説明

反射防止フィルム

【課題】十分な反射防止性能を有し、且つ見た目の反射色の彩度を低く抑制できる反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートフィルムの一面に、第1光学干渉層及び第2光学干渉層がこの順で積層された視感度反射率1.0%以下の反射防止フィルムであって、光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとした場合、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たす。
R/G≧0.8・・・式(I)
B/G≧0.8・・・式(II)
R/G+G/G+B/G≦4.0・・・式(III)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマディスプレイ(PD)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)等に適用され、十分な反射防止性能を有し、且つ見た目の反射色の彩度が低い反射防止フィルム、及びそれを備えた光学フィルタに関連する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ディスプレイは、テレビジョン用やモニター用として広く普及している。特に、ディスプレイの薄型化や大型化が進んでおり、プラズマディスプレイ(PD)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)等が注目されている。これら大型のディスプレイには、視認性向上のために、反射防止処理を施こすと同時に、色再現性の問題から見た目の反射色の彩度が低い反射防止フィルムが求められている。
【0003】
例えば、写り込みと着色のない高画質の画像を診断画像として表示することができる医療用ディスプレイが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この医療用ディスプレイに用いられる反射防止フィルムは、透明支持体と、その上に設けられるハードコート層と、該ハードコート層上に設けられる反射防止層とを有し、該反射防止層は透明支持体側から中屈折率層、高屈曲性層及び低屈曲性層の3層で形成されている。そして、CIE標準イルミナントD65に対する正反射光の色味(a*値、b*値)などが特定範囲に設定されている。
【0004】
また、本願出願人は、透明樹脂フィルム上にハードコート層と、第1光学干渉層と、第2光学干渉層とがこの順で積層されている反射防止フィルムであって、光の波長500〜650nmの領域における反射率の振幅の差の最大値が1%以下であり、かつJIS Z8720に基づくCIE標準イルミナントD65に対するJIS Z8729に基づくabクロマCab*={(a*)2+(b*)2}1/2が5以下である反射防止フィルムを提案した(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−295055号公報
【特許文献2】特開2009−244623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で設定されているa*値、b*値や、特許文献2で設定されているabクロマCab*では、視感度反射率が1.0%以下の低反射領域において、数値としては反射色の彩度が低く示されるものの、見た目の反射色の彩度が高い場合があり、相関がとれないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、視感度反射率が1.0%以下において、見た目の反射色の彩度を十分に低くすることができる反射防止フィルム及びそれを備えた光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、第1の発明は、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一面に第1光学干渉層及び第2光学干渉層がこの順で積層された視感度反射率が1.0%以下の反射防止フィルムであって、光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとした場合、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たすことを特徴とする。
R/G≧0.8・・・式(I)
B/G≧0.8・・・式(II)
R/G+G/G+B/G≦4.0・・・式(III)
【0009】
第2の発明は、第1の発明の反射防止フィルムにおいて、ポリエチレンテレフタレートフィルムと第1光学干渉層との間に、ハードコート層が積層されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明の反射防止フィルムにおいて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの他面に近赤外線吸収粘着層を設けたことを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1から第3の発明の反射防止フィルムを前面に備えたディスプレイ用光学フィルタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。視感度反射率が1.0%以下であり、式(I)、(II)、(III)を同時に満たすことから、十分な反射防止性能を有し且つ彩度の数値と、見た目の反射色の彩度との相関をとることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。なお、本発明の反射防止フィルムは、一般にディスプレイパネルの表面に装着される光学フィルタに用いられるものであって、ディスプレイ表面における光の反射を抑制することで表示される画像の視認性を高めると共に、見た目の反射色の彩度を低く抑えることでディスプレイに表示される画像の見た目の色再現性を向上する。
【0014】
<反射防止フィルム>
本発明の反射防止フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一面に、第1光学干渉層と第2光学干渉層とがこの順に積層されており、任意にポリエチレンテレフタレートフィルムと第1光学干渉層との間にハードコート層を設けることができる。
【0015】
反射防止フィルムは、JIS Z8701で規定されているXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値Yである視感度反射率が1.0%以下であり、0.8%以下であることが好ましい。視感度反射率が1.0%を超えると、反射が大きくなってディスプレイに表示される画像の視認性が低下してしまうため好ましくない。
【0016】
また、反射防止フィルムは、光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとした場合、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たす。
R/G≧0.8・・・式(I)
B/G≧0.8・・・式(II)
R/G+G/G+B/G≦4.0・・・式(III)
上記式を満たさない場合、見た目の反射色の彩度が高くなり、ディスプレイに表示される画像の見た目の色再現性が低下するため好ましくない。
【0017】
<ポリエチレンテレフタレートフィルム>
反射防止フィルムに用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、公知の方法で製造したものを使用することができる。ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、好ましくは25〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmである。ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが25μmより薄い場合や400μmより厚い場合には、反射防止フィルムの製造時及び使用時における取り扱い性が低下して好ましくない。なお、ポリエチレンテレフタレートフィルムには、各種の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤として例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0018】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムには、第1光学干渉層、または、ハードコート層との密着性を高めるために、ポリエチレンテレフタレートフィルム表面に接着層を設けてもよい。
【0019】
<第1光学干渉層>
第1光学干渉層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、または、ハードコート層の上に形成される層である。第1光学干渉層の屈折率は、1.52〜1.85であることが好ましい。屈折率が1.52より小さい場合、後述の第2光学干渉層との屈折率差が小さくなり、十分な反射防止性能を発現できなくなるため好ましくない。また、屈折率が、1.85より大きい場合、高屈折率材料の特性上、設計が困難である。
【0020】
第1光学干渉層の膜厚は、波長350〜850nmの範囲における反射率の極小値、または、極大値が、2つ以下となるように設計することが好ましい。第1光学干渉層の極小値、または、極大値が、3つ以上の場合、式(I)、式(II)、式(III)を満たすことが困難となるためである。
【0021】
第1光学干渉層を構成する材料はこの種のフィルムに使用される公知の材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、活性エネルギー線硬化性多官能(メタ)アクリレートを用いることができる。また必要に応じて、金属酸化物微粒子や、フルオレン骨格を有する重合性単量体を含む組成物を重合硬化したもの等を添加することもできる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を意味するものである。「(メタ)アクリル」等も同様である。
【0022】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を第1干渉層に添加することができる。そのようなその他の成分としては、重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0023】
<第2光学干渉層>
第2光学干渉層は、第1光学干渉層の上に形成される層である。第2光学干渉層を構成する材料はこの種のフィルムに使用される公知の材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、バインダーである公知の活性エネルギー線硬化性多官能(メタ)アクリレートを、中空シリカ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、フッ化セリウム等の無機物や、含フッ素有機化合物の単独又は混合物、或いは含フッ素有機化合物の重合体を含む組成物と組み合わせて用いることができる。
【0024】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を第2光学干渉層に添加することができる。そのようなその他の成分としては、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体(導電性高分子、錯体)、重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。特に、π共役系導電性高分子とドーパントからなる複合体は、反射防止フィルムに帯電防止性能を付与できるため、好ましい。
【0025】
第2光学干渉層の屈折率は、第1光学干渉層の屈折率よりも低く設計する必要がある。第2光学干渉層の屈折率は、1.25〜1.45であることが好ましい。第2光学干渉層の屈折率が1.25未満の場合には、バインダーの含有量が少なくなるため、第2光学干渉層は十分な塗膜強度を持つことが難しくなる。その一方、屈折率が1.45を超える場合には、第1光学干渉層との屈折率差が小さくなり、十分な反射防止性能を発現することができなくなる。
【0026】
第2光学干渉層の膜厚は、λ/4とすることが光の干渉作用により表面反射が減少し、透過率が向上するため好ましい。ここで、λは光の波長400〜650nmを表す。このように低屈折率層の厚みをλ/4とすることで反射防止の効果をより高めることができる。
【0027】
なお、第1光学干渉層及び第2光学干渉層の屈折率及び膜厚に応じて、視感度反射率及び特定波長の反射率(R、G、B)は変化する。そのため、反射防止フィルムの視感度反射率が1.0%となり、且つ上記式(I)、式(II)、式(III)が満たされるように、第1光学干渉層及び第2光学干渉層の屈折率及び膜厚は適宜調整される。
【0028】
<ハードコート層>
ハードコート層は、反射防止フィルムの強度を向上させるために、必要に応じてポリエチレンテレフタレートフィルムと、第1光学干渉層との間に設けることができる。ハードコート層の膜厚は0.5μm〜10μmが好ましい。ハードコート層の膜厚が0.5μm未満の場合には、十分な鉛筆硬度が得られないため好ましくない。一方、膜厚が10μmを超える場合には、耐屈曲性の低下等の問題が生じるため好ましくない。
【0029】
ハードコート層を構成する材料はこの種のフィルムに使用される公知の材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、活性エネルギー線硬化性多官能(メタ)アクリレートを重合硬化したもの等を用いることができる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分をハードコート層に添加することができる。そのようなその他の成分としては、金属酸化物微粒子、重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0030】
<近赤外線吸収粘着層>
近赤外線吸収粘着層は近赤外線吸収機能と粘着機能を併せ持った機能層である。近赤外線吸収粘着層は、公知の材料、方法で製造されたものを使用することができる。近赤外線吸収粘着層には本発明の効果を損なわない範囲において、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、光重合開始剤、調色色素等のその他の成分を有していても良い。
【0031】
近赤外線吸収粘着層の厚みは10〜30μmが好ましく、15〜25μmがさらに好ましい。10μm未満であると近赤外線吸収粘着層を介して貼合する際に接着性が劣るため好ましくない。一方、30μmより厚いとハンドリング性が悪くなるため好ましくない。
【0032】
<反射防止フィルムの形成方法>
(ハードコート層)
ハードコート層の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば、ロールコート法、コイルバー法、ダイコート法等、一般的なウェットコート法によりハードコート層用塗液がポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布され、乾燥させた後に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射により硬化される。
【0033】
(第1及び第2光学干渉層)
第1及び第2光学干渉層を形成する方法は特に制限されず公知の方法を採用することができる。例えば、第1光学干渉層の材料を含む第1光学干渉層用塗液をロールコート法、スピンコート法、コイルバー法、ディップコート法、ダイコート法等の塗布方法によりポリエチレンテレフタレートフィルム、または、ハードコート層の表面に塗布した後、紫外線を照射して硬化し、同様にして、第2光学干渉層の材料を含む第2光学干渉層用塗液を第1光学干渉層の表面に塗布し、硬化することができる。塗布方法としては、ロールコート法等の連続的に硬化、形成できる方法が生産性の点より好ましい。
【0034】
(近赤外線吸収粘着層)
近赤外線吸収粘着層をポリエチレンテレフタレート上に設ける方法としては、近赤外線吸収粘着剤をウェットコート法により塗布する方法であれば特に制限されず、例えばグラビアコート法、スピンコート法、ダイコート法等の従来公知の塗工方法を採用することができる。また、近赤外線吸収粘着層は、ポリエチレンテレフタレート上に直接形成しても良いし、他の基材上に形成した後にポリエチレンテレフタレートに貼付しても良い。近赤外線吸収粘着層の硬化方法は、大きく分けて熱硬化方法と、紫外線硬化方法が存在するが、製造にかかる時間の観点から、硬化時間が短い紫外線硬化方法のほうが好ましい。
【0035】
<R、G及びBの算出方法>
本明細書においては、光の波長600nmにおける反射率R、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBと定義している。これらR、G及びBは以下のように求めることができる。反射防止フィルムの測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗りつぶす。その測定面において光の波長380〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを分光光度計を用いて測定し、得られた光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとする。ただし、ハードコート層の干渉により、リップルが生じてしまう場合は、リップルをスムージングする必要がある。スムージングの方法は特に制限されないが、リップルの極大値と極小値の中心を通るように近似曲線を求め、その近似曲線の光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとする。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
【0037】
<第1光学干渉層用塗液の調製>
酸化ジルコニウム微粒子(粒子径:15nm)73質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA]27質量部、光重合開始剤[チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名:IRGACURE907]5質量部及びメチルエチルケトン900質量部を混合して、第1光学干渉層用塗液を得た。
【0038】
<第2光学干渉層用塗液の調製>
中空シリカゾル〔触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM NY−1001SIV、イソプロピルアルコールによる中空シリカゾルの25質量%分散液、平均粒子径:60nm〕2000質量部、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学工業(株)製、KBM5103〕70質量部及び蒸留水80質量部を混合して変性中空シリカ微粒子(ゾル)(平均粒子径:60nm)を調製した。
【0039】
前記変性中空シリカ微粒子60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA]40質量部、光重合開始剤[チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名:IRGACURE907]5質量部、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸=1/2.5の複合体を固形分換算で1部、及びイソプロピルアルコール1500質量部を混合して、第2光学干渉層用塗液を得た。
【0040】
<ハードコート層用塗液の調製>
酸化ジルコニウム微粒子62質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA]19質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート[新中村化学(株)製]19質量部、光重合開始剤[チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名:IRGACURE184]5質量部及びイソブチルアルコール100質量部を混合して、ハードコート層用塗液を得た。
【0041】
<近赤外線吸収性粘着層用塗液の調製>
アクリル系共重合体〔根上工業(株)製、商品名:パラクロンAW4500H〕586質量部、酢酸エチル890質量部、ジブチル錫ラウレート0.3質量部を仕込み、撹拌しながら40℃に加熱した。続いて、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製、商品名:カレンズMOI)1.8質量部を酢酸エチル120質量部に溶解し、前記混合物中に温度を40℃に保持しながら滴下した。滴下終了後、反応液の滴定分析によりイソシアネート基の消失を確認するまで40℃で5時間反応を継続することにより変性(メタ)アクリル系重合体を得た。
【0042】
前記変性(メタ)アクリル系重合体を固形分換算で85.0質量部、アクリル酸〔大阪有機化学工業(株) 、商品名:98%アクリル酸〕15.0質量部、光重合開始剤〔チバスペシャルティケミカルズ(株)、商品名:イルガキュア819〕0.7質量部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)、商品名:KBE−9007〕1.5質量部、ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)−N,N,N’,N’−テトラキス[p−ジ(イソプロピルオキシエチル)アミノフェニル]−p−フェニレンジアミン 2.2質量部、テトラアザポルフィリン化合物〔山本化成(株)、商品名:PD−320〕0.18質量部、メチルエチルケトン300質量部を混合して、近赤外線吸収性粘着層用塗液を得た。
【0043】
(実施例1−1)
二軸延伸ポリエステルフィルム(片面に接着膜が設けられているポリエチレンテレフタレートフィルム)の接着膜の設けられていない面に、第1光学干渉層用塗液を乾燥膜厚160nmになるようにグラビアコート法で塗布し、乾燥後、200mJ/cmの紫外線を照射して硬化させることにより、第1光学干渉層を得た。次に、この第1光学干渉層の表面に、第2光学干渉層用塗液を、乾燥膜厚95nmになるようにグラビアコート法で塗布し、乾燥後、窒素雰囲気下で400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させることにより、反射防止フィルムを作製した。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表1に示した。
【0044】
(実施例2−1)
二軸延伸ポリエステルフィルム(片面に接着膜が設けられているポリエチレンテレフタレートフィルム)の接着膜が設けられている面に、ハードコート層用塗液を乾燥膜厚1000nmになるようにグラビアコート法で塗布し、乾燥後、200mJ/cmの紫外線を照射して硬化させることにより、ハードコート層を得た。次に、ハードコート層の表面に第1光学干渉層用塗液を乾燥膜厚145nmになるよう塗布・硬化し、得られた第1光学干渉層の表面に第2光学干渉層用塗液を95nmになるよう塗布・硬化して反射防止フィルムを得た。なお、第1及び第2光学干渉層用塗液の塗布及び硬化条件は実施例1−1と同様である。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表2に示した。
【0045】
(実施例3−1)
近赤外線吸収性粘着層用塗液を、セパレートフィルム〔東洋紡績(株)製 、商品名:E7002〕にアプリケーターにより乾燥膜厚が15μmとなるように塗布後、65℃で2分間乾燥した。高圧水銀ランプにより80mJ/cmの紫外線を照射して近赤外線吸収性粘着層を形成した。実施例1−1で作製した反射防止フィルムの他面(第1及び第2光学干渉層が設けられていない面)に、前記近赤外線吸収性粘着層を貼合して、近赤外線吸収性粘着層付き反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表3に示した。
【0046】
(実施例3−2)
実施例3−1において、実施例1−1で作製した反射防止フィルムのかわりに、実施例2−1で作製した反射防止フィルムを使用したこと以外は、実施例3−1と同様にして近赤外線吸収性粘着層付き反射防止フィルムを得た。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表3に示した。
【0047】
(比較例1−1)
実施例1−1において、第1光学干渉層を設けないこと以外は、実施例1−1と同様にして反射防止フィルムを作製した。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表1に示した。
【0048】
(比較例1−2)
実施例1−1において、第1光学干渉層用塗液を乾燥膜厚150nm、第2光学干渉層用塗液を85nmになるよう塗布したこと以外は実施例1−1と同様にして反射防止フィルムを作製した。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表1に示した。
【0049】
(比較例2−1)
実施例2−1において、第1光学干渉層を設けないこと以外は、実施例2−1と同様にして反射防止フィルムを作製した。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表2に示した。
【0050】
(比較例2−2)
実施例2−1において、第2光学干渉層用塗液を110nmになるよう塗布したこと以外は実施例2−1と同様にして反射防止フィルムを作製した。得られた反射防止フィルムを用いて下記の各種試験を行い、その評価結果を下記表2に示した。
【0051】
<試験方法>
(1)視感度反射率
反射防止フィルムの裏面(第2光学干渉層の反対面)における反射を防止するため、反射防止フィルムの裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗りつぶした。そして、分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕を用いて、反射防止フィルムの表面(第2光学干渉層の表面)における光の波長380〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られた380〜780nmの分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8701で規定されているXYZ表色系における反射による物体色の三刺激値Yを求め、視感度反射率とした。
【0052】
(2)反射率:R、G、B
視感度反射率の測定で求めた正反射スペクトルにおいて、得られた光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとした。ただし、ハードコート層を設ける場合は、リップルの極大値と極小値の中心を通るように近似曲線を求め、その近似曲線の光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとした。上記方法で得られたR、G、Bに対し、R/G、G/G、B/G及び、R/G+G/G+B/Gを算出した。
【0053】
(3)反射色
大きさ210×297mm、厚み5mmの黒色アクリル板(旭化成テクノプラス(株)製デラグラスA900)の一面に反射防止フィルムの裏面が接するように反射防止フィルムを貼合し、蛍光灯下において、45度の角度で反射防止フィルムの表面を目視観察した。反射色の見た目の彩度が低い場合を○、反射色の見た目の彩度が高い場合を×とした。なお、黒色アクリル板に貼合する際は、実施例3以外は、透明アクリル系粘着剤((株)巴川製紙所製ノンキャリア TD43A)を使用した。
【0054】
(4)膜厚
各層の厚みは、作製した反射防止フィルムをポリエステルフィルムに対して垂直に精密切断し、収束イオンビーム装置で断面加工した。得られた断面を直行方向から高分解能型走査電子顕微鏡〔日立ハイテクノロジーズ社製の商品名:S−4800〕を用い、加速電圧1.5kVで観察し、各層の厚みを計測した。
【0055】
(5)屈折率
各層の屈折率は、アッベ屈折率計により25℃でD線(589nm)を用いて測定した。
【0056】
【表1】


【表2】


【表3】

【0057】
表1、2、3に示す結果より、実施例1−1、2−1、3−1、3−2においては、視感度反射率1%以下且つ、式(I)、式(II)、式(III)を同時に満たすことから、見た目の反射色の彩度が低く抑えられ、且つ、十分な反射防止性能があることが分かった。一方、比較例1−1、1−2、2−1、2−2は、式(I)、式(II)、式(III)を同時に満たさないため、見た目の反射色の彩度が高いことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートフィルムの一面に、第1光学干渉層及び第2光学干渉層がこの順で積層された視感度反射率1.0%以下の反射防止フィルムであって、
光の波長600nmにおける反射率をR、光の波長555nmにおける反射率をG、光の波長445nmにおける反射率をBとした場合、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満たすことを特徴とする反射防止フィルム。
R/G≧0.8・・・式(I)
B/G≧0.8・・・式(II)
R/G+G/G+B/G≦4.0・・・式(III)
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムと前記第1光学干渉層との間に、ハードコート層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの他面に近赤外線吸収粘着層を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の反射防止フィルムを前面に備えたディスプレイ用光学フィルタ。



【公開番号】特開2012−252305(P2012−252305A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127129(P2011−127129)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】