説明

反射防止フィルム

【課題】反射防止性能を保ちつつ、十分なガスバリア性を有する反射防止フィルムとすることで、基材の寸法変化、劣化のない反射防止フィルムとすることを目的とする。
【解決手段】基材上に、屈折率が1.35〜2.0である水蒸気遮断性金属化合物層、屈折率1.3〜1.6の低屈折率層を有することを特徴とする反射防止フィルムとする。また、前記反射防止フィルムは、水蒸気遮断性が20℃、60%の条件下で50g/m/day以下であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気バリア性を示す反射防止フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、互いに直交する直線偏光成分のうち一方の直線偏光成分を吸収して他方の直線偏光成分透過させる色素(二色性色素)を一軸延伸フィルムに吸着させたものが主流である。一般的に、色素としてヨウ素系物質、一軸延伸フィルムとしてポリビニルアルコール(PVA)系を用いることが多い。
【0003】
ディスプレイ用途の偏光板としては、前述のヨウ素系物質を吸着させたPVA系フィルムをトリアセチルセルロース(TAC)系フィルムで挟んだ構造で用いる場合が多い。
【0004】
液晶ディスプレイの前面には外光からの反射による映り込みを防ぐために、前面の表面に反射防止又は減反射層などを設けることが多い。具体的には、液晶ディスプレイに用いられる2枚の偏光板のうち、最表面側の偏光板上に反射防止又は減反射層が設けられる。
また、偏光板上と反射防止又は減反射層の間にハードコート層を設けることもある。
【0005】
しかし、トリアセチルセルロースなどの酢酸セルロース系のフィルムは吸水率が大きいため、温度や湿度の変化に応じて、水分を吸収したり、放出したりし、寸法変化、脱色、変色などの劣化を起こすことがある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−91705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、反射防止性能を保ちつつ、十分なガスバリア性を有する反射防止フィルムとすることで、基材の寸法変化、劣化のない反射防止フィルムとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、基材上に、屈折率が1.35〜2.0である水蒸気遮断性金属化合物層、屈折率1.3〜1.6の低屈折率層を有することを特徴とする反射防止フィルムである。
【0009】
請求項2記載の発明は、水蒸気遮断性が20℃、60%の条件下で50g/m/day以下であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムである。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記水蒸気遮断性金属酸化物層が、SiOx(x=1.3〜1.99)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルムである。
【0011】
請求項4記載の発明は、低屈折率層がSiOx(x=1.9〜2.2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルムである。
【0012】
請求項5記載の発明は、最上層に易滑層を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルムである。
【0013】
請求項6記載の発明は、前記基材がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルムである。
【0014】
請求項7記載の発明は、前記基材が偏光板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば十分な反射防止性能を有し、かつ水蒸気等の影響による基材の寸法変化、劣化のない反射防止フィルムとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に用いる基材は、特に限定するものではなく、公知のプラスチックフィルムを用いることができる。特に水分による加水分解、脱色変色などの劣化度合いの大きいトリアセチルセルロースフィルム(TAC)を用いた時に効果を発揮する。また、基材としては偏光板を用いても良い。偏光板としては、ヨウ素系物質を吸着させたPVA系フィルムをトリアセチルセルロース(TAC)系フィルムで挟んだものなどが挙げられる。
【0017】
本発明の水蒸気遮断性金属酸化物層は、最終的に積層体としたときに反射率の上昇のないもので、十分な水蒸気遮断性があればよい。
具体的には屈折率が1.35〜2.0である金属化合物が好ましく、例えば、酸化ケイ素(屈折率=1.46)、酸化アルミニウム(屈折率=1.67)、フッ化マグネシウム(屈折率=1.38)などが好ましい。特に屈折率と水蒸気遮断性の点から酸化ケイ素が好ましく、中でもSiOx(x=1.3〜1.99)であると良い。SiOx(x=1.3〜1.99)であれば、反射防止フィルムとしたときに低い反射率と十分な水蒸気遮断性を両立するものである。
また、水蒸気遮断層の膜厚は10〜200nmの範囲内、光学膜厚(nd)は、15〜350nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、水蒸気遮断性を有しかつ上の低屈折率層と合わせて反射防止性能を発揮することができる。
【0018】
本発明の低屈折率層は、屈折率1.3〜1.6の金属化合物を用いる。中でも屈折率の点からSiOx(x=1.9〜2.2)(屈折率=1.3〜1.6)であることが好ましい。
また低屈折率層の光学膜厚は10〜200nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば十分な反射防止性能を発揮することができる。
【0019】
また、本発明の反射防止フィルムの水蒸気透過率は、水蒸気遮断性が20℃、60%の条件下で50g/m/day以下であることが好ましい。
この範囲内であれば、水分による基材の寸法変化、脱色変色などの劣化を防ぐことができる。
【0020】
また、前記低屈折率層上には、易滑層を設けることができる。
易滑層としては、フッ素系の材料あるいはフッ素を含まない材料であっても、機能を満足できれば構わない。すなわち接触角で80度以上であれば構わない。
【0021】
また、基材と水蒸気遮断性金属化合物層の間には、硬質層を設けてもよい。硬質層としては公知のハードコート、防眩性ハードコート、帯電防止性ハードコートなどが挙げられる。
【0022】
ハードコートとしては、例えばアクリル樹脂系又は酸化ケイ素系の硬質皮膜が挙げられる。また、厚みとしては、透明性、ハードコート性、などを考慮すると、1〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0023】
防眩性ハードコートとしては、アクリル樹脂系又は酸化ケイ素系のマトリックスに、粒径0.1〜10μmの酸化ケイ素などの金属酸化物微粒子又は有機微粒子を加えたものが挙げられる。また、厚みとしては、透明性、ハードコート性、などを考慮すると、1〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0024】
帯電防止性ハードコートとしては、アクリル樹脂系又は酸化ケイ素系のマトリックスに、導電性の微粒子を加えたものが挙げられる。導電性の微粒子としては、酸化アンチモン系、酸化スズ系、酸化亜鉛系、酸化インジウム系などが挙げられる。また、厚みとしては、透明性、ハードコート性、などを考慮すると、1〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【実施例1】
【0025】
基材として、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた。この上に、ハードコート層として、アクリル樹脂をダイコート法により設け(乾燥膜厚5μm)、さらに水蒸気遮断性金属化合物層として、屈折率1.6、膜厚の20nmのSiO1.7を真空蒸着法により設け、その上に低屈折率層として、屈折率1.45、膜厚20nmのSiO2を真空蒸着法により設け、さらに易滑層としてポリシリコーンを設け(膜厚2nm)本発明の反射防止フィルムを得た。
【0026】
<比較例1>
基材として、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた。この上に、ハードコート層として、アクリル樹脂をダイコート法により設け(乾燥膜厚5μm)、さらに低屈折率層として、屈折率1.45、膜厚40nmのSiO2を真空蒸着法により設け、比較例の反射防止フィルムを得た。
【0027】
<評価>
実施例、比較例の反射防止フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(光線透過率)
紫外・可視分光光度計による550nmでの透過率を測定した。
(水蒸気透過率)
MOCON社製PERMATRANにより測定した。
(反射率)
【0028】
【表1】

【0029】
実施例の反射防止フィルムは反射率が低く、水蒸気透過率も低いものとなった。それに対し、比較例の反射防止フィルムは、反射率は低いものの、水蒸気透過率は高いものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の反射防止フィルムの層構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基材
2 ハードコート
3 水蒸気遮断層
4 低屈折率層
5 易滑層
































【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、屈折率が1.35〜2.0である水蒸気遮断性金属化合物層、屈折率1.3〜1.6の低屈折率層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
水蒸気遮断性が20℃、60%の条件下で50g/m/day以下であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記水蒸気遮断性金属酸化物層が、SiOx(x=1.3〜1.99)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
低屈折率層がSiOx(x=1.9〜2.2)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
最上層に易滑層を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記基材がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記基材が偏光板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。














【図1】
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【公開番号】特開2007−3672(P2007−3672A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181803(P2005−181803)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】