説明

反射防止フィルム

【課題】光反射防止性に優れ、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつハードコート層との密着性、耐湿熱密着性に優れ、さらに経済性に優れた反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】塗布層を有する基材フィルムと、該基材フィルムの塗布層面にハードコート層と反射防止層がこの順に積層されてなる反射防止フィルムであって、前記の基材フィルムが、水性ポリエステル樹脂(A)と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)とを主たる構成成分とし、(A)/(B)の混合比(質量比)が10/90〜95/5である水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸された塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムであり、前記の反射防止層表面の波長550nmにおける反射率が2.0%以下である反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル、液晶表示板(LCD)、テレビやコンピューターのブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、電子ペーパー等の表示画面の前面に装着して、外光の写り込み、ぎらつき、虹彩状色彩等を抑制することができる反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示板、ディスプレイ、電光掲示板は、外光や照明光がその表面で反射して、光源や、周囲の明るい風景が写りこみ、視認性が低下するため、それらの表面に反射防止層を有する反射防止フィルムが一般に使用されている。該反射防止フィルムは、プラスチックフィルムの片面に単層、あるいは多層の反射防止層を形成したものが一般的である。反射防止層が単層の場合には、プラスチックフィルムより低屈折率の材料からなる低屈折率層の厚さを光波長の1/4波長あるいはその奇数倍になるよう形成すれば、反射防止効果が得られる。また、反射防止層が多層の場合には、低屈折率層と高屈折率層を交互に2層以上にし、かつ各層の厚さを適宜制御して積層すれば、反射防止効果が得られることも知られている。また、必要に応じてプラスチックフィルムと反射防止層の間にハードコート層を形成すること、及び反射防止層の上に防汚層を形成することも一般に行われている。
【0003】
反射防止層を形成する方法として、基材の表面に、蒸着法やスパッタリング法により反射防止層を形成するドライコーティング法、基材の表面に反射防止用塗布液を塗布し乾燥させて反射防止層を形成するウエットコーティング法、あるいは両方法を併用した併用法が挙げられる。
【0004】
例えば、ドライコーティング法、ウエットコーティング法、それらの併用法が、それぞれ特許文献1〜7、特許文献8〜15、特許文献16において開示されている。
【特許文献1】特開平11−305006号公報
【特許文献2】特開2000−121804号公報
【特許文献3】特開2000−141556号公報
【特許文献4】特開2000−338307号公報
【特許文献5】特開2002−6107号公報
【特許文献6】特開2003−149407号公報
【特許文献7】特開2003−215309号公報
【特許文献8】特開2001−296403号公報
【特許文献9】特開2003−131009号公報
【特許文献10】特開2003−139908号公報
【特許文献11】特開2003−227901号公報
【特許文献12】特開2004−4404号公報
【特許文献13】特開2004−175047号公報
【特許文献14】特開2004−175076号公報
【特許文献15】特開2004−212619号公報
【特許文献16】特開2004−21184号公報
【0005】
近年、ディスプレイや装飾材などの用途では、さらなる大画面化(大面積化)及び高品位化にともなって、上記の反射防止性とともに、蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉縞)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉縞が観察されやすくなっている。しかしながら、前記の従来技術で得られたフィルムでは、干渉縞低減に関する市場の要求を満足させることはできない。
【0006】
前記の反射防止フィルムは、表面の傷付き防止のために、透明基材フィルムの表面にハードコート層を設け、該ハードコート層表面に反射防止層を設けることが一般に行われている。しかしながら、透明基材フィルムの表面にハードコート層を設けると、透明基材フィルムとハードコート層の屈折率の差により光の干渉が起こり、干渉縞が発生する。例えば、ハードコートフィルムの場合、ハードコート層の屈折率(例えば、アクリル樹脂では1.49)と、基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば、PETでは1.62)との差が大きいため、ハードコート層の表面(すなわち、空気/ハードコート層の界面)における反射光と、ハードコート層と基材のポリエステルフィルムの界面における反射光との干渉作用により、虹彩状色彩(干渉縞)が発生すると考えられている。
【0007】
この干渉縞の発生を防止するために、ハードコート層に金属酸化物微粒子を含有させてハードコート層の屈折率を高くし、ハードコート層と基材のポリエステルフィルムとの屈折率差を小さくする方法が開示されている(例えば、特許文献17を参照)。しかしながら、ハードコート層に金属酸化物微粒子を含有させることにより、ハードコート層本来の機能である透明性、耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等が低下する。また、係るハードコート層の上にさらに反射防止層を設けた場合は、ハードコート層の屈折率の変化に合わせた、反射防止層の最適化が必要になる。
【0008】
また、ハードコート層の干渉縞を抑制する他の方法として、フィルムの局所的な厚みのバラツキに着目し、易接着フィルムを製造した後、該フィルムにカレンダー処理を行って、フィルムの局所的な厚みのバラツキを小さくする方法が開示されている(例えば、特許文献18参照)。しかしながら、前記方法はフィルム単独で干渉縞を評価しており、ハードコート層を積層した際に、界面の屈折率の差に基づく干渉縞に関しては何ら検討がされていないし、さらに工程も増加するため生産性の点で問題がある。
【0009】
また、ハードコートフィルムを構成する層の厚さ斑に着目し、干渉縞の面積比を規定した発明が開示されている(例えば、特許文献19参照)。しかしながら、厚さ斑の程度や低減方法が明細書中に具体的に記載されていない。例えば、各層の厚さ斑を低減するためには、各層の厚みを厳密に制御することが必要であり、生産性または歩留まりの点から問題がある。
【0010】
さらに、フィルム自体の裏面反射率に着目して、裏面反射率を抑えて、特定の硬度のハードコート層を積層する方法も開示されている(例えば、特許文献20参照)。しかしながら、特許文献20に記載の方法では、ハードコートフィルムのハードコート層の反対面に特定屈折率と特定厚みを有するコート層を設け、かつ裏面反射率を0.1%以下となるように制御しなければならない。そのため、裏面までを含めたフィルムの設計が必要である。しかも、フィルム製造時に裏面反射率が常に0.1%以下となるように、裏面反射率を制御し、裏面反射率が範囲外となる場合には条件変更を行うことが必要になるため、裏面反射率の制御が煩雑である。
【0011】
【特許文献17】特開平7−151902号公報
【特許文献18】特開2001−71439号公報
【特許文献19】特開2002−241527号公報
【特許文献20】特開2002−210906号公報
【0012】
また、透明基材フィルム上に、屈折率が1.5〜1.7の中屈折率層、屈折率が1.6〜1.8の高屈折率層、更に中屈折率層より低い屈折率を有する材料よりなる低屈折率層が、この順に透明基材フィルム側から積層することにより、反射防止性を有し、かつ干渉縞が抑制されたフィルムが開示されている(特許文献21参照)。該方法においては、干渉縞の抑制は屈折率が1.5〜1.7の中屈折率層により発現されており、該効果を発現するためには、該中屈折率層は1μm以下、通常は50〜500nmの薄膜が必要で、かつ該層厚みの精度を上げないと干渉縞抑制効果に斑が発生する。しかしながら、該方法においては、透明基材フィルムに中屈折率層を塗布し積層する方法、いわゆるオフラインコート法で製造されており、上記薄膜の厚みを精度よく積層することが難しいという問題を有する。また、塗布層の乾燥温度に限界があり、基材フィルムとの接着性、特に、耐湿熱性等の接着耐久性が劣るという課題がある。さらに、経済性の点でも不利である。
【特許文献21】特開2003−75603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決するためになされたもので、光反射防止性に優れ、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつハードコート層との密着性、高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れ、さらに経済性に優れた反射防止フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決することができる本発明の反射防止フィルムとは、塗布層を有する基材フィルムと、該基材フィルムの塗布層の表面にハードコート層と反射防止層がこの順に積層されてなる反射防止フィルムであって、前記の基材フィルムが、水性ポリエステル樹脂(A)と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)とを主たる構成成分とし、(A)/(B)の混合比(質量比)が10/90〜95/5である水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸された塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムであり、前記の反射防止層表面の波長550nmにおける反射率が2.0%以下であることを特徴とする。
【0015】
前記の基材フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。また、前記の水性ポリエステル樹脂(A)が、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し1〜10モル%含有する共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。さらに、前記の水性ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が40℃以上であることが好ましい。
【0016】
また、前記のハードコート層は、電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂を構成成分とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反射防止フィルムは、光反射防止性に優れ、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつハードコート層との密着性、高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れ、さらに経済性に優れているので、タッチパネル、コンピューター、テレビ、液晶表示装置等のディスプレイ等の光学用機器に使用する部材や装飾材等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(基材フィルム)
<二軸配向ポリエステルフィルム>
本発明で、基材フィルムとして用いる二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂より構成されるフィルムであり、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とする。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、ポリエステルフィルムは二軸延伸することで、耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
【0019】
上記二軸延伸ポリエステルフィルムは、耐光性改善のために、フィルム中に紫外線吸収剤を含有させて、波長380nmでの光線透過率を30%以下とすることができる。
【0020】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、公知のものがいずれも使用できるが、中でもベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、環状イミノエステルが好適であり、特に耐熱性の点から環状イミノエステルが好ましい。また、前記の紫外線吸収剤を2種以上併用してもよい。
【0021】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0022】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5,5′−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩などが挙げられる。
【0023】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2′−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(4,4′−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン等が挙げられる。
【0024】
また、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)なども、環状イミノエステル系紫外線吸収剤として使用可能である。
【0025】
前記の紫外線吸収剤が、熱分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤である場合、基材フィルムの製膜時の工程汚染を少なくすることができ好適である。熱分解開始温度が290℃未満の紫外線吸収剤を含有するポリエステルを溶融し、シート状に回転冷却ロールに押出した際に、紫外線吸収剤の分解物が前記ロールに付着し、次いでフィルムに再付着して、フィルムにキズがつき、光学的な欠点となりやすい。
【0026】
ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させることにより、フィルムの耐光性を改善することができる。すなわち、外光中に含まれる紫外線によるフィルムの劣化を抑制することができる。
【0027】
耐光性の良好なフィルムとは、例えば、波長380nmにおける透過率が20%以下である、ということがより好ましく、10%以下がさらに好ましい。波長380nmにおける透過率が30%を超えた場合は、フィルムの耐光性が悪化するので好ましくない。
【0028】
こうした特性を満足する低分子タイプの紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収層の構成樹脂に対し、0.1〜4質量%であることが好ましく、0.3〜2質量%であることがより好ましい。紫外線吸収剤量が少なすぎると紫外線吸収能が小さくなり、多すぎるとフィルムが黄変する場合や、フィルムの製膜性が低下する場合があるので好ましくない。
【0029】
また、紫外線吸収剤として高分子タイプのものを用いることも、フィルム表面へのブリードによる問題を回避する点で推奨される。また、フィルムへのブリードアウトが低減されることで、積層される他の層との密着性も高まる。高分子タイプの紫外線吸収剤とは、紫外線吸収剤として有用な骨格を側鎖に有するポリマーのことを意味する。ポリエステルとの相溶性を考慮すると、ポリエステル系紫外線吸収剤やアクリル系ポリマー紫外線吸収剤が好ましい。例えば、ポリエステルが、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールおよび/または1、4−ブタンジオールを主成分とし、さらに共重合成分として一般式(I)で示されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミドと一般式(II)で示されるナフタレンジカルボン酸から合成されたポリエステル系紫外線吸収剤(三菱化学製、ノバペックス U−110)や、2−(2−ヒドロキシルフェニル)ベンゾトリアゾール骨格を側鎖に有するアクリル系ポリマー(BASF製、UVA−1635)などが、目的とする紫外線吸収特性に加えて、透明性などの特性も保持できる点で好ましい。
【0030】
【化1】

【0031】
上記一般式(I)において、Rは有機残基(アルキレン基など)、Xはヒドロキシル基などを表す。
【0032】
【化2】

【0033】
高分子タイプの紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収層の構成樹脂に対し、0.1〜20質量%とすることが好ましく、0.5〜15質量%とすることが更に好ましい。紫外線吸収剤量が少なすぎると紫外線吸収能が小さくなり、多すぎるとフィルムが黄変する場合や、フィルムの製膜性が低下する場合があるので好ましくない。
【0034】
基材フィルムに用いる二軸は以降ポリエステルフィルムは、少なくとも3層(3層、4層、5層など)の積層構造を採用し、その両表層には紫外線吸収剤を実質的に含有させずに、中間の層(基材中間層)に紫外線吸収剤を含有させた紫外線吸収層とすることが好ましい。
【0035】
単層構造の二軸延伸ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を含有させた場合、製膜時の押出工程において、紫外線吸収剤が昇華して、ダイスの吐出口や、シート状に溶融押出されたポリエステルを冷却するために用いる冷却ロール、延伸に用いるテンターなどに付着し、これが更に押出されてくる溶融ポリエステルに付着して、光学欠点の原因となることがある。しかしながら、上記の積層構造を有する基材フィルムを採用することで、フィルム製造時に中間層に含有されている紫外線吸収剤がフィルム表面にブリードアウトすることを飛躍的に抑制することができる。そのため、ダイスの吐出口や冷却ロール、テンターなどの汚染が軽減され、該汚染に起因するフィルムの欠点の発生が抑制される。また、紫外線吸収剤のブリードアウトによる、各層間の密着性の低下も抑制される。
【0036】
基材フィルムに用いる二軸延伸ポリエステルフィルムが3層構造の場合には、基材中間層のみが紫外線吸収剤を含有する。4層以上の場合には、両表層を除くいずれか1以上の層が紫外線吸収剤を含有していればよく、両表層を除く全ての層が含有していても構わない。なお、両表層における「紫外線吸収剤を実質的に含有していない」の「実質的に」とは、紫外線吸収剤を含有する層からブリードしたものが両表層に拡散する場合など、不可避的に紫外線吸収剤が混入する場合を除く趣旨である。基材フィルムに用いる二軸延伸ポリエステルフィルムの最も好ましい積層構成は、3層構造で、基材中間層が紫外線吸収層の構成である。
【0037】
基材フィルムに、3層構成の二軸延伸積層ポリエステルフィルムを用いる場合、各層の厚み比率は限定なく任意であるが、両表層の厚みは、下限がそれぞれ全厚みの3%であることが好ましく、5%であることが特に好ましい。一方、両表層の厚みの上限は、全厚みの15%であることが好ましく、特に好ましくは10%である。両表層のうち、いずれか一方でも、その厚みが小さすぎる場合には、紫外線吸収剤の昇華およびブリードアウトを十分に防止することができないことがある。また、いずれか一方でも、その厚みが大きすぎる場合には、紫外線吸収剤の昇華・ブリードアウトの防止効果が飽和するばかりか、紫外線吸収剤の含有量とのバランスによっては、フィルムの平面視における紫外線吸収剤濃度(単位面積当たりの存在量)が低下し、紫外線吸収効果が不十分となることがあるため、好ましくない。
【0038】
前記の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、各層がポリエステルで構成されていることが望ましい。これらのポリエステルは、全て同種であっても、全て異種であっても、一部の層のみが同種であっても構わないが、生産管理の容易さや屑樹脂の回収などの点より、同種で、且つ全ての層にPETを用いることが好ましい実施態様である。
【0039】
なお、紫外線吸収剤を含有するポリエステル樹脂組成物層を中間層に配置してなる積層ポリエステルフィルムにおいて、前記表層による紫外線吸収防止剤のブリード防止効果は、表面IR分析法を用いて、フィルム厚み方向での紫外線吸収剤の偏在度を評価することにより確認することができる。フィルムの厚み方向における紫外線吸収剤の偏在度は、積層ポリエステルフィルムの両表層と中間層の厚み比に大きく影響される。しかしながら、同じ厚み比であっても、例えば、フィルム製造時の溶融押出し工程における、フィルター以降のメルトラインやフラットダイスの樹脂温度などによっても変化する。
【0040】
本発明において、紫外線吸収剤を含有するポリエステル樹脂組成物層を中間層に配置してなる積層ポリエステルフィルムを基材フィルムに用いる場合、フィルム厚み方向の紫外線吸収剤の偏在度を、好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.10以下、特に好ましくは0.05以下となるように管理する。
【0041】
ポリエステルフィルムへの紫外線吸収剤の配合方法は限定されないが、ポリエステルの重合時、または溶融押出時に配合することが好ましい。その際、紫外線吸収剤を含有するマスターバッチペレットを予め作製して、これにより添加することが好ましい実施態様である。例えば、好ましい実施態様として以下の方法が例示される。まず、ポリエステルと紫外線吸収剤とをブレンドしマスターバッチペレットを調製する。このマスターバッチペレットは、易滑性付与を目的とした粒子を実質的に含有していないペレットである。このマスターバッチペレットと、バージンのポリエステルペレットとを混合した原料ペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、フィルム状に溶融押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸ポリエステルフィルムを製膜する。各層の積層には、夫々の層を構成するポリエステルペレットを別個の押出機から押出し、1つのダイスに導いて積層構造の未延伸フィルムとする共押出法が好ましく採用できる。
【0042】
上記の溶融押出の際、押出機溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280〜290℃、その後のポリマー管、フラットダイまでの樹脂温度は270〜280℃とすることが、紫外線吸収剤のダイス吐出口での昇華、冷却ロールの汚染を防止する点で好ましい。
【0043】
また、溶融ポリエステルが約280℃に保たれた任意の場所で、ポリエステル中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが望ましい。こうした異物が基材フィルムに残存すると、光学欠点やキズの発生要因にもなる。
【0044】
溶融ポリエステルの高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス鋼焼結体の濾材であれば、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物、および高融点有機物の除去性能に優れることから好適である。さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、上記光学欠点の原因やキズの発生要因となるような20μmを超える大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合がある。しかしながら、粗大粒子による突起を少なくし、フィルム製造時にキズの発生を抑制する点から、前記の高精度濾過はフィルム製造時の重要なプロセスの1つとして推奨される。
【0045】
原料ポリエステル中に存在する異物が残存していたり、製膜時に溶融ポリエステルからブリードアウトしてダイス吐出口などを汚染している紫外線吸収剤がフィルムに付着したりすると、製膜時の延伸工程でこの異物や紫外線吸収剤(以下、纏めて「異物など」という)の周囲でポリエステル分子の配向が乱れ、光学的歪みが発生する。この光学的歪みのため、実際の異物などの大きさよりもかなり大きな欠点として認識されるため、著しく品位が損なわれることがある。例えば、大きさ20μmの異物などでも、光学的には50μm以上の大きさとして認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠点として認識される場合もある。
【0046】
また、フィルムの透明性が高くなるほど、微小な異物などによる光学欠点はより鮮明となる傾向にある。フィルムが厚手になるほど、平面視でのフィルム単位面積当たりの異物などの含有量が薄手のフィルムより多くなる傾向にあり、一層この問題は大きくなる。よってポリエステル中の異物などは、できる限り除去することが好ましく、上記の各種手法の採用が推奨される。
【0047】
得られた未延伸フィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向(縦方向:積層フィルム製造時の走行方向)に2.5〜5.0倍延伸し、一軸配向フィルムとする。引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して120〜150℃に加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸し200〜250℃にて熱処理し、この熱処理工程中で必要に応じて幅方向に3%程度に弛緩処理することにより、基材に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0048】
上記方法により得られる二軸延伸ポリエステルフィルムは、表面に存在する深さ1μm以上、長さ3mm以上のキズが100個/m2 以下であることが好ましい。上記キズの個数は30個/m2 以下であることがより好ましく、10個/m2 以下であることが特に好ましい。上記キズの個数をこのような範囲とすれば、光学欠点による問題が生じない。
【0049】
フィルムのキズの発生を防止する手法としては、(a)フィルム表面そのものやロール表面、特にフィルムと接触するロール表面にキズの原因となる「欠点」を発生させないこと、(b)接触するロールの表面上でフィルムが縦方向および横方向にずれないようにすることが挙げられる。上記の「欠点」とは、ロール表面に形成されるキズ、堆積物、付着物、異物などの、フィルムと接触することによりフィルムに微細なキズを発生させる全ての要因を指す。よって、これらの欠点を無くすことで、フィルム表面へのキズの発生を低減できる。上記欠点の発生を防止するためには、例えば、下記に挙げる方法を採用することができる。
【0050】
上記基材フィルム製造時に用いるロールの表面粗度をRaで0.1μm以下とする方法や、堆積物、付着物、異物などのキズ発生要因のロール表面への堆積を防止するため、縦延伸工程の予熱入口のロールと冷却ロールにロールクリーナーを設置する方法が挙げられる。
【0051】
また、上記基材フィルム製造工程におけるクリーン度をクラス1000以下(1立方フィート当たりの体積中に0.5μm以上の粒子が1000個以下)とする方法があり、特にロール周りはクラス100以下、キャスト工程で反ロール面を冷却するための送風冷却装置についてもクラス100以下のクリーンエアを使用することが好ましい。さらに、上記基材フィルム製造前に、研磨材を用いてロール上の欠陥を削り取る作業などによりロールの掃除を行う方法も挙げられる。また、静電気の発生によってフィルムがゴミなどを吸着し、欠点となることを避けるため、フィルムの帯電量が全工程で±1500V以下になるよう除電装置を設ける方法も挙げられる。二軸配向ポリエステルフィルムのキャストから後述するテンターまでの工程はキズが主に発生し易い工程であり、この区間をコンパクトにレイアウトし、通過時間を5分以下にすることも欠点の発生抑制に寄与し得る。
【0052】
ロールについては、ロール表面に水膜を形成させたり、エアフローティングタイプのロールを用いたりすることで、フィルムにロール表面の欠点が直接接触しない構造にすることができる。また、フィルムから析出するオリゴマー量を1000ppm以下とすることで、ロール表面への欠点の付着を減少させ、ロール表面の欠点を低減することができる。
【0053】
さらに、延伸後の巻取り工程において、フィルムの幅方向の端部側の表面を突起付きのローラで押圧して、その部分に凹凸部を形成すると共に、該凹凸部が形成されたフィルムを巻取り機構でロール状に巻き取るよう構成し、さらに該突起付きのローラにおける突起を先窄まり状に形成し、該突起の頂部に丸みをつけ、その頂面の曲率半径を0.4mm以下に設定することで、フィルムの巻取り装置において、フィルムと欠点が接触しないようにすることもできる。
【0054】
また、ロール表面上で、フィルムがずれないようにすることもキズ発生防止方法として有効である。例えば下記に挙げる方法が採用可能である。例えば、ロールを小径化すること、サクションロールの使用、静電密着、パートニップの密着装置を使用するなどしてフィルムのロールへの密着力を増大させることにより、長いキズの発生を抑えることができる。特にロールを小径化することは、フィルムのずれ量の細分化にもなり、長いキズの発生防止に寄与し得る。また、キズの多くはロール幅方向の端部に向かうほど、長さおよび頻度が増加し、ロール幅方向の端部においてはキズのない部分を得ることが困難であるため、キズの少ないロール幅方向の中央付近をトリミングすることで、キズの少ないフィルムを得ることが可能となる。
【0055】
また、縦方向キズまたは横方向キズの発生要因としては、夫々フィルムの縦方向または横方向での、膨張、収縮などの変形も挙げられる。これらのフィルムの変形は、主としてフィルムの温度変化によって生じる。よって、例えば、ロール表面でのフィルムの温度変化を抑制することで、こうした温度によるフィルム変形量を小さくでき、縦方向キズや横方向キズの発生を防止できる。具体的には、ロール1本当たりでのフィルムの温度変化を40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに一層好ましくは10℃以下、特に好ましくは5℃以下とすることが推奨される。該ロール表面でのフィルムの温度変化を抑制する方法としては、例えば、ロール間での空中冷却、水槽を通過させる水中冷却などが挙げられる。さらに、ロール本数を多くすることにより、1本当たりのロール表面でのフィルムの温度変化を低減できる。好ましくは、縦延伸工程でのロール数を10本以上とするのがよい。
【0056】
また、複数のロールの相対的な速度の関係を、フィルムの温度や張力による変形量に対して最も近い速度プロファイルに設定することでフィルムの縦方向のズレを低減することができる。さらに、後述する接着改質層形成用の塗布液の塗布工程において、乾燥条件を、ドライヤー区間の初期で乾燥を完了し、出口にかけて冷却することにより、ドライヤー出口でのフィルム温度を40℃以下として、温度変化によるフィルムのずれを低減することもできる。
【0057】
また、フィルム走行時の張力が低すぎると把持力が下がってずれが発生し、高すぎても応力変形が大きくなってずれが発生するため、最適な張力範囲である4.9〜29.4MPaになるように駆動ロール速度と張力調整手段によって調節することが好ましい。また、製造時の使用温度におけるフィルムとロール間の摩擦係数を0.2以上とすることでロール表面でのフィルムのずれを抑制することができる。
【0058】
さらに、フリーロールについては特殊ベアリングを採用し、19.6N以下の回転抵抗とすることが好ましい。駆動ロールについては回転斑を0.01%以下に制御するのが好ましい。
【0059】
以上、逐次二軸延伸法について説明したが、延伸手法は同時二軸延伸法であってもよい。また、多段延伸法であっても構わない。
【0060】
また、フィルムの滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性や、耐摩耗性、耐スクラッチ性などの摩耗特性を改善するために、基材のポリエステルフィルム中に不活性粒子を一般的に含有させている。しかしながら、前記のポリエステルフィルムを反射防止フィルムの基材フィルムとして用いる場合、高度な透明性を維持しながらハンドリング性に優れていることが要求される。透明性の点から、基材の易接着性ポリエステルフィルムの全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上が特に好ましい。全光線透過率は高いほど透明性に優れるが(100%が理想)、ハンドリング性は低下し、工業レベルでの生産が困難となる。したがって、ハンドリング性の維持と透明性に対する実用特性の点から、全光線透過率の上限値は96%でかまわない。
【0061】
透明性の点からは、基材フィルム中の不活性粒子は光を散乱させる原因となるため、粒子の含有量はできるだけ少ないほうが好ましい。したがって、フィルムの表層のみに粒子を含有させた多層構成にするか、あるいは、フィルム中に実質的に粒子を含有させず、塗布層にのみ微粒子を含有させる積層構造を採用することが好ましい。
【0062】
特に、透明性の点から、ポリエステルフィルム中に不活性粒子を実質上含有させない場合は、フィルムのハンドリング性を向上させるために、無機及び/または耐熱性高分子粒子を水系塗布液中に含有させ、塗布層表面に凹凸を形成させることが重要である。なお、「不活性粒子が実質上含有されていない」とは、例えば、無機粒子の場合、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、検出限界以下となるような含有量を意味する。これは、積極的に粒子を含有させなくても、原料ポリマー製造時やフィルム製造時に外部から異物が混入する場合や、装置内部の汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0063】
<塗布層>
本発明の反射防止フィルムは、塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムの塗布層の表面にハードコート層と反射防止層がこの順に積層されている。本発明において、二軸延伸ポリエステルフィルムとハードコート層の間の中間層は、水性ポリエステル樹脂(A)と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)とを主たる構成成分とし、(A)/(B)の混合比(質量比)が10/90〜95/5である水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸された塗布層であることが重要である。該塗布層の上記構成成分(A)と(B)の組成比(A/B;質量比)は、15/85〜90/10がより好ましい。
【0064】
前記塗布層は、ポリエステルフィルムの延伸工程中の熱で加熱することにより、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、またはジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)が、ポリエステル樹脂との架橋反応により均一な膜を生成する。すなわち、前記の金属キレート化合物または金属アシレート化合物は加熱処理することにより分解するため、前記化合物は、加熱処理後の塗布層中には塗布液に添加した状態では存在しない。
【0065】
そこで、熱処理後の塗布層中の金属元素(TiまたはZr)の含有量から、塗布液中の金属キレート化合物または金属アシレート化合物の含有量は、以下のように算出する。
(1)まず、塗布層中のキレートまたはアシレートの残渣から塗布液中に含有させたキレートまたはアシレートの種類を同定する。
(2)次いで、塗布層中の金属元素(TiまたはZr)の含有量から、塗布液中の前記の金属キレート化合物または金属アシレート化合物の含有量を算出する。
【0066】
塗布層の屈折率は、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、またはジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)の組成比を大きくすることにより、ポリエステル樹脂(A)単独の場合よりも高くすることができる。塗布層の屈折率を高くするためには、塗布層に金属微粒子を含有させることでも達成することができる。しかしながら、金属微粒子を含有させることにより、塗布層の延伸性およびハードコート層と基材フィルム間の密着性は低下する。
【0067】
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)は、その分子鎖に水酸基やカルボキシル基等の活性部位を導入してもよいが、特に導入しなくとも高温でエステル結合部位が可逆反応を起こすため、任意の場所で架橋反応が起こり、結果として緻密な膜が得られる。
【0068】
また、アクリル樹脂で同様な架橋性を持たせるためには、架橋性官能基を導入する必要がある。しかしながら、アクリル樹脂自体の屈折率が低いために、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、またはジルコニウムアシレート化合物を併用しても、本発明の塗布層と同様な屈折率に制御することは困難である。
【0069】
さらに、塗布層の構成成分であるポリエステル樹脂(A)は、ポリエステルフィルムとの密着性に関与するため、水性ポリエステル樹脂(A)と前記化合物(B)との組成比(A/B)が10/90未満の場合、基材フィルムとの密着性が低下し、かつ塗布層としての延伸性が低下し、延伸時に均一にならない。そのため、光学用として必要な透明性が低下し、塗布層の上に形成させるハードコート層との密着性が問題となる。一方、水性ポリエステル樹脂(A)と前記化合物(B)との組成比(A/B)が95/5を越える場合、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物(B)による架橋が乏しくなるとともに、屈折率も低下する。そのため、高温高湿下での密着性(耐湿熱性)が低下し、かつ蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となる。
【0070】
本発明の水性ポリエステル樹脂(A)とは、水、または水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール、アルキルセロソルブ、ケトン系、エーテル系を50質量%未満含む水溶液)、に対して溶解または分散することが可能なポリエステル樹脂を意味する。ポリエステル樹脂に水性を付与するためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリエステル樹脂の分子鎖に導入することが重要である。前記の親水性基のなかでも、塗膜物性及び密着性の点からスルホン酸基が好ましい。
【0071】
スルホン酸基をポリエステルに導入する場合、スルホン酸化合物は、ポリエステルの全酸成分中のうち、1〜10モル%とすることがより好ましい。スルホン酸基量が1モル%未満の場合、ポリエステル樹脂が水性を示さなくなり、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)との相溶性も低下するため、均一かつ透明な塗布層が得られにくくなる。また、スルホン酸基量が10モル%を超える場合には、高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に劣りやすくなる。
【0072】
さらに、前記の水性ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が40℃以上であることが好ましい。そのため、ポリエステル樹脂(A)の酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系を主成分とすることが好ましい。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の比較的炭素数の少ないグリコール、またはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の芳香族系が好ましい。また、ポリエステル樹脂(A)の原料として、ビフェニル等の剛直な成分、または臭素、イオウ等の屈折率の高い原子を有するジカルボン酸成分またはジオール成分をフィルムの物性が低下しない範囲で使用してもよい。ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が40℃未満であると、高温高湿下での密着性(耐湿熱性)が不十分となりやすくなる。さらに、ポリエステル樹脂(A)の屈折率も低下するために塗布層の屈折率も低下する。その結果、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制が不十分となりやすくなる。
【0073】
塗布層の他の主成分は、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)である。前記の水溶性とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液、に対して溶解することを意味する。
【0074】
水溶性のチタンキレート化合物としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンのアンモニウム塩、チタンベロキソクエン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0075】
また、水溶性のチタンアシレート化合物としては、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)等が、また水溶性のジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
【0076】
前記の塗布層には、前記の主成分以外の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコールなどのビニル樹脂、を本発明の効果に影響を与えない範囲で併用してもかまわない。また、架橋剤の併用も本発明の効果に影響を与えない範囲で特に限定されない。使用できる架橋剤としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂、多官能性エポキシ化合物、多官能性イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、多官能性アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、などが挙げられる。
【0077】
本発明において、塗布層形成のために使用する塗布液は、水性ポリエステル樹脂(A)と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)と、水系溶剤から主としてなる水系塗布液である。上記水系塗布液をポリエステルフィルム表面に塗布する際には、フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一にコートするために、公知のアニオン性界面活性剤やノニオン系界面活性剤を適量添加することが好ましい。
【0078】
また、水系塗布液中には、ハンドリング性、帯電防止性、抗菌性など、他の機能性をフィルムに付与するために、無機及び/または耐熱性高分子粒子、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を含有させることができる。
【0079】
塗布液に用いる溶剤は、水以外にエタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類を、全塗布液に対し50質量%未満の範囲で混合しても良い。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。但し、塗布液中のアルコール類とその他の有機溶剤との合計量は、50質量%未満とすることが好ましい。
【0080】
<基材フィルムの製造>
本発明の反射防止フィルムの基材となる易接着性ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルムを例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0081】
PET樹脂を十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、Tダイから約280℃の溶融PET樹脂を回転冷却ロールにシート状に溶融押出しし、静電印加法により冷却固化せしめて未延伸PETシートを得る。前記未延伸PETシートは、単層構成でもよいし、共押出し法による複層構成であってもよい。前述のごとく基材フィルムを構成するポリエステルフィルムが少なくとも3層よりなる複層構成で、基材中間層のみが紫外線吸収剤を含有し、両表層における紫外線吸収剤を実質的に含有していない構成が好ましい。また、PET樹脂中に不活性粒子を実質的に含有させないことが好ましい。
【0082】
得られた未延伸PETシートを、80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍に延伸して、一軸延伸PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、70〜140℃に加熱された熱風ゾーンに導き、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き、160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行ない、結晶配向を完了させる。
【0083】
このフィルム製造工程の任意の段階で、PETフィルムの少なくとも片面に、前記の水系塗布液を塗布する。塗布層はPETフィルムの両面に形成させてもよい。水系塗布液中の樹脂組成物の固形分濃度は、2〜35質量%であることが好ましく、特に好ましくは4〜15質量%である。
【0084】
この水系塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられ、これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
【0085】
本発明においては、塗布層は、未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムに前記水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って形成させることが重要である。前記塗布液が塗布されたフィルムは、横延伸及び熱処理のためにテンターに導かれ、加熱される。その際、キレート化合物またはアシレート化合物は、熱架橋反応により安定な架橋塗布層を形成することができる。それに対して、二軸延伸PETフィルムに前記塗布液を塗布、乾燥させて得た塗布層の場合には、熱処理によるポリエステルフィルムの透明性の悪化、物性の変動を小さくするため、熱量を抑制せざるを得ない。そのため、熱架橋反応を行うのに熱量が不足し、均一な架橋塗布層を形成することができない。
【0086】
本発明において、最終的に得られる塗布層の塗布量は、0.02〜0.5g/m2 であることが好ましい。塗布層の塗布量が0.02g/m2 未満であると、接着性に対する効果がほとんどなくなるばかりでなく、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。一方、塗布量が0.5g/m2 を越える場合も、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。
【0087】
本発明においては、ハードコート層との密着性向上および干渉縞の抑制の機能を塗布層に発現させるために、塗布層の形成をポリエステルフィルムの製造工程で行う、いわゆるインラインコート法で行うことが重要である。インラインコート法は、オフラインコート法に比べて高温での処理が可能であり、ハードコート層との耐久密着性が向上するとともに、経済性の点でも有利である。また、インラインコート法であるために、塗布後、塗布膜が延伸され塗膜の厚みが薄くなるので、塗布量の変動による塗膜の厚み変動がオフラインコート法よりも抑制されるという利点がある。本発明においては、塗膜の厚み変動により、干渉縞の低減効果が大きく変動する。そのため、インラインコート法で塗膜の厚み変動を抑制することにより、干渉縞の低減を安定して行うことができるという利点がある。
【0088】
(ハードコート層)
本発明の反射防止フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルム/中間塗布層/ハードコート層/反射防止層からなる積層構造を有する。
【0089】
反射防止層の下地のハードコート層は、反射防止層における表面の傷付き防止のために設けられる。そのため、ハードコート層は、JIS−K5400に準拠する鉛筆硬度試験で、H以上の硬度を有することが好ましいく、特に好ましくは2H以上の硬度である。また、反射防止フィルムに用いられるハードコート層は、透明であることが重要である。これらの特性を満足すれば、ハードコート層の組成は限定されない。
【0090】
一般的に、ハードコート層は、熱硬化型樹脂及び/または電離放射線型樹脂から構成される。未硬化の熱硬化型樹脂及び/または電離放射線型樹脂を含む塗工液を、透明基材シート上に、公知の塗工方法を用いて塗工、硬化させることによって、形成される。ハードコート層の厚みは、1〜15μmであることが好ましい。ハードコート層の厚みが1μm未満であると、ハードコート層としての耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等に対する効果がほとんどなくなる。一方、厚みが15μmを越えると、ハードコート層のフレキシブル性が低下し、亀裂等が発生する可能性が増加する。また、その形成時における硬化時間が長くなって生産性を低下させ、製造コストを高くすることにもなるので好ましくない。
【0091】
本発明においては、得られる反射防止フィルムに優れた反射防止性に加えて防眩性をも付与する目的で、ハードコート層、接着層又はプライマー層に微細凹凸形状を設けることができる。ハードコート層(の凹凸形状)は、反射防止層と直接に接触するものであり、ハードコート層の屈折率は、反射防止層の屈折率よりも小さく形成する。
【0092】
本発明において、前記のハードコート層は、基材の易接着性ポリエステルフィルムの少なくとも片面の塗布層に、前記の電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂を含むハードコート層形成用塗布液を塗布する。塗布液は特に希釈する必要はないが、塗布液の粘度、濡れ性、塗布層の厚み等に応じて、有機溶剤により希釈してもよい。ハードコート層は、前記の易接着ポリエステルフィルムの少なくとも片面の塗布層上に前記ハードコート層形成用塗布液を塗布後、必要に応じて乾燥させた後、硬化型樹脂の硬化条件に合わせて、電子線または紫外線を照射し、及び加熱することにより塗布層を硬化させることにより、ハードコート層を形成する。
【0093】
前記の熱硬化型樹脂及び/または電離放射線型樹脂(これらを総称して、本発明では反応硬化型樹脂と称することがある。)としては、例えば、アクリレート系の官能基をもつもの、比較的低分子量のポリエステル、ポリエーテル、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン、ポリチオールポリエン系樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート(以下、アクリレートとメタクリレートとを(メタ)アクリレートと記載する。)等のオリゴマー又はプレポリマー及び反応性の希釈剤であるエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、へキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含むもの、が例示される。
【0094】
さらに、前記の電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用するときは、これらの中に光重合開始剤として、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して使用することが好ましい。
【0095】
上記の電離放射線硬化型樹脂には、一般式RmSi(OR′)nで表される反応性有機ケイ素化合物(式中のR、R′は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m+n=4であり、そしてm及びnはそれぞれ整数である。)を含ませることもできる。該ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0096】
また、ハードコート層に導電性微粒子を配合して、反射防止フィルムに帯電防止性を付与することは、好ましい実施態様の一つである。
【0097】
上記ハードコート層の屈折率は、反射防止フィルム用に汎用されている1.5近辺のものが適用可能である。一方、ハードコート層の屈折率を通常よりも高くして、後述する反射防止層の層数を低減する手段を採用することも好ましい実施態様の一つである。
【0098】
(反射防止層)
本発明においては、上記のハードコート層の表面に、反射防止層を積層し、該反射防止層表面の550nmにおける反射率を2.0%以下にすることが重要である。前記反射率は1.6%以下がより好ましく、1.2%以下がさらに好ましい。反射率が2.0%を超える場合は、反射防止性が悪化するので好ましくない。反射率は0%が最も好ましいが、0.01%未満にすることは技術的に困難である。
【0099】
該反射防止層の組成やその形成方法は、上記特性を満足すれば限定されない。例えば、反射防止層に用いる材料は、無機、有機およびこれらのハイブリット化合物のいずれでも構わない。また、形成方法も前述した基材の表面に、蒸着法やスパッタリング法により反射防止膜を形成するドライコーティング法、基材の表面に反射防止用塗布液を塗布し乾燥させることにより反射防止膜を形成するウエットコーティング法、あるいはそれらの併用法のいずれの方法で実施しても構わない。
【0100】
反射防止層における層の数も限定はなく、単層であっても、2層以上の復層であっても構わない。なお、少なくとも一層はハードコート層の屈折率の低い層を設けることが好ましい。
【0101】
一般に、ドライコーティング法は、製膜速度が遅く生産性におとるので、経済性の点より、ウエットコーティング法や併用法で実施するのが好ましい。また、反射防止層表面に防汚性を付与する場合には、反射防止層の最上層はフッ素系化合物を用いた低屈折率の層を形成させることが好ましい実施態様である。
【実施例】
【0102】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0103】
(1)ガラス転移温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、25〜300℃の温度範囲にわたって20℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
【0104】
(2)全光線透過率
JIS K7105に準拠し、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を使用して、フィルムの全光線透過率を求めた。
【0105】
(3)光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として波長300〜500nm領域の光線透過率を測定して、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
【0106】
(4)フィルム表面キズ評価
250mm×250mmのフィルム片16枚について評価する。この評価は製膜開始から24時間後のものについて評価することとする。投光器として20W×2灯の蛍光灯をXYテーブル下方400mmに配置し、XYテーブル上に設けたスリット幅:10mmのマスク上に測定対象の試験片を載置する。投光器と受光器を結ぶ線と、試験片表面の鉛直方向とのなす角度を12°となるように光を入射すると、入射位置の試験片にキズが存在する場合に、その部分が光り輝く。その部分の光量をXYテーブル上方500mmに配置したCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、その電気信号を増幅し、微分してスレッシュホールド(しきい値)レベルとコンパレータで比較して、光学欠点の検出信号を出力する。また、CCDイメージセンサカメラを用いて、キズの画像を入力し、入力された画像のビデオ信号を所定の手順により解析して、光学欠点の大きさを計測し、50μm以上の欠点の位置を表示する。この方法による光学欠点の検出は、試験片の両面について行う。
【0107】
上記方法において検出される光学欠点部分から、キズによる欠点を選出する。上記方法でキズと判定された部分を適当な大きさに裁断し形状観察用試験片を採取する。この試験片について、3次元形状測定装置(マイクロマップ製、TYPE550)を用いて、試験片の欠点を検出した表面に対して垂直方向から観察し、キズの大きさを測定する。なお、試験片、すなわちフィルムの表面に対して垂直方向から観察した時に、50μm以内に近接するキズの凹凸は同一のキズとする。これらのキズの最外部を覆う最小面積の長方形の長さおよび幅を、キズの長さおよび幅とする。これらのキズの深さ(キズの最も高いところと最も低いところの高さの差)および長さを計測する。この結果より、深さ:1μm以上で且つ長さ:3mm以上のキズの個数(個/m2)を求め、以下の基準により判定する。
◎:30個/m2以下
○:31〜50個/m2
△:51〜100個/m2
×:100個/m2以上
【0108】
(5)フィルム表面の異物評価
上記のキズ評価において、記載した方法で検出した光学欠点の中から、異物起因の欠点を選別し、該部分の試験片をサンプリングする。該試験片の欠点が検出された面に、Al蒸着を行い、非接触式三次元粗さ計(マイクロマップ製、TYPE550)でフィルム面に対して垂直方向から観察する。最大径が20μm以上の異物の個数(個/m2)を求め、以下の基準により判定する。
◎:2個/m2以下
○:3〜5個/m2
△:6〜10個/m2
×:11個/m2以上。
【0109】
(6)フィルムの厚み方向における紫外線吸収剤の偏在性評価
FT−IRによりフィルムの表層におけるポリエステルの特性吸収に対する紫外線吸収剤の特性吸収の吸光度比Xと、積層ポリエステルフィルム(B)の厚み方向での中央部におけるポリエステルの特性吸収に対する紫外線吸収剤の特性吸収の吸光度比Yを、下記方法で測定し、X/Yで表示する。値が小さいほど紫外線吸収剤の偏在度が高いことを意味する。
【0110】
上記Xは、下記の方法で求める。まず、ブランク試料(紫外線吸収剤を含有しないポリエチレンテレフタレートフィルム)の表層のIRスペクトル(I)と、評価用フィルムの表層IRスペクトル(II)を測定する。次いで、(I)と(II)の差スペクトルをとり、1700〜1800cm-1での吸光度(紫外線吸収剤の特徴的な吸収)と、(II)のIRスペクトルから得られる1505cm-1での吸収(ポリエチレンテレフタレートの吸収)との吸光度比(1700〜1800cm-1/1505cm-1)を求め、Xとする。
【0111】
また、評価用フィルムを厚み方向について、全厚みの50%を削り取り、剥き出しになった面(フィルム厚み方向での中央部)について、上記と同様の測定を行って吸光度比を求め、Yとする。
【0112】
なお、IRスペクトルはFT−IR装置(Digilab製、FTS−7000e)を用い、下記条件で測定する。
1回反射ATR装置 : Thermo Spectra−Tech社製
「Thunderdome」
IRE : Ge
入射角 : 45°
分解能 : 8cm-1
積算回数 : 128回
【0113】
(7)初期密着性
ハードコートフィルムをJIS−K5400の8.5.1記載に準拠し、ハードコート層と基材フィルムとの密着性を求める。
【0114】
具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープをハードコートフィルムのハードコート層面から引き剥がして、ハードコートフィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数える。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
【0115】
(8)耐湿熱性
前記のハードコートフィルムを、高温高湿槽中で60℃、95RH%の環境下500時間放置し、次いで、ハードコートフィルムを取りだし、室温で12時間放置した。
その後、前記(4)と同様の方法でハードコート層と基材フィルムとの密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%
○:96%以上100%未満
△:80%以上96%未満
×:80%未満
【0116】
(9)干渉縞改善性(虹彩状色彩)
前記のハードコートフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層面とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工株式会社製、ビニルテープ No21;黒)を貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして、3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として、斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40〜60cm、15〜45°の角度)で観察した。
【0117】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0118】
(10)反射率
分光光度計(島津製作所製、UV−3150)を用い、波長550nmにおける光線反射率を反射防止層側の表面から測定した。反射率の単位は%である。
【0119】
(11)鉛筆硬度
JIS−K5400で示される鉛筆硬度試験法に準拠して、反射防止層の表面の鉛筆硬度を測定した。
【0120】
(ポリエステル樹脂の重合)
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート186質量部、ジメチルイソフタレート186質量部、ジメチル 5−ナトリウムスルホイソフタレート23.7部、ネオペンチルグリコール137質量部、エチレングリコール191質量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
【0121】
同様の方法で、他の組成の共重合ポリエステル樹脂(A−2、A−3、A−4)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、NMRで測定した組成および重量平均分子量の結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
実施例1
(a)ポリエステルの水分散液の調整
撹拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(A−1)20質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル15質量部を加え、撹拌下、100℃で加熱しながら樹脂を溶解した。樹脂を完全に溶解した後、水65質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分20質量%で、乳白色をしたポリエステルの水分散液(B−1)を作成した。同様にポリエステル樹脂(A−1)の代わりに、ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−4)を使用して、水分散液を作成し、それぞれ水分散液(B−2)〜(B−4)とした。
【0124】
(b)塗布液の調整
得られたポリエステル水分散液(B−1)40質量部、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンの44質量%溶液(松本製薬(株)製、TC310)18質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−1)と略記する)。
【0125】
(c)紫外線吸収剤含有マスターバッチの調整
乾燥させた紫外線吸収剤(サイテック製、CYASORB UV−3638;2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)90質量部を混合し、混練押出機を用い、マスターバッチを作製した。この時の押し出し温度は285℃であり、押し出し時間は7分であった。
【0126】
(d)塗布層を有する易接着性ポリエステルフィルム(基材フィルム)の製造
固有粘度が0.62dl/gで、粒子を実質上含有しないポリエチレンテレフタレート樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)90質量部と、上記方法で調整した紫外線吸収剤含有マスターバッチ10質量部とを、135℃で6時間減圧乾燥(133Pa)した後、押出機2(中間B層用)に供給した。粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)を135℃で6時間減圧乾燥(133Pa)した後、押出機1(外層A層用及び外層C層用)にそれぞれ供給した。押出機、溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度を280℃とし、その後のポリマー管では275℃とし、3層合流ブロックにて積層し、ダイの口金よりシート状にして押し出した。
【0127】
これらのポリマーは、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が275℃になるように制御した。溶融押出された樹脂を、静電印加キャスト法を用いて、表面温度30℃のキャスティングドラム(ロール径400φ、Ra0.1μm以下)に巻きつけて冷却固化し、未延伸シートを作った。この時の吐出量は48kg/hrであり、得られた未延伸シートは幅300mm、厚さ1400μmであった。また、両表層の厚さの比率が全厚みに対して、それぞれ10%となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0128】
次に、上記キャストフィルムを加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.5倍延伸して、一軸配向フィルムを得た。該フィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
【0129】
次いで、前記塗布液(C−1)を濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法でPETフィルムの片面に乾燥後の塗布量が0.5g/m2 になるように塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。塗布後、引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に4.0倍に延伸し230℃にて5秒間熱処理し、この熱処理工程中で幅方向に3%の弛緩処理し、塗布層を有する易接着性ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの厚さは100μmであり、塗布層の塗布量は0.01g/m2であった。また、得られた易接着性ポリエステルフィルムは、その表面における傷や異物が少なく高品質であった。
【0130】
(e)ハードコートフィルムの製造
前記の易接着性ポリエステルフィルムの塗布面に、ハードコート剤(大日精化製、セイカビームEXF01(B);固形分100質量%)5質量部にメチルエチルケトン5質量部を加えた溶液を、#8ワイヤバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムを送り速度5m/分で走行させながら、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー200mJ/cm2 、照射距離15cmの条件下で、ハードコート層面に紫外線を照射し、厚み3μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
【0131】
(f)反射防止フィルムの製造
(高屈折率コーティング剤の調製)
メチルメタアクリレート 80部、メタアクリル酸 20部、アゾイソブチロニトリル 1部、イソプロピルアルコール 200部を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下80℃で7時間反応させて、重量平均分子量30000のポリマーのイソプロピルアルコール溶液を得た。得られたポリマー溶液をさらにイソプロピルアルコールで固形分5%まで希釈し、アクリル樹脂溶液Bを得た。次いで、得られたアクリル樹脂溶液Bを、以下のように混合して、高屈折率層形成用塗布液を得た。
【0132】
・アクリル樹脂溶液B 5質量部
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル 0.25質量部
・平均粒径20nmの酸化チタン粒子 0.5質量部
・トリフェニルホスフィン 0.05質量部
・イソプロピルアルコール 14.25質量部
【0133】
(低屈折率コーティング剤の調製)
2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(45質量部)、パーフルオロオクチルエチルアクリレート(45質量部)、アクリル酸(10質量部)、アゾイソブチロニトリル(1.5質量部)、メチルエチルケトン(200質量部)を反応容器に仕込み、窒素雰囲気下80℃で7時間反応させて、重量平均分子量20,000のポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。得られたポリマー溶液を、メチルエチルケトンで固形分濃度5質量%まで希釈し、フッ素ポリマー溶液Cを得た。得られたフッ素ポリマー溶液Cを、以下のように混合して、低屈折率層形成用塗布液を得た。
【0134】
・フッ素ポリマー溶液C 44質量部
・1,10−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)− 1質量部
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,
8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン
(共栄社化学製、フルオライトFE−16)
・トリフェニルホスフィン 0.1質量部
・メチルエチルケトン 19質量部
【0135】
(反射防止フィルムの作製)
ハードコート層上に、上記方法で得られた高屈折率層形成用塗布液を塗布し、150℃で2分間乾燥し、膜厚0.1μmの高屈折率層を形成した。この高屈折率層の上に、上記方法で得られた低屈折率層形成用塗布液を塗布し、150℃で2分間乾燥し、膜厚0.1μmの低屈折率層を形成した。次いで、得られたフィルムに、紫外線を1000mJ/cm2の出力で照射してハードコート層を完全に硬化させ、反射防止フィルムを得た。
【0136】
実施例2
ポリエステル水分散液(B−2)48質量部、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンの44質量%溶液(松本製薬(株)製、TC310)15質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−2)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−2)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0137】
実施例3
ポリエステル水分散液(B−3)12質量部、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタンの80質量%溶液(松本製薬(株)製、TC400)17質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−3)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−3)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0138】
実施例4
ポリエステル水分散液(B−4)24質量部、ジイソプロポキシビス(アセチルアセナト)チタンの11質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−4)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−4)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0139】
実施例5
ポリエステル水分散液(B−4)32質量部、ジルコニウムアセテート10質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−5)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−5)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0140】
比較例1
ポリエステル水分散液(B−1)80質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−6)と略記する)。この塗布液を用いて、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−6)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0141】
比較例2
ポリエステル水分散液(B−1)64質量部、ブロックイソシアネート基を有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(第一工業製薬製、エラストロンH−3)10質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)1質量部、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−7)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−7)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0142】
比較例3
ヒドロキシビス(ラクタト)チタンの44質量%溶液(松本製薬(株)製、TC310)40質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−8)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−8)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0143】
比較例4
ポリエステル水分散液(B−2)32質量部、ブロックイソシアネート基を有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(第一工業製薬製、エラストロンH−3)5質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)0.5質量部、酸化ニオブゾル10質量%水溶液(多木化学(株)製、SAM−0)64質量部、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−9)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−9)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0144】
比較例5
固形分濃度20質量%のアクリル樹脂エマルジョン(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=60/40/2/4;質量比)80質量部、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン3.2質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−10)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−10)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0145】
比較例6
固形分濃度20質量%のアクリル樹脂エマルジョン(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=25/75/4/2:質量比)48質量部、チタン変性水性樹脂(松本製薬(株)製、オルガチックスWS680)6.4質量部、水150質量部およびイソプロピルアルコール100質量部をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−11)と略記する)。
実施例1において、塗布液のみを塗布液(C−11)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層を有する二軸延伸PETフィルムおよび反射防止フィルムを得た。
【0146】
比較例7
実施例1において、基材フィルム製造時に塗布層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、未コートの二軸延伸PETフィルムを得た。この未コートフィルムの片面に、実施例1と同様の方法で、ハードコート層、次いで反射防止層を積層する反射防止フィルムを得た。
【0147】
比較例8
実施例1において、ハードコート層を形成せずに、基材フィルムの塗布層に直接反射防止層を積層したこと以外は実施例1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
【0148】
比較例9
実施例1において、反射防止層を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。評価結果を表2に示す
【0149】
比較例10
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の押し出しおよびキャスティングを単層にし、紫外線吸収剤を含む層のみとし、塗布層の積層を取り止め、かつ反射防止層の積層を取り止めるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。
【0150】
基材フィルムの塗布層構成を表2に、基材フィルム、ハードコートフィルム、反射防止フィルムのフィルム特性を表3に示す。
【0151】
【表2】

【0152】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の反射防止フィルムは、光反射防止性に優れ、蛍光灯下、特に、昼光色の再現性のため3波長形の昼光色蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ基材フィルムとハードコート層との密着性、高温高湿下での密着性(耐湿熱性)に優れ、さらに経済性に優れているため、タッチパネル、液晶表示板(LCD)、テレビやコンピューターのブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出ディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)、電子ペーパー等の表示画面の前面に装着する光学用機器の部材や装飾材等として有用であり、産業界に大きく寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布層を有する基材フィルムと、該基材フィルムの塗布層の表面にハードコート層と反射防止層がこの順に積層されてなる反射防止フィルムであって、前記の基材フィルムが、水性ポリエステル樹脂(A)と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)とを主たる構成成分とし、(A)/(B)の混合比(質量比)が10/90〜95/5である水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸された塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムであり、前記の反射防止層表面の波長550nmにおける反射率が2.0%以下であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記の基材フィルムは、全光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記の水性ポリエステル樹脂(A)が、スルホン酸金属塩基を含有する芳香族ジカルボン酸成分をポリエステルの全ジカルボン酸成分に対し1〜10モル%含有する共重合ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記の水性ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が40℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記のハードコート層は、電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂を構成成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。

【公開番号】特開2006−205668(P2006−205668A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23833(P2005−23833)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】