説明

反射防止フィルム、反射防止フィルムの製造方法、偏光板、それを用いた画像表示装置

【課題】十分な反射防止性能を有しながら、耐擦傷性をより向上した反射防止フィルムの製造方法及び、該方法により得られる反射防止フィルム、さらに、そのような反射防止フィルムを具備した偏光板及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムであって、支持体上に積層された層の少なくとも一層が、下記一般式(1)で表される構造を有する電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤とを含有する組成物を、電離放射線照射によって硬化させてなる層であることを特徴とする反射防止フィルム。 一般式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反射率でありながら耐擦傷性がより向上した反射防止フィルム及びその製造方法に関し、特に液晶表示装置などの画像表示装置に用いられる反射防止フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、背景の映り込みを防止し、視認性を向上するために反射防止フィルムが用いられている。
【0003】
反射防止フィルムは、反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する様にディスプレイの最表面に配置される。そのため、傷がつく確率が高く、優れた耐擦性を付与することが重要な課題であった。
【0004】
このような反射防止フィルムは、最表面に適切な膜厚の低屈折率層、場合により支持体(基材)との間に適宜高屈折率層、中屈折率層、ハードコート層などを形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、及び下層への密着性が必要である。
【0005】
材料の屈折率を下げるには、フッ素原子を導入する、密度を下げる(空隙を導入する)という手段があるがいずれも皮膜強度及び密着性が損なわれ耐擦傷性が低下する方向であり、低い屈折率と高い耐傷性の両立は困難な課題であった。
【0006】
特許文献1〜3には、含フッ素ポリマー中にポリシロキサン構造を導入することにより皮膜表面の摩擦係数を下げ、耐傷性を改良する手段が記載されている。該手段は耐傷性改良に対してある程度有効であるが、本質的な皮膜強度及び界面密着性が不足している皮膜に対して該手法のみでは十分な耐傷性が得られなかった。
【0007】
通常、光ラジカル重合系は高感度であるが、空気中の酸素による重合阻害により大きく低感度化する。そのため、特許文献4などには低酸素濃度で光硬化樹脂を硬化させることで硬度があがることが記載されている。しかしながら反射防止フィルムをウェッブで効率よく製造するためには、窒素置換できる濃度に限界があり、満足する硬度を得ることができなかった。
【0008】
また特許文献5〜10には、窒素置換するための具体的な手段が記載されているが、低屈折率層のような薄膜を十分に硬化するまでに酸素濃度を下げるためには、多量の窒素が必要であり、製造コストが上がってしまうという問題があった。
【0009】
このように、従来の技術では十分に満足できる結果は得られておらず、従来にはない新たな技術が求められていた。
【0010】
従来から、最も一般的なラジカル重合性の化合物として、重合性が高いアクリル酸エステル基、アクリル酸アミド基、メタクリル酸エステル基、メタクリル酸アミド基等を有す
るモノマー、オリゴマー、ポリマーなどが利用されてきたが、これらのものでは、酸素による重合阻害を受けるため、光重合性組成物に用いたときには、上記のように低酸素濃度で光硬化樹脂を硬化させるしかなかった。
【0011】
一方、特許文献11には、熱ロール表面に巻きつけて電離放射線を照射する方法が記載されているが、これも低屈折率層のような特殊な薄膜を十分に硬化するまでに硬化するには不十分であった。
【特許文献1】特開平11−189621号公報
【特許文献2】特開平11−228631号公報
【特許文献3】特開2000−313709号公報
【特許文献4】特開2002−156508号公報
【特許文献5】特開平11−268240号公報
【特許文献6】特開昭60−90762号公報
【特許文献7】特開昭59−112870号公報
【特許文献8】特開平4−301456号公報
【特許文献9】特開平3−67697号公報
【特許文献10】特開2003−300215号公報
【特許文献11】特公平7−51641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性をより向上した反射防止フィルム及び該反射防止フィルムの製造方法を提供することである。
特に本発明では、そのような反射防止フィルムの安価な製造方法を提供することを目的とする。
本発明の更なる目的は、そのような反射防止フィルムを具備した偏光板及び画像表示装置を提供することにある。
【0013】
ポリマーの構成成分として、アクリル系に匹敵する重合性をもつ基としては、α−ヘテロ置換メチルアクリル基やα−ハロゲン置換メチルアクリル基を有する化合物(モノマー)が知られている。これらの化合物は、同じα位に置換基を有する重合性の低いイタコン酸基やα−アルキルアクリル基などとは違い、α位に置換されたヘテロ原子又はハロゲン原子の電子的効果及び立体的効果により、ポリマーの構成成分としての重合性が向上すると言われている。
【0014】
本発明者は、α位にヘテロ原子又はハロゲン原子が置換した重合性基を含む構造を含有する化合物を、光重合開始剤と共に光重合性組成物として用いることにより、従来のラジカル重合性化合物が有する課題、すなわち上述の酸素の重合阻害の影響を大幅に低減でき、安価な製造方法で十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性をより向上した反射防止フィルムを製造できるということを見出した。
【0015】
酸素の重合阻害の影響を低減する機構は明確ではないが、本発明における一般式(1)で表される構造を有する化合物は、そのα−位の置換基効果により、従来のアクリル系やメタクリル系と比較して、重合成長速度定数はあまり高くはないが、停止速度定数が極端に小さいため、連鎖成長時に酸素と反応しにくく、結果として酸素の重合阻害の影響を受けにくくなったのではないかと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、鋭意検討の結果、以下の成分より構成された反射防止フィルム、及びその製造方法より本発明の上記目的が達成されることを見出した。
[1]支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムであって、支持体上に積層された層の少なくとも一層が、下記一般式(1)で表される構造を有する電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤を含有する組成物を電離放射線照射によって硬化させてなる層であることを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):
【0017】
【化1】

【0018】
〔式中、X11とX12は、それぞれ独立して、ヘテロ原子又はハロゲン原子を表す。R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表す。ここで、X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とは互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【0019】
[2]反射防止層が低屈折率層を有し、該低屈折率層が含フッ素ポリマーを含有する塗布液によって形成されたものである上記[1]に記載の反射防止フィルム。
[3]低屈折率層が中空シリカ微粒子を含有する上記[1]又は[2]に記載の反射防止フィルム。
【0020】
[4]支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムの製造方法であって、下記工程(1)及び(2)によって、支持体上に積層される層の少なくとも1層が形成されることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
(1)連続的に走行する、支持体を含むウェッブ上に、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤を含む塗布液を塗布・乾燥して、塗布層を形成する工程、
(2)上記ウェッブ上の塗布層に、酸素濃度20体積%以下の雰囲気下で25℃以上の温度に加熱しながら電離放射線を0.5秒以上照射することにより、塗布層を硬化する工程。
一般式(1):
【0021】
【化2】

【0022】
〔式中、X11とX12は、それぞれ独立して、ヘテロ原子又はハロゲン原子を表す。R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表す。ここで、X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とは互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【0023】
[5]上記[4]の工程(1)が、バックアップロールによって支持されて連続走行する、支持体を含むウェッブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、該
先端リップのスロットから塗布液を塗布する工程であって、該塗布が、該スロットダイのウェッブ進行方向側の先端リップのウェッブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であり、且つ該スロットダイを塗布位置にセットしたときに、該ウェッブの進行方向とは逆側の先端リップとウェッブの隙間を、該ウェッブ進行方向側の先端リップとウェッブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて実施される上記[4]に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0024】
[6]塗布液の塗布時における粘度が2.0mPa・sec以下であり、ウェッブの表面に塗り付けられる該塗布液の量が2.0〜5.0mL/mである上記[5]に記載の反射防止フィルムの製造方法。
[7]塗布液をウェッブの表面に、25m/分以上の速度で塗設する上記[5]又は[6]に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0025】
[8]上記[4]〜[7]のいずれかに記載の製造方法によって製造された反射防止フィルム。
[9]反射防止フィルムが低屈折率層を有し、該低屈折率層が、上記[4]〜[7]のいずれかに記載の製造方法により、塗布され、乾燥され、硬化されたものである反射防止フィルム。
【0026】
[10]上記[1]〜[3]、[8]及び[9]のいずれかに記載の反射防止フィルムが、偏光板における2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
【0027】
[11]上記[1]〜[3]、[8]及び[9]のいずれかに記載の反射防止フィルム、又は上記[10]に記載の偏光板が、ディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0028】
本発明の化合物を用いることにより、安価な製造方法で十分な反射防止性能を有しながら、耐擦傷性をより向上した反射防止フィルムを製造できる。また本発明により製造された反射防止フィルム又は偏光板を備えた画像表示装置は、外光の映り込みや背景の映りこみが少なく、極めて視認性が高い特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
【0030】
<反射防止フィルム>
〔反射防止フィルムの層構成〕
本発明の反射防止フィルムは、透明な基材(以後、基材フィルムと称することもある)上に、必要に応じて、後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数及び層順等を考慮して積層された反射防止層を有する。
【0031】
反射防止層の最も単純な構成は、基材上に低屈折率層のみを塗設したものである。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材又はハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高
屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。
【0032】
また、本発明の反射防止フィルムは防眩性層や帯電防止層等の機能性層を有していてもよい。
【0033】
本発明の反射防止フィルムの好ましい構成の例を下記に示す。
基材フィルム/低屈折率層、
基材フィルム/防眩層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層。
【0034】
本発明の反射防止フィルムは、光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子又は金属酸化物微粒子(例えば、SnO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布又は大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
【0035】
〔電離放射線硬化性化合物〕
本発明の反射防止フィルムは、支持体上に積層された層の少なくとも一層が、下記一般式(1)で表される構造を有する電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤を含有する組成物を電離放射線照射によって硬化させてなる層から形成される。
一般式(1):
【0036】
【化3】

【0037】
〔式中、X11とX12は、それぞれ独立して、ヘテロ原子又はハロゲン原子を表す。R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表す。ここで、X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とは互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【0038】
[一般式(1)の構造を有する化合物]
本発明における上記の電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤を含有する組成物(以下
、光重合性組成物ともいう)は、上記一般式(1)で表される構造を有する化合物を必須成分の1つとして含有する。
【0039】
最初に、一般式(1)で表される構造を有する化合物について、以下に詳細に説明する。
【0040】
一般式(1)で示される構造は、1価又は2価以上の置換基となっていてもよいし、一般式(1)におけるR11、R12、X11、X12が全て末端基を表して、それ自身で1つの化合物となっていてもよい。一般式(1)で示される構造が1価又は2価以上の置換基となっている場合には、一般式(1)におけるR11、R12、X11、X12のうち少なくとも1つが、1本以上の結合手を持っている。更に、X11、X12がn個の連結可能な部位を有する連結基となって、その末端に一般式(1)で示される基をn個連結していてもよい(nは2以上の整数)(多量体)。
【0041】
更に、X11、X12のうち少なくとも1つで、重合体鎖に結合していてもよい。すなわち、重合体鎖の側鎖として一般式(1)で表される構造が付加する形態をとっていてもよい。ここで、重合体鎖としては後述の線状有機高分子重合体が挙げられる。具体的には、ポリウレタン、ノボラック、ポリビニルアルコール等のようなビニル系重合体、ポリヒドロシスチレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸アミド、ポリアセタール等が挙げられる。これら重合体はホモポリマーでも、コポリマー(共重合体)でもよい。
【0042】
上記一般式(1)において、X11とX12は、ヘテロ原子又はハロゲン原子を表すが、それらが末端基になってもよいし、また連結基となり、他の置換基{ここで、置換基としては、上述の如く一般式(1)の構造や重合体鎖も含む}に連結されてもよい。ヘテロ原子としては、好ましくは非金属原子であり、具体的には酸素原子、イオウ原子、窒素原子、リン原子が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0043】
11として好ましくは、ハロゲン原子又は、X11が連結基となり、そこに他の置換基が連結されている基として、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、スルホ基、スルホナト基、置換スルフィニル基、置換スルホニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、ニトロ基、ヘテロ環基(但し、ヘテロ原子で連結している)を表す。
【0044】
12として好ましくは、ハロゲン原子又は、X12が連結基となり、そこに他の置換基が連結されている基として、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、アミノ基、置換アミノ基、ヘテロ環基(但し、ヘテロ原子で連結している)を表す。
【0045】
11又はX12が連結基となり、そこに他の置換基が連結されている基となる場合において、それらの基からn個の水素を除いて、n個の連結可能な部位を有する連結基となり、その末端に一般式(1)の基をn個連結していてもよい(nは2以上の整数)。またX11とX12が互いに結合し環状構造を形成していてもよい。
【0046】
11とR12は、それぞれ独立して、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、又は有機残基として置換基を有していてもよく、且つ不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基、置換オキシ基、置換チオ基、置換アミノ基、置換カルボニル基、カルボキシラート基を表し、またR11とR12は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0047】
次に、前記一般式(1)におけるX11、X12、R11、R11における上述の各置換基の具体例を示す。上記の、置換基を有していてもよく、且つ不飽和結合を含んでいてもよい炭化水素基としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基及び置換アルキニル基が挙げられる。
【0048】
上記アルキル基としては、炭素原子数が1〜20までの直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1〜12までの直鎖状、炭素原子数3〜12までの分岐状、及び炭素原子数5〜10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0049】
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリールオキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリールオキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基(以下、カルボキシラートと称す)、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基{−SONHSO(アルキル)}及びその共役塩基基
、N−アリールスルホニルスルファモイル基{−SONHSO(アリール)}及びその共役塩基基、
【0050】
N−アルキルスルホニルカルバモイル基{−CONHSO(アルキル)}及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基{−CONHSO(アリール)}及びその共役塩基基、アルコキシシリル基{−Si(O−アルキル)}、アリールオキシシリル基{−Si(O−アリール)}、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基{−PO(アルキル)}、ジアリールホスホノ基{−PO(アリール)}、アルキルアリールホスホノ基{−PO(アルキル)(アリール)}、モノアルキルホスホノ基{−POH(アルキル)}及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基{−POH(アリール)}及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基{−OPO(アルキル)}、ジアリールホスホノオキシ基{−OPO(アリール)}、アルキルアリールホスホノオキシ基{−OPO(アルキル)(アリール)}、モノアルキルホスホノオキシ基{−OPOH(アルキル)}及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基{−OPOH(アリール)}及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0051】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基があげられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基などをあげることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基、等があげられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基、フェニルエチニル基等が挙げられる。
【0052】
上述のアシル基(R104CO−)としては、R104が水素原子及び上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基をあげることができる。一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものをあげることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基をあげることができる。好ましい置換アルキル基の具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキソエチル基、2−オキソプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルブチル基、エトキ
シカルボニルメチル基、ブトキシカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルフェニルメチル基、トリクロロメチルカルボニルメチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホプロピル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルオクチル基、
【0053】
【化4】

【0054】
ホスホノブチル基、ホスホナトヘキシル基、ジエチルホスホノブチル基、ジフェニルホスホノプロピル基、メチルホスホノブチル基、メチルホスホナトブチル基、トリルホスホノヘキシル基、トリルホスホナトヘキシル基、ホスホノオキシプロピル基、ホスホナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0055】
前記アリール基としては、1〜3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものをあげることができ、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、これらの中では、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0056】
置換アリール基は、置換基がアリール基に結合したものであり、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。これらの置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ア
リルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスホノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスホノフェニル基、ホスホナトフェニル基、ジエチルホスホノフェニル基、ジフェニルホスホノフェニル基、メチルホスホノフェニル基、メチルホスホナトフェニル基、トリルホスホノフェニル基、トリルホスホナトフェニル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基等を挙げることができる。
【0057】
前記アルケニル基としては、上述のものを挙げることができる。置換アルケニル基の置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方アルケニル基は上述のアルケニル基を用いることができる。好ましい置換アルケニル基の例としては、
【0058】
【化5】

【0059】
等をあげることができる。前記アルキニル基としては、上述のものを挙げることができる。置換アルキニル基の置換基としては、上述の置換アルキル基における置換基が用いられ、一方アルキニル基は上述のアルキニル基を用いることができる。
【0060】
前記ヘテロ環基とは、ヘテロ環上の水素を1つ除した一価の基及び、この一価の基からさらに水素を1つ除し、上述の置換アルキル基における置換基が結合してできた一価の基(置換ヘテロ環基)である。好ましいヘテロ環の例としては、
【0061】
【化6】

【0062】
【化7】

【0063】
等を挙げることができる。
【0064】
置換オキシ基(R105O−)としては、R105が水素を除く一価の非金属原子団であるものを用いることができる。好ましい置換オキシ基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ基をあげることができる。これらにおけるアルキル基、ならびにアリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに、アリール基、置換アリール基として示したものをあげることができる。また、アシルオキシ基におけるアシル基(R106CO−)としては、R106が、前述のアルキル基、置換アルキル基、アリール基ならびに置換アリール基のものをあげることができる。これらの置換基の中では、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アリールスルホキシ基、がより好ましい。好ましい置換オキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、アリルオキシ基、フェネチルオキシ基、カルボキシエチルオキシ基、メトキシカルボニルエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、モルホリノエトキシ基、モルホリノプロピルオキシ基、アリルオキシエトキシエトキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフチルオキシ基、フェニルスルホニルオキシ基、ホスホノオキシ基、ホスホナトオキシ等が挙げられる。
【0065】
置換チオ基(R107S−)としてはR107が水素を除く一価の非金属原子団のものを使用できる。好ましい置換チオ基の例としては、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アシルチオ基をあげることができる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものをあげることができ、アシルチオ基におけるアシル基(R106CO−)のR106は前述のとおりである。これらの中ではアルキルチオ基、ならびにアリールチオ基がより好ましい。好ましい置換チオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、エトキシエチルチオ基、カルボキシエチルチオ基、メトキシカルボニルチオ基等が挙げられる。
【0066】
置換アミノ基{R108NH−,(R109)(R110)N−}としては、R108,R109,R110が水素を除く一価の非金属原子団のものを使用できる。置換アミノ基の好ましい例としては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリールオキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリールオキシカルボニルアミノ基が挙げられる。
【0067】
これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものをあげることができ、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基におけるアシル基(R106CO−)のR106は前述のとおりである。これらの内、より好ましいものとしては、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、アシルアミノ基、が挙げられる。好ましい置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、フェニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アセチルアミノ基等が挙げられる。
【0068】
置換カルボニル基(R111−CO−)としては、R111が一価の非金属原子団のものを使用できる。置換カルボニル基の好ましい例としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものをあげることができる。これらの内、より好ましい置換カルボニル基としては、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、があげられ、更により好ましいものとしては、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基ならびにアリールオキシカルボニル基が挙げられる。好ましい置換カルボニル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、カルボキシル
基、メトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、N−メチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基等が挙げられる。
【0069】
置換スルフィニル基(R112−SO−)としてはR112が一価の非金属原子団のものを使用できる。好ましい例としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基が挙げられる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものをあげることができる。これらの内、より好ましい例としてはアルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、が挙げられる。このような置換スルフィニル基の具体例としては、へキシルスルフィニル基、ベンジルスルフィニル基、トリルスルフィニル基等が挙げられる。
【0070】
置換スルホニル基(R113−SO−)としては、R113が一価の非金属原子団のものを使用できる。より好ましい例としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基をあげることができる。これらにおけるアルキル基、アリール基としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびにアリール基、置換アリール基として示したものをあげることができる。このような、置換スルホニル基の具体例としては、ブチルスルホニル基、クロロフェニルスルホニル基等が挙げられる。
【0071】
前記スルホナト基(−SO)は前述のとおり、スルホ基(−SOH)の共役塩基陰イオン基を意味し、通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na、K、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0072】
前記カルボキシラート基(−CO)は前述のとおり、カルボキシル基(COH)の共役塩基陰イオン基を意味し、通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na、K、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0073】
置換ホスホノ基とはホスホノ基上の水酸基の一つもしくは二つが他の有機オキソ基によって置換されたものを意味し、好ましい例としては、前述のジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、アルキルアリールホスホノ基、モノアルキルホスホノ基、モノアリールホスホノ基が挙げられる。これらの中ではジアルキルホスホノ基、ならびにジアリールホスホノ基がより好ましい。このような具体例としては、ジエチルホスホノ基、ジブチルホスホノ基、ジフェニルホスホノ基等が挙げられる。
【0074】
前記ホスホナト基(−PO2−、−PO)とは前述のとおり、ホスホノ基(−PO)の、酸第一解離もしくは、酸第二解離に由来する共役塩基陰イオン基を意味する。通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類:アジニウム類等)、ならびに金属イオン類(Na、K、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0075】
置換ホスホナト基とは前述の置換ホスホノ基の内、水酸基を一つ有機オキソ基に置換したものの共役塩基陰イオン基であり、具体例としては、前述のモノアルキルホスホノ基{
−POH(アルキル)}、モノアリールホスホノ基{−POH(アリール)}の共役塩基をあげることができる。通常は対陽イオンと共に使用されるのが好ましい。このような対陽イオンとしては、一般に知られるもの、すなわち、種々のオニウム類(アンモニウム類、スルホニウム類、ホスホニウム類、ヨードニウム類、アジニウム類、等)、ならびに金属イオン類(Na、K、Ca2+、Zn2+等)が挙げられる。
【0076】
次に、X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とが互いに結合して形成する環状構造の例を示す。X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とが互いに結合して形成する脂肪族環としては、5員環、6員環、7員環及び8員環の脂肪族環をあげることができ、より好ましくは、5員環、6員環の脂肪族環をあげることができる。これらは更に、これらを構成する炭素原子上に置換基を有していてもよく(置換基の例としては、前述の置換アルキル基上の置換基をあげることができる)、また、環構成炭素の一部が、ヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子、窒素原子等)で置換されていてもよい。また更に、この脂肪族環の一部が芳香族環の一部を形成していてもよい。次に一般式(1)で示される構造を有する化合物の具体例を示す。
【0077】
i)単官能型
(A群)
一般式(1−1):
【0078】
【化8】

【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】


【0082】
【表4】

【0083】
(B群)
【0084】
【化9】

【0085】
ii)二官能型
(C群)
一般式(1−2):
【0086】
【化10】

【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
【表7】

【0090】
(D群)
一般式(1−3):
【0091】
【化11】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
iii)多官能型(三官能以上)
(E群)
一般式(1−4):
【0096】
【化12】

【0097】
【表11】

【0098】
【表12】

【0099】
【表13】

【0100】
(F群)
一般式(1−5):
【0101】
【化13】

【0102】
【表14】

【0103】
【表15】

【0104】
iv)高分子型
(G群)
【0105】
【化14】

【0106】
【化15】

【0107】
【化16】

【0108】
【化17】

【0109】
【化18】


【0110】
V)その他
(H群)
【0111】
【化19】

【0112】
(J群)
【0113】
【化20】

【0114】
【化21】

【0115】
本発明で用いられる化合物としては、最も好ましくは分子内に一般式(1)で示される構造を2個以上有する多官能型(2官能以上と高分子型)のもの、又は、分子内に一般式(1)で示される構造と他のラジカル重合性の基を併せ持ち、実質的に光重合において多官能の寄与をするものである。
【0116】
本発明で用いられる光重合性組成物では、ラジカル重合可能な化合物として、上記の一般式(1)で示される構造を有する化合物単独もしくはそれらの2種以上の混合物、又は以下に述べる従来公知のラジカル重合可能な化合物との混合物が使用される。
【0117】
一般式(1)で示される構造を有する化合物を含む全ての重合性基含有化合物の使用量は、光重合性組成物の全成分の質量に対して、通常1〜99.99質量%、好ましくは5〜90.0質量%、更に好ましくは10〜70質量%の量が使用される。但し、全重合性基含有化合物中に含有される本発明で必須の一般式(1)で示される構造を有する化合物の含有量は、0.005〜100質量%、好ましくは1%〜100質量%、更に好ましくは、30〜100質量%であり、この含有量が0.005より少ないと本発明の効果が発揮できない場合がある。
【0118】
〔ラジカル重合開始剤〕
ラジカル重合開始剤としては、以下の光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤等を使用することができる。
【0119】
[光ラジカル重合開始剤]
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号公報等に記載のもの)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、活性ハロゲン化合物などが挙げられる。
【0120】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルホリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
【0121】
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0122】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。
【0123】
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
【0124】
活性エステル類の例には、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。具体的には特開2000−80068号公報の実施例記載化合物1〜21が特に好ましい。
【0125】
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
【0126】
ホウ酸塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martinらの“Rad Tech’98. Proceeding April”,19〜22頁(1998年,Chicago)等に記載される有機ホウ酸塩化合物があげられ、例えば、特開2002−116539号公報の段落番号[0022]〜[0027]に具体的に開示されている。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられ、具体例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
【0127】
更に、活性ハロゲン類としては、具体的には、若林等の“Bull.Chem.Soc.Japan”,42巻、2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号公報、M.P.Huttの“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”,1巻(3号),(1970年)等に記載
の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。具体的には特開昭58−15503号公報のp14〜p30、特開昭55−77742号公報のp6〜p10、特公昭60−27673号公報のp287記載のNo.1〜No.8、特開昭60−239736号公報のp443〜p444のNo.1〜No.17、米国特許第4,701,399号明細書のNo.1〜19などの化合物が特に好ましい。活性ハロゲン化合物の例としては、下記の一般式(2)〜(5)で表わされる化合物でもよい。
一般式(2):
【0128】
【化22】

【0129】
一般式(2)において、X21はハロゲン原子を表す。Y21は−CX21、−NH、−NHR22、−NR22、−OR22を表す。ここでR22はアルキル基、アリール基を表す。またR21は、−CX21、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。
【0130】
本発明で用いられる一般式(2)で表される化合物としては、“Bull.Chem.Soc.Japan.”,42巻、2924頁(1969年)記載の化合物たとえば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジクロルフェニル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2、4、6−トリス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。また英国特許第1388492号明細書記載の化合物、例えば2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−s−トリアジン等を挙げることができる。また、“J.Org.Chem.”,29巻、1527頁(1964年)記載の化合物、例えば2−メチル−4,6−ビス(トリブロムメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロムメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロムメチル)−s−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−s−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−s−トリアジン等を挙げることができる。
【0131】
一般式(2)のうちY21が−OCX21である化合物を用いた場合が特に好ましい。X21として好ましくは、Cl、Br、F原子である。
【0132】
一般式(2)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0133】
【化23】

【0134】
【化24】

【0135】
【化25】

【0136】
一般式(3):
【0137】
【化26】

【0138】
一般式(3)において、A31はフェニル基、ナフチル基、置換フェニル基又は置換ナフチル基を表す。ここで置換基とはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基もしくはメチレンジオキシ基である。Y31はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を示す。
一般式(3)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0139】
【化27】

【0140】
一般式(4):
【0141】
【化28】

【0142】
一般式(4)において、W41は、無置換もしくは置換されたフェニル基又は無置換のナフチル基を表し、フェニル基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基の数はハロゲン原子のときは1つ又は2つであり、その他の場合は1つである。X41は水素原子、フェニル基又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。Y41はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を示す。
一般式(4)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0143】
【化29】

【0144】
一般式(5):
【0145】
【化30】

【0146】
一般式(5)において、A51は、無置換もしくは置換されたフェニル基又は無置換のナフチル基を表し、フェニル基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基の数はハロゲン原子のときは1つ又は2つであり、その他の場合は1つである。X51は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリル基を表す。Y51はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を示す。
一般式(5)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0147】
【化31】

【0148】
無機錯体の例には、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウムが挙げられる。クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。これらの開始剤は単独でも混合して用いてもよい。
【0149】
「最新UV硬化技術」、P.159{発行人;高薄一弘、発行所;(株)技術情報協会、1991年発行}及び、「紫外線硬化システム」{加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148}にも種々の光ラジカル重合開始剤の例が記載されており本発明に有用である。
【0150】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア{651,184,819,907,1870(CGI403/Irg184=7/3混合開始剤),500,369,1173,2959,4265,4263など}」、“OXE01”等、日本化薬(株)製の“KAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)”、サートマー社製の“Esacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KTO46,KT37,KIP150,TZT)等”及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0151】
[熱ラジカル開始剤]
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
【0152】
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0153】
本発明において、ラジカル重合開始剤の使用量に特に制限はないが、後述の皮膜形成バ
インダー100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。またラジカル重合開始剤は1種でも複数種を使用してもよいし、他の光増感剤などと併用して使用してもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0154】
更にアジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わせて用いてもよい。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製の“KAYACURE(DMBI,EPA)”などが挙げられる。
【0155】
〔皮膜の硬化方法〕
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、下記(1)及び(2)の工程によって支持体上に積層される層の少なくとも一層を形成する工程を有することが好ましい。
【0156】
(1)連続的に走行する、支持体を含むウェッブ上に、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤を含む塗布液を塗布・乾燥して、塗布層を形成する工程、及び
(2)上記ウェッブ上の塗布層に、酸素濃度20体積%以下の雰囲気下で25℃以上の温度に加熱しながら電離放射線を0.5秒以上照射することにより、塗布層を硬化する工程。
一般式(1):
【0157】
【化32】

【0158】
〔式中、X11とX12は、それぞれ独立して、ヘテロ原子又はハロゲン原子を表す。R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表す。ここで、X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とは互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【0159】
上記のように本発明では、ウェッブ基材上に前記開始剤を含有する構成層のうち少なくとも一層を塗布・乾燥した後{工程(1)}、酸素濃度20体積%以下の雰囲気で電離放射線を照射し且つ電離放射線照射開始から0.5秒以上の間酸素濃度20体積%以下の雰囲気に維持する工程(2)によって硬化する。不活性ガスを電離放射線照射室に供給し、且つ照射室のウェッブ入り口側にやや吹き出す条件にすることで、ウェッブ搬送に伴う導搬エアーを排除し、反応室の酸素濃度を有効に下げることができると共に、酸素による硬化阻害の大きい極表面の実質の酸素濃度を効率よく低減することができる。照射室のウェッブ入り口側での不活性ガスの流れの方向は、照射室の給気、排気のバランスを調整することなどで制御できる。
【0160】
不活性ガスをウェッブ表面に直接吹き付けることも、導搬エアーを除去する方法として好ましく用いられる。特に最外層であり、且つ膜厚が薄い低屈折率層がこの方法で硬化されることが好ましい。
【0161】
また前記反応室の前に前室を設けて事前にウェッブ表面の酸素を排除することで、より硬化を効率よく進めることができる。また電離放射線反応室又は前室のウェッブ入口側を構成する側面は、不活性ガスを効率的に使用するために、ウェッブ表面とのギャップは0.2〜15mmが好ましく、より好ましくは、0.2〜10mmとするのがよく、0.2〜5mmとするのがもっとも好ましい。しかし、ウェッブを連続製造するには、ウェッブを接合して繋げていく必要があり、接合には接合テープなどで貼る方法が広く用いられている。このため、電離放射線反応室又は前室の入口面とウェッブのギャップをあまり狭くすると、接合テープなど接合部材が引っかかる問題が生じる。このためギャップを狭くするためには、電離放射線反応室又は前室の入口面の少なくとも一部を可動とし、接合部が入るときは接合厚み分ギャップを広げるのが好ましい。この実現のためには、電離放射線反応室又は前室の入口面を進行方向前後に可動にしておき、接合部が通過する際に前後に動いてギャップを広げるやり方や、電離放射線反応室又は前室の入口面をウェッブ面に対し、垂直方向に可動にし、接合部が通過する際に上下に動いてギャップを広げるやり方を取ることができる(実施例14、図7〜図10参照)。
【0162】
電離放射線を照射する時の雰囲気の酸素濃度は20体積%以下であることが必要で、15体積%以下であることが好ましく、10体積%以下であることがさらに好ましい。酸素濃度を極めて低い値まで低下させるときは、窒素などの不活性ガスを多量に使用することになるが、製造コストの観点から、本発明においてはそこまでの酸素濃度の低下を要しない。酸素濃度を低下させる手段としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の不活性気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0163】
本発明では、透明基材上に積層された少なくとも一層が、酸素濃度20体積%以下の雰囲気で電離放射線照射され、且つ電離放射線照射開始から0.5秒以上、酸素濃度20体積%以下の雰囲気に維持されている。0.7秒以上60秒以下が好ましく、0.7秒以上10秒以下がより好ましい。0.5秒以下では、硬化反応が完了することができず、十分な硬化を行うことができない。また長時間低酸素条件を維持することは、設備が大型化し、多量の不活性ガスが必要であり好ましくない。
【0164】
本発明では、透明基材上に積層された少なくとも一層を複数回の電離放射線により硬化することができる。この場合、少なくとも2回の電離放射線が酸素濃度20体積%を超えることのない連続した反応室で行われることが好ましい。複数回の電離放射線照射を同一の低酸素濃度の反応室で行うことにより、硬化に必要な反応時間を有効に確保することができる。特に高生産性のため製造速度をあげた場合には、硬化反応に必要な電離放射線のエネルギーを確保するために複数回の電離放射線照射が必要となり、硬化反応に必要な反応時間の確保とあわせ、上記の態様が有効である。
【0165】
本発明では、透明基材上に積層された少なくとも一層を膜面温度25℃以上に加熱し、酸素濃度20体積%以下の雰囲気で電離放射線を照射する工程によって硬化することが好ましい。また電離放射線照射と同時及び/又は連続して酸素濃度20体積%以下の雰囲気で加熱されることも好ましい。硬化反応が熱で加速され、物理強度、耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。加熱はフィルム面が25℃以上170℃以下で加熱されることが好ましい。膜面温度が25℃より低いと加熱を行う効果が少ない。一方、170℃以下であれば基材の変形などの問題が生じることがないので好ましい。更にこの好ましい温度は25℃〜100℃である。フィルム面とは硬化しようとする層の膜面温度を指す。またフィルムをこの温度範囲に保つ時間は、UV照射開始から0.1秒以上、300秒以下が好ましく、更に10秒以下が好ましい。フィルム面の温度を上記の温度範囲に保つ時間が0.1秒以上であれば、皮膜を形成する硬化性組成物の反応を促進することができ、一方、長すぎることがなければフィルムの光学性能が低下することはなく、また設備が大き
くなるなどの製造上の問題も生じない。
【0166】
加熱する方法に特に限定はないが、ロールを加熱してフィルムに接触させる方法、加熱した窒素を吹き付ける方法、遠赤外線又は赤外線の照射などが好ましい。特許2523574号公報に記載の、回転金属ロールに温水や蒸気・オイルなどの媒体を流して加熱する方法も利用できる。加熱の手段としては誘電加熱ロールなどを使用してもよい。
【0167】
本発明における電離放射線の種類は、特に限定されるものではなく、皮膜を形成する硬化性組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができる。本発明では紫外線による照射が好ましい。重合速度が早く設備をコンパクトにできる、選択できる化合物種が豊富で且つ低価格であることから紫外線硬化が好ましい。
【0168】
紫外線の場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等が利用できる。また電子線照射の場合は、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される50〜1000keVのエネルギーを有する電子線が用いられる。
【0169】
〔皮膜形成バインダー〕
本発明において、皮膜形成組成物の主たる皮膜形成バインダー成分として、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いることが、皮膜強度、塗布液の安定性、塗膜の生産性などの点で好ましい。
主たる皮膜形成バインダー成分とは、無機粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上100質量%以下を占めるものをいう。好ましくは、20質量%以上100質量%以下、更に好ましくは30質量%以上95%以下である。
【0170】
主たる皮膜形成バインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがより好ましい。更に、これらポリマーは架橋構造を有していることが好ましい。
【0171】
飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。さらに、高屈折率にする場合には、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0172】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0173】
なお本明細書においては、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリロイル又はメタクリロイル」を表す。
【0174】
更に、高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロイルオキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0175】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0176】
[光ラジカル重合開始剤]
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。
【0177】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルホリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
【0178】
ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
【0179】
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。
【0180】
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
【0181】
「最新UV硬化技術」,(株)技術情報協会,1991年,p.159にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0182】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア(651,184,907)」等が好ましい例として挙げられる。
【0183】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0184】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
【0185】
[熱ラジカル開始剤]
熱ラジカル開始剤としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用
いることができる。
【0186】
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド;無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等;アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等;ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0187】
本発明においては、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーを使用することもできる。多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。光酸発生剤及び熱酸発生剤としては、公知ものが使用できる。
【0188】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0189】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0190】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0191】
〔低屈折率層〕
[低屈折率層用材料]
低屈折率層は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位、及び側鎖にα−ヘテロアクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分とする共重合体の硬化皮膜によって形成されるのが好ましい。該共重合体由来の成分は、皮膜固形分の60質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、80質量%以上を占めることが特に好ましい。低屈折率化と皮膜硬度の両立の観点から多官能(メタ)アクリレート等の硬化剤も相溶性を損なわない範囲の添加量で好ましく用いられる。
また特開平11−228631号公報記載の化合物も好ましく使用される。
【0192】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。
【0193】
低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の硬度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0194】
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0195】
(低屈性率層に用いられる共重合体)
以下に、本発明の反射防止フィルムにおける低屈性率層に好ましく用いられる共重合体について説明する。
含フッ素ビニルモノマーとしては、前記一般式(1)の構造を有するフルオロオレフィン類(例えば、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、一般式(1)の構造の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類[例えば「ビスコート6FM」{商品名、大阪有機化学工業(株)製}や“R−2020”{商品名、ダイキン工業(株)製}等]、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはペルフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0196】
これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を高くすれば屈折率を下げることができるが、皮膜強度は低下する傾向にある。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
【0197】
本発明で用いられる共重合体は、側鎖に前記一般式(1)の構造を有する繰返し単位を必須の構成成分として有するのが好ましい。これらの一般式(1)の構造含有繰返し単位の組成比を高めれば皮膜強度は向上するが屈折率も高くなる。含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位の種類によっても異なるが、一般に、一般式(1)の構造含有繰返し単位は5〜90質量%を占めることが好ましく、30〜70質量%を占めることがより好ましく、40〜60質量%を占めることが特に好ましい。
【0198】
本発明に有用な共重合体では、上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位及び側鎖に一般式(1)の構造を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0199】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0200】
本発明においては、前記一般式(1)の構造を含む含フッ素ポリマーなら何れも利用で
きるが、例えば下記一般式(6)で記載される含フッ素ポリマーが好ましく用いられる。
一般式(6):
【0201】
【化33】

【0202】
上記一般式(6)中、L61は炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
【0203】
好ましい例としては、*−(CH−O−**、*−(CH−NH−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−**、−(CH−O−(CH−O−**、*−CONH−(CH−O−**、*−CHCH(OH)CH−O−**、*−CHCHOCONH(CH−O−**等が挙げられる。なお、*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**はα−ヘテロ置換アクリロイル基側の連結部位を表す。mは0又は1を表わす。
【0204】
一般式(6)中、A61は任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶媒への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一又は複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
【0205】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0206】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
【0207】
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい形態として、一般式(6−1)が挙げられる。
一般式(6−1):
【0208】
【化34】

【0209】
上記一般式(6−1)において、x,yは前記一般式(6)と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。m2は2≦m2≦10の整数を表し、2≦m2≦6であることが好ましく、2≦m2≦4であることが特に好ましい。B61は任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていてもよい。例としては、前記一般式(6)においてA61の例として説明したものが当てはまる。
【0210】
z1及びz2はそれぞれの繰返し単位のモル%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
【0211】
一般式(6)又は(6−1)で表される共重合体は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体にαヘテロアクリロイル基を導入することにより合成できる。
【0212】
(無機微粒子)
本発明の反射防止フィルムにおいて、低屈折率層に好ましく用いることのできる無機微粒子について説明する。
【0213】
無機微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。無機微粒子の塗設量が該下限値以上であれば、良好な耐擦傷性の改良効果を発揮することができ、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じない。
【0214】
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましく、例えば、シリカ又は中空シリカの微粒子が挙げられる。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。すなわち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
【0215】
シリカ微粒子の粒径が上記下限値以上であれば、優れた耐擦傷性の改良効果が発揮され、上記上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じない。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0216】
低屈折率層の屈折率を低下させるために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい。該中空のシリカ微粒子は屈折率が1.15〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.
17〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。
【0217】
中空粒子の空隙率αは、粒子内の空腔の半径をr、粒子外殻の半径をrとすると、下記数式(1)で表される。
数式(1):α(%)=(4πr/3)/(4πr/3)×100[=(r/r×100]
【0218】
中空粒子の空隙率αは、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から、中空粒子の屈折率は1.15以上であることが好ましい。
【0219】
中空シリカの製造方法は、例えば特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている。特に外殻の内部に空洞を有している粒子で、その外殻の細孔が閉塞されている粒子が特に好ましい。なお、これら中空シリカ粒子の屈折率は、特開2002−79616号公報に記載の方法で算出することができる。
【0220】
中空シリカの塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。中空シリカの塗設量が該下限値以上であれば、良好な低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が発揮され、該上限値以下であれば、低屈折率層表面に微細な凹凸ができて黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化するなどの不具合が生じない。
【0221】
中空シリカの平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。すなわち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、中空シリカの粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上100nm以下、更に好ましくは、40nm以上65nm以下である。シリカ微粒子の粒径が該下限値以上であれば、空腔部の割合が確保でき効果的に屈折率を低下させることができ、該上限値以下であれば低屈折率層表面に微細な凹凸ができて黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化するなどの不具合が生じない。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでもよく、また単分散粒子が好ましい。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題ない。
【0222】
また、中空シリカは粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いることができる。ここで、中空シリカの平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
【0223】
本発明において中空シリカの比表面積は、20〜300m/gが好ましく、更に好ましくは30〜120m/g、最も好ましくは40〜90m/gである。表面積は窒素を用いBET法で求めることができる。
【0224】
本発明においては、中空シリカと併用して、空腔のないシリカ粒子を用いることができる。空腔のないシリカの好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上100nm以下、最も好ましくは40nm以上80nm以下である。
【0225】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することもできる。小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシ
リカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
【0226】
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コスト及び保持剤効果の点で好ましい。
【0227】
シリカ微粒子は、分散液中もしくは塗布液中で、分散安定化を図るために、又はバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていてもよい。カップリング剤の使用が特に好ましい。
【0228】
カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例えば、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等)が好ましく用いられる。なかでも、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。
【0229】
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
【0230】
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。本発明に好ましく用いることのできる表面処理剤及び触媒の具体的化合物は、例えば、国際公開第04/017105号パンフレットに記載のオルガノシラン化合物及び触媒を挙げることができる。
【0231】
本発明においては、膜強度の向上の点から、オルガノシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物(ゾル)を添加することが好ましい。ゾルの好ましい添加量は、無機酸化物粒子の2〜200質量%が好ましく、5〜100質量%が更に好ましく、最も好ましくは、10〜50質量%である。
【0232】
(シリコーン系化合物)
本発明においては、防汚性向上の観点から、反射防止膜表面の表面自由エネルギーを下げることが好ましい。具体的には、含フッ素化合物やポリシロキサン構造を有するシリコーン系化合物を低屈折率層に使用することが好ましい。
【0233】
好ましいシリコーン系化合物の例としては、信越化学(株)製の“X−22−174DX”、“X−22−2426”、“X−22−164B”、“X22−164C”、“X−22−170DX”、“X−22−176D”、“X−22−1821”(以上商品名)、チッソ(株)製の“FM−0725”、“FM−7725”、“FM−4421”、“FM−5521”、“FM−6621”、“FM−1121”、Gelest製の“DMS−U22”、“RMS−033”、“RMS−083”、“UMS−182”、“DMS−H21”、“DMS−H31”、“HMS−301”、“FMS121”、“FMS123”、“FMS131”、“FMS141”、“FMS221”(以上商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0234】
上記含フッ素ポリマーの重合は、前述の光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0235】
従って、上記含フッ素ポリマー、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤、無機微粒子を含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して、低屈折率層を形成することができる。
【0236】
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性を有する。また、表面散乱及び内部散乱の、少なくともいずれかの散乱による光拡散性をフィルムに寄与する目的でも好ましく使用される。従って、ハードコート性を付与するための透光性樹脂、及び光拡散性を付与するための透光性粒子を含有することが好ましく、更に必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含有する。
【0237】
ハードコート層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。膜厚が上記範囲であれば、ハードコート性が十分付与され、しかもカールや脆性が悪化して加工適性が低下することもない。
【0238】
[透光性樹脂]
前記透光性樹脂は、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0239】
(飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマー)
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、前記一般式(1)で表される構造を有するモノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0240】
バインダーポリマーをより高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含む高屈折率モノマーを選択することもできる。
【0241】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等}、前記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼン及びその誘導体{例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等}、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えばメチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。これらモノマーは2種以上併用してもよい。
【0242】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロイルオキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上
併用してもよい。
【0243】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、前述の低屈折率層に含まれる重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0244】
従って、前記ハードコート層は、上述のエチレン性不飽和モノマー等の透光性樹脂形成用のモノマー、電離放射線又は熱によりラジカルを発生する開始剤、透光性粒子及び必要に応じて無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化させることにより形成することができる。
【0245】
電離放射線又は熱によりラジカルを発生する重合開始剤に加えて、前述の低屈折率層に含有してもよい光増感剤を用いてもよい。
【0246】
(ポリエーテルを主鎖として有するポリマー)
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
【0247】
従って、多官能エポキシ化合物、光酸発生剤又は熱酸発生剤、透光性粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0248】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
【0249】
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
【0250】
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0251】
[透光性粒子]
ハードコート層に用いられる透光性粒子は、防眩性又は光拡散性付与の目的で用いられるものであり、その平均粒径が0.5〜5μm、好ましくは1.0〜4.0μmである。平均粒径が0.5μm以上であれば、光の散乱角度分布が広角にまで広がってディスプレイの文字解像度の低下を引き起こしたり、表面凹凸が形成しにくくなって防眩性が不足したりするなどの不都合が生じることがないので好ましい。一方、5μm以下であれば、ハードコート層の膜厚を必要以上に厚くすることがないので、カールが大きくなったり、素材コストが上昇してしまったりする等の問題が生じないので好ましい。
【0252】
前記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、メタクリル粒子、架橋メタクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂
粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。
透光性粒子の形状は、球状又は不定形のいずれも使用できる。
【0253】
また、粒子径の異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0254】
さらに、前記透光性粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ透光性粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布とすることができる。
【0255】
前記透光性粒子は、形成されたハードコート層中に、光散乱効果、像の解像度、表面の白濁及びギラツキ等を考慮して、ハードコート層全固形分中に好ましくは3〜30質量%含有されるように配合される。より好ましくは5〜20質量%である。
【0256】
また、透光性粒子の密度は、好ましくは10〜1000mg/m、より好ましくは100〜700mg/mである。
【0257】
透光性粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0258】
[高屈折率粒子]
ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、前記の透光性粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、及びアンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である高屈折率粒子が含有されることが好ましい。
【0259】
また逆に、透光性粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率透光性粒子を用いたハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は上記の高屈折率粒子と同じである。
【0260】
ハードコート層に用いられる高屈折率粒子の具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITOとSiO等が挙げられる。TiO及びZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0261】
これらの高屈折率粒子を用いる場合、その添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30
〜75%である。
【0262】
なお、このような高屈折率粒子は、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0263】
また、ハードコート層にもオルガノシラン化合物、オルガノシランの加水分解物及び/又はその部分縮合物(ゾル)の少なくともいずれかを用いることができる。低屈折率層以外の層へのゾル成分の添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。ハードコート層の場合には、前記オルガノシラン化合物又はそのゾル成分の添加量に対する制約が低屈折率層ほど厳しくないため、前記オルガノシラン化合物が好ましく用いられる。
【0264】
透光性樹脂と透光性粒子との混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を前記範囲とするには、透光性樹脂及び透光性粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0265】
また透光性樹脂と透光性粒子との屈折率の差(透光性粒子の屈折率−透光性樹脂の屈折率)は0.02〜0.2が好ましく、より好ましくは0.05〜0.15である。この差が上記範囲であると、内部散乱の効果が十分であり、ギラツキが発生せず、しかもフィルム表面が白濁することもない。さらに、前記透光性樹脂の屈折率は、1.45〜2.00であるのが好ましく、1.48〜1.70であるのが更に好ましい。
【0266】
ここで、透光性樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
【0267】
ハードコート層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、又はその両者をハードコート層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0268】
〔高(中)屈折率層〕
本発明の反射防止フィルムには、よりよい反射防止能を付与するために、高屈折率層及び/又は中屈折率層を設けることが好ましい。本発明の反射防止フィルムにおける高屈折率層の屈折率は、1.60〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。
【0269】
高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは3%以下であることが好ましい。屈折率は、添加する無機微粒子やバインダーの使用量などを調節することにより適宜調節できる。
【0270】
[高屈折率粒子]
高(中)屈折率層には、層の屈折率を高めるため、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0
.06μm以下である高屈折率粒子が含有されることが好ましい。
【0271】
また、高(中)屈折率層に含有されるマット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた高(中)屈折率層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述のハードコート層における高屈折率粒子と同じである。
【0272】
高(中)屈折率層に用いられる高屈折率粒子の具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITOとSiO等が挙げられる。TiO及びZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。該高屈折率粒子はその表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、粒子表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0273】
これらの高屈折率粒子の添加量は、必要な屈折率に合わせて調節するが、高屈折率層の場合、全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
【0274】
なお、このような高屈折率粒子は、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該粒子が分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0275】
本発明に用いる高(中)屈折率層は、前記のようにして分散媒体中に高屈折率の無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(前述のハードコート層で説明した2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー等)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0276】
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。光ラジカル重合開始剤としては、前述の低屈折率層と同様のものが用いられる。
【0277】
高(中)屈折率層には、前記の成分(高屈折率粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、防眩性付与粒子、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
【0278】
高(中)屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高(中)屈折率層を光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0279】
〔透明基材〕
本発明の反射防止フィルムの透明基材としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート{例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、代表的には富士写真フイルム(株)製“TAC−TD80U”,“TD80UF”など}、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポ
リスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂{「アートン」(商品名)、JSR(株)製}、非晶質ポリオレフィン{「ゼオネックス」(商品名)、日本ゼオン(株)製}などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルム及びその製造法については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0280】
[鹸化処理]
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設けるなどしてディスプレイの最表面に配置する。また、本発明の反射防止フィルムと偏光板と組み合わせて用いてもよい。透明基材がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0281】
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設けるなどしてディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用したりする場合には、十分に接着させるためには透明基材に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0282】
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明基材の表面が親水化される。親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0283】
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明基材表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0284】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止層面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて反射防止層が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
【0285】
(1)透明基材上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明基材上に反射防止層を形成する前又は後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗及び/又は中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0286】
〔塗膜形成方法〕
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0287】
[反射防止膜の形成]
多層構成の反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができるが、ダイコート法で塗布することが好ましく、更には後述する新規ダイコーターを用いて塗布を行うことがより好ましい。2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」朝倉書店(1973年)253頁に記載がある。
【0288】
本発明の反射防止フィルムにおいては、少なくとも高屈折率層と低屈折率層を積層するので、ゴミ、ほこり等の異物が存在したとき、輝点欠陥が目立ちやすい。本発明における輝点欠陥とは、前記したように目視により、塗膜上の反射で見える欠陥のことで、塗布後の反射防止フィルムの裏面を黒塗りする等の操作により目視で検出できる。目視により見える輝点欠陥は、一般的に50μm以上である。輝点欠陥が多いと製造時の得率が低下し、大面積の反射防止フィルムを製造することができない。
本発明の反射防止フィルムは、輝点欠陥の数が1平方メートル当たり20個以下、好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは1個以下とする。
【0289】
本発明の反射防止フィルムを連続的に製造するために、ロール状の支持体フィルムを連続的に送り出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する支持体フィルムを巻き取る工程が行われる。
【0290】
ロール状のフィルム支持体から、フィルム支持体がクリーン室に連続的に送り出され、クリーン室内で、フィルム支持体に帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き続きフィルム支持体上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリーン室内に設置されている塗布部で塗布液がフィルム支持体上に塗布され、塗布されたフィルム支持体は乾燥室に送られて乾燥される。
【0291】
乾燥した塗布層を有するフィルム支持体は、乾燥室から放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有されるモノマーが重合して硬化する。さらに、放射線により硬化した層を有するフィルム支持体は熱硬化部へ送られ、加熱されて硬化を完結させ、硬化が完結した層を有するフィルム支持体は巻き取られてロール状となる。
【0292】
上記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−放射線硬化部−熱硬化室を複数設けて、各層の形成を連続的に行うことも可能であるが、生産性の観点から各層の形成を連続的に行うことが好ましい。各層の塗布を連続的に行う装置の構成例を図1に示す。該装置はロール状の支持体フィルムを連続的に送り出す工程1と、ロール状の支持体フィルムを巻き取る工程2の間に製膜ユニット100,200,300,400を適宜必要な数だけ設置したものである。
【0293】
図1で示される装置は、4層を、巻き取ることなく連続的に塗布する際の構成の一例だが、層構成に合わせて製膜ユニット数を変化させることはもちろん可能である。製膜ユニット100は塗布液を塗布する工程101、塗膜を乾燥する工程102、塗膜を硬化する工程103から構成されている。
【0294】
製膜ユニットが3つ設置された装置を用いて、前記ハードコート層を塗設したロール状の支持体フィルムを連続的に送り出し、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取ることが生産性の観点からより好ましく、製膜ユニットが4つ設置された図1に示す装置を用いて、ロール状の支持体フィルムを連続的に送り出
し、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取ることが、塗布コストを大幅に低減する点で、更に好ましい。必要に応じて、塗布ステーションの数を2つに減らした装置構成として中屈折率層と高屈折率層の2層だけを一工程で形成し、面状、膜厚等をチェックした結果をフィードバックして得率を向上させたりすることも、別の好ましい形態として挙げられる。
【0295】
本発明における、輝点欠陥の少ない反射防止フィルムを作成するためには、前記したように、高屈折率層用塗布物中の高屈折率超微粒子分散度を精密に制御すること、及び塗布液の精密濾過操作が挙げられる。同時に、反射防止層を形成する各層は、上記の塗布部における塗布工程及び乾燥室で行われる乾燥工程が、高い清浄度の空気雰囲気下で行われ、且つ塗布が行われる前に、フィルム上のゴミ、ほこりが充分に除かれていることが好ましい。塗布工程及び乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける空気清浄度の規格に基づき、クラス10(0.5μm以上の粒子が353個/m以下)以上であることが望ましく、更に好ましくはクラス1(0.5μm以上の粒子が35.5個/m以下)以上であることがさらに望ましい。また、空気清浄度は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
【0296】
塗布が行われる前工程として除塵工程に用いられる除塵方法としては、特開昭59−150571号公報に記載の、フィルム表面に不織布やブレード等を押しつける方法;特開平10−309553号公報に記載の、清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法;特開平7−333613号公報に記載される、超音波振動する圧縮空気を吹き付けて付着物を剥離させ、吸引する方法{伸興(株)製、「ニューウルトラクリーナー」等};等の乾式除塵法が挙げられる。
【0297】
また、洗浄槽中にフィルムを導入し、超音波振動子により付着物を剥離させる方法;特公昭49−13020号公報に記載されている、フィルムに洗浄液を供給したあと、高速空気の吹き付け、吸い込みを行う方法;特開2001−38306号公報に記載のように、ウェブを液体でぬらしたロールで連続的に擦った後、擦った面に液体を噴射して洗浄する方法;等の湿式除塵法を用いることができる。このような除塵方法の内、超音波除塵による方法もしくは湿式除塵による方法が、除塵効果の点で特に好ましい。
【0298】
また、このような除塵工程を行う前に、フィルム支持体上の静電気を除電しておくことは、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法としては、コロナ放電式のイオナイザ、UV、軟X線等の光照射式のイオナイザ等を用いることができる。除塵、塗布前後のフィルム支持体の帯電圧は、1000V以下が望ましく、好ましくは300V以下、特に好ましくは、100V以下である。
【0299】
(塗布用分散媒)
塗布用分散媒としては、特に限定されない。単独でも2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類;クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類;モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類;メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;エチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類;脂肪族又は芳香族炭化水素の混合物;等が該当する。これら溶媒の中でも、ケトン類の単独又は2種以上の混合により作成される塗布用分散媒が特に好ましい。
【0300】
(塗布液物性)
本発明の塗布方式は、液物性により塗布可能な上限の速度が大きく影響を受けるため、塗布する瞬間の液物性、特に粘度及び表面張力を制御する必要がある。
粘度については2.0mPa・sec以下であることが好ましく、更に好ましくは1.5mPa・sec以下、最も好ましくは1.0mPa・sec以下である。塗布液によってはせん断速度により粘度が変化するものもあるため、上記の値は塗布される瞬間のせん断速度における粘度を示している。塗布液にチキソトロピー剤を添加して、高せん断のかかる塗布時は粘度が低く、塗布液にせん断が殆どかからない乾燥時は粘度が高くなると乾燥時のムラが発生しにくくなり、好ましい。
【0301】
また、液物性ではないが、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量も塗布可能な上限の速度に影響を与える。透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は2.0〜5.0cc/mであることが好ましい。透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を増やすと塗布可能な上限の速度が上がるため好ましいが、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を増やしすぎると乾燥にかかる負荷が大きくなるため、液処方・工程条件によって最適な透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を決めることが好ましい。
【0302】
表面張力については、15〜36mN/mの範囲にあることが好ましい。レベリング剤を添加するなどして表面張力を低下させることは乾燥時のムラが抑止されるため好ましい。一方、表面張力が下がりすぎると塗布可能な上限の速度が低下してしまうため、17mN/m〜32mN/mの範囲がより好まく、19mN/m〜26mN/mの範囲が更に好ましい。
【0303】
(濾過)
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜10μmのフィルターが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜5μmであるフィルターを用いることが好ましい。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.5MPa以下、より好ましくは1.0MPa以下、更には0.2MPa以下で濾過することが好ましい。
【0304】
濾過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には、前記した無機化合物の湿式分散物のろ過部材と同様のものが挙げられる。
【0305】
また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
【0306】
〔ダイコーターの構成〕
図2は本発明を好適に実施できるスロットダイを用いたコーター(塗布装置)の断面図である。
【0307】
コーター10は、バックアップロール11とスロットダイ13とからなり、バックアップロール11に支持されて連続走行するウェブWに対して、スロットダイ13から塗布液14がビード形状14aで吐出されて塗布されることにより、ウェブW上に塗膜14bを形成する。
【0308】
スロットダイ13の内部には、ポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、略円形でもよいし、又は半円形で
もよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向(ここで、スロットダイ13の幅方向とは、図2の記載された図面に向かって手前方向又は奥側の方向を指す)にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、又はスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている(図示せず)。
【0309】
スロット16は、ポケット15からウェブWへの塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さになるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェブW走行方向の接線とのなす角度は、30°以上90°以下が好ましい。
【0310】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェブWの進行方向の上流側(進行方向すなわち図中の矢印方向とは逆側)を上流側リップランド18a、下流側(進行方向側)を下流側リップランド18bと称する。
【0311】
先端リップ17の形状は上流側に比べて下流側が伸びており(オーバーバイト形状)、その分上流側リップランド18aとウェブWとの隙間は、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間よりも大きい。また、下流側リップランドランド18bの長さは、上流側リップランド18aの長さよりも小さい。
【0312】
図3(A)を参照して説明すると、ウェブの進行方向側(下流側)のランド長さは、図3(A)のILOで示される部分であり、オーバーバイトの長さは、図3(A)のLOで示される部分である。
【0313】
次に、図3を参照して、本発明の反射防止フィルムの製造方法の実施に好適に用いられる塗布装置と、従来の塗布装置とを比較して説明する。ここで、図3は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は本発明の実施に好適なスロットダイ13を示し、(B)は従来のスロットダイ30を示している。
【0314】
従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブとの距離は等しい。なお、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明の実施に好適なスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度よくおこなうことができる。
【0315】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、500μm〜1mmの範囲で好ましく用いられる。下流側リップランド18bのランド長さILOは、30μm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上80μm以下、最も好ましくは30μm以上60μm以下である。下流側リップのランド長さILOが30μm以上であれば、先端リップのエッジ又はランドが欠けにくく、塗膜へのスジの発生を抑えることができ好ましい。また、下流側の濡れ線位置の設定がしやすい。さらには、塗布液の下流側における広がりを抑えることができ、好ましい。下流側における塗布液の濡れによる広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながる。一方、下流側リップのランド長さILOが100μm以下であれば、ビード14aを形成することができる。塗布液がビード14aを形成することにより、薄層塗布を行うことができる。
【0316】
さらに、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブWに近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて薄膜塗布に適したビード形成14aが可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下、もっとも好ましくは30μm以上80μm以下である。スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェブWの隙間Gとは、下流側リップランド18bとウェブWの隙間を示す。
【0317】
次に、図4を参照して上記塗布工程全般について説明する。
図4は、本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ13及びその周辺を示す斜視図である。スロットダイ13に対しウェブWの進行方向側とは反対側(すなわちビード14aより上流側)に、ビード14aに対して十分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェブWの間には隙間G、サイドプレート40bとウェブWの間には隙間Gが存在する。
【0318】
減圧チャンバー40とウェブWとの関係について図5及び6を参照して説明する。図5及び図6は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
【0319】
サイドプレート40bとバックプレート40aは、図5のように、チャンバー40本体と一体のものであってもよいし、例えば図6のように、適宜隙間Gを変えられるように、バックプレート40aをチャンバー40にネジ40cなどで留められている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間に実際に空いている部分を、それぞれ隙間G、Gと定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブWとの隙間Gとは、減圧チャンバー40を図4のようにウェブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェブWまでの隙間を示す。
【0320】
バックプレート40aとウェブWとの隙間Gは、スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間G[図3(A)参照]よりも大きくして設置するのが好ましく、これによりバックアップロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間Gが30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェブWの間の隙間Gは100μm以上500μm以下が好ましい。
【0321】
[材質、精度]
前記ウェブの進行方向側の先端リップの、ウェブ走行方向における長さ[図3(A)に示す下流側リップランド長さILO]は、前述の範囲内とすることが好ましく、また、ILOのスロットダイ幅方向における変動幅を20μm以内とすることが好ましい。この範囲内であれば、かすかな外乱によってもビードが不安定になることがなく、好ましい。
【0322】
スロットダイの先端リップの材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いると、ダイ加工の段階でだれてしまうため好ましくない。ステンレス鋼などの場合、下流側リップランド長さILOを前記の30〜100μmの範囲にしても、先端リップの精度を満足させることが困難である。高い加工精度を維持するには、特許第2817053号公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが好ましい。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップを、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬
合金にすることが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイド(WC)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることもできる。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下がさらに好ましい。
【0323】
高精度な塗布の実現には、前記下流側リップランド長さILOが重要であり、さらに隙間Gのスロットダイ幅方向における変動幅を制御することが望ましい。前記バックアップロール11と前記先端リップ17とは、隙間Gのスロットダイ幅方向における変動幅を制御できる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、隙間Gのスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように、先端リップ17とバックアップロール11の真直度とすることである。
【0324】
[塗布速度]
上記の様なダイコート法を用いた製造方法により、本発明の製造方法における塗布工程は高速塗布時における膜厚の安定性が高い。さらに、本発明の製造方法における塗布工程は前計量方式であるために、高速塗布時でも安定した膜厚の確保が容易である。前述したように、ウエット塗布量が少ない場合(20mL/m以下)、低塗布量の塗布液に対して、本発明の製造法における塗布工程は高速で膜厚安定性よく塗布が可能である。本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、このようなダイコート法を用いた本発明の製造方法が好ましい。ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であることから、段状のムラが発生しやすく、リバースロールコート法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすく、さらに、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が困難であるため、膜厚の安定性が高く前計量方式である本発明の製造方法を用いることが好ましい。本発明の製造方法を用いることで25m/分以上で塗布することが生産性の面から好ましい。
【0325】
<偏光板>
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0326】
[偏光膜]
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作製される。
【0327】
すなわち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を、保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0328】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落[0020]〜[0030]に詳しい記載がある。
【0329】
<液晶表示装置>
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0330】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル{“SID97,Digest of tech.Papers”(予稿集)28集(1997年)845頁記載}、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル{日本液晶討論会の予稿集58〜59頁(1998年)記載}及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0331】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを、本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作製した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0332】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を、液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4583825号、同第5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0333】
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001年)などに記載されている。
【0334】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0335】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。
【0336】
<反射防止フィルム>
実施例1−1
[ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
紫外線硬化性化合物(以下UV硬化化合物ともいう)として、表15記載の(F−21)750.0質量部に、質量平均分子量15000のポリグリシジルメタクリレート270.0質量部、メチルエチルケトン730.0質量部、シクロヘキサノン500.0質量部及び光重合開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}50.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。ポリグリシジルメタクリレートはメチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレートを溶解させ、熱重合開始剤“V−65”{和光純薬工業(株)製}を滴下しながら80℃で2時間反応させ、得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得た。
【0337】
[反射防止層用塗布液の調製]
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、且つ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子“MPT−129C”{石原産業(株)製、TiO:Co4:Al:ZrO=90.5:3.0:4.0:0.5質量比}を使用した。
【0338】
この粒子257.1質量部に、下記分散剤41.1質量部及びシクロヘキサノン701.8質量部を添加してダイノミルにより分散し、質量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
【0339】
【化35】

【0340】
{中屈折率層用塗布液(MLL−1)の調製}
上記の二酸化チタン分散液99.1質量部に、UV硬化化合物として表15記載の(F−21)を68.0質量部、光重合開始剤[2−(p−メトキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン]3.6質量部、光増感剤「カヤキュアーDETX」{日本化薬(株)製}1.2質量部、メチルエチルケトン279.6質量部及びシクロヘキサノン1049.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液を調製した。
【0341】
{高屈折率層用塗布液(HLL−1)の調製}
上記の二酸化チタン分散液469.8質量部に、UV硬化化合物として表15記載の(F−21)を40.0質量部、光重合開始剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}3.3質量部、光増感剤「カヤキュアーDETX」{日本化薬(株)製}1.1質量部、メチルエチルケトン526.2質量部、及びシクロヘキサノン459.6質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液を調製した。
【0342】
{低屈折率層用塗布液(HLL−1)の調製}
本発明に係る下記に構造式を記載した共重合体(P−1)をメチルイソブチルケトンに7質量%の濃度になるように溶解し、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂“X−22−164C”{信越化学工業(株)製}を固形分に対して3質量%、前記光重合発生剤[2−(p−メトキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン
]を固形分に対して5質量%添加し、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0343】
【化36】

【0344】
[反射防止フィルム(101)の作製]
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム“TD80UF”{富士写真フイルム(株)製}上に、ハードコート層用塗布液(HCL−1)を、グラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm、照射量300mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。
【0345】
ハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液(MLL−1)、高屈折率層用塗布液(HLL−1)及び低屈折率層用塗布液(LLL−1)を、3つの塗布ステーションを有するグラビアコーターを用いて5〜100m/分の速度で連続して塗布した。
【0346】
中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度200mW/cm、照射量200mJ/cmの照射量とした。
硬化後の中屈折率層は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
【0347】
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度600mW/cm、照射量400mJ/cmの照射量とした。
硬化後の高屈折率層は屈折率1.905、膜厚107nmであった。
【0348】
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が5体積%以下の雰囲気になるように窒素パージ(0.2mの反応室に1.40m/分の窒素ガスを使用)しながら240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度200mW/cm、照射量200mJ/cmの照射量とした。
【0349】
硬化後の低屈折率層は屈折率1.440、膜厚85nmであった。このようにして、反射防止フィルム(101)を作製した。
【0350】
なお各層の硬化に際して、窒素ガスの吹きつけは、UV照射室直前に連続する前室を設け、膜面に直接不活性ガスが当たるようにノズルの位置を設置した。また前室のウェッブ入り口からは不活性ガスが吹き出るように照射室及び前室の排気を調節した。ウェッブ入り口のウェッブ面とのギャップは4mmとした。
また塗布速度を変えた場合の紫外線照射量は、照度を変えることで照射量が一定になるように設定した。なお塗布速度は、低酸素維持時間変更時に変化させた。
【0351】
実施例1−2〜1−5
実施例1−1において、低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件(酸素濃度及び低酸素維持時間)を変える以外は実施例1−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(102)〜(105)を作製した。得られた反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件を表1に示す。
【0352】
比較例1−1
実施例1−1の低屈折率用塗布液の調製において、前記共重合体(P−1)を用いる代わりに、下記構造式の共重合体(Q−1)を用い、開始剤の量は相当質量で置き換える以外は実施例1−1と同様にして低屈折率用塗布液(LLL−2)を作製し、以下同様に低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(106)を作製した。得られた反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件を表1に示す。
【0353】
【化37】

【0354】
比較例1−2
比較例1−1において、低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件(酸素濃度及び低酸素維持時間)を変える以外は比較例1−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(107)を作製した。得られた反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件を表1に示す。
【0355】
【表16】

【0356】
[反射防止フィルムの評価]
得られた反射防止フィルムに対して、以下の項目の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0357】
(1)鏡面反射率
分光硬度計“V−550”{日本分光(株)製}にアダプター“ARV−474”を装着して、380〜780nmの波長領域において入射角5゜における出射角−5゜の鏡面反射率を測定し、450nm〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。
【0358】
(2)鉛筆硬度
JIS K−5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。反射防止フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S−6006に規定するH〜5Hの試験用鉛筆を用いて、500gの荷重にて以下のとおりの判定で評価し、OKとなる最も高い硬度を評価値とした。
n=5の評価において傷なし〜傷1つ :OK
n=5の評価において傷が3つ以上 :NG
【0359】
(3)スチールウール擦り耐性
#0000のスチールウールに1.96N/cmの荷重をかけ30往復したときの傷の状態を観察して、以下の5段階で評価した。
◎:傷が全くつかなかったもの
○:ほとんど見えない傷が少しついたもの
△:明確に見える傷がついたもの
×:明確に見える傷が顕著についたもの
××:膜の剥離が生じたもの
【0360】
【表17】

【0361】
実施例2−1
実施例1と同様にして作製したハードコート層の上に、低屈折率層用塗布液(LLL−1)を、グラビアコーターを用いて5〜100m/分の速度で連続して塗布した。乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が5体積%以下の雰囲気になるように窒素パージ(0.2mの反応室に1.40m/分の窒素ガスを使用)しながら240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度200mW/cm、照射量200mJ/cmの照射量とした。
硬化後の低屈折率層は屈折率1.440、膜厚85nmであった。このようにして、反射防止フィルム(201)を作製した。
【0362】
得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0363】
実施例2−2〜2−5
実施例2−1において、低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件(酸素濃度及び低酸素維持時間)を変える以外は実施例2−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(201)〜(205)を作製した。得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。
得られた反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件、及び各フィルムの評価結果を表3に示す。
【0364】
比較例2−1
実施例2−1の低屈折率用塗布液の調製において、前記低屈折率用塗布液(LLL−1)を用いる代わりに、前記低屈折率用塗布液(LLL−2)を用いる以外は実施例2−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(206)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。
反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件、及び評価結果を表3に示す。
【0365】
比較例2−2
比較例2−1において、低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件(酸素濃度及び低酸素維持時間)を変える以外は比較例2−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(207)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。
反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件、及び評価結果を表3に示す。
【0366】
【表18】

【0367】
実施例1及び実施例2において、本発明の構造式(1)を有したバインダーを使用する
ことで、UV硬化時の酸素濃度が高くても、反射防止フィルムは十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性にも優れた膜になることがわかる。
【0368】
実施例3−1〜3−3及び比較例3−1〜3−3
実施例1−5の試料(105)及び比較例1−2の試料(107)の作製方法において、各層の紫外線照射時のフィルム温度を上げたことのみ異なる試料(108)〜(113)を作製し、同様の評価を行った。紫外線照射時のフィルム温度、及び評価結果を表4に示す。
なおフィルム面の温度は、フィルム裏面に接触している金属版の温度を変えることで調整した。
【0369】
【表19】

【0370】
実施例4−1〜4−3及び比較例4−1〜4−3
実施例2−5の試料(205)及び比較例2−2の試料(207)の作製方法において、各層の紫外線照射時のフィルム温度を上げたことのみ異なる試料(208)〜(213)を作製し、同様の評価を行った。紫外線照射時のフィルム温度、及び評価結果を表5に示す。
なおフィルム面の温度は、フィルム裏面に接触している金属版の温度を変えることで調整した。
【0371】
【表20】

【0372】
本発明では、UV照射時の温度を40℃以上にあげることで、さらに優れた耐擦傷性が得られた。
【0373】
実施例5−1
[ハードコート層用塗布液(HCL−2)の調製]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
【0374】
(ハードコート層用塗布液組成)
ジルコニア微粒子含有ハードコート組成液 100質量部
「デソライトZ7404」{固形分濃度60wt%、
ジルコニア微粒子含量70wt%対固形分、平均粒子径約20nm、
溶媒組成MIBK:MEK=9:1、JSR(株)製}
UV硬化性樹脂 31質量部
“DPHA”{ジペンタエリスリトールペンタアクリレートと
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製}
シランカップリング剤 10質量部
“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}
シリカ粒子(1.5μm) 8.9質量部
“KE−P150”{日本触媒(株)製}
架橋PMMA粒子(3μm) 3.4質量部
“MXS−300”{綜研化学(株)製}
メチルエチルケトン(MEK) 29質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 13質量部
【0375】
[反射防止フィルム(301)の作製]
透明基材として、ロール形態のトリアセチルセルロースフィルム“TD80U”{富士写真フイルム(株)製}をロールから巻き出して、上記のハードコート層用塗布液(HCL−2)を線数135本/in、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mm
のマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層1を形成し、巻き取った。硬化後、ハードコート層の厚さが3.6μmとなるようにグラビアロール回転数を調整した。
【0376】
上記ハードコート層を塗設した透明基材を再び巻き出して、前記の低屈折率層用塗布液(LLL−1)を線数200本/in、深度30μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で塗布し、90℃で30秒乾燥の後、酸素濃度0.1体積%雰囲気下で240W/cmの「空冷メタルハライドランプ」{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度600mW/cm、照射量400mJ/cmの紫外線を照射し、低屈折率層を形成し、巻き取った。硬化後、低屈折率層の厚さが100nmとなるようにグラビアロール回転数を調整した。紫外線照射後に加熱する場合には、照射後のフィルムを温水又は加圧蒸気を通した回転金属ロールに接触させて行った。
【0377】
得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。その結果を表6に示す。
【0378】
実施例5−2〜2−5
実施例5−1において、低屈折率層の紫外線硬化条件を変える以外は実施例5−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(301)〜(305)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。
反射防止フィルムの構成と低屈折率層の紫外線硬化条件、及び各フィルムの評価結果を表6に示す。
【0379】
比較例5−1
実施例5−1の低屈折率用塗布液の調製において、前記低屈折率用塗布液(LLL−1)を用いる代わりに、前記低屈折率用塗布液(LLL−2)を用いる以外は実施例5−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(306)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。
反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件、及び評価結果を表6に示す。
【0380】
比較例5−2
比較例5−1において、低屈折率層の紫外線硬化条件を変える以外は比較例5−1と同様にして低屈折率層を形成して、反射防止フィルム(307)を作製した。
得られた反射防止フィルムについて、実施例1と同様の項目の評価を行った。
反射防止フィルムの構成と低屈折率層形成に際しての紫外線硬化条件、及び評価結果を表6に示す。
【0381】
【表21】

【0382】
本発明の硬化方法により、反射防止性能を保ちつつ、優れた耐擦傷性が得られることがわかる。
【0383】
実施例6
実施例1、2及び5の低屈折率層用塗布液(LLL−1)を、以下の低屈折率層用塗布液(LLL−3)及び(LLL−4)にそれぞれ変更して、評価を行い、同様な本発明の効果を確認できた。
中空シリカ粒子を用いることで更に耐擦傷性が優れた低反射率の反射防止フィルムを作製することができた。
【0384】
[低屈折率層用塗布液(LLL−3)の調製]
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0385】
(中空シリカ微粒子分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(粒子サイズ約40〜50nm、シエル厚6〜8nm、屈折率1.31、固形分濃度20質量%、主溶媒イソプロピルアルコール、特開2002−79616号公報の調製例4に準じて粒子サイズを変更して作製)500質量部に、シランカップリング剤“KBM−5103”{アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学(株)製}30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート「ケロープEP−12」{ホープ製薬(株)製}1.5質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、中空シリカ分散液を得た。得られた中空シリカ分散液の固
形分濃度は18質量%、溶媒乾燥後の屈折率は1.31であった。
【0386】
{低屈折率層用塗布液(LLL−3)の調製}
UV硬化性樹脂 3.3質量部
“DPHA”{日本化薬(株)製}
中空シリカ微粒子分散液 40.0質量部
シリコーン樹脂 0.7質量部
“RMS−033”(Gelest製)
光重合発生剤 0.2質量部
[2−(p−メトキシフェニル)−4、6−
ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン]
ゾル液a 6.2質量部
メチルエチルケトン 290.6質量部
シクロヘキサノン 9.0質量部
【0387】
{低屈折率層用塗布液(LLL−4)の調製}
UV硬化性樹脂 1.4質量部
“DPHA”{日本化薬(株)製}
共重合体(P−1) 5.6質量部
中空シリカ微粒子分散液 20.0質量部
シリコーン樹脂 0.7質量部
“RMS−033”(反応性シリコーン、Gelest製)
光重合発生剤 0.2質量部
[2−(p−メトキシフェニル)−4、6−
ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン]
ゾル液a 6.2質量部
メチルエチルケトン 306.9質量部
シクロヘキサノン 9.0質量部
【0388】
<偏光板の作製>
実施例7
[偏光板用保護フィルムの作製]
1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を50℃に保温して鹸化液を調整した。さらに、0.005mol/Lの希硫酸水溶液を調製した。
【0389】
実施例1〜5で作製した反射防止フィルムの、それぞれ本発明の反射防止層を有する側とは反対側の透明基材の表面を、上記鹸化液を用いて鹸化処理した。次いで、鹸化処理した透明基材表面の水酸化ナトリウム水溶液を、水で十分に洗浄した後、上記の希硫酸水溶液で洗浄し、さらに希硫酸水溶液を水で十分に洗浄し、100℃で十分に乾燥させた。
【0390】
反射防止フィルムの、鹸化処理した透明基材の表面の水に対する接触角を評価したところ、40゜以下であった。このようにして、偏光板用保護フィルムを作製した。
【0391】
[偏光板の作製]
(偏光膜の作製)
膜厚75μmのポリビニルアルコールフィルム{(株)クラレ製}を水1000質量部、ヨウ素7質量部、ヨウ化カリウム105質量部からなる水溶液に5分間浸漬し、ヨウ素を吸着させた。次いで、このフィルムを4質量%ホウ酸水溶液中で、4.4倍に縦方向に1軸延伸をした後、緊張状態のまま乾燥して偏光膜を作製した。
【0392】
接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面を貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には、上記と同様にして鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルムを同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0393】
[画像表示装置の評価]
このようにして作製した本発明の偏光板を反射防止フィルムがディスプレイの最表面になるように装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、反射防止性能に優れ、極めて視認性が優れていた。特にVAモードにおいてその効果は顕著であった。
【0394】
実施例8
[偏光板の作製]
光学補償層を有する光学補償フィルム「ワイドビューフィルムSA 12B」{富士写真フイルム(株)製}において、光学補償層を有する側とは反対側の表面を、実施例7と同様の条件で鹸化処理した。
【0395】
実施例7で作製した偏光膜に、接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に、実施例1〜5で作製した反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の、鹸化処理したトリアセチルセルロース面をそれぞれ貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には鹸化処理した光学補償フィルムのトリアセチルセルロース面を同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0396】
[画像表示装置の評価]
このようにして作製した本発明の偏光板を反射防止フィルムがディスプレイの最表面になるように装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、光学補償フィルムを用いていない偏光板を装着した液晶表示装置よりも明室でのコントラストに優れ、上下左右の視野角が非常に広く、さらに、反射防止性能に優れ、極めて視認性と表示品位が優れていた。
特にVAモードにおいてその効果は顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【0397】
【図1】図1は、本発明の反射防止フィルムにおける各層の塗布を連続的に行う装置の構成例の模式図である。
【図2】図2は本発明を好適に実施できるスロットダイを用いたコーター(塗布装置)の断面図である。
【図3】図3(A)は本発明を好適に実施できるスロットダイの拡大断面図である。 図3(B)は従来のスロットダイの拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ13及びその周辺を示す斜視図である。
【図5】図5は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
【図6】図6は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す別の態様の断面図である。
【符号の説明】
【0398】
100:ハードコート層製膜ユニット
101:ハードコート層用塗布液を塗布する工程
102:ハードコート層塗膜を乾燥する工程
103:ハードコート層塗膜を硬化する工程
200:中屈折率層製膜ユニット
201:中屈折率層用塗布液を塗布する工程
202:中屈折率層塗膜を乾燥する工程
203:中屈折率層塗膜を硬化する工程
300:高屈折率層製膜ユニット
301:高屈折率層用塗布液を塗布する工程
302:高屈折率層塗膜を乾燥する工程
303:高屈折率層塗膜を硬化する工程
400:低屈折率層製膜ユニット
401:低屈折率層用塗布液を塗布する工程
402:低屈折率層塗膜を乾燥する工程
403:低屈折率層塗膜を硬化する工程
A:ロール状の支持体フィルム
W:ウェブ
B:巻き取られた反射防止フィルム
【0399】
10:コーター
11:バックアップロール
13:スロットダイ
14:塗布液
14a:ビード形状(塗布液形状)
14b:塗膜
15:ポケット
16:スロット
16a:スロット開口部
17:先端リップ
18:ランド
18a:上流側リップランド
18b:下流側リップランド
【0400】
30:スロットダイ
31a:上流側リップランド
31b:下流側リップランド
32:ポケット
33:スロット
【0401】
40:減圧チャンバー
40a:バックプレート
40b:サイドプレート
40c:ネジ
【0402】
LO:下流側リップランド長さ
UP:上流側リップランド長さ
LO:オーバーバイト長さ(下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブWとの距離の差)
:先端リップ17とウェブWの隙間(=下流側リップランド18bとウェブWの隙間)
:バックプレート40aとウェブWの間の隙間
:サイドプレート40bとウェブWの間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムであって、支持体上に積層された層の少なくとも一層が、下記一般式(1)で表される構造を有する電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤とを含有する組成物を、電離放射線照射によって硬化させてなる層であることを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1):
【化1】


〔式中、X11とX12は、それぞれ独立して、ヘテロ原子又はハロゲン原子を表す。R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表す。ここで、X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とは互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【請求項2】
支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムの製造方法であって、下記工程(1)及び(2)によって、支持体上に積層される層の少なくとも1層が形成されることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
(1)連続的に走行する、支持体を含むウェッブ上に、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する電離放射線硬化性化合物と光重合開始剤を含む塗布液を塗布・乾燥して、塗布層を形成する工程、及び
(2)上記ウェッブ上の塗布層に、酸素濃度20体積%以下の雰囲気下で25℃以上の温度に加熱しながら電離放射線を0.5秒以上照射することにより、塗布層を硬化する工程。
一般式(1):
【化2】


〔式中、X11とX12は、それぞれ独立して、ヘテロ原子又はハロゲン原子を表す。R11とR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は有機残基を表す。ここで、X11とX12、R11とR12、又はX11とR11もしくはR12とは互いに結合して環状構造を形成してもよい。〕
【請求項3】
反射防止層が低屈折率層を有し、該低屈折率層が含フッ素ポリマーを含有する塗布液によって形成されたものである請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
低屈折率層が中空シリカ微粒子を含有する請求項1又は3に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の反射防止フィルムが、偏光板における2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム、又は請求項5に記載の
偏光板が、ディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−343495(P2006−343495A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168303(P2005−168303)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】