説明

反射防止フィルム

【課題】画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止すると共に、埃や塵などの付着を抑制する帯電防止効果の持続性及び耐擦傷性に優れ、しかも耐溶剤性にも優れる反射防止層が1層タイプの反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と、帯電防止剤2〜25重量%を含む厚さ1〜20μmのハードコート層、及び(B)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と、多孔性シリカ粒子30〜80重量%を含む厚さ0.05〜0.3μmの低屈折率層を順に有し、かつ表面抵抗率が5×1012Ω/□以下の反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止フィルム、さらに詳しくは、プラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)などの画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止すると共に、埃や塵などの付着を抑制する帯電防止効果の持続性及び耐擦傷性に優れ、かつ耐溶剤性にも優れる反射防止層が1層タイプの反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDP、CRT、LCDなどのディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見ずらくすることがあり、特に近年、ディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、ますます重要な課題となってきている。
このような問題を解決するために、これまで種々のディスプレイに対して、様々な反射防止処置や防眩処置がとられている。その一つとして反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用することが行われている。
この反射防止フィルムは、従来、蒸着やスパッタリングなどのドライプロセス法により、基材フィルム上に、低屈折率の物質(MgF2)を薄膜化する方法や、屈折率の高い物質[ITO(錫ドープ酸化インジウム)、TiO2など]と屈折率の低い物質(MgF2、SiO2など)を交互に積層する方法などで作製されている。しかしながら、このようなドライプロセス法で作製された反射防止フィルムは、製造コストが高くつくのを免れないという問題があった。
そこで、近年、ウエットプロセス法、すなわちコーティングにより反射防止フィルムを作製することが試みられている。しかしながら、このウエットプロセス法により作製された反射防止フィルムにおいては、前記のドライプロセス法による反射防止フィルムに比べて、表面の耐擦傷性に劣るという問題が生じる。
そこで、ウエットプロセス法における前記問題を解決するために、電離放射線硬化型樹脂組成物を用いて硬化層(ハードコート層)を形成することが行われている。例えば基材フィルム上に、(1)(A)電離放射線による硬化樹脂を含む厚さ2〜20μmのハードコート層、(B)電離放射線による硬化樹脂と、アンチモンドープ酸化錫を含む少なくとも2種の金属酸化物を含み、屈折率が1.65〜1.80の範囲にある厚さ60〜160nmの高屈折率層、及び(C)シロキサン系ポリマーを含み、屈折率が1.37〜1.47の範囲にある厚さ80〜180nmの低屈折率層を順次積層してなる光学用フィルム(例えば、特許文献1参照)、(2)(A)金属酸化物と、熱又は電離放射線による硬化物とを含む厚さ2〜20μmのハードコート層、及び(B)多孔性シリカとポリシロキサン系ポリマーとを含み、屈折率が1.30〜1.45の範囲にある厚さ40〜200nmの低屈折率層を順次積層してなる光学用フィルム(例えば、特許文献2参照)などが開示されている。
これらの光学用フィルムは、画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止すると共に、耐擦傷性に優れる反射防止フィルムである。
一方、反射防止フィルムにおいては、埃や塵などの付着を防止するために、持続性に優れる帯電防止性能が要求される。前記光学用フィルムに持続性に優れる帯電防止性能を付与するには、例えば(1)の光学用フィルムにおいては、(B)高屈折率層の金属酸化物として、帯電防止性を発現する金属酸化物を、また、(2)の光学用フィルムにおいては、(A)高屈折率層の金属酸化物として、帯電防止性を発現する金属酸化物を用いればよい。
しかしながら、低屈折率層のみをハードコート層に積層する1層タイプにおいては、低屈折率層にシロキサン化合物を用いたもの以外での帯電防止性能付き反射防止フィルムは、これまで開発されていないのが実状である。
【特許文献1】特開2002−341103号公報
【特許文献2】特開2003−139908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、PDP、CRT、LCDなどの画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止すると共に、埃や塵などの付着を抑制する帯電防止効果の持続性及び耐擦傷性に優れ、しかも耐溶剤性にも優れる反射防止層が1層タイプの反射防止フィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の優れた機能を有する反射防止フィルムを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、基材フィルム上に、活性エネルギー線照射による硬化樹脂と特定量の帯電防止剤を含むハードコート層、及び活性エネルギー線照射による硬化樹脂と特定量の多孔性シリカ粒子を含む低屈折率層を順に積層することにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と、帯電防止剤2〜25重量%を含む厚さ1〜20μmのハードコート層、及び(B)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と、多孔性シリカ粒子30〜80重量%を含む厚さ0.05〜0.3μmの低屈折率層を順に有し、かつ表面抵抗率が5×1012Ω/□以下であることを特徴とする反射防止フィルム、
(2)(A)層における帯電防止剤が、分子内に1個以上の四級アンモニウム塩基を有するカチオン系帯電防止剤である上記(1)項に記載の反射防止フィルム、及び
(3)(B)層における多孔性シリカ粒子が、比重1.7〜1.9、屈折率1.25〜1.36及び平均粒径20〜100nmのものである上記(1)又は(2)項に記載の反射防止フィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、PDP、CRT、LCDなどの画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止すると共に、埃や塵などの付着を抑制する帯電防止効果の持続性及び耐擦傷性に優れ、しかも耐溶剤性にも優れる反射防止層が1層タイプの反射防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の反射防止フィルムは、ウエットプロセス法により、基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)ハードコート層及び(B)低屈折率層が順次積層された構造を有している。
本発明の反射防止フィルムにおける基材フィルムについては特に制限はなく、従来反射防止フィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等を挙げることができる。
これらの基材フィルムは、透明、半透明のいずれであってもよく、また、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば液晶表示体の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
これらの基材フィルムの厚さは特に制限はなく、適宜選定されるが、通常15〜250μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、この基材フィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、片面又は両面にプライマー処理を施したものも用いることができる。
【0007】
本発明の反射防止フィルムにおいては、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に、まず(A)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と帯電防止剤とを含むハードコート層が設けられる。
この活性エネルギー線照射による硬化樹脂と帯電防止剤とを含むハードコート層は、例えば活性エネルギー線硬化性化合物と、前記の帯電防止剤と、所望により光重合開始剤などを含むハードコート層形成用塗工液を、基材フィルムの少なくとも一方の面にコーティングして塗膜を形成させ、活性エネルギー線を照射して、該塗膜を硬化させることにより、形成することができる。
ここで、活性エネルギー線硬化性化合物とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する化合物を指す。
このような活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば光重合性プレポリマー及び/又は光重合性モノマーを挙げることができる。上記光重合性プレポリマーには、ラジカル重合型とカチオン重合型があり、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0008】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、カチオン重合型の光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂が通常使用される。このエポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物などが挙げられる。
光重合性モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられる。これらの光重合性モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記光重合性プレポリマーと併用してもよい。
【0009】
所望により用いられる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロプル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられる。また、カチオン重合型の光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、前記光重合性プレポリマー及び/又は光重合性モノマー100重量部に対して、通常0.2〜10重量部の範囲で選ばれる。
【0010】
一方、ハードコート層に含有させる帯電防止剤に特に制限はなく、従来公知の非イオン系、アニオン系、カチオン系、両性系帯電防止剤の中から選ばれる少なくとも1種が用いられる。これらの中で、効果及びハードコート層に対する均質分散性などの点から、分子内に1個以上の四級アンモニウム塩基を有するカチオン系帯電防止剤が好適である。
四級アンモニウム塩基を有するカチオン系帯電防止剤は、低分子型及び高分子型のいずれも使用することができるが、効果の持続性及びブリードアウトやガス発生の防止性などの点から、高分子型カチオン系帯電防止剤が好ましい。
上記高分子型カチオン系帯電防止剤としては、従来公知のものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、分子内に、一般式(I)
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜10のアルキル基、R3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基、Xn-はn価の陰イオン、nは1〜4の整数を示す。)
で表される四級アンモニウム塩基を有する高分子重合体を好ましく挙げることができる。
上記一般式(I)において、R1及びR2で示されるアルキル基並びにR3のうちのアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、また、R3のうちのアラルキル基としては、ベンジル基が好ましい。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0011】
一方、Xn-は無機陰イオン、有機陰イオンのいずれであってもよく、その例としてはF-、Cl-、Br-、I-のハロゲンイオン、NO3-、ClO4-、BF4-、CO32-、SO42-などの無機陰イオン、CH3OSO3-、C25OSO3-、さらには酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸の残基からなる有機陰イオンが挙げられる。
このような高分子型四級アンモニウム塩系帯電防止剤としては、例えば以下に示す化合物、すなわち、ポリビニルベンジル型[(a)]、ポリ(メタ)アクリレート型[(b)]、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体型[(c)]、スチレン−マレイミド共重合体型[(d)]、メタクリレート−メタクリルイミド共重合体型[(e)]などを挙げることができる。なお、(c)、(d)及び(e)の共重合体型においては、ランダム共重合体型及びブロック共重合体型のいずれであってもよい。
【化2】

【化3】

本発明においては、この高分子型カチオン系帯電防止剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、低分子型カチオン系帯電防止剤としては、例えば、一般式(II)
【化4】

(式中、Aは炭素数10〜30のアルキル基、R4及びR5は、それぞれ同一又は異なる炭素数10のアルキル基、R6は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基、Ym-はm価の陰イオン、mは1〜4の整数を示す。)
で表される四級アンモニウム塩基を有する化合物を好ましく挙げることができる。
上記一般式(II)におけるAの例としては、ラウリル基などのドデシル基、ミリスチル基などのテトラデシル基、パルミチル基などのヘキサデシル基、ステアリル基などのオクタデシル基、エイコシル基、ベヘニル基などが挙げられる。
また、R4、R5、R6、Ym-及びmは、それぞれ一般式(I)におけるR1、R2、R3、Xn-及びnと同じである。
本発明においては、この低分子型カチオン系帯電防止剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
さらに、本発明においては、帯電防止剤として、分子内に1個以上の四級アンモニウム塩基及び1個以上の重合性不飽和基を有する反応性カチオン系帯電防止剤を用いてもよい。
このような反応性カチオン系帯電防止剤を用いることにより、活性エネルギー線を照射した際に、前述の活性エネルギー線硬化性化合物と共重合して、形成される高分子鎖内に取り込まれるため、得られる反射防止フィルムは、帯電防止性能の持続性が向上する。
この反応性カチオン系帯電防止剤としては、例えば一般式(III)
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で表される反応性四級アンモニウム塩系化合物などを挙げることができる。
本発明においては、この反応性カチオン系帯電防止剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記高分子型カチオン系帯電防止剤、低分子型カチオン系帯電防止剤及び反応性カチオン系帯電防止剤を適当に組み合わせて用いることができる。
【0013】
本発明においては、(A)層であるハードコート層中の前記帯電防止剤の含有量は、2〜25重量%の範囲で選定される。該帯電防止剤の含有量が上記範囲にあれば、反射防止フィルムは、良好な帯電防止性能を発揮すると共に、他の性能に悪影響を及ぼすことがない。この含有量は、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%の範囲である。
本発明において用いられるこのハードコート層形成用塗工液は、必要に応じ、適当な溶剤中に、前記の活性エネルギー線硬化性化合物と、帯電防止剤と、所望により用いられる前記の光重合開始剤、さらには各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、イソホロンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製された塗工液の濃度、粘度としては、コーティング可能な濃度、粘度であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
次に、基材フィルムの少なくとも一方の面に、上記塗工液を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られる。一方電子線は、電子線加速器などによって得られる。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
本発明においては、(A)ハードコート層の厚さは1〜20μmの範囲である。この厚さが1μm未満では得られる反射防止フィルムの耐擦傷性が十分に発揮されないおそれがあるし、また20μmを超えるとハードコート層にクラックが発生することがある。このハードコート層の好ましい厚さは2〜15μmの範囲である。
本発明の光学用フィルムにおいては、この(A)ハードコート層の屈折率は、通常1.45〜1.60、好ましくは1.49〜1.55の範囲である。
【0014】
本発明の反射防止フィルムにおいては、前記ハードコート層上に、(B)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と多孔性シリカ粒子とを含む低屈折率層が設けられる。
この活性エネルギー線照射による硬化樹脂と多孔性シリカ粒子とを含む低屈折率層は、例えば活性エネルギー線硬化性化合物と、前記の多孔性シリカ粒子と、所望により光重合開始剤などを含む低屈折率層形成用塗工液を、(A)ハードコート層上にコーティングして塗膜を形成させ、活性エネルギー線を照射して、該塗膜を硬化させることにより、形成することができる。
前記の活性エネルギー線硬化性化合物及び所望により用いられる光重合開始剤については、前述の(A)ハードコート層の説明において示したとおりである。
この(B)層に含まれる多孔性シリカ粒子としては、比重が1.7〜1.9、屈折率が1.25〜1.36及び平均粒径が20〜100nmの範囲にあるものが好ましく用いられる。このような性状を有する多孔性シリカ粒子を用いることにより、反射防止性能に優れる1層タイプの反射防止フィルムを得ることができる。
本発明においては、この(B)層中の多孔性シリカ粒子の含有量は、30〜80重量%の範囲で選定される。該多孔性シリカ粒子の含有量が上記範囲にあれば、当該(B)層は所望の低屈折率を有する層となり、得られる反射防止フィルムは、反射防止性に優れたものとなる。該多孔性シリカ粒子の好ましい含有量は、50〜80重量%であり、特に60〜75重量%の範囲が好ましい。
当該(B)層は、厚さが0.05〜0.3μmであって、屈折率が、通常1.30〜1.42の範囲にある。当該(B)層の厚さや屈折率が上記範囲にあれば、反射防止性能、帯電防止性能及び耐擦傷性に優れる反射防止フィルムを得ることができる。(B)層の厚さは、好ましくは0.07〜0.13μmであり、屈折率は、好ましくは1.35〜1.40の範囲である。
【0015】
本発明において用いられるこの低屈折率層形成用塗工液は、必要に応じ、適当な溶剤中に、前記の活性エネルギー線硬化性化合物と、多孔性シリカ粒子と、所望により用いられる前記の光重合開始剤、さらには各種添加剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶剤については、前述のハードコート層形成用塗工液の説明において示したとおりである。
このようにして調製された塗工液の濃度、粘度としては、コーティング可能な濃度、粘度であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
(A)ハードコート層上に、この塗工液を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、(B)低屈折率層が形成される。
活性エネルギー線については、前述のハードコート層の説明において示したとおりである。
【0016】
本発明においては、前記(A)ハードコート層及び(B)低屈折率層の形成は、以下に示す方法で行うのが有利である。
まず、基材フィルムの一方の面にハードコート層形成用塗工液をコーティングして塗膜を形成させ、活性エネルギー線を照射してハーフキュア状態に硬化させる。この際、紫外線を照射する場合には、光量は、通常50〜150mJ/cm2程度である。次いで、このようにして形成されたハーフキュア状態の硬化層上に、低屈折率層形成用塗工液をコーティングして塗膜を形成させ、活性エネルギー線を十分に照射し、前記ハーフキュア状態の硬化層と共に完全に硬化させる。この際、紫外線を照射する場合、光量は、通常200〜1000mJ/cm2程度である。
このようにして、基材フィルム上に、(A)層と(B)層間の密着性に優れる(A)ハードコート層及び(B)低屈折率層が順次形成される。
このようにして作製された本発明の反射防止フィルムにおいては、表面抵抗率が5×1012Ω/□以下である。この表面抵抗率が5×1012Ω/□以下であれば、帯電防止性能が発揮され、該反射防止フィルムには、埃や塵などが付着しにくくなる。表面抵抗率の下限については特に制限はないが、通常1×108Ω/□程度である。また、本発明の反射防止フィルムの可視光線の平均反射率は3%以下である。
さらに、(A)ハードコート層上に、(B)活性エネルギー線照射による硬化樹脂を含む低屈折率層が設けられているため、帯電防止性能の持続性に優れると共に、耐溶剤性を有し、溶剤による帯電防止性能の低下が抑制される。
なお、表面抵抗率の測定については後で説明する。
このようにして、各種画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止すると共に、埃や塵などの付着を抑制する帯電防止効果の持続性及び耐擦傷性に優れ、かつ耐溶剤性にも優れる反射防止層が1層タイプの反射防止フィルムを得ることができる。
本発明の反射防止フィルムにおいては、基材フィルムの一方の面にハードコート層が設けられている場合、該ハードコート層とは反対側の面に、液晶表示体などの被着体に貼着させるための粘着剤層を形成させることができる。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途用のもの、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
さらに、この粘着剤層の上に、剥離フィルムを設けることができる。この剥離フィルムとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【実施例】
【0017】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた反射防止フィルムの物性は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)波長500nm、600nm及び700nmにおける反射率
分光光度計[(株)島津製作所製「UV−3101PC」]により、波長500nm、600nm及び700nmにおける反射率を測定した。
(2)表面抵抗率
JIS K 6911に準拠し、(株)アドバンテスト社製デジタルエレクトロメーターに連結した平行電極を使用して測定した。なお、エタノール拭取り後の表面抵抗率は、以下のようにして測定した。
エタノールを染み込ませたガーゼで低屈折率層の表面を5往復拭き、さらに乾いたガーゼで5往復拭いたのち、23℃、相対湿度50%の環境下に30分間放置後、前記表面抵抗率の測定と同様にして行った。
(3)耐擦傷性
スチールウール#0000を使用し、荷重9.8×10-3N/mm2で5往復擦った後に目視観察を行い、下記の判定基準で評価した。
○:傷が付かない。
×:傷が付く。
【0018】
実施例1
(1)A液(ハードコート層形成用塗工液)の調製
3官能アクリレートモノマーであるペンタエリスリトールトリアクリレート[東亜合成(株)製、商品名「アロニックスM−305」、固形分濃度100%]45重量部、光重合開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア907」、固形分濃度100%]0.9重量部、及び四級アンモニウム塩基を有する高分子型のカチオン系帯電防止剤[コルコート社製、商品名「コルコートNR−121X−9IPA」、固形分濃度9.5重量%]90重量部からなる混合物を、1−メトキシ−2−プロパノールで希釈して固形分濃度35重量%のA液(ハードコート層形成用塗工液)を調製した。
(2)B液(低屈折率層形成用塗工液)の調製
3官能アクリレートモノマーであるペンタエリスリトールトリアクリレート[東亜合成(株)製、商品名「アロニックスM−305」、固形分濃度100%]10重量部、多孔性シリカ粒子のメチルイソブチルケトン(MIBK)分散体[触媒化成工業(株)製、商品名「ELCOM RT−1002SIV」、固形分濃度21重量%、多孔性シリカ粒子:比重1.8、屈折率1.30、平均粒径60nm]142重量部、光重合開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア907」、固形分濃度100%]0.5重量部及びレベリング剤として変性ポリジメチルシロキサン[東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製、商品名「SH28PA」、固形分濃度100%]0.005重量部からなる混合物を、MIBK/1−メトキシ−2−プロパノール混合溶剤(重量比1/1)で希釈して固形分濃度2.5重量%のB液(低屈折率層形成用塗工液)を調製した。
(3)反射防止フィルムの作製
基材フィルムとして厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)製、商品名「T−80UZ」]表面に、前記(1)で得たA液を硬化後の厚さが3μmになるように、マイヤーバーNo.8で塗布した。次いで、90℃で1分間乾燥したのち、紫外線を光量80mJ/cm2で照射して、ハーフキュア状態に硬化させた。
次に、このハーフキュア面に、前記(2)で得たB液を硬化後の厚さが0.1μmになるようにマイヤーバーNo.4で塗布した。次いで、80℃で1分間乾燥したのち、紫外線を光量350mJ/cm2で照射して、完全硬化させ、トリアセチルセルロースフィルム上に、屈折率1.50のハードコート層及び屈折率1.36の低屈折率層を順次形成させることにより、反射防止フィルムを作製した。
このようにして作製された反射防止フィルムの物性を第1表に示す。
なお、各コート層の厚さは、大塚電子(株)製「MCPD−2000」により測定し、屈折率は(株)アタゴ製アッベ屈折計(Na光源、波長:約590nm)により測定した。(以下、同様)
実施例2
実施例1(1)において、帯電防止剤「コルコートNR−121X−9IPA」の使用量を60重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施して、反射防止フィルムを作製した。ハードコート層の屈折率:1.49
このようにして作製した反射防止フィルムの物性を第1表に示す。
実施例3
実施例1(2)において、多孔性シリカ粒子のMIBK分散体「ELCOM RT−1002SIV」の使用量を120重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施して、反射防止フィルムを作製した。低屈折率層の屈折率:1.40
このようにして作製した反射防止フィルムの物性を第1表に示す。
【0019】
比較例1
実施例1(1)におけるA液の調製において、帯電防止剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に実施して、反射防止フィルムを作製した。ハードコート層の屈折率:1.49
このようにして作製した反射防止フィルムの物性を第1表に示す。
比較例2
実施例1(1)のA液の調製において、光重合開始剤「イルガキュア907」の使用量を1.8重量部に変更した以外は、実施例1(1)と同様にして、ハードコート層形成用塗工液を調製した。
次に、基材フィルムとして、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム「T80UZ」(前出)表面に、前記ハードコート層形成用塗工液を硬化後の厚さが3μmになるように、マイヤーバーNo.8で塗布した。次いで、90℃で1分間乾燥したのち、紫外線を光量350mJ/cm2で照射して完全硬化させ、ハードコートフィルムを作製した。
このようにして作製されたハードコートフィルムの物性を第1表に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
第1表から、本発明の反射防止フィルム(実施例1〜3)は、いずれも反射防止性に優れると共に、初期及びエタノール拭取り後の表面抵抗が低く、良好な帯電防止性及び耐溶剤性を有しており、耐擦傷性にも優れている。
これに対し、比較例1は、ハードコート層に帯電防止剤を含んでいないので、初期及びエタノール拭取り後の表面抵抗率が高く、帯電防止性に劣る。また、比較例2は、低屈折率層が設けられていないので、反射防止性に劣り、かつエタノール拭取り後の表面抵抗率が高く、耐溶剤性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の反射防止フィルムは、画像表示素子の表面の光の反射を効果的に防止すると共に、埃や塵などの付着を抑制する帯電防止効果の持続性及び耐擦傷性に優れ、かつ耐溶剤性にも優れており、例えばPDP、CRT、LCDなどのディスプレイに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に、(A)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と、帯電防止剤2〜25重量%を含む厚さ1〜20μmのハードコート層、及び(B)活性エネルギー線照射による硬化樹脂と、多孔性シリカ粒子30〜80重量%を含む厚さ0.05〜0.3μmの低屈折率層を順に有し、かつ表面抵抗率が5×1012Ω/□以下であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
(A)層における帯電防止剤が、分子内に1個以上の四級アンモニウム塩基を有するカチオン系帯電防止剤である請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
(B)層における多孔性シリカ粒子が、比重1.7〜1.9、屈折率1.25〜1.36及び平均粒径20〜100nmのものである請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。

【公開番号】特開2006−188016(P2006−188016A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2822(P2005−2822)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】