppb/℃の範囲内の熱膨張係数を有する低膨張材料を含む。放射検出器は、キャリア要素から出た放射を検出するように構成される。言い換えると、熱膨張係数(「CTE」と呼ばれることもよくある)は、−200×10-9-1〜+200×10-9-1の範囲内にある。低膨張材料のCTEは、5℃〜35℃の温度範囲にわたって、一実施形態によれば−30ppb/℃〜+30ppb/℃(0±30ppb/℃)の範囲内にあり、さらなる一実施形態によれば−10ppb/℃〜+10ppb/℃(0±10ppb/℃)の範囲内にある。上記の仕様を有する低膨張材料の例は、ケイ酸塩ガラス、例えばULE(登録商標)ガラス、およびガラスセラミック、例えばZerodur(登録商標)ガラスセラミックである。
【0027】
本発明に従ってキャリア要素に低膨張材料を使用することにより、光学素子への使用放射の照射によって二次放射を生成することができ、この二次放射をさらに放射検出器によって検出することができる。放射検出器によってそのようにして生成された信号を評価することによって、例えば、照射された使用放射の強度を求めることができる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、反射光学素子は、反射コーティングを備え、反射コーティングは、キャリア要素の前面に配設され、放射検出器は、キャリア要素の裏面に面して配設される。
【0029】
本発明のさらなる一実施形態によれば、低膨張材料、特にケイ酸塩ガラスは、SiO2マトリックスを含み、SiO2マトリックスは、照射された使用放射と相互作用するときに蛍光放射を放出する固有欠陥を含む。既に上述したように、固有欠陥は、SiO2構造からの逸脱を意味する。
【0030】
本発明による一実施形態では、低膨張材料は、ケイ酸塩ガラス、特にチタンケイ酸塩ガラスを含み、特に、低膨張材料は、完全にチタンケイ酸塩ガラスからなる。さらなる一実施形態によれば、キャリア要素は、ガラスセラミックを含む。
【0031】
本発明のさらなる一実施形態によれば、ガラスセラミックは、5℃〜35℃の温度範囲内で、+/−50×10-9-1、特に最大+/−30×10-9-1、または最大+/−10×10-9-1の平均線形熱膨張係数を有する。
【0032】
本発明によるさらなる一実施形態では、低膨張材料は、ULE(登録商標)ガラスからなる。ULE(登録商標)ガラスは、「Ultra Low Expansion(超低膨張)」ガラスを意味し、Corning Code 2972によって識別される、Corning社の製品である。EUV放射を照射すると、ULE(登録商標)ガラスは、青色蛍光を生じる。あるいは、またはさらに、低膨張材料は、Zerodur(登録商標)ガラスセラミックからなっていてもよく、これはSchott社によって製造されている製品である。本出願で使用するときの用語「ULE(登録商標)ガラス」は、本出願が成された時点で製品名「ULE(登録商標)」としてCorning社が販売している対応する製品を表す。本出願で使用するときの用語「Zerdur(登録商標)ガラスセラミック」は、本出願が成された時点で製品名「Zerodur(登録商標)」としてSchott社が販売している対応する製品を表す。
【0033】
さらに、本発明によれば、反射光学素子と放射検出器とを備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用するための配置構成が提供される。この配置構成によれば、反射光学素子は、光学素子の機械的強度を保証するキャリア要素と、キャリア要素上に配設された、使用放射を反射するための反射コーティングとを備える。キャリア要素は、活性化放射と相互作用するときに、活性化放射を、活性化放射とは異なる二次放射に変換する材料を含み、その材料は、放射変換の効率に温度依存性があるように構成され、放射検出器は、二次放射を検出するように構成される。
【0034】
すなわち、キャリア要素は、活性化放射を照射するとルミネセンスを示す材料を含み、この活性化放射は、450nm未満の波長を有する光子、例えばArF放射やEUV放射、あるいは例えば数百eVのエネルギーを有する電子でよい。さらに、二次放射は、二光子吸収プロセスによる十分に高い強度のより長い波長の光子によって誘発することができる。
【0035】
活性化放射を二次放射に変換する効率(ルミネセンス効率とも呼ばれる)は、温度依存性がある。一実施形態によれば、放射変換効率の温度勾配は、少なくとも2%/℃、特に少なくとも3%/℃、特に少なくとも5%/℃である。
【0036】
上記の配置構成は、反射光学素子における温度分布を監視できるようにする。特に、温度分布の経時変化を検出することができる。この情報を使用して、温度分布を補正する処置を取ることができ、例えば局所加熱することができる。このようにして、反射光学素子の結像特性のずれを最小限にすることができる。
【0037】
一実施形態によれば、二次放射を放出する材料は、本出願で特定する低膨張材料、特にケイ酸塩ガラスを含む。一変形形態によれば、放射変換効率の温度依存性を高めるために低膨張材料にドープを施す。
【0038】
さらなる一実施形態によれば、配置構成は、さらに、検出された二次放射の強度から光学素子での温度を求めるように構成された評価ユニットを備える。このために、評価ユニットに、照射された活性化放射の強度を提供してもよい。
【0039】
さらなる一実施形態によれば、配置構成は、さらに、活性化放射のビームを生成するための活性化源を備え、活性化源は、光学素子全体にわたって活性化ビームを走査するように構成され、評価ユニットはさらに、検出された二次放射を活性化ビームのそれぞれの走査位置と相関させるように構成され、それにより光学素子での温度が空間分解されて求められる。
【0040】
さらなる一実施形態によれば、活性化放射は、使用放射を含み、二次放射は、活性化放射と波長が異なる。さらなる一実施形態によれば、活性化放射は、電子放射を含む。一変形形態によれば、電子放射は、数百eVのエネルギーでの走査電子ビームの形態で照射される。電子は、反射コーティングに対して光学素子の前面または裏面から照射することができる。電子が前面から照射される場合、放射源は、露光放射が遮られないように配置すべきである。
【0041】
本発明による配置構成の上述した実施形態に関して説明した特徴は、低膨張材料を有するキャリア要素を備える配置構成、および温度依存性の放射変換効率を有する材料を備える配置構成に、適用することができる。
【0042】
さらに、本発明によれば、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用するための光学系モジュールであって、上述した実施形態の任意のものに従った本発明による少なくとも1つの構成を備える光学系モジュールが提供される。本発明による光学系モジュールは、例えば、投影露光ツールの物体視野を照明するための照明光学系として構成することができ、または物体視野から結像領域に構造を結像するための投影光学系として構成することができる。
【0043】
本発明による一実施形態では、光学系は、放射検出器によって測定された強度に基づいて、投影露光ツールで使用される露光放射に影響を及ぼすように構成された補正ユニットを備える。ここで、補正ユニットは、好ましくは、エネルギー分布、角度分布、分極分布、位相分布、および波面収差といった露光放射の特性の少なくとも1つに影響を及ぼす。本発明による一変形形態によれば、光学系は、制御デバイスを備え、この制御デバイスは、放射検出器によって検出された強度から、補正ユニットを制御するための制御信号を生成する。
【0044】
照明光学系の場合、反射光学素子は、照明光学系の瞳孔面の近くに配設され、配置構成は評価デバイスを備え、評価デバイスは、反射光学素子に照射された露光放射の空間分解強度分布を求めるように構成され、補正ユニットによって上記の瞳孔面または異なる瞳孔面での強度分布を変えることができると有利である。さらなる一実施形態によれば、光学素子は、照明光学系の視野面の近くに配設され、補正ユニットによって、この視野面または異なる視野面での強度分布を変えることができる。
【0045】
さらに、本発明によれば、上述した実施形態の1つに従った本発明による少なくとも1つの配置構成を備えるマイクロリソグラフィ用の投影露光ツールが提供される。
【0046】
さらに、本発明によれば、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールの反射素子における強度を測定する方法が提供される。ここで、光学素子は、光学素子の機械的強度を保証するキャリア要素を備える。さらに、反射コーティングは、投影露光ツールの露光放射を反射するためにキャリア要素上に配設される。キャリア要素は、5℃〜35℃の温度範囲にわたって−200ppb/℃〜+200ppb/℃の範囲内の熱膨張係数を有する低膨張材料、例えばケイ酸塩ガラスを含む。本発明による方法により、投影露光ツールの動作中、露光放射の第1の部分は、反射コーティングで反射され、露光放射の第2の部分は、反射コーティングを通過し、低膨張材料内で、露光放射の波長とは異なる波長を有する二次放射を生成する。さらに、キャリア要素から出た二次放射の少なくとも一部の強度が測定される。
【0047】
本発明による反射光学素子と放射検出器の配置構成に関する上記の詳細はまた、本発明による方法にも同様に適用することができる。
【0048】
本発明による方法の一実施形態によれば、反射光学素子上に放射された露光放射の強度は、測定された二次放射の強度から求められる。別の実施形態によれば、反射コーティングを通過する露光放射の第2の部分の強度は、測定された二次放射の強度から求められる。
【0049】
本発明による一実施形態によれば、キャリア要素は、完全に単一の材料から作製される。特に、キャリア要素の前面に反射コーティングをさらに配設することができ、本発明によれば、キャリア要素の裏面から出た二次放射の強度が測定される。
【0050】
本発明による一実施形態では、キャリア要素から出た二次放射、特にキャリア要素の裏面から出た二次放射の少なくとも一部の強度は、空間分解されて測定され、この強度から、反射光学素子に照射された露光放射の空間分解強度分布が求められる。
【0051】
本発明によるさらなる一実施形態では、二次放射の強度は、放射検出器によって測定され、反射光学素子と放射検出器の配置構成は、上述した実施形態の任意のものに従って構成される。
【0052】
さらに、本発明によれば、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールの光学素子での温度を測定する方法が提供される。光学素子は、衝突する活性化放射を、活性化放射とは異なる二次放射に変換するように構成された材料を含む。この方法は、活性化放射を光学素子に照射するステップと、光学素子から出た二次放射の強度を測定するステップと、測定された強度から光学素子での温度を決定するステップとを含む。
【0053】
一実施形態によれば、光学素子は、ミラーの形態での反射光学素子である。この実施形態では、光学素子は、光学素子の機械的強度を保証するキャリア要素と、キャリア要素上に配設された、投影露光ツールの露光放射を反射するための反射コーティングとを備える。放射変換材料がキャリア要素内に含まれ、特に、キャリア要素は変換材料からなる。
【0054】
一実施形態によれば、活性化放射は、投影露光ツールの露光放射を含み、二次放射は、活性化放射と波長が異なる。別の実施形態によれば、活性化放射は電子放射を含み、二次放射は電磁放射である。
【0055】
別の実施形態によれば、光学素子から出た二次放射の強度は、空間分解されて測定され、この強度から、光学素子の空間分解温度分布が求められる。二次放射は、少なくとも1次元、特に2次元で局所分解されて測定される。
【0056】
さらなる一実施形態によれば、さらに、光学素子に照射される露光放射の強度は、光学素子での温度を求めるために使用される。一変形形態によれば、露光放射の強度分布が予め測定されるか、またはシミュレーションによって求められ、変換効率の既知の温度依存性から光学素子の温度分布を計算するために使用される。
【0057】
本発明による方法の上述した実施形態に関して特定した特徴は、本発明による配置構成に対応させて適用することもできる。逆に、本発明による配置構成の上述した実施形態に関して特定した特徴は、本発明による方法に対応させて適用することもできる。
【0058】
以下の本発明による例示的実施形態の詳細な説明において、添付の概略図面を参照しながら、本発明の上述のおよびさらなる有利な特徴を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】反射光学素子と放射検出器とを備える、本発明による配置構成の第1の例示的実施形態を示す図である。
【図2】さらなる一実施形態での放射検出器および評価デバイスを備える図1による反射光学素子を示す図である。
【図3】反射光学素子と放射検出器とを備える、本発明による配置構成のさらなる例示的実施形態を示す図である。
【図4】投影露光ツールの動作中に、光学素子に照射された強度を測定するため、または光学素子の温度分布を測定するために、本発明による光学素子と放射検出器の配置構成が使用される、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールを示す図である。
【図5】図4による投影露光ツールにおいて反射光学素子に当たる放射のスペクトル分布を示す図である。
【図6】図1〜図3による光学素子の基板のために使用される例示的な材料の温度依存性を示す図である。
【図7】図4による投影露光ツールにおいて、反射光学素子と、動作中に光学素子の温度分布を測定するように構成された放射検出器とを備える、本発明による配置構成のさらなる例示的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に述べる例示的実施形態では、互いに機能的または構造的に同様の要素には、可能な限り、同一または同様の参照番号を付してある。したがって、特定の例示的実施形態の個々の要素の特徴を理解するために、他の例示的実施形態の説明または本発明の全般的な説明を参照すべきである。
【0061】
図1は、反射光学素子10および放射検出器30の本発明による配置構成の一例示的実施形態を示す。反射光学素子10は、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用するために、凹面鏡の形態で設計される。このために、反射光学素子10は、ミラー表面の形状を有するキャリア要素12を備える。キャリア要素12は、光学素子10の機械的強度を保証し、それと同時に光学素子10の機能を保証する。キャリア要素12は、ミラー基板と呼ぶこともできる。キャリア要素12は、ミラー表面を画定する前面14と、それとは反対側の裏面16とを備える。
【0062】
入射使用放射20aを反射するための反射コーティングが前面14に塗布されている。この例示的実施形態では、反射コーティング18は、EUV投影露光ツールの露光放射の形で使用放射を反射するように構成される。したがって、反射コーティング18は、<100nmの波長、好ましくは5nm〜15nmの範囲内の波長を有する極紫外波長範囲(EUV波長範囲)内の放射を反射するように設計される。このために、反射コーティング18は、例えば、交互にシリコンとモリブデン、またはランタンとB4Cからなる二重層を50層備える多層配列の形態である。
【0063】
入射使用放射20aは、大部分は、反射コーティング18によって反射使用放射20bとして反射される。しかし、入射使用放射20aのわずかな部分が反射コーティング18を通過し、透過使用放射20cとしてキャリア要素12内に入る。図1では、透過使用放射20cは、例として、光学素子10の中央領域に引き込まれた入射使用放射20aのビームについてのみ示してある。
【0064】
実施形態に応じて、キャリア要素12と反射コーティング18の間にさらなる層を配設することができる。この例示的実施形態では、キャリア要素12は、ULE(登録商標)ガラスからなり、これは、Corning code 2972によって識別される、Corning社によって製造されている製品である。ULE(登録商標)ガラスは、チタンケイ酸塩ガラスからなり、5℃〜35℃の温度範囲にわたって、0±30×10-9-1(0±30ppm/℃)の非常に低い熱膨張係数(CTE)(線膨張係数とも呼ばれる)を有する。あるいは、キャリア要素12は、Zerodur(登録商標)から作製することができ、これは、Schott社によって製造されている製品である。Zerodur(登録商標)は、ガラスセラミックであり、0℃〜50℃の温度範囲にわたって、±0.005〜±0.1×10-6-1(0±5ppm/℃〜0±100ppm/℃)の範囲内のCTEを有する。透過使用放射20cは、キャリア要素12のULE(登録商標)ガラスに吸収され、キャリア要素12によって、約350〜400nmの間の青色波長スペクトルでの蛍光の形で二次放射24が生成される。ルミネセンスとも呼ばれるこの二次放射24は、キャリア要素の裏面16から出る。本発明によれば、放射検出器30が、キャリア要素12の裏面16に面するように配置される。一例示的実施形態によれば、放射検出器30は、キャリア要素12の裏面16に直接配設される。他の例示的実施形態では、裏面16と放射検出器30の間にさらなる層を配設することができる。さらに、放射検出器30は、キャリア要素12からある距離だけ離して配設し、検出器30が二次放射24を検出することができるように裏面16に単に位置合わせすることもできる。
【0065】
図1による配置構成での放射検出器30は、検出器表面に当たる二次放射24の全強度を測定するが、図2によれば、反射光学素子10は、空間分解放射検出器32を設けられる。したがって、図2による配置構成によって、反射コーティング18に達した使用放射20aの強度を、空間分解して2次元で求めることができる。
【0066】
検出された二次放射24の強度から入射使用放射20aの強度を求めるために、任意選択で放射検出器32に評価デバイス34を設けることができる。評価デバイス34は図2にしか示していないが、図面に示す他の配置構成でも使用することができる。評価デバイス34による評価は、シミュレーション結果に基づいており、シミュレーション結果から、入射使用放射20aに対する透過使用放射20cの割合が分かる。ここで、コーティング18の反射率と、反射コーティング18およびキャリア要素12の表面での使用放射20の吸収損失とが考慮に入れられる。
【0067】
図3は、反射光学素子110と反射検出器130とを備える、本発明による配置構成のさらなる例示的実施形態を示す。この配置構成は、図4を参照して説明するマイクロリソグラフィ用の投影露光ツール100で使用される。反射光学素子110は、要素110の光学表面が凸面である点のみが、図1および図2による素子10と異なる。放射検出器30と同様に、放射検出器130は、入射二次放射24の全強度を測定する検出器として設計される。
【0068】
既に上述したように、図4は、反射光学素子110が放射検出器130と共に使用されるマイクロリソグラフィ用の投影露光ツール100の構造の概要を示す。さらに、投影露光ツール100は、図7を参照して以下でより詳細に説明する放射検出器230と共に、追加の反射光学素子210を含むことができる。図4に示す構成要素は、光源135と、照明光学系137と、投影光学系139とを備える。ここで、光源135は、極紫外、すなわち100nm未満、好ましくは5nm〜15nmの範囲内の波長を有する露光放射120を生成する。次いで、この放射は照明光学系137に案内され、照明光学系137は放射を適切に準備して、物体視野141の位置にある構造担持マスクを照明するようにする。次いで、物体視野141は、投影光学系139によって、投影露光ツール100の像面143の感光層上に結像される。
【0069】
以下、光源135、照明光学系137、および投影光学系139の構成要素を詳細に説明する。この例では、光源135はキセノン光源である。ガス供給機構145およびガス抽出システム147によって、ガスターゲットが位置149に生成される。位置149でのキセノンガスが、電極放電によってプラズマ状態に変換される。このとき、プラズマは、図5に示す入力スペクトル151を有するEUV波長範囲内の放射を放出する。生成された放射は、楕円面鏡155によって収集され、次いで、スペクトルフィルタ153を通過する。その透過スペクトル157も図5に示してある。図4では、スペクトルフィルタ153は、光源135のすぐ後ろに配設されているものとして示してある。しかし、この配置構成は、スペクトルフィルタ153の位置決めに関する1つの可能性にすぎない。基本的には、スペクトルフィルタ153は、像面143の前のビーム光路のどこに位置決めしてもよい。図4に示すように、スペクトルフィルタ153は、透過フィルタの形態でよい。あるいは、例えば反射フィルタとしての設計も想定することができる。スペクトルフィルタ153から出た露光放射120は、参照番号158によって識別される強度分布を有し、約13.5nmで強度最大値を有する。
【0070】
露光放射120は、照明光学系137の第1のミラーに送られる。図示する実施形態では、第1のミラーは、図7にも示す反射光学素子210によって形成される。光路内の次の構成要素として、照明光学系137は、ハニカム集光器160を含み、ハニカム集光器160は、第1の傾斜ミラー161と第2の傾斜ミラー163を備える。光路内でハニカム集光器160の後ろに集光器169が配設される。この集光器169は、図3による反射光学素子110の形態での第1の集光器ミラーと、第2の集光器ミラー173とを備える。物体視野141は、投影光学系139によって像面143に投影される。像面143には感光層を設けることができる。投影光学系139は、光軸175を有し、ミラーM1、M2、M3、M4、M5、およびM6を備える。これらのミラーはすべて、光軸175に対して回転対称の領域からの一区域に従う表面形状を有する。そのため、最良の結像品質が実現される領域(物体視野141)もまた光軸175に対して回転対称である。
【0071】
投影露光ツール100の動作中、物体視野141の位置に構造担持マスクが配設される。このマスクは、光源135および照明光学系137によって照明され、次いで、投影光学系139によって、サイズを縮小されて像面143に結像される。このとき、像面143において、ウェハの形態での基板上に感光層が設けられている。露光によって感光層は化学的に変化され、それにより、リソグラフィ化学プロセスによってそこからマイクロエレクトロニクス部品を作製することができる。
【0072】
投影露光ツール100は、いわゆるステップアンドスキャンツール(簡単にスキャナとも呼ばれる)として動作されることが多い。ここでは、結像される構造担持マスクは、結像に適した物体視野よりも大きい。そのため、マスクは、静止した物体視野141にわたってY方向に移動される。同時に、感光層を備える基板は、像面内で、それに対応して低速でやはりY方向に移動される。したがって、構造担持マスクのあらゆる点が、照明された物体視野141にわたってY方向で移動し、それによりある量の光(いわゆる照射光量)で露光される。この量は、点の軌跡に沿った照射強度にわたる積分に対応する。リソグラフィプロセスでは、マスク上のあらゆる点ができる限り同じ照射光量で露光されると有利である。このために、補正ユニット177が物体視野141の近くに提供される。
【0073】
補正ユニット177は、例えば、物体視野141の照明を制限する複数のアパーチャを備えることができる。ここで、走査プロセス中、構造担持マスクの一点は、照明された物体視野141を通過する場合、所定時間後、このタイプのアパーチャが作る影に入る。したがって、積分された照射強度、すなわち照射光量は、対応するアパーチャがある位置に依存する。したがって、アパーチャの位置を変えることによって、物体視野141での照射光量を設定することができる。補正ユニット177は、X方向でオフセットされた複数のアパーチャを備える。したがって、照射光量は、物体視野141の様々なX方向位置に関して個別に設定することができる。投影露光ツール100の動作中、X方向で物体視野141にわたって一定の均一な照射光量を持続して保証しなければならない。しかし、動作中、投影露光ツール100のいくつかの特性が変わることがあるので、補正ユニット177を調節する必要がある。したがって、例えば、照明光学系137または光源135の光学素子の反射コーティングは、時間が経つにつれて汚染される、または放射の影響により何らかの他の形で変化することが起こり得る。これらの影響は、反射コーティングの反射率を変化させる。したがって、物体視野141での放射の強度分布も変化し、そのため、補正ユニット177を調節し直さなければならなくなる。
【0074】
これらの変化を、投影露光ツール100の動作中に既に監視することができるように、本発明によれば、照明光学系137または投影光学系139のミラーの少なくとも1つが、上述した光学素子10または110の形態で作製され、放射検出器30、32、または130を設けられる。このようにすると、動作中に光学素子の1つでの照射強度または照明位置が変化しているかどうかを常に検査することができる。照明光学系137の視野面の近くに配設されたミラーの少なくとも1つが、本発明によるこのタイプの反射光学素子の形態であり、かつ本発明による放射検出器を設けられると特に有利である。既に上述したように、図4の例示的実施形態では、このミラーは、図3の反射光学素子110によって形成された集光器169の第1のミラーである。
【0075】
照明光学系137の視野面の近くにある反射光学素子110と放射検出器130との本発明による配置構成の利点は、反射光学素子110での照明の強度分布が、単純に、物体視野141の照明の強度分布と関連付けられることである。したがって、補正ユニット177の設定は、反射光学素子110での照明測定の結果に基づいて適合させることができる。このために、制御ユニット183が設けられ、制御ユニット183は、反射光学素子110の放射検出器130の信号を受信し、この信号から制御信号を生成し、この制御信号によって、Y方向での補正ユニット177のアパーチャの位置を変化させるアクチュエータが制御される。このようにすると、動作中に、X方向で物体視野141にわたって均等な照射光量が提供され、その間に制御測定用ツールを停止する必要がないことが保証される。
【0076】
さらに、本発明によれば、投影露光ツール100のさらなる反射光学素子を形成し、そこに空間分解放射検出器32および対応する補正ユニットを設けることができる。
【0077】
物体視野での照射光量を制御することに加えて、投影露光ツール100の動作中に光学素子110での温度分布を監視するために、反射光学素子110と放射検出器130との本発明による配置構成をさらに使用することができる。このために、キャリア要素12に使用される材料のルミネセンス効率の温度依存性が利用される。上述したように、キャリア要素12は、例えばULE(登録商標)ガラスまたはZerodur(登録商標)から作製することができる。図6は、様々な基板温度TでのULE(登録商標)基板に関して、二次放射24の測定されたピークルミネセンスL、すなわちピーク強度を示すグラフである。ここでは、入射放射の強度は一定に保たれる。このグラフは、約3%/℃のルミネセンス効率(放射変換効率とも呼ばれる)の温度勾配を示す。ルミネセンス効率に関する勾配は、例えば基板材料にドープを施すことによって改良することができる。
【0078】
温度依存性は、熱によって誘起される、捕捉された電子の脱出に起因する。通常は放射脱励起を示す捕捉された電子は、それらのトラップから脱出し、したがってルミネセンス効率を減少させることがある。浅いトラップの場合、この漏れの激しさの温度依存性はより高くなり、応答はより急勾配で温度に依存する。
【0079】
既に上述したように、図4に示す投影露光ツールでは、本発明による温度監視を、反射光学素子110および反射光学素子210の例で示す。光学素子110の場合、投影露光ツール100の露光放射(使用放射)120は、二次放射24の発生を引き起こすための活性化放射として使用される。二次放射24の強度は、放射検出器130によって測定される。有利には、放射検出器130は、図2に参照番号32で示す空間分解検出器として構成される。この場合、二次放射24の空間分布は、空間分解放射検出器によって、光学素子110の領域的広がりにわたって2次元で測定される。得られた強度測定値は、評価ユニット177に転送される。
【0080】
評価ユニット177は、さらに、光学素子110に衝突する露光放射(使用放射)120の強度分布を提供される。この強度分布は、シミュレーションによって得ることができ、または上述したように光学素子110のルミネセンス特性を使用した本発明による強度測定から得ることができる。典型的には、露光放射120の強度分布は、光学素子110の温度分布よりも安定している。すなわち、典型的には、温度分布のばらつきは、露光放射分布のばらつきよりも大きい。したがって、温度分布を計算するために、事前に測定した強度分布を使用することができる。
【0081】
評価ユニット288は、キャリア要素12の形態での基板の温度とルミネセンスの間の既知の関係(その一例を図6に示す)を使用して、放射検出器130によって測定された強度分布から光学素子110の温度分布を計算する。結像誤差を最小限にするために、温度分布は、本質的に一様に保つべきである。投影露光ツール100の動作中に温度分布の不均一性が検出された場合、評価ユニット288は、光学素子110を局所加熱するように構成された加熱デバイス290を作動させる。
【0082】
加熱デバイス290は、例えば、光学素子110に熱を照射する放射源として構成することができる。その際、熱放射は局所的に変えられ、それに従って光学素子110の温度分布は均一にされる。また、加熱デバイスは、他の適切な構成で提供することもでき、例えば光学素子110に一体化することができる構成などで提供することもできる。さらに、温度分布は、適切な様式で光学素子110を冷却することによって平衡させることもできる。
【0083】
上述したように、図4はまた、光学素子210に関して、温度分布を制御するためのさらなる一実施形態を示す。この実施形態は図7にも示してある。ここでは、露光ツール100の露光放射120ではなく、電子ビーム286が活性化放射として使用される。このために、活性化源284として、走査電子ビーム源が、露光放射120のビーム経路外に位置決めされる。さらなる実施形態では、活性化源284は、適切な波長の電磁放射を放出する放射源として構成することもできる。
【0084】
図示した例では、活性化源284は、光学素子210の前に、すなわち光学素子10の反射コーティング18に面して位置決めされる。あるいは、活性化源284は、光学素子210の裏に、すなわちキャリア要素12の裏面に面して位置決めされてもよい。温度測定を行うために、電子ビーム286は、両方向矢印287で示すように反射コーティング18の表面全体にわたって走査される。光学素子210の後ろに、ある距離だけ離して、キャリア要素12で生成される二次放射の強度を測定するための放射検出器230が位置決めされる。強度は、時間分解されて記録され、評価ユニット288によって、光学素子210の前面を照射するビーム286のそれぞれの位置と相関させられる。その際、光学素子210の前での各位置は、それぞれの強度測定と関連付けられる。
【0085】
評価ユニット288は、上述した処置と同様に、光学素子210にわたる温度分布を計算する。しかし、図7による処置は、露光ツール100の露光放射120の強度分布の知識を必要としない。電子ビーム286の強度は、測定された二次放射24の強度分布から温度分布を計算するために使用される。
【0086】
さらに、上述したような加熱デバイス290が、測定された光学素子210の温度分布の不均一性を補償するために提供される。
【符号の説明】
【0087】
10 反射光学素子
12 キャリア要素
14 前面
16 裏面
18 反射コーティング
20a 入射使用放射
20b 反射使用放射
20c 透過使用放射
24 二次放射
30 放射検出器
32 空間分解放射検出器
34 評価デバイス
100 マイクロリソグラフィ用の投影露光ツール
110 反射光学素子
120 露光放射
130 放射検出器
135 光源
137 照明光学系
139 投影光学系
141 物体視野
143 像面
145 ガス供給機構
147 ガス抽出システム
149 位置
151 入力スペクトル
155 楕円形ミラー
153 スペクトルフィルタ
157 フィルタスペクトル
158 露光放射のスペクトル分布
160 ハニカム集光器
161 第1の傾斜ミラー
163 第2の傾斜ミラー
169 集光器
M1、M2、M3、M4、M5 投影光学系のミラー
173 集光器のミラー
175 光軸
177 補正ユニット
183 制御ユニット
210 反射光学素子
230 放射検出器
284 活性化源
286 電子のビーム
287 両方向矢印
288 評価ユニット
290 加熱デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光学素子と放射検出器とを備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用する光学配置構成であって、
前記反射光学素子は、キャリア要素を備え、
前記キャリア要素は、前記光学素子の機械的強度を保証し、5℃〜35℃の温度範囲にわたって−200ppb/℃〜+200ppb/℃の範囲内の熱膨張係数を有する低膨張材料を含み、
前記放射検出器は、低膨張材料によって生成される放射を検出するように構成される光学配置構成。
【請求項2】
前記低膨張材料は、ケイ酸塩ガラスおよび/またはガラスセラミックを含む、請求項1に記載の配置構成。
【請求項3】
反射光学素子と放射検出器とを備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用する光学配置構成であって、
前記反射光学素子は、前記光学素子の機械的強度を保証するキャリア要素と、前記キャリア要素に配設された、使用放射を反射するための反射コーティングとを備え、
前記キャリア要素は、前記使用放射と相互作用するときに二次放射を放出する材料からなり、前記二次放射の波長は、前記使用放射の波長とは異なり、
前記放射検出器は、前記二次放射を検出するように構成される光学配置構成。
【請求項4】
評価デバイスをさらに備え、前記評価デバイスは、前記放射検出器によって検出された放射の強度から、前記反射光学素子に照射された放射の強度を求めるように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項5】
反射光学素子と放射検出器とを備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用するための配置構成であって、
前記反射光学素子は、前記光学素子の機械的強度を保証するキャリア要素と、前記キャリア要素に配設された、使用放射を反射するための反射コーティングとを備え、
前記キャリア要素は、活性化放射と相互作用するときに、前記活性化放射を、前記活性化放射とは異なる二次放射に変換する材料を含み、前記材料は、前記放射変換の効率に温度依存性があるように構成され、
前記放射検出器は、前記二次放射を検出するように構成される光学配置構成。
【請求項6】
前記放射変換効率の温度勾配は、少なくとも2%/℃である、請求項5に記載の配置構成。
【請求項7】
前記検出された二次放射の強度から前記光学素子での温度を求めるように構成された評価ユニットをさらに備える、請求項5または6に記載の配置構成。
【請求項8】
前記活性化放射のビームを生成するための活性化源をさらに備え、
前記活性化源は、前記光学素子全体にわたって前記活性化ビームを走査するように構成され、
前記評価ユニットはさらに、前記検出された二次放射を前記活性化ビームのそれぞれの走査位置と相関させるように構成され、それにより前記光学素子での温度が空間分解されて求められる、請求項7に記載の配置構成。
【請求項9】
前記活性化放射は、前記使用放射を含み、前記二次放射は、前記活性化放射と波長が異なる、請求項5から8のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項10】
前記活性化放射は、電子放射を含む、請求項5から9のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項11】
前記二次放射を放出する材料は、5℃〜35℃の温度範囲にわたって−200ppb/℃〜+200ppb/℃の範囲内の熱膨張係数を有する低膨張材料を含む、請求項3から10のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項12】
前記二次放射を放出する材料は、ケイ酸塩ガラスおよび/またはガラスセラミックを含む、請求項3から11のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項13】
前記反射光学素子は、前記キャリア要素の前面に配設された反射コーティングを有し、前記放射検出器は、前記キャリア要素の裏面に面する、請求項1から12のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項14】
前記放射検出器は、可視波長範囲内の光を検出するように構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項15】
前記反射光学素子は反射コーティングを備え、前記反射コーティングは、極紫外波長範囲内の放射を反射するように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項16】
前記放射検出器は、空間分解放射検出器である、請求項1から15のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項17】
前記放射検出器は、前記キャリア要素の裏面に取り付けられる、請求項1から16のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項18】
前記二次放射を放出する材料は、蛍光材料である、請求項3から17のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項19】
前記低膨張材料は、SiO2マトリックスを含み、前記SiO2マトリックスは、照射された使用放射と相互作用するときに蛍光放射を放出させる固有欠陥を含む、請求項1、2または請求項11から18のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項20】
前記低膨張材料は、5℃〜35℃の温度範囲にわたって−50〜+50ppb/℃の範囲内の平均線形熱膨張係数を有する、請求項1、2、または請求項11から19のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項21】
前記低膨張材料は、ULE(登録商標)ガラスまたはZerodur(登録商標)ガラスセラミックからなる、請求項1、2、または請求項11から20のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項22】
前記放射検出器によって測定された強度に基づいて、前記投影露光ツールで使用される露光放射に影響を及ぼすように構成された補正ユニットを備える、請求項1から4、または請求項11から21のいずれか一項に記載の配置構成。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の少なくとも1つの配置構成を備える、マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールで使用するための光学系モジュールであって、
前記投影露光ツールの物体視野を照明するための照明光学系として構成されるか、または前記物体視野から結像領域に構造を結像するための投影光学系として構成される、光学系モジュール。
【請求項24】
請求項1から22のいずれか一項に記載の少なくとも1つの配置構成を備える、マイクログラフィ用の投影露光ツール。
【請求項25】
マイクログラフィ用の投影露光ツールの反射光学素子における強度を測定する方法であって、
前記光学素子は、前記光学素子の機械的強度を保証するキャリア要素と、前記キャリア要素上に配設された、前記投影露光ツールの露光放射を反射するための反射コーティングとを備え、
前記キャリア要素は、5℃〜35℃の温度範囲にわたって−200ppb/℃〜+200ppb/℃の範囲内の熱膨張係数を有する低膨張材料を含み、
前記方法によって、前記投影露光ツールの動作中に、
前記露光放射の第1の部分は、前記反射コーティングで反射され、
前記露光放射の第2の部分は、前記反射コーティングを通過し、低膨張材料内で、前記露光放射の波長とは異なる波長を有する二次放射を生成し、
前記キャリア要素から出た前記二次放射の少なくとも一部の強度が測定される、方法。
【請求項26】
前記反射光学素子に照射される前記露光放射の強度は、測定された前記二次放射の強度から求められる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記キャリア要素から出た前記二次放射の強度は、空間分解されて測定され、前記強度から、前記反射光学素子に照射された前記露光放射の空間分解強度分布が求められる、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
マイクロリソグラフィ用の投影露光ツールの光学素子での温度を測定する方法であって、前記光学素子は、衝突する活性化放射を、前記活性化放射とは異なる二次放射に変換するように構成された材料を含み、
活性化放射を前記光学素子に照射するステップと、
前記光学素子から出た二次放射の強度を測定するステップと、
前記測定された強度から前記光学素子での温度を求めるステップと、
を含む方法。
【請求項29】
前記活性化放射は、前記投影露光ツールの露光放射を含み、前記二次放射は、前記活性化放射と波長が異なる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記活性化放射は、電子放射を含む、請求項28または29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記光学素子から出た前記二次放射の強度は、空間分解されて測定され、前記強度から、前記光学素子の空間分解温度分布が求められる、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
さらに、前記光学素子に照射される前記露光放射の強度は、前記光学素子での温度を求めるために使用される、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記二次放射の強度は、放射検出器によって測定され、前記反射光学素子と前記放射検出器の配置構成は、請求項1から22のいずれか一項に従って構成される、請求項25から32のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−518421(P2013−518421A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550370(P2012−550370)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000385
【国際公開番号】WO2011/092020
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】