説明

反射鏡の穿孔方法

【課題】椀形状の反射鏡に対し高い加工精度でしかも効率的に貫通孔を穿孔する。
【解決手段】本発明の反射鏡の穿孔方法は、それぞれ同軸上を進退自在に移動するよう対向配置され、椀形状の反射鏡3を内外から切削加工する外側加工用と内側加工用とで一対のコアドリル13a、13bの先端部どうしの間に、反射鏡3の被加工部34を介在させる工程と、被加工部34が先端部間に介在された一対のコアドリル13a、13bをそれぞれ前進させて反射鏡3の内外両側から被加工部34の切削を開始する工程と、被加工部34の内外両側からの切削が進行し被加工部34に所定の厚みが残る加工状態で、反射鏡3側から内側加工用のコアドリル13bを後退させる工程と、コアドリル13bを後退させた後、外側加工用のドリル13aをさらに前進させて反射鏡3の被加工部34に貫通孔33を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス、セラミックスなどの脆性材料に貫通孔を形成する方法に係り、特に光源の構成部品として用いられる椀形状の反射鏡に対して穿孔を行う反射鏡の穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶プロジェクタ(以下「プロジェクタ」と称する)などに用いられる光源は、初期には、硼珪酸ガラスなどを材料とした耐熱ガラス製の反射鏡とハロゲンランプとを組合せた構造のものが用いられていたが、光色がより白色に近いこと、投射画像の明るさ、ランプ寿命などの点で優れるHIDランプ(放電灯)に置き換わってきている。
【0003】
また、このようなプロジェクタは、パーソナルコンピュータやDVDドライブなどの映像関連機器の普及に伴ってプレゼンテーションなどで利用される業務用から一般家庭用に至るまで用途が拡大している。このため、プロジェクタ自体の小型化が進む一方で、ランプの出力を落とさず明るさを損なわないニーズが拡大している。
【0004】
したがって、以前のプロジェクタでは、例えば、反射鏡の直径が90〜100mm、ランプの出力が100〜120W、昇温されるガラス面の最高温度が400〜450℃程度のものなどが使用されていたが、最近のプロジェクタでは、例えば、反射鏡の直径が50〜65mm、ランプの出力が120〜300W、昇温されるガラス面の最高温度が450〜550℃にもなるものが利用されている。このため、プロジェクタの光源用の反射鏡には、耐熱性に優れていて温度上昇に対する形状変化の小さいガラス又は結晶化ガラスなどを構成材料とした反射鏡が使用されている。具体的には、上記した硼珪酸ガラスなどを材料とした耐熱ガラス製の反射鏡の他、熱膨張係数の低い結晶化ガラス製の反射鏡も利用されている。
【0005】
ところで、光源用の反射鏡には、通常、反射面の頂部(最奥部)に、光源ランプの固定(又はその導線の挿入)に用いられる開孔部を設けることが必要になる。このため、反射鏡では、プレス成形時に反射面の裏面側に反射鏡の光軸に沿って突出するネック部を形成しておき、このネック部の閉塞端部を反射鏡の光軸に直交する面で切断するか、又はコアドリル若しくはパンチングなどで孔あけ加工を施すことなどで開孔部が形成されている。
【0006】
また、両端に電極を有する放電灯を光源としたものでは、反射鏡の光軸に沿って両電極を配設した場合、一方の電極を反射鏡のネック部内に配置しても、他方の電極に接続するリードを反射鏡の前面の開口部側から取り回す必要があり、反射鏡の反射面にリードを通して固定するための貫通孔(端子孔:直径2〜3mm)が設けられた構造のものがある。
【0007】
ここで、反射鏡の反射面に上記した開孔部として貫通孔を穿孔するために、例えば図9a、図9bに示す手法が採用されている。
すなわち、この穿孔方法は、精密ボール盤を使用し、図9bに示すように、椀形状の反射鏡73の光軸を通る垂直断面において被加工部(孔開け部)の外面の接線がほぼ水平となるように(被加工部の外側の接平面がほぼ水平方向に沿って配置されるように)、反射鏡73を保持する専用の固定治具72に反射鏡73を固定し、ドリル75を垂直に下降させて、椀形状の反射鏡73の外面側から内面側に貫通する貫通孔を形成するものである。しかしながら、このように、反射鏡73の片面側から貫通孔を形成する方法では、反射鏡73に対しドリル75を貫通させる際に、貫通孔における反射鏡73内側の開口端の周縁部に、高い確率でチッピング(欠け)が生じる。
【0008】
このため、図9aに示すように、まず、椀形状の反射鏡73を内側穿孔用の固定治具71に固定し反射鏡73の内面側から被加工部の肉厚の1/2〜2/3程度まで穿孔し、次いで、図9bに示すように、外側穿孔用の固定治具72に反射鏡73を固定して反射鏡の外面側から穿孔し、孔内部で貫通させることによって、反射鏡73の表面での欠けの発生を防止する対策が採られている。このドリルによる切削(研削)加工を行う際の切削水(研削水)は、ドリル75の外部から加工部に注水されるか、若しくはドリルコアから例えば給水される場合でも、0.1〜0.3MPa程度の圧力で供給される。
【0009】
このような両面からの穿孔方法としては、板ガラスに関するものが、実公昭52−53741(例えば、特許文献1参照)や、特開平5−269699(例えば、特許文献2参照)などによって開示され、さらに、貫通孔の開口部に面取り施す技術を解説したものが、実開昭50−29594(例えば、特許文献3参照)や、特公平5−79613(例えば、特許文献4参照)などによって公開されている。
【特許文献1】実公昭52−53741号公報
【特許文献2】特開平5−269699号公報
【特許文献3】実開昭50−29594
【特許文献4】特公平5−79613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した従来の反射鏡の穿孔方法には次のような課題がある。
すなわち、反射鏡の内外両面からの穿孔方法では、反射鏡を裏返してセットする手間がかかる上、内外両面別々に加工を施すため、その分、多くの加工時間を要する。また、この際、安定した加工を行うためには、図9a、図9bに示すように、外側穿孔用及び内側穿孔用にそれぞれに専用の固定治具71、72を用意する必要があり、これに加えて、形状やサイズの異なる反射鏡ごとに個別の固定治具をそれぞれ2組ずつ用意する必要がある。
【0011】
また、椀形状の反射鏡の内面側(反射面側)からの加工では、図9aに示すように、ドリル75を反射鏡73の前面の開口部側から挿入することになるが、長さの短いドリルでは、ドリルコレット(ドリルのチャッキング部)74が反射鏡73の前面の開口部端縁などと干渉(接触)して使用できないこともある。
【0012】
この場合、長いドリルを用いてドリルコレット74からのドリルの突出長を長くとり、ドリルコレットと反射鏡との干渉を回避することなどが考えられるが、このためには反射鏡73の上述した直径以上のドリルの突出長が必要になる。また、精密ボール盤などでガラスに直径2〜3mmの孔を加工をする場合、一般に、ドリルの回転数としては、8000〜20000rpm程度の回転数が必要となる。ここで、ドリルコレット74からのドリルの突出長が長くなると、高速回転するドリルの先端に芯振れが生じ、穿孔部分にチッピングを生じ易くなる。また、反射鏡の内面(反射面)の欠けは、反射光量及び配光に直接影響するため、直ちに製品不良につながり、歩留りが極端に低下することになる。
【0013】
そこで、ドリルコレットからのドリルの突出長を長くした場合の歩留りの低下を抑制するために次のような手法が採られることもある。
つまり、この方法は、図9aに示した反射鏡73の内面側から穿孔の工程で、ドリル75として比較的短い長さのものを使用し、ドリルコレット74と反射鏡73とが接触しない範囲で最大限ドリルの侵入角が被加工部の表面に対して垂直に近くなるように反射鏡73の内面側から被加工部の肉厚の1/2〜2/3程度まで穿孔し、次いで、図9bに示したように、反射鏡73の外面側から残りの肉厚部分を切削加工して貫通孔を形成するものである。
【0014】
しかしながら、この場合、反射鏡73の内側の被加工部の接平面が水平になるように、図9aに示す角度θ1を基準として製造された固定治具71と、反射鏡73の外側の被加工部の接平面が水平になるように、図9bに示す角度θ2を基準として製造された固定治具72との製造誤差などの影響で、反射鏡73の内側からと外側からとではドリルの進入角(理想的には、水平面に対していずれも90°)が多くの場合異なってしまう。このため、図9cに示すように、傾き角θ3を持って内側の穿孔部分と外側の穿孔部分とで形成された貫通孔76は、その垂直断面が、いわゆる「く」の字状となり、ドリル75の実際の外径よりも、貫通孔としての実質的な孔径d1(例えばドリル75の直径−0.1mm)が、小さく形成されてしまうことがある。
【0015】
反射鏡73に形成される上記貫通孔には、例えば電極用カシメピンが挿嵌されリードが固定されることになるが、「く」の字状の貫通孔76では、直線的な貫通孔と比較してカシメピンの挿嵌作業性を悪化させる。ここで、挿嵌作業性を悪化させないように、直線的に貫通する実質的な孔径を確保しようとすれば、より大きな外径のドリルを使うことが必要になり、しかも、外径を大きくした分、垂直よりも浅い侵入角で反射鏡73の内側面(反射面)が切削加工されることになるため、反射面積が無駄に切削されることになる。
【0016】
そこで本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、椀形状の反射鏡に対し高い加工精度でしかも効率的に貫通孔を穿孔することができる反射鏡の穿孔方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る反射鏡の穿孔方法は、それぞれ同軸上を進退自在に移動するよう対向配置され、椀形状の反射鏡を内外から切削加工する内側加工用と外側加工用とで一対のドリルの先端部どうしの間に、前記反射鏡の被加工部を介在させる工程と、前記反射鏡の被加工部が前記先端部どうしの間に介在された前記一対のドリルをそれぞれ前進させて前記反射鏡の内外両側から前記被加工部の切削を開始する工程と、前記被加工部の内外両側からの切削が進行し前記被加工部に所定の厚みが残る加工状態で、前記反射鏡側から前記内側加工用のドリルを後退させる工程と、前記内側加工用のドリルを後退させた後、前記外側加工用のドリルをさらに前進させて前記反射鏡の被加工部に貫通孔を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
この発明では、一対のドリルで椀形状の反射鏡を内外から切削することで、貫通孔を穿孔するための加工時間を短縮することができる。さらに、この発明では、同軸上を進退自在に移動するように一対のドリルを対向配置したので、直線的な貫通孔を精度良く穿孔することができる。また、この発明では、一対のドリルを等しい回転数で回転させ、さらに、一対のドリルから反射鏡の被加工部に等しい押圧力(前進力)を付与することで、被加工部から一対のドリルが各々受ける反力が均等になり、これにより、切削効率を向上させることができる。
【0019】
また、この発明では、反射鏡の被加工部の内外両側からの切削が進行し被加工部に所定の厚み(例えば0.6mm)が残る加工状態で、反射鏡側から内側加工用のドリルを後退させた後、外側加工用のドリルをさらに前進(ドリルの最先端部は、被加工部の肉厚内に留まる)させて反射鏡の被加工部に貫通孔を形成するので、所定の厚みを残した被加工部の内部にチッピングが発生したとしても、貫通孔を形成する際の外側加工用のドリルのさらなる前進動作により孔内面をきれいに切削でき、これにより、反射鏡の被加工部にチッピングを残してしまうことなどを抑制することができる。さらに、この発明では、最終的に貫通孔を形成するためのドリルを、反射鏡の外形部分とドリルのチャッキング部との接触をあまり懸念する必要のない外側加工用のドリルとしたので、外側加工用のドリルの長さを短かくして、ドリルの先端ブレに起因する加工の負荷を抑制し、チッピングの発生を抑えることができる。
【0020】
また、本発明に係る反射鏡の穿孔方法は、前記内側加工用のドリルが、前記被加工部に所定の厚みが残る最前進位置に到達した状態での該ドリルの長手方向において、前記反射鏡の縁部と該ドリルのチャッキング部とが所定の間隔を空けて離間する長さを有し、さらに、前記内側加工用のドリルの回転数が、7000rpm以下に調整されることを特徴とする。ここで、ドリルの回転数は、500rpm未満では充分な加工能力が得られず、7000rpmを超えるとチッピング発生の確率が高くなる。したがって、前記内側加工用のドリルの回転数は、1000〜4000rpmに調整されることがより好ましい。
【0021】
この発明では、内側加工用のドリルが、反射鏡の縁部と該ドリルのチャッキング部とが所定の間隔を空けて離間する長さを有し、さらに、この内側加工用のドリルと外側加工用のドリルとが同軸上を進退自在に移動するので、直線的な貫通孔を高精度に形成することができる。また、椀形状の反射鏡においては、ドリルの先端部が被加工部に当接する際に逃げが発生し易い構成となるが、この発明では、ドリルの回転数を7000rpm以下の低い回転数に調整することで、ドリルの先端の逃げを抑制することができる。ここで、ドリルによる切削加工時の負荷をより低減できるように、ダイヤモンドの粒径を比較的小さいものとしたダイヤモンドドリルを内側加工用及び外側加工用のドリルに適用してもよい。この場合のダイヤモンドの粒度(粒径)は、例えば#140〜#270(平均粒径50〜107μm)であることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明に係る反射鏡の穿孔方法は、前記一対のドリルが、軸心部分を通って先端部に開口する切削液の供給流路を有し、この先端部から1.5〜5MPaの圧力で前記切削液を噴出させつつ切削加工を行うことを特徴とする。
【0023】
ここで、内側加工用及び外側加工用のドリルとして上記したようにダイヤモンドドリルを適用し、さらにダイヤモンドの粒径を小さくすると、ドリルの基体からのダイヤモンドの突出量が小さくなり、これにより、切削時のドリルの表面と被加工部との間隙も小さくなり、切削屑の排出性や加工部の冷却性が低下する。そこで、一対のドリルの構成をいわゆるクーラントスルータイプとし、その先端部から1.5〜5MPaの圧力で切削液を噴出させることで、通常の水圧(0.1〜0.3MPa)では十分回り込むことができないような狭い間隙にも大量の切削液を供給でき、これにより、被加工部から研削屑を排出させるとともに、ドリル及び被加工部を冷却してドリルの焼きつきを防止できる。なお、切削液を噴出圧が1.5MPa未満の場合、研削屑をドリル内又は被加工部から完全に除去することが困難となる。また、切削液の噴出圧の上限値5MPaは、一般の高圧水ポンプの許容値を満足する値として設定されている。さらに、ドリルの回転数を上記したように低く設定すると、切削液が遠心力で飛ばされることを低減でき、冷却作用を高めることができる。
【0024】
また、本発明に係る反射鏡の穿孔方法は、前記一対のドリルが、各々の軸方向が水平方向に向く状態で対向設置され、さらに、前記椀形状の反射鏡が、反射光を放出するための開口部が下向きとなる状態で且つ前記被加工部の接平面が鉛直方向に沿った方向になるように前記一対のドリルの先端部どうしの間に前記被加工部を介在させる状態で設置され、この設置状態で切削加工が行われることを特徴とする。
【0025】
この発明では、椀形状の反射鏡の開口部の端縁を、例えば、傾斜を持たせた載置面を有する固定治具上に載せることで、被加工部をほぼ垂直に保持することでき、セッティング作業を容易に行うことが可能となる。ここで、ドリルの軸方向を水平方向に向けるのは、反射鏡の開口部を下向きに載置することが簡単になることと、下記の障害を回避するためである。つまり、被加工部を水平に設置しようとすると、反射鏡の曲面部分を支持しなければならず、しかも、鉛直方向にドリルの軸方向を向けた設置では、下側のドリルの駆動部へ切削屑や切削液が飛散、侵入して故障の原因となる。
【0026】
また、上記した発明では、被加工部を鉛直に保持し、ドリルの軸方向を水平方向に設定しているので、ドリルが被加工部にほぼ垂直に当接して穿孔が行われる。ここで、ドリルの進入角が垂直でないと、例えば比較的長さの長い内側加工用のドリルの先端が被加工部に当接する際にドリルの逃げが発生し、反射鏡の内側からの穿孔部分と外側からの穿孔部分とに位置ずれが生じたり、また、ドリルの進入面にチッピングや傷が付いたりするが、上記した発明によれば、これらの現象が防止され直線的な貫通孔を高精度に穿孔することができる。
【0027】
さらに、本発明に係る反射鏡の穿孔方法は、前記外側加工用のドリルが、該ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部と、この円筒部の最基端部から該ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部とを備えた刃部を有し、前記内側加工用のドリルを後退させる工程では、前記内側加工用のドリルの前記円筒部の先端から前記切削液を噴出させつつ前記被加工部から後退させた前記内側加工用のドリルを前記被加工部の内側に近接する内側近接位置に待機させ、前記貫通孔を形成する工程では、前記内側加工用のドリルが前記切削液を噴出しつつ前記内側近接位置に待機している状態で、前記外側加工用のドリルによって貫通孔を穿孔しつつ該ドリルの前記テーパ部によって前記貫通孔の外側の開口部に面取りを行うことを特徴とする。
【0028】
この発明において、外側加工用のドリルの円筒部を、反射鏡の被加工部に穿孔すべき貫通孔の長さより短い長さで形成(被加工部の肉厚よりも短く)するのは、内側加工用のドリルの先端から噴出される切削液を貫通孔内に導き易くするためである。すなわち、外側加工用のドリルの先端が被加工部を貫通した状態では、このドリルの先端から噴出される切削液が被加工部に流れないので、内側加工用のドリルを被加工部の近傍に待機させ、被加工部の内側から研削液を被加工部に供給する。
【0029】
また、本発明に係る反射鏡の穿孔方法は、前記内側加工用のドリルが、該ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部と、この円筒部の最基端部から該ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部とを備えた刃部を有し、前記貫通孔を形成する工程が実施された後、前記外側加工用のドリルの前記円筒部の先端から前記切削液を噴出させつつ前記外側加工用のドリルを前記貫通孔の形成位置から後退させ、さらに前記外側加工用のドリルを前記貫通孔の外側の開口部に近接する外側近接位置に待機させる工程と、前記外側加工用のドリルが前記切削液を噴出しつつ前記外側近接位置に待機している状態で、前記内側加工用のドリルを前記反射鏡側に前進させて前記内側加工用のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の内側の開口部に面取りを行う工程と、をさらに有することを特徴とする。
【0030】
さらに、本発明に係る反射鏡の穿孔方法は、前記一対のドリルが、当該各ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部と、この円筒部の最基端部から前記各ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部とを備えた刃部をそれぞれ有し、前記内側加工用のドリルを後退させる工程に代えて、前記被加工部の内外両側からの切削が進行し前記被加工部に所定の厚みが残る加工状態で、内側加工用若しくは外側加工用のいずれか一方のドリルの前記円筒部の先端から前記切削液を噴出させつつ前記一方のドリルを前記被加工部から後退させ、さらに前記一方のドリルを前記被加工部の内側若しくは外側に近接する内側/外側近接位置に待機させる工程を実施し、前記貫通孔を形成する工程に代えて、前記一方のドリルが前記切削液を噴出しつつ前記内側/外側近接位置に待機している状態で、前記他方のドリルをさらに前進させて貫通孔を穿孔しつつ該他方のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の他方の開口部に面取りを行う工程を実施し、さらに、前記他方のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の他方の開口部に面取りを行う工程が実施された後、前記他方のドリルの円筒部の先端から切削液を噴出させつつ前記他方のドリルを前記貫通孔の形成位置から後退させ、さらに前記他方のドリルを前記貫通孔の他方の開口部に近接する近接位置に待機させる工程と、前記他方のドリルが切削液を噴出しつつ前記貫通孔の他方の開口部に近接する近接位置に待機している状態で、前記一方のドリルを前記反射鏡側に前進させて前記一方のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の一方の開口部に面取りを行う工程と、を有することを特徴とする。また、本発明に係る反射鏡の穿孔方法においては、前記他方のドリルは、前記外側加工用のドリルであって、前記一方のドリルは、前記内側加工用のドリルである。
【発明の効果】
【0031】
このように本発明によれば、椀形状の反射鏡に対し高い加工精度でしかも効率的に貫通孔を穿孔することが可能な反射鏡の穿孔方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の反射鏡の穿孔方法に使用される穿孔装置を概略的に示す正面図、図2は、図1の穿孔装置のワーク加工部の構成を一部断面で示す図、図3は、図2のワーク加工部を矢視A方向からみた矢視図、図4は、加工対象となる反射鏡を示す断面図、図5は、図1の穿孔装置に設けられた一対のコアドリルの構造を示す断面図である。
【0033】
図1、図2に示すように、この実施形態の穿孔装置1は、一対のドリルユニット10と、反射鏡固定治具20と、ワーククランプシリンダ15とを有する。一対のドリルユニット10は、基台11上に設けられ、水平方向に延びる軸線に沿って進退移動自在でかつ回転するドリルコレット12a、12bと、このドリルコレット12a、12bにそれぞれ装着された一対のコアドリル13a、13bと、コアドリル13a、13bの切り込み深さ、切り込みスピードの制御、作動位置設定などを行うスピンドルモータ14とを備える。また、穿孔装置1には、オペレータ(作業者)が入力操作を行う操作盤17と、操作盤17へ入力された情報に基づいて、穿孔装置本体の動作を制御する制御盤7とが設けられている。
【0034】
反射鏡固定治具20は、図1〜図4に示すように、自動開閉扉6の内側の一対のドリルユニット10どうしの間に設けられたワーク加工部5に設置されており、ガラス製の反射鏡3の開口部31を下向きに載置する傾斜した載置面21を有する。ワーククランプシリンダ15は、その先端で反射鏡3に当接して反射鏡固定治具20側に反射鏡3を押圧する。
【0035】
各ドリルユニット10の後端部には、前記コアドリル13a、13bに切削水(研削水)を供給するためのポンプユニット(図示せず)につながる配管16が接続されている。反射鏡固定治具20は、図2〜図4に示すように、反射鏡3の開口部31を上記載置面21に載置した際に貫通孔33の加工予定面がほぼ鉛直に保持されるように載置面21の傾斜角度が設定されており、載置面21の下端側には、反射鏡3の外形に合せて加工され、反射鏡3のフランジ部32が係止されるストッパ22が設けられている。また、反射鏡固定治具20には、コアドリル13a、13bの進路にあたる部分に設けられ、且つコアドリル13a、13bを挿通可能とした切欠き23が形成されている。詳細には、一対のコアドリル13a、13bは、各々の軸方向が水平方向に向く状態で(互いの先端部が)対向設置され、さらに、椀形状の反射鏡3は、被加工部34の接平面が鉛直方向に沿った方向になるように一対のコアドリル13a、13bの先端部どうしの間に被加工部34を介在させる状態で、反射鏡固定治具20上に設置される。
【0036】
一対のドリルユニット10に設けられた一対のドリルは、それぞれ水平方向に向く同軸上を進退自在に移動するよう対向配置され、図5に示すように、椀形状の反射鏡3を外壁面側Fから切削加工する外側加工用のコアドリル13aと、反射鏡3を内壁面側Rから切削加工する内側加工用のコアドリル13bとからなる。加工対象となる反射鏡3は、反射鏡固定治具20を通じて、外側加工用のコアドリル13aと内側加工用のコアドリル13bとの先端部どうしの間に被加工部34を介在させるようにして配置される。また、外側加工用のコアドリル13aは、ドリルコレット12aからの突出長が比較的短いものであり、反射鏡固定治具20を挟んで反対側に位置する内側加工用のコアドリル13bは、ドリルコレット12bからの突出長が加工対象となる反射鏡3の直径よりも長く、加工時にドリルコレット12bが反射鏡3に接触しない長さのものが適用される。詳細には、内側加工用のコアドリル13bは、反射鏡3の被加工部34に後述する所定の厚みが残る最前進位置に到達した状態での該ドリルの長手方向において、前記反射鏡3の縁部と該ドリルのドリルコレット12bとが所定の間隔を空けて離間する長さを有する。
【0037】
図5に示すように、一対のコアドリル13a、13bは、先端部にダイヤモンド砥粒をそれぞれ被着した刃部52a、52bを有する。また、一対のコアドリル13a、13bは、軸心部分を通って先端部に開口する切削液の供給流路53a、53bを有するクーラントスルータイプのコアドリルである。ドリルユニット10の後端部には上述したポンプユニットが接続されており、一対のコアドリル13a、13bは、供給流路53a、53bから水などの切削液51a、51bを噴出できるように構成されている。ここで図5では、切削液51a、51bの流れを矢印で示してある。
【0038】
ここで、プロジェクタなどの投射光源に用いられるガラス、結晶化ガラス、セラミックスなどからなる反射鏡3の反射面部の肉厚は3〜5mm程度であるが、以下、上記穿孔装置1を使用し、直径が60mm、被加工部34の肉厚が4.5mmのガラス製の反射鏡3に端子用の貫通孔33(図4参照)を穿孔する場合の方法について、図6a〜図6eに基づきその説明を行う。この実施形態では、コアドリル13a、13bは、刃部52a、52bによる加工孔径が2.65mm、ドリルコレット12a、12bからの突出長が、それぞれ内側加工用のコアドリル13bが65mm、外側加工用のコアドリル13aが30mmのものを使用する。また、コアドリル13a、13bの回転数は、3000rpmに調整される。
【0039】
まず、図2に示すように、反射鏡固定治具20の載置面21に反射鏡3の開口部31を下向きにした状態で当該反射鏡3を載置する。反射鏡3は、自重により反射鏡固定治具20の傾斜に沿って載置面21の下端側にすべり、ストッパ22に当接して停止する。この状態で穿孔装置1を稼動させると、ワーククランプシリンダ15が作動してその先端が反射鏡3を上方からストッパ22の方向へ付勢するように当接して反射鏡固定治具20上に反射鏡3を押圧しつつ固定する。外側加工用のコアドリル13aと内側加工用のコアドリル13bは、図6aに示すように、スピンドルモータ14により駆動されつつ、前進して、図6bに示すように、反射鏡3の内外両側から被加工部34にほぼ同時に穿孔動作を開始する。
【0040】
ここで、一対のコアドリル13a、13bは、被加工部34の表面から0.7〜1.5mm内部側に高速前進し、その後、2.5MPaの圧力で切削水51a、51bをドリルの先端側から噴出しながら前進し、図6cに示すように、コアドリル13a、13bの先端どうしの離間距離が、予め設定した値、例えば0.6mmになるまで接近する。さらに、図6dに示すように、内側加工用のコアドリル13bが後退を開始し、次いで、外側加工用のコアドリル13aがさらに1〜1.5mm前進(ドリルの最先端部は、被加工部34の肉厚内に留まる)して貫通孔33を完成させる(図4参照)。最後に、図6eに示すように、一対のコアドリル13a、13bが初期位置まで後退し、ワーククランプシリンダ15が付勢を解除して、切削加工が終了となる。
【0041】
既述したように、本実施形態の反射鏡の穿孔方法によれば、反射鏡の内外両面から同時に穿孔が行われるので、チッピングの発生が殆どなく、短い加工時間で直線的な貫通孔を精度良く形成することができる。
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明は前記実施形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0042】
以下、本発明を実施例によって、より詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、上記発明を実施するための最良の形態の欄(主に図5及び図6a〜図6e参照)で説明した貫通孔の穿孔方法を適用するものであって、一人の作業者が、反射鏡3を反射鏡固定治具20にセットし、反射鏡3の両側面から穿孔を行い、貫通孔33が形成された後、反射鏡3を反射鏡固定治具20から取り外すまでが1サイクルとなる。ここで、試験に使用した一対のコアドリル13a、13bのダイヤモンド粒度(粒径)は、#140(平均粒径107μm)のものを用いた。
【0043】
(比較例)
従来法では、精密ボール盤を2台を用意するとともに、図9aに示したように、反射鏡3の内側加工用の固定治具71を用意し、図9bに示したように、外側加工用の固定治具72を用意し、使用するドリルは、加工孔径が2.65mm、ドリルコレットからの突出長は、内側加工用のドリルが65mm、外側加工用のドリルが30mmのもの、ドリルのダイヤモンド粒度(粒径)は、#100(平均粒径150μm)、ドリル回転数は17500rpm、反射鏡3の被加工部34を水槽に浸漬させた状態で切削加工を行った。
従来法の工程では、一人の作業者が、図9aに示すように、内側加工用の固定治具71に反射鏡3をセットし、精密ボール盤により反射鏡3の内側面からの穿孔を行い、次いで、内側加工用の固定治具71から反射鏡3を取り外すとともに、図9bに示すように、外側加工用の固定治具72に反射鏡3をセットして外側面からの穿孔を行い、貫通孔形成後、固定治具72から反射鏡3を取り外すまでが1サイクルとなる。
【0044】
上記した実施例1及び比較例において、共に連続して100個の反射鏡3の穿孔を行った合計時間から1個あたりの加工処理時間を算出した。また、加工された反射鏡3について、製品規格に基づき不良となるチッピングの有無を目視によって確認した。なお、4人の作業者について同試験を行った。
【0045】
この結果、比較例では、1個あたりの加工処理時間が70〜80秒かかったのに対し、実施例1では20〜30秒と半減した。また、チッピング不良の発生率は、比較例では、5〜10%であったのに対し、実施例1では、0.1%未満であった。なお、比較例における実際の工程では、各精密ボール盤に専任の作業者を配置し、反射鏡3の外側と内側との切削加工を並行して実施したので、この場合の1個あたりの加工処理時間は30〜40秒となるが、作業者が2名必要となる。
【0046】
このように、実施例1によれば、反射鏡3の内外両面から同時に穿孔が行われるので、チッピングの発生を抑えることができるとともに、直線的な貫通孔33を効率的にしかも精度良く形成することができる。
【0047】
(実施例2)
実施例2は、貫通孔33を穿孔しつつ貫通孔33の外側の開口端に面取りを行う穿孔方法である。この実施例2では、穿孔装置1に設けられていた外側(外壁面側F)加工用のコアドリル13aに代えて、図7aに示すように、外側加工用のコアドリル19aが適用される。コアドリル19aは、該ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ反射鏡3の被加工部34に穿孔すべき貫通孔の長さより短い長さ(長さt2)で形成された円筒部57aと、この円筒部57aの最基端部から該ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部56aとを備えた刃部54aを有する。また、予め操作盤17により、貫通孔33の外側の開口端に面取りを行なう制御プログラムを設定しておく。
【0048】
実施例2では、まず、反射鏡3を反射鏡固定治具20にセットした後、図7aに示すように、一対のコアドリル19a、13bは、被加工部34の表面から0.7〜1.5mm内部側に高速前進し、その後、2.5MPaの圧力で切削水をドリルの先端側から噴出しながら前進し、コアドリル19a、13bの先端どうしの離間距離が、予め設定した値、例えば0.5mm(離間距離t1)になるまで接近する。次いで、図7bに示すように、内側(内壁面側R)加工用のコアドリル13bは、10mm程後退して被加工部34の近傍(内側近接位置)に停止する。
【0049】
次に、外側加工用のコアドリル19aが、さらに1〜1.5mm前進(ドリルの最先端部は、被加工部34の肉厚内に留まる)して、図7cに示すように、貫通孔33を完成させ(図4参照)、さらに設定値にしたがって面取り量(例えば、C面幅0.5mm)に相当する分前進して貫通孔33の外側の開口端に面取りが行われる。この際、停止している内側加工用のコアドリル13bの供給流路(ドリルコア)53bの先端部から3MPaの圧力で切削水51bを噴出させ、穿孔後の貫通孔33の内面及び面取り部3aへ切削水51bを供給する。最後に、図7cに示すように、各コアドリル19a、13bが初期位置まで後退して、切削加工が終了となる。
【0050】
このように、実施例2によれば、反射鏡3の内外両面から同時に穿孔が行われるので、チッピングの発生を抑えることができるとともに、直線的な貫通孔33を効率的にしかも精度良く形成することができ、さらには、貫通孔33の穿孔のみを行う実施例1と同等の加工時間で面取りを行うことができる。
【0051】
(実施例3)
実施例3は、貫通孔33が穿孔された後、貫通孔33の内側の開口端に面取りを行う穿孔方法である。この実施例3では、実施例2の外側加工用のドリルと内側加工用のドリルとのそれぞれを逆側に配置した構成に類似するものとなる。すなわち、内側加工用のコアドリルは、該ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部34に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部と、この円筒部の最基端部から該ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部とを備えた刃部を有する。
【0052】
さらに、実施例3では、反射鏡3に貫通孔33を形成する工程が実施された後、外側加工用のドリルの円筒部の先端から切削液を噴出させつつ外側加工用のドリルを貫通孔の形成位置から後退させ、さらに外側加工用のドリルを貫通孔33の外側の開口部に近接する外側近接位置に待機させる工程と、外側加工用のドリルが切削液を噴出しつつ外側近接位置に待機している状態で、内側加工用のドリルを反射鏡3側に前進させて内側加工用のドリルのテーパ部によって貫通孔33の内側の開口部に面取りを行う工程と実施するものである。
【0053】
(実施例4)
実施例4は、図8に示すように、貫通孔33の内外の各開口端にそれぞれ面取りを行う穿孔方法である。この実施例4では、穿孔装置1に設けられていた外側加工用のコアドリル13a及び内側加工用のコアドリル13bに代えて、図8に示すように、外側(外壁面側F)加工用のコアドリル19a及び内側(内壁面側R)加工用のコアドリル19bが適用される。
【0054】
一対のコアドリル19a、19bは、当該各ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部34に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部57a、57bと、この円筒部57a、57bの最基端部から各ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部56a、56bとを備えた刃部54a、54bをそれぞれ有する。また、予め操作盤17により、貫通孔33の内外の各開口端に面取りを行なう制御プログラムを設定しておく。
【0055】
実施例4では、まず、反射鏡3を反射鏡固定治具20にセットした後、一対のコアドリル19a、19bは、被加工部34の表面から0.7〜1.5mm内部側に高速前進し、その後、2.5MPaの圧力で切削水をドリルの先端側から噴出しながら前進し、コアドリル19a、19bの先端どうしの離間距離が、予め設定した値、例えば0.6mmになるまで接近する。次いで、内側加工用のコアドリル19bは、10mm程後退して被加工部34の近傍(内側近接位置)に停止する。
【0056】
次に、外側加工用のコアドリル19aがさらに1〜1.5mm前進(ドリルの最先端部は、被加工部34の肉厚内に留まる)して貫通孔33を完成させ(図4参照)、さらに設定値にしたがって面取り量(例えば、C面幅0.5mm)に相当する分前進して貫通孔33の外側の開口端に面取りが行われる。この際、停止している内側加工用のコアドリル19bの供給流路(ドリルコア)55bの先端部から3MPaの圧力で切削水51bを噴出させ、穿孔後の貫通孔33の内面及び面取り部へ切削水51bを供給する。
【0057】
さらに、実施例4では、外側加工用のコアドリル19aのテーパ部56aによって貫通孔33の外側の開口端に面取りを行う工程が実施された後、外側加工用のコアドリル19aの円筒部の先端から切削液51aを噴出させつつコアドリル19aを貫通孔33の形成位置から後退させ、さらにコアドリル19aを貫通孔33の外側の開口端に近接する近接位置に待機させる工程と、外側加工用のコアドリル19aが切削液を噴出しつつ貫通孔33の外側の開口端に近接する近接位置に待機している状態で、内側加工用のコアドリル19bを反射鏡3側に前進させてコアドリル19bのテーパ部56bによって貫通孔の内側の開口端に面取りを行う工程とが実施される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記実施の形態においては、ガラス製の反射鏡への穿孔事例を説明したが、本発明は、これに限ることなく、セラミックスなどの材料などが適用されている場合でも、曲面部分への孔開け加工を精度よく行える。また、本発明によれば、ドリルの先端のブレが少なく被加工物の表面へのダメージも少ないため、さらに小径の孔開け加工にも利用でき、さらには曲面に限らず平面への応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る反射鏡の穿孔方法に使用される穿孔装置を概略的に示す正面図。
【図2】図1の穿孔装置のワーク加工部の構成を一部断面で示す図。
【図3】図2のワーク加工部を矢視A方向からみた矢視図。
【図4】加工対象となる反射鏡を示す断面図。
【図5】図1の穿孔装置に設けられた一対のコアドリルの構造を示す断面図。
【図6a】本発明の実施形態(実施例1)の穿孔方法に用いる一対のコアドリルが、反射鏡の被加工部を所定の間隔を空けて介在する位置に待機している状態を示す断面図。
【図6b】図6aの状態より、一対のコアドリルが反射鏡の内外両面より前進して行く過程を示す断面図。
【図6c】図6bの状態より、一対のコアドリルの前進が進行して、反射鏡の被加工部に所定の厚みが残る加工状態まで切削加工が施された状態を示す断面図。
【図6d】図6cの状態より、内側加工用のコアドリルが後退し、外側加工用のコアドリルがさらに前進した状態を示す断面図。
【図6e】図6bの状態を経て反射鏡に貫通孔が形成された後、外側加工用のコアドリルが反射鏡側から後退した状態を示す断面図。
【図7a】本発明の実施例2の穿孔方法に用いる一対のコアドリルが、反射鏡の内外両面から前進し、被加工部に所定の厚みが残る加工状態まで切削加工が施された状態を示す断面図。
【図7b】図7aの状態より、内側加工用のコアドリルが後退し、外側加工用のコアドリルがさらに前進した状態を示す断面図。
【図7c】図7bの状態を経て反射鏡に貫通孔が形成された後、外側加工用のコアドリルが反射鏡側から後退した状態を示す断面図。
【図8】本発明の実施例4の穿孔方法に用いる一対のコアドリルの構造を示す断面図。
【図9a】従来の反射鏡の穿孔方法において、反射鏡の内側から切削加工を施している状態を示す断面図。
【図9b】従来の反射鏡の穿孔方法において、反射鏡の外側から切削加工を施している状態を示す断面図。
【図9c】図9a、図9bの反射鏡に穿孔された貫通孔の形状を詳細に示す断面図。
【符号の説明】
【0060】
1…穿孔装置、3…反射鏡、3a…面取り部、5…ワーク加工部、7…制御盤、10…ドリルユニット、12a,12b…ドリルコレット、13a,19a…外側加工用のコアドリル、13b,19b…内側加工用のコアドリル、20…反射鏡固定治具、21…載置面、22…ストッパ、31…反射鏡の開口部、33…貫通孔、34…被加工部、51a,51b…切削水、52a,52b,54a,54b…刃部、53a,53b,55a,55b…供給流路、56a,56b…テーパ部、57a,57b…円筒部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ同軸上を進退自在に移動するよう対向配置され、椀形状の反射鏡を内外から切削加工する内側加工用と外側加工用とで一対のドリルの先端部どうしの間に、前記反射鏡の被加工部を介在させる工程と、
前記反射鏡の被加工部が前記先端部どうしの間に介在された前記一対のドリルをそれぞれ前進させて前記反射鏡の内外両側から前記被加工部の切削を開始する工程と、
前記被加工部の内外両側からの切削が進行し前記被加工部に所定の厚みが残る加工状態で、前記反射鏡側から前記内側加工用のドリルを後退させる工程と、
前記内側加工用のドリルを後退させた後、前記外側加工用のドリルをさらに前進させて前記反射鏡の被加工部に貫通孔を形成する工程と、
を有することを特徴とする反射鏡の穿孔方法。
【請求項2】
前記内側加工用のドリルは、前記被加工部に所定の厚みが残る最前進位置に到達した状態での該ドリルの長手方向において、前記反射鏡の縁部と該ドリルのチャッキング部とが所定の間隔を空けて離間する長さを有し、
さらに、前記内側加工用のドリルの回転数は、7000rpm以下に調整されることを特徴とする請求項1記載の反射鏡の穿孔方法。
【請求項3】
前記内側加工用のドリルの回転数は、500〜4000rpmに調整されることを特徴とする請求項2記載の反射鏡の穿孔方法。
【請求項4】
前記一対のドリルは、軸心部分を通って先端部に開口する切削液の供給流路を有し、この先端部から1.5〜5MPaの圧力で前記切削液を噴出させつつ切削加工を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の反射鏡の穿孔方法。
【請求項5】
前記一対のドリルは、各々の軸方向が水平方向に向く状態で対向設置され、
さらに、前記椀形状の反射鏡は、反射光を放出するための開口部が下向きとなる状態で且つ前記被加工部の接平面が鉛直方向に沿った方向になるように前記一対のドリルの先端部どうしの間に前記被加工部を介在させる状態で設置され、
この設置状態で切削加工が行われることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の反射鏡の穿孔方法。
【請求項6】
前記外側加工用のドリルは、該ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部と、この円筒部の最基端部から該ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部とを備えた刃部を有し、
前記内側加工用のドリルを後退させる工程では、前記内側加工用のドリルの前記円筒部の先端から前記切削液を噴出させつつ前記被加工部から後退させた前記内側加工用のドリルを前記被加工部の内側に近接する内側近接位置に待機させ、
前記貫通孔を形成する工程では、前記内側加工用のドリルが前記切削液を噴出しつつ前記内側近接位置に待機している状態で、前記外側加工用のドリルによって貫通孔を穿孔しつつ該ドリルの前記テーパ部によって前記貫通孔の外側の開口部に面取りを行うことを特徴とする請求項4又は5記載の反射鏡の穿孔方法。
【請求項7】
前記内側加工用のドリルは、該ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部と、この円筒部の最基端部から該ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部とを備えた刃部を有し、
前記貫通孔を形成する工程が実施された後、前記外側加工用のドリルの前記円筒部の先端から前記切削液を噴出させつつ前記外側加工用のドリルを前記貫通孔の形成位置から後退させ、さらに前記外側加工用のドリルを前記貫通孔の外側の開口部に近接する外側近接位置に待機させる工程と、
前記外側加工用のドリルが前記切削液を噴出しつつ前記外側近接位置に待機している状態で、前記内側加工用のドリルを前記反射鏡側に前進させて前記内側加工用のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の内側の開口部に面取りを行う工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項4又は5記載の反射鏡の穿孔方法。
【請求項8】
前記一対のドリルは、当該各ドリルの最先端部から基端部側に延び且つ前記反射鏡の被加工部に穿孔すべき前記貫通孔の長さより短い長さで形成された円筒部と、この円筒部の最基端部から前記各ドリルの基端部方向に向かって膨径するテーパ部とを備えた刃部をそれぞれ有し、
前記内側加工用のドリルを後退させる工程に代えて、
前記被加工部の内外両側からの切削が進行し前記被加工部に所定の厚みが残る加工状態で、内側加工用若しくは外側加工用のいずれか一方のドリルの前記円筒部の先端から前記切削液を噴出させつつ前記一方のドリルを前記被加工部から後退させ、さらに前記一方のドリルを前記被加工部の内側若しくは外側に近接する内側/外側近接位置に待機させる工程を実施し、
前記貫通孔を形成する工程に代えて、
前記一方のドリルが前記切削液を噴出しつつ前記内側/外側近接位置に待機している状態で、前記他方のドリルをさらに前進させて貫通孔を穿孔しつつ該他方のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の他方の開口部に面取りを行う工程を実施し、
さらに、前記他方のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の他方の開口部に面取りを行う工程が実施された後、前記他方のドリルの円筒部の先端から切削液を噴出させつつ前記他方のドリルを前記貫通孔の形成位置から後退させ、さらに前記他方のドリルを前記貫通孔の他方の開口部に近接する近接位置に待機させる工程と、
前記他方のドリルが切削液を噴出しつつ前記貫通孔の他方の開口部に近接する近接位置に待機している状態で、前記一方のドリルを前記反射鏡側に前進させて前記一方のドリルのテーパ部によって前記貫通孔の一方の開口部に面取りを行う工程と、
を有することを特徴とする請求項4又は5記載の反射鏡の穿孔方法。
【請求項9】
前記他方のドリルは、前記外側加工用のドリルであって、前記一方のドリルは、前記内側加工用のドリルであることを特徴とする請求項8記載の反射鏡の穿孔方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【公開番号】特開2007−7777(P2007−7777A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191734(P2005−191734)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000158208)旭テクノグラス株式会社 (81)
【Fターム(参考)】